(平成30年5月10日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、請求人の関連法人の名義の預金口座への振込み等による入金額は請求人に帰属し、また、請求人が取得した乗用自動車は請求人の事業用資産ではないなどとして、法人税の修正申告並びに消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)の期限後の確定申告をした後、当該入金額は請求人に帰属せず、また、当該自動車は請求人の事業用資産であるなどとして、法人税及び消費税等の各更正の申出及び各更正の請求をしたところ、原処分庁が、当該入金額は当該関連法人が休業したことを利用して請求人が売上げを除外したものであり、また、当該自動車は請求人の代表者が個人的に使用する目的で取得されたものであるなどとして、当該更正の申出に対する結果の各お知らせ及び当該更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の各通知処分をしたことから、請求人が、その全部の取消しを求めた事案である。

(2) 関係法令の要旨

関係法令の要旨は、別紙のとおりである。
 なお、別紙で定義した略語については、以下、本文及び別表でも使用する。

(3) 基礎事実及び審査請求に至る経緯

当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。

  • イ 請求人は、システム開発等を目的とする法人であり、P1(以下「本件代表者」という。)が代表取締役を務めている。
  • ロ K社(以下「本件関連法人」という。)は、一般貨物自動車運送事業等を目的とする法人であり、本件代表者が代表取締役を務めている。
     なお、請求人と本件関連法人は、同一の事務所を、それぞれの本社事務所としている。
  • ハ 請求人は、平成19年12月1日から平成20年11月30日までの事業年度(以下「平成20年11月期」といい、他の事業年度についても同様に表記する。)の法人税について青色の確定申告書に別表1の「確定申告」欄のとおり記載して法定申告期限までに申告し、平成21年11月期の法人税については青色の確定申告書に、平成22年11月期及び平成23年11月期の法人税については各確定申告書に、それぞれ別表1の「確定申告」欄のとおり記載して、いずれも法定申告期限後の平成26年4月23日に申告した。
  • ニ 請求人は、原処分庁所属の調査担当職員(以下「本件調査担当職員」という。)の調査(以下「本件調査」という。)を受け、平成20年11月期、平成21年11月期、平成22年11月期及び平成23年11月期(以下、これらの各事業年度を併せて「本件各事業年度」という。)の法人税について、各修正申告書に別表1の「修正申告」欄のとおり記載して、いずれも平成27年12月10日に申告した(以下、これらの各申告を併せて「本件各修正申告」という。)。
     併せて、請求人は、平成21年12月1日から平成22年11月30日までの課税期間(以下「平成22年11月課税期間」といい、他の課税期間についても同様に表記する。)及び平成23年11月課税期間の消費税等について、各確定申告書に別表2の「確定申告」欄のとおり記載して、いずれも法定申告期限後の平成27年12月10日に申告した(以下、これらの各申告を併せて「本件各期限後申告」という。)。
  • ホ なお、請求人は、本件各修正申告において、本件調査担当職員の調査結果の内容の説明に基づき、1別表3記載の本件関連法人名義の各普通預金口座(以下、同表の順号1記載の普通預金口座を「本件1口座」、同表の順号2記載の普通預金口座を「本件2口座」、同表の順号3記載の普通預金口座を「本件3口座」といい、これらの各預金口座を併せて「本件各口座」という。)への各振込み等による入金額には、請求人の売上げその他の収益となるものがあり、また、2別表4記載の乗用自動車(以下「本件自動車」という。)が、請求人の事業用資産ではないなどとして、以下のとおり、所得金額等を計算した。
    • (イ) 本件1口座への各振込み等について
       本件1口座への各振込み等のうち、別表5−1(運送事業に係る売上げ)、別表5−2(保険金収入)、別表5−3(貨物自動車の売却収入)及び別表5−4(預金利息)記載の各振込み等による入金額(以下「本件1口座入金額」という。)を、当該各別表の「事業年度」欄記載の事業年度の益金の額に、それぞれ算入した。
    • (ロ) 本件2口座への各入金について
       本件2口座への各入金のうち、別表5−5の「入金」欄記載の各入金(同表の順号11及び順号30記載のATMによる2件の各入金を除く。)による入金額(以下「本件2口座入金額」という。)を平成23年11月期の益金の額に算入した。
    • (ハ) 本件3口座への各振込みについて
       本件3口座への各振込みのうち、別表5−6記載の各振込みによる入金額(以下「本件3口座入金額」といい、本件1口座入金額及び本件2口座入金額と併せて「本件各口座入金額」という。)を平成20年11月期の益金の額に算入した。
    • (ニ) 本件自動車について
       本件自動車について、本件代表者が個人的に使用するために取得したものであって、請求人の事業用資産ではないとして、別表4記載の取得価額を本件代表者に対する貸付金とした。
    • (ホ) 本件代表者に対する貸付金に係る受取利息について
       本件各口座入金額を本件代表者に対する貸付金とし、また、平成23年11月期については、これに上記(ニ)の本件代表者に対する貸付金をあわせ、本件各事業年度の本件代表者に対する貸付金に係る受取利息の額を、別表6の「修正申告の額」欄のとおり計算し、本件各事業年度の益金の額に、それぞれ算入した。
  • ヘ その後、請求人は、1本件各口座入金額は請求人に帰属しないこと、2本件自動車は請求人の事業用資産であることなどを理由に挙げ、本件各修正申告及び本件各期限後申告に係る納付すべき税額が過大であったとして、平成28年8月31日に、別表1及び別表2の「更正の請求等」欄のとおり、平成20年11月期、平成21年11月期及び平成22年11月期の各事業年度の法人税並びに平成22年11月課税期間の消費税等について、各更正の申出(以下、これらの各更正の申出を併せて「本件各更正の申出」という。)をするとともに、平成23年11月期の法人税及び平成23年11月課税期間の消費税等について、各更正の請求(以下、これらの各更正の請求を併せて「本件各更正の請求」という。)をした。
  • ト 原処分庁は、平成29年2月27日付で、本件各更正の申出に対して、更正の申出に対する結果の各お知らせを送達するとともに(以下、これらの各お知らせの送達を併せて「本件各お知らせ」という。)、本件各更正の請求に対して、更正をすべき理由がない旨の各通知処分(以下、これらの各通知処分を併せて「本件各通知処分」という。)をした。
  • チ 請求人は、平成29年5月16日に、本件各お知らせ及び本件各通知処分に不服があるとして、それらの取消しを求める審査請求をした。

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2 本件各お知らせに対する審査請求の適法性について

請求人は、上記1(3)チの審査請求において、本件各お知らせの取消しも求めている。
 しかしながら、更正の申出の手続は、通則法第23条に基づく更正の請求とは異なり、法令上の根拠に基づくものではないから、更正の申出に対する結果のお知らせは、直接納税者の権利義務を形成し又はその範囲を確定するものではなく、単に、納税者からの減額更正を求める申出を契機として、税務署長が当該納税者の納税申告書に記載された課税標準等又は税額等を更正する理由がない旨を知らせるものにすぎない。
 したがって、本件各お知らせは、通則法第75条第1項に規定する「国税に関する法律に基づく処分」に該当しないから、本件各お知らせの取消しを求める部分の審査請求はいずれも不適法である。

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3 争点

本件の争点は、次のとおりである。

  • (1) 本件1口座入金額は、請求人に帰属するか否か(争点1)。
  • (2) 本件2口座入金額は、請求人に帰属するか否か(争点2)。
  • (3) 本件3口座入金額は、請求人に帰属するか否か(争点3)。
  • (4) 本件自動車は、請求人の事業用資産か否か(争点4)。
  • (5) 本件代表者に対する貸付金に係る受取利息であるとして益金の額に算入した金額は相当か否か(争点5)。

なお、争点1、争点2及び争点3における本件各口座入金額の一部は、原処分に係る平成23年11月期以外の事業年度の各修正申告又は原処分に係る平成23年11月課税期間以外の課税期間の期限後申告に基づくものであるが、争点5を検討する上で、本件各口座入金額の全部について検討することが必要であることから、以下、これを含め、各争点を検討する。

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4 争点についての主張

(1) 争点1(本件1口座入金額は、請求人に帰属するか否か。)について

請求人 原処分庁
  • イ 本件1口座は、本件関連法人が事業用に使用していた預金口座で、本件関連法人に帰属するものであり、本件1口座入金額は、次のとおり、請求人に帰属しない。
    • (イ) 別表5−1の順号1から順号35まで(順号34を除く。)記載の各振込みは、本件関連法人の行った運送事業に係る売上げであるから、請求人の収益ではない。
    • (ロ) 別表5−1の順号34、順号36及び順号37記載の各振込みは、本件関連法人の支払った社宅家賃及びインターネット料金の返金であるから、請求人の収益ではない。
    • (ハ) 別表5−1の順号38及び順号39記載のL社からの各振込みは、同社の代表取締役を務めるP2からの依頼により、同社が倒産見込みにつき当面の資金を確保するために、同社が本件関連法人への債務の返済に装って振り込んだものであり、振込みのあった当日に、本件代表者が本件1口座から当該各振込みの額と同額の現金を引き出した上、P2に返金したものであるから、請求人の収益ではない。
    • (ニ) 別表5−1の順号40記載のP3からの振込みは、本件代表者がM社の専務取締役を務めていたP3からの依頼により本件2口座を開設した際に本件代表者が立て替えて預け入れた10,000円がP3から返金されたものであるから、請求人の収益ではない。
    • (ホ) 別表5−1の順号41記載のN社からの振込みは、本件関連法人名義のクレジットカードの利用代金について、本件関連法人及び請求人が、N社に対し二重に支払ったことにより、同額がN社から返金されたものであるから、請求人の収益ではない。
    • (ヘ) 別表5−2記載の保険会社からの各振込みは、いずれも本件関連法人が契約していた保険に係る解約返戻金又は保険金であるから、請求人の収益ではない。
    • (ト) 別表5−3記載の自動車販売業者からの各振込みは、いずれも本件関連法人が所有していた事業用貨物自動車の売却代金であるから、請求人の収益ではない。
  • ロ 原処分庁は、本件代表者が、本件関連法人の休業を利用して、請求人の運送取引に係る代金を本件1口座に振り込ませた旨主張するが、本件関連法人は、運送事業の許可を受けて運送事業を行っていた一方、請求人は、平成27年○月○日に運送事業の許可を受けるまで運送事業を行うことができなかったのであるから、本件1口座への各振込みのあった期間においては、運送事業を行っていない。
     なお、本件関連法人は、平成21年3月まで売上先に対して自己の名義による請求書を発行しているから、その頃まで営業していたとみるべきである。
     仮に請求人が運送取引をしたのであれば、請求人が自己の名義による領収書等を発行しているはずであるところ、そのような書類は把握されていない。
  • イ 本件代表者は、本件調査において、本件調査担当職員に対し、次のとおり申述していることからすると、本件代表者は、本件関連法人が休業したことを利用して、請求人の各取引先に本件1口座に売上代金を振り込むよう指示し、請求人の売上げを除外したものと認められるから、本件1口座入金額は、請求人に帰属するものである。
    • (イ) 本件関連法人は、平成20年9月以後休業している。
    • (ロ) 本件1口座に平成20年9月以後振り込まれている売上げは、請求人に帰属する。
    • (ハ) 本件代表者がかつて本件関連法人において取引先の担当者であったので、取引先は本件関連法人に運送業務を依頼したと思い込み、本件1口座に代金を振り込んだものである。
    • (ニ) 本件1口座への振込みについて税理士に伝えなかったのは、本件関連法人が倒産した混乱により伝えるのを忘れていたからであり、請求人の売上げに計上しなかったのは、その後も本件1口座に振り込まれた金員を請求人の事業資金として使う形が定着したからである。
  • ロ 本件関連法人は、本件調査の時点において、平成20年9月1日から平成21年8月31日までの事業年度(以下「平成21年8月期」といい、他の事業年度についても同様に表記する。)以後の各事業年度の法人税の確定申告をしなかったことからしても、平成20年9月以後は休業していたとみるのが相当である。
  • ハ 請求人は、本件1口座入金額が本件関連法人に帰属するものである旨主張するが、請求人は、本件各更正の申出及び本件各更正の請求に際し、本件1口座入金額が本件関連法人に帰属するものであることを証明する書類を提出しておらず、本件1口座入金額について、本件関連法人に帰属するものである事実が確認できないことから、本件1口座入金額は請求人の収益であるとみるのが相当である。
  • ニ なお、本件代表者は、平成26年2月10日に、本件関連法人の滞納調査を担当した職員に対し、本件関連法人の事業について、次のとおり申述しており、これらの申述は、上記イ(イ)の申述と整合する。
    • (イ) 平成20年秋頃には、自らの体調が悪くなり、本件関連法人の経理を経理担当者に任せきりにしたことにより、傭車料の支払遅延の噂が広まり、従業員が次々と辞めたことなどから、事業が立ち行かなくなった。
    • (ロ) その後、平成21年3月末までは、運送手配をしていたものの、事実上倒産した。

(2) 争点2(本件2口座入金額は、請求人に帰属するか否か。)について

請求人 原処分庁
  • イ 本件2口座入金額は、次のとおり、請求人に帰属しない。
    • (イ) 本件2口座は、M社の専務取締役を務めていたP3からの依頼に基づき、本件関連法人の名義を貸したものである。その目的は、M社のグループ会社であるP社が、重大な交通事故により営業停止処分を受け、その際に所有する貨物自動車の台数が多いと営業停止期間が長くなるので、その期間が短くなるようにP社の所有する貨物自動車の一部を本件関連法人の名義とした上、これに伴う取引に関する資金を本件2口座において管理するためであった。
    • (ロ) 本件2口座の通帳及びキャッシュカードはM社において管理され、本件2口座からの出金にはあらかじめ本件関連法人の印を押した伝票も使用されていた。
  • ロ なお、本件2口座の通帳に記帳された、本件2口座の入出金に利用された銀行の支店・ATMの番号は、Q銀行○○支店○○出張所のものであり、同出張所が当時M社の本社の近くにあったことからしても、本件2口座を管理していたのがM社であったことは明らかである。
  • ハ また、本件2口座が短期間しか利用されていないのは、P社の営業停止期間において利用されたからである。
  • ニ さらに、本件2口座の開設時の預け入れ10,000円は、本件代表者が立て替えたので、開設日の翌日に、P3から本件1口座に振り込まれ、返金されている。

本件代表者は、本件調査において、本件調査担当職員に対し、次のとおり申述していることからすると、本件代表者は、本件関連法人が休業したことを利用して、本件2口座を開設して、請求人の売上げを除外したものと認められるから、本件2口座入金額は、請求人に帰属するものである。

  • イ 本件関連法人は、平成20年9月以後休業している。
  • ロ 本件2口座は、請求人の売上げを除外するために開設した。

(3) 争点3(本件3口座入金額は、請求人に帰属するか否か。)について

請求人 原処分庁
本件3口座は、本件関連法人が事業用に使用していた預金口座で、本件関連法人に帰属するものであり、本件3口座入金額は、次のとおり、請求人に帰属しない。
  • イ 本件3口座入金額は、本件関連法人の古くからの得意先であるR社に対する、本件関連法人の行った運送事業に係る売上げであるから、請求人の収益ではない。
  • ロ 本件3口座入金額は、その後、請求人の別の事業用口座に出金された上、本件関連法人の銀行借入金の返済に充てられていることなどからしても、本件関連法人に帰属するものとみるのが相当である。
本件代表者は、本件調査において、本件調査担当職員に対し、本件関連法人が平成20年9月以後休業している旨申述していること、及び、本件関連法人は、本件調査の時点において、平成21年8月期の法人税の確定申告をしていなかったことから、本件3口座入金額は、請求人に帰属するものとみるのが相当である。

(4) 争点4(本件自動車は、請求人の事業用資産か否か。)について

請求人 原処分庁
  • イ 本件自動車は、次のとおり、請求人に帰属するものである。
    • (イ) 本件自動車は、請求人が、その代金の全額を分割払した上、その保守管理費用についても負担したものである。
    • (ロ) 本件代表者は、本件自動車が自己に帰属するものであるといった認識や、本件自動車の代金について請求人に対する債務を有するといった認識はない。
  • ロ また、本件自動車は、本件代表者が個人的に使用していたことがあったものの、その利用状況に関する記録などはないから、請求人が50%程度の割合をもって事業の用に供していたとみるべきである。
  • ハ したがって、請求人が、平成23年11月期の法人税の修正申告において、本件自動車を事業用資産でないとして、その取得価額を本件代表者に対する貸付金としたことには誤りがある。
  • ニ なお、仮に平成23年11月課税期間の消費税等の納税義務が免除されない場合には、本件自動車の取得について、仕入税額控除をするべきである。
  • イ 本件自動車は、次のことからすると、本件代表者が個人的に使用する目的で購入されたものであると認められる。
    • (イ) 本件代表者は、本件調査において、本件自動車は個人的に使用するために請求人の資金で購入したものである旨申述していること。
    • (ロ) 請求人は、次のとおり、本件自動車を売却したとしつつ、売却した事実について経理をしておらず、本件自動車を請求人の資産として認識していないこと。
      • A 請求人は、平成26年1月10日に、本件代表者から8,570,000円を借り入れたとして、同金額を短期借入金勘定に計上している。
      • B 本件代表者は、本件調査において、上記Aの短期借入金は、本件自動車の売却代金を本件代表者からの借入金として処理したものである旨申述している。
  • ロ 次に、請求人は、本件代表者から本件自動車の使用料を受け取ってもいないから、本件自動車を請求人の資産とすることには合理性がない。
  • ハ そして、本件自動車の取得資金について、請求人が支出しているから、本件代表者に対する貸付金とするのが相当である。
  • ニ さらに、請求人は、1平成23年11月期の法人税の修正申告において、本件自動車の取得価額を本件代表者に対する貸付金とした上、2本件各更正の請求において、本件自動車が請求人の事業の用に供されている事実を証明する書類を提出していないことを併せ考えても、本件自動車は、請求人の事業用資産ではなく、本件代表者が個人的に使用するために取得されたものであるとみるのが相当である。
  • ホ なお、仮に本件自動車が事業用資産であるとしても、請求人は、本件自動車の取得に係る請求書等を保存していないものと認められるから、本件自動車の取得について、消費税の仕入税額控除をすることはできない。

(5) 争点5(本件代表者に対する貸付金に係る受取利息であるとして益金の額に算入した金額は相当か否か。)について

請求人 原処分庁
  • イ 本件調査では、本件各口座入金額と同額が本件代表者に対する貸付金とされているが、そうであるとすれば、本件各口座からそれに該当する引出しがなければならないが、それは見当たらない。
  • ロ また、本件代表者にこれほど多額の資産が一時的にも保管された形跡や、その必要性はみられず、本件代表者から請求人に貸し付けられた形跡もみられない。
  • ハ 以上のことから、本件代表者に対する貸付金は、原処分庁が本件調査において単に机上で想定したものであるといわざるを得ず、請求人から本件代表者に対する貸付けの事実はない。したがって、本件代表者に対する貸付金に係る受取利息は発生しない。
  • イ 請求人は、本件各修正申告において、本件代表者に対する貸付金を計上し、その後、平成27年11月期の法人税の確定申告書に添付した貸借対照表において、本件代表者に対する貸付金を法人の資産に受け入れており、これらのことからすると、請求人は、本件代表者に対して貸付金を有していると認められ、また、当該貸付金に係る受取利息についても請求人に帰属することとなる。
  • ロ また、本件調査において、1本件代表者は、本件各口座入金額について、全額を本件代表者に対する貸付金として修正申告をしたい旨申し出ているほか、2本件代表者及び本件調査当時の請求人の代理人であったP4税理士は、本件代表者に対する貸付金に係る受取利息を年3%の割合により計算したい旨を申し出ていることからすると、本件各口座入金額を本件代表者に対する貸付金としたこと、及び当該貸付金に係る受取利息を年3%の割合により計算したことは相当である。

5 当審判所の判断

(1) 争点1(本件1口座入金額は、請求人に帰属するか否か。)について

  • イ 認定事実
     請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、次の事実が認められる。
    • (イ) 請求人の事業の状況等
      • A 請求人の本件各事業年度の法人税の各確定申告における売上高は、平成20年11月期が○○○○円、平成21年11月期が○○○○円、平成22年11月期が○○○○円、及び平成23年11月期が○○○○円であり、これらは、燃料の販売、米穀の販売、顧問料等によるものであり、運送事業によるものではなかった。
      • B 請求人は、本件各事業年度の法人税の各確定申告及び本件各修正申告において、運送事業用の貨物自動車を資産に計上せず、傭車料、リース料、燃料費その他の運送事業に関する費用を損金の額に算入しなかった。
         また、本件各事業年度において、道路運送車両法に基づき請求人を所有者又は使用者とする登録がされた貨物自動車は、認められなかった。
      • C 請求人は、平成25年○月○日付で、会社の目的に「貨物自動車運送業及び軽貨物自動車運送業」を加え、平成25年○月○日に、これを登記した。
      • D 請求人は、平成25年○月○日付で、第一種貨物利用運送事業の経営を行うことについてS運輸局長の行う登録を、平成27年○月○日付で、一般貨物自動車運送事業を経営することについてS運輸局長の許可を、それぞれ受けた。
    • (ロ) 本件関連法人の事業の状況等
      • A 本件関連法人は、平成10年○月○日付で、一般貨物自動車運送事業を経営することについてS運輸局長の許可を、平成13年○月○日付で、第一種貨物利用運送事業の経営を行うことについてS運輸局長の行う登録を、それぞれ受けた。
      • B 本件関連法人は、平成20年8月期の法人税及び平成19年9月1日から平成20年8月31日までの課税期間(以下「平成20年8月課税期間」といい、他の課税期間についても同様に表記する。)の消費税等について、いずれも法定申告期限までに申告した。
         なお、平成20年8月期の法人税の確定申告における売上高は、約○○○○円で、そのほとんどが運送事業によるものであり、また、確定申告書に添付された「売掛金の内訳書」には、相手先として、別表5−1の順号1の振込人と認められる「T社○○」、同表の順号3の振込人と認められる「U社」、同表の順号6の振込人と認められる「V社」などを含む16社が表示されていた。
         本件関連法人は、少なくとも平成20年8月期までは、T社その他運送事業者等を売上先として、運送事業を営んでいた。
      • C 本件関連法人は、平成21年8月期、平成22年8月期、平成23年8月期、平成24年8月期、平成25年8月期、平成26年8月期及び平成27年8月期の法人税並びに平成23年8月課税期間及び平成25年8月課税期間の消費税等について、いずれも法定申告期限までに申告しなかった。
         その後、本件関連法人は、平成23年8月期、平成24年8月期、平成25年8月期、平成26年8月期及び平成27年8月期の法人税並びに平成23年8月課税期間及び平成25年8月課税期間の消費税等について、いずれも法定申告期限後の平成28年8月31日に申告した。
      • D 本件関連法人は、上記Cの各事業年度において、現金出納帳その他の帳簿にその取引に関する事項を記録せず、また、当該取引に関して作成し、又は受領した書類を保存しなかった。
      • E 本件関連法人は、平成20年8月期の法人税の確定申告書に添付した「固定資産台帳兼減価償却計算書」に、運送事業用の貨物自動車19台を表示した。
         また、平成20年8月期の事業年度末において道路運送車両法に基づき使用者を本件関連法人とする登録がされていた貨物自動車は17台であり、これらの各貨物自動車のうち15台については、平成21年2月から平成25年1月にかけて、それぞれ使用者を他者に変更する登録がされた。なお、当該他者は、請求人以外の複数の運送事業者であった。
      • F 本件関連法人は、平成20年8月期の事業年度末において金融機関借入金○○○○円余りを有しており、その後、この返済を履行できなくなり、原処分の時点において金融機関借入金○○○○円余りを有していた。
      • G 本件代表者は、平成26年2月10日に、X国税局長所属の徴収担当職員に対し、本件関連法人の代表取締役の立場において、平成20年秋頃には、自らの体調が悪化し、本件関連法人の経理を経理担当者に任せきりにしたことにより、傭車料の支払遅延の噂が広まり、従業員が次々と辞めたことなどから、事業が立ち行かなくなった旨、及び、その後、平成21年3月末までは運送手配をしていたものの、事実上倒産した旨申述した。
         なお、本件関連法人は、平成26年3月14日付で、滞納国税○○○○円について、滞納処分の執行を停止された。
    • (ハ) 本件1口座への振込み等の状況
      • A 本件1口座の使用状況等について
        • (A) 本件関連法人は、平成16年9月17日に、本件1口座を開設し、少なくとも平成20年8月期までは、これを運送事業に係る売上代金の一部の入金や傭車料その他の運送事業に関する費用の一部の支払等のための預金口座として使用しており、平成20年8月期の法人税の確定申告書に添付した「預貯金の内訳書」に、この存在及び期末現在高を表示した。
        • (B) 本件1口座には、平成20年9月以後において、本件1口座入金額の入金のほか、現金による入金等があった。
           また、本件1口座からは、平成20年9月以後において、複数の運送事業者に対する傭車料の支払と認められる出金があったほか、現金による出金、本件関連法人名義の他の複数の預金口座への出金等があった。
           なお、当該他の複数の預金口座は、本件関連法人の平成20年8月期の法人税の確定申告書に添付された「預貯金の内訳書」に、その存在及び期末現在高が表示されたものであった。
      • B 請求人の運送事業に係る売上げであるとした各振込み(別表5−1)について
        • (A) T社からの各振込みについて
          • a T社は、平成14年頃から平成20年11月まで、本件関連法人に○○支店の商品の配送業務を依頼し、本件関連法人から発行された請求書に基づき、その業務の対価として毎月500万円から600万円程度の運送料を、配送業務のあった月の翌々月に本件1口座に振り込んで支払い、これらを本件関連法人に対する運送料の支払として経理していた。
          • b T社は、本件関連法人から発行された平成20年4月分から同年11月分までの8か月分の運送料の各請求書(以下「T社保管各請求書」という。)を保管しており、その発行者の名義は、いずれも本件関連法人であり、振込先預金口座として記載された預金口座は、いずれも本件1口座であった。
          • c そして、T社保管各請求書のうち平成20年8月分から同年11月分までの各月分の請求金額から振込手数料の金額を差し引いた金額が、別表5−1の順号1、順号2、順号5及び順号9記載の各振込みの金額と、それぞれ一致した。
        • (B) 本件関連法人の売上データについて
          • a 請求人は、請求人と本件関連法人の同一の本社事務所において保有する共通のサーバー内に、本件関連法人の平成20年10月分から平成21年3月分までの売上データが保存されていたとして、当該データから出力した発行者の名義を本件関連法人とする請求書158件(以下「請求人提出各請求書」という。)を当審判所へ提出した。
          • b そして、請求人提出各請求書のうちT社を宛先とする平成20年10月分及び同年11月分のものは、T社保管各請求書のうち同各月分のものと、請求金額、顧客コード、請求ナンバーなどが、それぞれ一致した。
          • c また、別表5−1記載の各振込みのうち、同表の「請求人提出各請求書と一致するもの」欄に丸印を記載したものについては、請求人提出各請求書と、その振込人がそれぞれ一致するとともに、振込手数料又は相殺額を勘案すれば、その振込金額がそれぞれ一致した。
        • (C) Y社及びZ社は、アパート等の賃貸管理を営む法人であり、また、f社は、インターネットサービスを営む法人である。
           なお、請求人は、平成21年11月期の法人税の確定申告及び修正申告において、家賃を損金の額に算入しなかった。
        • (D) L社は、一般貨物自動車運送事業等を目的とする法人であり、P2が代表取締役を務めていた。
           本件代表者は、別表5−1の順号38及び順号39記載のL社からの各振込みがあった当日に、各振込みの金額の合計額である28,422,155円とほぼ同額の28,421,750円を、本件1口座から引き出した。
        • (E) N社は、平成23年4月15日に、本件関連法人名義のクレジットカードの利用代金が二重に支払われたことに対する返金として、156,471円を本件1口座へ振り込んだ(別表5−1の順号41)。
      • C 請求人の保険金収入であるとした各振込み(別表5−2)について
        • (A) g社は、本件関連法人との間の自動車保険契約及び運送保険契約に基づき、本件関連法人を受取人とする保険金を、平成21年3月6日、同月25日、同年4月9日、同月13日及び同月21日に、本件1口座に、それぞれ振り込んだ(別表5−2の順号4、順号5及び順号7から順号9まで)。
        • (B) h社は、本件関連法人との間で平成13年3月27日に契約した3件のがん保険の解約返戻金及び保険料の返金を、平成21年5月27日及び同年6月8日に、本件1口座に、それぞれ振り込んだ(別表5−2の順号10及び順号11)。
        • (C) i社は、本件関連法人から平成20年3月31日に契約の申込みを受けた火災保険の解約返戻金を、平成21年7月6日に、本件1口座に振り込んだ(別表5−2の順号12)。
        • (D) 本件関連法人は、平成20年8月期の法人税の確定申告において、保険料18,589,620円を損金の額に算入し、保険積立金3,419,055円を資産に計上した。
           なお、当該保険料及び当該保険積立金の支払先については、明らかではない。
        • (E) 請求人は、平成20年11月期の法人税の確定申告及び修正申告において、保険料を損金の額に算入せず、保険積立金を資産に計上しなかった。また、平成21年11月期の法人税の確定申告及び修正申告において、保険料258,970円を損金の額に算入し、保険積立金を資産に計上しなかった。
           なお、当該保険料の支払先については、請求人の会計帳簿によっても、明らかではない。
      • D 請求人の貨物自動車の売却収入であるとした各振込み(別表5−3)について
        • (A) j社は、平成22年6月30日及び同年7月12日に、本件関連法人から貨物自動車3台を買い取り、その代金として、同年6月30日に8,452,500円を、同年7月15日に3,233,340円を、本件1口座に、それぞれ振り込んだ(別表5−3の順号1及び順号2)。
        • (B) k社は、平成22年7月21日に、本件関連法人から貨物自動車4台を買い取り、その代金として、同月22日に17,100,000円を、本件1口座に振り込んだ(別表5−3の順号3)。
  • ロ 検討
    • (イ) 請求人の運送事業に係る売上げであるとした各振込み(別表5−1)について
      • A 順号1、順号2、順号5及び順号9記載の各振込みについて
         上記イ(ハ)B(A)aのとおり、T社は、平成20年11月まで本件関連法人に商品の配送業務を依頼し、その業務の対価である運送料を配送業務のあった月の翌々月に本件1口座に振り込んで支払っていた。
         そして、別表5−1の順号1、順号2、順号5及び順号9記載のT社からの各振込みは、上記イ(ハ)B(A)のとおり、T社保管各請求書のうち平成20年8月分から同年11月分までの各請求書に基づき振り込まれたものであるところ、これらの各請求書の発行者の名義はいずれも本件関連法人であり、また、T社はこれらの各振込みを本件関連法人に対する運送料の支払として経理しており、これらのことは同年8月以前におけるT社から本件関連法人に対する運送料の振込みと何ら変わるところはない。
         したがって、これらの各振込みは、本件関連法人の行った運送業務の対価であり、請求人に帰属しないものと認められる。
      • B 順号3から順号35まで(順号5、順号9及び順号34を除く。)記載の各振込みについて
         上記イ(ロ)Bのとおり、別表5−1記載の各振込みの振込人には、T社のほかにも、本件関連法人の平成20年8月期における運送事業の売上先と認められる者が含まれている。
         そして、上記イ(ハ)B(B)bのとおり、請求人提出各請求書は、T社保管各請求書と主要な部分において一致することからして、T社保管各請求書と同一の売上データすなわち本件関連法人の売上データに基づいて作成(出力)されたものとみるのが相当である。
         そうすると、上記イ(ハ)B(B)cのとおり、別表5−1記載の各振込みの多くは、その振込人及び振込金額が請求人提出各請求書の内容と一致するところ、これら一致する各振込みは、本件関連法人の行った運送業務の対価であると認められる。
         これに加え、上記イ(ロ)Eのとおり、本件関連法人の平成20年8月期の事業年度末において使用者を本件関連法人とする登録がされていた貨物自動車については、平成20年9月以後においても、その登録の状態が継続していたこと、上記イ(ハ)A(A)及び(B)のとおり、本件関連法人は、平成20年8月期まで、傭車料その他の運送事業に関する費用の支払のために本件1口座を使用していたところ、平成20年9月以後においても、本件1口座から傭車料の支払と認められる出金があること、上記イ(ロ)Gのとおり、本件代表者が、本件関連法人は平成20年秋頃から事業が立ち行かなくなったものの平成21年3月末までは運送手配をしていた旨申述したことを併せ考えると、本件関連法人は、平成21年3月頃まで、事業規模を縮小しながらも運送事業を行っていたとみることができる。
         他方、請求人は、上記イ(イ)Dのとおり、運送事業に必要な許可等を受けたのが、早くとも平成25年○月○日付であったこと、上記イ(イ)Bのとおり、本件各事業年度において、運送事業用の貨物自動車を資産に計上せず、傭車料、リース料、燃料費その他の運送事業に関する費用を損金の額に算入しなかったこと、上記イ(ロ)Eのとおり、本件関連法人が使用していた貨物自動車を請求人が譲り受けた事実は認められないこと、さらに、本件関連法人その他の者から運送事業を譲り受けた事実や、本件各事業年度において他の運送事業者に運送業務を委託した事実も認められないこと、加えて、本件各事業年度において請求人が発行した運送業務に係る請求書等の証拠もないことからすると、請求人が本件各事業年度において運送事業を行っていたと認めることはできない。
         以上のことから、別表5−1記載の各振込みのうち、平成21年5月以前、すなわち順号3から順号35まで(順号5、順号9及び順号34を除く。)記載の各振込みについては、その振込人及び振込金額が請求人提出各請求書の内容と一致するもの以外のものを含め、本件関連法人が平成21年3月以前に行った運送業務の対価であると推認するのが相当であるから、請求人に帰属しないものと認められる。
      • C 順号34、順号36、順号37、順号40及び順号41記載の各振込みについて
         別表5−1の順号34、順号36及び順号37記載の各振込みは、上記イ(ハ)B(C)のとおり、アパート等の賃貸管理又はインターネットサービスを営む各法人からの振込みであるところ、これらの各法人と請求人との間に取引等があったとする証拠はなく、また、請求人は平成21年11月期において家賃を損金の額に算入していないことからしても、これらの各振込みは、請求人に帰属しないものと認められる。
         また、別表5−1の順号40記載のP3からの振込みについては、後記(2)イ(ハ)に記載するとおり、本件代表者が本件2口座の開設に伴い10,000円を預け入れたことから、P3から同額が返金されたものであり、さらに、同表の順号41記載のN社からの振込みについては、上記イ(ハ)B(E)のとおり、二重払となった本件関連法人名義のクレジットカードの利用代金が、N社から返金されたものであるから、いずれも請求人に帰属しないものと認められる。
      • D 順号38及び順号39記載の各振込みについて
         別紙5−1の順号38及び順号39記載の各振込みは、上記イ(ハ)B(D)のとおり、一般貨物自動車運送事業等を目的とする法人からの振込みであるところ、上記Bのとおり、請求人が本件各事業年度において運送事業を行っていたとは認められず、これらの各振込みが請求人に帰属することを示す客観的な証拠はない。
         そして、上記AからCまでのとおり、本件1口座への各振込みのうち、請求人の運送事業に係る売上げであるとしたもののほとんどが、請求人に帰属しないものと認められ、その他の本件1口座への各振込みについても、後記(ロ)及び(ハ)に記載するとおり、いずれも請求人に帰属しないものと認められることからすれば、本件1口座は、請求人が事業のために使用していた預金口座ではないものとみるべきである。
         そうすると、順号38及び順号39記載の各振込みに限って請求人に帰属するものとは考え難いというべきであり、これらの各振込みも、請求人に帰属しないものと認められる。
    • (ロ) 請求人の保険金収入であるとした各振込み(別表5−2)について
      • A 上記イ(ハ)C(A)から(C)までのとおり、別表5−2の順号4、順号5及び順号7から順号12まで記載の各振込みのうち、g社からの自動車保険及び運送保険の保険金は、本件関連法人を保険金受取人とするものであり、また、h社からのがん保険の解約返戻金及び保険料の返金並びにi社からの火災保険の解約返戻金は、これらの各保険会社と本件関連法人との間の各保険契約に基づくものであるから、いずれも本件関連法人に帰属すると認められる。
      • B また、別表5−2の順号1から順号3まで及び順号6記載の各振込みについては、保険契約の解約返戻金、保険金等であると推測されるところ、保険契約者や保険金受取人などに関する証拠はないものの、通常、保険契約の解約返戻金や保険金は、その受取人を口座名義人とする預金口座に振り込まれるものであることに加え、上記イ(ハ)C(D)のとおり、本件関連法人は、平成20年8月期において、保険契約を締結していたと認められる一方、上記イ(ハ)C(E)のとおり、請求人は、平成20年11月期において、保険契約を締結していたとは認められず、平成21年11月期においては、保険契約を締結していたものの、その保険料の額からみて、同表の順号1から順号3まで及び順号6記載の各振込みに係る保険契約者又は保険金受取人であったとは考え難いというべきである。
      • C 以上のことから、別表5−2記載の各振込みは、いずれも請求人に帰属しないものと認められる。
    • (ハ) 請求人の貨物自動車の売却収入であるとした各振込み(別表5−3)について
      • A 上記イ(ハ)Dのとおり、別表5−3記載の各振込みは、j社又はk社が本件関連法人から買い取った貨物自動車の代金であるから、いずれも本件関連法人に帰属すると認められる。
      • B そして、上記イ(イ)Bのとおり、請求人の平成20年11月期、平成21年11月期及び平成22年11月期の法人税の各確定申告及び各修正申告、並びに道路運送車両法に基づく貨物自動車の登録の状況によれば、請求人がこれらの各事業年度において貨物自動車を所有していた事実は認められず、その他請求人が貨物自動車を売却したと認めるに足りる証拠もない。
      • C 以上のことから、別表5−3記載の各振込みは、いずれも請求人に帰属しないものと認められる。
    • (ニ) 請求人の預金利息であるとした各入金(別表5−4)について
       上記(イ)から(ハ)までのとおり、本件1口座への各振込みはいずれも請求人に帰属せず、本件1口座は請求人が事業のために使用していた預金口座ではないから、別表5−4記載の預金利息については、いずれも請求人に帰属しないものと認められる。
    • (ホ) まとめ
       以上のことから、本件1口座入金額は、いずれも請求人に帰属しないものと認められる。

(2) 争点2(本件2口座入金額は、請求人に帰属するか否か。)について

  • イ 認定事実
     請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、次の事実が認められる。
    • (イ) 本件代表者は、遅くとも平成23年1月7日までに、交友関係にあったP5を介して、M社の専務取締役であったP3から、M社のグループ会社で、運送事業を営むP社が、S運輸局長から事業停止等の処分を受ける見込みであったことから、P社の事業を継続するための手法として、その貨物自動車の一部を本件関連法人に移転させることや、本件関連法人名義の預金口座を開設の上、P3に利用させることなどの依頼を受け、これを了承した。
    • (ロ) P社は、平成23年1月7日に、P5に対し、P社の所有していた貨物自動車14台(以下「本件各貨物自動車」という。)を代金24,830,000円で売却し、P5は、同月10日に、本件関連法人に対し、本件各貨物自動車を同額の代金で売却した。
    • (ハ) 本件代表者は、平成23年2月1日に、本件2口座を開設して10,000円を預け入れ(別表5−5の順号1)、その後、本件2口座の預金通帳及びキャッシュカード並びに本件2口座の銀行届出印を押した銀行の出金伝票複数枚をP3に渡した。
    • (ニ) 平成23年1月から同年3月にかけて、P社が事業停止等の処分を受けたことから、M社が受注した運送業務の一部は、P社の従業員が本件各貨物自動車を運行することにより行われ、これに伴い、本件関連法人を発行者とする各請求書が、M社に対し、発行された。
    • (ホ) M社は、上記(ニ)の各請求書に基づき、平成23年3月4日に2,928,813円を、同月10日に364,572円を、同月31日に10,329,498円を、同年4月28日に5,225,344円を、それぞれ本件2口座に振り込んで支払った(別表5−5の順号3、順号9、順号16及び順号26)。
    • (ヘ) P3は、本件各貨物自動車に係る燃料の購入費用及び本件各貨物自動車を運行するP社の従業員の給与に相当する金額を本件2口座から出金して(別表5−5の順号4、順号18の一部、順号19及び順号27)、P社に支払った。
    • (ト) P3は、平成23年2月から同年6月にかけて、本件各貨物自動車に係る保険料、整備費用その他の費用を、本件2口座から出金して(別表5−5の順号6、順号12、順号17の一部、順号18の一部、順号22、順号24、順号28及び順号31から順号34まで)支払った。
    • (チ) 本件関連法人は、平成23年2月から同年3月にかけて、m社に対し、本件各貨物自動車のうち1台を代金1,400,000円で、n社に対し、本件各貨物自動車のうち4台を代金合計21,000,000円で、p社に対し、本件各貨物自動車のうち9台を代金合計2,430,000円で、それぞれ売却した。
       そして、m社は平成23年2月25日に、n社は同年3月10日に、p社は同月30日に、それぞれ上記の各貨物自動車の売買契約に基づき、代金を本件2口座に振り込んで支払った(別表5−5の順号2、順号8及び順号14)。
    • (リ) P3は、上記(ロ)の本件各貨物自動車の売買契約に基づき、本件関連法人がP5に支払うべき代金を、平成23年3月11日、同月25日、同月30日及び同月31日に、それぞれ本件2口座から出金して(別表5−5の順号10、順号13、順号15及び順号17の一部)支払った。
    • (ヌ) 本件2口座には、i社から、上記(ト)の保険料の返金として、平成23年4月27日に4,810円が、同年6月28日に26,160円が、それぞれ振り込まれたほか、同年8月22日に、預金利息139円が入金された(別表5−5の順号21、順号35及び順号38)。
    • (ル) P3は、平成23年7月頃、本件代表者に対し、本件2口座の通帳及びキャッシュカードを返還するとともに、上記(ロ)、(ニ)及び(ヘ)から(リ)までの各取引に係る請求書などの各書類を渡した。
  • ロ 検討
     上記イのとおり、本件2口座は、本件各貨物自動車を運行して行う運送事業のためにP3に利用させる目的で本件代表者により開設された預金口座であり、平成23年2月から同年7月頃までの間、P3により管理され、上記の運送事業のために利用されていた。
     そして、請求人は、本件各貨物自動車を運行して行う運送事業に何ら関与していないのであるから、別表5−5記載の各入出金は、いずれも請求人に帰属しないというべきである。
     したがって、本件2口座入金額は、請求人に帰属しないものと認められる。

(3) 争点3(本件3口座入金額は、請求人に帰属するか否か。)について

  • イ 認定事実
     請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、次の事実が認められる。
    • (イ) 本件関連法人は、平成10年2月20日に、本件3口座を開設し、少なくとも平成20年8月期までは、これを運送事業に係る売上代金の一部の入金や本件関連法人の金融機関借入金の返済等のための預金口座として使用しており、平成20年8月期の法人税の確定申告書に添付した「預貯金の内訳書」に、この存在及び期末現在高を表示した。
    • (ロ) 本件関連法人は、平成20年8月期の法人税の確定申告書に添付した「売掛金の内訳書」に、相手先として、別表5−6記載の振込人と認められる「R社」を表示した。
    • (ハ) 別表5−6記載の振込人であるR社からは、平成20年8月以前においても、本件3口座への振込みがあった。
    • (ニ) 本件3口座からは、平成20年9月以後において、本件関連法人の金融機関借入金の返済と認められる出金があったほか、現金による出金、本件関連法人名義の他の預金口座への出金があった。
       なお、当該他の預金口座は、本件関連法人の平成20年8月期の法人税の確定申告書に添付された「預貯金の内訳書」に、その存在及び期末現在高が表示されたものであった。
  • ロ 検討
    • (イ) 上記イ(イ)のとおり、少なくとも、本件関連法人の平成20年8月期までにおける運送事業の売上代金の一部については、売上先から本件3口座に振り込まれていたところ、平成20年10月及び同年11月における本件3口座入金額の振込人であるR社は、上記イ(ロ)及び(ハ)のとおり、本件関連法人の平成20年8月期における運送事業の売上先であったと認められる。
    • (ロ) そして、上記(1)ロ(イ)Bのとおり、本件関連法人については、少なくとも、平成21年3月頃までは、事業規模を縮小しながらも運送事業を行っていたとみることができる一方、請求人については、本件各事業年度において運送事業を行っていたと認めることができない。
    • (ハ) さらに、上記イ(イ)及び(ニ)のとおり、本件関連法人は、少なくとも平成20年8月期まで、本件3口座を本件関連法人の金融機関借入金の返済等のための預金口座として使用していたところ、平成20年9月以後においても、本件3口座からは金融機関借入金の返済と認められる出金があるから、本件3口座は、本件関連法人の事業のために使用されていたとみるのが相当である。
    • (ニ) したがって、本件3口座入金額は、本件関連法人の行った運送事業に係るものであり、請求人に帰属しないものと認められる。

(4) 争点4(本件自動車は、請求人の事業用資産か否か。)について

  • イ 認定事実
     請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、次の事実が認められる。
    • (イ) 請求人は、q社に対し、本件自動車の代金及び取得に伴う付随費用として、平成23年8月から平成26年2月にかけて、9,537,700円を分割払により支払い、平成23年11月期に、同額を車両運搬具勘定に計上した。
    • (ロ) 本件自動車の道路運送車両法に基づく登録の状況は、別表4記載のとおりである。
    • (ハ) 請求人は、平成23年11月期、平成24年11月期、平成25年11月期及び平成26年11月期において、本件代表者から、本件自動車を本件代表者に使用させることの対価を受け取らなかった。
    • (ニ) 請求人は、当審判所が本件自動車の利用状況を証する資料の提出を求めたのに対し、本件自動車の自動車検査証の写し、及び本件自動車に係る自動車保険の契約内容を示す書類である「自動車保険(最新)照会」を提出したものの、その他の本件自動車の利用状況を証する資料を提出しなかった。
  • ロ 検討
    • (イ) 法人が所有する減価償却資産については、本来、事業の用に供することによって収益の獲得に寄与し、減価償却等を通じて費用化されるものであることから、事業の用に供する目的をもって所有されるべきものである。
    • (ロ) 上記イ(ニ)のとおり、請求人が当審判所の求めに対し提出した自動車検査証の写し及び「自動車保険(最新)照会」によれば、本件自動車の使用者及び自動車保険の契約者は請求人であるものの、そのことをもって、請求人が本件自動車を事業の用に供していたと認めることはできず、また、請求人はこれらの各書類以外に本件自動車の利用状況を証する資料を提出しなかったのであるから、請求人が本件自動車を事業の用に供していた事実は明らかではない。
    • (ハ) そして、上記4(4)請求人主張欄ロのとおり、請求人は、本件自動車について、本件代表者が個人的に使用していたことがあったと自ら認めている一方で、上記イ(ハ)のとおり、請求人は、本件自動車を所有していたとする各事業年度において、本件代表者から、本件自動車を使用させることの対価を受け取ってもいないのであるから、この点からしても、請求人が本件自動車を事業の用に供していたとは認められない。
    • (ニ) そうすると、本件自動車は、請求人が事業の用に供することを目的として取得されたものであるとは認められず、本件代表者が個人的に使用することを目的として取得されたものであるというべきであるから、請求人の事業用資産であるとは認められない。
       また、上記のことから、請求人が、平成23年11月期の法人税の修正申告において、本件自動車の取得価額を本件代表者に対する貸付金としたことにも、誤りがあるとは認められない。
  • ハ 請求人の主張について
    • (イ) 請求人は、本件自動車について、1請求人が、代金の全額を分割払した上、その保守管理費用についても負担したものであり、2本件代表者は、本件自動車が自己に帰属するものであるといった認識や、本件自動車の代金について請求人に対する債務を有するといった認識はないから、請求人に帰属するものである旨主張する。
       しかしながら、上記ロ(ロ)のとおり、請求人が本件自動車を事業の用に供していた事実を認めるに足りる証拠はないのであるから、本件自動車について、請求人が代金及び保守管理費用を支出したことや、本件代表者が自己に帰属するものであるなどの認識がないことをもって、請求人が事業の用に供することを目的として取得されたものであると認めることはできず、請求人の上記主張は採用することができない。
    • (ロ) また、請求人は、本件自動車について、本件代表者が個人的に使用していたことがあったものの、その利用状況に関する記録などはないから、請求人が50%程度の割合をもって事業の用に供していたとみるべきである旨主張する。
       しかしながら、上記ロ(ロ)のとおり、請求人が本件自動車を事業の用に供していた事実を認めるに足りる証拠はないのであるから、請求人が50%程度の割合をもって事業の用に供していたとみることに合理性は認められないというべきであり、請求人の上記主張は採用することができない。

(5) 争点5(本件代表者に対する貸付金に係る受取利息であるとして益金の額に算入した金額は相当か否か。)について

  • イ 上記1(3)ホ(ホ)のとおり、請求人は、本件各修正申告において、1本件各口座入金額について、請求人に帰属するとし、これを本件代表者に対する貸付金とするとともに、2本件自動車について、本件代表者が個人的に使用することを目的として、請求人が資金を支出して取得したものであるとし、その取得価額を本件代表者に対する貸付金とした上、これらの貸付金に係る受取利息の額を、別表6の「修正申告の額」欄のとおり計算し、本件各事業年度の益金の額にそれぞれ算入している。
  • ロ しかしながら、上記(1)から(3)までのとおり、本件各口座入金額は請求人に帰属するとは認められないから、本件各修正申告において、本件各口座入金額を本件代表者に対する貸付金とした点には誤りがある。
     他方、上記(4)ロのとおり、平成23年11月期の法人税の修正申告において、本件自動車の取得価額を本件代表者に対する貸付金とした点には、誤りがあるとは認められない。
  • ハ 以上のことから、平成23年11月期の法人税の修正申告において受取利息の額の計算の基礎とした本件代表者に対する貸付金の額から、本件各口座入金額を差し引き、これを基に、平成23年11月期における本件代表者に対する貸付金に係る受取利息の額を、平成23年11月期の法人税の修正申告における受取利息の額の計算方法と同様の計算方法により再計算すると、別表6の「審判所認定額」欄記載のとおり143,065円となる。

(6) 原処分庁の主張について

原処分庁は、争点1、争点2及び争点3に関して、本件代表者が本件調査において、1本件関連法人は平成20年9月以後休業している旨、2本件1口座に平成20年9月以後振り込まれている売上げは請求人に帰属する旨、3本件2口座は請求人の売上げを除外するために開設したものである旨などを申述したことからすると、本件代表者は、本件関連法人が休業したことを利用して、請求人の各取引先に本件1口座に売上代金を振り込むよう指示し、また、本件2口座を開設して、請求人の売上げを除外したもの等と認められるから、本件各口座入金額は請求人に帰属する旨主張する。
 しかしながら、当審判所の調査の結果によれば、本件代表者は、本件調査において、本件調査担当職員に対して、上記の申述をしていると認められるものの、本件代表者が上記の申述に至った背景には、本件関連法人が、上記(1)イ(ロ)F及びGのとおり、金融機関借入金の返済や滞納国税の納付を履行できないまま事実上倒産したという事情や、上記(1)イ(ロ)Cのとおり、平成21年8月期以後の各事業年度の納税申告について期限内申告を履行していなかったという事情があったとみることができ、他方、本件各口座入金額の帰属についての事実は、上記(1)イ、(2)イ及び(3)イのとおりであって、上記の申述の内容を裏付ける証拠は認められない。
 したがって、原処分庁の上記主張は採用することができない。

(7) 平成23年11月期の法人税に係る更正をすべき理由がない旨の通知処分の適法性について

上記(1)から(5)までのとおり、平成23年11月期において、本件各口座入金額のうち請求人に帰属するものはなく、また、本件代表者に対する貸付金に係る受取利息の額として益金の額に算入すべき金額は143,065円となる。
 ところで、当審判所の調査の結果によれば、平成23年11月期の法人税の修正申告における事業税の損金算入額(地方法人特別税の損金算入額を含む。以下同じ。)には誤りが認められるから、これを再計算すると、別表7の「審判所認定額」欄記載のとおり○○○○円となる。
 これらを前提に、当審判所において、請求人の平成23年11月期の所得金額及び納付すべき法人税額を計算すると、別表8の「審判所認定額」欄記載のとおり、所得金額は、更正の請求の額(確定申告の額)を下回り、還付金額は、更正の請求の額(確定申告の額)と同額となるから、平成23年11月期の法人税の更正の請求には当該更正の請求の額に更正をすべき理由が認められる。
 したがって、平成23年11月期の法人税に係る更正をすべき理由がない旨の通知処分は違法であり、その全部を取り消すべきである。

(8) 平成23年11月課税期間の消費税等に係る更正をすべき理由がない旨の通知処分の適法性について

平成23年11月課税期間の消費税等の納税義務を判定する基準期間は平成21年11月課税期間であるところ、上記(1)から(3)までのとおり、平成21年11月課税期間において、本件各口座入金額のうち請求人に帰属するものはない。
 これを前提に、当審判所において、請求人の平成21年11月課税期間の課税売上高を計算すると、平成21年11月期の法人税の確定申告における売上高と同額の○○○○円となり、1,000万円以下であるから、平成23年11月課税期間の消費税等の納税義務は免除されることとなり、平成23年11月課税期間の消費税等の更正の請求には当該更正の請求の額に更正をすべき理由が認められる。
 したがって、平成23年11月課税期間の消費税等に係る更正をすべき理由がない旨の通知処分は違法であり、その全部を取り消すべきである。

(9) 結論

以上によれば、原処分は、いずれもその全部を取り消し、その他の審査請求の対象についての審査請求は、いずれも却下することとする。

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