(平成30年12月14日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、J国に所在する法人から受けた剰余金の配当の額の一部について、法人税等の確定申告において、請求人の外国子会社からの剰余金の配当であり、法人税法上益金の額に算入されないとして、益金の額に算入しなかったところ、原処分庁が、当該法人は請求人の外国子会社に該当しないことから、当該一部は益金の額に算入されるとして、法人税等の更正処分等を行ったことに対し、請求人が原処分の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 関係法令

別紙のとおりである。なお、別紙で定義した略語については、以下、本文でも使用する。

(3) 基礎事実及び審査請求に至る経緯

当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。

  • イ 請求人等
    • (イ) 請求人は、コンサルティング業などを営む法人である。
       「E社」は、J国のd州に本店を置く株式会社であり、平成24年12月○日、その前身である旧「E社」(以下「旧E社」という。)とJ国に所在する法人「F社」が新設合併(以下「本件合併」という。)することにより設立された。
    • (ロ) 本件合併前(平成24年12月○日現在)における旧E社の株主は、F社及びJ国に所在する法人「G社」であり、その保有する株式の種類、保有株式数及び当該株式の当初の引受人による払込金額(以下、単に「払込金額」という。)は、別表1−1のとおりである。
       また、同日におけるF社の株主は、請求人、H及びG社であり、その保有する株式の種類、保有株式数及び払込金額は、別表1−2のとおりである。なお、請求人は、同日、F社に65,200J国ドルを払い込み、同表のとおりF社のクラスCの普通株式1株の割当てを受けたものである。
    • (ハ) 本件合併に係る契約においては、旧E社の株式を保有していたG社(別表1−1の順号2)に対し、別表1−3の順号3の2のE社株式及び同表の順号3の3のE社の株式が割り当てられた。
       また、本件合併に係る契約においては、F社の各株式を保有していた請求人、H及びG社(別表1−2の順号1ないし3)に対し、順次別表1−3の順号12及び3の1のE社の各株式がそれぞれ割り当てられた。
       上記のとおり割り当てられたE社の各株式の種類、保有株式数、議決権付保有株式数及び議決権割合は別表1−3のとおりであり、それらの内容は、後記ロの剰余金の配当が決議された平成25年7月30日まで変更がなかった。
       なお、平成24年12月○日に開催されたE社の取締役会においては、上記のとおり割り当てられたE社の各株式の払込済資本金について、別表1−3の「払込資本金」欄のとおりであることが決議された。
  • ロ E社の請求人に対する剰余金の配当
     E社は、平成25年7月30日(以下「本件配当日」という。)、請求人に対し、剰余金の配当金○○○○J国ドル(以下「本件配当金」という。)を支払うことを決議した。
     請求人は、同日付で、本件配当金について、本件配当日の為替レートで円換算した○○○○円で受取配当金勘定に計上し、また、本件配当金についてのJ国の源泉徴収に係る所得税額○○○○J国ドル(以下「本件源泉税額」という。)について、同様に円換算した○○○○円を租税公課勘定に計上し、本件源泉税額を除く本件配当金○○○○J国ドルについて、同様に円換算した○○○○円(以下「本件配当金益金不算入額」という。)を未収入金勘定に計上した。
  • ハ 審査請求に至る経緯
    • (イ) 請求人は、平成25年6月1日から平成26年5月31日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)の法人税及び平成25年6月1日から平成26年5月31日までの課税事業年度(以下「本件課税事業年度」という。)の復興特別法人税について、別表2の「確定申告」欄のとおり、それぞれ法定申告期限までに確定申告をした。
       その際、請求人は、本件事業年度の法人税の所得金額の計算において、E社が本件配当日において請求人の外国子会社に該当するとして、法人税法第23条の2第1項を適用し、本件配当金益金不算入額を、外国子会社から受ける剰余金の配当の益金不算入額として所得の金額から減算し、また、本件源泉税額の円換算額○○○○円を所得の金額に加算した。
    • (ロ) 原処分庁は、E社が本件配当日において請求人の外国子会社に該当しないことから、法人税法第23条の2第1項を適用することができず、本件配当金益金不算入額が益金の額に算入されるなどとして、平成29年6月27日付で、請求人に対し、別表2の「更正処分等」欄のとおり、本件事業年度の法人税及び本件課税事業年度の復興特別法人税の各更正処分(以下「本件各更正処分」という。)並びに過少申告加算税の各賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」という。)をした。
  • ニ 請求人は、平成29年9月19日、再調査審理庁に対し、原処分を不服として再調査の請求をしたところ、同庁が同年12月22日付でこれを棄却する決定をしたことから、平成30年1月19日、原処分を不服として、審査請求を行った。

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2 争点

E社は、本件配当日において、請求人の外国子会社に該当するか。

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3 争点についての当事者の主張

原処分庁 請求人
  以下のとおり、E社は、本件配当日において、請求人の外国子会社に該当しない。   以下のとおり、E社は、法人税法施行令第22条の4第1項第2号により、本件配当日において、請求人の外国子会社に該当する。
  • (1) 法人税法施行令第22条の4第1項第1号について
  • イ 次の(イ)及び(ロ)からすると、E社が、法人税法施行令第22条の4第1項第1号により外国子会社に該当するか否かについては、「株式の金額」や「出資の金額」を判断基準とすることはできず、「株式の数」を判断基準とすべきである。
    • (イ) E社の発行する株式は、1株の金額の定めがない無額面株式のみであるから、その「株式の金額」を観念することはできない。
    • (ロ) E社は、本件合併に際し、1F社の株主に対して無額面株式を割り当てるとともに、2旧E社の株主であったG社に対しても無額面株式を割り当てており、割り当てられた各株式に係る払込みの時期及び払込先(上記1についてはF社、上記2については旧E社)が異なっている。そのため、E社の株主について、本件合併前の出資金額を「株式の金額」や「出資の金額」と考えることはできない。
  • ロ また、次の(イ)及び(ロ)からすると、そもそも法人税法施行令第22条の4第1項第1号は、株式を発行している外国法人については「株式の数」を、株式を発行していない外国法人については「出資の金額」を、それぞれ外国子会社の判断基準としているものであり、株式を発行している外国法人について、「株式の金額」や「出資の金額」を外国子会社の判断基準とするものではないと解される。
    • (イ) 法人税法施行令第22条の4第1項の前提となる法人税法第23条の2第1項が規定する外国子会社からの配当金の益金不算入制度は、平成13年の商法改正により額面株式が廃止された後に創設された制度であるため、「株式の金額」を外国子会社の判断基準とすることは想定されていなかった。
    • (ロ) 法人税法施行令第22条の4第1項は、株式を発行している外国法人については株式数を、株式を発行していない外国法人については出資の額を、それぞれ外国子会社の判断基準とすることで、当該判断基準を明確にし、もって、租税法規の明確性を確保しようとしたものであると考えられる。
  • ハ そして、E社は株式を発行している外国法人であり、本件合併の日から本件配当日まで、E社の発行済株式の総数(10,301株)のうちに請求人が保有しているその株式の数(1株)の占める割合は10,301分の1であり、100分の25未満であるから、E社は、法人税法施行令第22条の4第1項第1号により請求人の外国子会社に該当するものではない。
  • (1) 次のイ及びロからすると、法人税法施行令第22条の4第1項第2号は、株式を発行している外国法人についても、当該外国法人への議決権のある株式に係る払込金額を「議決権のある株式の金額」又は「議決権のある出資の金額」として、外国子会社の判断基準とするものであると解される。
     そして、本件合併の日から本件配当日まで、E社の議決権のある株式は、請求人の保有する別表1−3の順号1の株式(払込資本金65,200J国ドル)並びにG社の保有する同表の順号3の1及び2の株式(払込資本金それぞれ1J国ドル、10J国ドル)であるから、議決権のある株式の総額(65,211J国ドル)のうちに請求人の保有する議決権のある株式の金額(65,200J国ドル)の占める割合は65,211分の65,200であり、割合は100分の25以上である。よって、E社は、法人税法施行令第22条の4第1項第2号により請求人の外国子会社に該当する。
  • イ 法人税法施行令第22条の4第1項第2号は、その文言からして、「議決権のある株式の数」、「議決権のある株式の金額」、「議決権のある出資の数」及び「議決権のある出資の金額」を外国子会社の判断基準とするものと解される。
  • ロ 法人税法施行令第22条の4第1項の前提となる法人税法第23条の2第1項が規定する外国子会社からの配当金の益金不算入制度の趣旨は、納税者が一定の関与をしている外国法人からの配当について、一般の外国法人からの配当よりも課税上有利に取り扱うというものである。このような趣旨からすると、「議決権のある株式の数」を判断基準として外国子会社とされた場合と実質的に同等の支配関係がある外国法人については、納税者間の平等の原則からして、外国子会社と扱われるべきである。したがって、外国法人への議決権のある株式に係る払込金額は、「議決権のある株式の金額」又は「議決権のある出資の金額」として、外国子会社の判断基準とすべきである。
  • (2) 法人税法施行令第22条の4第1項第2号について
  • イ 上記(1)のロによれば、法人税法施行令第22条の4第1項第2号は、株式を発行している外国法人については、「議決権のある株式の数」を外国子会社の判断基準としていると解される。
     そして、E社は株式を発行している外国法人であり、本件合併の日から本件配当日まで、E社の発行済株式の総数のうちの議決権のある株式の数(201株)のうちに請求人が保有している当該株式の数(1株)の占める割合は201分の1であり、100分の25未満であるから、E社は、法人税法施行令第22条の4第1項第2号により請求人の外国子会社に該当するものではない。
  • ロ 請求人の主張(2)について
     法人税法施行令第22条の4第1項第2号は、その文言からして、「議決権の数」を外国子会社該当性の判断基準としていないことが明らかである。
     また、租税特別措置法(平成29年法律第4号による改正前のもの。以下同じ。)第66条の6《内国法人に係る特定外国子会社等の課税対象金額等の益金算入》第1項第1号イの規定は、内国法人の特定外国子会社等に係る所得の課税の特例に関する規定であり、外国子会社からの配当金に関する益金不算入制度とは関係がなく、その目的も異なるから、外国子会社の判断に準用することはできない。
     よって、請求人の主張には理由がない。
  • (2) 以下のイ及びロからすると、法人税法施行令第22条の4第1項第2号は、少なくともJ国所在の外国法人については、「議決権の数」を外国会社の判断基準とするものと解される。
     そして、請求人の保有する別表1−3の順号1の株式は、E社の全議決権のうち26%の議決権を有するから、E社は、法人税法施行令第22条の4第1項第2号により外国子会社に該当する。
  • イ J国の会社法制では、1株当たりの払込額や議決権の数を異にする株式の発行が許容されているところ、法人税法第23条の2第1項が規定する外国子会社からの配当金の益金不算入制度の趣旨(上記(1)のロ)及び納税者間の平等の原則からすると、J国所在の外国法人については、「議決権の数」を外国子会社の判断基準とすべきである。
  • ロ 租税特別措置法第66条の6第1項第1号イは、「直接及び間接の外国関係会社株式等の保有割合」の判断基準として、議決権の数が1個でない株式を発行している外国法人については、「議決権の数」を用いる旨規定しているから、法人税法施行令第22条の4第1項第2号についても、同法第66条の6第1項第1号イを準用し又は類推適用し、「議決権の数」を外国子会社の判断基準とすべきである。
  • (3) 以下のイ及びロのとおり、原処分庁の主張には理由がない。
  • イ 法人税法施行令第22条の4第1項第2号は、株式を発行している外国法人と株式を発行していない外国法人を区別して規定していないから、原処分庁の主張する同号の解釈(原処分庁の主張(2)のイ)には理由がない。
  • ロ 本件合併において、旧E社及びF社のそれぞれの株主にはその出資内容に応じた新株が割り当てられたことからすると、E社の「株式の金額」又は「出資の金額」については、旧E社及びF社への払込金額と評価することが可能である。また、本件合併後のE社の取締役会においても、E社の複数種類の株式の払込済みの資本金額を確認している。よって、E社の「株式の金額」又は「出資の金額」を観念することができない旨の原処分庁の主張(原処分庁の主張(1)のイの(イ))には理由がない。

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4 当審判所の判断

(1) 法令解釈

  • イ 法人税法第23条の2第1項の趣旨について
     法人税法第23条の2第1項は、国際的に事業展開する内国法人が、企業グループとしての経営判断に基づき、外国子会社の利益について必要な時期に必要な金額を日本に戻すに当たっての税制上の障害を取り除き、効率的かつ合理的な企業グループ経営を行うための事業環境を整える目的で、外国子会社から受ける剰余金の配当の額について、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入しないこととしたものである。
  • ロ 法人税法施行令第22条の4第1項第1号について
    • (イ) 法人税法施行令第22条の4第1項第1号は、外国子会社の要件(判断基準)として、「当該外国法人の発行済株式又は出資(…)の総数又は総額(…)のうちに当該内国法人(…)が保有しているその株式又は出資の数又は金額の占める割合」が100分の25以上であることを規定している。
       ところで、一般に、法令上の文言が、「又は」という接続詞を用いて結合された文言を複数組み合わせて規定されている場合、全ての組合せを意味することもあれば、ある特定の組合せのみを意味することもあり、いずれであるかは解釈により決定される。例えば、国税通則法第23条《更正の請求》第2項第2号の「その申告、更正又は決定に係る課税標準等又は税額等」は、全ての組合せを意味するものであり、同法第115条《不服申立ての前置等》第2項の「再調査の請求又は審査請求について決定又は裁決をした者」は、「再調査の請求について決定をした者」と「審査請求について裁決をした者」という組合せのみを意味するものである。
       したがって、法人税法施行令第22条の4第1項第1号の規定する外国子会社の上記判断基準についても、「株式の数」、「出資の金額」、「株式の金額」及び「出資の数」のどの組合せを意味しているのか検討する必要がある。
    • (ロ) そこで検討すると、上記イのとおり、法人税法第23条の2第1項の制度趣旨は、内国法人が企業グループとしての経営判断に基づき、外国子会社の利益について必要な時期に必要な金額を日本に戻すに当たっての税制上の障害を取り除くことにあるから、同項の「外国子会社」とは、その利益を日本に戻す時期や金額について、当該内国法人が経営判断に基づき決定することができる外国法人であることを前提としていると解される。したがって、法人税法第23条の2第1項を前提とする法人税法施行令第22条の4第1項第1号の「外国子会社」に該当するか否かは、外国法人の経営判断への内国法人の支配力(影響力)をもって判断すべきである。
       この点、株式会社では、株主が原則として株式数に応じて議決権を有し、株主総会の決議が法令又は定款で定められた数以上の議決権をもって行われるから、外国法人が株式会社である場合には、当該外国法人の経営判断への支配力(影響力)を示すのは株式数である。
       そうすると、外国法人が株式会社である場合、「株式の数」は、まさに当該外国法人の経営判断への支配力(影響力)を示すものであり、外国子会社の判断基準として相当な組合せであるといえる。他方、外国法人が株式会社である場合、「株式の金額」、「出資の金額」及び「出資の数」は、当該外国法人の経営判断への支配力(影響力)を示すものとはいえないから、外国子会社の判断基準として不相当な組合せである。なお、「株式の金額」については、そもそもこれが「株式の券面額(額面金額)」、「株式の払込金額」等の何を意味するのかは不明であり、この点においても、外国子会社の判断基準として不相当な組合せであるということができる。
       したがって、外国法人が株式会社である場合、法人税法施行令第22条の4第1項第1号の規定する外国子会社の判断基準は、「株式の数」の組合せのみを意味すると解するのが相当である。
  • ハ 法人税法施行令第22条の4第1項第2号について
     法人税法施行令第22条の4第1項第2号は、外国子会社の要件として、「当該外国法人の発行済株式等のうちの議決権のある株式又は出資の数又は金額のうちに当該内国法人が保有している当該株式又は出資の数又は金額の占める割合」が100分の25以上であることを定めている。そして、上記ロで説示したとおり、外国法人が株式会社である場合、当該判断基準は、「議決権のある株式の数」の組合せのみを意味していると解するのが相当である。
  • ニ 小括
     以上によれば、外国法人が株式会社である場合、当該外国法人が外国子会社となるのは、1当該外国法人の「発行済株式の総数」のうちに当該内国法人が保有している「その株式の数」の占める割合(法人税法施行令第22条の4第1項第1号)又は2当該外国法人の発行済株式の総数のうちの「議決権のある株式の数」のうちに当該内国法人が保有している「当該株式の数」の占める割合(同項第2号)のいずれかが100分の25以上であるときであると解される。

(2) 検討

E社は株式会社であるから(上記1の(3)のイの(イ))、上記(1)のニによれば、E社が本件配当日において請求人の外国子会社に該当するか否かは、1E社の「発行済株式の総数」のうちに請求人が保有している「その株式の数」の占める割合又は2E社の発行済株式の総数のうちの「議決権のある株式の数」のうちに請求人が保有している「当該株式の数」の占める割合のいずれかが100分の25以上であるか否かによって判断すべきである。そして、上記1の(3)のイの(ハ)及び別表1−3によれば、本件配当日において、1E社の発行済株式の総数(10,301株)のうちに請求人が保有するその株式の数(1株)の占める割合は10,301分の1であり、また、2E社の発行済株式の総数のうちの議決権のある株式の数(201株)のうちに請求人が保有している当該株式の数(1株)の占める割合は201分の1であり、いずれも100分の25未満であると認められる。
 したがって、E社は、本件配当日において、請求人の外国子会社に該当しない。

(3) 請求人の主張について

  • イ 請求人は、法人税法施行令第22条の4第1項第2号が、その文言からして「議決権のある株式の数」、「議決権のある株式の金額」、「議決権のある出資の数」及び「議決権のある出資の金額」を外国子会社の判断基準とするものであることを前提に、同号は、外国法人への議決権のある株式に係る払込金額を「議決権のある株式の金額」又は「議決権のある出資の金額」として、外国子会社の判断基準とするものであると解される旨主張する。
     しかしながら、上記(1)のロの(イ)において法令上の文言が「又は」という接続詞を用いて結合された文言を複数組み合わせて規定されている場合の解釈について説示したとおり、法人税法施行令第22条の4第1項第2号の「議決権のある株式又は出資の数又は金額」も、全ての組合せを意味することもあれば、ある特定の組合せのみを意味することもあり、いずれであるかは組織形態などの点を考慮した解釈により決定されるものであって、当該文言自体からして当然に全ての組合せを意味するものではない。したがって、請求人の主張は、その前提を欠くものであり、採用することができない。
     また、請求人は、上記主張に関連して、要するに、外国法人への議決権のある株式に係る払込金額の総額が、「議決権のある株式の数」と実質的に同等に、外国法人の経営判断への支配力(影響力)を示すものであることを前提に、法人税法施行令第22条の4第1項第2号は、外国法人への議決権のある株式に係る払込金額を「議決権のある株式の金額」又は「議決権のある出資の金額」として、外国子会社の判断基準とするものであると解される旨主張する。
     しかしながら、株式1株に係る払込金額は、株式を引き受ける者の募集をする都度外国法人が定めるものであって、募集の都度異なり得るものであるから、株式に係る払込金額の総額は、議決権数と必ずしも比例せず、当該外国法人への支配力(影響力)を示すものではない。したがって、請求人の主張は、その前提を欠くものであって、採用することができない。
  • ロ 請求人は、J国の会社法制等に照らすと法人税法施行令第22条の4第1項第2号は、少なくともJ国所在の外国法人については、「議決権の数」を外国子会社の判断基準とするものと解される旨主張する。
     しかしながら、法人税法施行令第22条の4第1項第2号は、外国子会社の判断基準について「議決権のある株式又は出資の数又は金額」と規定しており、「議決権の数」を判断基準として規定していないことが明らかである。したがって、請求人の主張は、同号の明文の規定に反するものであり、採用することができない。

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5 原処分の適法性について

(1) 本件各更正処分の適法性について

上記4の(2)のとおり、E社は、本件配当日において、請求人の外国子会社に該当しないから、法人税法第23条の2第1項は適用されず、本件配当金益金不算入額は本件事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入すべきである。これに基づき計算した請求人の本件事業年度の法人税に係る所得金額及び納付すべき税額並びに本件課税事業年度の復興特別法人税に係る課税標準法人税額及び納付すべき税額は、いずれも別表2の「更正処分等」欄と同額と認められる。
 なお、本件各更正処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
 したがって、本件各更正処分はいずれも適法である。

(2) 本件各賦課決定処分の適法性について

上記(1)のとおり、本件各更正処分は適法であり、本件各更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が各更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法(平成28年法律第15号による改正前のもの)第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められない。これに基づき計算した本件事業年度の法人税及び本件課税事業年度の復興特別法人税に係る過少申告加算税の額は、いずれも別表2の「更正処分等」欄と同額と認められる。
 したがって、本件各賦課決定処分はいずれも適法である。

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6 結論

よって、審査請求は理由がないから、いずれも棄却することとする。

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