(令和元年7月5日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、相続により取得した貸家建付地に借地権を設定した対価として受領した権利金が分離課税の長期譲渡所得に該当するとした上で、相続財産に係る譲渡所得の課税の特例を適用して申告するに当たり、「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」は当該土地に係る相続税評価額の全額であるとして取得費の加算額を計算したところ、原処分庁が、当該加算額は当該土地に設定された借地権の価額に対応する部分に限られるとして更正処分等を行ったことから、請求人が、原処分の計算には誤りがあるなどとして、原処分の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 関係法令等

  • イ 国税通則法関係
    • (イ)  国税通則法(平成29年法律第4号による改正前のもの。以下「通則法」という。)第74条の2《当該職員の所得税等に関する調査に係る質問検査権》第1項は、国税局又は税務署の当該職員は、所得税に関する調査について必要があるときは、納税義務がある者又は納税義務があると認められる者等に質問し、その者の事業に関する帳簿書類その他の物件を検査し、又は当該物件の提示若しくは提出を求めることができる旨規定している。
    • (ロ)  通則法第7章の2(国税の調査)関係通達の制定について(平成24年9月12日付課総5−9ほかによる国税庁長官通達をいい、以下「調査手続通達」という。)の1−3《「当該職員」の意義》は、通則法第74条の2から第74条の6までの各条の規定により質問検査等を行うことができる「当該職員」とは、国税庁、国税局若しくは税務署又は税関の職員のうち、その調査を行う国税に関する事務に従事している者をいう旨定めている。
  • ロ 行政手続法第14条《不利益処分の理由の提示》第1項は、行政庁は、不利益処分をする場合には、その名宛人に対し、同時に、当該不利益処分の理由を示さなければならない旨規定している。
  • ハ 租税特別措置法関係
    • (イ) 租税特別措置法(平成28年法律第15号による改正前のもの。以下「措置法」という。)第39条《相続財産に係る譲渡所得の課税の特例》(以下「本件特例」という。)第1項は、相続又は遺贈による財産の取得をした個人で当該相続又は遺贈につき相続税法の規定による相続税額があるものが、当該相続の開始があつた日の翌日から当該相続に係る相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年を経過する日までの間に当該相続税額に係る課税価格の計算の基礎に算入された資産の譲渡(措置法第31条《長期譲渡所得の課税の特例》第1項に規定する譲渡所得の基因となる不動産等の貸付けを含む。)をした場合における譲渡所得に係る所得税法第33条《譲渡所得》第3項の規定の適用については、同項に規定する取得費は、当該取得費に相当する金額に当該相続税額のうち当該譲渡をした資産に対応する部分として政令で定めるところにより計算した金額を加算した金額とする旨規定している。
    • (ロ) 租税特別措置法施行令(以下「措置法施行令」という。)第25条の16《相続財産に係る譲渡所得の課税の特例》第1項は、措置法第39条第1項に規定する譲渡をした資産に対応する部分として政令で定めるところにより計算した金額(以下「取得費加算額」という。)は、次のAに掲げる相続税額にBに掲げる割合を乗じて計算した金額とする旨規定している。
      • A 当該譲渡をした資産の取得の基因となった相続又は遺贈に係る当該取得をした者の相続税額で、当該譲渡の日の属する年分の所得税の納税義務の成立する時において確定しているもの
      • B Aに掲げる相続税額に係るAに規定する者についての課税価格(相続税法第13条《債務控除》の規定の適用がある場合には同条の規定の適用がないものとした場合の課税価格とする。)のうちに当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額の占める割合
    • (ハ) 措置法施行令第25条の16第2項は、上記(ロ)のAに掲げる相続税額は、同Aに規定する納税義務の成立する時後において、当該相続税額に係る相続税につき修正申告書の提出又は更正があった場合には、同Aの規定にかかわらず、その申告又は更正後の相続税額とする旨規定している。

(3) 基礎事実

当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。

  • イ N2(以下「本件被相続人」という。)は、平成27年6月○日(以下「本件相続開始日」という。)に死亡し、その相続(以下「本件相続」という。)が開始した。
     本件相続に係る共同相続人は、いずれも本件被相続人の養子である請求人及びN3の2名(以下、この2名を「請求人ら」という。)である。
  • ロ 請求人らは、平成27年11月27日付で成立した本件相続に係る遺産分割協議により、本件被相続人が本件相続開始日に所有していた別表1−1の各土地(以下「本件各相続土地」という。)及び別表1−2の各建物(以下「本件各相続建物」という。)を各2分の1ずつの割合により取得した。
  • ハ 本件各相続土地は、平成27年12月4日、別表2−1のとおり分筆され、平成28年9月26日、別表2−2のとおり合筆された。
  • ニ 請求人らと、Q社(代表取締役は請求人。)は、平成27年12月11日、下記各契約を締結した。
    • (イ) 請求人らが、Q社に対し、2015年12月12日から2035年12月31日の間、建物所有目的で、別表2−1の順号1−1ないし順号1−5、順号2−4、順号3、順号5−1、順号5−2、順号8−1及び順号8−2の土地の一部(地積509.13u)を賃貸する旨の契約(以下「本件借地権設定契約1」といい、本件借地権設定契約1に係る契約書を「本件借地権設定契約書1」という。)。
      • A 月額賃料(地代) 次の計算式により算出される金額とし、毎年変動する。
      • B 当該年度の公租公課(固定資産税+都市計画税)×1.1÷12
      • C Q社は、権利金 ○○○○円を締結時に請求人らに支払う。
    • (ロ) 請求人らが、Q社に対し、2015年12月12日から2035年12月31日までの間、建物所有目的で、別表2−1の順号7の土地(地積179.00u)を賃貸する旨の契約(以下「本件借地権設定契約2」といい、本件借地権設定契約2に係る契約書を「本件借地権設定契約書2」といい、本件借地権設定契約1及び同2を併せて「本件各借地権設定契約」という。)。
      • A 月額賃料(地代) 次の計算式により算出される金額とし、毎年変動する。
      • B 当該年度の公租公課(固定資産税+都市計画税)×1.1÷12
      • C Q社は、権利金 ○○○○円を締結時に請求人らに支払う。
    • (ハ) 別表1−2の順号1の建物(以下「本件建物1」という。)の所有を目的として本件借地権設定契約1を締結することを条件として、請求人らが、Q社に対し、本件建物1を○○○○円で譲渡する契約(以下「本件建物売買契約1」という。)。
    • (ニ) 別表1−2の順号4の建物(以下「本件建物2」という。)の所有を目的として本件借地権設定契約2を締結することを条件として、請求人らが、Q社に対し、本件建物2を○○○○円で譲渡する契約(以下「本件建物売買契約2」といい、本件建物売買契約1と併せて「本件各建物売買契約」という。)。
  • ホ 上記ニの(イ)及び(ロ)の各土地は、本件相続開始日においていずれも借地権割合が○○%の地域にある。

(4) 本件相続に係る相続税(以下「本件相続税」という。)の課税の経緯

  • イ 請求人は、平成27年12月16日、別表3−1の「当初申告」欄のとおり記載した本件相続税の申告書を、N3と共同で、R税務署長に提出した。
  • ロ 請求人は、平成28年3月10日、別表3−1の「訂正申告」欄のとおり記載した本件相続税の訂正申告書(以下「本件相続税訂正申告書」という。)を、N3と共同で、R税務署長に提出した。
     その際、請求人は、本件建物1の敷地及び本件建物2の敷地は別表3−2の「地番」欄及び「地積」欄のとおりであるとし、同表の「評価額」欄のとおり評価して、申告した。
  • ハ S国税局所属の調査担当職員(以下「本件相続税調査担当職員」という。)は、平成29年6月28日、T1税理士に対し、事前通知を行った上、平成29年7月24日、本件相続税の実地の調査(以下「本件相続税調査」という。)を開始した。
  • ニ R税務署長は、本件相続税調査に基づき、平成29年12月26日付で、請求人に対し、別表3−1の「更正処分」欄のとおり減額更正(以下「本件相続税更正処分」という。)をした。
     その際、R税務署長は、本件建物1の敷地及び本件建物2の敷地は、別表3−3の「地番」欄及び「地積」欄のとおりであるとして、同表の「評価額」欄のとおり評価した。

(5) 本審査請求に至る経緯

  • イ 請求人は、平成28年3月14日、請求人の平成27年分の所得税及び復興特別所得税(以下「本件所得税等」という。)につき、別表4−1の「確定申告」欄のとおり記載した本件所得税等の確定申告書(以下、当該確定申告書に係る申告を「本件確定申告」という。)を原処分庁に提出した。
     その際、請求人は、本件各借地権設定契約に係る各権利金は譲渡所得に該当するとして、本件建物1及び本件建物2の譲渡と併せて、本件所得税等に係る分離長期譲渡所得の金額を別表4−2の「確定申告」欄のとおり計算し、本件各借地権設定契約に係る分離長期譲渡所得の金額(以下「本件譲渡所得金額」という。)の計算上の取得費加算額を別表4−3の「確定申告」欄のとおり計算するとともに、各物件ごとの「譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)」の「お売りになった理由」欄に「納税資金のため」と記載した。
  • ロ 原処分庁所属の調査担当職員(以下「本件所得税等調査担当職員」といい、本件相続税調査担当職員と併せて「本件各調査担当職員」という。)は、平成29年7月21日、T2税理士に対し、事前通知を行った上、平成29年8月30日、請求人による本件確定申告に関する実地の調査(以下「本件所得税等調査」といい、本件相続税調査と併せて「本件各税務調査」という。)を開始した。
  • ハ 原処分庁は、本件所得税等調査に基づき、平成30年5月29日付で、別表4−1の「更正処分」欄のとおりの更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」という。)をした。
     その際、原処分庁は、本件所得税等に係る分離長期譲渡所得の金額を別表4−2の「更正処分」欄のとおり計算し、本件譲渡所得金額の計算上の取得費加算額を別表4−3の「更正処分」欄のとおり計算した。
  • ニ 請求人は、平成30年8月7日、本件更正処分及び本件賦課決定処分に不服があるとして、審査請求をした。
  • ホ 原処分庁は、本審査請求において、1本件所得税等は別表4−1の「答弁書主張額」欄、2本件所得税等に係る分離長期譲渡所得の金額は別表4−2の「答弁書主張額」欄及び3本件譲渡所得金額の計算上の取得費加算額は別表4−3の「答弁書主張額」欄のとおりとなる旨並びに4本件更正処分における請求人が納付すべき本件所得税等の額は別表4−1の「答弁書主張額」欄の額の範囲内であることから原処分は適法である旨主張している。
     また、本件各借地権設定契約により授受された権利金が、所得税法施行令(平成29年政令第40号による改正前のもの。)第79条《資産の譲渡とみなされる行為》第1項の規定により、所得税法第33条に規定する譲渡所得の課税の対象となることについて、当事者間に争いはない。

2 争点

(1) 本件各税務調査の手続に原処分を取り消すべき違法事由があるか否か(争点1)。

(2) 本件更正処分の理由の提示に不備があるか否か。また、原処分庁の理由の差替えは許されるか否か(争点2)。

(3) 本件譲渡所得金額の取得費加算額の計算上「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」はいくらか(争点3)。

3 争点についての主張

(1) 争点1(本件各税務調査の手続に原処分を取り消すべき違法事由があるか否か。)について

原処分庁 請求人
イ 本件相続税調査担当職員が右欄イに記載の説明をした事実はない。
 仮に、そのような説明を行ったとしても、それは、本件相続税調査の結果に連動して本件所得税等の修正申告が必要となる可能性がある旨の当然のことを説明したまでで、税務職員の合理的な選択の範囲を逸脱するものではなく、国家公務員法第100条《秘密を守る義務》にいう「秘密」にも該当しないので、守秘義務に違反するものではない。
イ 本件相続税調査担当職員は、平成29年11月16日、本件相続税については税務代理権限があるが本件所得税等については税務代理権限がない税理士の立会いのもと、請求人に対し、本件所得税等について修正申告が必要であること並びにその理由及び具体的金額について説明した。
 これは、通則法第126条及び国家公務員法第100条第1項に規定する守秘義務違反である。
ロ 本件相続税調査担当職員は、譲渡所得の調査事務についても、国税庁事務分掌規則第296条(平成13年国税庁訓令第1号)第1号及び第3号を介して、調査手続通達の1−3に定める「その調査を行う国税に関する事務に従事している者」に該当し、本件所得税等の質問検査権を有する。 ロ 本件相続税調査担当職員は、調査手続通達の1−3に定める「その調査を行う国税に関する事務に従事している者」に該当せず、通則法第74条の2の定める本件所得税等の質問検査権を有していない。

(2) 争点2(本件更正処分の理由の提示に不備があるか否か。また、原処分庁の理由の差替えは許されるか否か。)について

原処分庁 請求人
イ 本件更正処分に係る更正通知書には、本件特例の対象となる資産として上記1の(3)のニの(イ)及び(ロ)で設定した各借地権を挙げた上で、請求人の平成27年分の分離長期譲渡所得の金額の計算上、取得費加算額につき、根拠法令を挙げながら具体的な計算過程を示しており、原処分庁の判断の理由、判断過程が逐一検証し得る程度に具体的に記載されている。 イ 本件更正処分に係る更正通知書に記載された処分の理由には、上記1の(3)のニの(イ)及び(ロ)の各土地の相続税評価額に○○%を乗じた金額を基に取得費加算額を計算した旨のみ記載されており、上記1の(3)のニの(イ)及び(ロ)の各土地の相続税評価額に○○%を乗じた金額を基として計算する理由についての記載がなく、本件更正処分の理由の提示に不備がある。
ロ 原処分庁は、答弁書において、本件特例の適用要件である具体的事実については従前の主張を何ら変更しておらず、措置法施行令第25条の16第1項第2号所定の「譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」の計算方法という法的評価に関する主張を変更したにすぎないから、許されない理由の差替えには当たらない。 ロ 原処分庁は、本件譲渡所得金額の取得費加算額の計算上「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」について、更正通知書では貸家建付地評価額に○○%を乗じた価額としていたのに対し、答弁書では貸家建付借地権評価額としている。新たな事実関係が生じていない状況におけるこのような理由の変更は、更正通知書に記載された理由に誤りがあったことの表れであり、本件更正処分の理由の提示に不備がある。

(3) 争点3(本件譲渡所得金額の取得費加算額の計算上「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」はいくらか。)について

原処分庁 請求人
上記1の(3)のニの(イ)及び(ロ)の各土地は、いずれも、上記1の(3)のニの(イ)及び(ロ)で設定した各借地権の設定契約の前後を通じて、賃貸事業の用に供されている上記1の(3)のニの(イ)及び(ロ)の各土地上に存する建物の敷地の用に供されており、本件相続税更正処分においては、建物賃借権による制約を反映した貸家建付地として評価されている。
 このことからすれば、上記1の(3)のニの(イ)及び(ロ)で設定した各借地権の設定契約により所得税法上譲渡したものとみなされる各借地権のうち、かかる制約部分を除いた部分の金額が、「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」となるのであるから、その価額は、貸家建付借地権評価額となる。
請求人は、上記1の(3)のニの(イ)及び(ロ)の各土地に借地権を設定したのであるから、措置法施行令第25条の16第1項第2号所定の「譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」は、上記1の(3)のニの(イ)及び(ロ)の各土地の自用地としての価額に借地権割合の○○%を乗じた金額となるべきである。もっとも、そうすると、上記1の(3)のニの(イ)及び(ロ)の各土地の相続税評価額(貸家建付地評価額)を上回ることとなることから、結局、「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」は、上記1の(3)のニの(イ)及び(ロ)の各土地の相続税評価額(貸家建付地評価額)となる。

4 当審判所の判断

(1) 争点1(本件各税務調査の手続に原処分を取り消すべき違法事由があるか否か。)について

  • イ 法令解釈
     通則法第74条の2第1項は、税務署の調査権限を有する職員が、当該調査の目的、調査すべき事項、申請、申告の体裁内容、帳簿等の記入保存状況、相手方の事業の形態等諸般の具体的状況に鑑み、客観的な必要性があると判断する場合には、職権調査の一方法として、同項各号規定の者に対し質問し、又はその事業に関する帳簿、書類その他当該調査事項に関連性を有する物件の検査を行う権限を認めた趣旨であって、この場合の質問検査等の範囲、程度、時期、場所等実定法上特段の定めのない実施の細目については、質問検査等の必要があり、これと相手方の私的利益との衡量において社会通念上相当な限度にとどまる限り、権限のある税務職員の合理的な選択に委ねられているものと解される。
  • ロ 認定事実
    • (イ) 本件各税務調査に関しては、いずれも調査経過記録書が存在するところ(以下、本件相続税調査に関する調査経過記録書と本件所得税等調査に関する調査経過記録書を併せて「本件各調査経過記録書」という。)、本件各調査経過記録書上の各記載は、臨場場所の変更や事前通知した調査年分等に関する記載については、本件各税務調査に係る調査手続チェックシートに記載された内容に、また、税務代理人に関する記載については、請求人の確定申告書の「税理士」欄に記載された内容に一致し、物件の留め置き及び返却状況も一致するなど、他の客観証拠と整合するものである上、本件各調査担当職員と請求人及び税理士とのやり取りや、請求人及び税理士の発言に関する記載は具体的かつ詳細で臨場感に富んでおり、内容自体や内容相互に不自然な点も見当たらない。また、本件各調査経過記録書は、当該調査の当日に作成され、本件各調査担当職員の上司に報告されるなどしていることからすると、本件各調査経過記録書には高い信用性が認められ、同書上に記載がある事項については、請求人に対する調査の状況を正確に記録したものであると認めるのが相当である。
       他方、請求人提出の「平成29年11月16日作成メモ」と題する書面、「国税との話について」と題する書面、Q社取締役であるN4作成に係る「平成29年11月16日の状況報告書」(以下、これら請求人提出に係る3書面を「請求人提出書面」という。)は、本件各調査経過記録書の内容と矛盾する点は見当たらず、信用性は高く、とりわけ「平成29年11月16日作成メモ」が、同日の調査時に請求人本人がその場で書き取ったものであることからすると、その信用性は極めて高く、本件各調査経過記録書と相互に信用性を高め合っている。
    • (ロ) そうすると、本件各調査経過記録書及び請求人提出書面上の記載に基づき、以下の事実が認められる。
      • A 本件相続税調査担当職員は、平成29年6月28日、税理士法人Uへ電話し、本件相続税に係る請求人からの税務代理の委嘱の継続を確認した上で、本件相続税調査を行う旨伝え、日程調整を依頼した。
      • B 本件相続税調査担当職員は、平成29年7月12日、T1税理士とともに相続税の関与税理士であったT3税理士から、来る実地の調査において、被相続人の不動産管理について詳しい第三者の立会いを許可してほしい旨の申出を受けたが、守秘義務の関係から立会いは不可である旨、また、必要に応じて当日話を聞く可能性もあるので、連絡を取れるようにしてもらいたい旨伝えた。
      • C 本件所得税等調査担当職員は、T2税理士へ電話し、本件所得税等に係る請求人からの税務代理の委嘱の継続を確認した上で、平成29年7月21日、1実地の調査を実施する旨、2調査対象税目及び3調査対象期間を通知し、日程調整を行った。
      • D 本件相続税調査担当職員が、平成29年7月24日、Q社において、請求人ら及びT1税理士らと面接し、聴取調査及び現物確認調査を実施した。その際、請求人から、被相続人の関与税理士であったT4税理士が、被相続人名義の預金口座から出金した現金を不正に経費としていた節があるため、T4税理士に対する訴訟準備を進めている旨の説明があり、資料提供もあった。
      • E 本件相続税調査担当職員は、平成29年7月25日、T3税理士に対し、本件所得税等調査の参考資料として、前日の臨宅調査時に収集した資料をR税務署と共有することについて、請求人及びT2税理士の了承を取り付けるように依頼するとともに、T4税理士に対する訴訟の準備を進めていたT5弁護士に面接した。なお、同弁護士とは、物件の留め置き・返却や同弁護士からの問合せ等により、調査終了時まで数回にわたり接触があった。
      • F 本件所得税等調査担当職員は、平成29年8月30日、Q社において、請求人ら及びT2税理士と面接し、聴取調査及び現物確認調査を実施した。
      • G 本件相続税調査担当職員は、平成29年11月10日、本件所得税等調査担当職員に対し、相続税は評価減額で終了見込みであると伝えるとともに、T1税理士に対し、留め置いた物件の返却と現段階での調査状況について説明したいとして、請求人らとの日程調整を依頼した。
      • H 本件相続税調査担当職員は、平成29年11月16日、Q社において、請求人ら及びT1税理士に対し、法令上の調査結果の内容説明ではないと述べた上で、現段階では評価誤りのみとなることを説明するとともに、平成27年分の所得税(譲渡所得)等について、措置法第39条を適用しているが、計算誤りがあることから、譲渡所得の取得費に加算される相続税額について差額が発生し、所得税が増加するが、詳細については本件所得税等調査担当職員から説明すると伝えた。
      • I 本件所得税等調査担当職員は、平成29年12月1日、T2税理士に対し、法令上の調査結果の説明ではないと断った上で、請求人らとの日程調整を依頼した。
      • J 本件所得税等調査担当職員は、平成29年12月5日、本件相続税の更正処分案に基づき、譲渡所得の取得費に加算される相続税額を計算した。
      • K 本件所得税等調査担当職員は、平成29年12月6日、Q社において、請求人ら及びT2税理士に対し、法令上の調査結果の説明ではないと断った上で、本件相続税の減額更正に基づき、相続税額が○○○○円に減額になること、e町○−○の相続税評価額(借地権)が727,550,428円、e町○−○ほかの相続税評価額(借地権)が1,878,440,341円になることから、譲渡所得の取得費に加算される相続税額が139,043,313円減少する旨説明した。
      • L 本件相続税調査担当職員は、平成29年12月8日、S国税局において、T1税理士に対し、法令上の調査結果の内容説明であると述べた上で、調査額や還付税額、R税務署から減額更正の通知書が送付される旨を説明し、請求人への説明を依頼した。
      • M 本件所得税等調査担当職員は、平成30年1月31日、Q社において、請求人ら及びT2税理士に対し、法令上の調査結果の内容説明を行った。
  • ハ 検討(当てはめ及び請求人の主張について)
    • (イ) まず、本件相続税調査担当職員は、国税庁事務分掌規則第296条(平成13年国税庁訓令第1号)第1号及び第3号の定めにより、譲渡所得の調査事務についても、調査手続通達の1−3に定める「その調査を行う国税に関する事務に従事している者」に該当し、本件所得税等に関する質問検査権を有する。
    • (ロ) 次に、本件の場合、相続税と所得税の二重課税の防止等のためにも、本件各税務調査が連携して行われたことは適正かつ合理的であるところ、上記1の(4)のハ、同(5)のロ及び上記(1)のロの(ロ)のA、C、D、F、H及びKないしMのとおり、事前通知が、本件相続税調査は平成29年6月28日、本件所得税等調査は同年7月21日、実地の調査着手が、本件相続税調査は同月24日、本件所得税等調査は同年8月30日、問題点の指摘が、本件相続税調査は同年11月16日、本件所得税等調査は同年12月6日、法令上の調査結果説明が、本件相続税調査は同月8日、本件所得税等調査は平成30年1月31日と並行して行われていることからも、請求人及びT2税理士において、本件各税務調査が連携して行われていることを承知していたものと認められ、上記4の(1)のロの(ロ)のEのとおり、請求人及びT2税理士とも、本件各税務調査相互に資料提供されることについても了解していたことがうかがわれる。
       また、上記1の(5)のイのとおり、請求人自身が本件所得税等の確定申告書に添付した各物件ごとの「譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)」の「お売りになった理由」欄に「納税資金のため」と記載していることからも、請求人が納税資金の捻出について気にかけていたことが認識できる状況の中で、本件各借地権設定契約の存在を知り得た相続税関与税理士立会いの下、相続税額の変動に伴い譲渡所得税額が必然的に変動するという当然の事柄について、法令の規定からおのずと算定することができるその具体的な金額を説明したとしても、税理士が法律上守秘義務を負っていることからすると、T1税理士から当該説明の内容が現実に第三者に流布されるなどして請求人の権利利益が侵害される可能性を直ちに想定し難い。現に、上記4の(1)のロの(ロ)のBのとおり、本件相続税調査担当職員は、税理士資格がなく法律上守秘義務を負わない第三者の立会いは認めていない。
       さらに、上記4の(1)のロの(ロ)のDのとおり、請求人が一連の本件相続税調査を通じて不信感をあらわにしていたのはT4税理士であって、T1税理士ではなかった。
       以上の事実を総合すれば、本件相続税調査担当職員が、平成29年11月16日の調査の際、T1税理士立会いの下、請求人に対し、詳細については本件所得税等調査担当職員から説明すると断った上で、譲渡所得の取得費加算額について言及したことは、請求人の私的利益との衡量において社会通念上相当な限度にとどまるものと認められる。
  • ニ 小括
     以上のとおり、本件相続税調査担当職員は、本件所得税等の質問検査権を有している上、本件所得税等の税務代理権限がない税理士の立会いの下で、請求人に対し、本件所得税等について修正申告が必要な理由及び具体的金額等を説明した行為が、通則法第126条及び国家公務員法第100条第1項に規定する守秘義務違反に当たることもないから、本件各税務調査の手続に原処分を取り消すべき違法事由は認められず、これがあるとする請求人の主張は採用できない。

(2) 争点2(本件更正処分の理由の提示に不備があるか否か。また、原処分庁の理由の差替えは許されるか否か。)について

  • イ 法令解釈
     行政手続法第14条第1項本文が、不利益処分をする場合に同時にその理由を名宛人に示さなければならないとしているのは、名宛人に直接に義務を課し又はその権利を制限するという不利益処分の性質に鑑み、行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与えるという趣旨に出たものと解されることから、当該処分の理由が、上記の趣旨を充足する程度に具体的に明示するものであれば、同項本文の要求する理由の提示として不備はないものと解するのが相当である。
     また、理由提示の上記趣旨からすれば、原処分庁が更正通知書に記載した理由と異なる理由を審査請求において差し替えて提出することは、これを認めたのでは、理由提示制度を全く無意義ならしめるような場合、又は、これを認めることが納税者の正当な利益を害するような特段の事情がある場合に許されないものと解するのが相当である。
  • ロ 当てはめ
     本件更正処分に係る更正通知書(以下「本件通知書」という。)には、別紙2のとおり、本件更正処分の理由として、1本件借地権設定契約1により借地権が設定された土地は別表3−3の本件建物1の敷地に係る「地番」欄及び「地積」欄に記載の土地(以下「本件土地1」といい、本件借地権設定契約1により本件土地1に設定された借地権を「本件借地権1」という。)であり、本件借地権設定契約2により借地権が設定された土地は同表の本件建物2の敷地に係る「地番」欄及び「地積」欄に記載の土地(以下「本件土地2」といい、本件借地権設定契約2により本件土地2に設定された借地権を「本件借地権2」という。また、本件土地1及び本件土地2を「本件各土地」といい、本件借地権1及び本件借地権2を「本件各借地権」という。)である、2本件相続税更正処分により本件相続税に係る本件各土地の評価額並びに課税価格及び相続税額に異動が生ずる、3本件譲渡所得金額の計算上の取得費加算額の計算の基礎となる本件各土地の相続税評価額は、本件各土地の本件相続税更正処分における評価額に100分の○○を乗じた金額となるなどとする旨が記載されている。
     上記の本件通知書の記載内容からすれば、本件譲渡所得金額の計算において、本件各借地権の相続税評価額を土地全体の相続税評価額の100分の○○の割合に相当する金額であるとした上、取得費加算額の算定を行っていることが分かるから、行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与えるという行政手続法第14条第1項本文の趣旨に照らし、同項本文の要求する理由の提示として欠けるものではないというべきであり、本件通知書の理由の提示に不備はない。
     また、原処分庁は、本審査請求において、本件特例の適用要件である具体的事実については従前の主張を変更しておらず、措置法施行令第25条の16第1項第2号所定の「譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」の計算方法という法的評価に関する主張を変更したにすぎないから、原処分庁の当該理由の差替えは、これを認めたのでは理由提示制度を全く無意義ならしめるような場合、又は、これを認めることが納税者の正当な利益を害するような特段の事情がある場合とも認められない。
  • ハ 請求人の主張について
    • (イ)  請求人は、上記3の(2)の「請求人」欄のイのとおり、本件更正処分の理由には、本件各土地の相続税評価額に○○%を乗じた金額を基として計算する理由についての記載がなく、本件更正処分には、理由の提示に不備がある旨主張する。
       しかしながら、本件更正処分の理由の提示については、上記ロのとおり、行政手続法第14条第1項本文の要求する理由の提示として欠けるものではないから、請求人の主張は採用できない。
    • (ロ) また、請求人は、上記3の(2)の「請求人」欄のロのとおり、原処分庁が、取得費加算額の計算に関し、新たな事実関係が生じていないにもかかわらず、本件更正処分で貸家建付地としての評価額に○○%を乗じた価額としていたのを答弁書では貸家建付借地権評価額と変更したということは、本件通知書に記載された理由に誤りがあったことの表れであり、理由の提示に不備がある旨主張する。
       しかしながら、本件更正処分の理由の提示それ自体として不備がないこと、及び本件における理由の差替えは本件各借地権の取得費加算額の計算における評価を修正するものにすぎず、請求人に不利益を与えるものではないことについては上記ロのとおりであって、不備の認められない理由の提示について、その後理由が差し替えられたからといって、元々の理由の提示が不備のあるものとなるわけではないから、請求人の主張は採用することができない。

(3) 争点3(本件譲渡所得金額の取得費加算額の計算上「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」はいくらか。)について

  • イ 法令解釈
    • (イ) 本件特例は、一定の要件に該当する場合に、例外的な措置として、相続税を取得費として加算することを認めるものであるところ、これは、相続人が相続税の納税のため相続財産を処分しなければならない場合、その財産の処分に際して、その処分をした者に対し、被相続人の所有期間に生じたキャピタルゲインを含めて所得税を課税する(被相続人の取得価額に基づいて譲渡所得を計算する)ことから、当該納税者の負担感が強くなるという問題に対処するため、政策的な見地から、相続財産の処分をした場合、譲渡所得の計算上、譲渡した相続財産に対応する部分の相続税額を取得費に準じて加算することを認めた趣旨のものと解される。
       かかる本件特例の趣旨からすれば、本件特例は、譲渡した相続財産に対応する部分についてのみ取得費加算を許容したものと解すべきであり、その部分を超えてまで加算を認めるものではない。
    • (ロ) また、本件特例には、相続税課税時には1つの資産として評価された土地について、譲渡所得課税の対象となる当該土地の貸付け(借地権の設定)が行われた場合の取得費加算額の具体的な計算方法についてまでは明記されていないものの、その本文に「譲渡所得の基因となる不動産の貸付けを含む」と記載されているとおり(上記1の(2)のハの(イ))、譲渡所得課税の対象となる土地が貸し付けられた場合も同条の定める算定方法により取得費加算額を計算することを前提としていることは明らかである。
       そうすると、本件のように、相続税課税時には1つの資産として評価された土地について借地権が設定された場合、その取得費加算額は、譲渡所得課税の対象とされた当該借地権が、相続財産の課税価格の計算の基礎に算入された当該土地のうちに占める割合を考慮して算定することが相当である。
  • ロ 認定事実
     請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
    • (イ) 措置法施行令第25条の16第1項にいう「当該譲渡をした資産」は、本件各借地権である。
    • (ロ) 本件各借地権が本件各土地の全体に占める割合は○○%である。
  • ハ 検討
    • (イ) 本件においては、上記ロの(ロ)のとおり、本件各借地権が本件各土地の全体に占める割合は○○%であることに加え、上記1の(3)のホのとおり、本件各土地周辺地域の借地権割合も○○%であることも併せ考慮すれば、本件各借地権設定契約により譲渡したものとみなされる本件各借地権の権利は、本件各土地の権利の○○%相当分に当たるものと認められる。
        ところで、本件相続税更正処分においては、相続税の課税価格の計算の基礎に算入された本件各土地の評価額は、自用地としての評価額ではなく、貸家建付地として評価された金額であるところ、これは相続税の課税価格の計算上、本件各土地の評価額を貸家建付地として減額しているだけであって、本件各土地そのものであることには変わりはない。
       したがって、措置法施行令第25条の16第1項に規定される「譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」として本件各借地権が本件各土地のうちに占める価額は、本件各土地が相続税の課税価格の計算の基礎に算入された価額すなわち貸家建付地評価額に本件各借地権の占める割合である○○%を乗じた価額とするのが相当である。
    • (ロ) そうすると、本件各借地権が本件各土地の相続税課税価格のうちに占める価額は、別表5−1の「1」欄のとおり、本件借地権1について1,878,440,342円、本件借地権2について727,550,428円となり、これを前提に算定した取得費加算額は、同表「4」欄のとおりとなる。
  • ニ 請求人の主張について
     請求人は、本件各土地に借地権を設定したのであるから、措置法施行令第25条の16第1項第2号所定の「譲渡をした資産」は、本件各土地の自用地としての価額に借地権割合の○○%を乗じた金額となるのであって、当該金額は、本件各土地の相続税評価額(貸家建付地評価額)を上回ることとなるから、結局、「譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」は、本件各土地の相続税評価額(貸家建付地評価額)の全額となる旨主張する。
     しかしながら、措置法施行令第25条の16第1項が定める「当該譲渡した資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」とは、上記ハの(イ)のとおり、本件各土地の相続税評価額(貸家建付地評価額)に本件各土地のうち譲渡した資産の割合を乗じた価額となるのであって、譲渡された本件各借地権に対応する部分を超えて、つまり、譲渡していない所有権(底地)に係る部分についてまで加算を認めることはできないのであるから、請求人の主張は採用できない。
  • ホ 原処分庁の主張について
     原処分庁は、本件各借地権設定契約により所得税法上譲渡したものとみなされる各借地権は、建物賃借権による制約を除いた部分の金額が、「譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」となるのであるから、その価額は、貸家建付借地権の評価額となる旨を主張している。
     しかしながら、相続税の課税価格の計算の基礎に算入された評価額を前提とせず、別個独立に譲渡された資産の評価を行うことは法令の規定上適正ではない。
     したがって、原処分庁の主張も採用できない。

(4) 本件更正処分の適法性について

上記(3)のとおり、請求人の本件譲渡所得金額の計算上の取得費加算額を計算すると、別表5−1の「4」欄の金額となり、本件更正処分の金額(別表4−3の「8」欄参照)と同額となる。
 また、本件各借地権設定契約及び本件各建物売買契約に係る各契約書(以下「本件各契約書」という。)について、本件各契約書に貼付された印紙代(本件借地権設定契約書1につき○○○○円、本件借地権設定契約書2につき○○○○円、本件建物売買契約1に係る契約書につき○○○○円、本件建物売買契約2につき○○○○円)が生じていることは本審査請求において明らかであり、同金額は、本件各借地権設定契約及び本件各建物売買契約に係る分離長期譲渡所得の金額の計算上、譲渡費用として控除すべきである。
 以上に基づいて、請求人の本件所得税等に係る分離長期譲渡所得の金額を計算すると、○○○○円(別表5−2の「5」欄参照)となり、これに基づき計算した請求人の本件所得税等の納付すべき税額は○○○○円(別表5−3の「審判所認定額B」欄の「M」欄参照)で原処分の金額○○○○円(同表の「原処分の額A」欄の「M」欄参照)を下回るから、本件更正処分は、その一部を別紙1の「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。
 なお、本件更正処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

(5) 本件賦課決定処分の適法性について

上記(4)のとおり、本件更正処分はその一部を取り消すべきであるから、過少申告加算税の賦課決定処分の基礎となる税額は、○○○○円(別表5−3の「審判所認定額B」欄の「N」欄参照)となる。
 また、当該税額の計算の基礎となった事実が本件更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、正当な理由があるとは認められない。
 したがって、請求人の過少申告加算税の額は、○○○○円(別表5−3の「審判所認定額B」欄の「O」欄参照)となり、本件賦課決定処分の金額を下回ることから、本件賦課決定処分は、その一部を別紙1の「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。

(6) 結論

以上によれば、審査請求には理由があるから、原処分の一部を取り消すこととする。

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