(令和2年2月19日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、スポーツインストラクターである審査請求人(以下「請求人」という。)が、F税務署長所属の職員による調査を受け、所得税等の修正申告及び消費税等の期限後申告をしたところ、同税務署長が、重加算税の賦課決定処分を行ったのに対し、請求人が、重加算税の賦課要件を満たしていないなどとして、そのうち過少申告加算税又は無申告加算税相当額を超える部分の取消しを求めた事案である。

(2) 関係法令

  • イ 国税通則法(平成29年1月1日前に法定申告期限が到来した国税については、平成28年法律第15号による改正前のもの。以下、当該改正の前後を問わず「通則法」という。)第68条《重加算税》第1項は、同法第65条《過少申告加算税》第1項の規定に該当する場合において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、政令で定めるところにより、過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額に係る過少申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に100分の35の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する旨規定している。
  • ロ 通則法第68条第2項は、同法第66条《無申告加算税》第1項の規定に該当する場合において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき法定申告期限までに納税申告書を提出せず、又は法定申告期限後に納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、政令で定めるところにより、無申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額に係る無申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に100分の40の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する旨規定している。
  • ハ 通則法第70条《国税の更正、決定等の期間制限》第4項第1号は、偽りその他不正の行為によりその全部若しくは一部の税額を免れた国税(当該国税に係る加算税を含む。)についての更正決定等のうち、同条第1項第3号に掲げる課税標準申告書の提出を要しない賦課課税方式による国税に係る賦課決定は、その納税義務の成立の日から7年を経過する日まで、することができる旨規定している。

(3) 基礎事実

当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。

  • イ 請求人の事業について
     請求人は、平成17年から、Gという屋号で、1幼稚園等から委託を受け、講師として幼児等に体操等の指導を行うとともに(以下、これに係る事業を「本件講師事業」という。)、2体操等の教室を主催し、会員である幼児等に対する指導を自ら又は外部委託して行っていた(以下、これに係る事業を「本件教室事業」といい、本件講師事業と併せて「本件事業」という。)。
  • ロ 本件講師事業に係る収入について
     請求人は、本件講師事業に係る報酬(以下「本件報酬」という。)を、H銀行○○支店の請求人名義の普通預金口座(以下「本件口座1」といい、その通帳を「本件通帳1」という。)への振込み又は小切手で受領していた。
  • ハ 本件教室事業に係る収入について
    • (イ) 本件教室事業に係る月謝収入について
      • A 請求人は、本件教室事業に係る月謝収入(以下「本件月謝」という。)のうち、平成26年3月以前分については、各前月末までに現金で集金しており、その都度、日計票(以下「本件日計票」という。)を作成の上、「月謝出納帳」と題するルーズリーフノート(以下「本件月謝出納帳」という。)に日々の人数、集金額及びその累計額を記載していた。
      • B 請求人は、平成26年4月以降分の本件月謝については、「○○」(支払人の普通預金から指定の払込日に指定の金額を自動的に引き落とし、依頼人の口座に払い込むサービス)を利用し、G代表請求人名義のJ銀行口座(以下「本件口座2」といい、その通帳を「本件通帳2」という。)への振替により集金している。
         なお、請求人は、平成26年4月以降においても、現金で集金した本件月謝については、本件日計票を作成していた。
         また、請求人は、毎月、本件月謝の支払人の名簿及び金額等に係るデータをJ銀行へ送信しており、残高不足等で振替不能となった本件月謝についても、未集金の金額等を確認の上、そのデータをJ銀行に送信していた。
    • (ロ) 本件教室事業に係る本件月謝以外の収入について
       請求人は、本件教室事業に係る本件月謝以外の収入として、1入会金、年会費、合宿等の行事参加費、昇級審査料等及び2ユニフォーム等の物販に係る収入を現金で集金しており(以下、これらの収入と本件月謝を併せて「本件月謝等」という。)、その都度、3については本件日計票、2については売上伝票(以下「本件売上伝票」という。)をそれぞれ作成していた。
  • ニ 本件事業に係る経費について
    • (イ) 請求人は、本件事業において従業員及びアルバイトを雇用していたところ、出勤簿等により出勤状況を管理し、給与支払明細書を作成の上、それぞれの給与を本件口座1から支払っていた。
    • (ロ) 請求人は、本件教室事業における指導を外部委託した場合、その委託先に対する委託料(以下「本件外注費」という。)を、指導した会員数に応じて計算した金額が記載された当該委託先の請求書に基づき、本件口座1から支払っていた。
    • (ハ) 請求人は、本件教室事業において幼稚園等の園庭等を借用した場合、指導した会員数に応じて計算した使用料を、当該借用した月の翌月末に現金で当該幼稚園等に支払っていた。
  • ホ 本件事業に係る帳簿等の提示状況等について
     請求人は、原処分に係る調査(以下「本件調査」という。)を担当したF税務署長(以下「本件税務署長」という。)所属の職員(以下「本件調査担当職員」という。)に対し、本件調査の初日である平成30年5月28日に、1平成25年4月から平成30年3月までの会員氏名及び各月の月謝入金日などを記載したとする書面、2平成26年分から平成29年分までの月別の会員数、月謝金額及びその合計金額を記載したとする書面、3平成26年分から平成29年分までの「簡易帳簿」と題する書面、4平成26年1月から平成30年5月までの本件口座1の入出金の明細を記載したとする表(以下、上記1から4までの各書類を併せて「本件当初提示書類」という。)などを提示した上、平成30年6月11日に、5会員の出席状況を記載したとする書類、6上記2の書面の内容を訂正した書面を提示した。
     また、請求人は、本件調査担当職員に対し、平成30年6月29日に、平成26年4月から平成30年3月までの会員の氏名及び学年ごとに受領した年会費及び月謝の金額等が記載された書面(以下「本件月謝整理表」という。)、平成26年1月から平成29年12月までの本件日計票、平成26年1月から平成30年6月までの本件売上伝票、平成25年11月13日から平成30年6月27日までの本件通帳2、本件外注費に係る請求書などを提示した上、平成30年7月9日に、平成21年5月から平成26年5月までの本件月謝出納帳を提示し、平成30年7月12日には、平成24年9月から平成30年1月までの上記ニ(ハ)の園庭等の使用料に係る領収証を提示した。

(4) 審査請求に至る経緯

当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。

  • イ 確定申告等について
    • (イ) 請求人は、平成23年分、平成24年分、平成25年分、平成26年分、平成27年分、平成28年分及び平成29年分(以下「本件各年分」という。)の所得税(平成25年分以降については所得税及び復興特別所得税である。以下、所得税と所得税及び復興特別所得税とを区別せずに「所得税等」という。)について、別表1の「確定申告」欄のとおり記載した確定申告書を、いずれも法定申告期限までに本件税務署長に提出した。
       なお、本件各年分の所得税等の各確定申告書(以下「本件所得税等各確定申告書」といい、本件所得税等各確定申告書による申告を「本件所得税等各確定申告」という。)に添付された事業所得に係る各収支内訳書(以下「本件各収支内訳書」という。)には、要旨、別表2の「確定申告」欄のとおり記載されていた。
    • (ロ) 請求人は、本件調査を受け、平成30年9月19日に、別表1の「修正申告」欄のとおりとする本件各年分の所得税等の各修正申告書並びに別表3の「確定申告」欄のとおりとする平成23年1月1日から平成23年12月31日までの課税期間(以下「平成23年課税期間」といい、他の課税期間についても同様に表記する。)、平成24年課税期間、平成25年課税期間、平成26年課税期間、平成27年課税期間、平成28年課税期間及び平成29年課税期間(以下、これらの各課税期間を併せて「本件各課税期間」という。)の消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)の各期限後申告書を提出した。
    •  
  • ロ 加算税の賦課決定処分について
     本件税務署長は、上記イ(ロ)の本件各年分の所得税等の各修正申告書及び本件各課税期間の各期限後申告書に係る各申告に対し、別表1及び別表3の各「賦課決定処分」欄のとおり、平成30年10月31日付で本件各年分の所得税等に係る重加算税の各賦課決定処分並びに本件各課税期間の消費税等に係る無申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分をした。
     なお、本件税務署長は、上記イ(ロ)の本件各課税期間の消費税等の各期限後申告書に係る各申告による納付すべき税額のうち、課税資産の譲渡等の対価の額に該当する本件月謝等に係る計上漏れの金額に対応する税額を、重加算税の基礎となるべき税額としていた。
  •  
  • ハ 更正の請求等について
    • (イ) 請求人は、平成31年1月8日、上記イ(ロ)の平成23年分及び平成24年分の所得税等の各修正申告書並びに平成23年課税期間及び平成24年課税期間の消費税等の各期限後申告書に係る各申告について、別表1及び別表3の各「更正請求等」欄のとおりとすべき旨の各嘆願をするとともに、上記イ(ロ)の平成25年分、平成26年分、平成27年分、平成28年分及び平成29年分の所得税等の各修正申告書並びに平成25年課税期間、平成26年課税期間、平成27年課税期間、平成28年課税期間及び平成29年課税期間の消費税等の各期限後申告書に係る各申告について、いずれも通則法第23条《更正の請求》第1項の規定に基づき、別表1及び別表3の各「更正請求等」欄のとおりとすべき旨の各更正の請求をした。
    • (ロ) 本件税務署長は、上記(イ)の各嘆願については平成31年3月14日付及び上記(イ)の各更正の請求については同月28日付で、別表1の「更正処分・変更決定処分」欄及び別表3の「更正処分・変更決定処分等」欄のとおりとする各減額更正処分又は更正をすべき理由がない旨の通知処分並びに重加算税又は重加算税及び無申告加算税の各変更決定処分を行った。
  • ニ 不服申立て等について
    • (イ) 請求人は、平成31年1月24日、上記ロの各処分のうち、重加算税の各賦課決定処分を不服として再調査の請求をした(なお、上記ハ(ロ)の各変更決定処分後の本件各年分の所得税等の重加算税の各賦課決定処分及び本件各課税期間の消費税等の重加算税の各賦課決定処分を、以下、順に「本件所得税等各賦課決定処分」及び「本件消費税等各賦課決定処分」という。)。
    • (ロ) 再調査審理庁である本件税務署長は、平成31年4月24日付で、本件所得税等各賦課決定処分及び本件消費税等各賦課決定処分に係る再調査の請求に対し、いずれも棄却する旨の再調査決定をした。
    • (ハ) 請求人は、再調査決定を経た後の本件所得税等各賦課決定処分及び本件消費税等各賦課決定処分に不服があるとして、令和元年5月20日に審査請求をした。
  • ホ 請求人の納税地について
     請求人は、令和元年10月15日、住所をd市e町○−○から肩書地へ異動した上、同年12月9日、E税務署長に対し、納税地を肩書地とする旨記載した「所得税・消費税の納税地の異動に関する届出書」を提出した。
     これに伴い、原処分庁は、本件税務署長からE税務署長となった。

2 争点

通則法第68条第1項又は第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たすか否か。

3 争点についての主張

原処分庁 請求人
(1) 所得税等について
 本件通帳1及び本件通帳2の管理状況、本件月謝出納帳などの作成状況等によれば、請求人は、真実の収入金額及び必要経費の金額を把握しており、本件所得税等各確定申告に係る総所得金額が過少であって、真実にはそれを上回る多額の所得があることを十分認識していたと考えられる。それにもかかわらず、請求人は、7年間にもわたって、収入金額が1,000万円を超えず、かつ、所得金額が赤字にならないように収入金額等の額を調整し、極めて多額の所得を脱漏した内容虚偽の本件各収支内訳書を作成して、それに基づき本件所得税等各確定申告書を提出し続けた。更に、本件調査の当初においては、本件月謝出納帳などを提示しないばかりか、本件調査に係る調査連絡を受けた後に作成した本件当初提示書類を提示の上、虚偽の回答を繰り返し、真実の収入金額等の把握が困難な状況を作出した。このような事情によれば、請求人は、当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づいて過少申告をしたものと認められる。加えて、請求人の上記行為は、国税庁長官発遣の「申告所得税及び復興特別所得税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)」(平成12年7月3日付課所4−15ほか3課共同。以下「本件事務運営指針」という。)の第1の1(8)の不正事実に該当する。したがって、通則法第68条第1項に規定する重加算税の賦課要件を満たしている。
 なお、請求人が信用性を争う各質問応答記録書(以下「本件各質問応答記録書」という。)については、本件調査担当職員及び記録者が作成場所に臨場して適切に作成され、請求人においてその記載内容に誤りがないことを確認した上で署名押印したものであるから信用することができる。
(1) 所得税等について
 本件所得税等各確定申告には、本件事業の収入金額等に誤りがあったものの、勘違いや集計誤りを原因とするものにすぎず、請求人が収入金額等を調整して故意に多額の所得を脱漏したことはないし、また、本件調査の際に、本件調査担当職員の求めに反して本件事業に係る帳簿書類を隠したこともない。加えて、請求人には、本件事務運営指針に定めるいずれの事実も存在しない。原処分は、このような請求人に対して、個別具体的な検討もせずに請求人が高額、悪質な脱税者であるかのように行われたものである。したがって、通則法第68条第1項に規定する重加算税の賦課要件を満たさない。
 なお、本件各質問応答記録書は、その作成には法的根拠がない上、以下のとおりねつ造されたものであるから信用することはできない。
  • イ 本件各質問応答記録書は、税理士などの立会いができる旨の説明もなく、また、その記載内容を読み上げることもせずに署名押印を強要するなどして作成されたものであり、請求人が申述していない内容が記載されている。
  • ロ 本件各質問応答記録書のうち、一部の質問応答記録書は、その作成場所にいなかった本件税務署長所属の職員を記録者とする署名押印があることからも明らかなように、本件調査担当職員が請求人の申述によらず勝手に作文したものにすぎず、上記記録者とされる職員が上記作成場所にいたとする証拠は、その内容に整合性がないから信用できない。
  • ハ 上記1(4)ハ(イ)の各更正の請求のほぼ全額が認められたこと、請求人の提出した源泉徴収関係書類がいまだに返還されていないこと、本件調査担当職員が他の納税者の書類を誤って請求人に交付したことなど、本件調査が杜撰であることからも、本件税務署長が結論ありきで慎重な検討もせず、請求人に重加算税を賦課するために本件各質問応答記録書をねつ造したことがうかがえる。
(2) 消費税等について
 上記(1)の事情によれば、本件各課税期間の消費税等についても、当初から法定申告期限までに申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づいて法定申告期限までに申告書を提出しなかったものと認められるから、通則法第68条第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たしている。
(2) 消費税等について
 本件各課税期間の消費税等については、個別具体的な検討がされていないことから、通則法第68条第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たしていない。

4 当審判所の判断

(1) 争点について

  • イ 法令解釈
     通則法第68条第1項及び第2項に規定する重加算税の制度は、納税者が過少申告をするについて隠蔽又は仮装という不正手段を用いていた場合、又は、隠蔽又は仮装という不正手段を用いて法定申告期限までに申告をしなかった場合に、過少申告加算税又は無申告加算税よりも重い行政上の制裁を科することによって、悪質な納税義務違反の発生を防止し、もって申告納税制度による適正な徴税の実現を確保しようとするものである。
     したがって、重加算税を課するためには、過少申告行為又は無申告行為そのものが隠蔽又は仮装に当たるというだけでは足りず、過少申告行為又は無申告行為そのものとは別に、隠蔽又は仮装と評価すべき行為が存在し、これに合わせた過少申告がされたこと、又は法定申告期限までに申告がされなかったことを要するものである。しかし、上記の重加算税制度の趣旨に鑑みれば、架空名義の利用や資料の隠匿等の積極的な行為が存在したことまで必要であると解するのは相当でなく、納税者が、当初から所得を過少に申告すること、又は法定申告期限までに申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づき、過少申告をし、又は法定申告期限までに申告をしなかったような場合には、重加算税の賦課要件が満たされるものと解するのが相当である。
  • ロ 認定事実
     請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる(なお、本件各質問応答記録書については、請求人がその信用性を争う旨主張するため、まずは、本件各質問応答記録書を除いたところで以下の事実を認定し、それを基に争点について検討した上、別途、必要に応じて本件各質問応答記録書の信用性を検討することとする。)。
    • (イ) 平成26年3月以前分の本件月謝について、請求人は、本件月謝出納帳に、本件日計票から日々の集金額を記載した上、当該集金額の日々の累計額及び各月の合計額を記載し、訂正箇所に訂正印を押印していた。なお、当該各月の合計額は、そのほとんどが100万円を超えていた。
       また、平成26年4月以降分の本件月謝について、請求人は、原則として、本件口座2への振込みによる受領の都度、数日以内に、当該受領金額のほぼ全額を出金し、支払に要する金額を本件口座1に入金していた。なお、当該受領金額は、毎月100万円を超えていた。
    • (ロ) 本件月謝出納帳に記載された集金人数は、毎月150名から200名程度であり、また、本件月謝整理表に記載された会員数は、毎月200名を超えていた。
       また、本件教室事業に係る園庭等の使用料によれば、平成24年6月から平成29年12月までに指導した会員数は、ほぼ毎月200名を超えていた。
    • (ハ) 請求人は、本件所得税等各確定申告において、本件報酬の金額については、真実の金額に近似した金額を申告していたが、本件月謝等の金額については、別表2の「maru_A3」欄の各「本件月謝等」欄のとおり、真実の金額の24.3%から48.0%に相当する金額(5,700,000円から6,900,000円までの各金額)に減額し、同表の「確定申告」欄の各「総収入金額」欄のとおり、本件各年分の本件事業に係る総収入金額をいずれも1,000万円を下回る金額で申告し、さらに、同表の「確定申告」欄の各「事業所得の金額」欄のとおり、本件事業に係る所得金額を真実の金額の2.8%から16.9%に相当する金額(〇〇〇〇円から〇〇〇〇円までの各金額)で申告した。
    • (二) 請求人は、本件調査に係る調査連絡を受けると、本件所得税等各確定申告の収入金額に合致する内容の本件当初提示書類を事後的に作成し、本件調査の初日に本件調査担当職員に提示した。また、本件調査の中で当該内容の矛盾点を指摘されると、更に内容虚偽の書面(上記1(3)ホの6)を作成して、本件調査担当職員に提示した。
  • ハ 当てはめ
    • (イ) 所得税等について
      • A 上記1(3)ロからニまで並びに4(1)ロ(イ)及び(ロ)のとおり、請求人は、本件事業において、1本件日計票、本件売上伝票、本件月謝出納帳及び本件月謝整理表の作成・保存、2「〇〇」に係るデータの作成・送信、3未集金の本件月謝に係る管理・集金、4人件費の管理、給与支払明細書の作成及び人件費の支払、5本件外注費及び園庭等の使用料の支払、6本件口座1及び本件口座2に係る入出金の管理及びその通帳の記帳をそれぞれ自ら行うなどしていたのであるから、それによって、本件事業に係る総収入金額、必要経費及び事業所得の金額並びにその計算の基礎となる会員数を正確に把握していたと認められる。
         そして、本件各年分における総収入金額は、別表2の「更正処分」欄の「maru_B」欄の各「総収入金額」欄のとおりであった上、上記ロ(イ)のとおり、本件事業に係る総収入金額のうち、本件月謝に限ったとしても、ほぼ毎月100万円を超える収入があったのであるから、請求人は、本件各年分の本件月謝に係る収入金額のみでさえ少なくとも1,000万円を下回らないことも十分に認識していたと認められる。
         それにもかかわらず、請求人は、本件各年分において、上記ロ(ハ)のとおり、本件月謝等について真実の金額の24.3%から48.0%に相当する金額に減額して、本件事業に係る総収入金額をいずれも1,000万円を下回る金額とし、本件事業に係る所得金額を真実の金額の2.8%から16.9%に相当する金額とする本件所得税等各確定申告をした。
         以上によれば、請求人は、本件各年分の本件事業に係る総収入金額、必要経費及び事業所得の金額等を正確に把握していたにもかかわらず、7年間もの長期間にわたって、各年分の総収入金額を1,000万円以下に調整したところで、極めて過少な所得金額を記載した確定申告書を継続的に提出し続けたものといえる。
      • B また、上記1(3)ホ及び4(1)ロ(二)とおり、請求人は、本件調査において、本件事業に係る総収入金額が1,000万円を超えること及び真実の総収入金額が容易に判明する本件月謝出納帳又は本件通帳2の存在を秘しただけでなく、真実の金額とは異なる本件所得税等各確定申告の総収入金額に合致する内容虚偽の本件当初提示書類を事後的に作成し、本件調査担当職員に提示した上、本件調査の中で、当該内容の矛盾点を指摘されると、更にその内容を訂正した虚偽の書面(上記1(3)ホの6)を作成し、本件調査担当職員に提示するなどの対応をしたと認められる。このことは、単に真実の所得金額よりも少ない所得金額を記載した確定申告書であることを認識しながらこれを提出したにとどまらず、請求人が、真実の所得の調査解明に困難を伴う状況を作出し、真実の所得金額を隠蔽しようという確定的な意図の下に、本件調査に際しても、虚偽の帳簿書類を複数回作成するといった隠蔽のための具体的な工作を行い、真実の所得金額を隠蔽する態度、行動をできる限り貫こうとしたと評価せざるを得ないものである。
      • C 以上のような請求人の一連の行為によれば、請求人が、当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたような場合に該当するというべきであるから、本件各年分の所得税等について、通則法第68条第1項に規定する重加算税の賦課要件を満たすということができる。
    • (ロ) 消費税等について
       上記(イ)の事情によれば、請求人は、課税売上高が1,000万円を超えれば消費税等の納税義務が生じること及び本件事業に係る消費税等について当該納税義務があることを認識していたからこそ、本件事業に係る総収入金額が1,000万円を超えることの発覚を避けるために、上記(イ)の一連の行為をしたと認めるのが合理的である。そうすると、請求人が、当初から課税標準等及び税額を申告しない確定的な意図を有し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づき法定申告期限までに申告をしなかったような場合に該当するというべきであるから、本件各課税期間の消費税等について、通則法第68条第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たすということができる。
  • 二 請求人の主張について
     請求人は、上記3の「請求人」欄のとおり、請求人が故意に多額の所得を脱漏したことはない上、本件各質問応答記録書も、これを信用することはできないなどとして、通則法第68条第1項及び第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たさない旨主張する。
     しかしながら、請求人が故意に極めて過少な所得金額を記載した確定申告書を継続的に提出し続けるなどしていたと認められることは、上記ハで述べたとおりである上、当審判所の判断した上記ハの結論は、本件各質問応答記録書をその判断の基礎としておらず、その他に主張する点をもって、当該結論が左右されることもないから、請求人の主張には理由がない。

(2) 本件所得税等各賦課決定処分について

上記(1)ハ(イ)のとおり、本件各年分の所得税等については、通則法第68条第1項に規定する重加算税の賦課要件を満たしている。なお、平成23年分及び平成24年分の所得税等に係る重加算税の各賦課決定処分については、当該所得税等の各法定申告期限から5年を経過した日以後になされているが、通則法第70条第4項第1号に規定する「偽りその他不正の行為」とは、税額を免れる意図の下に、税の賦課徴収を不能又は著しく困難ならしめるような何らかの偽計その他の工作を伴う不正な行為を行うことをいうと解されるところ、上記(1)ハ(イ)の一連の行為は、同号に規定する「偽りその他不正の行為」に該当することから、同号が適用されることとなる。
 そして、当審判所において、本件各年分の所得税等に係る重加算税の額を計算すると、いずれも本件所得税等各賦課決定処分の額と同額となる。
 なお、本件所得税等各賦課決定処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
 したがって、本件所得税等各賦課決定処分はいずれも適法である。

(3) 本件消費税等各賦課決定処分について

上記(1)ハ(ロ)のとおり、本件各課税期間の消費税等については、通則法第68条第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たしている。なお、平成23年課税期間及び平成24年課税期間の消費税等に係る重加算税の各賦課決定処分については、当該消費税等の各法定申告期限から5年を経過した日以後になされているが、上記(2)と同様、通則法第70条第4項第1号に規定する「偽りその他不正の行為」に該当することから、同号が適用されることとなる。
 そして、当審判所において、本件各課税期間の消費税等に係る重加算税の額を計算すると、いずれも本件消費税等各賦課決定処分の額と同額となる。
 なお、本件消費税等各賦課決定処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
 したがって、本件消費税等各賦課決定処分はいずれも適法である。

(4) 結論

よって、審査請求は理由がないから、これを棄却することとする。

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