(令和2年7月1日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、原処分庁が、審査請求人(以下「請求人」という。)は納税者D社の滞納国税に係る保証人であるとして、同社の滞納国税を徴収するため、請求人に対して納付通知書による告知処分をしたところ、請求人が、同社の滞納国税について納税保証をしたことはなく、納税保証書は請求人の同意もなく作成、提出されたものであって、無効な納税保証を前提としてなされた原処分は違法であるとして、その全部の取消しを求めた事案である。

(2) 関係法令

  • イ 国税通則法(以下「通則法」という。)第46条(平成26年法律第10号による改正前のもの。以下同じ。)《納税の猶予の要件等》第5項本文は、税務署長(通則法第43条《国税の徴収の所轄庁》第3項の規定により国税局長が国税の徴収を行う場合には、国税局長。以下「税務署長等」という。)は、納税の猶予をする場合には、その猶予に係る金額に相当する担保を徴さなければならない旨規定し、国税徴収法(平成26年法律第10号による改正前のもの。以下「徴収法」という。)第152条《換価の猶予に係る分割納付、通知等》は、徴収法第151条《換価の猶予の要件等》第1項の規定による換価の猶予について通則法第46条第5項を準用する旨規定している。
  • ロ 通則法第50条《担保の種類》第6号は、国税に関する法律の規定により提供される担保の種類の一つとして、「税務署長等が確実と認める保証人の保証」を規定しており、国税通則法施行令(平成20年政令第219号による改正前のもの。)第16条《担保の提供手続》第3項は、通則法第50条第6号に掲げる担保を提供しようとする者は、保証人の保証を証する書面を税務署長等に提出しなければならない旨規定している。
  • ハ 通則法第52条《担保の処分》第1項は、税務署長等は、担保の提供されている国税がその納期限(滞納処分に関する猶予に係る期限を含む。)までに完納されないときは、保証人にその国税を納付させる旨を、同条第2項は、税務署長等は、同条第1項の規定により保証人に同項の国税を納付させる場合には、政令で定めるところにより、その者に対し、納付させる金額、納付の期限、納付場所その他必要な事項を記載した納付通知書による告知をしなければならない旨をそれぞれ規定している。
  • ニ 民事訴訟法(以下「民訴法」という。)第228条《文書の成立》第4項は、私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する旨規定している。

(3) 基礎事実及び審査請求に至る経緯

当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。

  • イ 納税者D社(以下「本件滞納法人」という。)は、建築設計及び都市計画設計の受託等を事業目的として昭和58年12月○日に設立された法人であり、請求人は、本件滞納法人の代表取締役である。
  • ロ 本件滞納法人の徴収の所轄庁であったE税務署長は、平成4年5月26日、本件滞納法人に対して、平成4年3月31日に納税告知をした昭和62年6月分から平成2年12月分及び平成3年6月分の源泉所得税が、納期限である平成4年4月30日までに完納されなかったため、通則法第37条《督促》第1項の規定に基づき、その納付を督促した。
  • ハ 本件滞納法人の従業員であったF(以下「F氏」という。)及び本件滞納法人の関与税理士事務所の事務員であったGは、平成4年6月22日、H税務署を訪れ、E税務署長が上記ロで納税の告知をした源泉所得税について、同年7月から毎月200,000円の分納の申立てをした。
     H税務署の徴収職員は、同日、F氏及びGに対し、担保の提供を指示した。
  • ニ E税務署長は、平成4年7月8日、別表1記載の本件滞納法人の滞納国税について、請求人が当該滞納国税を納税保証する旨が記載され、請求人の氏名の記載とともに実印が押印された納税保証書(以下「本件保証書」という。)及び平成4年5月25日付で発行された請求人の印鑑登録証明書をF氏から受領した。
  • ホ E税務署長は、上記ニのとおり本件保証書の提出があったことから、平成4年7月31日付で、本件滞納法人に対し、徴収法第151条第1項第1号の規定に基づき、別表1記載の本件保証書に係る滞納国税につき、猶予期間を同年7月1日から平成5年6月30日までの12か月間とする換価の猶予を決議した。
     なお、当該換価の猶予に係る決議書には、換価の猶予の要件である担保を記載する欄に「代表者の納税保証」と記載されている。
  • ヘ 本件滞納法人は、平成21年5月22日、d県e市f町○−○に本店移転し、これに伴い新たな徴収の所轄庁はJ税務署長となった。
     なお、J税務署長は、平成21年6月26日及び平成22年6月23日、通則法第43条第4項の規定に基づき、本件滞納法人の滞納に係る源泉所得税についてE税務署長から徴収の引継ぎを受けている。
  • ト 原処分庁は、平成29年9月27日、通則法第43条第3項の規定に基づき、本件滞納法人の滞納国税につき、J税務署長から徴収の引継ぎを受けた。
  • チ 原処分庁は、別表2記載の本件滞納法人の滞納国税(以下「本件滞納国税」という。)が納期限までに完納されなかったため、請求人に対して、通則法第52条第2項の規定に基づき、平成31年3月15日付の納付通知書により、納付の期限を同年4月15日などとする納付告知処分(以下「本件納付告知処分」という。)をした。
  • リ 請求人は、令和元年5月15日、本件納付告知処分を不服として再調査の請求をしたところ、再調査審理庁は、同年6月19日付で棄却の再調査決定をした。
  • ヌ 請求人は、令和元年7月9日、再調査決定を経た後の本件納付告知処分に不服があるとして、審査請求をした。

2 争点

請求人は、本件滞納国税について納税保証をしたか否か。具体的には、本件保証書は真正に成立していたか否か。

3 争点についての主張

原処分庁 請求人
本件保証書は、以下のとおり、真正に成立したものであるから、請求人は本件滞納国税について納税保証をした。
 本件保証書の印影は、作成名義人である請求人の印鑑登録証明書のそれと同一のものであり、請求人の印章によって顕出されているから、請求人の意思に基づいて押印されたものと推定され、その結果、本件保証書は、真正に成立したものと推定される。
 請求人の主張は、F氏が請求人に無断で本件保証書を作成したとするものであるが、客観的裏付けがなく、本件保証書の成立の真正に係る推定を覆す反証があるとはいえないし、請求人が、本件保証書が提出された後に徴収職員との納付相談において、請求人自身が保証人であることを自認する言動を繰り返していることからしても、請求人に納税保証の意思があることは明らかである。
 また、H税務署の徴収職員から請求人に対して、保証の意思確認をしていないのは、請求人の保証意思が明らかであると認められるためであり、保証の意思が明らかな場合には上記意思確認をしない取扱いとしている。
本件保証書は、以下のとおり、F氏が請求人に無断で作成したものであるから、真正に成立しておらず、請求人は本件滞納国税について納税保証をしていない。
  • (1) 請求人の実印及び印鑑登録証明書は、請求人個人が別件で不動産の購入書類を作成するため、本件滞納法人の事務所内の机の引き出しに保管していた。そして、当該引き出しの鍵はF氏が管理していたから、F氏は請求人の実印及び印鑑登録証明書を請求人に逐一確認することなく自由に使用することが可能であった。
  • (2) 本件保証書が作成された当時、F氏は本件滞納法人において業務を懈怠することなどがあったところ、本件保証書もF氏によって請求人の意思を確認することなく、請求人に無断で提出されたものである。また、F氏は、問題行動を頻発させて退社した、およそ誠実な従業員とはいえない者であるので、本件保証書を請求人の意思を確認せず、無断で提出したとしても不自然ではない。
  • (3) 本件保証書に記入された請求人の氏名の筆跡は、F氏のものであるが、個人保証に係る書類であれば、請求人が自署して作成するはずであり、請求人はF氏に本件保証書の作成を指示したこともない。また、その他の第三者にもその作成を指示したことはない。
  • (4) H税務署の徴収職員は、請求人に対し、国税通則法基本通達(昭和45年6月24日付徴管2−43ほか9課共同。以下「通則法基本通達」という。)第54条関係6《保証等の意思の確認》に定める本来行うべき保証の意思確認をしておらず、また、通則法基本通達第54条関係1《担保提供書等の提出》に定める担保提供書の提出も、請求人から受けていないが、請求人に保証の意思があったのであれば、これらの手続がされているはずである。
  • (5) 原処分庁は、本件保証書の提出後に、請求人が、自身が保証人であることを自認する言動を繰り返している旨主張するが、そのような事実はない。
     なお、原処分庁が上記請求人の言動を示す証拠として提出した調査報告書は、記載内容等が請求人の従業員が当時作成していたメモ等と齟齬し、信用性を欠くものである。

4 当審判所の判断

(1) 認定事実

原処分庁が当審判所に提出した令和元年12月9日付の調査報告書及び同月13日付の調査報告書(いずれもK国税局徴収部国税訟務官室の国税実査官L作成の記名があり押印されているもの。以下、各調査報告書を併せて「本件調査報告書」という。)においては、本件滞納法人に係る滞納国税についての徴収職員と本件滞納法人関係者とのやり取りが記録された滞納整理事績の記載内容を調査し、請求人の納税保証の意思に係る言動をまとめた結果として、要旨以下のとおりの内容が記載されていることが認められる。

  • イ H税務署の徴収職員は、平成11年4月28日、同税務署を訪れた請求人と面接し、本件滞納法人の滞納国税について、現状では月10,000円から20,000円が限度であるが必ず納付し、翌年の納付より増額を考えたい旨の申立てを受けた。また、請求人自身が所有するg市とa市の不動産は、差押え等があった場合、借入先との契約により即日強制執行されて事業継続が不能となり、全てを失い自殺せざるを得なくなるとして、約束は必ず実行するので考慮願いたい旨の申立てを受けた。
  • ロ H税務署の徴収職員は、平成12年2月1日、請求人から電話を受けた際に、請求人は納税保証人であるため、保証人に対する告知及び催告手続に入ることを申し渡した。請求人からは、これに対し、請求人が連帯保証人になっている借入れの約定により、請求人の不動産に差押え等があった場合、期限の利益を失い、全てを失うことになるためやめてほしい旨、g市の不動産には母親が住んでおり、名義は請求人自身のものとなっているが、資金の出どころから考えると母親のものであるため、差押えをしないでほしい旨の申立てがあった。
  • ハ H税務署の徴収職員は、上記ロの同日、同税務署を訪れた請求人と面接し、平成12年1月から同年3月まで収入の見込みがない旨、借入れをする予定である旨の申立てを受けた。また、請求人は、手形貸付取引約定書の写しを持参し、当該約定書には、連帯保証人が滞納処分を受けた場合、期限の利益を失う旨の記載があるため、差押えは保留してほしい旨を申し立てた。H税務署の徴収職員は、これに対し、申立てについては当該約定書をよく読んだ上で回答する旨を申し渡した。
  • ニ H税務署の徴収職員は、平成12年2月7日、請求人から月50,000円ずつ納付するので納付書を送付してほしい旨の電話を受けた際に、保証人に対する追及等は検討中であるため、結論が出たところで連絡する旨を申し渡した。
  • ホ H税務署の徴収職員は、平成12年4月6日、請求人宛に電話をし、借入れが不調に終わった旨の報告を受け、毎月の分納を行っていくのであれば、保証人への追及は保留する旨を申し渡した。
  • ヘ M税務署の徴収職員は、平成22年8月24日、同税務署を訪れた請求人と面接し、請求人から本件滞納法人の現況についての報告及び月50,000円の分納が限度である旨の申立てを受けた際、請求人が個人保証している本件滞納法人の滞納国税が完納していないことから、これを優先して納税するよう助言した。
  • ト M税務署の徴収職員は、平成27年4月21日、同税務署を訪れた請求人と面接した際に、請求人から本件滞納法人の現況についての報告を受け、月30,000円の分納を継続したい旨及び請求人自身が納税保証人になっているため、少しでも早く納税保証に係る滞納国税を完納したいという気持ちが強い旨の申立てを受けた。

(2) 検討

  • イ 私文書中の印影が本人又は代理人の印章によって顕出された事実が確定された場合には、反証がない限り、当該印影は本人又は代理人の意思に基づいて成立したものと推定するのが相当であり、その結果、当該文書は、民訴法第228条第4項により、文書全体が真正に成立したものと推定される(最高裁昭和39年5月12日第三小法廷判決・民集18巻4号597頁参照)。
  • ロ 本件においては、上記1の(3)のニのとおり、本件保証書に請求人の実印が押印されていることに争いはないので、反証がない限り、本件保証書の印影は請求人の意思に基づいて成立したと推定される。そこで、以下、上記イにいう反証の有無について検討する。
    • (イ) 請求人の実印の保管及び使用の状況について
       本件保証書が作成された平成4年当時の請求人の実印の保管及び使用の状況については、当審判所の調査及び審理の結果においても明らかでない。
       この点について、請求人は、上記3の請求人欄の(1)のとおり、平成4年当時、請求人の実印は印鑑登録証明書とともに、本件滞納法人の事務所内の机の引き出しに保管しており、その引き出しの鍵はF氏が管理していたから、同人が自由に使用できたと主張する。
       しかしながら、これらの事実を裏付ける客観的な証拠はない。請求人は、実印等の保管状況を示す証拠として事務机を撮影した写真を提出するが、これは、平成31年4月頃になってから本件保証書が作成された平成4年当時の事務所とも異なる現在の事務所内の机が撮影されたものにすぎず、これをもって平成4年当時の請求人の実印の保管状況や、F氏やその他の第三者がこれを自由に使用できる状況にあったことを裏付けることはできない。
       なお、請求人の主張に沿う証拠として、請求人の陳述書があるが、上記のとおり実印の保管状況等を裏付ける客観的な証拠はない。また、その内容においても、F氏が平成4年3月頃から他の従業員への嫌がらせや業務放棄、業務妨害等の問題行動を頻繁に起こすなどしていたとして同人が無断で本件保証書を作成したと考える理由を述べながら、他方で、本件保証書作成当時、請求人の実印や印鑑登録証明書が保管されている机の鍵をF氏に管理させていたと述べている。これは、請求人の実印という重要であり、しかも日常的な業務には通常必要とはいえない物を、問題行動を頻繁に起こすような従業員が自由に使用できる状況に置いていたというものであって、直ちに信用し難い。
       したがって、請求人の陳述書を採用することはできない。
    • (ロ) F氏が請求人の実印を冒用すべき理由の有無
       F氏に請求人の実印を冒用すべき理由があったかどうかについて、請求人は上記3の請求人欄の(2)のとおり、F氏は本件滞納法人において業務を懈怠することなどがあり、F氏がH税務署の担当者から本件保証書の提出を求められて、これに対応して請求人に保証をするかどうかの意思を確認する業務を回避するため、請求人に無断で実印及び印鑑登録証明書を利用して本件保証書を提出したとしても不自然ではない旨主張する。
       しかしながら、同主張についても、これを裏付ける的確な証拠はなく、当審判所の調査及び審理の結果によっても、ほかに、F氏が、無断で本件保証書を作成するという、直ちに請求人に知られて不利益を被る危険のある行為を、わざわざ行う動機を有していたと認めるに足りる証拠はない。
    • (ハ) 本件保証書の提出後の事情
       上記(1)のイないしトのとおり、本件調査報告書には、本件保証書の提出後、請求人が徴収職員と度々面談等により接触しており、その際に自身が納税保証人であることに言及した旨の記載があるほか、所有不動産が差し押さえられることを回避してほしい旨の、納税保証をした事実を前提とする発言を繰り返していたことが記載されている。
       本件調査報告書は、滞納国税を徴収する徴収職員が作成した滞納整理事績を基に作成されたものである。滞納整理事績は、その滞納事案が完結又は納税義務が消滅するまでの間、課税原因、滞納原因、事業概況、収支・財産状況、納付計画等の納付意思、滞納者の申立て事項及び滞納者へ申し渡した事項を、徴収職員が具体的に記録し、担当の統括国税徴収官等の管理者が確認し決裁する行政文書であることから、その作成方法からして記載内容には一般的に信用性が認められる。
       よって、そのような滞納整理事績に記載されている本件滞納法人に係る具体的かつ詳細な納付折衝等の記録に基づいて作成された本件調査報告書もまた一般的に信用性が認められるところ、その記載内容によれば、平成11年から平成27年までの期間中に人事異動等により関わった複数の徴収職員が、請求人が納税保証人であることを前提とした発言をしていた旨を一貫して記録していたことが認められる。また、本件滞納法人の滞納国税が完納されない状況において、徴収職員が代表者である請求人と納税に関して接触を重ねる中で、本件保証書に基づく請求人の納税保証について何ら言及しないとは考え難い。そのような状況にあって、請求人が、これまで本件保証書が提出されていることについて何ら異議を述べてこなかったことも併せ考えれば、請求人が本件調査報告書に記載された内容の発言をしていたとの本件調査報告書の記載内容には信用性が認められ、本件においてその信用性に疑問を抱かせるような事情も認められない。そうすると、本件調査報告書の記載内容から、請求人が、本件保証書が作成された以降に、本件滞納法人の滞納国税について徴収職員とやり取りを重ねており、その中で、請求人が徴収職員に対して、自身が納税保証人であることを自認する言動を繰り返していた事実を認めることができる。
  • ハ まとめ
     上記ロの(イ)及び(ロ)のとおり、請求人の実印の保管及び使用状況、F氏の実印冒用の動機も不明である中で、上記ロの(ハ)のとおり、本件保証書の作成後に請求人が納税保証人であることを自認する言動を繰り返していたことが認められることからすれば、本件保証書の印影が請求人の意思に基づいて成立したとの推定を覆すべき反証があるとはいえない。
     したがって、民訴法第228条第4項によって、本件保証書が真正に成立したものと推定され、これに反する証拠もない上、上記本件保証書作成後の請求人の言動からしても、請求人は本件滞納国税について納税保証をしたと認められる。

(3) 請求人の主張について

  • イ 請求人は、上記3の請求人欄の(2)のとおり、F氏は問題行動を頻発させて退社した、およそ誠実な従業員ではない者であるため、本件保証書を請求人の意思を確認せず提出したとしても不自然ではないなどと主張するが、請求人が納税保証人になったことを前提とする言動を繰り返しており、請求人が納税保証をしたと認められることは上記(2)のハのとおりであるから、請求人の主張は理由がない。
  • ロ 請求人は、上記3の請求人欄の(3)のとおり、本件保証書に記入された請求人の氏名の筆跡はF氏のものであり、個人保証に係る書類であれば、請求人が自署して作成するはずであると主張するが、本件保証書の請求人氏名の筆跡が仮にF氏のものであったとしても、本件保証書が請求人の意思に基づいて作成され、請求人が納税保証をしたと認められることについては上記(2)のハのとおりであり、請求人の主張は理由がない。
  • ハ 請求人は、上記3の請求人欄の(4)のとおり、H税務署の徴収職員は、請求人に対し、通則法基本通達第54条関係6に定める本来行うべき保証の意思確認をしておらず、通則法基本通達第54条関係1が定める担保提供書の提出も請求人から受けていない旨主張する。
     しかしながら、上記1の(2)のロのとおり、保証人の保証による担保提供に係る法令の要件は、保証人の保証を証する書面を提出することであり、保証人に対する保証の意思確認を行うこと及び担保提供書を提出することは、担保の提供につき、保証人との間で実印の盗用等を理由とする争いが生ずることのないようにするために行政組織内部の手続が通達により定められたものであって、これらの手続がされていないことによって、直ちに保証の意思の存在が否定されるものではない。そして、請求人に納税保証をする意思が認められることは上記(2)のハのとおりであるから、請求人の主張は理由がない。
  • ニ 請求人は、上記3の請求人欄の(5)のとおり、本件保証書の提出後に、請求人が保証人であることを自認する言動を繰り返していた事実はない旨主張する。
     しかしながら、上記(1)のイないしトのとおり、信用性の認められる本件調査報告書によれば、請求人が徴収職員に対して自身が納税保証人であることを前提とする発言を繰り返している事実が認められるから、請求人の主張は理由がない。また、請求人は、本件調査報告書は、記載内容等が請求人の従業員が当時作成していたメモ等と面談場所等において齟齬し、信用性を欠くなどと主張する。この点、当審判所の調査において、本件調査報告書と滞納整理事績を精査したところ、平成27年4月21日の面談場所にのみ転記の誤りが認められたものの、本件調査報告書の面談場所の記載の誤りによって、請求人が納税保証人であることを前提とする言動を繰り返していたとの記載内容の信頼性が左右されるとはいえず、本件調査報告書が、徴収職員が滞納整理の内容を詳細に記録して所定の手続を経て作成した行政文書を基に作成されていることなどから、その信用性が認められることは上記(2)のロの(ハ)のとおりである。
     したがって、この点についての請求人の主張にも理由がない。

(4) 本件納付告知処分の適法性について

以上のとおり、請求人は、本件滞納国税について、納税保証をしており、本件納付告知処分は、通則法第52条第2項の規定に基づきされている。
 また、本件納付告知処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
 したがって、本件納付告知処分は適法である。

(5) 結論

よって、審査請求は理由がないから、これを棄却することとする。

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