(令和5年3月8日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、〇〇販売業を営む審査請求人(以下「請求人」という。)が、特定の仕入先からの仕入金額を損金の額に算入していたところ、原処分庁が、当該仕入先に対する仕入金額は時価相当額と比較して高額であるため、当該仕入金額の一部は法人税法上の寄附金の額に当たるなどとして更正処分等をしたのに対し、請求人が、原処分の一部の取消しを求めた事案である。

(2) 関係法令

  • イ 法人税法第37条《寄附金の損金不算入》第1項は、内国法人が各事業年度において支出した寄附金の額(同条第2項の規定の適用を受ける寄附金の額を除く。)の合計額のうち、その内国法人の当該事業年度終了の時の資本金等の額又は当該事業年度の所得の金額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額を超える部分の金額は、当該内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない旨規定している。
  • ロ 法人税法第37条第7項は、同条に規定する寄附金の額は、寄附金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもってするかを問わず、内国法人が金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与(広告宣伝及び見本品の費用その他これらに類する費用並びに交際費、接待費及び福利厚生費とされるべきものを除く。)をした場合における当該金銭の額若しくは金銭以外の資産のその贈与の時における価額又は当該経済的な利益のその供与の時における価額によるものとする旨規定している。
  • ハ 法人税法第37条第8項は、内国法人が資産の譲渡又は経済的な利益の供与をした場合において、その譲渡又は供与の対価の額が当該資産のその譲渡の時における価額又は当該経済的な利益のその供与の時における価額に比して低いときは、当該対価の額と当該価額との差額のうち実質的に贈与又は無償の供与をしたと認められる金額は、同条第7項の寄附金の額に含まれるものとする旨規定している。

(3) 基礎事実

当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。

  • イ 請求人及びその仕入先について
    • (イ) 請求人は、〇〇販売を事業とする法人である。
    • (ロ) 請求人の取締役であるG(以下「本件取締役」という。)は、平成23年11月22日まで、請求人の代表取締役を務めていた。
    • (ハ) 本件取締役の従兄弟で、「H」を屋号とする個人事業者であるJ(以下「本件親族事業者」という。)は、請求人に〇〇を個人で納入するとともに、K社に勤務し、〇〇の収集・販売担当者として、同社の請求人に対する〇〇の納入業務を行っていた(以下、本件親族事業者とK社を併せて「本件各仕入先」という。)。
       なお、〇〇は、〇〇工場から〇〇精製工場に直接回収されるほか、〇〇の回収業者を介して〇〇精製工場に持ち込まれ、〇〇精製工場において所定の工程を加えることで、〇〇に再生することができる。
  • ロ 請求人が行う仕入れの状況等について
    • (イ) 請求人は、平成25年11月から平成27年10月までの間(以下「本件取引期間」という。)において、本件各仕入先から〇〇を仕入れていた(以下、この仕入れに係る取引を「本件取引」という。)。
       なお、本件各仕入先は、〇〇を排出・販売等する事業者から仕入れて取りまとめたものを販売していた(以下、本件各仕入先における〇〇の仕入先を「本件回収先事業者」という。)。
    • (ロ) 請求人は、本件各仕入先から仕入れた〇〇について、おおむねの「歩留り」(〇〇から精製できる〇〇の量の割合)の多寡によって〇〇、〇〇B及び〇〇Cという呼称で分類し(以下、請求人が〇〇という呼称で分類したものを「〇〇A」という。)、当該分類に応じた仕入単価で計算した金額で仕入れ、仕入先元帳に計上していた(以下、請求人が本件各仕入先から仕入れた〇〇を「本件各〇〇」という。)。
    • (ハ) 本件取引期間における請求人の仕入業務は、平成26年3月7日までは請求人の取締役であったLが担当し、その後は営業部長であるM(以下「本件営業部長」という。)が担当していた。

(4) 審査請求に至る経緯

  • イ 請求人は、平成25年11月1日から平成26年10月31日までの事業年度(以下「平成26年10月期」といい、他の事業年度についても同様に表記する。)及び平成27年10月期(以下、これらの各事業年度を併せて「本件各事業年度」という。)の法人税について、本件取引に係る仕入金額(以下「本件仕入金額」という。)を損金の額に算入した上で確定申告書に別表1−1の「確定申告」欄のとおり記載して、いずれも提出期限(法人税法第75条の2(平成29年法律第4号による改正前のもの)《確定申告書の提出期限の延長の特例》第1項の規定により1月間延長されたもの。)までに申告した。
  • ロ 請求人は、平成25年11月1日から平成26年10月31日までの課税事業年度(以下「平成26年10月課税事業年度」という。)の復興特別法人税について、確定申告書に別表1−2の「確定申告」欄のとおり記載して、提出期限(東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法第53条《課税標準及び税額の申告》第4項の規定により1月間延長されたもの。)までに申告した。
  • ハ 請求人は、平成26年11月1日から平成27年10月31日までの課税事業年度(以下「平成27年10月課税事業年度」という。)の地方法人税について、確定申告書に別表1−3の「確定申告」欄のとおり記載して、提出期限(地方法人税法(平成29年法律第4号による改正前のもの)第19条第5項の規定により1月間延長されたもの。)までに申告した。
  • ニ 請求人は、平成28年4月14日に、1本件各事業年度の法人税について、別表1−1の「修正申告」欄のとおり、2平成26年10月課税事業年度の復興特別法人税について、別表1−2の「修正申告」欄のとおり、3平成27年10月課税事業年度の地方法人税について、別表1−3の「修正申告」欄のとおりとする各修正申告書を提出した。
  • ホ 原処分庁は、令和3年12月24日付で、本件仕入金額のうち不相当に高額な部分は法人税法第37条第7項の寄附金の額に該当するなどとして、本件各事業年度の法人税について、別表1−1の「更正処分等」欄のとおり、各更正処分(以下「本件法人税各更正処分」という。)をするとともに、過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分をした。
     また、原処分庁は、令和3年12月24日付で、平成26年10月課税事業年度の復興特別法人税及び平成27年10月課税事業年度の地方法人税について、別表1−2及び別表1−3の各「更正処分等」欄のとおり、各更正処分をするとともに、過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分をした。
  • ヘ 請求人は、令和4年3月17日、上記ホの各処分のうち各更正処分の一部及び過少申告加算税の各賦課決定処分に不服があるとして審査請求をした。
     なお、平成27年10月期の法人税に係る重加算税の賦課決定処分についても併せ審理する。

2 争点

 本件仕入金額の一部が法人税法第37条に規定する寄附金の額に該当するか否か。

3 争点についての主張

原処分庁 請求人
本件仕入金額は、次のとおり、本件各〇〇の時価相当額よりも不相当に高額であり、当該時価相当額との差額が「実質的に贈与したと認められる金額」に当たるから、その部分の金額は寄附金に該当する。 本件仕入金額には、次のとおり、「実質的に贈与したと認められる金額」が存在しない。
(1) 本件営業部長の申述によれば、本件各〇〇の仕入単価は、「建値」に「歩留り」を乗じた金額から「加工賃」を控除する計算式(以下「本件仕入単価計算式」という。)により算出した額になると認められ、別表2のとおり、本件仕入単価計算式に「建値」、「歩留り」、「加工賃」の各値を当てはめて単価を算定し、当該単価に仕入れた本件各〇〇の重量を乗じて計算した金額(同表の「算出金額」欄の金額であり、以下「原処分庁算出金額」という。)が仕入金額の時価相当額であると認められるところ、本件仕入金額は、別表2の「申告金額」欄のとおり、原処分庁算出金額に比して不相当に高額である。 (1) 本件仕入単価計算式は、飽くまでも、請求人が仕入先と仕入単価を交渉するに当たり、請求人の仕入担当者が参考にする考え方であるにすぎない。
 また、請求人と仕入先との価格交渉の結果、仕入単価が、請求人が目標とする単価より高くなることも当然ある。
(2) 本件回収先事業者が本件親族事業者に販売した〇〇の「歩留り」は、最も高いものでも〇〇%程度であったこと、本件回収先事業者の過半数については10年ほど取引単価がおおむね変わらなかったことから、本件各〇〇の「歩留り」は、少なくとも請求人が令和3年10月に実施した歩留試験の結果による値である〇〇%と同等かこれを下回ると認められ、この値は本件取引期間においても同様であると認められる。
 また、原処分庁において、平成30年10月期から令和2年10月期までにおける本件各仕入先以外の仕入先との取引について、本件仕入単価計算式を用いて算出した単価と請求人の仕入先元帳に記載された仕入金額を基に計算した仕入単価とを比較した結果、乖離が見られない。
 したがって、本件仕入単価計算式を用いて計算した原処分庁算出金額は時価相当額であるといえる。
(2) 原処分庁は、令和3年11月30日に実施した〇〇Cの歩留試験の結果による値である〇〇%を見落とし、本件取引期間における全ての本件各〇〇の仕入れを「歩留り」〇〇%で引き直して計算しているのであって、明らかに誤っている。
 原処分庁の主張は、主に本件回収先事業者からのヒアリングに基づくものであり、これらの事業者が本件取引期間において販売した〇〇の「歩留り」が〇〇%程度であったことを示す客観証拠は提出されていない。
 一方、現に、令和3年11月30日に実施された〇〇Cの歩留試験の結果は、「歩留り」が〇〇%であり、〇〇%を優に超過するものである。
(3) 本件取引について、請求人の実質的な経営者である本件取締役が「取引に係る仕入価格は通常より少し上乗せしている、いわゆる親戚価格である。」旨の申述をしていることからすると、本件各〇〇に係る仕入単価は、本件仕入単価計算式に基づき算出された価格に一定の金額が上乗せされていたものと推認される。 (3) 本件取締役が、原処分庁に対して、「本件親族事業者との取引について通常より少し上乗せした親戚価格である。」と説明したことはない。
 本件取締役は、本件各仕入先との仕入単価の決定について関与することはないし、個別に本件各仕入先との仕入単価について報告を受けることもなく、本件各仕入先からの仕入単価を優遇するよう従業員に指示したこともない。

4 当審判所の判断

(1) 法令解釈

法人税法第37条の寄附金には、その最も典型的な形態である金銭の無償の給付のほかにも様々な形態があり得ることから、まず、同条第7項において、いずれの名義をもってするかを問わず、対価性のない金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与を寄附金として扱う旨規定している。また、法人税法第37条第8項において、対価性のある資産の譲渡又は経済的利益の供与についても、その対価と譲渡の時における価額又は供与の時における価額との間に差がある場合には、その差額のうち実質的に贈与又は無償の供与をしたと認められる金額が寄附金の額に含まれると定め、寄附金に該当する利益供与の形態と損金の額に算入されない寄附金の範囲を明らかにしており、同項は同条第7項の内容を補完し、実質的には同項の一部を構成しているものと解される。そして、法人税法第37条第8項は、資産の低廉譲渡等による実質的な贈与の場合について定めたものであるが、逆に、資産の譲受けに当たり時価よりも不相当に高い対価を支払うことにより相手方に実質的に贈与を行う場合にも、当該時価相当額の超過部分をそのままにしておくと、減価償却費や譲渡原価等に形を変えて損金算入される結果となることは資産の低廉譲渡等の場合と同様であるから、同条第7項により、当該超過部分の金額は寄附金の額に含まれると解するのが相当である。
 なお、上記の時価とは、当該資産につき不特定多数の当事者間における自由な取引において通常成立すると認められる価額をいうものと解される。

(2) 認定事実

請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。

  • イ 本件仕入金額の決定方法は、次のとおりである。
    • (イ) 本件営業部長と本件親族事業者は、本件取引において、各月末頃の本件各〇〇の状態を見て、目利きにより「歩留り」の数値を判断した上で、交渉により本件各〇〇の仕入単価を決定していた。
    • (ロ) 本件営業部長は、上記(イ)の交渉に当たり、本件仕入単価計算式によって算出した金額を目安としていた。
       なお、この方法は、他の仕入先との仕入単価の交渉においてもおおむね同様であった。
    • (ハ) 請求人は、毎月、〇〇の相場等を踏まえ、取り扱う商品の販売単価、具体的には「N」及び「P」(いずれも〇〇(以下「業界紙」という。)の「〇〇市中相場」欄に記載されている銘柄で、「P」は「N」より高値である。)に係る単価をそれぞれ決定し、この単価を本件仕入単価計算式の「建値」としていた。
       請求人は、一般的な仕入先には「N」の相場を基にした「建値」を使用していたが、本件各仕入先との取引においては、本件営業部長が仕入業務の担当となった以降、「P」の相場を基にした「建値」を使用していた。
       なお、請求人は、本件各仕入先以外の大口仕入先との仕入単価の交渉に当たっても、「P」の相場を基にした「建値」を使用する場合があった。
    • (ニ) 本件営業部長及び本件親族事業者は、目利きにより、質・形状の違い等を見た目で判断した「歩留り」により本件各〇〇の区分を判定しており、その区分は、〇〇Bの質が一番低く、〇〇Cの質が一番高かった。
    • (ホ) 請求人は、本件各〇〇の仕入単価について、〇〇Cは〇〇Aより高く、〇〇Bは〇〇Aより低く設定していた。
  • ロ 請求人が本件取引期間に仕入れた本件各〇〇の総重量の内訳は、〇〇Aが〇〇〇〇kg、〇〇Bが〇〇〇〇s、〇〇Cが○○○○sであった。
  • ハ 請求人は、令和3年10月12日に、本件親族事業者から仕入れた〇〇Aの歩留試験を実施したところ、その「歩留り」は〇〇%であった。
     また、請求人は、令和3年11月30日に、本件親族事業者から仕入れた〇〇Cの歩留試験を実施したところ、その「歩留り」は〇〇%であった。
  • ニ 〇〇の「歩留り」等に係る業界の認識等は、次のとおりである。
    • (イ) 〇〇協会が作成した「〇〇」及び同協会が設置した〇〇の処理とリサイクルに関する調査研究委員会の委員長が〇〇の処理とリサイクルについて解説したレポートによると、〇〇の「歩留り」は、同じ工場の同じ炉からでた〇〇であっても、投入原料や操業条件によって安定しないことが多い旨報告がある。
    • (ロ) 〇〇の取引価格は、〇〇の「重量」、「歩留り」、「相場」、「加工賃等経費・利益」(〇〇を精製するための加工賃及び利益)によって目安の金額が計算される、というのが業界における一般的な考え方であるが、取引当事者が協議して決定される場合もある。
       また、上記「相場」は、業界紙に掲載されている〇〇の相場が用いられることが多く、「歩留り」は、日々仕入れるごとに多少変化し、特に製造工程に変更があった場合には、大きく変化するものである。

(3) 検討

請求人が本件仕入金額を本件各事業年度の損金の額に算入して法人税等の申告をしたのに対し、原処分庁は、原処分庁算出金額を時価相当額とした上で、本件仕入金額のうち時価相当額よりも不相当に高額な部分が「実質的に贈与したと認められる金額」に当たると主張する。
 そこで、原処分庁算出金額が時価相当額であり、本件仕入金額に時価相当額よりも不相当に高額な部分があるか否かについて検討する。

  • イ 原処分庁算出金額が時価相当額であるといえるか否かについて
    • (イ) 原処分庁は、本件仕入単価計算式により本件各〇〇の時価相当額を計算し、原処分庁算出金額を算定している。
       本件仕入単価計算式は、上記(2)ニ(ロ)のとおり、〇〇の取引価格の目安となる金額の計算方法として、〇〇の精製を行う業界において一般的に用いられている計算式の一つであり、不特定多数の当事者における自由な取引において通常成立すると認められる〇〇の価額を比準するものとして合理性が認められる。そうすると、原処分庁が、原処分庁算出金額を算出するに当たって用いた「建値」、「歩留り」及び「加工賃」の値が適切であるならば、原処分庁算出金額は、本件取引における〇〇の仕入単価の時価相当額として合理的に算出された金額であるといえる。
    • (ロ) 次に本件各〇〇の「歩留り」についてみると、上記(2)イ(イ)のとおり、本件各〇〇の「歩留り」は、本件営業部長と本件親族事業者の目利きにより判断されており、本件取引期間における本件各〇〇の「歩留り」に関する歩留試験の結果などの客観的な資料はなく、当審判所に提出された全ての証拠資料によっても正確な数値を認定することはできない。
       この点について、原処分庁は、本件取引に係る仕入単価の時価相当額の計算に当たって、本件各〇〇の「歩留り」は、令和3年10月に行われた〇〇Aの歩留試験の結果による値である〇〇%と同等かこれを下回ると認められ、この値は本件取引期間においても同様であるから、本件取引期間における本件各〇〇の「歩留り」の数値として一律に〇〇%を用いるべき旨主張する。
       しかしながら、上記(2)ニによれば、一般的に〇〇の「歩留り」は一定ではないことが通常であると認められる。また、上記1(3)ロ(ロ)のとおり、請求人は、本件各仕入先との仕入単価交渉に際して「歩留り」を考慮し、仕入先元帳でも本件各仕入先から仕入れた〇〇を〇〇A、〇〇B及び〇〇Cに区分して計上しており、取引単価についても、上記(2)イ(ホ)のとおり、〇〇Cは〇〇Aより高く、〇〇Bは〇〇Aより低く設定していたところ、本件取引期間後ではあるが、実際に請求人が行った歩留試験において、上記(2)ハのとおり、令和3年10月の〇〇Aの「歩留り」が〇〇%であったのに対し、令和3年11月の〇〇Cの「歩留り」が〇〇%という結果が出ており、〇〇Cは〇〇Aよりも「歩留り」が高いことが認められる。
       そうすると、本件取引期間における本件各〇〇の「歩留り」についても一定の数値ではなく、〇〇の区分によっても「歩留り」の数値に違いがあったと考えられる。
       その上、本件取引期間に仕入れた本件各〇〇の総重量の内訳は、上記(2)ロのとおりであるところ、その割合は、〇〇Aが26.4%、〇〇Bが0.8%、〇〇Cが72.8%であり、「歩留り」が高いと認められる〇〇Cの仕入重量が多くの割合を占め、「歩留り」が低いと認められる〇〇Bの仕入重量が占める割合は極めて少ないことも併せ考慮すると、本件仕入単価計算式を用いて時価相当額を算出するに当たり、原処分庁が主張するように本件各〇〇の全てに令和3年10月の〇〇Aの「歩留り」である〇〇%を用いることが相当であるとはいえない。
    • (ハ) したがって、原処分庁が原処分庁算出金額を計算するに当たり用いた「歩留り」の数値は、本件取引期間における本件各〇〇の「歩留り」の数値であるとはいえないから、原処分庁算出金額は時価相当額であるとはいえない。
  • ロ 本件仕入金額に時価相当額よりも不相当に高額な部分があるかについて
     上記イ(イ)のとおり、本件仕入単価計算式は、〇〇の時価を算出する方法として合理性が認められるところ、当審判所に提出された全ての証拠資料によっても、本件取引期間の「歩留り」の正確な数値を認定することはできないから、本件仕入単価計算式を用いる方法により本件取引期間における本件各〇〇の時価相当額を算出することはできない。
     もっとも、上記(2)イのとおり、本件各仕入先からの仕入単価は、本件営業部長が、本件仕入単価計算式によって算出された金額を目安に本件親族事業者と交渉して合意した金額であるところ、本件仕入単価計算式による算出に当たっては、上記(2)イ(イ)及び(ハ)のとおり、「建値」として〇〇の相場を基にした金額が、「歩留り」として本件営業部長が本件親族事業者と目利きにより判断した数値がそれぞれ用いられ、当審判所に提出された証拠資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によっても、この目利きによる「歩留り」の判断が不合理であるとは認められない。また、本件各仕入先に対する「加工賃」の額が不相当に低額であるとも認められない。そうすると、本件営業部長が本件親族事業者と仕入単価を交渉する際に本件仕入単価計算式により算出した金額は、不特定多数の当事者間における自由な取引において通常成立すると認められる価額、すなわち時価に比して不相当に高額であったとは認められない。
     そして、当審判所に提出された証拠資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によっても、ほかに本件仕入金額が時価相当額に比して不相当に高額であることをうかがわせる事実は認められないから、本件仕入金額に時価相当額よりも不相当に高額な部分があるとは認められない。
  • ハ 小括
     以上によれば、本件仕入金額は、本件各〇〇の時価相当額よりも不相当に高額であるとは認められず、「実質的に贈与したと認められる金額」があるとも認められないことから、原処分庁算出金額と本件仕入金額との差額は法人税法第37条に規定する寄附金の額には該当しない。

(4) 原処分庁の主張について

  • イ 原処分庁は、上記3の「原処分庁」欄の(2)のとおり、本件各仕入先以外の仕入先について、本件仕入単価計算式を用いて仕入単価を比較した結果、双方に乖離が見られないことから、本件仕入単価計算式を用いて計算した原処分庁算出金額は時価相当額である旨主張する。
     しかしながら、原処分庁算出金額が時価相当額であるとはいえないことは上記(3)イのとおりであり、原処分庁が主張する事情は上記結論を左右しないから、原処分庁の主張には理由がない。
  • ロ 原処分庁は、上記3の「原処分庁」欄の(3)のとおり、本件取引について、本件取締役が「いわゆる親戚価格である。」旨の申述をしていることからすると、本件各〇〇に係る仕入単価は本件仕入単価計算式に基づき算出された価格に一定の金額が上乗せされていたものと推認される旨主張する。
     確かに、上記1(3)イ(ハ)のとおり、本件取締役と本件親族事業者は親族関係にあり、上記(2)イ(ハ)のとおり、仕入単価の目安で使用する「建値」も一般の仕入先との取引に用いる「N」ではなく、より高値である「P」の相場を基にした金額を使用している。
     しかしながら、上記(2)イ(イ)のとおり、仕入単価の決定は、本件営業部長と本件親族事業者との間で交渉により決められており、当審判所に提出された全ての証拠資料等によっても、本件取締役が本件親族事業者との仕入単価の決定に介入したとは認められないから、本件仕入金額については、本件親族事業者が本件取締役の親戚であることを考慮して一定の金額が加算された仕入単価に基づくものということはできない。また、上記(2)イ(ハ)のとおり、他の大口仕入先に対しても「P」の相場を基にした金額を使用して仕入金額を交渉している場合があることからすると、本件取引に「P」の相場を基にした金額を使用していることをもって、直ちに本件仕入金額の一部に贈与と認められる金額が存在するとはいえない。したがって、原処分庁の主張には理由がない。

(5) 原処分の適法性について

  • イ 本件法人税各更正処分について
    • (イ) 寄附金の損金不算入額及び事業税等の損金算入額について
       以上のとおり、本件仕入金額について寄附金に該当する金額は認められないことから、所得金額の計算に係る加算額及び減算額(平成27年10月期は、平成26年10月期の更正処分の一部の取消しに伴い、再計算した事業税及び地方法人特別税の額を含む。)並びに寄附金の損金不算入額を再計算すると、本件各事業年度の所得金額の加算額及び減算額並びに寄附金の損金不算入額は、別表3の各「審判所認定額」欄のとおりとなる。
    • (ロ) 所得金額等について
       本件法人税各更正処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められないところ、上記(イ)を前提に、当審判所において、請求人の本件各事業年度の所得金額及び納付すべき法人税額を計算すると、別表3の各「審判所認定額」欄のとおり、本件法人税各更正処分の所得金額及び納付すべき法人税額をいずれも下回る。
       したがって、本件法人税各更正処分は、いずれもその一部を別紙1及び別紙2「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。
  • ロ 復興特別法人税及び地方法人税の各更正処分について
     上記イを前提に、当審判所において、請求人の平成26年10月課税事業年度の復興特別法人税及び平成27年10月課税事業年度の地方法人税の納付すべき税額を計算すると、別表4の各「審判所認定額」欄のとおり、平成26年10月課税事業年度の復興特別法人税及び平成27年10月課税事業年度の地方法人税の各更正処分の納付すべき税額をいずれも下回る。
     したがって、原処分のうち、平成26年10月課税事業年度の復興特別法人税及び平成27年10月課税事業年度の地方法人税の各更正処分は、いずれもその一部を別紙3及び別紙4「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。
  • ハ 法人税に係る各賦課決定処分について
    • (イ) 上記イのとおり、平成26年10月期の法人税の更正処分は、その一部を取り消すべきであるから、過少申告加算税の額の計算の基礎となる税額は〇〇〇〇円となる。
       したがって、原処分のうち、平成26年10月期の法人税に係る過少申告加算税の賦課決定処分は、その全部を取り消すべきである。
    • (ロ) また、平成27年10月期の法人税の更正処分は、その一部を取り消すべきであるから、過少申告加算税の額の計算の基礎となる税額は〇〇〇〇円となり、重加算税の額の計算の基礎となる税額は〇〇〇〇円となる。
       したがって、平成27年10月期の法人税に係る過少申告加算税の賦課決定処分は、その全部を取り消すべきであり、平成27年10月期の法人税に係る重加算税の賦課決定処分は、その一部を別紙2「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。
  • ニ 復興特別法人税及び地方法人税に係る各賦課決定処分について
     上記ロのとおり、原処分のうち、平成26年10月課税事業年度の復興特別法人税及び平成27年10月課税事業年度の地方法人税の各更正処分は、いずれもその一部を取り消すべきであるから、過少申告加算税の額の計算の基礎となる税額はいずれも〇〇〇〇円となる。
     したがって、原処分のうち、平成26年10月課税事業年度の復興特別法人税及び平成27年10月課税事業年度の地方法人税に係る過少申告加算税の各賦課決定処分は、いずれもその全部を取り消すべきである。

(6) 結論

よって、審査請求は理由があるから、原処分の一部を取り消すこととする。

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