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(平12.2.29裁決、裁決事例集No.59 62頁)

《裁決書(抄)》

1 審査請求人(以下「請求人」という。)は、本件審査請求において、平成9年7月23日から平成10年5月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税の更正処分(以下「本件更正処分」という。)に係る延滞税(以下「本件延滞税」という。)並びに当該延滞税についてされた国税に係る還付金等による委託納付(以下「本件委託納付」という。)について、〔1〕所轄庁は、請求人による消費税の簡易課税(消費税法第37条《中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例》第1項に規定する控除の方法をいう。)の選択の取下承認申請書の提出から賦課決定通知まで7か月間を要しているところ、これは所轄庁の事由によるものであるから、この期間を基準とする本件延滞税は違法である、〔2〕地方税法附則第9条の10《譲渡割に係る充当等の特例》第5項は、委託納付をした税務署長は、遅滞なく、その旨を委託したものとみなされた者に通知しなければならないと規定しているのに、本件委託納付について送付された「国税還付金支払及び充当等通知書」には、何をいくらどのような根拠で充当したのか記載されていないとして、本件延滞税と本件委託納付の取消しを求めている。
2 ところで、国税通則法(平成11年法律第10号による改正前のもの。以下「通則法」という。)第75条《国税に関する処分についての不服申立て》第1項の規定によれば、不服申立てをすることができるのは、国税に関する法律に基づく処分、すなわち、公権力の行使の主体である行政庁が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成し、又はその範囲を確定することが法律上予定されているものに限られているので、本件延滞税及び本件委託納付がこれに該当するか否かについて検討する。
(1)本件延滞税について
 通則法第60条《延滞税》は、納税者は、同条第1項各号の一に該当するときは、延滞税をその額の計算の基礎となる国税にあわせて納付しなければならず、その額は、当該国税の法定納期限の翌日からその国税を完納する日までの期間の日数に応じ、その未納の税額に所定の割合を乗じて計算した額とする旨規定し、同法第15条《納税義務の成立及びその納付すべき税額の確定》第3項第7号は、延滞税は、納税義務の成立と同時に特別の手続を要しないで納付すべき税額が確定する国税である旨規定している。
 これらの規定によれば、延滞税は、通則法第60条第1項各号所定の要件を充足することによって法律上当然にその納税義務が成立し、その成立と同時に特別の手続を要しないで納付すべき税額が確定するものであって、税務署長による課税処分等の国税に関する法律に基づく処分によって確定するものではないというべきである。
 したがって、本件延滞税に対する審査請求は、通則法第75条第1項に規定する国税に関する法律に基づく処分が存在しないにもかかわらずなされたものである。
(2)本件委託納付について
 地方税法附則第9条の10第3項は、国税に係る還付金等の還付を受けるべき者につき未納の消費税及び地方消費税(以下「未納譲渡割等」という。)がある場合には、当該還付金等の還付を受けるべき者は、当該還付をすべき税務署長に対し、当該還付金等により未納譲渡割等を納付することを委託したものとみなす旨規定し、同条第4項は、同条第3項の規定が適用される場合には、当該委託をするのに適することになった時に、その委託納付に相当する額の還付及び納付があったものとみなす旨規定している。
 ところで、請求人提出資料及び当審判所の調査によれば、所轄庁は、平成11年3月26日付で、請求人の国税に係る還付金等により本件延滞税を委託納付していることが認められるのであるが、上記の規定によれば、当該還付金等の還付及び当該延滞税の納付の効果は、地方税法附則第9条の10第3項の規定に該当する要件を充足することにより、法律上当然に生ずるものであって、税務署長が委託納付することにより生ずるものではない、換言すれば、委託納付は既に法律効果の生じている納付の事実を事務手続上明確にするための内部的処理にすぎないのであるから、所轄庁のなした本件委託納付を、直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定する処分とみることはできない。
 したがって、本件委託納付に対する審査請求は、通則法第75条第1項に規定する国税に関する法律に基づく処分についての不服申立てということはできない。
3 以上によれば、本件審査請求は、いずれも不適法といわざるを得ない。

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