ホーム >> 公表裁決事例集等の紹介 >> 公表裁決事例 >> 裁決事例集 No.60 >> (平12.12.28裁決、裁決事例集No.60 157頁)

(平12.12.28裁決、裁決事例集No.60 157頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)事案の概要

 本件は、会社員である審査請求人(以下「請求人」という。)が不動産貸付の業務に供したマンションの減価償却費の計算に関して、土地及び建物(建物本体及び建物附属設備を合わせたものをいう。以下同じ。)並びに建物本体及び建物附属設備の取得価額の区分を争点とする事案である。

(2)審査請求に至る経緯

 別表1「審査請求に至る経緯」のとおり。

(3)基礎事実

 以下の事実は、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査によってもその事実が認められる。
イ 請求人は、〔1〕Eマンション306号室(以下「Eマンション306号室」という。)、〔2〕Fマンション703号室(以下「Fマンション703号室」という。)及び〔3〕Gマンション805号室(以下「Gマンション805号室」といい、Eマンション306号室及びFマンション703号室と併せて「本件物件」という。)の各マンションを賃貸目的に取得し、当該取得した日から不動産貸付の業務の用に供している。
ロ 本件物件の所在地、新築年月日、取得年月日及び取得価額は、次表のとおりである。

ハ Fマンション703号室及びGマンション805号室の売主は、H株式会社(以下「H社」という。)である。
ニ 本件物件の売買契約書には、土地及び建物並びに建物本体及び建物附属設備のそれぞれの価額は記載されておらず、消費税相当額の記載もない。
ホ Fマンション703号室及びGマンション805号室の平成6年度における固定資産税評価額は、次表のとおりである。

ヘ 請求人は、減価償却資産の償却の方法として定率法を選択し、原処分庁に書面によりその旨を届け出ている。

トップに戻る

2 主張

(1)原処分庁の主張

 原処分は、次の理由により適法であるから、審査請求を棄却するとの裁決を求める。
イ 本件更正処分について
(イ)土地及び建物の取得価額の区分
A 土地及び建物を一括購入した場合におけるそれぞれの取得価額の算出に当たっては、売買契約書等でそれぞれの価額が判明している場合を除き、一括購入した資産の取得価額総額をその取得した時における土地及び建物のそれぞれの通常の状態における取引価額の比によるなどして、合理的にあん分することが必要である。
B 請求人は、土地及び建物の取得価額の区分の方法について、財産評価基本通達14《路線価》に定める路線価(以下「路線価」という。)をもって土地の実勢価格を算出し、取得価額総額から当該土地の価額を控除して建物の価額を算出する方法を採用すべきであると主張している。
 しかしながら、路線価は相続税や贈与税の課税価格の計算の基礎となるもので、宅地の評価の際に採用する評価の指標の一つである。
 また、請求人が主張する土地の価額を路線価を基に算出する方法では、当該物件が通常価額で販売されようが値引価額で販売されようが土地の価額は一定となるため、建物の価額のみに値引額が反映されてしまうことになるので、合理性があるとは認められない。
C 本件物件の土地及び建物のあん分計算については、信頼のおける機関等が合理的な評価基準によりそれぞれを評価した額をもって土地及び建物のあん分比を算出し、その比率を取得価額総額に乗じて土地及び建物の価額を算出するのが相当と判断し、そのあん分の基礎として固定資産税評価額を用いたものである。
(ロ)建物本体及び建物附属設備の取得価額の区分
A 耐用年数の適用等に関する取扱通達(以下「耐用年数通達」という。)2―2―1《木造建物の特例》において、建物の附属設備については、原則として建物本体と区分して耐用年数を適用することとされているが、木造等の建物の附属設備については、建物本体と一括して建物の耐用年数を適用することができることとされている。
B 減価償却費の計算を行うに当たっては、建物本体及び建物附属設備の取得価額が明らかでなければならないが、原処分及び異議申立てに係る調査において請求人から提示があった売買契約書等からでは建物本体及び建物附属設備の価額が明確に区分できなかったので、やむを得ず、建物附属設備の価額を建物本体の価額に含めたところで減価償却費を計算したものである。
(ハ)したがって、平成6年分、平成7年分、平成8年分、平成9年分及び平成10年分(以下「各年分」という。)の所得税の各更正処分(以下「本件更正処分」という。)は、適法である。
ロ 本件賦課決定処分について
 各年分の納付すべき税額のうち、請求人の申告額を上回る部分の税額の基礎となった事実には、国税通則法(以下「通則法」という。)第65条《過少申告加算税》第4項に規定する過少申告加算税を賦課しない場合の正当な理由があるとは認められず、また、請求人は、重加算税を賦課する基礎となった事実について認容しており、その計算にも誤りはないことから、各年分の過少申告加算税の各賦課決定処分並びに平成8年分及び平成9年分の重加算税の各賦課決定処分(以下、これらの賦課決定処分を併せて「本件賦課決定処分」という。)は、いずれも適法である。

トップに戻る

(2)請求人の主張

 原処分は、次の理由により違法であるから、その一部の取消しを求める。
イ 本件更正処分について
(イ)土地及び建物の取得価額の区分
A 土地及び建物を一括購入した場合に、それぞれの取得価額を区分する方法は、原則として購入価額の総額から土地又は建物の価額として相当と認められる金額を控除して、残額を土地又は建物の価額として算出することとされている。
 本件物件に係る土地は、路線価地域にあるので、まず当該路線価に基づき土地の価額を算出し、これを購入価額の総額から控除して残額を建物の価額とした。
 なお、路線価は一般的に実勢価格の8割とされているので、本件においては、路線価をこの割合で割り戻して実勢価格に増額修正した。
B 原処分庁は、購入価額の総額を土地及び建物の固定資産税評価額によりあん分して土地の価額を算出しているが、これにより算出した土地の価額は、路線価を基に算出した土地の実勢価格を上回っており、その差額について何ら説明がなされていないから、原処分庁が主張する算出方法は合理的とはいい難い。
 毎年改定作業をしている路線価と、3年に1度しか評価替えがされない固定資産税評価額とでは、いずれが実勢価格を適正に反映しているかは明らかであり、本件の場合は、区分計算の合理性よりも、算出された価額がどれだけ実態に合致したものであるかどうかを判断の基準とすべきである。
C 不動産の値引きについては、それが土地や建物に反映することそのものは問題ではなく、値引後の土地及び建物の区分が適正であるか否かの問題である。
 そもそも、マンション等の共同住宅の敷地である土地は、敷地利用権と呼ばれているとおり更地ではないから、その評価額は、更地を前提としている路線価よりも更に減額すべきであり、この場合、販売価額に占める建物の割合はもっと大きくなる。
 また、マンションは、同一規格のものであっても、階層、向き、眺望の差等によって売買価額が異なっているが、それは敷地利用権の価額差ではなく、占有建物の使用価値の差によるものである。
 したがって、値引きの理由は、売買価額の大きな部分を占める建物にあるというべきであり、マンションの取得価額の算定については、購入価額の総額から階層等にかかわらず一定である敷地利用権の価額を控除して、残額を建物の価額とする方法が合理的である。
(ロ)建物本体及び建物附属設備の取得価額の区分
A 減価償却資産の耐用年数等に関する省令(以下「耐用年数省令」という。)の別表第一《機械及び装置以外の有形減価償却資産の耐用年数表》には、建物及び建物附属設備の耐用年数がそれぞれ明記されており、所得税法施行規則第32条《種類等を同じくする減価償却資産の償却費》には、所得金額の計算上必要経費に算入される償却費の額は、耐用年数省令に規定する減価償却資産の種類の区分ごとに計算した金額とする旨規定されている。
 このことから、建物本体及び建物附属設備は区分して減価償却費の計算をする必要があるので、同業他社の資料を基に建物附属設備部分を30%として計算した。
B 原処分庁が「区分が明確にできないからやむを得ず」という理由で、建物本体及び建物附属設備を区分せずに一体として償却費の額を計算したことは、前記Aの法令に違反するものであり、区分が困難であることを理由に、法令に違反する所得計算を行うことは許されない。
 また、土地及び建物については、「合理的にあん分することが必要である」として必ずそれらを区分する一方で、建物本体及び建物附属設備については、区分が明確にできないとの理由で区分する必要がないとしているが、これは理論的に矛盾している。
 さらに、税法や通達は、資本的支出と修繕費の区分の特例のように、区分が困難な場合はどちらか一方にせず、一定の割合を用いても差し支えないとしているところ、原処分庁の取扱いは、これらの税法や通達との一貫性がない。
ロ 本件賦課決定処分について
 前記イのとおり、本件更正処分は違法であり、その一部を取り消すべきであるから、これに伴い、本件賦課決定処分もその一部を取り消すべきである。
 なお、重加算税の賦課決定処分の基礎となった事実については、争わない。

トップに戻る

3 判断

 本件は、土地とともに一括購入した建物の減価償却費の計算において、建物本体及び建物附属設備の取得価額をどのように算出すべきかについて争いがあるので、以下審理する。

(1)本件更正処分について

イ 認定事実
 原処分関係資料及び当審判所の調査によると、次の事実が認められる。
(イ)Eマンション306号室は、売買契約書によるとI株式会社(以下「I社」という。)が売主となっているが、実際の売主は株式会社J(以下「J社」という。)であり、J社は、当該物件をI社から取得した日と同時期に請求人に販売している。
(ロ)J社は、Eマンション306号室の取得価額及び販売価額を土地及び建物に区分経理していない。
(ハ)I社は、Eマンション306号室の販売価額を土地及び建物に区分経理しており、その割合は土地26.10%、建物73.90%になる。
(ニ)H社は、Fマンション703号室及びGマンション805号室の取得価額及び販売価額を土地及び建物に区分経理していない。
(ホ)請求人がFマンション703号室及びGマンション805号室を取得した日の前後の期間において、同マンションにおける当該物件と規格及び階層等が類似する他の物件に係る売買事例はない。
(ヘ)本件物件の建物本体及び建物附属設備の工事費の割合は、それぞれの建築主が保存している工事請負契約書から算出すると、次表のとおりとなる。

ロ 土地及び建物の取得価額の区分
(イ)購入した減価償却資産の取得価額については、所得税法施行令第126条《減価償却資産の取得価額》第1項第1号において、当該資産の購入の代価と当該資産を業務の用に供するために直接要した費用の額の合計額(以下「購入代価等」という。)とする旨規定している。
 したがって、土地及び建物を一括購入した場合の建物の取得価額については、売買契約書等により建物の購入代価等が明らかな場合には、通常、その価額となるが、それが明らかでない場合には、購入代価等の総額を何らかの合理的な方法により土地及び建物に区分して、建物の取得価額を算出することが必要となる。
 なお、売買契約書等により建物の購入代価等が明らかでない場合でも、売主において、土地及び建物の販売価額を区分経理等しており、その価額が客観的かつ合理的なものと認められる場合には、売買契約書等により建物の購入代価等が明らかな場合と同様に取り扱うことが相当である。
(ロ)土地及び建物を一括購入し、建物の購入代価等が明らかでない場合の合理的な区分計算の方法について検討すると、〔1〕当該物件の過去の売買価額が土地及び建物に区分されている場合にその価額を基礎とする方法、〔2〕当該物件に類似する物件の売買実例があり、その売買価額が土地及び建物に区分されている場合にその価額を基礎とする方法、〔3〕財産評価基本通達により算出した価額(以下「相続税評価額」という。)や固定資産税評価額等で、当該物件の土地及び建物につき合理的と認められる価額を見積もることが可能な場合に、その価額を基礎とする方法等が考えられる。
(ハ)しかしながら、これらいずれの方法による場合でも、当該物件を取得した日が前記(ロ)の区分計算の基礎とする価額が定まった日と比較的近い場合はともかく、その間には、土地及び建物に価格変動があり、また、建物には損耗があることから、その基礎となる土地及び建物の価額を、相続税評価額、固定資産税評価額及び建築統計等の何らかの指標等を用いて補正し、合理性を確保する必要がある。
 もっとも、その基礎とする価額が定まった日がいわゆるバブル期及びその前後(以下、これらの期間を併せて「バブル期等」という。)に当たる場合には、特に土地について、相続税評価額や固定資産税評価額と実勢価格との差異が年度ごとに一定でないことなどから、これらの指標等を用いて補正することは適当でない。
(ニ)また、前記(ロ)のいずれの方法による場合でも、〔1〕その基礎とする土地及び建物の価額の比を当該物件の全体の取得価額に乗じて当該建物の取得価額を算出する方法(以下「あん分法」という。)と、〔2〕その基礎とする土地の価額を当該物件の全体の取得価額から控除して当該建物の取得価額を算出するか、その基礎とする建物の価額をそのまま当該建物の取得価額とする方法(以下「差引法」という。)のいずれの方法によることが合理的かを検討する必要がある。
 そこで、本件物件について検討すると、マンションは土地及び建物が不可分一体となっており、差引法では、通常の販売価額よりも高額又は低額で販売された場合、一方の価額が実態から著しくかけ離れた価額となる場合がある。
 これに対して、あん分法では、通常の販売価額よりも高額又は低額で販売された場合であっても、その差額は土地及び建物の双方の価額に反映されることとなる。
 したがって、本件物件においては、請求人が主張する差引法に比較してあん分法の方が、より実態に近似するがい然性が高く合理的である。
(ホ)さらに、本件物件について、前記(ロ)の〔3〕の方法について検討すると、相続税評価額は、土地については国税局長が財産評価基準として定めた路線価等により、建物については地方公共団体が定めた固定資産税評価額を基礎とすることとしているのに対し、固定資産税評価額は、土地及び建物の双方とも地方公共団体が定めている。
 したがって、本件では、土地及び建物の双方を同一の機関で定めている固定資産税評価額を基礎とする方がより合理的である。
 なお、固定資産税評価額は、請求人が主張するように3年に1度しか評価替えが行われないことから、評価替えを行った年度(以下「基準年度」という。)以外の年度に取得した物件については、基準年度からその取得した年までの価格変動及び損耗について、当該評価額を補正する必要がある。
(ヘ)以上のことから検討すると、次のとおりである。
A Eマンション306号室
 Eマンション306号室については、前記1の(3)のニのとおり、売買契約書に土地及び建物のそれぞれの価額は記載されていないが、前記イの(ハ)のとおり、I社において土地及び建物のそれぞれの販売価額が区分経理されており、また、前記イの(イ)のとおり、同社の販売時期が請求人の取得時期と同時期である上、その区分経理された販売価額を不相当とする理由は特に認められないので、当該区分経理された土地及び建物のそれぞれの販売価額を基礎として、あん分法により算定することが相当である。
B Fマンション703号室及びGマンション805号室
 Fマンション703号室及びGマンション805号室は、前記1の(3)のニのとおり、売買契約書に土地及び建物のそれぞれの価額は記載されておらず、また、前記イの(ニ)のとおり、H社は土地及び建物のそれぞれの取得価額及び販売価額を区分経理していないことから、前記(ロ)の〔1〕ないし〔3〕のいずれかの方法で当該建物の合理的な取得価額を算出する必要がある。
 ところで、〔1〕前記1の(3)のロのとおり、当該物件は、新築年月日がバブル期等に当たるため、仮に、建築主が土地及び建物の価額を区分経理していたとしても、その後の価格変動等に対する的確な補正ができないこと、また、〔2〕前記イの(ホ)のとおり、類似物件に係る売買実例が見当たらないことから、当該物件の土地及び建物のそれぞれの取得価額は、前記(ホ)のとおり、取得年度における土地及び建物の固定資産税評価額を基礎として、あん分法により算出することとする。
 なお、Fマンション703号室及びGマンション805号室については、取得した平成6年が固定資産税評価の基準年度となっていることから、あん分の基礎とする固定資産税評価額を補正する必要はない。
ハ 建物本体及び建物附属設備の取得価額の区分
(イ)所得税法施行規則第32条において、減価償却資産で耐用年数省令に規定する耐用年数を適用するものについての不動産所得の金額の計算上必要経費に算入される償却費の額は、当該耐用年数に応じ、耐用年数省令に規定する減価償却資産の種類の区分ごとに、かつ、当該耐用年数及び居住者が採用している償却の方法により計算した金額とする旨規定されている。
 また、耐用年数省令別表第1の減価償却資産の種類には、建物及び建物附属設備が区分して掲げられている。
 なお、耐用年数通達2―2―1により、木造の建物等の建物附属設備については、建物本体と一括して耐用年数を適用することができることとして取り扱われているが、この取扱いは、木造の建物等にあっては、建物本体及び建物附属設備の耐用年数の差がそれほど著しくなく、その建物附属設備の金額も少額な場合が多いことなどから、経理の簡素化等の見地からの取扱いと解される。
 したがって、鉄筋鉄骨造りのマンションの場合には、建物本体及び建物附属設備の減価償却費の計算は、それぞれ別個の耐用年数により計算する必要がある。
(ロ)購入した建物本体及び建物附属設備については、前記ロの(イ)と同様、それぞれの購入代価等が売買契約書等で区分して明らかにされている場合は、その区分されているところの購入代価等によることとなるが、その購入代価等が区分して明らかにされていない場合には、建物の取得価額を合理的な方法により建物本体及び建物附属設備に区分計算する必要がある。
 このことから、請求人から提示があった売買契約書等からでは建物本体及び建物附属設備の価額が明確に区分できなかったので、やむを得ず、建物附属設備の価額を建物本体の価額に含めたところで減価償却費を計算したとする原処分庁の主張は採用できない。
(ハ)本件物件については、前記1の(3)のニのとおり、売買契約書に建物本体及び建物附属設備のそれぞれの購入代価等が明らかにされていない。
 そこで、合理的な方法で建物の取得価額を建物本体及び建物附属設備に区分する必要があるが、請求人が主張する同業他社の物件から見積もった建物本体及び建物附属設備の価額の割合による方法も合理性のある方法と認められる。
 しかしながら、本件物件は、前記イの(ヘ)のとおり、本件物件の建築主が保存する工事請負契約書から建物本体及び建物附属設備のそれぞれの工事費の割合が算出でき、これを不相当とする理由は認められないから、請求人が主張する他の物件等の資料に基づき計算する方法より、本件物件の建築工事に係る資料に基づき計算される工事費の割合による方法がより合理的と認められる。
 なお、この工事費の割合は、新築時におけるものであるから、中古資産であるFマンション703号室及びGマンション805号室については、新築時から請求人の取得時までの損耗等を見込んでその割合を補正し、合理性を確保する必要がある。
ニ 不動産所得の金額等の計算
(イ)減価償却費の算定
A 建物の取得価額
(A)Eマンション306号室
 Eマンション306号室については、取得価額14,800,000円をI社が区分経理した土地及び建物の販売価額の割合によりあん分すると、建物の取得価額は、次表のとおりとなる。

(B)Fマンション703号室
 Fマンション703号室については、取得価額11,500,000円を取得時における固定資産税評価額によりあん分すると、建物の取得価額は、次表のとおりとなる。

(C)Gマンション805号室
 Gマンション805号室については、取得価額10,300,000円を取得時における固定資産税評価額によりあん分すると、建物の取得価額は、次表のとおりとなる。

B 建物本体及び建物附属設備の取得価額
(A)Eマンション306号室
 Eマンション306号室の建物の取得価額を前記イの(ヘ)の工事費の割合であん分すると、建物本体及び建物附属設備の取得価額は、次表のとおりとなる。

(B)Fマンション703号室及びGマンション805号室
 Fマンション703号室及びGマンション805号室に係る前記イの(ヘ)の工事費の割合を請求人が中古資産の取得時における建物本体及び建物附属設備の割合(以下「未償却残高の割合」という。)により補正した上で、建物の取得価額をあん分すると、建物本体及び建物附属設備の取得価額は、次表のとおりとなる。
 なお、未償却残高の割合は、次の算式で計算した。
未償却残高の割合=1−1×0.9×償却率(定額法)×(経過月数÷12)
(注)1 上記算式中の「経過月数」は、新築時から取得時までの経過月数をいう。
2 また、償却率は、建物本体は耐用年数60年の0.017、建物附属設備は耐用年数18年の0.055によった。
a Fマンション703号室

b Gマンション805号室

C 適用耐用年数
(a)Eマンション306号室
 Eマンション306号室は新築物件であることから、平成6年分ないし平成9年分について適用する耐用年数は、耐用年数省令(平成10年大蔵省令第50号による改正前のもの)別表第1に掲げられているとおり、建物は60年となり、建物附属設備は、請求人が当該設備をその構造又は用途ごとに区分せずに一括して償却しており、また、当該設備は主として金属製のものと認められることから、「前掲のもの以外のもの及び前掲の区分によらないもの」の「主として金属製のもの」の18年となる。
 また、平成10年分については、耐用年数省令(平成10年大蔵省令第50号による改正後のもので、以下「新耐用年数省令」という。)別表第1に掲げられているとおり、建物は47年となり、建物附属設備は平成6年分ないし平成9年分の耐用年数と同じとなる。
(b)Fマンション703号室
 Fマンション703号室は中古資産であるが、中古資産の耐用年数は、耐用年数通達(国税庁長官通達平成10年課法2―7による改正前のもの)1―5―2《中古資産の耐用年数の見積りの簡便法》の(2)において、その法定耐用年数から経過年数を控除した年数に経過年数の100分の20に相当する年数を加算した年数とすることとして取り扱われており、当審判所としても、この取扱いは相当と認められることから、これにより計算すると、平成6年分ないし平成9年分について適用する耐用年数は、建物は56年、建物附属設備は14年となる。
 また、平成10年分について適用する耐用年数は、新耐用年数省令第3条《中古資産の耐用年数等》第1項第2号のロの規定に基づいて計算すると、建物は43年、建物附属設備は平成6年分ないし平成9年分の耐用年数と同じとなる。
(c)Gマンション805号室
 Gマンション805号室は中古資産であるから、前記(b)と同様の計算となり、平成6年分ないし平成9年分について適用する耐用年数は、建物は55年、建物附属設備は13年となる。
 また、平成10年分について適用する耐用年数は、建物は42年、建物附属設備は平成6年分ないし平成9年分の耐用年数と同じとなる。
D 減価償却費の額
 各年分の減価償却費の額は、別表2のとおり、平成6年分が1,061,568円、平成7年分が1,348,944円、平成8年分が1,222,950円、平成9年分が1,112,307円及び平成10年分が1,168,894円となる。
(ロ)不動産所得の金額
 総収入金額及び減価償却費以外の必要経費の額については、原処分庁と請求人との間に争いはなく、当審判所の調査によっても、これを不相当とする理由は認められないから、各年分の不動産所得の金額は、次表のとおりとなる。

(ハ)損益通算の対象とならない金額
 不動産所得の金額の計算上生じた損失のうち、土地等を取得するために要した借入金の利子の額に対応する部分の金額は、租税特別措置法第41条の4《不動産所得に係る損益通算の特例》第1項の規定により、所得税法第69条《損益通算》第1項の規定の適用に当たっては、生じなかったものとみなされる。
 したがって、次表の金額は、損益通算の対象とならない。
A 平成6年分

B 平成7年分

C 平成8年分

D 平成9年分

E 平成10年分

(ニ)総所得金額
 不動産所得の金額以外の所得金額については、原処分庁と請求人との間に争いはなく、当審判所の調査によっても、これを不相当とする理由は認められない。
 したがって、各年分の総所得金額は、次表のとおりとなり、いずれも本件更正処分に係る総所得金額を下回るから、本件更正処分はいずれもその一部を取り消すべきである。

(ホ)配偶者特別控除
 原処分は、請求人の合計所得金額が10,000,000円を超えることから、平成8年分、平成9年分及び平成10年分について、所得税法第83条の2《配偶者特別控除》の規定の適用が受けられない旨判断しているが、前記(ニ)のとおり、請求人の、平成8年分、平成9年分及び平成10年分の合計所得金額は、いずれも10,000,000円以下となることから、配偶者特別控除の適用がある。

トップに戻る

(2)本件賦課決定処分について

イ 過少申告加算税の賦課決定処分
 各年分の過少申告加算税の各賦課決定処分については、前記(1)のとおり、本件更正処分がいずれもその一部を取り消されることに伴い、その基礎となる税額は、平成6年分が410,000円、平成7年分が690,000円、平成8年分が520,000円、平成9年分が460,000円及び平成10年分が100,000円となり、この税額の計算の基礎となった事実には、通則法第65条第4項に規定する過少申告加算税を賦課しない場合の正当な理由があるとは認められない。
 したがって、過少申告加算税の額は、通則法第65条第1項及び第2項の規定により、平成6年分が41,000円、平成7年分が78,500円、平成8年分が53,000円、平成9年分が46,000円及び平成10年分が10,000円となり、いずれも本件賦課決定処分に係る過少申告加算税の賦課決定処分の額を下回るので、いずれもその一部を取り消すべきである。
ロ 重加算税の賦課決定処分
 平成8年分及び平成9年分の重加算税の賦課決定処分については、重加算税を賦課するに当たり、その基礎となった事実について請求人は争わず、当審判所の調査によっても、これを不相当とする理由は認められない。
 しかしながら、平成8年分及び平成9年分については、配偶者特別控除に相当する税額が減額されることに伴い、重加算税の基礎となる税額は、平成8年分が170,000円及び平成9年分が230,000円となる。
 したがって、重加算税の額は、通則法第68条第1項の規定により、平成8年分が59,500円及び平成9年分が80,500円となり、いずれも本件賦課決定処分に係る重加算税の賦課決定処分の額を下回るので、いずれもその一部を取り消すべきである。
(3)原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所の調査によっても、これを不相当とする理由は認められない。

トップに戻る