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(平13.5.30裁決、裁決事例集No.61 175頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)事案の概要

 本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)の平成6年分の譲渡所得の金額の計算上、譲渡損失が生じているか否か及び重加算税の賦課決定処分の適否を争点とする事案である。

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(2)審査請求に至る経緯

イ 請求人は、平成6年分及び平成7年分(以下、両年分を併せて「各年分」という。)の所得税について、青色の確定申告書に別表の各「確定申告」欄のとおり記載して、いずれも法定申告期限までに申告した(以下、平成6年分の確定申告書を「本件6年分申告書」、平成7年分の確定申告書を「本件7年分申告書」という。)。
ロ 原処分庁は、請求人の各年分の所得税について、平成11年10月15日付で、別表の各「更正処分等」欄のとおり、いずれも更正処分(以下、平成6年分に対する更正処分を「本件6年分更正処分」、平成7年分に対する更正処分を「本件7年分更正処分」といい、これらを併せて「本件各更正処分」という。)及び重加算税の各賦課決定処分(以下、各年分に対する各賦課決定処分を併せて「本件各賦課決定処分」という。)をした。
ハ これに対し、請求人が本件各更正処分及び本件各賦課決定処分を不服として平成11年11月26日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、平成12年2月28日付で、別表の各「異議決定」欄記載のとおり、本件6年分更正処分及び平成6年分の賦課決定処分については、いずれもその一部を取り消す異議決定を、また、本件7年分更正処分及び平成7年分の賦課決定処分については、いずれも異議申立てを棄却する異議決定をした。
ニ 請求人は、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成12年3月22日に審査請求をした。

(3)基礎事実

 次の事実は、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 本件6年分申告書には、要旨次の内容を記載した「ゴルフ会員権の譲渡内容についてのお尋ね」と題する書面(以下「本件お尋ね」という。)及び株式会社H(以下「H社」という。)が発行した平成6年8月11日付の株式会社J(以下「本件ゴルフ場」という。)の会員番号○○の個人正会員の会員権(以下「本件会員権」という。)の買取りに関する別紙1の計算書(以下「本件買取計算書」という。)が添付されていた。
(イ)平成2年12月12日、株式会社Kから41,150,000円で購入した本件会員権を、平成6年8月、H社に21,000,000円で譲渡した。
(ロ)本件会員権の購入時に名義書換料・仲介料1,651,000円を株式会社Kに、また、譲渡時に仲介料420,000円をH社にそれぞれ支払った。
(ハ)本件会員権の譲渡に係る譲渡所得の金額は、22,571,000円の譲渡損失である。

[算式](単位:円)
(譲渡価額) (取得費等+譲渡費用) 
21,000,000(41,500,000+1,651,000+420,000)△22,571,000
(注)△印は、損失の金額を表す。

ロ H社は、同社が本件会員権を21,000,000円で請求人に売り渡したとする別紙2の平成6年9月9日付の計算書(以下「本件売却計算書」という。)を請求人に交付した。
ハ 各年分の各種所得の金額及び所得控除の額は、請求人が各年分の確定申告書に記載したとおりである。

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2 主張

(1)請求人

 原処分(ただし、異議決定による一部取消し後のもの。以下同じ。)は、次の理由によりいずれも違法であるから、その全部を取り消す旨の裁決を求める。
イ 本件各更正処分について
(イ)請求人は、ゴルフ会員権の取引相場が購入価額の半分ほどとなり、更に相場が下がると考えたこと、本件ゴルフ場のほかLゴルフクラブの会員権を所有しており、P県内のゴルフ会員権は一つあれば業務等に差し支えないことから、格が高いと考えたLゴルフクラブを残し、平成6年8月11日、本件会員権を売却の意思を持ってH社に21,000,000円で売却した。しかしながら、本件ゴルフ場のメンバーである知人M(平成11年4月29日死亡)から、これ以上の相場の下落はない旨等言われ、また、その知人が重要な得意先である事情等を考慮して、売却先のH社に本件ゴルフ場の個人正会員の会員権の購入を依頼したところ、本件会員権が売却されず残っており、価格も売却価格と同額であることから、平成6年9月9日、購入代金及び手数料の合計21,420,000円をN銀行○○支店の請求人名義の普通預金口座(口座番号○○○)から引き出して支払い、本件会員権を再購入した。
(ロ)原処分庁は、上記(イ)の取引を仮装取引と認定しているが、原処分庁の主張は、次のとおり、余りにも一方的である。請求人は、H社に対して必要な書類をすべて渡し、同社もこれらの書類の受領によって売買が成立したとして請求人へ買取代金を支払ったのであり、また、それ相応の理由から買い戻し、その購入代金も支払ったのであって、当該取引は通常の取引であり仮装取引ではない。
A 原処分庁は、本件買取計算書には会員証の受渡しの記載がない旨主張するが、請求人は、H社から要求された売却に必要な書類を交付しただけであり、本件買取計算書の「会員証」欄に受渡しの記載がない理由は全く知らない。
B 原処分庁は、請求人の「本件買取計算書に手書きで記載した「念書」の記載内容は不明である」旨の申述は不自然であると主張するが、請求人は時間も経過しているので当該念書の記載内容を覚えていない旨述べているのであって、不自然だといわれる理由はない。
C 原処分庁は、本件買取計算書には年会費の基準期間、精算についての記載がないと主張するが、年会費の基準期間が毎年9月から翌年8月までであり、年会費を日数あん分すると精算する額が1,128円と少額のためH社が精算しなかったのだと考える。
D 原処分庁は、請求人は本件会員権を売却してから再購入するまでの期間内に、本件ゴルフ場においてメンバー料金でプレーしている旨主張するが、平成6年8月20日は、メンバー料金でプレーした理由については時間が経過しているためはっきりしないのであり、また、同年9月8日の場合については、本件ゴルフ場側の配慮でメンバー料金でプレーできたものと考えている。
E 原処分庁は、通常行われる会員権の買取り後の当該ゴルフ場への連絡等の手続をH社がしていない旨主張するが、同社が本件会員権を購入後、どのような手続をしたか請求人は知らないし、同社の手続の如何によって売買取引が否認されるものではないと考える。
(ハ)以上のとおり、原処分庁の主張は一方的なものであり、上記(イ)の取引を仮装取引とする原処分庁の認定は誤りである。
 したがって、請求人には、本件会員権を売却したことによる損失22,571,000円が生じており、これを他の各種所得の金額と損益通算すると、平成6年分の純損失の金額が6,267,156円、純損失の繰越控除額が8,095,880円となり、平成7年分の総所得金額の計算上、当該純損失の繰越控除の金額を控除すべきである。
 したがって、本件各更正処分はその全部を取り消すべきである。
ロ 本件各賦課決定処分について
 上記イのとおり、本件各更正処分はその全部を取り消すべきであるから、本件各賦課決定処分もその全部を取り消すべきである。

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(2)原処分庁

 原処分は、次の理由により適法に行われているから、本件審査請求をいずれも棄却する旨の裁決を求める。
イ 本件各更正処分について
(イ)本件会員権の売買及び再売買に関して、次の事実が認められる。
A ゴルフ会員権の通常の取引では、ゴルフ会員権を譲渡した場合、会員証及びネームプレートも譲渡人から譲受人に交付されるのが一般的であるところ、請求人は、本件会員権を譲渡した際にこれらをH社に交付しておらず、また、本件会員権を譲渡したとする平成6年8月11日以降、再購入したとする同年9月9日までの間で8月20日及び9月8日の2回にわたり、本件ゴルフ場の受付においてメンバー用のご来場者票に会員として署名し、会員の利用料金でプレーしている。
B 本件会員権を買い取ったとするH社は、少額とはいえ、本来ゴルフ会員権を譲渡した旧会員に返還される年会費を請求人に支払っていない。
C 本件ゴルフ場の経理課長補佐(現在は経理課長)Sは、原処分庁の調査担当者に対し、会員が会員権を譲渡した場合、通常、これを購入した会員権取引業者は、当該ゴルフ場にその旨を連絡する慣習になっている旨申述している。
D H社の代表取締役Tは、異議審理庁の担当者に対し、〔1〕当社は、請求人が本件会員権を当社に譲渡したことを、本件ゴルフ場に連絡した事実はない旨及び〔2〕当社は、通常、購入したゴルフ会員権の売却のために、Qゴルフ会員権取引業協同組合に登録するが、本件会員権を登録したか否かは不明である旨申述している。
(ロ)上記(イ)の事実によれば、請求人とH社の間では、本件会員権を譲渡(売買及び再売買)したものではなく、請求人は、当初から本件会員権を売却する意思がないにもかかわらず、本件会員権の値下がりによる含み損を顕在化させ、これによる損失の金額を他の各種所得の金額と損益通算することにより、所得税の負担の軽減を図る目的で、H社に本件買取計算書を作成させ、本件会員権を売却したかのごとく仮装し、また、本件売却計算書を作成させることで本件会員権を買い戻したかのごとく仮装したものと認めるのが相当である。
 なお、請求人は、本件一連の取引は仮装取引ではない旨主張するが、次のとおり、請求人の主張はいずれも信用できず、上記の認定を覆すものではない。
A 請求人は、本件会員権に係る会員証をH社に交付した旨主張するが、本件買取計算書に印刷された受渡し書類の「会員証」欄には何ら記載がないから信用できない。
B 本件買取計算書には、印刷された念書欄以外に手書きで「念書」の記載があり、しかもその内容は全く不明であるとすることは、極めて不自然である。
C ゴルフ会員権の売買においては、年会費の基準期間、精算すべき年会費の計算方法等を明示し、その結果、精算すべき年会費を明らかにした上で会員権の売買代金の精算額を計算するのが通常であるところ、本件買取計算書には年会費の基準期間の記載さえもなく、また、年会費が支払われているか否かの表示もないから、本件買取計算書が実際の取引に際し作成されたものとは到底認められない。
D 請求人は、前述のとおり、平成6年8月20日及び9月8日の2回、本件ゴルフ場のメンバーとして、メンバー料金でプレーしているが、請求人の主張を前提とすると、請求人がメンバーであるとして虚偽の申告により利用料金の不正を行ったか、懇意の副支配人等が会員としての利用料金にするとして同人の指示によってメンバー用のご来場者票に署名したとしか考えられないが、請求人は、メンバー料金でプレーできた理由について明確な説明をなし得ないもので、それ自体、極めて不自然である。
(ハ)以上のとおり、請求人の主張はいずれも信用できず、本件会員権の売買及び再売買は行われていないと認められ、したがって、請求人が主張する本件会員権の譲渡に係る譲渡損失22,571,000円は発生せず、これに基づき各年分の納付すべき税額を計算すると、平成6年分の納付すべき税額は456,700円、平成7年分の納付すべき税額は1,019,200円となるから、これらの金額と同額でした本件各更正処分はいずれも適法である。
ロ 本件各賦課決定処分について
 請求人は、上記イのとおり、本件会員権の譲渡をしていないにもかかわらずH社に架空の本件買取計算書及び本件売却計算書を作成させ、また、これに沿う譲渡代金の授受をして実際に譲渡があったかのごとく仮装し、その仮装した事実に基づき本件会員権の譲渡に係る譲渡損失が生じたとして、本件6年分申告書及び本件7年分申告書を提出している。このことは、国税通則法(以下「通則法」という。)第68条《重加算税》第1項に規定する「その国税の課税標準等又は税額の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき、納税申告書を提出していたとき」に該当するから、同項の規定に基づいて行った本件各賦課決定処分はいずれも適法である。

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3 判断

 本件審査請求の主たる争点は、本件会員権の譲渡が仮装であるか否かにあるので、以下審理する。
(1)請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
イ 本件会員権に係る平成7年11月9日改正前の「Jカントリークラブ規則」(以下「本件規則」という。)及び「Jカントリークラブ細則」(以下「本件細則」という。)は、本件ゴルフ場の会員資格の得喪等について、次のとおり定めている。
(イ)会員の資格は、預託金証書(会員券)を他に譲渡したときに消滅し(本件規則第19条第1項)、その譲渡は、会員証及び預託金証書の裏書き又は譲渡証書によって行う(本件細則第12条第1項)。
(ロ)預託金証書の譲渡を受けた者が会員となるには、所定の用紙によって入会申込みをし、理事会の審査承認を得た上で、理事会の定める名義書換料及び名義書換預託金を納入する(本件細則第13条)。
(ハ)会員がビジター(客員。以下同じ。)を紹介する場合には、会員が当該ビジターを本件ゴルフ場に同伴し、所要事項をビジター名簿に記入する(本件細則第2条)。
ロ 請求人及びH社のいずれもが、本件ゴルフ場に対し、本件会員権を売買及び再売買したことに基づく名義書換の申込み及び名義書換料の支払をした事実はない。
ハ 本件買取計算書には、請求人は本件会員権の譲渡に際し、会員証の紛失届出書をH社に渡した旨の記載があるが、当該紛失届出書が本件ゴルフ場に提出された事実はない。
ニ 請求人が主張するところの本件会員権の売買に際し、売買当事者が年会費を精算することは取引慣習であるところ、本件の場合、本件買取計算書及び本件売却計算書の双方に年会費の精算に関する記述すらない。
ホ 請求人は、本件買取計算書が作成された平成6年8月11日を過ぎた、同月20日、本件ゴルフ場において、本件ゴルフ場のメンバー会員2名とともに、メンバー用の「ご来場者票」に記名し、メンバー料金でプレーし、また、同年9月8日にも、ビジター3名との合計4名でプレーしているが、この時も、請求人はメンバー用の「ご来場者票」に記名し、メンバー料金でプレーしているが、他の3名は、ビジター用の「ご来場者票」に、紹介者のメンバーが請求人である旨をそれぞれ記入して、ビジター料金でプレーしている。
ヘ 本件ゴルフ場の経理課長S及び総務課係員Uは、当審判所に対し、要旨次のとおり答述している。
(イ)本件細則第12条第1項には、会員権の譲渡は預託金証書(会員券)の裏書又は譲渡証書によって行うとあるが、本件ゴルフ場の会員権を譲渡するときは、必ず預託金証書に裏書をした上で譲渡者の登録印鑑により押捺する必要がある。また、本件ゴルフ場の会員権を譲り受けた者が名義書換をするには、本件ゴルフ場に、「名義書換請求書」及び「名義書換申請身上書」を預託金証書に添付して申請し、これが理事会で承認されると、預託金証書の「譲受人氏名」欄に譲受人が署名し、本件ゴルフ場がその承認の押印をする。
(ロ)会員権取扱業者が本件ゴルフ場の会員権を取得した場合には、当該業者が取得したとき、あるいは、その会員権の転売先が決まったときのいずれかの時点で会員権を売買した旨を連絡してくるが、請求人及びH社のいずれからも、本件会員権を売買、再売買した旨の連絡を受けていないし、名義書換の請求も受けていない。
(ハ)8月20日のプレーについて、請求人から事前にプレーの予約があったか否かは分からないが、9月8日は、請求人以外はビジターだから、事前にメンバーである請求人からプレーの予約があったと思う。
(ニ)本件ゴルフ場の会員権を譲渡した後、名義書換されるまでの間に、会員でない者がメンバーとしてプレーしたという例は聞いたことがない。
ト H社の代表取締役Tは、異議審理庁の担当者に対し、本件買取計算書に様式の一部として印刷されている「念書,退会届」欄の念書は、会員権を譲渡する際に必要とする印鑑証明書の有効期間(3か月)内に売却先が決まらない場合、再度、印鑑証明書を提出してもらうことを約した書面であるが、手書きで記入された「念書」の作成目的、形式及び記載内容等は全く分からない旨申述している。
(2)本件各更正処分について
 請求人は、本件会員権の売買及び再売買は、必要書類及び売買代金の授受が問題なく行われた通常の取引であり、本件会員権の譲渡により譲渡損失が生じている旨主張するので、検討したところ、次のとおりである。
イ 上記(1)の事実関係及び基礎事実を総合すると、〔1〕本件ゴルフ場は、請求人及びH社のいずれからも、本件会員権が売買及び再売買された連絡及び名義書換の申請を受けていないこと、〔2〕請求人は、本件ゴルフ場の会員権の譲渡に係る本件細則第12条第1項に定める手続及び再購入に係る本件細則第13条に定める手続をいずれも行っていないこと、〔3〕請求人は、請求人の主張するところによれば、本件会員権を譲渡した後の日となる平成6年8月20日及び同年9月8日の2回プレーしているが、いずれも本件ゴルフ場のメンバー会員の資格で行っていること、〔4〕本件会員権の譲渡価格とされる金額と再購入価格とされる金額が同額であること、〔5〕請求人が主張するところの売買は、本件会員権の値下りによる含み損を顕在化させ、これによる損失金額と他の各種所得の金額との損益通算を可能にすることが認められる。
 以上によれば、請求人の主張するところの本件会員権の売買から再売買に至る一連の行為というのは、所得税の軽減を目的として本件買取計算書及び本件売却計算書により売買取引の外形を仮装したものにすぎず、本件会員権の売買取引の実体のないものであるから、請求人に、本件会員権の譲渡による損失が発生したと認めることはできない。
 なお、請求人の原処分庁の主張に対する反論である、前記2の(1)のイの(ロ)の主張については、上記(1)の事実及び基礎事実等に照らして不自然不合理であり、採用できない。
ロ そうすると、請求人が、別途平成6年1月に譲渡したWカントリークラブのゴルフ会員権の譲渡損失の金額が2,100,000円であることについて、請求人及び原処分庁の双方に争いはなく、当審判所の調査の結果によっても認められるから、請求人の平成6年分の譲渡所得の金額は2,100,000円の譲渡損失となり、これを基に同年分及び平成7年分の納付すべき税額を計算すると、いずれも本件各更正処分に係る請求人の納
付すべき税額と同額となるから、本件各更正処分はいずれも適法である。
(3)本件各賦課決定処分について
イ 通則法第68条第1項は、同法第65条《過少申告加算税》の規定に該当する場合において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、過少申告加算税に代え重加算税を賦課する旨規定している。
ロ これを本件についてみると、請求人は、上記(2)のとおり、本件会員権をあたかも譲渡したかのごとく仮装した本件買取計算書に基づき、本件会員権の譲渡により譲渡損失が生じたとして、平成6年分については、譲渡損失の金額を他の各種所得の金額と損益通算してもなお純損失の金額が生じるとして、還付される税額を記載した本件6年分申告書を、また、平成7年分については、当該純損失の金額を総所得金額から控除して還付される税額を記載した本件7年分申告書をそれぞれ提出しており、これらの行為は、通則法第68条第1項に規定する「課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき、納税申告書を提出していたとき」に該当すると認められる。
 したがって、原処分庁が、通則法第68条第1項の規定に基づき行った本件各賦課決定処分はいずれも適法である。
(4)原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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