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(平15.10.9裁決、裁決事例集No.66 182頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)事案の概要

 本件は、宅地と同宅地上の住宅の用に供すべき家屋を、同一日にそれぞれ異なる業者から取得した審査請求人(以下「請求人」という。)が、当該宅地の取得に係る債務のみを有している場合、租税特別措置法(平成12年法律第13号による改正前のものをいい、以下「措置法」という。)第41条《住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除》第1項に規定する住宅借入金等特別税額控除(以下「住宅借入金等特別控除」という。)の適用があるか否かを争点とする事案である。

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(2)審査請求に至る経緯

イ 請求人は、平成12年分の所得税について、住宅借入金等特別控除を適用し、確定申告書に、別表1の「確定申告」欄のとおり記載して、平成13年11月28日に申告(以下「本件確定申告」という。)した。
ロ これに対し、原処分庁は、住宅借入金等特別控除を適用することはできないとして、平成14年7月5日付で、別表1の「更正処分等」欄のとおりの更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下、それぞれ「本件更正処分」及び「本件賦課決定処分」という。)をした。
ハ 請求人は、これらの処分を不服として、平成14年8月10日に異議申立てをしたところ、異議審理庁が平成15年2月7日付で、いずれも棄却の異議決定をしたので、同月27日に審査請求をした。

(3)関係法令

イ 措置法第41条第1項は、居住者が、国内において、住宅の用に供する家屋で政令で定めるもの(以下「居住用家屋」という。)の新築若しくは居住用家屋で建築後使用されたことのないものの取得等をして、これらの家屋を平成9年1月1日から平成13年12月31日までの間にその者の居住の用に供した場合において、その者が当該住宅の取得等に係る借入金又は債務(以下「住宅借入金等」という。)の金額を有するときは、当該居住の用に供した日の属する年以後6年間(当該居住年が平成11年又は平成12年である場合には、15年間)のうち、その者の合計所得金額が3,000万円以下である年については、その年分の所得税の額から、住宅借入金等特別税額控除額を控除する旨規定する。
ロ 措置法第41条第1項第2号は、住宅借入金等について、建設業法第2条第3項に規定する建築業者に対する当該住宅の取得等の工事の請負代金に係る債務又は宅地建物取引業法第2条第3項に規定する宅地建物取引業者、住宅・都市整備公団、地方住宅供給公社その他居住用家屋の分譲を行う政令で定める者に対する当該住宅の取得等の対価に係る債務(当該債務に類する債務で政令で定めるものを含む)で、契約において賦払期間が10年以上の割賦払の方法により支払うこととされているものと規定する。なお、当該住宅の取得等には、当該住宅の取得等とともにする当該住宅の取得等に係る家屋の敷地の用に供される土地等の取得として政令で定めるものを含む旨規定する。
ハ 措置法施行令(以下「施行令」という。)第26条《住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除》第10項第1号は、上記ロのなお書部分の土地等の取得について、宅地建物取引業者、住宅・都市公団、地方住宅供給公社等から措置法第41条第1項に規定する居住用家屋で建築後使用されたことのないもの等とともにこれらの家屋の敷地の用に供されていた土地等の取得をした場合における当該土地等の取得である旨規定する。
 また、同項第2号では、その新築した措置法第41条第1項に規定する居住用家屋の敷地の用に供する土地等を、住宅・都市整備公団等との間で締結された住宅建設の用に供する宅地の分譲に係る契約に従って、住宅・都市整備公団等からその新築の日前に取得した場合における当該土地等の取得である旨規定した上、当該契約については、〔1〕当該宅地を譲り受けた者が、その譲受けの日後一定期間内に当該譲り受けた宅地の上に住宅の用に供する家屋を建築することを条件として、当該宅地を譲り受けるものであること、〔2〕当該住宅・都市整備公団等は、当該宅地を譲り受けた者が前記〔1〕の条件に違反したときは、当該宅地の分譲に係る契約を解除し、又は当該譲渡をした宅地を買い戻すことができることを定められている場合に限る旨規定する。
ニ 施行令第26条第18項は、措置法第41条第1項に規定する居住者が、適用年の12月31日において、施行令第26条第7項第4号から第6号までに掲げる借入金、同条第10項第2号若しくは第3号に掲げる土地等の取得の対価に係る債務、同条第11項第3号に掲げる債務、同条第15項第3号から第5号までに掲げる借入金、同条第16項第2号に掲げる土地等の取得の対価に係る債務等に係る住宅借入金等の金額を有する場合であって、これらの借入金又は債務に係る土地等の上にその者が新築したこれらの規定に規定する居住用家屋の当該新築に係る住宅借入金等の金額を有しない場合には、当該適用年の12月31日における当該土地等の取得に係る住宅借入金等の金額は有しないものとみなして、措置法第41条第1項の規定を適用する旨規定する。

(4)基礎事実

 以下の事実は、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査によってもその事実が認められる。
イ 平成11年10日20日、請求人は、E公団(以下「E公団」という。)との間で、P市Q町○○番○所在の土地(面積185.83平方メートル、以下「本件土地」という。)を、40,139,280円で購入する旨の土地譲渡契約(以下「本件土地譲渡契約」という。)を締結し、請求人は、E公団に対し当該購入代金40,139,280円のうち、一時金として2,050,000円を支払い、残金38,089,280円は、平成11年10月から25年間の割賦払(以下「本件割賦債務」という。)の方法により支払うことになった。
 なお、本件土地譲渡契約には、本件土地上の家屋(延床面積128.66平方メートル、以下「本件家屋」という。)を現況のまま購入し、当該家屋を請求人の居住用とする等の条件が付されている。
ロ 同日、請求人及び請求人の父F(以下「F」といい、請求人と併せて「請求人ら」という。)は、G住宅建設協同組合(以下「住宅建設組合」という。)との間で、上記イの本件家屋を、25,126,500円で購入する旨の建物売買契約(以下、この契約を「本件家屋売買契約」といい、その契約書を「本件家屋売買契約書」という。)を締結したが、請求人には、本件家屋の取得に係る住宅借入金等はない。なお、請求人らの本件家屋に係る共有持分は、請求人が100分の52、Fが100分の48である。
ハ 平成11年11月9日付で、本件家屋は、登記原因を平成11年8月24日新築として、また、同年11月15日付で請求人らを共有者とする本件家屋の全部の所有権保存の登記がなされ、本件家屋の持分は、本件家屋売買契約書記載のとおり、請求人が100分の52、Fが100分の48となっている。
(登記簿謄本)
ニ 平成11年11月30日付で、本件土地は、登記原因を同年10月20日売買として請求人の所有権保存の登記及び同日特約として買戻権者をE公団とする買戻特約の登記がなされ、所有権以外の権利については、平成11年11月30日付で、登記原因を同年10月20日売買による売買代金として、抵当権者をE公団とする抵当権の登記がなされている。(登記簿謄本)
ホ 請求人は、本件家屋を、平成11年11月1日から居住の用に供し、平成12年12月31日現在においても引き続き居住の用に供している。(住民票)

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2 主張

(1)原処分庁

 原処分は、次の理由により適法であるから、本件審査請求を棄却するとの裁決を求める。
イ 本件更正処分について
(イ)措置法第41条に規定する住宅借入金等特別控除の適用対象とされる借入金等には、居住用家屋の敷地の用に供される一定の土地等の取得に要する資金に充てるための借入金又は債務が含まれることとされており、その借入金等については、施行令第26条において規定しているところの当該借入金等の類型は土地等の取得や借入れ等の形態から、次の4類型に分類され、また、同第18項により、下記C及びDの土地等の取得に係る住宅借入金等の金額については、適用年の年末において、その土地等(敷地)の上に新築された居住用家屋の新築に係る住宅借入金等の金額を有していない場合には、住宅借入金等特別控除の適用はできないこととされている。
A 敷地付の建売分譲住宅や分譲マンションの購入に要する資金に充てるために金融機関等から借り入れた一定の借入金等のうちその土地等の購入に要する資金等に係る部分で、いわゆる同時取得・一体借入れ型といわれるもの
B 土地等を先に購入し、その土地等の購入に要する資金及びその土地等の上に新築する居住用家屋のその新築に要する資金に充てるためにまとめて借り入れた公的住宅融資等に係る一定の借入金のうちその土地等の購入に要する資金に係る部分で、いわゆる先行取得・一体借入れ型といわれるもの
C 建築条件付の一定の契約により土地等を先に購入し、その土地等の購入に要する資金に充てるために金融機関等から借り入れた一定の借入金等でいわゆる建築条件付の先行取得・分離借入れ型といわれるもの
D 土地等を先に購入し、その土地等の購入に要する資金に充てるために金融機関等から借り入れた一定の借入金等(その新築の日前2年以内に土地等を購入すること、その債権担保のためにその土地等の上に新築される居住用家屋を目的とする抵当権が設定されること等の一定の条件がある。)で、いわゆる建築条件付以外の先行取得・分離借入れ型といわれるもの
(ロ)そこで、本件についてみると、本件土地はE公団から、また、本件家屋は住宅建設組合から取得していることからすれば、請求人が本件土地及び本件家屋を一括して取得したとは認められるものの、本件債務は、上記(イ)のAの同時取得・一体借入れ型でいうところの借入金等のうち土地等の購入に要する資金等に係る部分の借入金等とは認められない。
 そして、一体借入れ型以外の土地等の借入金等の場合、住宅取得促進税制は、緊要性の高い住宅問題を背景として、持家取得の促進を図ることによりその解決に資するとともに、そのような住宅投資の活性化を通じて沈滞した景気に刺激を与えることが必要であるとして昭和47年に創設され、その後幾度の改正を経た後、平成11年度の税制改正において、低水準が続いている住宅投資の状況にかんがみ、わが国の経済を回復軌道に乗せていくための諸施策の一環として大幅な拡充(一定の土地等の取得に係る住宅借入金等が追加)が行われて、現在の住宅借入金等特別控除制度に改組されたこの制度の趣旨及び施行令第26条第18項の規定からすれば、居住用家屋に係る住宅借入金等のみを有する場合には住宅借入金等特別控除の適用は認められるが、居住用家屋の敷地の用に供される土地等に係る住宅借入金等のみを有する場合にはその適用は認められないと解される。
(ハ)これらのことから、請求人の場合、同時期に本件土地及び本件家屋をそれぞれ別の業者から取得し、平成12年12月31日において、本件土地の取得に係る本件割賦債務のみを有し、本件家屋の取得に係る住宅借入金等は有していないことから、住宅借入金等特別控除の対象となる借入金又は債務に該当せず、平成12年分の所得税において、住宅借入金等特別控除の適用は受けることができない。
(ニ)住宅借入金等特別控除の適用については、一定の要件の下で居住者が住宅借入金等特別控除の対象となる家屋を取得等して当該家屋の取得等に係る一定の住宅借入金等を有している場合、一定の敷地等を取得して当該敷地等の取得に係る一定の借入金等を有する場合に限って、当該土地等の借入金等について住宅借入金等特別控除が適用できるものであって、当該土地等の借入金等のみ有する場合は適用がなく、住宅借入金等特別控除額の計算の基礎となる住宅借入金等の年末残高の計算明細書D(以下、「計算明細書D」という。)の「3居住用部分の家屋又は土地等に係る住宅借入金等の年末残高」の記入箇所に「住宅のみ」、「土地等のみ」及び「住宅及び土地等」により区分して記載するようになっているのは、例えば、上記(イ)に記載した借入金等の類型のC及びDの場合のように、家屋の取得等に係る借入金等と当該敷地等の取得に係る借入金等が分離している場合等があるからであり、請求人のように、土地等のみの住宅借入金等を有する者についても、住宅借入金等特別控除の適用されるものではない。
(ホ)措置法第41条第1項は、住宅の取得等に係る借入金等を有していることを前提として、合計所得金額が3,000万円を超える年分や居住の用に供しなくなった年以後の年分等について、住宅借入金等特別控除の適用を受けることができない旨規定しているものであるから、住宅借入金等特別控除が受けられない年分について、本件家屋の取得に係る住宅借入金等の年末残高がない場合との規定がないという請求人の主張は、住宅借入金等特別控除が適用できる根拠とはならない。
 以上のとおり、住宅借入金等特別控除を適用することはできず、その結果、請求人の平成12年分の納付すべき税額は、別表1のとおり本件更正処分の額と同額であることから、本件更正処分は適法である。
ロ 本件賦課決定処分について
 国税通則法(以下「通則法」という。)第65条《過少申告加算税》第4項に規定する「正当な理由があると認められるものがある場合」に該当しないことから、同条第1項の規定に基づき過少申告加算税を賦課決定した本件賦課決定処分は適法である。

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(2)請求人

 原処分は、次の理由により違法であるから、その全部の取消しを求める。
イ 本件更正処分について
 原処分庁は、本件家屋の取得に係る住宅借入金等がないことを理由に、住宅借入金等特別控除の適用を否認する本件更正処分を行ったが、次の理由から住宅借入金等特別控除を適用すべきである。
(イ)施行令第26条第18項に規定する控除の対象にならない借入金又は債務の要件とは、施行令第26条第7項第4号から第6号まで又は同条第10項第2号若しくは第3号の規定に該当する場合等で、その新築をした居住用家屋の敷地の用に供する土地等をその当該家屋の新築の日前に購入したものについて、土地等の取得の対価に係る債務又は借入金に係る住宅借入金等の金額を有する場合において、居住用家屋の当該新築に係る住宅借入金等の金額を有しない場合をいうものである。
 請求人は、本件家屋及び本件土地の取得に当たって、それぞれ取引先は別々であるが、同一室内において同日付で売買契約を締結しており、また、本件家屋は、注文住宅ではなく建売住宅であり、仮に一括購入でないとした場合、借地権が発生して本件土地の賃貸借契約が必要となるところ、本件においては、そのような事実がないことからも、請求人は本件土地及び本件家屋を一括購入したことになり、新築の日前に購入したものという要件には該当しない。
 したがって、請求人の本件土地及び本件家屋の取得については、施行令第26条第18項のみなし規定は適用されず、請求人のように土地のみの住宅借入金等を有する場合にも住宅借入金等特別控除の適用が認められるべきである。
(ロ)原処分庁が、住宅借入金等特別控除の特例を適用する納税者に対して、所得税の確定申告書に添付するよう指導し、交付している計算明細書Dにおいて、居住用部分の家屋又は土地等に係る住宅借入金等の年末残高を記載する欄には、住宅のみ、土地等のみ、住宅及び土地等の区分がしてあり、それぞれ住宅借入金等の年末残高を記載するようになっており、土地等のみの住宅借入金等を有する者についても計算ができるようになっている。
 したがって、請求人のように、土地等のみの住宅借入金等を有する者についても、住宅借入金等特別控除の適用が認められることは明らかである。
(ハ)請求人の場合は、原処分庁が主張するところの同時取得・一体借入れ型に該当するものであるが、措置法第41条第1項において、適用年のうち、その者のその年分の所得税に係るその年の合計所得金額が3,000万円以下である年及び当該居住日以後その年の12月31日まで引き続きその居住の用に供している年について、その年分の所得税の額から、住宅借入金等特別控除額を控除する旨規定しており、居住用家屋の当該新築に係る住宅借入金等の金額を有していない場合に、住宅借入金等特別控除の適用ができない旨の規定はない。
ロ 本件賦課決定処分について
 平成11年分の確定申告をした際に、原処分庁が住宅借入金等特別控除の適用ができない旨について、的確な説明をしていれば、請求人は、本件確定申告をする必要もなかったのであるから、その責任は原処分庁にあり、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由がある場合に該当するので、本件賦課決定処分はその全部を取り消すべきである。

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3 判断

(1)本件更正処分について

イ 認定事実
 原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(イ)E公団(甲)及び住宅建設組合(乙)は、P市長を立会人として、甲の造成した土地に、乙が一戸建の住宅を建設し、甲は宅地を、乙は一戸建の住宅を、それぞれ同一の譲受人に譲渡するH地区民間建物付宅地分譲事業の実施に関して、平成10年12月1日付で、協定を締結した。なお、第3条(土地の一時使用)では、乙は、甲の承認を得て、民間建物付宅地分譲事業を実施するために必要な甲の所有する土地を使用できるものとし、乙は使用を認められた土地を民間建物付宅地分譲事業の目的のためにのみ使用するものと定めている。(平成11年度H地区民間建物付宅地分譲事業に関する協定書)
(ロ)H地区の民間建物付宅地分譲において、E公団の宅地に、民間住宅事業者5社及び住宅建設組合が建物を建設し、同公団が宅地を、民間住宅事業者5社及び住宅建設組合が建物を同時に分譲し、譲受人は、宅地あるいは建物のどちらか一方だけを購入することはできない。
(宅地分譲用パンフレット)
ロ 住宅借入金等特別控除の適用の可否について
 請求人は、本件の場合、土地等の取得に係る借入金のみの住宅借入金であっても住宅借入金等特別控除の対象となる旨主張するので、以下審理する。
(イ)制度の趣旨
A 措置法第41条に規定する住宅借入金等特別控除の適用対象となる住宅借入金等は、大別して、〔1〕住宅の取得等に要する資金に充てるための一定の借入金又はその取得等の対価に係る一定の賦払債務等(以下「住宅の取得等に係る借入金等」という。)と、〔2〕居住用家屋の新築住宅等の取得とともにするこれらの家屋の敷地の用に供される土地又はその土地の上に存する権利の取得に要する資金に充てるための借入金又はその取得に係る賦払債務等として「一定のもの」に該当する借入金又は賦払債務等(以下「土地等の取得に係る借入金等」という。)とに分かれるが、住宅取得促進税制の下では、制度創設当初から、一貫して、〔1〕の家屋に着眼した住宅の取得等に係る借入金等に限定して税額控除の対象とされた。しかしながら、平成11年度の税制改正により住宅借入金等特別控除(いわゆる住宅ローン控除)制度に改組され、住宅の取得等に係る借入金等に加え、一定の要件を付した上、〔2〕の家屋の敷地に着眼した土地等の取得に係る借入金等を、この制度の適用対象となる住宅借入金等の範囲に含めることとされたものである。
B そして、この制度は、金融機関等の住宅貸付等を利用してマイホームの購入や新築等をした者を対象に所得税を軽減する特例制度であることから、土地等の取得に係る住宅借入金等の対象範囲については、土地等の取得の時点において、その購入をし又は新築をしようとしている自己の居住用住宅の敷地とすることを目的として取得された土地等で、かつ、そのような居住用住宅の敷地とされる土地等の取得を対象に貸付け等が行われる借入金等が対象とされる。
(ロ)土地等の取得又は借入金等の形態による区分
 措置法第41条第1項、施行令第26条第5項、7項、8項、10項、11項及び13項ないし18項並びに措置法施行規則(平成12年省令第69号改正前のもの)第18条の21第5項ないし7項及び9項の規定によれば、当該対象となる一定の借入金等は、その土地等の取得又は借入金等の形態から、次の4グループのものに分けることができ、住宅借入金等特別控除の適用に当たっては、居住用家屋の購入とともにする土地等の取得に要する資金に充てるための借入金等がこれらのいずれかに該当することが一つの要件となる。
 なお、下記BないしDは、いずれも居住用家屋の敷地の用に供する土地等をその新築の日前に取得した場合、すなわち当該土地等を居住用家屋の新築の日前に購入することを要する一定の借入金等である。
A 同時取得・一体借入れ型
 敷地付の建売分譲住宅や分譲マンションの購入に要する資金に充てるために銀行等から借り入れた一定の借入金等のうちその土地等の購入に要する資金等に係る部分
B 先行取得・一体借入れ型
 土地等を先に購入し、その土地等の購入に要する資金及びその土地等の上に新築する居住用家屋のその新築に要する資金に充てるためにまとめて借り入れた公的住宅融資等に係る一定の借入金のうちその土地等の購入に要する資金に係る部分
C 先行取得・分離借入れ型
 建築条件付の一定の契約により土地等を先に購入し、その土地等の購入に要する資金に充てるために銀行等から借り入れた一定の借入金等
D 建築条件付以外の先行取得・分離借入れ型
 土地等を先に購入し、その土地等の購入に要する資金に充てるために銀行等から借り入れた一定の借入金等で、居住用家屋のその新築の日前2年以内に土地等を購入することやその債権担保のためにその土地等の上に新築される居住用家屋を目的とする抵当権が設定されること等の一定の条件が付されているもの
(ハ)「一体借入れ」と「分離借入れ」
 上記4分類のうち、C又はDの「分離借入れ」については、施行令第26条第18項の規定により、適用年12月31日において、居住用家屋の取得に係る住宅借入金等の金額を有していない場合には、当該土地等の取得に係る住宅借入金等の金額は有していないものとみなす旨規定され、年末現在、居住用家屋の取得に係る住宅借入金等の残高がない場合には、仮に当該土地等の取得に係る住宅借入金等があるとしても、当該借入金等はないものとして取り扱われ、住宅借入金等特別控除の規定の適用はなく、「分離借入れ」の場合は、年末現在、居住用家屋の取得に係る住宅借入金等の残高のあることが住宅借入金等特別控除適用の要件となっているが、A又はBの「一体借入れ」の場合には、この「みなし規定」から除外されている。
 「一体借入れ」は、敷地付の建売分譲住宅や分譲マンションの購入に要する資金に充てるための銀行等からの借入金や、土地等の購入及び居住用家屋の新築に要する資金に充てるためにまとめて借り入れた公的住宅融資等に係る一定の借入金などのように土地等と居住用家屋の取得に要する資金を一体として銀行等から借り入れたものであるが、分離借入れの場合には居住用家屋の取得に係る住宅借入金等の残高のあることが住宅借入金等特別控除適用の要件となっていることや上記(イ)の制度の趣旨からすると、土地等と居住用家屋の取得に要する資金がこん然一体となって銀行等から借り入れた「一体借入れ」の場合には、当該借入金等の中に、金額の明示は困難なものの、居住用家屋の取得に要した借入れ部分があることが明らかであることから、当該「みなし規定」から除外しているものと解される。
 そうすると、住宅借入金等特別控除の適用に当たっては、上記(ロ)の「一体借入れ」又は「分離借入れ」のいずれにおいても、居住用家屋の取得に要する資金に充てるための借入金等を有することが前提であると解される。
(ニ)住宅借入金等特別控除の適用の可否
 本件は、上記1の(4)のイ及びロのとおり、請求人は、本件土地と本件家屋を、それぞれE公団及び住宅建設組合から同一日に取得し、本件土地の取得に係る本件割賦債務のみを有しているものであるので、住宅借入金等特別控除の適用の可否につき、上記1の(4)の基礎事実及び上記イの認定事実に、上記(イ)ないし(ハ)を照らし、以下審理する。
A 請求人は、本件土地及び本件家屋の取得については施行令第26条第18項の「みなし規定」の適用はなく住宅借入金等特別控除の適用がある旨主張する。
(A)請求人は、平成11年10日20日に、E公団との間で、本件土地譲渡契約を締結し、同公団に対し当該購入代金のうち一部を一時金として支払い、その余を本件割賦債務として支払うことにするとともに、同日、請求人らは、住宅建設組合との間で、本件家屋売買契約を締結し、本件土地及び本件家屋を取得したことが認められるが、本件土地の取得に係る住宅借入金等特別控除の適用に当たっては、上記(ロ)のとおり、4分類されたグループのいずれかに該当することが要件となる。
 ところで、請求人には、本件家屋の取得に係る住宅借入金等の残高はなく、本件土地の取得に係る本件割賦債務のみを有しているものであることからすると、請求人の場合、いずれのグループに該当するか否かを判断するまでもなく、Cの「先行取得・分離借入れ型」及びDの「建築条件付以外の先行取得・分離借入れ型」であれば、上記(ハ)の施行令第26条第18項の「みなし規定」が適用され、そもそも住宅借入金等特別控除の適用の前提を欠くことになるから、当該控除の適用はないことが明らかである。
 そうすると、本件がAの「同時取得・一体借入れ型」又はBの「先行取得・一体借入れ型」に該当するか否かであるが、まず後者についてみるに、「先行取得・一体借入れ型」は、当該土地を、居住用家屋の新築の日前に購入することが要件であるが、請求人は、E公団及び住宅建設組合からそれぞれ本件土地及び本件家屋を同一日に取得していることからすると、本件はこれに該当しないと認められる。次にAの「同時取得・一体借入れ型」であるが、請求人が主張する一括購入であることが「同時取得」に当たるかどうかはさておき、「一体借入れ」は、上記(ハ)のとおり、土地等と居住用家屋の取得に要する資金を一体として借り入れたものであるところ、請求人の場合、本件家屋の取得に係る住宅借入金等を有せず、本件土地の取得に要する資金に充てるために借り入れた本件割賦債務のみを有するものであることからすると、「一体借入れ」とは言い難く、Aの「同時取得・一体借入れ型」にも該当しないと認められる。
(B)以上のとおり、本件土地の取得に係る借入金等については、請求人は住宅借入金等特別控除の適用の前提となる居住用家屋の取得に要する資金に充てるための借入金等を有しておらず、また上記のとおり4分類されたグループごとに検討した結果からみても住宅借入金等特別控除の適用をすることはできないと認められる。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
B 原処分庁が交付している計算明細書Dにおいて、土地等の住宅借入金等のみでも計算できるようになっており、このことからみて請求人のような土地等の住宅借入金等のみの者についても住宅借入金等特別控除の適用がある旨主張する。
 しかしながら、請求人の場合、住宅借入金等特別控除の適用がないことは上記のとおりであり、計算明細書Dに「土地等のみ」と記載があることを理由に、本件土地の取得等に係る本件割賦債務が住宅借入金等特別控除の適用を受けることができることにはならないから、この点に関する請求人の主張には理由がない。
 なお、計算明細書Dについては、住宅借入金等特別控除の特例の適用を受けることができる者が住宅借入金等特別控除税額の計算を明らかにして確定申告書に添付するために記載するもので、かつ、同時取得又は先行取得及び一体借入れ又は分離借入れのいずれの場合にも対応できるように作成されているものであり、「土地等のみ」の欄は、上記の4分類されたグループのうち、Cの「先行取得・分離借入れ型」やDの「建築条件付以外の先行取得・分離借入れ型」のように分離借入れの場合に記載するものである。
C 請求人は、措置法第41条第1項には、居住用家屋の取得に係る借入金等の金額を有していない場合には住宅借入金等特別控除の適用ができない旨の規定はない旨主張する。しかしながら、措置法第41条第1項は、その者が当該住宅の取得等に係る借入金又は債務の金額を有するときは、その者の合計所得金額が3,000万円以下である年について、住宅借入金等特別控除を控除する旨を規定したもので、当該控除の適用の如何は、同項のみならず、関係法令及び制度の趣旨等を含めて判断するものであるから、同項に居住用家屋の取得に係る借入金等の金額を有していない場合には住宅借入金等特別控除の適用がない旨の規定がないことをもって、当該特別控除が適用できる根拠とはならない。
 したがって、この点に関する請求人の主張を採用することはできない。
D 以上のとおり、請求人の主張は、いずれも採用することができず、本件に住宅借入金等特別控除の適用はなく、この結果、請求人の平成12年分の納付すべき税額は零円となり、更正処分のそれと同額となるから、本件更正処分は適法である。

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(2)本件賦課決定処分について

 請求人は、本件確定申告について、通則法第65条第4項に規定する正当な理由がある旨主張するので、以下審理する。
イ 当審判所の調査によれば、請求人は、平成11年分の所得税について、本件土地の取得に係る借入金を有していたとして、住宅借入金等特別控除を適用し、別表2の「確定申告」欄のとおり記載して原処分庁に確定申告書を提出したが、原処分庁は、住宅借入金等特別控除を認容することはできないとして、平成13年6月27日付で別表2の「更正処分」欄のとおりの更正処分をしたことが認められる。
ロ ところで、通則法第65条第4項にいう「正当な理由」に当たる事由として、申告した税額に不足が生じたことについて、納税者が通常な状態においてその事実を知ることができなかった場合や納税者の責めに帰せられない外的事情による場合等が考えられ、具体的には、〔1〕税法の解釈に関して、申告当時に公表されていた公的見解がその後改変されたため、修正申告をし又は更正処分を受けるに至った場合、〔2〕その他真にやむを得ない事由が認められる場合等が該当するものと解される。
ハ そこで、これを本件についてみると、本件更正処分は、上記のとおり、本件確定申告の誤りを是正したものであって、当初適正であった申告につきその後の事情の変化により税額等が過少になったことによりされたものではなく、また、原処分庁は、上記イのとおり、請求人に対し、本件確定申告前の平成11年分において更正処分をし、本件土地の取得に係る借入金に住宅借入金等特別控除の規定を適用することはできない旨通知していることからすると、本件確定申告に際し、その他真にやむを得ない事由があったとは認められず、請求人に正当な理由があると認めることはできない。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
ニ 以上のとおり、本件更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が更正処分前の税額の基礎とされなかったことについて、通則法第65条第1項に規定する正当な理由があるとは認められず、過少申告加算税の賦課決定要件を満たしているから、原処分庁が同条第1項の規定に基づいて行った本件賦課決定処分は適法である。

(3)その他

 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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