(平成26年12月8日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、宗教法人である審査請求人(以下「請求人」という。)が、経営するE霊園の墓地使用権者から収受した管理料収入が収益事業に係る収入に該当するとして平成24年4月1日から平成25年3月31日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)の法人税及び平成24年4月1日から平成25年3月31日までの課税事業年度の復興特別法人税の確定申告をした後、当該管理料収入が収益事業に係る収入に該当しないとして当該事業年度の法人税及び当該課税事業年度の復興特別法人税の更正の請求をしたところ、原処分庁がそれぞれの更正の請求に対してその更正をすべき理由がない旨の各通知処分を行ったことから、請求人がそれらの取消しを求めた事案であり、争点は、当該管理料収入が収益事業に係る収入に該当するか否かである。

(2) 審査請求に至る経緯

 審査請求(平成25年12月2日請求)に至る経緯は、別表1及び別表2のとおりである。
 なお、国税通則法(以下「通則法」という。)第75条《国税に関する処分についての不服申立て》第4項第1号の規定による審査請求である。

(3) 関係法令等

 別紙のとおりである。

(4) 基礎事実

 以下の事実は、請求人と原処分庁との間に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 請求人は、昭和42年からa市b町所在の霊園であるE霊園の経営を行っている宗教法人であり、平成7年4月○日から収益事業を開始したとして、法人税の申告を行っている。
ロ 請求人は、平成11年○月○日にE霊園使用規定(以下「本件使用規定」という。)を改訂しているが、改訂後の内容は要旨次のとおりである。
 なお、本件使用規定の制定以前に用いられていたA墓地管理規程及び同施行細則にも管理料についての定めがある。
(イ) 第○条《○○》は、この規定は霊園の使用について定めたものである旨定めている。
(ロ) 第○条《○○》は、宗旨・宗派に関係なく使用できる旨定めている。
(ハ) 第○条《○○》第○号は、墓地使用希望者は、墓地永代使用申込書に住民票又は住所、氏名を明確にできる書類を添えて提出しなければならない旨、同条第○号は、申込時に証拠金として○万円を前納しなければならず、これは墓地永代使用料(第○条)に充当されるところ、証拠金納付後1か月以内に墓地永代使用料を完納しなければならない旨、同条第○号は、万一申込みを取消しされた場合、証拠金は返還しない旨定めている。
(ニ) 第○条《○○》第○項は、墓地永代使用許可証は別に定める墓地永代使用料及び管理料3か年分が納められた後交付する旨定め、同条第○項は、既納の永代使用料及び管理料は一切返還しない旨定めている。
(ホ) 第○条《○○》は、同条第○号の墓地使用を許可した日から3年を経過しても墓石を建立しないとき及び同条第○号の5年以上管理料を納付しないときなどの場合、墓地永代使用許可を取消しする旨定め、同条ただし書は、霊園の許可を得た場合はこの限りではない旨定めている。
(ヘ) 第○条《○○》第○項は、第○条により使用許可を取消しされた場合、墓地永代使用料及び管理料は返還しない旨定めている。
(ト) 第○条《○○》第○項は、管理料は、事務費、園内の参道等共用部分の清掃、環境整備、盆・彼岸の○○費用、本霊園の運営管理に要する費用であり、使用する墓地内の清掃管理に要する費用は含まれておらず、また、墓碑建立が施工済みか否かは関係ない旨、同条第○項は、管理料は毎年、指定の期日までに1か年分を前納する必要がある旨、同条第○項は、管理料は物価の変動等を勘案し改訂する旨定めている。
(チ) 第○条《○○》第○項は、園内の参道等の清掃、その他必要な管理は霊園が行う旨定め、同条第○項は、使用区画内の清掃等は霊園では原則として行わない旨定めている。
(リ) 第○条《○○》は、使用区画内の墓石その他工作物の転倒や他人に迷惑を及ぼすおそれのある場合は自己の負担で至急修理しなければならない旨定めている。
(ヌ) 第○条《○○》は、天災地変等、霊園の責によらない墓地・墓石等の損傷については使用権者の負担とする旨定めている。
(ル) 第○条《○○》は、本規定は事情の変更等により改訂する旨定めている。
ハ 請求人は、E霊園の墓地使用希望者に対して、本件使用規定、「○○」と題するパンフレット、「お墓を申込まれる方へ」と題する書面等を配付しており、E霊園の墓地使用申込者は、「E霊園○○申込書」を請求人に提出しているが、当該申込書には、申込者が管理料の金額を記載することになっているとともに、本件使用規定を了解して申し込む旨が記載されている。なお、E霊園○○申込書において、「お申込使用墓地」欄に「地区」、「列」、「番」及び「号」の記載欄があり、墓地使用申込者が永代使用許可を受けようとする区画(以下「本件墳墓地」という。)を書き込んで、請求人に提出する。また、同書には「墓地永代使用料」欄と「管理料」欄が別個にあり、各欄を墓地使用申込者が書き込んで請求人に提出する。
ニ 請求人は、毎年○月及び○月の2回、広報誌「E霊園だより・○○」を発行し、E霊園の墓地使用権者全員に送付しているが、同誌には、毎回、本件使用規定が掲載されている。
ホ 請求人が、原処分庁に提出した法人税確定申告書に添付された「損益計算書」によれば、請求人の収入は、墓地永代使用料、年間管理料、志納金、駐車場賃貸料、名義変更手数料、貸付墓地の清掃及び植栽剪定料金等である。
ヘ 年間管理料の金額は、1K(○尺角、○センチメートル角)当たり○○○○円(昭和42年には1Kについて○○○○円であったが、昭和49年当時には○○○○円となっており、その後○○○○円、○○○○円、○○○○円と随時改訂された。)である(以下「本件管理料」という。)。墓地の使用区画は、1区画について2K以上のものも存し、例えば新規墓地区画である「F地区(G墓地区画)」は1区画2K以上から、「H地区」は1区画1Kから4Kまで、「J地区」は1区画3Kから4Kまでの区画がある旨定められている。その他E霊園ホームページ上の個人使用区画の清掃料金の定めには、1区画10K以上の墓地の存在も想定された記載がされている。
ト 墓地永代使用料については、当該墓地の存する区画や方角(西向きか東向きかなど)、角地か中地などの立地条件によって異なっている。例えば、「H地区」の新規分譲使用区画1Kの場合、墓地永代使用料は○○○○円から○○○○円程度である。
チ 請求人は、本件墳墓地の貸付業(以下「本件墳墓地貸付業」という。)を行うとともに、墓地使用権者から本件管理料を徴収して、本件使用規定第○条第○項に定める園内の事務、園内の参道等共用部分の清掃及び環境整備、盆・彼岸の○○並びにE霊園の運営管理等に関する事項(以下、これらの事務等を併せて「本件管理行為」という。)を行っている。

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2 主張

請求人 原処分庁
  以下のとおり、請求人が経営するE霊園の本件管理料収入は、収益事業に係る収入には該当しない。   以下のとおり、請求人が経営するE霊園の本件管理料収入は、収益事業に係る収入に該当する。
 (1) 施行令第5条第1項第10号に規定する請負業の定義は法人税法に規定がなく、一般法である民法の請負の規定に従って判断すべきであり、また、当該請負業には「事務処理の委託を受ける業を含む。」と規定されていることから、民法第656条の準委任の規定により判断することとなる。
 本件使用規定は、第○条第○項において本件管理料の使途を定めているが、墓地管理者である請求人には墓地埋葬法等により墓地全体の保全管理が義務付けられており、そのための費用として本件管理料を収受しているものであり、そのことから本件使用規定の第○条には墓地使用権者の使用区画以外の管理は請求人の責任で行うこととしており、墓地使用権者の権利の及ばないところであり、墓地使用権者から請求人に管理業務を委託していないことは明らかであり、さらに、請求人が墓地経営のために自らの判断で使用できるものも含まれており、本件使用規定に基づく本件管理料は、「事務処理の委託を受ける業」に係る収入には該当せず、請負業に係る収入にも該当しない。
 (1) 施行令第5条第1項第10号の請負業については、括弧書きにおいて「事務処理の委託を受ける業を含む。」と規定されており、基本通達15-1-27は、同号の請負業には、事務処理の委託を受ける業が含まれるから、他の者の委託に基づいて行う調査、研究、情報の収集及び提供、手形交換、為替業務、検査、検定等の事業は請負業に該当すると定めていることからすると、同号の請負業には、民法第632条《請負》の請負だけではなく、同法第656条の準委任も含まれると解される。
 請求人は本件使用規定の第○条第○項において、墓地使用権者から収受する本件管理料をもって、どのような役務を提供するかを明らかにしており、墓地使用権者は、同項に定められた請求人から提供される役務内容を承諾して本件管理料を前納することから、本件管理料を収受する請求人は、墓地使用権者から同項に定められた役務、すなわち、霊園を使用するための便益のための役務の提供の委託を受けてその対価を得ており、墓地管理料は、請負業(事務処理の委託を受ける業を含む。)に係る収入に該当する。
 (2) 墓地の経営は、墓地埋葬法及び規則に基づき、地方公共団体、宗教法人、公益社団法人及び公益財団法人のみが都道府県知事の許可を受けて行うものであり、営利を目的としたものではないこととされている。
 また、墓地経営には極めて高い公共性及び宗教性が求められ、日本国民の宗教的感性に迎合し、かつ、公衆衛生その他の公共の福祉の見地から支障なく行われることを目的としている。
 これらのことから、墓地の経営管理は、宗教活動に含まれるものであるから、収益事業には該当しない。
 (2) 法人税法第4条第1項の規定は、公益法人等が収益事業を行う場合は、法人税を納める義務があると規定しており、また、基本通達15-1-1は、公益法人等が施行令第5条第1項第1号から第34号までに掲げる34事業のいずれかに該当する事業を行う場合には、たとえその行う事業が当該公益法人等の本来の目的たる事業であるときであっても、当該事業から生ずる所得については法人税が課されることに留意する旨定めていることから、宗教法人である請求人が行う事業がこの34事業のいずれかに該当すれば収益事業に該当する。
 (3) 墓地全体の維持管理は、墓地使用権者から請け負った仕事ではなく、請求人に対して墓地埋葬法に基づき強制された義務である。「指針」は、「2墓地使用に関する標準契約約款」において、使途を明確にした墓地管理料の請求規定を示しており、墓地管理料は、墓地使用権者の墓地を除く墓地全体の管理運営及び維持のために必要なものであり、国やL県が求める墓地の安定的経営のためには不可欠なものであり、また、毎期余剰金が発生していても、この余剰金が将来の墓地の維持管理に充てられるものとなるから、将来の支出を含めると実費相当額であり、収益事業に係る収入には該当しない。  (3) 「指針」において、管理料の使途について具体的な定めはなく、墓地経営者によって、その使途は様々であるから、収益事業に該当するか否かの判断は、一律に取り扱われるものではない。
 また、仮に、本件管理料収入が実費相当額であるとしても、基本通達15-1-28は、公益法人等が請負業である事務処理の受託を行う場合において、受託業務が法令の規定、行政官庁の指導又は当該業務に関する規則、規約若しくは契約に基づき実費弁償の方式により行われるものであり、かつ、そのことにつきあらかじめ一定の期間を限って所轄税務署長の確認を受けたときは、その確認を受けた期間についての受託業務は、例外的に当該公益法人等の収益事業に該当しないことと定めているが、実費弁償というだけでは、本件管理料収入は、収益事業に係る収入に該当しないことにはならない。
 (4) 請求人が本件使用規定第○条に基づき墓地使用権者から収受する本件管理料は、墓地管理料であり、その使途は墓地使用権者の祖先崇拝の宗教的行為を補助するための支出と墓地全体の維持管理(将来の墓地の修繕、改修を含む。)のための支出に限られており、正に宗教活動であるから、収益事業に係る収入には該当しない。  (4) 上記(2)のとおり、宗教法人である請求人が行う事業が、施行令第5条第1項第1号から第34号までに掲げる34事業のいずれかに該当すれば収益事業に該当する。
 (5) 請求人は、E霊園において、墓地使用希望者に墓地を貸し付け、本堂において法要を行い、E霊園全体の経営管理を行っているところ、E霊園には、宗教施設としての性格があり、その維持管理に必要な費用を支弁するための本件管理料は、宗教活動の一環であり、収益事業に係る収入には該当しない。  (5) 上記(2)のとおり、宗教法人である請求人が行う事業が、施行令第5条第1項第1号から第34号までに掲げる34事業のいずれかに該当すれば収益事業に該当する。

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3 判断

(1) 法令等解釈

イ 法人税法第4条第1項は、内国法人は法人税を納める義務があるとし、同項ただし書において、公益法人等が法人税を納める義務を負うのは収益事業を行う場合に限ると規定し、また、同法第7条は内国法人である公益法人等の各事業年度の所得のうち収益事業から生じた所得以外の所得については、各事業年度の所得に対する法人税を課さない旨規定している。同法は、公益法人等の所得のうち収益事業から生じた所得について、同種の事業を行うその他の内国法人との競争条件の平等を図り、課税の公平性を確保するなどの観点からこれを課税の対象としていると認めることができる。
ロ 収益事業について、法人税法第2条第13号は、販売業、製造業その他の政令で定める事業で、継続して事業場を設けて行われるものをいう旨規定し、施行令第5条第1項は、同号に規定する政令で定める事業として、34業種(その性質上その事業に付随して行われる行為を含む。)を規定し、うち同項第5号に不動産貸付業を、同項第10号に請負業(事務処理の委託を受ける業を含む。)を挙げている。同号に規定する請負業(事務処理の委託を受ける業を含む。)の意味は、同号の文理上、民法第632条に規定する請負を反復継続して業として行うもののほか、同法第643条《委任》及び同法第656条に規定する委任、準委任を反復継続して業として行う行為を含むものであると解するのが相当である。
ハ 上記イで述べた法人税法の趣旨に照らせば、宗教法人の行う事業が、外形的にみて請負業やその性質上その事業に付随して行われる行為の形態を有するものと認められる場合に、同事業が施行令第5条第1項第10号の請負業に該当するか否かについては、事業に伴う財貨の移転が役務等の対価の支払として行われる性質のものか、それとも役務等の対価ではなく喜捨等の性格を有するものか、また、当該事業が公益法人等以外の法人の一般的に行う事業と競合するものか否か等の観点を踏まえた上で、当該事業の目的、内容、態様等の諸事情を社会通念に照らして総合的に検討して判断するのが相当である。
ニ 施行令第5条第1項第5号ニに規定する「墳墓地」とは、墓石及びカロートを設置するために区画された土地の部分だけを指す。また、同号ニに規定する墳墓地の「貸付」とは、その文理から上記の墳墓地を貸し付ける行為をいうものであると解するのが相当である。
ホ 基本通達15-1-1は、公益法人等が施行令第5条第1項第1号から第34号までに掲げる事業を行った場合には、当該事業が当該公益法人の本来の目的たる事業であったとしても、当該事業から生じる所得に法人税を課する旨定めているが、上記イの法人税法の趣旨に合致する取扱いであり、当審判所において相当であると認められる。
ヘ 基本通達15-1-28は、公益法人等が、事務処理の受託の性質を有する業務を行う場合においても、当該業務が法令の規定、行政官庁の指導又は当該業務に関する規則、規約若しくは契約に基づき実費弁償(その委託により委託者から受ける金額が当該業務のために必要な費用の額を超えないことをいう。)により行われるものであり、かつ、そのことにつきあらかじめ一定の期間(おおむね5年以内の期間とする。)に限って所轄税務署長(国税局の調査課所管法人にあっては所轄国税局長)の確認を受けたときは、その確認を受けた期間については、当該業務は、その委託者の計算に係るものとするとして当該公益法人等の収益事業としないものとする旨定めており、その取扱いは当審判所においても相当であると認められる。

(2) 認定事実

イ E霊園は、「○○の墓地」をうたい文句とし、新規予定地を含めて○○○○区画の墳墓地を有する総面積約○○○○平方メートルの霊園である。園内の個人使用区画に隣接する通路部分は舗装されており、管理事務所棟のほか、2棟の無料休憩所や、遊具を備えた児童公園、無料駐車場等の施設がある。
 墓地は○区画に分割されて各区画は番号、イロハ順及び○○名等で命名されているが、区画ごとにバケツや柄杓を備えた水汲み場及びごみ箱が設置されており、通常月に1、2回程度、盆・彼岸には状況に応じて、ごみ収集が行われている。
ロ E霊園は、○○線○○駅から、車で約○分のところに位置するところ、請求人は、昭和53年頃から、盆・彼岸に各3日程度、E霊園の最寄り駅である同駅○○とE霊園との間で、○○をするようになり、平成23年9月からは、毎年○月から○月までの土曜日、日曜日及び祝日並びに○月から翌年○月までの日曜日及び祝日に、同駅○○とE霊園との間を1日3回○○をしている。また、平成5、6年頃から、土曜日(毎年○月から翌年○月までの間の土曜日を除く。)、日曜日及び祝日(○○の日、年末年始及び冬季の積雪による○○を除く。)に、E霊園内を1日6回○○している。
ハ 本件管理料の主な使途は、1 事務費(管理料払込取扱票等の印刷費や送料など)、2清掃・環境整備費(墓地内清掃管理業務、植栽管理業務、設備管理、墓地内の備品購入、修繕工事、除雪、盆・彼岸の苑内警備員配置)、3○○や○○の費用、4人件費、5水道光熱費及びその他の費用(勘定科目としては、法要祭典費、布教費、広告宣伝費、旅費交通費、支払手数料、賃借料、保険料、公租公課、減価償却費及び雑費)である。

(3) 判断

 本件管理料収入が収益事業に係る収入に当たるかについて、以下のとおり検討する。
イ 本件管理行為が、非収益事業である墳墓地の貸付業とは独立の事業として行われたものか否かについて
 施行令第5条第1項第5号は、不動産貸付業について収益事業に該当する旨定めているものの、同号ニにおいて、宗教法人の行う墳墓地の貸付業を除外している。そして、本件墳墓地の貸付けは、宗教法人である請求人が、墓地永代使用料を徴して業として行っているものであって、同号ニにいう墳墓地の貸付業に該当する。
 ところで、上記1の(4)のイ、ロの(ト)及びハのとおり、本件管理料は、本件墳墓地の貸付けを行う請求人が、墓地使用権者から事務費、園内の参道等共用部分の清掃、環境整備及び○○の費用並びに霊園の運営管理(本件管理行為)に要する費用の名目で、墓地永代使用料とは別途徴収しているものであるところ、本件管理行為は、本件墳墓地の利用者が墳墓地を利用する上での利便性を高める役割を果たしており、この点において本件墳墓地貸付業と一定の関連性があるというべきである。
 しかしながら、上記(1)のニのとおり、施行令第5条第1項第5号ニに規定する「墳墓地」の貸付けとは、墓石及びカロートを設置するために区画された土地の部分(以下「個人使用区画」という。)の貸付けをいい、本件墳墓地の貸付けも、かかる個人使用区画の貸付けであると認められるところ、本件管理行為は、上記1の(4)のロの(ト)及び(チ)のとおり、個人使用区画とは別の空間である共用部分に関する管理運営を業として行っており、対象が異なっている。また、本件墳墓地の貸付けと共用部分の管理運営等である本件管理行為とは、業務形態として別個独立のものであるし、それぞれの事業についての対価も別個に定められている。
 事業規模をみても、本件管理料は、貸し付けられた墳墓地1Kごとに年間○○○○円ないし○○○○円であるが、E霊園には、新規予定地を含めて○○○○区画の墳墓地が存するから、仮に全ての墳墓地を貸し付けた場合、1区画1Kであったとしても、年間XX,000,000円からXX,000,000円の収益が見込まれ得ることとなる。そして、実際には、上記1の(4)のヘのとおり、本件墳墓地の使用区画は、1区画について2K以上のものも存し、新規墓地区画には、1区画2K以上としたり、3Kから4Kを1区画とする地区もある。当審判所の調査によれば、請求人が確定申告時、本件事業年度における本件管理料収入として計上した金額は、XX,XXX,XXX円である。
 次に、E霊園における墓地永代使用料は、本件墳墓地の立地条件等によって区々であるが、例えば、上記1の(4)のトのとおり、「H地区」の新規分譲使用区画1Kの場合、墓地永代使用料は○○○○円から○○○○円程度である。他方、同区画1Kの60年間分の本件管理料収入は、○○○○円(新規の場合として、1K年間○○○○円として計算。仮に1K年間○○○○円として計算すれば、○○○○円。)である。
 そうすると、本件管理行為は、これによって得られる本件管理料収入自体の金額からしても、本件墳墓地の貸付け自体の対価である墓地永代使用料との比較においても、独立した事業として評価し得るだけの規模を有しているものと認められる。
 そして、請求人は、本件墳墓地の経営において両事業を営んでいるけれども、特定の宗派には属さず、墓地の管理運営という役務の性質上、墳墓地の貸付業を営む宗教法人以外の別の業者が墓地の管理運営業を一般的に行うことも十分可能であることなどの事情もある。これらの事情に加え、日本標準産業分類(総務省が作成する、統計調査の結果を産業別に表示する場合の統計基準として、事業所において社会的な分業として行われる財貨及びサービスの生産又は提供に係る全ての経済活動を分類するもの)においても、墓地管理業は生活関連サービス業の一つとして、墓地貸付業とは別個の社会的分業のサービス業として独立に把握されていることを併せ考慮すると、本件管理行為は、本件墳墓地の貸付業とは別個独立の事業であると認められる。
ロ 本件管理行為が施行令第5条第1項第10号の請負業に該当するか否かについて
(イ) 上記(1)のロのとおり、施行令第5条第1項第10号に規定する請負業は、民法第632条に規定する請負のほか、同法第643条及び第656条に規定する委任、準委任を反復継続して業として行う行為を含むものであるところ、本件管理行為は、本件墳墓地の利用者のために、墓地共用部分の管理役務を提供するものであるということができ、本件管理料を徴収してこれらの行為を反復継続して行っていた請求人の行為は、外形上は上記請負業の形態を有するものと認められる。
(ロ) 請求人は、これについて宗教行為であって施行令第5条第1項第10号の請負業に該当しない旨主張する。
 しかし、上記1の(4)のロの(ト)のとおり、本件使用規定第○条は、本件管理行為の内容を示した上で、その費用として本件管理料を毎年納付すべきことを定め、上記1の(4)のロの(ニ)及びハのとおり、墓地使用申込者はそのような内容の本件使用規定を遵守することを承諾して、墓地使用の申込みを行い、本件管理料を3年分前納することとなっていること、また、上記1の(4)のニ及び当審判所の調査の結果によれば、本件使用規定の制定以前に用いられていたA墓地管理規程及び同施行細則にも管理料についての定めがあるほか、請求人は、本件使用規定制定以前に申込みを行った墓地使用権者に対しても、本件使用規定が掲載された「E霊園だより・○○」を年に2回発送しており、当該墓地使用権者は、本件使用規定の存在を認識して黙示的に追認しているものと認められることなどからすると、請求人と墓地使用権者との間で、請求人が墓地使用権者に対し本件管理行為に係る役務を提供すべきことを約し、墓地使用権者が請求人に対し本件管理料を支払う旨を約したのであって、請求人が提供する本件管理行為という役務の対価として本件管理料が支払われている関係にあるものとみるのが相当であり、本件管理料について、いわゆる喜捨としての性格を持つものということはできない。
 そして、本件管理行為に係る事業の実際の内容は、請求人のような宗教法人でしか遂行できないものではなく、宗教法人以外の法人でも遂行できる事業であるといえ、これら法人の事業と競合するものである。
(ハ) 以上の事情からすると、上記(1)のロの法令解釈に照らせば、墓地経営の宗教的性格に関する請求人の主張を考慮しても、本件管理行為は、施行令第5条第1項第10号に規定する請負業として行われたものであり、法人税法第2条第13号の収益事業に当たると解するのが相当であるから、これに伴い墓地使用権者等から請求人に対し支払われる本件管理料は、収益事業である請負業(事務委託の業を含む。)に係る収入である。

(4) 請求人の主張について

イ 請求人は、墓地管理者である請求人には墓地埋葬法等により墓地全体の保全管理が義務付けられており、そのために必要な費用として本件管理料を収受しているものにすぎないから、事務処理の委託を受ける業に係る収入には当たらないと主張する。
 確かに、墓地埋葬法第10条では、墓地、納骨堂又は火葬場を経営しようとする者は都道府県知事の許可を受けなければならない旨を規定し、これを受けて、規則では、墓地等の経営者に対して墓地等の設置等について様々な基準を設け、原則としてこれらの基準を満たす場合には墓地等の経営を許可することとしている。したがって、請求人が墓地埋葬法に基づく墓地等の経営の許可を受けるためには、規則に定められた基準を満たす必要があったものといえるのである。そして、請求人が本件管理行為を行うことで、これらの基準を満たすことになることは否定できない。
 しかし、他方で墓地利用者は、共用部分を利用できないと本来的な目的物である墓地を機能させることができないことから、請求人の墓地管理役務の提供に対する対価として本件管理料を支払っているものと認められる。上記(3)で認定説示したとおり請求人が墓地使用権者から墓地管理の委託を受け、本件管理料を収受している以上、請求人が本件管理行為を墓地利用者の利便性を高める目的のために行っていることは看過することはできない。
 施行令第5条第1項第5号ニは、宗教法人等の行う墳墓地貸付業を収益事業から除外しているのであって、墓地等の経営の一環として行われる事業の全てを収益事業から除外しているわけではないところ、墓地共用部分の管理運営が、墓地経営者に義務付けられているということのみでは、本件管理行為を本件墳墓地の貸付業と独立の事業に当たらないと判断することはできない。結局、本件管理行為が本件墳墓地貸付業と別個独立の事業であると認められることは、上記(3)のイで述べたとおりである。
ロ また、請求人は、個人使用区画以外の管理は請求人の責任で行うこととした本件使用規定第○条を挙げて、個人使用区画以外の部分については、墓地使用権者の権利の及ばないところであり、墓地使用権者から請求人に管理業務を委託していないことは明らかであるとか、本件管理料には、請求人が墓地経営のために自らの判断で使用できるものも含まれているなどとして、本件使用規定に基づく本件管理料は、「事務処理の委託を受ける業」に係る収入には該当せず、請負業に係る収入にも該当しない旨主張する。
 しかしながら、個人使用区画以外の部分については貸付対象外であって墓地使用権者が自ら管理すべきところではないとはいっても、請求人は、自ら所有・管理する土地について所有者としての管理責任を果たすことを超えて、これらの土地を利用して、墓地利用者の墓参等の便宜に資するよう設備や環境を整備し、また○○を行うなどし、設備やサービス等を墓地利用者に提供しているのであるから、墓地使用権者が請求人に対しこれらの設備やサービスの維持に必要な管理業務を委託しているとする上記認定説示は何ら左右されるものではない。
 さらに、本件管理料の使途についても、上記1の(4)のロの(ト)のとおり、本件使用規定第○条第○項において、本件管理行為に用いる旨定められているのである。なるほど本件管理行為は、「本霊園の運営管理に要する費用」といった包括的な内容を含んでいるし、実際、管理行為は多岐にわたるのが通常であるから、請求人には本件管理料の使途について広範な裁量があったものと認められる。
 しかし、本件使用規定を置いて本件管理料を墓地永代使用料とは別途納付させることとした趣旨に鑑みれば、本件管理料は、飽くまでも墓地利用者の墓参等の便宜に資する設備・サービス等の維持に利用されるべきものであって、それ以外の墳墓地貸付業の経営一般に必要な費用等は、墓地永代使用料等から得られる収益から支弁すべきことは明らかである。本件管理料の実際の使途をみても、上記(2)のハのとおり、主として事務費や清掃・環境整備費・○○など、上記設備・サービス等の維持に使われているのであり、一部に法要祭典費や布教費等を勘定科目として支弁された費用も存するものの、上記認定説示を左右するに至らない。
 そうすると、上記(3)のロのとおり、本件使用規定に基づく本件管理料は、「事務処理の委託を受ける業」に係る収入であるというべきであり、この点に関する請求人の主張は、採用することができない。
ハ 請求人は、E霊園の経営管理は、宗教活動であり、また、極めて公益性が高いことなどを理由に、本件管理料は、収益事業に係る収入には該当しない旨主張する。
 しかしながら、墓地経営の宗教的性格に関する請求人の主張を考慮しても、本件管理行為が、施行令第5条第1項第10号に規定する請負業として行われたものであり、法人税法第2条第13号の収益事業に当たると解するのが相当であることは、上記(3)のロのとおりである。
 また、公益性が高いという主張について、現行税法上、収益事業として特掲されている事業は、いずれも一般私企業との競争関係の有無や課税上の公平の維持など、専ら税制固有の理由から収益事業として規定されているのであり、一般私法上ないしは行政上における公益性の有無判断と、税法における収益事業の課税の必要性の判断とはその尺度が異なる。したがって、公益性が高いからといって、必ずしも収益事業に該当しないものとはいえず、例えば、上記(1)のホのとおり、公益法人等が施行令第5条第1項各号に掲げる事業のいずれかに該当する事業を行う場合には、仮にその行う事業が当該公益法人等の本来の目的たる事業であるときであっても、当該事業から生ずる所得については法人税が課されるのである。上記(3)のロのとおり、本件管理行為は、同項第10号に掲げる収益事業である請負業に該当する以上、たとえ墓地の管理業務に公益性があるとしても、そのことによって、収益事業に当たるという結論を左右するものではない。
 したがって、この点に関する請求人の主張は、採用することができない。
ニ 請求人は、本件管理料は、墓地使用権者の墓地を除く墓地全体の管理運営及び維持のために必要なものであって、国やL県が求める墓地の安定的経営のためには不可欠なものであり、また、将来の維持管理のための支出を含めると実費相当額であり、収益事業に係る収入には該当しない旨主張する。
 しかしながら、事業に公益性があるからといって収益事業に該当しないものではないことは先に述べたとおりであり、本件管理料が墓地使用権者の墓地を除く墓地全体の維持管理、ひいては、安定的経営のために必要不可欠なものであっても、そのことにより、本件管理料収入は、収益事業に係る収入に該当しないことにはならない。また、上記(1)のヘのとおり、基本通達15-1-28の取扱いは相当であるところ、請求人は管理業務に関して、所轄税務署長の確認を受けたといった事情は窺われず、本件管理料収入が実費相当額であるとしても、それだけでは、本件管理料収入は、収益事業に係る収入に該当しないことにはならないから、この点に関する請求人の主張には理由がない。

(5) 小括

 以上のとおり、本件管理料収入は、収益事業に係る収入に該当し、各更正の請求には更正をすべき理由がないと認められるから、これらについて更正をすべき理由がないとした各通知処分はいずれも適法である。

(6) その他

 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所の調査の結果によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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