(平成26年12月8日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、原処分庁が、鋼材等の販売業を営む同族会社である審査請求人(以下「請求人」という。)が特定の取引先への売上げを益金の額に算入していないなどとして法人税の更正処分等をしたのに対し、請求人が、当該売上げに係る売上原価の額を損金の額に算入すべきであるとして、原処分の一部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

イ 請求人は、平成16年9月1日から平成17年8月31日まで、平成17年9月1日から平成18年8月31日まで、平成18年9月1日から平成19年8月31日まで、平成19年9月1日から平成20年8月31日まで、平成20年9月1日から平成21年8月31日まで、平成21年9月1日から平成22年8月31日まで及び平成22年9月1日から平成23年8月31日までの各事業年度(以下、順次「平成17年8月期」、「平成18年8月期」、「平成19年8月期」、「平成20年8月期」、「平成21年8月期」、「平成22年8月期」及び「平成23年8月期」といい、これらを併せて「本件各事業年度」という。)の法人税について、青色の確定申告書に別表1の「確定申告」欄のとおり記載して、いずれも法定申告期限までに申告した。
ロ 原処分庁は、原処分庁所属の調査担当職員(以下「本件調査担当者」という。)による調査(以下「本件調査」という。)に基づき、平成24年7月9日付で、次の各処分をした。
(イ) 平成17年8月期以後の法人税の青色申告の承認の取消処分
(ロ) 別表1の「更正処分等」欄のとおりとする本件各事業年度の法人税の各更正処分(以下「本件各更正処分」という。)及び重加算税の各賦課決定処分
(ハ) 別表1の「更正処分等」欄のとおりとする平成22年8月期及び平成23年8月期の法人税の過少申告加算税の各賦課決定処分(以下、本件各事業年度の重加算税の各賦課決定処分と併せて「本件各賦課決定処分」といい、本件各賦課決定処分と本件各更正処分を併せて「本件各更正処分等」という。)
ハ 請求人は、原処分庁が本件各更正処分において益金の額に算入した特定の取引先への売上げは、請求人に帰属しないことなどを理由に、上記ロの(イ)及び(ロ)の各処分を不服として、平成24年8月21日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年11月21日付でいずれも棄却の異議決定をした。
ニ 請求人は、異議決定を経た後の上記ロの(ロ)の各処分について、原処分庁が本件各更正処分により益金の額に算入した特定の取引先への売上げに係る売上原価の額を損金の額に算入すべきであるとして、平成24年12月7日に審査請求をした。
 なお、上記ロの(ハ)の各処分についてもあわせ審理する。

(3) 関係法令の要旨

イ 法人税法第22条《各事業年度の所得の金額の計算》第3項は、内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額、当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るものとする旨、同条第4項は、同条第2項に規定する当該事業年度の収益の額及び同条第3項各号に掲げる額は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されるものとする旨、それぞれ規定している。
ロ 国税通則法第65条《過少申告加算税》第1項は、期限内申告書が提出された場合において、更正があったときは、当該納税者に対し、その更正に基づき納付すべき税額に100分の10の割合を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算税を課する旨、同条第4項は、同条第1項に規定する納付すべき税額の計算の基礎となった事実のうちにその更正前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて正当な理由があると認められるものがある場合には、同項に規定する納付すべき税額からその正当な理由があると認められる事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除して、同項の規定を適用する旨、それぞれ規定している。
ハ 国税通則法第68条《重加算税》第1項は、同法第65条第1項の規定に該当する場合において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額に係る過少申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に100分の35の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する旨規定している。

(4) 基礎事実

 以下の事実は、請求人と原処分庁との間に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。

イ 請求人は、昭和48年10月○日に設立された法人であり、本件各事業年度における代表取締役はG(以下「本件代表者」という。)であった。
 なお、本件代表者は、本件各事業年度において、請求人のほか、ステンレス屑と鉄屑等のスクラップの回収及び売買を主な事業内容とするJ社及びパチンコ店等の遊技場の経営を事業内容とするK社の代表取締役であった。
ロ 本件各事業年度の法人税の確定申告書に添付されている損益計算書に記載されている売上金額(以下「当初申告売上金額」という。)及び売上原価の額(以下「当初申告売上原価額」という。)は別表2のとおりである。
ハ 請求人は、本件各事業年度の法人税の所得金額の計算に当たり、請求人が行う全ての取引に係る消費税等(消費税及び地方消費税をいう。以下同じ。)の経理処理について、消費税等の額と当該消費税等に係る取引の対価の額とを区分しないで経理する方式(いわゆる税込経理方式)を採用している。
ニ 本件各更正処分等について
(イ) 本件調査担当者は、以下の売上先(以下「本件売上先」という。)に対するJ社名義の取引に係る売上げ及びF社G名義の銀行預金口座に入金された取引に係る売上げ(以下、これらを併せて「本件売上げ」という。)の金額(以下「本件売上金額」という。)が請求人の当初申告売上金額に計上されていないことを指摘した。
 なお、本件売上金額の内訳は別表3のとおりである。
A L社
B M社
C N社
D P社
E Q社
(ロ) 請求人は、本件調査時に、本件調査担当者に対し、本件売上先との取引はJ社又は本件代表者個人が行ったものであり請求人の取引ではない旨、また、本件売上げに係る売上原価の額(以下「本件売上原価額」という。)を請求人の損金の額に算入していない旨主張したが、原処分庁は、J社が客観的に企業として営業活動をしていたとも本件代表者が個人で事業活動を行っていたとも認められないこと、また、請求人が本件売上げに係る仕入れの取引先を明らかにしなかったことなどから、請求人の主張は認められないとして本件各更正処分等をした。
(ハ) 本件各更正処分において原処分庁が認定した売上金額は、別表4の「原処分庁認定売上金額」欄のとおり、当初申告売上金額に本件売上金額を加算した額である。
(ニ) 本件各更正処分において原処分庁が認定した売上原価の額は、当初申告売上原価額と同額である。

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2 争点

 本件各事業年度の損金の額に算入されていない本件売上原価額は存在するか否か。

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3 主張

原処分庁 請求人
  下記(1)ないし(4)のことから、本件売上原価額は、損金の額に算入済みであると推認される   下記(1)及び(2)のとおり、本件売上原価額は、損金の額に算入されていないから、損金の額に算入すべきである。
 なお、本件各事業年度の本件売上原価額は、別表5のとおりである。
 (1) 請求人の本件各事業年度の確定申告書に添付された貸借対照表、損益計算書及び勘定科目内訳書に記載された仕入金額(以下「当初申告仕入金額」という。)及び棚卸金額については、不相当と認められる事実はなかった。  (1) 本件仕入れは、通い帳、ノート、検量書及び計量伝票により管理していたが、帳簿には記載しておらず、当初申告仕入金額には含まれていない。
 (2) 請求人の本件各事業年度における当初申告売上金額に対する本件各更正処分の売上金額の比率は、102.3パーセントないし110.2パーセントであり、軽微である。  (2) 別表6のとおり、当初申告仕入金額に係るステンレス類の数量と本件売上金額に係るステンレス類の数量とを比較すると本件売上金額に係るステンレス類の数量の方がはるかに大きい。
 また、別表7のとおり、平成20年8月期の当初申告仕入金額に係る鉄の数量は、当初申告売上金額に係る鉄の数量を下回っている。このことは、産業廃棄物の付着鉄屑等の無償仕入れに対する売上金額が当初申告売上金額に含まれていることを示しており、当初申告仕入金額に係る鉄の仕入れを本件売上先に売却する余地はない。(原処分庁は、無償仕入れは、本件売上げに回っているとの認識で、損金の額に算入されるべき本件売上原価額は存在しないと推測している。)
 これらの事実は、損金の額に算入されていない本件売上原価額が存在しなければ合理的に説明できない。
 (3) 請求人が、本件売上原価額は当初申告売上原価額に含まれていない、いわゆる簿外仕入れからなる原価であると主張する当該仕入れ(以下「本件仕入れ」という。)の支払代金については、現金出納帳がないことから支払の事実が不明であり、また、本件調査担当者及び請求人の異議申立てに係る調査(以下「本件異議調査」という。)の担当者(以下「本件異議調査担当者」という。)が本件仕入れの取引先を明らかにするよう、再三、求めたにもかかわらず、請求人は、本件仕入れの取引先が特定され、当該取引先に対する調査をされる可能性があるので公表できないとして、これに応じず、あえて本件仕入れの取引先を明示しなかった。
 なお、本件調査担当者は、請求人の申出に基づき、通い帳に記載された名称から、本件仕入れの取引先と見込まれる者を調査したが、本件各事業年度の損金の額に算入されるべき本件売上原価額があるとの事実は確認できなかった。
 (4) 請求人は、本件調査担当者及び本件異議調査担当者に対し、売上げ及び仕入れの数量を検討した表を提示したものの、本件調査から本件異議調査に至るまで、具体的な本件仕入れの事実を明らかにしなかった。

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4 判断

(1) 認定事実

 原処分関係資料、請求人提出資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。

イ 本件調査について
(イ) 請求人は、平成24年3月8日に本件売上原価額の根拠として、本件調査担当者に次の書類を提示した。
A 年月日、名称及び金額が記載されている通い帳3冊(以下「本件通い帳」という。)
B 年月日、名称、品名、数量、単価及び金額が記載されているノート1冊(以下「本件ノート」という。)
(ロ) 本件調査担当者は、請求人に対し、本件通い帳及び本件ノートに記載されている取引(以下「本件通い帳等記載取引」という。)について、具体的な取引先の氏名(名称)、所在地などを明らかにするよう求めたが、請求人は、取引先が特定されると当該取引先に対する調査をされる可能性があるとして明らかにしなかった。
(ハ) 上記(ロ)のとおり、本件調査担当者は、請求人が取引先を明らかにしなかったことから、本件通い帳に記載されている名称から取引先と見込まれる複数の者を推測し、これらの者に対し確認したが、本件売上原価額を確認することはできなかった。
ロ 請求人の当審判所への提出書類について
 請求人は、当審判所に対し、本件売上原価額の根拠として、次の書類を提出した。
(イ) 本件通い帳の写し
(ロ) 本件ノートの写し
(ハ) 計量年月日、品名、数量及び取引先が記載されている「J社」の屋号が印字された検量書及び「F社」又は「F社G」の屋号が印字された各計量伝票の写し
(ニ) 本件仕入れの取引先が、「J社」又は「F社」とスクラップ(鉄・ステンレス類)等の売却又は処分等の取引があった旨を記載した確認書と題する書類の写し
ハ 請求人の主張する本件仕入れに係る取引について
(イ) 本件通い帳等記載取引について
A 当審判所において、上記ロの提出書類を確認し、取引先等に対する調査を行った結果、その取引年月日、取引金額及び取引物品が確認できたものは、次表の取引先に係る取引である。

取引先

取引年月日

取引金額(円)

R

平成19年1月25日

600,000

S

平成20年3月3日

105,000

T社○○支店

平成21年11月17日

600,000

U社

平成23年3月18日

320,000
 70,000

(注)取引物品は、いずれの取引もスクラップ等の棚卸商品である。

B 上記Aの表の取引金額は、それぞれ、取引年月日が属する事業年度である平成19年8月期、平成20年8月期、平成22年8月期又は平成23年8月期の当初申告仕入金額に計上されていない。
(ロ) K社取引について
A 本件代表者は、当審判所に対し、K社からK社所有のパチンコ店の閉店又は改装時に発生した雑品、雑線、下銅等の非鉄屑を別表8のとおり仕入れ(以下、当該仕入れに係る取引を「K社取引」という。)、M社及びN社へ売却した旨答述し、その際、発行者名として「F社G」の印字がされた計量伝票を提示したが、当該計量伝票には、K社所有のパチンコ店の名称、計量年月日、品名及び数量は記載されているものの、支払金額及び支払年月日の記載はなかった。
B 本件代表者は、当審判所に対し、K社の代表取締役の立場で、K社は、平成23年3月1日から平成24年2月28日までの事業年度の法人税の確定申告において、特別利益として過年分修正益を計上しており、当該修正益の中にK社取引に係る利益が含まれていると思うが、その内訳は分からない旨答述し、K社取引があったことを証する書類を提示しなかった。
ニ 請求人の仕入れの内容、帳簿書類の記載・保存の状況について
(イ) 請求人の仕入れには、無償で引き取った商品、500キログラム未満の安価なスクラップ等で引取料と相殺し支払金額が発生しないもの、鋼材の加工等を行った際に発生する鉄屑等があり、また、総勘定元帳、仕入帳及び本件通い帳には、品目、単価及び数量等が明らかでない鉄屑等のスクラップの仕入れが記載されている。
(ロ) 請求人は、当審判所に対し、当初申告仕入金額に係る取引についての計量伝票は全て作成している旨答述したが、計量伝票は、控えがない単票式で取引先に渡すものであるため、当初申告仕入金額に係る取引の計量伝票は、請求人の手元に保存されていない。

(2) 当てはめ

イ 損金の額に算入されていない本件売上原価額の存否について
 売上高とそれに係る売上原価の対応関係は、所得計算上不可欠の要素であるが、一般的に棚卸資産の売買を大量反復的に繰り返す法人において、当該対応関係を個別的・直接的に把握することは困難である。そのため、全ての仕入れを帳簿上明らかにするとともに、各事業年度末において一定の方法により期末棚卸資産の価額を評価することにより、前期末棚卸資産の評価額を引き継いだ期首棚卸資産の価額と期中に取得した棚卸資産の価額との合計額から、期末棚卸資産の評価額を控除した金額をもって、売上原価の額を算定することとされている。
 このように算定された売上原価の額の正確性は、法人が取引を継続的に記録した帳簿と取引や棚卸しに関して作成又は受領した書類の記載事項が整合し、当該帳簿と当該書類が対照できる状態に置かれることによって確保されるものである。
 本件においては、請求人が、本件仕入れについて帳簿に継続的な記録を行っていないことは、上記3の請求人欄の(1)並びに上記(1)のイ、ロ及びハの(ロ)のとおり明らかであるが、その場合でも、請求人が、帳簿書類による以上に客観的信頼性のある資料及び計算方法に基づき、本件仕入れの事実及び金額を特定し、本件仕入れの金額が当初申告仕入金額に含まれていないこと及び請求人の本件各事業年度の売上金額(本件売上金額を含む。)と本件仕入れの金額が対応関係を有することを具体的に主張立証できれば、当該主張が排斥されるものではない。
 そこで、請求人が提出した資料及び主張する計算方法について、当審判所が調査・審理した結果は、次のとおりである。
(イ) 本件通い帳等記載取引について
 上記(1)のハの(イ)のAの表の取引については、同(イ)のとおり、取引先、取引年月日、取引金額及び取引内容等により取引の事実及び金額が特定され、また、当該取引金額は、それぞれ、平成19年8月期、平成20年8月期、平成22年8月期又は平成23年8月期の当初申告仕入金額に含まれていないことが認められる。
 そして、請求人の本件各事業年度の確定申告書に添付された貸借対照表及び勘定科目内訳書に記載された棚卸金額については、当審判所に提出された証拠資料等によっても不相当とする理由は認められない。
 そうすると、上記(1)のハの(イ)のAの表の取引金額は、それぞれ、平成19年8月期、平成20年8月期、平成22年8月期又は平成23年8月期の本件売上金額と対応関係を有するということができ、同表の取引金額を本件売上原価額として損金の額に算入することが相当と認められる。
(ロ) K社取引について
 上記(1)のハの(ロ)のとおり、請求人提出資料では、K社取引に係る取引金額が明らかでなく、また、当審判所がK社に確認したところ、K社取引があったことを証する書類の提示がなかった。
 そうすると、K社取引については、当該取引に係る仕入れの事実及び金額を特定することができず、損金の額に算入されていない本件売上原価額が存在したと認めることができない。
(ハ) 小括
 上記(イ)及び(ロ)により、当審判所が存在すると認定する本件各事業年度の損金の額に算入されていない本件売上原価額は、別表9の「審判所認定額」欄のとおりである。
ロ 請求人は、特定の資材の仕入れに係る数量と売上げに係る数量に差異があり、当該差異は、損金の額に算入されていない本件売上原価額が存在しなければ合理的に説明できない旨主張するが、上記(1)のニの(イ)のとおり、請求人の仕入れには、無償引取品や鋼材加工時発生の鉄屑等支払金額が発生しないものがあること、また、総勘定元帳、仕入帳及び本件通い帳等には、品目、単価及び数量等が明らかでない鉄屑等の仕入れが記載されていること、同(ロ)のとおり、当初申告仕入金額に係る取引の計量伝票は請求人の手元に保存されていないことから、当該差異を確認することができない。
 したがって、資材の数量の差異を根拠とする請求人の主張は採用することができない。

(3) 本件各更正処分について

イ 平成17年8月期及び平成18年8月期について
 平成17年8月期及び平成18年8月期については、別表9の「平成17年8月期」及び「平成18年8月期」の各「審判所認定額」欄のとおり、損金の額に算入される本件売上原価額は存在せず、請求人の所得金額及び納付すべき税額はいずれも各更正処分の金額と同額となることから、各更正処分はいずれも適法である。
ロ 平成19年8月期について
 当審判所の調査の結果によれば、別表3のL社に対する本件売上金額44,824,729円のうち、222,600円(引渡日:平成19年4月5日、品名:HS1)は、平成19年8月期の当初申告売上金額の一部として益金の額に算入されていることが認められる。
 そうすると、請求人の所得金額は、更正処分による所得金額○○○○円から上記の益金の額に算入されている金額222,600円及び別表9の「平成19年8月期」の「審判所認定額」欄の本件売上原価額600,000円を減算した○○○○円となるから、同処分は、別紙1の「取消額等計算書」のとおり、その一部を取り消すべきである。
ハ 平成20年8月期について
 当審判所が認定した平成19年8月期の所得金額を基に計算した損金の額に算入される未納事業税の額は、別表10の「平成20年8月期」の「審判所認定額」欄の○○○○円となるから、原処分庁が更正処分において損金の額に算入した金額○○○○円(別表10の「平成20年8月期」の「原処分額」欄)との差額79,000円は損金の額に算入しない。
 そうすると、請求人の所得金額は、更正処分による所得金額○○○○円から別表9の「平成20年8月期」の「審判所認定額」欄の本件売上原価額105,000円を減算し、上記の損金の額に算入しない未納事業税の額79,000円を加算した○○○○円となるから、同処分は、別紙2の「取消額等計算書」のとおり、その一部を取り消すべきである。
ニ 平成21年8月期について
 当審判所が認定した平成20年8月期の所得金額を基に計算した損金の額に算入される未納事業税の額は、別表10の「平成21年8月期」の「審判所認定額」欄の○○○○円となるから、原処分庁が更正処分において損金の額に算入した金額○○○○円(別表10の「平成21年8月期」の「原処分額」欄)との差額2,500円は損金の額に算入しない。
 そうすると、請求人の所得金額は○○○○円となり、更正処分による所得金額○○○○円を上回り、また、納付すべき税額も上回るから、同処分は適法である。
ホ 平成22年8月期について
 請求人の所得金額は、更正処分による所得金額○○○○円から別表9の「平成22年8月期」の「審判所認定額」欄の本件売上原価額600,000円を減算した○○○○円となるから、同処分は、別紙3の「取消額等計算書」のとおり、その一部を取り消すべきである。
ヘ 平成23年8月期について
 当審判所が認定した平成22年8月期の所得金額を基に計算した損金の額に算入される未納事業税の額は、別表10の「平成23年8月期」の「審判所認定額」欄の○○○○円となるから、原処分庁が更正処分において損金の額に算入した金額○○○○円(別表10の「平成23年8月期」の「原処分額」欄)との差額57,600円は損金の額に算入しない。
 そうすると、請求人の所得金額は、更正処分による所得金額○○○○円から別表9の「平成23年8月期」の「審判所認定額」欄の本件売上原価額390,000円を減算し、上記の損金の額に算入しない未納事業税の額57,600円を加算した○○○○円となるから、同処分は、別紙4の「取消額等計算書」のとおり、その一部を取り消すべきである。

(4) 本件各賦課決定処分について

イ 請求人は、本件各事業年度において、本件売上げが請求人の取引であるにもかかわらず、本件売上げを請求人の事業に係る帳簿書類に記載せず、当該帳簿書類を基に作成した本件各事業年度の法人税の確定申告書を原処分庁に提出したことが認められる。
 このことは、国税通則法第68条第1項に規定する「国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたとき」に該当する。
ロ 平成17年8月期、平成18年8月期及び平成21年8月期について
 請求人には、上記イのとおり国税通則法第68条第1項の規定に該当する事由があることから、原処分庁が同項の規定に基づいてした重加算税の各賦課決定処分は、いずれも適法である。
ハ 平成19年8月期及び平成20年8月期について
 請求人には、上記イのとおり、国税通則法第68条第1項の規定に該当する事由があることから、原処分庁が重加算税を賦課したことは相当であるが、上記(3)のロ及びハのとおり、各更正処分の一部が取り消されることに伴い、重加算税の各賦課決定処分は、別紙1及び2の「取消額等計算書」のとおり、いずれもその一部を取り消すべきである。
ニ 平成22年8月期及び平成23年8月期について
 請求人には、上記イのとおり、国税通則法第68条第1項の規定に該当する事由があることから、原処分庁が重加算税を賦課したことは相当であるが、上記(3)のホ及びヘのとおり、各更正処分の一部が取り消されることに伴い、重加算税の各賦課決定処分は、別紙3及び4の「取消額等計算書」のとおり、いずれもその一部を取り消すべきである。
 また、請求人には、一部が取り消される各更正処分により納付すべき税額の基礎となった事実のうち、当該各更正処分前の税額の基礎とされなかったことについて、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められず、原処分庁が同条第1項の規定に基づいてした過少申告加算税の各賦課決定処分は、いずれも適法である。

(5) その他

 原処分のその他の部分については、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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