「イメージどおりの任期付審判官?」

田 脩平

 関西出身の私がこれまで旅行でしか訪れたことのなかった地方に所在する支部での勤務を始めて2年が経ちました。湿度が低く過ごしやすい夏や一面の雪景色に包まれる冬をそれぞれ2度経験し、毎週末、あちらこちらをドライブしてしっかり北の大地を満喫しています。
 本稿では、任期付審判官を経験して感じた審判所の雰囲気や任期付審判官に対して期待されていることについてお話ししたいと思います。
 私は、弁護士時代に審査請求の代理人を務めたことがあり、請求人面談や書面の提出に関する連絡の際に事件を担当する審判官とやりとりする機会がありました。その際の審判官に対する印象は、民事訴訟における裁判官と大きく変わらなかったため、審判所の雰囲気も司法修習でお世話になった裁判官室と近いものだろうと想像していました。
 実際に、任期付審判官として採用されて審判所で勤めてみると、たしかに、各自が静かな事務室内で黙々と記録を読み込み、議決書等を起案している時間が長いという面で、私がイメージしていたとおりだったという部分もあります。ただ、審査請求事件は民事訴訟のような単独審がなく、全ての事件を合議体と分担者で扱い、更には法規・審査担当者や部長審判官等も関与しているため、折に触れて各自が自らの検討状況を開陳しながら、議論することが求められます。このため、事務室では一人で黙々と作業するというだけではなく、割と頻繁に事件についての活発な議論があちらこちらで行われています。他の任期付職員のコラムでも触れられているとおり、審判所では国税局・税務署の各事務系統から出向してきた経験豊富な職員と共に仕事をしていますので、議論はとても白熱し、さまざまな視点から深く検討されるのでとても刺激的です。
 そして、外部出身の任期付審判官にとっては、個別税法や国税通則法などで馴染みの薄い論点が問題となることも少なくありませんが、そのような環境の中でも任期付審判官に期待されている役割は幾つもあります。中でも、具体的な法令や裁判例を解釈・評価して事案に当てはめをすることや、審理関係人が繰り広げる主張を課税等要件事実との関係で整理して争点を浮かび上がらせること、更には、証拠から事実を認定すること等は弁護士の得意分野ですから、こういった面でこれまでの職務経験が生かせるのだと思います。
 このコラムをご覧になっている皆さんが、審判所、そして任期付審判官に対して抱いているイメージはどのようなものでしょうか。おそらくはいい意味で裏切られるであろう任期付審判官への応募を積極的にご検討ください。

○ 本コラムは、全てテーマに関する執筆者個人の感想や視点に基づいて書かれたものであることをお断りしておきます。

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