「1年目、2年目、3年目」

浅野 武治

 私が国税不服審判所に採用されてから、早いもので3年が経過しました。そこで、今まで審判所で経験したことについて、当時感じたことを交えながら振り返ってみたいと思います。

《1年目》

 着任日、不安と期待が半々の中、着任の手続を終えて配属先に移動。そこでこれから一緒に働くことになるメンバーに挨拶をすることから私の任期付審判官生活が始まりました。
 着任早々、研修ということで、審判所での業務内容や審理上の留意点などを学ぶ機会がありました。研修を受けていた時は、そういうものかという程度の理解だったのですが、その後、実際に審査請求事件の調査・審理を進めていくうちに、あの時のことはこういう意味だったのかと分かることが多く、今から振り返ってみると非常に有意義な研修だったと思っています。
 一から議決書を書くことなど、初めて経験することが多く、手探りの状態でしたが、何とか1年目を終えました。

《2年目》

 2年目は異動もなく前年と同じ部門のままということもあり、1年目より落ち着いた気持ちでスタートしました。また、1年間現場を経験したことで、審査請求書が提出されてから裁決までの一連の流れを何となくイメージできるようになり、そのおかげで全体のスケジュールを考えた上で仕事を進めていけるようになりました。また、このころになると自分が担当審判官である事件だけでなく、参加審判官として関わる事件に関しても積極的に意見できるようになってきました。
 そして、自らの手で何回も議決書を書いては修正することを繰り返すうちに(法規・審査担当から指摘されることも多々ありましたが)、徐々に議決書を作成する際のポイントのようなものも分かり始め、仕事がだんだんと楽しくなってきた時期でした。

《3年目》

 ここまでの2年間はコロナ禍ということで、職場での食事会はほぼ無いという状況でしたが、新型コロナウイルスの感染状況が落ち着いてきた頃から懇親会なども開催されるようになり、周りの人たちとさらにコミュニケーションが取れるようになりました。
 また、2年間いろいろな内容の審査請求事件を経験したことで、判断の難しい事件に当たっても多角的に検討することができるようになりました。そして、簡潔・明瞭で説得力を持った分かりやすい裁決書に少しは近づけるようになったのではないかと思えるようになりました。

《まとめ》

 3年間審判所にいた私が言えることは、審判所は常に新鮮かつ刺激的な経験ができる場所だということです。
 裁判官、弁護士出身の方や国税の各事務系統出身の方々と日々議論することで、自分に足りなかった部分が明らかになり、それを補えるように行動することで自分自身成長できたのではないかと感じています。このことは、私のこれからの人生にとって非常に良い経験になったのではないかと思っています。
 以上、私が今まで審判所で経験してきたこと、また、感じてきたことを取り留めなく書いてきましたが、これらのことが任期付審判官に応募することを考えている方々にとって少しでも参考になれば幸いです。

○ 本コラムは、全てテーマに関する執筆者個人の感想や視点に基づいて書かれたものであることをお断りしておきます。

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