(平成27年7月28日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、○○業等を営む審査請求人(以下「請求人」という。)が、請求人の代表者が青年会議所の会議等に出席するための交通費、宿泊費及び日当を、旅費交通費として損金の額に算入し、法人税等の確定申告を行ったところ、原処分庁が、当該費用は請求人の事業の遂行上必要な費用には当たらず、代表者に対して給与を支給したものと認められるとして、法人税等の更正処分等を行うとともに、源泉徴収に係る所得税等の納税告知処分等を行ったのに対し、請求人が、原処分庁の認定には誤りがあるとして、これらの処分の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

イ 法人税及び復興特別法人税について

(イ) 請求人は、平成20年8月1日から平成21年7月31日まで、同年8月1日から平成22年7月31日まで、同年8月1日から平成23年7月31日まで、同年8月1日から平成24年7月31日まで及び同年8月1日から平成25年7月31日までの各事業年度(以下、順次「平成21年7月期」、「平成22年7月期」、「平成23年7月期」、「平成24年7月期」及び「平成25年7月期」といい、これらを併せて「本件各事業年度」という。)の法人税について、青色の確定申告書に別表1の「確定申告」欄のとおり記載して法定申告期限までにそれぞれ申告した。

(ロ) 請求人は、平成24年8月1日から平成25年7月31日までの課税事業年度(以下「平成25年7月課税事業年度」という。)の復興特別法人税について、青色の確定申告書に別表2の「確定申告」欄のとおり記載して法定申告期限までに申告した。

(ハ) 原処分庁は、上記(イ)に対し、平成26年6月26日付で、別表1の「更正処分等」欄のとおり各更正処分(以下「本件法人税各更正処分」という。)及び過少申告加算税の各賦課決定処分(以下「本件法人税各賦課決定処分」といい、本件法人税各更正処分と併せて「本件法人税各更正処分等」という。)をした。

(ニ) 原処分庁は、上記(ロ)に対し、平成26年6月26日付で、別表2の「更正処分」欄のとおり更正処分(以下「本件復興特別法人税更正処分」といい、本件法人税各更正処分等と併せて「本件法人税等各更正処分等」という。)をした。

(ホ) 請求人は、本件法人税等各更正処分等を不服として、国税通則法(以下「通則法」という。)第75条《国税に関する処分についての不服申立て》第4項第1号の規定により、平成26年8月25日に審査請求をした。

ロ 消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)について

(イ) 請求人は、平成22年8月1日から平成23年7月31日まで、同年8月1日から平成24年7月31日まで及び同年8月1日から平成25年7月31日までの各課税期間(以下、順次「平成23年7月課税期間」、「平成24年7月課税期間」及び「平成25年7月課税期間」といい、これらを併せて「本件各課税期間」という。)の消費税等について、確定申告書に別表3の「確定申告」欄のとおり記載して法定申告期限までにそれぞれ申告した。

(ロ) 原処分庁は、これに対し、平成26年6月26日付で、別表3の「更正処分等」欄のとおり各更正処分(以下「本件消費税等各更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件消費税等賦課決定処分」といい、本件消費税等各更正処分と併せて「本件消費税等各更正処分等」という。)をした。

(ハ) 請求人は、本件消費税等各更正処分等を不服として、平成26年8月26日に異議申立てをした。

(ニ) 異議審理庁は、本件消費税等各更正処分等に対する異議申立てについて、通則法第89条《合意によるみなす審査請求》第1項の規定により審査請求として取り扱うことが適当であると認め、平成26年9月17日付で請求人に同意を求めたところ、請求人は同月22日に同意したので、同日審査請求がされたものとみなされた。

ハ 源泉徴収に係る所得税及び復興特別所得税(以下、源泉徴収に係る所得税を「源泉所得税」、源泉所得税と源泉徴収に係る復興特別所得税を併せて「源泉所得税等」という。)について

(イ) 原処分庁は、平成26年6月26日付で、別表4の「納税告知処分等」欄のとおり、源泉所得税等の各納税告知処分及び不納付加算税の各賦課決定処分をした(以下、別表4の「年月分」欄に掲げる各月分を併せて「本件各月分」、源泉所得税等の各納税告知処分を「本件各納税告知処分」、源泉所得税等の不納付加算税の各賦課決定処分を「本件不納付加算税各賦課決定処分」といい、本件各納税告知処分及び本件不納付加算税各賦課決定処分を併せて「本件各納税告知処分等」という。)。

(ロ) 請求人は、本件各納税告知処分等を不服として、平成26年8月26日に異議申立てをした。

(ハ) 異議審理庁は、本件各納税告知処分等に対する異議申立てについて、通則法第89条第1項の規定により審査請求として取り扱うことが適当であると認め、平成26年9月17日付で請求人に同意を求めたところ、請求人は同月22日に同意したので、同日審査請求がされたものとみなされた。

ニ そこで、本件法人税等各更正処分等、本件消費税等各更正処分等及び本件各納税告知処分等に係る審査請求について併合審理する。

(3) 関係法令等の要旨

関係法令等の要旨は、別紙6のとおりである。
 なお、別紙6を含め、以下、東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法を「復興財源確保法」という。

(4) 基礎事実

以下の事実は、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。

イ 請求人は、平成11年8月○日に、○○業、○○業等を目的として設立された法人であり、設立以降、L(以下「本件代表者」という。)が代表取締役を務めている。
 なお、請求人は、平成25年7月○日に、○○事業等を目的に追加した。

ロ 国際青年会議所(以下「国際JC」という。)は、世界各国の国家青年会議所が加盟し、各国の国家青年会議所の連絡・統合・調整を行う団体であり、世界各国の国家青年会議所には、各地会員会議所が所属している(以下、国際JC、国家青年会議所及び各地会員会議所を総称して「JC」という。)。

ハ 社団法人日本青年会議所(平成22年7月1日に公益社団法人日本青年会議所に名称変更し、移行している。以下「日本JC」という。)は、国際JCに加盟する国家青年会議所であり、その定款には要旨以下のとおり記載されている。

(イ) 第○条(目的)
 日本JCは、日本各地に所在する青年会議所を総合調整してその意見を代表し、全国的規模の運動を展開して、日本国民の利益の増進を図るとともに、国際JCと協調して世界の繁栄と平和に寄与することを目的とし、本定款第○条に定める事業を実施する。

(ロ) 第○条(運営の原則)
 日本JCは、特定の個人又は法人、その他の団体の利益を目的として、その事業を行わない。

(ハ) 第○条(事業)
 日本JCは、その目的達成のため次の事業を行う。

A 次世代を担う子供達の心身を成長させ、郷土を愛する心や、道徳心を育む事業

B 国や地域を牽引する人材を育成する事業

C 環境問題を調査研究し、国民に対し啓蒙・実践を行う事業

D 国政・国防・国土問題等、多角的な視野から分析し、国民には問題を提議し、政府には問題解決方法を提案することにより、日本国の発展に寄与する事業

E 地域住民、地域行政に対し、問題点を調査研究、提議し、諸問題を考え、解決していくことにより、更なる地域発展に寄与する事業

F 経済問題の解決や国民生活の安全、安定化・活性化に努め、国民が安心して生活できるための調査研究提言を行う事業

G 世界情勢を踏まえつつ、国際的に通用する人材を育成し、国際的に展開する事業を通し、日本国の在り方と国際貢献を学び国際発展に寄与するための事業

ニ 社団法人Q青年会議所(平成○年○月○日に公益社団法人Q青年会議所に名称変更し、移行している。以下「QJC」という。)は、日本JCに属する会員会議所であり、その定款には要旨以下のとおり記載されている。

(イ) 第○条(目的)
 QJCは、会員の連携を密にすること及び会員の自己の啓発に努めるとともに、地域社会及び国家の発展を図り、世界の平和と繁栄に寄与することを目的とする。

(ロ) 第○条(運営の原則)
 QJCは、特別の個人、法人、政党、その他の団体の利益を目的としてその事業を行わない。

(ハ) 第○条(事業)
 QJCは、第○条の目的を達成するため、次の事業を行う。

A 会員の修練及び相互の理解に資する行事の開催

B 社会、経済、文化等に関する研究及びその改善に資する事業の実施

C 国際JC、日本JC、国内、国外のJC及びその他の諸団体と提携し、相互の理解と親善を増進する事業

D その他QJCの目的達成に必要な事業
ホ 国際JCは、恒久的プログラムとして「ビジネスの機会」、「個人の機会」、「地域社会の機会」及び「国際性の機会」の4つの機会を掲げ、「ビジネスの機会」では、フォーラムやプログラムを通じて、会員が行動する社会企業家として必要なビジネスチャンスとリーダシップ、そして個人的なビジネスの成長を支援すると定めている。

ヘ 本件代表者は、平成○年にQJCに入会し、平成○年にQJCの○○、平成○年にQJCの○○、平成○年にQJCの○○及び日本JCの○○、平成○年にQJCの○○、平成○年にQJCの○○及び日本JCの○○をそれぞれ務め、別表6ないし10の「会議名等」欄に記載された会議、大会等(以下「本件各会議等」という。)に出席していた。

ト 請求人は、本件各事業年度において、本件代表者が本件各会議等に出席するための交通費、宿泊費及び日当を、請求人の旅費規程に基づいて支給することとし、本件各事業年度の総勘定元帳に旅費交通費及び仮払消費税(平成21年7月期は仮払消費税等)として計上していた。
 以下、上記の交通費、宿泊費及び日当を「本件旅費交通費」という。

チ 原処分庁は、平成21年7月期及び平成22年7月期の法人税の各更正処分を行うに当たり、通則法第70条《国税の更正、決定等の期間制限》(平成23年法律第114号による改正前のものをいう。以下同じ。)第1項の規定により請求人の平成20年8月1日から平成21年7月31日まで及び同年8月1日から平成22年7月31日までの課税期間(以下、順次「平成21年7月課税期間」、「平成22年7月課税期間」という。)の消費税等の更正処分をすることができないため、平成21年7月課税期間及び平成22年7月課税期間の消費税等として納付すべき税額と申告によって確定した消費税等の額との各差額は、それぞれ上記各事業年度の益金の額に算入されるべきであるとした上で、当該各差額と、本件代表者の給与に算入すべき本件旅費交通費のうち仮払消費税に計上されていた金額等を相殺し、平成21年7月期及び平成22年7月期の所得金額を計算した。

(5) 争点

本件旅費交通費は、本件代表者に対する給与に該当するか否か。

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2 主張

原処分庁 請求人
 以下の(1)ないし(4)のとおり、本件旅費交通費は、請求人の事業の遂行上必要な費用ではなく、本件代表者個人が負担すべきものであるから、本件代表者に対する給与に該当する。  以下の(1)ないし(4)のとおり、本件旅費交通費は、請求人の事業の遂行上必要な費用であり、本件代表者個人が負担すべきものではないから、本件代表者に対する給与に該当しない。
(1) 本件代表者は個人の意思でQJCに入会しその役員を歴任していること、本件代表者自ら本件各会議等への出席が請求人の収益に直接結び付くかどうか提示することは難しい旨申述していること並びに日本JC及びQJCの各定款に掲げられた事業の内容からすると、本件代表者が本件各会議等に出席することは、請求人の事業遂行上必要であったとはいえない。 (1) JCの活動は、リーダーの育成に資するものであり、請求人は、経営者教育の一環として、本件代表者をJCに入会させ、本件各会議等に出席させている。そして、現に本件各会議等の中で、組織論をはじめとする経営学を学習し、会議の進め方、稟議書の取り方及び事業計画の策定の仕方を習得することで、経営者としての能力を向上させることができ、これらの活動を通じて得た技能や経験は請求人の事業にそのまま利用されている。
 したがって、本件各会議等を含むJCの活動に係る支出は、請求人の経営者に対する教育費用としての性質を有する。
(2) 日本JC及びQJCは、それぞれの定款において、特定の個人又は法人、その他の団体の利益を目的とした事業を行わない旨定めており、本件各会議等は営業活動を目的とするものではないから、請求人がJCの会員等から○○等の注文を受けることがあったとしても、それは副次的な効果にすぎない。 (2) JCの活動の中心は青年経済人である会員との交流にあるところ、請求人は、会員との交流や人脈の確立が請求人の事業に貢献することを期待して、本件代表者をJCに入会させた上、本件各会議等に出席させた。そして、本件各会議等を含むJCの活動の場において、会員との交流や人脈を確立し、また、営業活動を行うことで、現に、請求人は、JCの会員等を取引先として、○○、○○、○○などにより約1億円を売り上げた上、○○国の企業から○○を輸入するに至っている。
 したがって、本件各会議等を含むJCの活動に係る支出は、請求人の受注活動費用としての性質を有する。
(3) 日本JC及びQJCは、それぞれの定款において、特定の個人又は法人、その他の団体の利益を目的とした事業を行わない旨定めており、本件各会議等は、上記各定款に則した事業の一環として行われたものと認められる一方、○○業、○○業等の請求人の事業との関連性は明らかでない。 (3) 請求人の事業は国内の○○業、○○業等だけでなく、○○事業や○○事業等にまで拡大しているところ、本件代表者が○○に関する講演等に参加することで、国際的に生じている問題をビジネスチャンスと捉え、請求人の事業に結び付けている。
 したがって、本件各会議等を含むJCの活動に係る支出は、請求人の新規事業の開拓費用としての性質を有する。
(4) 請求人は、国際JCが恒久的プログラムの1つとして「ビジネスの機会」を掲げていると主張するものの、その内容は抽象的であり、詳細も不明である上、現在も日本JC及びQJCの定款に「ビジネスの機会」についての定めはない。
 また、本件各会議等が受注活動や新規事業の開拓を目的として開催されていたとは認められない。
(4) 国際JCが恒久的プログラムの1つとして「ビジネスの機会」を掲げたのは、JCの活動がビジネスに役立つことを正式に認めた上で、JCの活動を通じて会員がビジネスチャンスを獲得し、また、個人的なビジネスの成長を支援する意図に出たものである。このように、国際JCが、恒久的プログラムの1つとして「ビジネスの機会」を掲げていることからしても、本件各会議等を含むJCの活動に係る支出は、請求人の事業遂行上必要な費用である。

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3 判断

(1) 争点について

イ 法令解釈

法人税法第34条第1項及び第4項は、別紙6の1のとおり規定しているところ、法人がその役員の活動について負担した費用が、当該法人の事業遂行上必要なものではなく、当該役員が個人的に負担すべきものと認められる場合には、当該法人が当該役員に対し経済的な利益を供与したものであり、当該費用は当該役員に対する給与に当たると解するのが相当である。そして、当該費用が当該法人の事業遂行上必要なものではなく、当該役員が個人的に負担すべきものであるか否かの判断は、単に当該法人の主観的な意図・判断によるのではなく、当該役員の活動の内容や当該費用を支出した趣旨・目的等の諸般の事情を総合的に考慮し、社会通念に照らして客観的に行わなければならないと解される。

ロ 認定事実

請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所が調査した結果によれば、次の事実が認められる。

(イ) 国際JCにおいては、「世界中の青年に対し、様々な分野において、積極的に活動し得る多くの機会を提供することで、ひいては、青年が、それぞれ、地域、国家、世界において変革をもたらし、この地球市民社会の発展に寄与する」ことが目的とされている。

(ロ) 本件各会議等のプログラムは、会議、式典、講演、フォーラム、セミナー、会員の自己トレーニング等から構成され、その内容はいずれも、上記(イ)の国際JCの目的、上記1の(4)のハの(イ)及び(ハ)並びにニの(イ)及び(ハ)の日本JC及びQJCの各定款第○条及び第○条に掲げられた目的及び事業の内容に則したものであった。

(ハ) 本件代表者は、本件各会議等において、式典及び会議に参加し、また、講演、フォーラム及びセミナーを受講し、さらに、自己トレーニングを実践するなど、本件各会議等のプログラムに沿った活動をしていた。また、本件各会議等の一部については、主催者の立場でプログラムの内容を企画し、運営するなどしていた。

ハ 本件代表者の答述

本件代表者は、当審判所に対し、要旨次のとおり答述した。

(イ) 本件各会議等のプログラムとして、各会員が営む事業を紹介することや、当該事業に関連した営業活動をすることはなかった。

(ロ) 国際JCが恒久的プログラムの1つとして「ビジネスの機会」を掲げたことにより、各会員が、JCの会議等の中で当該各会員の事業内容を紹介し、又は、アピールして営業活動ができるというわけではない。

(ハ) ただし、JCの活動を通じて各会員間相互の人間関係が形成されるため、JCにおいては各会員の事業内容を伝える機会が与えられ、それをきっかけに、互いに取引先という関係にまで発展させることも大いに期待でき、実現もしている。その結果、各会員が取引先を拡大し、事業を発展させることができる。国際JCが恒久的プログラムの1つとして「ビジネスの機会」を組み込んだのは、このような形で、各会員の事業の成長が積極的に行われるべきことを意図してのものである。

ニ 判断

(イ) 上記ロの(イ)の国際JCの目的、上記1の(4)のハ及びニの日本JC及びQJCの各定款の定めからすれば、JCは、特定の個人又は法人の利益を目的とするものではなく、社会の発展や世界の平和と繁栄への寄与といった公益的な目的を達成するために各種の事業を行うこととしており、日本JC及びQJCの各定款に掲げられた各種の事業が、特定の個人又は法人の利益を目的として行われるものとは認められない。
 また、上記ロの(ロ)のとおり、本件各会議等においては、国際JCが掲げる目的や日本JC及びQJCの各定款に掲げられた目的及び事業の内容に則した活動が行われていたこと、上記ロの(ハ)のとおり、本件代表者は、本件各会議等において、そのプログラムに沿って活動し、また、本件各会議等の一部については、主催者の立場でプログラムの内容を企画し、運営するなどしていたことが認められる。
 さらに、本件代表者自身、上記ハの(ロ)のとおり、国際JCが恒久的プログラムの1つとして「ビジネスの機会」を掲げたことにより、JCの会議等の中で各会員の事業内容を紹介し、又は、アピールして営業活動をすることができるわけではなく、上記ハの(イ)のとおり、本件各会議等でもそのプログラムの中で、各会員が事業内容を紹介することや、事業に関連した営業活動をすることはなかった旨答述するなど、本件各会議等においてはその参加者が自身の事業活動をする機会がなかったことが認められる。
 そうすると、本件代表者の本件各会議等への出席は、社会の発展への寄与などのJCの活動目的を遂行するためのものであったと認められるから、本件旅費交通費は、社会通念に照らし客観的にみて、請求人の事業の遂行上必要なものであったとはいえず、本件代表者が個人的に負担すべきものである。

(ロ) もっとも、請求人は、上記2の「請求人」欄の(1)ないし(4)のとおり、本件旅費交通費は、請求人の教育費用、受注活動費用又は新規事業開拓費用としての性質を有し、また、国際JCが恒久的プログラムとして「ビジネスの機会」を掲げていることを根拠に、請求人の事業の遂行上必要な費用である旨主張し、本件代表者は、上記ハの(ハ)のとおり、JCの活動を通じて各会員間相互の人間関係が形成されるため、各会員の事業内容を伝える機会が与えられ、それをきっかけに、互いに取引先という関係にまで発展させることも期待でき、実現もしているなど、各会員が取引先を拡大し、事業を発展させることができる旨答述する。
 しかしながら、仮に、本件代表者が本件各会議等に出席したことが、取引先の確保や代表者の経営者としての能力の向上、新規事業の開拓に寄与することになったとしても、本件代表者の本件各会議等への出席が社会の発展への寄与などのJCの活動目的を遂行するためであったことは上記(イ)のとおりであるから、それはJCの活動に付随する副次的な効果にすぎず、本件代表者の本件各会議等への出席が請求人の事業の遂行上必要なものであったということはできない。
 また、国際JCが恒久的プログラムの一つとして「ビジネスの機会」を掲げ、会員が行動する社会企業家として必要なビジネスチャンスやビジネスの成長等を支援すると定めているとしても、それは、JCの会員の利益を目的として行うものではなく、社会の発展に寄与するビジネスの機会や支援を表明したものと理解することもでき、本件代表者自身、上記ハの(ロ)のとおり、国際JCが「ビジネスの機会」を恒久的プログラムとして掲げたことによってJCが主催する活動に特定の会員が営業活動等を行うプログラムが組み込まれることになるものではない旨答述していることに照らせば、国際JCが恒久的プログラムとして「ビジネスの機会」を掲げているとしても、そのことをもって本件代表者の本件各会議等への出席が、社会通念に照らし客観的にみて請求人の事業の遂行上必要なものであったということはできない。
 したがって、請求人の主張には理由がない。

(ハ) 以上のとおり、本件旅費交通費は、社会通念に照らし客観的にみて、請求人の事業遂行上必要な費用ではなく、本件代表者が個人的に負担すべきものであるから、本件代表者に対する給与に該当する。

(2) 原処分の適法性

イ 本件法人税各更正処分

(イ) 本件旅費交通費は、上記(1)のニの(ハ)のとおり、本件代表者に対する給与に該当するところ、当該給与は、法人税法第34条第1項各号に規定する給与に該当しないため、同項本文に基づき損金の額に算入することはできない。
 なお、当審判所の調査の結果によれば、原処分の対象となった平成23年7月期及び平成24年7月期の本件旅費交通費のうち別表5−1ないし5−3に記載したものについては、原処分庁認定額が請求人の総勘定元帳の旅費交通費勘定又は仮払消費税勘定の計上額と相違したこと及び重複計上をしたことによる誤りが認められるから、これらを訂正して本件各事業年度の本件旅費交通費の額を算定すると、別表6ないし10の「審判所認定額」欄のとおりとなり、平成21年7月期が185,720円、平成22年7月期が1,330,759円、平成23年7月期が630,740円、平成24年7月期が3,876,193円、平成25年7月期が1,238,510円となる。

(ロ) ところで、原処分庁は、上記1の(4)のチのとおり、平成21年7月期及び平成22年7月期の法人税の各更正処分を行うに当たり、通則法第70条第1項の規定により平成21年7月課税期間及び平成22年7月課税期間の消費税等の更正処分を行うことができないため、平成21年7月課税期間及び平成22年7月課税期間の消費税等として納付すべき税額と申告によって確定した消費税等の額との各差額を、それぞれ平成21年7月期及び平成22年7月期の益金の額に算入している。
 しかしながら、上記各差額(平成21年7月課税期間は○○○○円、平成22年7月課税期間は○○○○円)のうち、平成21年7月課税期間の差額は平成24年9月30日を経過したことにより、また、平成22年7月課税期間の差額は平成25年9月30日を経過したことにより納付しなくてもよいことが確定し、収益として確定するものであるから、それが確定した日(平成21年7月課税期間は平成24年10月1日、平成22年7月課税期間は平成25年10月1日)を含む事業年度である平成25年7月期及び平成25年8月1日から平成26年7月31日までの事業年度の益金の額に算入すべきである。

(ハ) 以上のことから、請求人の本件各事業年度における法人税の所得金額及び納付すべき税額を算定すると、別表11のとおり、平成23年7月期及び平成25年7月期は、いずれも原処分の額を上回ることになるから、これらの処分はいずれも適法であるが、平成21年7月期、平成22年7月期及び平成24年7月期は、原処分の額を下回るから、これらの処分は、別紙1ないし3の「取消額等計算書」のとおり、いずれもその一部を取り消すべきである。

ロ 本件法人税各賦課決定処分

上記イのとおり、平成23年7月期及び平成25年7月期の法人税の各更正処分はいずれも適法であり、これらの更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項の規定に基づき過少申告加算税を賦課決定したことは適法である。そして、平成22年7月期及び平成24年7月期の法人税の更正処分はその一部を取り消すべきところ、減額される部分以外の税額については、更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて同条第4項に規定する正当な理由があるとは認められない。そこで、上記を踏まえて、通則法第65条第1項及び第2項の規定に基づき過少申告加算税の額を算定すると、平成22年7月期は原処分の額と同額となるから適法であるが、平成24年7月期は原処分の額を下回るから、別紙3の「取消額等計算書」のとおり、その一部を取り消すべきである。

ハ 本件復興特別法人税更正処分

請求人の平成25年7月課税事業年度における復興特別法人税について納付すべき税額を算定すると、別表12のとおり、原処分の額を上回るから、本件復興特別法人税更正処分は適法である。

ニ 本件消費税等各更正処分

本件旅費交通費は、所得税法第28条第1項に規定する給与等に該当するから、消費税法第2条第1項第12号に規定する課税仕入れに該当せず、請求人の本件各課税期間の納付すべき消費税額の計算上、課税標準額に対する消費税額から控除する控除対象税額として本件旅費交通費に係る消費税相当額を控除することはできない。
 なお、当審判所の調査の結果によれば、本件各課税期間における本件旅費交通費のうち請求人が課税仕入れに係る支払対価の額としていた金額について、原処分において、上記イの(イ)のとおり誤りが認められるから、これらを訂正して算定すると、別表8ないし10の「うち、課税仕入れに係る支払対価の額としていた額」欄のとおりとなるから、本件各課税期間の課税仕入れに係る支払対価の額は、別表13の「審判所認定額」欄の3欄のとおり、平成23年7月課税期間は115,061,402円、平成24年7月課税期間は87,292,762円、平成25年7月課税期間は204,358,548円となる。
 そして、別表14のとおり、請求人の本件各課税期間における消費税等の納付すべき税額を算定すると、平成23年7月課税期間及び平成25年7月課税期間は、いずれも原処分の額と同額となり、また、平成24年7月課税期間は、原処分の額を上回ることになるから、これらの処分はいずれも適法である。

ホ 本件消費税等賦課決定処分

上記ニのとおり、本件消費税等各更正処分はいずれも適法であり、これらの更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないことから、同条第1項並びに地方税法附則第9条の4《譲渡割の賦課徴収の特例等》及び第9条の9《譲渡割に係る延滞税等の計算の特例》第1項の規定に基づき過少申告加算税を賦課決定したことは適法である。

ヘ 本件各納税告知処分

原処分庁は、本件旅費交通費に係る給与について、本件旅費交通費の請求人の総勘定元帳への計上日が、本件代表者が本件旅費交通費に係る給与の支給を受けた日であるとして本件各納税告知処分を行っている。
 しかしながら、所得税法第183条第1項、復興財源確保法第28条第1項及び第33条第1項、通則法第15条第2項第2号及び第3項第2号の規定によれば、給与所得に係る源泉所得税等の納税義務は、給与等の支払の時に成立し、成立と同時に特別の手続を要しないで確定するところ、当審判所の調査の結果によれば、当該給与の支払日、すなわち、本件代表者の本件旅費交通費に係る源泉所得税等の納税義務の成立及び確定の時期は、別表6ないし10の「支払日」欄のとおりと認められ、また、各月の支払金額は、別表15の「支払金額」欄のとおりと認められる。
 そして、当該支払金額に対する源泉所得税等の額を、所得税法及び復興財源確保法の規定並びに所得税基本通達183〜193共−8の定め(なお、この定めによる取扱いは、過年分の課税漏れ給与等に対する源泉所得税について、算出の煩雑さ等を考慮し、簡易な算出方法を認めたものであって、当審判所においても相当と認められる。)により再計算すると、各年分の追徴税額は別表16の13欄のとおりとなり、本件各月分の納付すべき源泉所得税等の額は別表17の「審判所認定額」欄のとおりとなる。
 そうすると、平成21年6月、平成21年7月、平成21年9月、平成22年5月、平成22年7月、平成22年9月、平成23年6月、平成23年9月及び平成25年1月の各月分については、いずれも原処分の額と同額ないし上回るから、これらの処分はいずれも適法であるが、平成21年10月、平成22年6月、平成23年5月、平成23年7月、平成23年10月、平成23年11月、平成24年1月から平成24年7月まで、平成24年12月及び平成25年7月の各月分については、いずれも原処分の額を下回るから、これらの処分は、別紙4及び別紙5の「取消額等計算書」のとおり、いずれもその一部を取り消すべきである。
 また、平成21年11月、平成22年10月、平成22年11月及び平成23年1月においては、いずれも本件旅費交通費の支払があったとは認められないことから、これらの各月分の原処分は、いずれもその全部を取り消すべきである。

ト 本件不納付加算税各賦課決定処分

上記へのとおり、平成24年5月分、平成24年7月分及び平成25年7月分の源泉所得税等の各納税告知処分はいずれもその一部を取り消すべきであって、平成24年7月分の源泉所得税の額は○○○○円となるところ、通則法第118条《国税の課税標準の端数計算等》第3項の規定により、不納付加算税の基礎となる税額が10,000円未満であるときはその全額を切り捨てることとなるから、平成24年7月分の不納付加算税の賦課決定処分はその全部を取り消すべきである。
 また、通則法第67条第1項の規定により平成24年5月分の源泉所得税及び平成25年7月分の源泉所得税等に係る不納付加算税の額を計算すると、それぞれ○○○○円及び○○○○円となるところ、同法第119条《国税の確定金額の端数計算等》第4項の規定により、不納付加算税の額が5,000円未満であるときにはその全額を切り捨てることとなるから、平成24年5月分の源泉所得税及び平成25年7月分の源泉所得税等に係る不納付加算税の各賦課決定処分はいずれもその全部を取り消すべきである。

(3) その他

原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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