(平成28年5月6日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、審査請求人F、同H及び同Jの3名が、相続により取得した土地の一部について、広大地に該当するとして相続税の期限内申告等をした後、審査請求人K及び同Lを加えた5名(以下、これら審査請求人5名を併せて「請求人ら」という。)が修正申告等をしたところ、原処分庁が、広大地に該当しないとして、請求人らに対して各更正処分等をしたのに対し、請求人らが、これらの処分の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 基礎事実

以下の事実は、請求人らと原処分庁との間に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。

  • イ 相続について
     M(以下「本件被相続人」という。)は、平成24年4月○日に死亡し、その相続(以下「本件相続」という。)が開始した。
     本件相続に係る共同相続人は、本件被相続人の配偶者であるN、同長女である審査請求人F(以下「請求人F」という。)、同二女であるH(以下「請求人H」という。)及び同三女であるJ(以下「請求人J」という。)の4名である(以下、請求人F、請求人H及び請求人Jの3名を併せて「本件審査請求相続人ら」という。)。
     当該共同相続人は、平成24年4月○日付で本件相続に係る遺産分割協議を成立させ、相続財産の一部であるb市d町○−○、○−○及び○−○に所在する宅地(以下、これらの宅地を「本件土地」という。)については、請求人Fがその全部を本件相続により取得した。
  • ロ 本件土地の状況について(別図1及び2参照)
    1. (イ) 本件土地は、市街化区域内に存し、P鉄道e線f駅の東方約1,850mに位置し、その東側が幅員約35mの県道g号線(以下「g号線」という。)に、その西側が幅員約2.6mの市道(以下「本件西側道路」という。)に、それぞれ接している不整形な宅地である。なお、本件土地の登記記録上の地積は合計1,327.80平方メートルである。
    2. (ロ) 本件土地のうち、1g号線の西側の道路端から西側へ30mの範囲は、建築基準法上の建ぺい率が60%、容積率が400%で、都市計画法に規定する用途地域が準工業地域であり、2上記1の範囲外は、建ぺい率が60%、容積率が150%で、用途地域が第一種中高層住居専用地域である。
    3. (ハ) 本件土地は、鉄筋コンクリート造5階建ての建物(以下「本件建物」という。)の敷地及び本件建物の附属駐車場として使用され、本件建物は、平成5年以降、本件相続の前後を通じて、運送業を営む会社に対して同社の事務所、車庫、倉庫及び社員寮として賃貸されていた。
  • ハ 本件土地が面する道路について
    1. (イ) 本件西側道路は、不特定多数の者の通行の用に供されている状況にある。
    2. (ロ) 本件土地が東側で面するg号線の路線価は190,000円、西側で面する本件西側道路の路線価は195,000円である。なお、本件土地の存する地域の財産評価基本通達(昭和39年4月25日付直資56ほか国税庁長官通達をいい、以下「評価通達」という。)14−2《地区》に定める地区は、普通住宅地区である。

(3) 審査請求に至る経緯

  • イ 本件審査請求相続人らは、平成25年2月7日、本件土地につき、評価通達24−4《広大地の評価》(以下「広大地通達」という。)の定めに基づき110,388,562円と評価して、別表1の「期限内申告」欄のとおり記載した相続税の申告書を共同で原処分庁に提出して、期限内申告をした。
  • ロ 本件審査請求相続人らは、平成25年12月17日、現金等の申告漏れがあったとして、別表1の「第1次修正申告」欄のとおり記載した修正申告書を共同で原処分庁に提出して、修正申告をした。
  • ハ 請求人らは、平成26年3月24日、審査請求人K(請求人Hの配偶者。以下「請求人K」という。)及び同L(請求人Jの配偶者。以下「請求人L」といい、請求人Kと併せて「本件受遺者ら」という。)が取得した生命保険契約に関する権利等の申告漏れがあったとして、別表1の「第2次修正申告」及び「期限後申告」欄のとおり記載した本件審査請求相続人らの修正申告書及び本件受遺者らの期限後申告書を共同で原処分庁に提出して、修正申告及び期限後申告をした。
  • ニ 原処分庁は、平成26年6月30日付で、本件受遺者らに対し、上記ハの期限後申告に係る各納付すべき税額を基礎として、別表1の「第1次賦課決定処分」欄のとおり、無申告加算税の各賦課決定処分をした。
  • ホ 請求人らは、平成26年7月8日、預貯金等の申告漏れがあったとして、別表1の「第3次修正申告」欄のとおり記載した修正申告書を共同で原処分庁に提出して、修正申告をした。
  • ヘ 原処分庁は、平成26年12月19日付で、請求人Kに対し、上記ホの修正申告に係る納付すべき税額を基礎として、別表1の「第2次賦課決定処分」欄のとおり、無申告加算税の賦課決定処分をした。
  • ト 原処分庁は、平成27年1月9日付で、本件土地につき、広大地通達の定めにより評価することはできないとしてその価額を202,153,486円と評価し、別表1の「更正処分等」欄のとおり、本件審査請求相続人らに対しては各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分を、本件受遺者らに対しては各更正処分をした。
  • チ 請求人らは、平成27年2月23日、上記トの各更正処分等を不服として、別表1の「異議申立て」欄のとおり、異議申立てをした。
  • リ 異議審理庁は、平成27年5月19日付で、本件土地の価額を202,170,908円と評価し、本件土地以外の土地、構築物、事業用資産、有価証券及び預貯金の各価額の一部に誤りがあったとして、別表1の「異議決定」欄のとおり、上記トの各更正処分等の一部をいずれも取り消す旨の異議決定をした(以下、当該異議決定により、その一部が取り消された後の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分をそれぞれ「本件各更正処分」及び「本件各賦課決定処分」という。)。
  • ヌ 請求人らは、平成27年6月15日、異議決定を経た後の本件各更正処分及び本件各賦課決定処分に不服があるとして、それぞれ審査請求をした。なお、請求人らは、請求人Fを総代として選任し、その旨を同月16日に当審判所に届け出た。

(4) 関係法令等の要旨

  • イ 相続税法第22条《評価の原則》は、同法第3章《財産の評価》で特別の定めのあるものを除くほか、相続等により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価による旨規定している。
  • ロ 評価通達14《路線価》は、評価通達13《路線価方式》の「路線価」は、宅地の価額がおおむね同一と認められる一連の宅地が面している路線(不特定多数の者の通行の用に供されている道路をいう。以下同じ。)ごとに設定し、路線価は、路線に接する宅地で、その路線のほぼ中央部にあることなどの4つの事項全てに該当するものにつき、売買実例価額、公示価格、不動産鑑定士等による鑑定評価額、精通者意見価格等を基として国税局長がその路線ごとに評定した1平方メートル当たりの価額とする旨定めている。
  • ハ 評価通達15《奥行価格補正》は、一方のみが路線に接する宅地の価額は、路線価にその宅地の奥行距離に応じて奥行価格補正率を乗じて求めた価額にその宅地の地積を乗じて計算した価額によって評価する旨定めている。
  • ニ 評価通達17《二方路線影響加算》は、正面と裏面に路線がある宅地の価額は、次の(イ)及び(ロ)に掲げる価額の合計額にその宅地の地積を乗じて計算した価額によって評価する旨定めている。
    1. (イ) 正面路線(原則として、評価通達15の定めにより計算した1平方メートル当たりの価額の高い方の路線をいう。以下同じ。)の路線価に基づき計算した価額
    2. (ロ) 裏面路線(正面路線以外の路線をいう。以下同じ。)の路線価を正面路線の路線価とみなし、その路線価に基づき計算した価額に評価通達付表3「二方路線影響加算率表」に定める加算率を乗じて計算した価額

      なお、評価通達付表3に定める普通住宅地区における二方路線影響加算率は0.02である。

  • ホ 評価通達20《不整形地の評価》は、不整形地(三角地を含む。以下同じ。)の価額は、次の※に示した方法などの4つの方法のいずれかにより評価通達15から18《三方又は四方路線影響加算》までの定めによって計算した価額に、その不整形の程度、位置及び地積の大小に応じ、評価通達付表4「地積区分表」に掲げる地区区分及び地積区分に応じた評価通達付表5「不整形地補正率表」に定める補正率(以下「不整形地補正率」という。)を乗じて計算した価額により評価する旨定めている。
    1. ※ 次図のように不整形地の地積を間口距離で除して算出した計算上の奥行距離を基として求めた整形地により計算する方法(評価通達20(2))
      不整形地
      • (注) ただし、計算上の奥行距離は、不整形地の全域を囲む、正面路線に面するく形又は正方形の土地(以下「想定整形地」という。)の奥行距離を限度とする。
     なお、本件土地は、評価通達付表4の「普通住宅地区・C(750平方メートル以上)区分」に属するものであるところ、当事者は、これを前提に、評価通達付表5の「かげ地割合」の数値を争っている(下記争点3)。評価通達付表5に定める「かげ地割合」の算定方法は次の算式のとおりであり、上記区分に属するもののうち、「かげ地割合」が20%以上25%未満である場合の不整形地補正率は0.98であり、25%以上30%未満である場合の不整形地補正率は0.97である。
    (算式)
    かげ地割合 想定整形地の地積 不整形地の地積
    想定整形地の地積
  • ヘ 評価通達20−5《容積率の異なる2以上の地域にわたる宅地の評価》は、容積率の異なる2以上の地域にわたる宅地の価額は、評価通達15から20−4《がけ地等を有する宅地の評価》までの定めにより評価した価額から、その価額に次の算式により計算した割合を乗じて計算した金額を控除した価額によって評価する旨、また、この場合において適用する「容積率が価額に及ぼす影響度」は、評価通達14−2に定める地区に応じて次表のとおりとする旨それぞれ定めており、評価通達20−5の表に定める普通住宅地区における「容積率が価額に及ぼす影響度」は0.1である。
    (算式)
    容積率の異なる2以上の地域にわたる宅地の評価
    (注)  1 上記算式により計算した割合は、小数点以下第3位未満を四捨五入して求める。
    2 正面路線に接する部分の容積率が他の部分の容積率よりも低い宅地のように、この算式により計算した割合が負数となるときは適用しない。
    3 2以上の路線に接する宅地について正面路線の路線価に奥行価格補正率を乗じて計算した価額からその価額に上記算式により計算した割合を乗じて計算した金額を控除した価額が、正面路線以外の路線の路線価に奥行価格補正率を乗じて計算した価額を下回る場合におけるその宅地の価額は、それらのうち最も高い価額となる路線を正面路線とみなして評価通達15から20−4までの定めにより計算した価額によって評価する。なお、評価通達15から20−4までの定めの適用については、正面路線とみなした路線の評価通達14−2に定める地区区分によることに留意する。
  • ト 評価通達24−4(広大地通達)は、その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地(5,000平方メートル以下の地積のもの)で都市計画法第4条《定義》第12項に規定する開発行為(以下「開発行為」という。)を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要と認められるもの(評価通達22−2《大規模工場用地》に定める大規模工場用地に該当するもの及び中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているもの(その宅地について、経済的に最も合理的であると認められる開発行為が中高層の集合住宅等を建築することを目的とするものであると認められるもの(以下「マンション適地」という。)をいう。)を除く。以下「広大地」という。)で路線価地域に所在するものの価額は、原則として、その広大地の面する路線の路線価に、評価通達15から20−5までの定めに代わるものとして次の算式により求めた広大地補正率を乗じて計算した価額にその広大地の地積を乗じて計算した金額によって評価する旨定めている。
    (算式)
    広大地補正率 0.6 − 0.05 × 広大地の地積
    1,000平方メートル

トップに戻る

2 争点

  • (1) 本件土地は、広大地通達に定める広大地に該当するか否か(争点1)。
  • (2) (争点1につき広大地に該当しないとされた場合)評価通達17及び20−5における「路線」の意義について(争点2)。
  • (3) (争点1につき広大地に該当しないとされた場合)本件土地の評価に当たり評価通達20の適用において用いる不整形地補正率について(争点3)。

トップに戻る

3 主張

(1) 本件土地は、広大地通達に定める広大地に該当するか否か(争点1)。

原処分庁 請求人ら
本件土地は、次のイないしハのとおり、広大地通達に定める広大地に該当しない。 本件土地は、次のイないしハのとおり、広大地通達に定める広大地に該当する。
イ 本件土地は、次のとおり、「その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大」ではない。 イ 本件土地は、次のとおり、「その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大」である。
(イ) 「その地域」について (イ) 「その地域」について
  1. A 広大地通達にいう「その地域」は、土地の利用状況の連続性や地域の一体性を分断する道路などの状況、都市計画法による土地利用の規制等の公法上の規制など、土地利用上の利便性や利用形態に影響を及ぼすものなどを総合勘案し、利用状況、環境等がおおむね同一と認められる、ある特定の用途に供されることを中心としたひとまとまりの地域を指すものと解されている。
  2. B 本件土地は、1準工業地域及び第一種中高層住居専用地域にまたがっているものの、その地積1,327.80平方メートルの大半の約1,230平方メートルが準工業地域に存していること、2本件土地が面するg号線は、Q交差点でi街道、R交差点でj街道とそれぞれ交差していること、3Q交差点からR交差点までのg号線沿いの土地は事務所、営業所等としての利用が大半である一方、4g号線沿いの準工業地域の東側及び西側に隣接する第一種中高層住居専用地域では、いずれもその多くが戸建住宅の敷地として利用されていることが認められる。
     これらのことからすれば、本件土地の「その地域」は、地域の一体性を分断する道路などの状況、都市計画法による土地利用の規制等公法上の規制や利用状況等がおおむね同一であると認められる、本件土地が存する準工業地域のうちQ交差点からR交差点までのg号線沿いの土地からなる地域である(別図2の(注1)参照)。
  1. A 広大地通達にいう「その地域」は、評価の対象となる土地(以下「評価対象地」という。)と利用状況、環境等がおおむね同一と認められる、住宅、商業、工業など特定の用途に供されることを中心としたひとまとまりの地域であるか否かによって判断すべきである。
  2. B 幅員約35mの舗装県道であるg号線のうち、本件土地が東側で直接面する部分は、k陸橋下を通る幅員約6.5mの一方通行道路であり、当該道路は交通量が少ないことを特徴とする側道であって、幅員約35mの全てを自動車通行用の道路として6車線を有しているようなg号線沿いの部分とその他の部分(当該陸橋のない部分)とは明らかに利便性が異なる。
     したがって、本件土地の「その地域」は、g号線沿いの地域で、k陸橋の側道に接する範囲のうち、準工業地域、m付近土地区画整理事業の土地区画整理事業を施行すべき区域及びb市g号線沿道地区計画に指定されている地域一帯である(別図2の(注2)参照)。
  3. C なお、住宅地のような場合には、土地の利用状況の連続性や地域の一体性を分断する道路がある場合、道路をまたがって「その地域」に含めないのが通常であるが、幹線道路の反対側の同道路沿いの土地について、都市計画法上の用途地域、容積率、建ぺい率、現状の土地利用状況がほぼ同一であれば、評価対象地と需要及び価格水準が同一と考えられるので、当該反対側の土地も「その地域」に含めるべきである。
  4. D 請求人らの主張する「その地域」は、固定資産税の算定において同一の標準ポイント(標準宅地番号○○○○)を用いる範囲と符合しており、評価通達上もこれと同様に考えるべきである。
(ロ) 標準的な使用について (ロ) 標準的な使用について
広大地通達にいう「標準的な宅地の地積」については、「その地域」における「標準的な宅地」の標準的な使用を判断した上、当該標準的な使用に供されている宅地の標準的な地積をもって判断すべきである。
 そこで、上記(イ)の「その地域」における標準的な使用の状況をみると、「その地域」内には、戸建住宅の敷地として利用されている土地は、全44区画のうち3区画にすぎない一方、事務所、営業所の敷地として利用されている土地は、区画数(19区画)、区画数の割合(43.1%)及び合計地積(9,317.09平方メートル)のいずれの点からみても最も多く、次に多い用途が駐車場(11区画)となっている。
 すなわち、事務所、営業所、駐車場としての利用が全44区画のうち30区画とその大半を占めていることからすれば、上記(イ)の「その地域」における土地の標準的な使用は、事務所、営業所、駐車場の敷地であると認められる。また、当該地域内の戸建住宅の敷地として利用されている土地は、区画数のみでも全体の1割に満たないことからすれば、当該地域における標準的な使用が戸建住宅の敷地であるとは認められない。
A 広大地通達にいう「標準的な宅地」を定めるに当たり「その地域」における標準的な使用が何かを検討するとしても、かかる標準的な使用については、「その地域」の標準的な地積の規模の土地が仮に売却された場合に、買主がどのような土地利用をするかを基準として判断すべきである。
 したがって、「その地域」における実際の売買事例を調査し、当該売買された土地がその後どのように利用されているかを調査して判断すべきであり、評価対象地の「その地域」において相続開始前後の土地の売買事例が存しないときは、評価対象地の「その地域」と土地の利用状況、環境等の公法上の規制がおおむね同一と認められる、類似性、代替性の高い周辺の地域の売買事例も調査して判断すべきである。
B 上記Aの判断基準を本件についてみると、戸建住宅地となっている事例が実在し、地積が大きな土地は一旦戸建分譲業者が購入し、その後一般住宅として分譲されているのであるから(事業所等の用途で利用されていた土地が売買後戸建分譲地として利用された事例が請求人らの主張する「その地域」内に2か所ある。)、「その地域」は住宅地域への移行地域であり、本件相続の開始時の「その地域」の標準的な使用は、戸建住宅地であると考えられる。
 なお、「その地域」では、営業所、事業所が多く存するが、そのほとんどは建物が古く、本件相続の開始時点では繁華性も乏しく、営業所、事業所としての需要はほとんどないことから、現状の利用方法は「その地域」における標準的な使用に一致しない。
C 「その地域」の路線価図の地区区分は普通住宅地区であり、また、固定資産税の算定における上記(イ)のDの標準ポイントの用途地区は低層併用住宅地区である。
D 上記のように「その地域」の土地の需要が戸建住宅地へ移行している場合には、原処分庁が主張する地域内の土地の利用状況を単純に調査するのみでは標準的な使用方法を判断できない。
(ハ) 「標準的な宅地の地積」について
 「その地域」において、1事務所等の敷地として利用されている全19区画の平均地積が490.37平方メートルであり、その地積分布がおおむね150平方メートルないし1,200平方メートルであること、2駐車場の敷地として利用されている全11区画の平均地積が383.15平方メートルであり、その地積分布がおおむね50平方メートルないし1,100平方メートルであることからすると、当該地域の「標準的な宅地の地積」は、400平方メートルないし600平方メートル程度である。
(ハ) 「標準的な宅地の地積」について
 上記(ロ)のとおり、「その地域」の標準的な使用は戸建住宅地であり、b市住宅等整備事業における基準等に関する条例によれば、戸建開発を行う場合の敷地面積の最低限度は70平方メートルであり、近隣地域及びその周辺地域で戸建分譲された事例をみても、この程度の地積に分割されているものが多く見受けられるから、「標準的な宅地の地積」は70平方メートルである。
(ニ) 「著しく地積が広大」について
 本件土地を上記(ハ)の「標準的な宅地の地積」に分割するとしても、公共公益的施設用地の負担が生じることなく2ないし3区画に分割することができるから、本件土地は、「標準的な宅地の地積」に比して著しく地積が広大であるとはいえない。
(ニ) 「著しく地積が広大」について
 本件土地の地積は1,327.80平方メートルであることから、上記(ハ)の「標準的な宅地の地積」である70平方メートルに比して著しく地積が広大である。
ロ 公共公益的施設用地の負担について
 上記イの(ハ)の「標準的な宅地の地積」を基準とし、本件土地を分割又は開発行為をするとしても、2ないし3区画にしかならず、公共公益的施設用地の負担が必要とまではいえない。
ロ 公共公益的施設用地の負担について
 本件土地を戸建住宅地として上記イの(ハ)の「標準的な宅地の地積」に区画割りして開発する場合、開発道路を設けた区画割りでは15区画を設けることができる一方、開発道路を設けない区画割りでは13区画しか設けられない。また、本件西側道路は建築基準法上の道路ではないためg号線に接する区画割りを想定しなければならず、一方に面する道路からの奥行きがある土地を戸建分譲する場合、路地状部分を連続して敷設する事例は周辺の不動産市場において見受けられない。
 したがって、本件土地は、戸建分譲業者が利潤を最大化するような最も経済的に合理的な開発行為を行うに当たっては、開発道路の敷設を要することから、公共公益的施設用地の負担を要する土地である。
ハ マンション適地について
 上記イ及びロのとおり、本件土地は、1「その地域」における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地ではなく、2公共公益的施設用地の負担も要しないことから、マンション適地であるか否かにかかわらず、広大地通達に定める広大地には該当しない。
ハ マンション適地について
 本件土地の近隣地域及びその周辺地域は、新たに土地を取得してまでマンションを建設して賃貸に供することは投資採算性が合わない。また、当該地域は最寄駅から徒歩10分圏外であり、昨今の景気低迷の影響から分譲マンション業者の用地取得意欲は大きく減退しており、分譲マンション需要が極めて弱いため、本件土地は、広大地通達に定めるマンション適地とはいえない。

(2) 評価通達17及び20−5における「路線」の意義について(争点2)。

原処分庁 請求人ら
評価通達17及び20−5にいう「路線」とは、次のイ及びロのとおり、建築基準法上の道路に限られるものではない。
 したがって、本件土地の評価に当たり、本件西側道路は路線であり、1評価通達17に定める二方路線影響加算をし、また、2評価通達20−5の(注)3に定める「2以上の路線に接する宅地」に該当する。
評価通達17及び20−5にいう「路線」とは、次のイないしハのとおり、建築基準法上の道路に限られる。
 したがって、本件土地の評価に当たり、本件西側道路は路線ではなく、1評価通達17に定める二方路線影響加算を適用せず、また、2評価通達20−5の(注)3に定める「2以上の路線に接する宅地」には該当しない。
イ 路線価は、宅地の種類がおおむね同一と認められる一連の宅地が面している路線、すなわち、不特定多数の者の通行の用に供されている道路ごとに設定する旨定められているのみで、特段、評価通達14に定められている「道路」が建築基準法上の道路に限られるとの定めはない。 イ 本件西側道路のように建築基準法上の道路ではないものについては、当該道路に接するのみでは建物を建築することはできないのであるから、そのような道路に路線価が付されていたとしても、路線価の付された路線として評価通達を適用すべきではない。
ロ 請求人らが示す平成17年7月1日の裁決(沖裁(諸)平17第1号)については、建築基準法上の道路以外の道路であるという点では本件と共通しているものの、その他の事実関係が異なることから、当該裁決をもって、直ちに本件土地に二方路線影響加算を行う必要がないとは認められない。 ロ 平成17年7月1日の裁決において、建築基準法上の道路でないものを路線価の付された道路として取り扱うべきでない旨の判断が示されている。

ハ S国税局は、「○○○○」において、特定路線価の設定について、建築基準法上の道路以外の道路を対象としない旨を示しており、路線価についても特定路線価と同じであるから、本件西側道路の路線価を利用することは不適切である。

(3) 本件土地の評価に当たり評価通達20の適用において用いる不整形地補正率について(争点3)。

原処分庁 請求人ら
本件土地について、評価通達20にいう「想定整形地」の間口距離は50.35m、同奥行距離は35.0mとなる。
 したがって、これを前提にかげ地割合を算定すると20%以上25%未満となるから、本件土地の評価につき適用すべき評価通達20に定める不整形地補正率は、0.98となる(上記1の(4)のホ参照)。
本件土地について、評価通達20にいう「想定整形地」の間口距離は50.50m、同奥行距離は35.28mとなる。
 したがって、これを前提にかげ地割合を算定すると25%以上30%未満となるから、本件土地の評価につき適用すべき評価通達20に定める不整形地補正率は、0.97となる(上記1の(4)のホ参照)。

トップに戻る

4 争点に係る当審判所の判断

(1) 各争点に共通する法令解釈(相続税法第22条について)

相続税法第22条は、相続財産の価額は、特別に定める場合を除き、当該財産の取得の時における時価によるべき旨を規定しており、ここにいう時価とは相続開始時における当該財産の客観的な交換価値をいうものと解するのが相当である。
 しかし、客観的交換価値は、必ずしも一義的に確定されるものではないから、これを個別に評価する方法をとった場合には、その評価方式等により異なる評価額が生じたり、課税庁の事務負担が重くなり、大量に発生する課税事務の迅速な処理が困難となったりするおそれがある。そこで、課税実務上は、特別の定めのあるものを除き、相続財産の評価の一般的基準が評価通達によって定められ、原則としてこれに定められた画一的な評価方式によって相続財産を評価することとされている。このように、あらかじめ定められた評価方式によってこれを画一的に評価することは、税負担の公平、効率的な租税行政の実現という観点から見て合理的であり、相続財産の評価に当たっては、評価通達によって評価することが著しく不適当と認められる特別の事情がない限り、評価通達に定められた評価方法によって画一的に評価することが相当である。
 そして、本件において、上記1の(4)のロないしトの評価通達自体の相当性については、当事者間において争いがなく、当審判所においても相当と認めるのであって、評価通達によって評価することが著しく不適当と認められる特別の事情はない。以下、これを前提に、各争点について検討する。

(2) 争点1(本件土地は、広大地通達に定める広大地に該当するか否か)について

  • イ 広大地通達について
     広大地通達は、上記1の(4)のトのとおり、評価対象地について、1その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地であること、2開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要と認められるものであること、3マンション適地でないことなどのいずれの要件も満たす土地を広大地とし、この広大地について、地積に応じた減額の補正を行う旨定めているところ、これは、上記1ないし3のいずれも満たす広大地については、開発行為という土地の区画形質の変更をした際に道路、公園等の公共公益的施設用地の負担が必要となって、いわゆる潰れ地が生じ、評価通達15ないし20−5の定めによる減額の補正をしただけでは十分といえない場合があることから、このような宅地の価額の評価に当たっては、潰れ地が生ずることを評価対象地の価額に影響を及ぼすべき事情として、これにより価値が減少すると認められる範囲で減額の補正を行うこととしたものである。
     そして、広大地通達における「その地域」とは、原則として、評価対象地の周辺の1河川や山などの自然的状況、2行政区域、3都市計画法による土地利用の規制等の公法上の規制など、土地利用上の利便性や利用形態に影響を及ぼすもの、4土地の利用状況の連続性や地域の一体性を分断する道路、鉄道及び公園などの状況等を総合勘案し、利用状況、環境等がおおむね同一と認められる、住宅、商業、工業など特定の用途に供されることを中心としたひとまとまりの地域を指すものと解するのが相当であり、広大地通達における「標準的な宅地の地積」は、評価対象地の付近で状況の類似する地価公示の標準地又は都道府県地価調査の基準地の地積、評価対象地の付近の標準的使用(その地域で一般的な宅地の使用方法)に基づく宅地の平均的な地積などを総合的に勘案して判断するのが相当である。
     また、広大地通達における「開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要と認められるもの」とは、広大地通達の趣旨に照らせば、評価対象地に係る法規制の下において、経済的に最も合理的であると認められる利用(以下「最有効利用」という。)のために開発行為を行うことが必要であり、その開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要となるものをいうと解するのが相当である。
  • ロ 認定事実
     請求人ら提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
    1. (イ) 本件土地の位置、形状、間口距離及び奥行距離等について(別図1参照)
      • A 本件建物の建築に当たり作成された建築計画概要書(平成2年1月22日にb市○○部で受け付けたもの)の写しにある配置図の記載に照らすと、本件土地のg号線に接する間口距離は50.50m、本件西側道路に接する間口距離は18.09m、奥行距離は35.28m、地積は1,329.05平方メートルで、不整形地である。
      • B 本件土地は、上記1の(2)のロの(ロ)のとおり、準工業地域がg号線の西側の道路端から西側へ30mの範囲と指定されていることから、本件土地のうち準工業地域に存する部分はg号線側の約1,230平方メートルであり、本件土地は、その過半の属する地域が準工業地域であることから、建築基準法の適用において、準工業地域に関する規定の適用を受ける。
    2. (ロ) 本件土地の周辺における道路の状況について(別図2参照)
      • A 本件土地が面しているg号線は、幅員約35mであり、本件土地の東側の南北にわたって存し、その中央部分にはk陸橋と称する高架道路(片側2車線)があり、当該高架道路の両側には幅員約6.5mの片側1車線の平面の側道が設置されている。当該側道の交通量は多く、g号線と交差する道路との間で流出入する車両も多く、T社の路線バス及びU社の高速バスの通行路線として利用されている。
      • B g号線は、b市d町○−○及び○−○の北端付近で、東西に走るi街道と交差している。当該交差地点(Q交差点)の付近におけるi街道は、大型車、小型車等種別を問わず、交通量が多く、T社の路線バスの通行路線となっている。
      • C また、g号線は、d町○−○及び○−○の南端付近で、東西に走るj街道と交差している。当該交差地点(R交差点)の付近におけるj街道は、中型貨物車両、小型車等が入り混じって、相応に交通量があり、U社の路線バスの通行路線となっている。
      • D i街道からj街道までの間に、g号線と交差する道路もあるが、i街道及びj街道と比較すると交通量は少なく、バスの通行路線となっている等の事情は見受けられない。
      • E 本件土地の面するg号線は、上記Aのとおり、その中央部分がk陸橋として高架化されているところ、当該高架下は駐車場及び公園として利用されており、これらは金属製フェンスにより囲まれている。
    3. (ハ) 本件土地の周辺の土地の状況について
      • A k陸橋が存するg号線沿線の土地については、その両側の道路端から両側へ30mの範囲は、建ぺい率が60%、容積率が400%で、用途地域が準工業地域であり、その範囲を超えると、準工業地域以外の用途地域となる。
      • B g号線沿線の本件土地の存する側(g号線の西側、d町○−○)で、k陸橋の側道に接する地域のうち、北端をi街道、南端をj街道によって区切られた地域の土地は、当該地域の一番北側がQの敷地(地積9,316平方メートル)として利用されており、当該地域のうちQの敷地を除いた地域(以下「本件地域」という。)は、ガソリンスタンドが存するほか、駐車場、共同住宅、事務所、倉庫、資材置場の敷地として利用されている。また、共同住宅は、運送会社社員寮を除いて3棟存するが、戸建住宅は存しない。一方、本件地域以外の土地は、準工業地域以外の用途地域であり、その多くは戸建住宅の敷地として利用されている。
      • C 本件地域の土地は、全部で19区画あり、そのうち駐車場として利用されているのは7区画、共同住宅は4区画、事務所は4区画、倉庫は2区画などであり、当該全区画の地積の中庸値は約300平方メートル、同平均値は約440平方メートルである。
         また、本件地域における土地の地積は、最小49.90平方メートル、最大1,329.05平方メートル(本件土地の地積)であり、約150平方メートルから約700平方メートルの範囲内に主に分布している。この範囲内の地積の土地の状況をみると、駐車場は5区画でその平均地積は約360平方メートル、共同住宅は3区画で約400平方メートル、事務所は4区画で約280平方メートルである。
    4. (ニ) 本件地域における地価公示の標準地等の有無について
       本件地域には、地価公示の標準地又は都道府県地価調査の基準地は、存しない。
  • ハ 当てはめ
    1. (イ) 広大地通達に定める「その地域」について
      • A 本件土地は、幅員約35mのg号線に接しており、その道路の規模からすれば、g号線沿線の各土地とは、土地がg号線に接しているという点は、環境等の観点からして高い共通性を有しているということができる(上記ロの(ロ)のA)。
      • B 次に、g号線沿線の地域についてみてみると、南北は、交通量の多いi街道及びj街道があるから、地域の一体性が分断されており(上記ロの(ロ)のB及びC)、また、本件土地の面するg号線には、高架のk陸橋があり、当該高架下には、金属製フェンスに囲まれた駐車場及び公園があるから、これらによって、g号線沿線の西側の地域は、その東側の地域と一体性が分断されている(上記ロの(ロ)のE)。
      • C また、本件土地は、用途地域が準工業地域であるところ(上記ロの(イ)のB)、g号線の西側についてみると、用途地域が準工業地域である地域は、g号線沿線の地域であり、その範囲を超えると準工業地域以外の地域であって(上記ロの(ハ)のA)、また、土地の利用状況についても、g号線沿線の土地は、Qの敷地を除くと、駐車場、共同住宅、事務所及び倉庫等の敷地として利用されているが、同沿線以外の土地の多くは戸建住宅の敷地として利用されており、土地の利用状況がg号線沿線とそれ以外とでは異なっている(上記ロの(ハ)のB)。
      • D 上記AないしCで示した本件土地の周辺の地域の一体性を分断する道路等、土地利用の公法上の規制、土地の利用状況等を総合勘案すると、本件土地に係る「その地域」は、g号線沿線の本件土地の存する側(g号線の西側、d町○−○)で、k陸橋の側道に接する地域のうち、北端をi街道、南端をj街道によって区切られた地域(Qの敷地を除く。)、すなわち本件地域と認めるのが相当である。
    2. (ロ) 本件土地が「その地域」における「標準的な宅地の地積」に比して著しく地積が広大であるかについて
       本件土地に係る「その地域」である本件地域には、地価公示の標準地及び都道府県地価調査の基準地がいずれも存しない(上記ロの(ニ))。また、本件地域における土地の利用状況をみると、駐車場、共同住宅及び事務所の敷地など様々であり(上記ロの(ハ)のB)、本件地域における一般的な宅地の使用方法である標準的使用を特定することは困難である。
       本件地域における全区画の土地の地積の中庸値は約300平方メートル、同平均値は約440平方メートルである(上記ロの(ハ)のC)ところ、地積が主に分布している土地の平均地積を用途別にみると、駐車場、共同住宅及び事務所の用途では、それぞれ約360平方メートル、約400平方メートル、約280平方メートルであり(上記ロの(ハ)のC)、これらの地積はいずれも、上記の中庸値(約300平方メートル)と平均値(約440平方メートル)のおおむね範囲内であることからすれば、本件土地に係る「その地域」における「標準的な宅地の地積」は300平方メートルないし440平方メートル程度であると認められる。
       そうすると、本件土地(地積1,329.05平方メートル)は、「その地域」における「標準的な宅地の地積」に比して著しく地積が広大な宅地に該当すると認められる。
    3. (ハ) 公共公益的施設用地の負担について
      1本件地域は、用途地域が準工業地域で容積率が400%であり(上記ロの(ハ)のA)、共同住宅、事務所等の建築についての制限が緩やかであると認められること、2本件地域における「標準的な宅地の地積」は300平方メートルないし440平方メートル程度であり(上記(ロ))、本件地域における土地は、同程度の広さで駐車場、共同住宅及び事務所として利用されている(上記ロの(ハ)のC)ことからすれば、本件土地について最有効利用のために開発行為を行うとした場合、300平方メートルないし440平方メートル程度で区画割りするのが相当である。
       そうすると、本件土地をこれらの地積で区画割りをした場合には、3又は4区画程度となり、これらが全てg号線又は本件西側道路に接する区画割りをすることが可能であるから、本件土地について開発行為を行うに際して公共公益的施設用地の負担が必要となるとは認められない。
  • ニ 小括
     上記ハの(ロ)のとおり、本件土地は「その地域」における「標準的な宅地の地積」に比して著しく地積が広大な宅地には該当するものの、同(ハ)のとおり、本件土地について開発行為を行うに際して公共公益的施設用地の負担が必要ではないから、本件土地は、広大地通達に定める広大地に該当しない。

(3) 争点2(評価通達17及び20−5における「路線」の意義)について

  • イ 評価通達15ないし20−5は、路線価方式により宅地を評価する一連の定めであるところ、評価通達14は、不特定多数の者の通行の用に供されている道路(路線)ごとに路線価を設定する旨定めるのみで、ここにいう「道路」を建築基準法上の道路に限定する定めは置かれていない。
  • ロ この点、請求人らは評価通達にいう「路線」は建築基準法上の道路に限られる旨主張し、その根拠として平成17年7月1日の裁決(沖裁(諸)平17第1号)を掲げるが、当該裁決は、河川区域内に存する河川管理上の通路に付された路線価を正面路線価として評価すべきか否かについて争われたものであり、建築基準法上の道路に限られる旨を判断したものではないから、当該裁決をもって請求人らの主張を採用することはできない。
     また、請求人らは「○○○○」を根拠として、特定路線価の設定については建築基準法上の道路以外の道路を対象としていない旨主張するが、特定路線価は、「路線価」が付されていない道路のみに接している宅地を評価する必要がある場合に、当該道路を路線とみなして路線価を設定するのであって、特定路線価を設定するよう申し出る対象と評価通達14に定める「路線」の定義内容が異なることは当然であるから、特定路線価に関する事項をもって評価通達14に定める「路線」の要件を限定する根拠とはならず、請求人らの主張を採用することはできない。
  • ハ 以上のとおり、評価通達17及び20−5における「路線」は、建築基準法上の道路に限定されないところ、本件西側道路は不特定多数の者の通行の用に供されている道路であるから(上記1の(2)のハの(イ))、評価通達14に定める路線に該当し、本件土地の評価に当たり、1評価通達17に定める二方路線影響加算をすべきであり、また、2本件土地は、評価通達20−5の(注)3に定める「2以上の路線に接する宅地」に該当する。

(4) 争点3(本件土地の評価に当たり評価通達20の適用において用いる不整形地補正率)について

  • イ 上記(2)のロの(イ)のAの建築計画概要書の写しにある配置図の記載を踏まえると、本件土地の形状及びこれに基づく想定整形地は、別図1のとおりであり、想定整形地の間口距離は50.50m、奥行距離は35.28mである。
     なお、原処分庁は、想定整形地の間口距離は50.35m、奥行距離は35.0mである旨主張するが、その数値は確かな根拠に基づくものではないことから、当該主張を採用することはできない。
  • ロ これを前提に、評価通達20に定める「かげ地割合」を算定すると、別表2の(注3)のとおり25.40%となるから、本件土地の評価において用いる不整形地補正率は0.97である(上記1の(4)のホ参照)。

トップに戻る

5 本件土地の価額について

1上記4の(2)のニのとおり、本件土地は広大地通達に定める広大地に該当せず、2同(3)のハのとおり、本件西側道路は評価通達14に定める路線であり、3同(4)のロのとおり、不整形地補正率は0.97であることから、これらを踏まえて、本件土地を評価通達15、17、20及び20−5の定めに基づき評価すると、別表2の(6)のとおり、本件土地の価額は199,460,129円となる。

トップに戻る

6 本件各更正処分の適法性について

本件土地の価額は上記5のとおりであるところ、当該価額に基づき、請求人らの本件相続に係る相続税の課税価格及び納付すべき税額を計算すると、それぞれ別表3及び4のとおりとなる。
 そうすると、請求人F、請求人K及び請求人Lについては、その納付すべき税額が、いずれも本件各更正処分(上記3名に係るもの)の額を下回るから、当該各更正処分は、いずれもその一部を別紙2ないし4の「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。
 また、請求人H及び請求人Jについては、その納付すべき税額が、いずれも本件各更正処分(上記2名に係るもの)の額を上回るから、当該各更正処分は、いずれも適法である。

トップに戻る

7 本件各賦課決定処分の適法性について

本件各更正処分のうち請求人Fに係るものについては、上記6のとおり、その一部を取り消すべきであるところ、その他の部分の納付すべき税額の計算の基礎となった事実が当該更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法(平成28年法律第15号による改正前のもの。以下同じ。)第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められない。
 そこで、請求人Fの過少申告加算税の額を国税通則法第65条第1項の規定により計算すると○○○○円となり、当該金額は本件各賦課決定処分(請求人Fに係るもの)の額を下回るから、その一部を別紙2の「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。
 また、本件各更正処分のうち請求人H及び請求人Jに係るものについては、上記6のとおりいずれも適法であり、当該各更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が当該各更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項の規定に基づいてされた本件各賦課決定処分のうち上記2名に係るものについては、いずれも適法である。

トップに戻る

8 結論

したがって、請求人F、請求人K及び請求人Lの各審査請求は、いずれも原処分の一部を別紙2ないし4の「取消額等計算書」のとおり取り消す限度で理由があるからこれらを認容し、請求人H及び請求人Jの各審査請求は、いずれも理由がないからこれらを棄却することとする。

トップに戻る