(平成28年7月4日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、医療機関等に対して○○を派遣する事業を営む審査請求人(以下「請求人」という。)が、当該事業に係る収入等を申告していなかったとして、原処分庁所属の職員の調査に基づき、所得税等について修正申告をし、また、消費税等については期限後申告をしたところ、原処分庁が、当該事業に係る収入等を申告しなかったことなどが事実の隠ぺい又は仮装の行為に当たるとして、重加算税の各賦課決定処分をしたのに対し、請求人が、当該事業に係る収入等を申告しなかったのは、租税に関する知識不足が原因であり、請求人に事実の隠ぺい又は仮装に当たる行為はないなどとして、その全部の取消しを求めた事案である。

(2) 基礎事実

以下は、請求人と原処分庁との間に争いがなく、当審判所の調査の結果によっても認められる事実、又は証拠資料によって容易に認められる事実である。

  • イ 本件事業の概要等
    1. (イ) 請求人は、平成○年頃から「F」という屋号を使用して、医療機関等における○○業務を受託し、当該医療機関等に対して○○を派遣する事業(以下「本件事業」という。)を営んでいた。
    2. (ロ) 請求人は、医療機関等数社(以下「本件各取引先」という。)との間で、委託者を本件各取引先、受託者を請求人とする各業務委託契約(以下「本件各契約」といい、本件各契約に係る契約書を「本件各契約書」という。)を締結し、本件事業に係る業務を行っていた。
    3. (ハ) 請求人は、本件各契約書、見積書(通常、本件各契約を締結する際に請求人が作成又はその内容を確認し、取引先へ交付するもの)及び受発注書に基づき、所有するパソコンを使用して請求書(月末締めの翌月1日付)を作成し、本件各取引先に送付していた。
       なお、請求書には、受託業務の内容、受託回数及び受託単価等が記載されており、取引金額を消費税額込みとする一部の取引先を除き、消費税額が別途記載され、請求金額に加算されている。
    4. (ニ) 請求人は、本件各取引先からの業務委託料(以下「本件業務委託料」という。)を、おおむね請求した月の中旬以降に、G銀行○○店にある「F D(請求人)」名義の普通預金口座(番号○○○○。以下「F口座」という。)において、口座振込みの方法により受領していた。
    5. (ホ) 請求人は、F口座に振り込まれた本件業務委託料について、主に毎月末に、1,000円未満又は10,000円未満の端数金額を残して、インターネットバンキングを行うことができるG銀行○○店にある「D(請求人)」名義の普通預金口座(番号○○○○。以下「請求人口座」という。)に振り替えていた。
    6. (ヘ) 請求人は、本件事業に従事するスタッフ(以下「本件スタッフ」という。)に対する報酬(以下「本件支払報酬」という。)について、勤務表に基づきパソコンを使用して本件スタッフごとの報酬明細書を作成し、同明細書を各人宛にメールで送信するとともに、原則として毎月15日に、インターネットバンキングを利用して、請求人口座から本件スタッフの各預金口座に本件支払報酬を振り込んでいた。
    7. (ト) 請求人は、平成19年から平成25年までの各年において、請求人口座から、クレジットカードの利用金額、生命保険料などを支払い、また、同口座からH銀行e支店にある請求人名義の普通預金口座に毎月35万円ないし50万円を振り替えており、同口座から借入金の返済を行っていた。
    8. (チ) 請求人は、平成19年から平成25年までの各年において、本件業務委託料及び本件支払報酬に関する帳簿を含め、本件事業に関する帳簿を一切作成していなかった。
  • ロ 請求人の確定申告の状況等
    1. (イ) 請求人は、平成19年分、平成20年分、平成21年分、平成22年分、平成23年分及び平成24年分の所得税並びに平成25年分の所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」という。また、これらの年分を併せて「本件各年分」という。)について、給与所得の金額及び株式等に係る譲渡所得等の金額などを、別表1−1の「確定申告」欄のとおり記載した確定申告書を自ら作成し、これを原処分庁に提出して、いずれも法定申告期限までに確定申告をした。
       なお、給与所得の金額は、請求人自らが医療機関等において○○として業務に従事したことなどによるものであって、本件各年分の給与収入の合計金額は○○○○円ないし○○○○円ほどである。そして、請求人は、本件事業に関する収入等について、本件各年分の所得税等の確定申告において一切申告していなかった。
    2. (ロ) 請求人は、平成19年1月1日から同年12月31日まで、平成20年1月1日から同年12月31日まで、平成21年1月1日から同年12月31日まで、平成22年1月1日から同年12月31日まで、平成23年1月1日から同年12月31日まで、平成24年1月1日から同年12月31日まで及び平成25年1月1日から同年12月31日までの各課税期間(以下、順次「平成19年課税期間」、「平成20年課税期間」、「平成21年課税期間」、「平成22年課税期間」、「平成23年課税期間」、「平成24年課税期間」及び「平成25年課税期間」といい、これらを併せて「本件各課税期間」という。)の消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)について、いずれも法定申告期限までに確定申告書を提出していなかった。
  • ハ 請求人に対する本件調査の状況等
    1. (イ) 請求人は、原処分庁所属の職員(以下「調査担当職員」という。)による調査(以下「本件調査」という。)を受けているところ、本件調査の臨場初日(平成26年10月30日)に本件事業に係る収入があることなどを認めており、同日及びE税務署内で行われた平成27年2月10日の面談において、調査担当職員は、請求人に対し、本件事業に係る収入等を申告しなかった理由などについて質問し、それに対する請求人の回答につき質問応答記録書を各日において作成した。
       なお、平成27年2月10日の面談は、請求人の代理人であるJ税理士が同席して行われた。
    2. (ロ) 請求人は、調査担当職員の求めに応じ、本件各契約書、預金通帳のほか、上記イの(ハ)の請求書及び見積書並びに同(ヘ)の報酬明細書を含むパソコン内に保存されていた本件事業に関するデータを同職員に提出した。
    3. (ハ) 請求人は、平成27年2月27日、本件調査に基づき、本件各年分の所得税等について、別表1−1の「修正申告」欄のとおり記載した修正申告書を原処分庁に提出して、修正申告をした。
       なお、本件各年分における本件事業に係る総収入金額は○○○○円ないし○○○○円ほどあり、また、事業所得の金額は○○○○円ないし○○○○円ほどあった(別表1−1の「修正申告」の「事業所得の金額」欄参照)。
    4. (ニ) 請求人は、平成27年2月27日、本件調査に基づき、本件各課税期間の消費税等について、別表1−2の「確定申告」欄のとおり記載した確定申告書を原処分庁に提出して、確定申告をした。

(3) 審査請求に至る経緯等

  • イ 原処分庁は、請求人に対し、平成27年3月12日付で、別表1−1及び別表1−2の「賦課決定」欄のとおり、本件各年分の所得税等及び本件各課税期間の消費税等に係る重加算税の各賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」という。)をした。
     なお、本件各賦課決定処分に係る賦課決定通知書(以下「本件各通知書」という。)に記載された処分の理由は、要旨、別表2−1及び別表2−2のとおりである。
  • ロ 請求人は、平成27年4月13日、本件各賦課決定処分に不服があるとして異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年7月6日付で当該異議申立てをいずれも棄却する旨の異議決定をした。
  • ハ 請求人は、平成27年8月4日、異議決定を経た後の本件各賦課決定処分に不服があるとして審査請求をした。
     なお、請求人は、平成27年3月26日、請求人の住所地である肩書地から事業所のあるb市d町○−○に納税地を変更している。

(4) 関係法令の要旨

  • イ 処分の理由の提示に関するもの
     行政手続法第14条《不利益処分の理由の提示》第1項は、行政庁は、不利益処分をする場合には、その名宛人に対し、同時に、当該不利益処分の理由を示さなければならない旨規定し、同条第3項は、不利益処分を書面でするときは、同条第1項の理由は、書面により示さなければならない旨規定している。
  • ロ 重加算税に関するもの
    1. (イ) 国税通則法(平成27年法律第9号による改正前のもの。以下「通則法」という。)第68条《重加算税》第1項は、同法第65条《過少申告加算税》第1項の規定に該当する場合において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、政令で定めるところにより、過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額に係る過少申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に100分の35の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する旨規定している。
    2. (ロ) 通則法第68条第2項は、同法第66条《無申告加算税》第1項の規定に該当する場合において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき法定申告期限までに納税申告書を提出せず、又は法定申告期限後に納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、政令で定めるところにより、無申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額に係る無申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に100分の40の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する旨規定している。
  • ハ 更正決定等の期間制限に関するもの
    1. (イ) 通則法第70条《国税の更正、決定等の期間制限》第1項第1号は、更正又は決定は、その更正又は決定に係る国税の法定申告期限から5年を経過した日以後においては、することができない旨規定している。なお、上記規定に係る更正の期間制限は、平成23年法律第114号による改正前は3年(平成22年分以前の所得税など、平成23年12月2日前に法定申告期限が到来した国税について適用)とされていた。
    2. (ロ) 通則法第70条第1項第3号は、課税標準申告書の提出を要しない賦課課税方式による国税に係る賦課決定は、その納税義務の成立の日から5年を経過した日以後においては、することができない旨規定している。
    3. (ハ) 通則法第70条第4項は、偽りその他不正の行為によりその全部若しくは一部の税額を免れ、又はその全部若しくは一部の税額の還付を受けた国税(当該国税に係る加算税を含む。)についての更正決定等は、上記(イ)及び(ロ)の各規定にかかわらず、更正又は決定は、その更正又は決定に係る国税の法定申告期限から7年を経過する日まで、課税標準申告書の提出を要しない賦課課税方式による国税に係る賦課決定は、その納税義務の成立の日から7年を経過する日まで、することができる旨規定している。

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2 争点

  • (1) 本件各賦課決定処分の理由の提示に不備があるか否か(争点1)。
  • (2) 請求人は、本件各年分の所得税等及び本件各課税期間の消費税等について、課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいしたか否か(争点2)。
  • (3) 請求人は、平成19年分ないし平成22年分の所得税並びに平成19年課税期間及び平成20年課税期間の消費税等について、偽りその他不正の行為によりその全部又は一部の税額を免れていたか否か(争点3)。

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3 主張

(1) 争点1(本件各賦課決定処分の理由の提示に不備があるか否か。)について

原処分庁 請求人
本件各通知書には、本件各賦課決定処分の理由として、別表2−1及び別表2−2のとおり記載されているところ、原処分庁は、当該理由において、通則法第68条第1項及び第2項又は同法第70条第4項に規定する課税要件を充足するとの判断に至った事実及び評価、すなわち、本件各賦課決定処分における原処分庁の判断過程について具体的に記載しており、原処分庁としては、この記載を行うことによって、本件各賦課決定処分の判断過程を検証することができるのであるから、その判断の慎重、合理性を確保するという点について欠けるところはなく、本件各通知書における本件各賦課決定処分の理由は、課税庁の恣意抑制という理由付記制度の趣旨目的を損なうものではない。
 また、上記のとおり、本件各通知書における本件各賦課決定処分の理由は、その根拠が具体的に示されているから、理由付記制度のもう一つの目的である不服申立ての便宜という点についても、請求人に対し必要な材料を提供するものといえる。
 したがって、本件各賦課決定処分の理由の提示に不備はない。
本件各通知書には、本件各賦課決定処分の理由として、別表2−1及び別表2−2のとおり記載されているところ、当該理由においては、意図的に隠ぺい又は仮装を行ったところにより申告がなされているなどの記載があるだけで、請求人のどの行為がなぜ「隠ぺい又は仮装の行為」に当たるのかについて具体的に記載されておらず、また、「隠ぺい又は仮装の行為」及び「偽りその他不正の行為」の主要な要件であるほ脱のための「故意」が何によって証明されるのかが示されていない。
 したがって、本件各通知書における本件各賦課決定処分の理由は、行政手続法第14条の要求する必要かつ十分な理由付記とはいえず、本件各賦課決定処分の理由の提示には瑕疵がある。

(2) 争点2(請求人は、本件各年分の所得税等及び本件各課税期間の消費税等について、課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいしたか否か。)について

原処分庁 請求人
請求人は、本件各年分の所得税等及び本件各課税期間の消費税等について、次のとおり、当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告などをしたのであり、通則法第68条第1項及び第2項に規定する課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部の隠ぺいを行った。 請求人は、本件各年分の所得税等及び本件各課税期間の消費税等について、次のとおり、当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしておらず、通則法第68条第1項及び第2項に規定する課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部の隠ぺいを行っていない。
イ 請求人は、本件事業により毎月得られる多額の収入金額及び所得金額を十分に認識した上で、毎月の経費や借入金、生活費等の支払を行っていたほか、1年間で得られた多額の所得金額についても把握した上で、教育費を支払い、更には、余剰金を多額の投資に充てていた。 イ 請求人が本件事業に係る所得を所得税等の確定申告に含めなかったのは、所得税の事業所得についての知識が欠落していたためであり、意図的にほ脱の目的をもって過少申告をしたものではない。
 また、請求人が本件事業に係る収入等に関して消費税等の確定申告をしていなかったのも、消費税についての知識がなく、自らが消費税等の課税事業者であることを認識していなかったためであり、請求人に隠ぺいの意図は全くなかった。
 なお、請求人は、本件調査によって、初めて本件事業により得た収入等に所得税等及び消費税等が課税されることを知ったのであり、原処分庁が主張の根拠とする請求人の調査担当職員に対する左記ハの申述内容は、当時の請求人の認識とは異なるものである。
ロ 請求人は、上記イのとおり、本件事業から利益が生じていたことを十分に認識し得たにもかかわらず、請求人自ら作成した本件各年分の所得税等の確定申告書では、給与所得及び株式等に係る譲渡所得等のみを申告し、給与所得に係る源泉徴収税額の還付を受けていた。 ロ 請求人は、帳簿書類の虚偽記入、二重帳簿の作成、架空の経費の計上及び本件事業に係る収入金額を隠ぺいするなどの行為を行っていない。
ハ 請求人は、請求書、本件各契約書及び雇用契約書などの本件事業に係る書類並びに本件各年分の所得税等の確定申告書を自ら作成しており、本件事業に関して、租税を含むあらゆる面についての高度な知識を持っているものと認められ、本件事業から生ずる利益に対しても税を負担しなければならないことは容易に認識し得た。事実、請求人は、調査担当職員に対し、本件事業により得た収入に関し、所得税及び消費税の申告及び納税をしなければならないことや、消費税の問題があることは認識していたなどと申述している。 ハ 請求人は、調査担当職員の要請に応じて本件事業に関し保有している全ての証拠資料を提示した上、同職員の質問検査に積極的に協力し、かつ、パソコンに保存していた請求書、契約書及び報酬明細書等のデータをそのまま同職員に提出した。
ニ 請求人が、上記ハのとおり、本件事業に関して租税を含むあらゆる面についての高度な知識を有していたと認められることなどからすれば、請求人は、本件事業に関する利益について帳簿書類の作成が必要であると認識していたにもかかわらず、適正な申告をしていたならば課される帳簿書類の作成義務が、適正な申告をしていなかったがために課されていなかったことを利用して、帳簿書類の作成をあえて行わず、本件事業に係る所得は無いものとして、本件各年分の所得税等の確定申告の内容を過少なものとするとともに、本件各課税期間に係る消費税等について申告しなかったものと認められる。 ニ 以上のことからすると、請求人が意図的な隠ぺい行為を行ったとはいえず、また、請求人が当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたともいえない。
ホ 以上のことからすると、請求人は、1本件事業に係る収入金額及び所得金額について、多額の利益が生じ、当該利益は帳簿書類を作成し、確定申告をすべき金額であることを十分に認識していながら、2債務弁済や利殖のために税を免れることを意図し、3その意図に基づいて本件事業に関する請求書等は作成しているにもかかわらず、本件事業に係る帳簿書類をあえて作成せずに、4本件各年分にわたって多額の本件事業に係る収入金額を一切記載しない内容虚偽の確定申告を行い、これに加え、5本件各課税期間の消費税等についてあえて申告していなかったものと認められ、これら請求人の一連の行為は、請求人が当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づき過少申告等をしたものと認められる。

(3) 争点3(請求人は、平成19年分ないし平成22年分の所得税並びに平成19年課税期間及び平成20年課税期間の消費税等について、偽りその他不正の行為によりその全部又は一部の税額を免れていたか否か。)について

原処分庁 請求人
通則法第70条第4項に規定する偽りその他不正の行為には、真実の所得を隠ぺいし、それが課税の対象となることを回避するため、所得金額を殊更に過少に記載した内容虚偽の所得税確定申告書を提出する行為などもこれに当たるものと解されるところ、上記(2)の「原処分庁」欄のホのことからすると、請求人は、真実の所得を隠ぺいし、それが課税の対象となることを回避するため、所得金額を殊更に過少に記載した内容虚偽の所得税の確定申告書を提出するとともに、消費税等についてあえて確定申告をしていなかったものと認められ、これら請求人の一連の行為は、通則法第70条第4項に規定する偽りその他不正の行為に該当する。 通則法第70条第4項に規定する偽りその他不正の行為とは、帳簿書類の虚偽記入などの行為をいい、単純な無申告はそれに当たらないものと解されるところ、上記(2)の「請求人」欄のとおり、請求人は、単に租税に関する知識を欠いていたために、本件事業に係る収入等につき、所得税については過少申告となり、消費税等については申告をしていなかったもので、ほ脱のための故意はなく、請求人に通則法第70条第4項に規定する偽りその他不正の行為はない。
 また、偽りその他不正の行為とは、所得税法第238条のほ脱犯の罪の構成要件でもあり、同じ国税に関する法律で偽りその他不正の行為を別異に解することはできず、通則法第70条第4項が適用される場合には、法規上脱税犯に当たるものと解される。したがって、通則法第70条第4項を安易に適用すべきではなく、請求人にほ脱の意図はないから、本件各賦課決定処分は、同項の規定を拡張解釈した瑕疵がある。

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4 判断

(1) 争点1(本件各賦課決定処分の理由の提示に不備があるか否か。)について

  • イ 法令解釈
     行政手続法第14条第1項本文が、不利益処分をする場合に同時にその理由を名宛人に示さなければならないとしているのは、名宛人に直接に義務を課し又はその権利を制限するという不利益処分の性質に鑑み、行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨に出たものと解される。そして、同項本文に基づいてどの程度の理由を提示すべきかは、上記のような同項本文の趣旨に照らし、当該処分の根拠法令の規定内容、当該処分に係る処分基準の存否及び内容並びに公表の有無、当該処分の性質及び内容、当該処分の原因となる事実関係の内容等を総合考慮してこれを決定すべきであるところ、そこにおいて要求される提示の内容及び程度は、特段の理由のない限り、いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して当該処分がされたのかを、処分の相手方においてその提示内容自体から了知し得るものでなければならないというべきである。
  • ロ 当てはめ
     本件各通知書に記載された処分の理由は、別表2−1及び別表2−2のとおりであるところ、本件各通知書には、処分の理由として、各事実が掲げられた上で、1当該各事実から、イ請求人は、本件事業に係る事業所得があることを認識していたにもかかわらず、意図的に当該所得を申告に含めず、所得税等の確定申告書を提出していたと認められること、ロ請求人は、本件事業に係る対価を得ていることを認識していたにもかかわらず、消費税等の確定申告をしていなかったものと認められること、21のことから、隠ぺい又は仮装の事実が認められること、そして、3請求人が提出した所得税等の修正申告書又は消費税等の期限後申告書により納付すべき税額に通則法第68条の規定に基づき計算した重加算税の額を賦課決定したことが記載されている。
     また、本件各通知書において、平成19年分ないし平成22年分の所得税並びに平成19年課税期間及び平成20年課税期間の消費税等に係る各通知書には、処分の理由として、理由中に掲げた各事実が、通則法第70条第4項に規定する偽りその他不正の行為により税額を免れた場合に該当するため、これらに係る処分には同項の規定が適用される旨も記載されている。
     以上の記載によれば、本件各通知書における処分の理由は、原処分庁がいかなる事実関係に基づき、いかなる法規を適用して本件各賦課決定処分をしたかについて、請求人において了知し得る程度に記載されており、行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を知らせて不服の申立てに便宜を与えるという行政手続法第14条の趣旨に照らし、法の要求する理由の提示として欠けるものではないというべきである。
     したがって、本件各賦課決定処分の理由の提示に不備はなく、この点において同処分を取り消すべき違法はない。
  • ハ 請求人の主張について
     請求人は、本件各賦課決定処分の理由には意図的に隠ぺい又は仮装を行ったところにより申告がなされている旨の記載があるだけで、請求人のどの行為がなぜ隠ぺい又は仮装に当たるのかが具体的に記載されていない上、偽りその他不正の行為及び隠ぺい又は仮装の主要な要件であるほ脱のための故意が何によって証明されるのかが示されておらず、本件各通知書には行政手続法第14条の要求する必要かつ十分な理由付記がなされていない旨主張する。
     しかしながら、本件各通知書に記載された処分の理由が、法の要求する理由の提示として欠けるものでないことは上記ロのとおりである。
     したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。

(2) 争点2(請求人は、本件各年分の所得税等及び本件各課税期間の消費税等について、課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいしたか否か。)について

  • イ 法令解釈
     通則法第68条第1項及び第2項が定める重加算税の制度は、納税者が過少申告又は無申告について隠ぺい、仮装という不正手段を用いていた場合に、過少申告加算税又は無申告加算税よりも重い行政上の制裁を科することによって、悪質な納税義務違反の発生を防止し、もって申告納税制度による適正な徴税の実現を確保しようとするものである。
     したがって、重加算税を課するためには、納税者のした過少申告行為又は納税者の無申告そのものが隠ぺい、仮装に当たるというだけでは足りず、過少申告行為又は無申告そのものとは別に、隠ぺい、仮装と評価すべき行為が存在し、これに合わせた過少申告がされ、又は無申告とされたことを要するものである。しかし、上記の重加算税制度の趣旨に鑑みれば、架空名義の利用や資料の隠匿等の積極的な行為が存在したことまで必要であると解するのは相当でなく、納税者が、当初から所得を過少に申告すること、又は法定申告期限までに申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をし、又はその意図に基づき法定申告期限までに申告をしなかったような場合には、重加算税の上記賦課要件が満たされるものと解すべきである。
  • ロ 検討
     原処分庁は、請求人が本件各年分の所得税等及び本件各課税期間の消費税等の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいしたとして、上記3の(2)の「原処分庁」欄のホのとおり主張しているため、本件においては、以下のとおり、まず、1請求人に過少申告等の意図及びその意図に基づく過少申告行為等があったか否か、次に、2請求人に過少申告等の意図を外部からもうかがい得る特段の行動があったか否かの順に検討することとする。
    1. (イ) 請求人に過少申告等の意図及びその意図に基づく過少申告行為等があったか否かについて
       原処分庁は、請求人は本件事業から多額の利益が生じており、当該利益を確定申告すべきであることを十分に認識していながら、税を免れることを意図し、その意図に基づき所得を過少に申告するなどしていたものと認められる旨主張するので、この点について以下検討する。
      • A 本件事業からの利益に関する請求人の認識について
         請求人は本件業務委託料に係る請求書及び本件スタッフごとの報酬明細書を自ら作成し(上記1の(2)のイの(ハ)及び(ヘ))、本件業務委託料は、全て請求人が管理するF口座に入金され(同(ニ))、また、本件支払報酬についても請求人自ら振込手続を行っていたことからすれば(同(ヘ))、請求人は、各月の本件業務委託料の金額及び本件支払報酬の金額を把握していたものと認められるし、F口座に入金された本件業務委託料を請求人口座へ振り替えて、同口座からクレジットカードの利用金額を支払うなど、これを生活費として費消していたことも認められる(同(ホ)及び(ト))。
         さらに、請求人は、本件調査において、調査担当職員に対し、12005年(平成17年)くらいには、取引先は10社以上となり、その後は収入も○○○○円ないし○○○○円ほどになって、利益も出るようなった旨、2本件事業に係る利益を生活費や家賃の支払のほか、毎月の借入金の返済及び次女の教育費の支払などに充てていた旨申述していることが認められる。
         以上のことからすると、請求人は、本件各年分においても、本件事業に係る利益の額が相当額あったことを認識していたものと認められる。
      • B 本件事業に係る所得税等及び消費税等の申告及び納税の義務に関する請求人の認識について
        • (A) 請求人は、1本件各年分の所得税等の確定申告書を税理士等の専門家に頼ることなく自ら作成し、これを原処分庁に提出して源泉徴収された所得税等の還付を受けていること(上記1の(2)のロの(イ))、2請求人自ら作成した本件業務委託料に係る請求書に消費税額を記載していること(同イの(ハ))のほか、3当審判所が、請求人が調査担当職員に提出した見積書(同ハの(ロ)。なお、提出された見積書は平成21年以降のものである。)のうち、本件各取引先に対する作成時期の最も古い見積書を確認した限りにおいても、消費税に関して、「消費税別」又は「消費税込」との記載をしていることが認められる。
           さらに、請求人は、本件調査において、調査担当職員に対し、1(所得税等の)確定申告は正しいものではない旨、2税理士などへの相談も考えていた旨、3本件事業に係る収入は年間○○○○円ないし○○○○円で自らの取り分も月額○○○○円ほどあり、消費税も含め申告しなければいけないという認識はあった旨(なお、この申述内容は平成26年10月30日のものであり、平成27年2月10日の申述では、この点について、本件事業に係る収入は年間○○○○円ないし○○○○円くらいで自らの取り分も月額○○○○円ほどあり、納税の申告をしなければいけないことは認識していた旨、消費税の問題があることは認識していた旨述べている。)申述していることも認められる。
           以上のことからすると、請求人は、所得税等及び消費税等の申告納税制度に一定の知見があり、事業を営むことによって収入及び利益(所得)が発生すれば、所得税等及び消費税等の申告及び納税が必要になることなど、本件事業に関する申告及び納税の義務について一定の理解があり、これらの義務を当然に認識していたものと認められる。
        • (B) なお、請求人は、調査担当職員に対する上記(A)の3の「申告しなければいけないという認識はあった」との申述内容は申述当時の請求人の認識とは異なる旨主張する(上記3の(2)の「請求人」欄のイ参照)。
           しかしながら、当該申述内容は、請求人にとって不利な内容であるところ、1J税理士が同席して行われた平成27年2月10日の請求人の申述においても、上記(A)のとおり、その内容に平成26年10月30日の申述から大きな変遷は認められず、同様のことが述べられていること、2請求人は、申述内容を記載した質問応答記録書(上記1の(2)のハの(イ))の記載内容に誤りがないことを自ら確認した上で、それぞれに署名押印していることからすると、この点に関する申述は信用することができ、当該申述内容は本件事業に関する所得税等及び消費税等の申告及び納税の義務について請求人が有していた認識を正しく述べたものと認められる。
      • C 小括
         上記A及びBを踏まえると、請求人は、所得税等及び消費税等については申告納税の制度が採られていること、所得税等の確定申告においては、その所得の種類、並びに全ての所得を申告し、また、消費税等についてもこれを申告し、それにより算出された正当な所得税額及び消費税額を納付すべきであることを十分に認識していたものと認められる。
         したがって、請求人が、本件各年分の所得税等の確定申告に際し、本件事業に係る所得を全て秘匿して、給与所得及び株式等に係る譲渡所得等のみを記載した内容虚偽の確定申告書を提出し、これを申告しなかったこと、また、本件各課税期間において本件事業に係る収入等につき消費税等の申告をしなかったことは、単なる所得計算の違算や亡失というものではなく、請求人が当初から所得を過少に申告する意図の下になした過少申告行為、又は法定申告期限までに申告しないことを意図して行われたものと認めるのが相当である。
    2. (ロ) 請求人に過少申告等の意図を外部からもうかがい得る特段の行動があったか否かについて
       原処分庁は、請求人が税を免れる意図に基づき、本件事業に係る帳簿書類をあえて作成せずに、本件事業に係る所得を無いものとし、本件各年分にわたって多額の本件事業に係る売上金額を一切記載しない内容虚偽の所得税等の確定申告を行い、本件各課税期間の消費税等についてあえて申告していなかったのであり、これら請求人の一連の行為は、請求人が当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたものと認められる旨主張するので、この点について以下検討する。
      • A 請求人が本件事業に係る帳簿を作成していなかったことについて
         請求人は本件各年分において本件事業に係る帳簿を作成していないものの(上記1の(2)のイの(チ))、1本件業務委託料に係る請求書及び本件スタッフごとの報酬明細書については請求人自らパソコンで作成していること(同(ハ)及び(ヘ))、2本件業務委託料は、全て請求人が管理するF口座に入金されていること(同(ニ))、3本件支払報酬に関する振込手続は、請求人自らパソコンを使用して行っていること(同(ヘ))、並びに4請求人は、本件各契約書、上記1の請求書及び報酬明細書などの書類等についてもこれらを破棄することなく、パソコン等に保存していたことからすると(同ハの(ロ))、請求人が本件事業に係る帳簿を作成していないのは、これらの書類等により、本件事業に関する収入金額、必要経費及び請求人自ら処分可能なおおよその利益を把握することができたためである可能性が残り、原処分庁提出の証拠や当審判所の調査で収集した証拠を総合しても、請求人が本件事業に関する正当な収入金額、必要経費及び所得金額を秘匿するためにあえて帳簿を作成しなかったとまでは断定し難い。
         したがって、本件において、請求人が本件事業に係る帳簿を作成していなかったことをもって、過少申告等の意図を外部からもうかがい得る特段の行動とまでは評価することができない。
      • B 小括
         上記Aのとおり、原処分庁の主張する請求人の行為をもって、過少申告等の意図を外部からもうかがい得る特段の行動と評価することはできず、また、上記1の(2)に掲げた事実のほか、本件各契約書の作成から受注、本件事業に係る業務の遂行、本件業務委託料に係る請求、入金等並びに所得税等及び消費税等の申告行為等までに至る本件事業に関する請求人の一連の行為において、当審判所の調査によっても過少申告等の意図を外部からもうかがい得る特段の行動などを見いだすことはできない。
    3. (ハ) まとめ
       以上のように、本件において請求人に所得を過少に申告する意図、又は消費税等を法定申告期限までに申告しない意図並びにその意図に基づく過少申告行為等は認められるものの、原処分庁が主張する請求人の行為については、過少申告等の意図を外部からもうかがい得る特段の行動とは評価することができないものであり、他に原処分庁は通則法第68条第1項又は第2項に規定する重加算税の賦課要件に該当する事実を主張及び立証しておらず、当審判所の調査によっても当該事実を見いだすことはできない。
       したがって、請求人の本件各年分の所得税等及び本件各課税期間の消費税等について、重加算税を賦課することはできないものといわざるを得ない。

(3) 争点3(請求人は、平成19年分ないし平成22年分の所得税並びに平成19年課税期間及び平成20年課税期間の消費税等について、偽りその他不正の行為によりその全部又は一部の税額を免れていたか否か。)について

  • イ 法令解釈
     通則法第70条は、国税の更正、決定等の期間制限(賦課権の除斥期間)を定めているところ、同条第4項において、「偽りその他不正の行為によりその全部若しくは一部の税額を免れた国税についての更正決定等」に関しては、その除斥期間を7年と定め、それ以外の場合よりも長い除斥期間を定めている。これは、偽りその他不正の行為によって国税の全部又は一部を免れた納税者がある場合にこれに対して適正な課税を行うことができるよう、より長期の除斥期間を定めたものである。
     また、同項に規定する「偽りその他不正の行為」とは、税の賦課徴収を不能又は著しく困難にするような何らかの偽計その他の工作を伴う不正な行為を行っていることをいうのであって、単なる不申告行為などはこれに含まれないところ、偽計その他の工作を伴う不正な行為を行うとは、納税者が真実の所得を秘匿し、それが課税の対象となることを回避するため、所得の金額を殊更に過少にした内容虚偽の申告書を提出し、又は法定申告期限までに申告をせず、正当な納税義務を過少にするなどしてその不足税額を免れる行為も、それ自体単なる不申告などの不作為にとどまるものではなく、偽りの工作的不正行為といえるから、上記「偽りその他不正の行為」に該当するものと解するのが相当である。
  • ロ 当てはめ
     本件において、上記(2)のロの(イ)のことからすると、請求人は、本件事業に係る所得を全て秘匿し、それが課税の対象となることを回避するため、所得の金額を殊更に過少にした内容虚偽の所得税等の確定申告書を提出し、また、法定申告期限までに消費税等の申告を行わず、本件各年分の所得税等及び本件各課税期間の消費税等の税額を免れていたものと認められ、このような過少申告行為等は、税の賦課徴収を不能又は著しく困難にするような何らかの偽計その他の工作を伴う不正な行為に該当するものと認められる。
     したがって、請求人が、平成19年分ないし平成22年分の所得税並びに平成19年課税期間及び平成20年課税期間の消費税等について、全部若しくは一部の税額を免れていたことは、通則法第70条第4項に規定する「偽りその他不正の行為により税額を免れた」ことに該当する。
  • ハ 請求人の主張について
     請求人は、本件事業に係る収入等について申告をしなかったのは租税に関する知識を欠いていたためであり、請求人にほ脱のための故意はなく、通則法第70条第4項に規定する偽りその他不正の行為はない旨主張する。
     しかしながら、○○○○円ないし○○○○円ほどにもなる本件事業に係る収入等(上記1の(2)のハの(ハ))について申告の必要性を認識していなかったとする請求人の主張は、○○○○円ほどの給与収入についてでさえ申告している請求人の本件各年分の所得税等の確定申告の状況(同ロの(イ))及び上記(2)のロの(イ)のBの認定に照らしてもおよそ採用することはできないし、請求人が、平成19年分ないし平成22年分の所得税並びに平成19年課税期間及び平成20年課税期間の消費税等について、通則法第70条第4項に規定する偽りその他不正の行為により、これらの税額を免れていたと認められることは上記ロのとおりである。
     なお、請求人は、所得税法第238条と通則法第70条第4項に規定する偽りその他不正の行為を別異に解することはできず、同項の規定を適用するには、所得税法第238条のほ脱犯の刑事罰の構成要件である故意が必要であるとも主張するが、同項の規定は、上記イのとおり、適正な課税を実現するために更正等の除斥期間を延長するにすぎないものであるところ、このような趣旨に鑑みると、ほ脱犯の刑事罰の構成要件である故意を同項の適用要件と解することはできない。
     したがって、これらの点に関する請求人の主張には理由がない。

(4) 本件各年分の所得税等に係る重加算税の各賦課決定処分の適法性について

請求人の本件各年分の所得税等については、上記(2)のロの(ハ)のとおり、通則法第68条第1項に規定する重加算税の賦課要件を満たしていないものの、上記(3)のロのとおり、請求人は、平成19年分ないし平成22年分の所得税について、同法第70条第4項に規定する「偽りその他不正の行為により税額を免れた」ことが認められる。そして、本件各年分の修正申告に基づき納付すべき税額の計算の基礎となった事実のうちに、その修正申告前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、請求人に同法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められない。
 以上のことから、本件各年分の所得税等に係る重加算税の各賦課決定処分のうち、過少申告加算税相当額を超える部分の金額については、それぞれ違法であるから、いずれも別紙1ないし別紙7の「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。

(5) 本件各課税期間の消費税等に係る重加算税の各賦課決定処分の適法性について

請求人の本件各課税期間の消費税等については、上記(2)のロの(ハ)のとおり、通則法第68条第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たしていないものの、上記(3)のロのとおり、請求人は、平成19年課税期間及び平成20年課税期間の消費税等について、同法第70条第4項に規定する「偽りその他不正の行為により税額を免れた」ことが認められる。そして、本件各課税期間の消費税等につき、期限内申告書の提出がなかったことについて、請求人に同法第66条第1項に規定する正当な理由があるとは認められない。
 以上のことから、本件各課税期間の消費税等に係る重加算税の各賦課決定処分のうち、無申告加算税相当額を超える部分の金額については、それぞれ違法であるから、いずれも別紙8ないし別紙14の「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。

(6) その他

原処分のその他の部分については、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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