(平成29年3月24日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、原処分庁が、貸金業等を営む審査請求人(以下「請求人」という。)が国税を滞納していたJ(以下「本件滞納者」という。)との間でした裁判外の和解(以下「本件和解」という。)に基づき本件滞納者から受けた過払金の返還債務の一部免除が国税徴収法(平成28年法律第15号による改正前のものをいい、以下「徴収法」という。)第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》に規定する債務の免除に当たるとして、請求人に対して第二次納税義務の納付告知処分をしたところ、請求人が、本件和解は同条に規定する債務の免除には当たらないなどとして、同処分の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 関係法令等

関係法令等の要旨は別紙のとおりである。
 なお、別紙で定義した略語については、以下、本文でも使用する。

(3) 基礎事実

当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。

  • イ 請求人の概要
     請求人は、貸金業法所定の登録を受けた貸金業等を営む法人である。
  • ロ 本件滞納者の概要
     本件滞納者は、平成27年11月9日現在、別表1記載の国税(以下「本件滞納国税」という。)を滞納していたが、本件滞納国税の全額を徴収するに足りる財産を有していなかった。
  • ハ 請求人と本件滞納者との間における金銭の貸付等の状況
    • (イ) 請求人は、昭和62年7月6日、本件滞納者との間で利息制限法第1条所定の制限利率を超える利率を定めた金銭消費貸借取引に係る基本契約(以下「本件基本契約」という。)を締結するとともに、本件滞納者に「Kカード」と題する現金自動入出金機用のカード(以下「本件カード」という。)を貸与し、別表2の「取引日」欄記載の各年月日の「貸付」欄及び「弁済」欄記載のとおり、金銭消費貸借取引(以下「本件取引」という。)を行った。
    • (ロ) 本件取引は、基本契約に基づき借入限度額の範囲内で借入れと弁済を繰り返すことを予定して行われたもので、その弁済の方式は、全貸付けの残元金について、毎月の返済期日に最低返済額及び経過利息を支払えば足りるとする、いわゆるリボルビング方式の一つである。
    • (ハ) 本件滞納者は、平成元年11月10日、請求人に対し○○○○円を弁済することで、一旦、元金及び約定利息を完済し、その後、平成3年9月30日に請求人から新たに○○○○円を借り入れた(以下、別表2の昭和62年7月6日から平成元年11月10日までの取引を「本件取引1」といい、平成3年9月30日から平成21年5月18日までの取引を「本件取引2」という。)。
    • (ニ) 本件滞納者は、平成6年8月10日、「○○」と題する書面(以下「平成6年○○書」という。)を作成し、請求人にこれを交付した。
       これに基づき請求人は、同日、本件滞納者との間で、借入極度額の増加に伴う「○○」と題する契約書(以下「平成6年契約書」という。)を作成した。
       なお、平成6年○○書の請求人が記入する欄には、従前の契約書を破棄したことを示す記載が、また、平成6年契約書には、請求人が原本を、本件滞納者が控えを授受したことを示す記載がある。
  • ニ 本件取引に係る過払金返還請求についての和解
    • (イ) 請求人は、本件滞納者から本件取引に係る過払金につき不当利得の返還を請求され、その後、平成22年8月11日、当該不当利得返還請求について本件滞納者と本件和解をした。本件和解に伴い、要旨以下の内容の「和解書」と題する書面(以下「本件和解書」という。)が作成された。
      • A 請求人は、本件滞納者に対し、本件取引で生じた過払金返還債務に関する和解金として○○○○円(以下、この和解金を「本件和解金」という。)を支払う(第1条)。
      • B 請求人は、本件和解金を2回に分割し、平成22年11月30日までに○○○○円を、平成23年5月2日までに○○○○円を支払う(第2条)。
      • C 本件滞納者は、請求人が、本件和解金の支払を完了したときは、本件滞納者の請求人に対する本件取引に関するその余の過払金返還請求権及びその他の一切の請求権を放棄する(第3条)。
      • D 請求人と本件滞納者との間には、契約の種類名称の如何にかかわらず本件和解書に定める以外に何ら債権債務もないことを相互に確認する(第5条)。
    • (ロ) 請求人は、本件滞納者に対し、平成22年11月29日に○○○○円、平成23年5月2日に○○○○円を支払い、本件和解金の支払を完了した。

(4) 審査請求に至る経緯

  • イ 原処分庁は、本件滞納国税を徴収するため、請求人に対し、本件和解が徴収法第39条に規定する債務の免除に当たるとして、同法第32条第1項の規定に基づき、平成27年11月9日付の納付通知書により、過払金の額○○○○円と当該過払金に係る利息の額○○○○円との合計○○○○円から本件和解金を差し引いた○○○○円を納付すべき限度の額とする第二次納税義務の納付告知処分をした(以下「本件告知処分」という。)。
     なお、過払金に係る利息(以下「過払利息」という。)とは、過払金に対する民法第704条の規定に基づいて発生する法定利息である。
  • ロ 請求人が、平成27年12月25日、上記イの処分に不服があるとして、異議申立てをしたところ、異議審理庁は、平成28年3月22日付で、利息制限法所定の制限利率による引き直し計算方法により、別表3のとおり、過払金返還請求権の金額を算定し、過払金の額○○○○円と過払利息の額○○○○円との合計○○○○円(平成23年5月2日付の「過払金」欄と「過払利息残額」欄記載の金額との合計金額)から本件和解金を差し引いた○○○○円を納付すべき限度の額であるとして、これを超える部分を取り消す旨の異議決定をした。
  • ハ 請求人は、平成28年4月22日、異議決定後の本件告知処分に不服があるとして、審査請求をした。

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2 争点

  1. (1) 本件滞納国税に係る徴収権は、時効により消滅しているか否か(争点1)。
  2. (2) 第二次納税義務に係る徴収権は、主たる納税義務と別個独立して、時効により消滅しているか否か(争点2)。
  3. (3) 請求人は、本件和解によって、徴収法第39条に規定する債務の免除を受けたといえるか否か。また、受けたといえる場合、請求人が受けた利益の額はいくらか(争点3)。

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3 争点についての主張

(1) 争点1(本件滞納国税に係る徴収権は、時効により消滅しているか否か。)について

  • イ 原処分庁
     本件滞納国税に係る徴収権は、原処分庁が行った本件滞納者への督促状の送達及び差押え並びに本件滞納者からの債務の承認によって時効が中断していることから、本件告知処分時において消滅していない。
  • ロ 請求人
     本件滞納国税に係る徴収権は、本件告知処分時において、法定納期限からいずれも5年を経過していることから時効によって消滅している。

(2) 争点2(第二次納税義務に係る徴収権は、主たる納税義務と別個独立して、時効により消滅しているか否か。)について

  • イ 原処分庁
     以下のとおり、第二次納税義務に係る徴収権は、主たる納税義務と別個独立して時効により消滅することはない。
    • (イ) 第二次納税義務の時効中断の効力は、主たる納税者の納税義務には及ばないが、主たる納税者の納税義務の時効中断の効力は、第二次納税義務が保証債務に類似した性格をもち、保証債務にあっては債権を強化するため主債務について生じた時効中断の効力は保証人に及ぶものとしている(民法第457条第1項)ことから、第二次納税義務にも及ぶものと解される。
       したがって、主たる納税義務が時効によって消滅しない以上、第二次納税義務についても時効により消滅することはない。
    • (ロ) また、納付告知前は、第二次納税義務は具体的に確定しておらず時効により消滅することもないから、第二次納税義務者に対し時効中断措置を講じる必要はない。
  • ロ 請求人
     以下のとおり、第二次納税義務に係る徴収権は、主たる納税義務と別個独立して時効により消滅している。
    • (イ) 第二次納税義務者は、主たる納税義務者と別個に法律上の利益を有する者に該当するから、民法第155条の規定のとおり、主たる納税義務者とは別に第二次納税義務者に対しても、時効中断措置を講じなければ、第二次納税義務は、主たる納税義務と別個に独立して時効により消滅している。
    • (ロ) 第二次納税義務に係る徴収権の時効について、通則法第72条第3項で規定する、同法第7章第2節に時効の中断に係る「別段の定め」は存在しないことから、民法の規定が準用されるところ、上記イの(イ)の原処分庁の主張は、契約に基づき主たる債務者の債務を肩代わりする意向を表示している保証人と、法律により強制的に納税義務を負担させられる第二次納税義務者とを同列に解し、民法第457条第1項の規定を納税者の不利益に類推適用するものであり、課税要件明確主義に反している。
       したがって、主たる納税者の納税義務の時効中断の効力が、第二次納税義務者に及ぶと解することはできない。

(3) 争点3(請求人は、本件和解によって、徴収法第39条に規定する債務の免除を受けたといえるか否か。また、受けたといえる場合、請求人が受けた利益の額はいくらか。)について

  • イ 原処分庁
     以下のとおり、請求人は、本件和解により徴収法第39条に規定する債務の免除を受けており、請求人が受けた利益の額は、○○○○円である。
    • (イ) 徴収法第39条に規定する債務の免除を受けたこと
       徴収法第39条に規定する債務の免除には、民法第519条の規定による債務免除のほか、契約による免除も含まれる(国税徴収法基本通達第39条関係の4)とされており、本件和解に基づく債務の免除もこれに該当する。
    • (ロ) 請求人の受けた利益の額
      • A 本件取引1と本件取引2は、本件滞納者が平成元年11月10日に本件取引1を完済したのち、平成3年9月30日に再度借入を行う際、本件滞納者と請求人が新たに基本契約を締結した事実が認められないこと及び本件取引1において発行した本件カードを本件取引2においても引き続き使用して現金自動入出金機での借入を行っていることなどから、同一の基本契約に基づく一連の継続した取引として過払金を計算すべきである。
         また、過払金返還請求権の消滅時効の起算点は、基本契約の終了時であるところ、基本契約は継続しているのだから、そもそも過払金返還請求権の消滅時効の議論に至らない。
      • B 請求人に貸金業法第43条第1項の規定の適用があるとの認識を有するに至ったことについてやむを得ないといえる特段の事情はないことから、請求人は、民法第704条に規定する悪意の受益者と推定され、また、推定を覆滅する立証をしたとは認められないことから、過払金には過払利息を付加して計算すべきであり、このことは請求人が主張する平成14年10月1日以降であっても変わらない。
      • C 以上を前提に過払金返還請求権の金額を算定すると、上記1の(4)のロのとおり○○○○円となり、この金額から本件和解金を差し引いた○○○○円が、請求人が本件和解による債務の免除によって受けた利益の額である。
         なお、本件滞納者は請求人に対し、上記のとおり過払金返還請求権を有するところ、当該金額に比して、本件和解金は、早期かつ円満確実に解決を図るとした互譲をもってしても低額であり、合理性を有していないのは明らかである。
  • ロ 請求人
     以下のとおり、請求人は、本件和解によって、徴収法第39条に規定する債務の免除を受けたとはいえない。
    • (イ) 本件和解には徴収法第39条は適用されるべきではない
       徴収法第39条の立法趣旨及び民法第696条の「和解の確定効」からすれば、本件和解中に文言上「債務の免除」に該当する一条項が存在していても、和解契約全体として内容上の合理性が認められる場合には、徴収法第39条は適用されるべきではない。
       私法秩序を支えている基本法たる民法自身より自主的紛争解決機能を託されている和解契約(民法第695条、696条)につき、これを徴収法第39条に規定する債務の免除に該当するとして、その効力や履行結果を否認し、和解契約当事者である請求人に第二次納税義務を負担させることは、徴収法第39条に規定する第二次納税義務制度の趣旨を逸脱したものであり、殊に本件和解のような手続上も内容上も合理性を有する和解契約までも否認することは、私法秩序を混乱させるものとして違法・不当な処分である。
    • (ロ) 受けた利益の額の算定に誤りがあること
       仮に、請求人が徴収法第39条に規定する債務の免除を受けたといえる場合であっても、当該債務の免除によって受けた利益の金額算定方法には誤りがある。
      • A 原処分庁は、基本契約が終了しない限り過払金返還請求権の消滅時効は起算されない旨主張するが、取引の終了時を起算点とする最高裁判所平成21年1月22日第一小法廷判決・民集63巻1号247頁に反し失当である。請求人の立場にあっても、前後二個の貸付取引が成立・存在するためには、原則として二個の基本契約の成立が要求され、本件取引2においても、本件取引1の基本契約とは法律的同一性を欠く基本契約が締結されていたものであるが、本件取引2開始時の契約書が存在しないのは、借増し時に交わされた平成6年契約書の交付と従前契約書の破棄とが交換的に行われたからにすぎない。
         本件取引は、本件取引1と本件取引2との二つに分かれ、両取引を連続して充当計算できない結果、本件取引1の終了時(平成元年11月10日)から時効期間10年を経過し、本件取引1に係る過払金返還債務は時効により消滅している。
         本件滞納者が本件取引1の終了日において、従前は殆どが現金自動入出金機による○○○○円単位の返済であったが、本件取引1終了日には請求人店舗を訪れた上、通常の各回返済額であった○○○○円ないし○○○○円を大きく上回る残額の○○○○円を完済していることに照らせば、このとき、本件滞納者において、基本契約に基づく借入金債務につき利息制限法第1条第1項規定の利息の制限額を超える利息の弁済により過払金が発生した場合には弁済当時他の借入金債務が存在しなければ上記過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意(以下「過払金充当合意」という。)及び貸付取引のいずれも解消する意思が明確にあった場合といえる。また、最高裁判所平成20年1月18日第二小法廷判決・民集62巻1号28頁が事実上一個の貸付取引といえるか否かを区別すべき指標として挙げている具体的事情へ本件取引を当てはめると、1本件取引1の期間は2年4か月強であるが、2その直後の取引断絶期間は1年11か月弱と長期であること、3本件取引1に係る契約書の返還について、Lや契約書の規定から、本件取引1終了時にあっては、当時の契約書の返還に代え、本件滞納者の「都合」「要望」により一旦保管されたが、保管期限(6か月)後に「破棄」されるか、本件滞納者の指示により「返還」されていること、4本件カードの失効手続については、契約書の規定によれば、本件滞納者からの希望に基づいた、本件取引1当時の基本契約終了に伴って、本件カードも失効させられていること、5本件取引1における最終弁済から本件取引2に係る基本契約締結までの接触状況及び6基本契約が締結されるに至った経緯については、請求人において、厳格な本人確認や与信調査を実施してきており、本件取引2開始時の融資額や与信枠設定・変更の経過に鑑みれば、本件滞納者に具体的資金需要があり自発的に借入申込みが行われたものであること、7各基本契約間における利率等「契約条件の異同」については、本件取引2の開始時にあって、年利、毎月の最低返済額等、契約条件がある程度変更されていることから、本件取引1と本件取引2は、事実上も別個の貸付取引である。
      • B 請求人は、本件滞納者に対し、貸金業法第43条第1項で交付が義務付けられている適法な書面を交付したものと理解・認識していたのだから、本件取引2の当初から善意の受益者であり、過払利息を付加すべきではない。
         仮に、請求人が本件取引2の当初から悪意の受益者と推定されたとしても、遅くとも、平成14年10月1日以降は貸金業法第17条第1項所定の書面を改訂し、同書面に確定的な返済期間、返済回数及び各回の返済金額の記載に準じる記載をしていたことからすれば、請求人は、同日以降、善意の受益者となり、同日以降に発生した過払利息を付加すべきではない。
      • C 上記Bのとおり請求人が善意の受益者であるとすると、本件取引1の過払金債務が時効消滅した後の残債務は、○○○○円余りとなり、徴収法第39条に規定する「債務の免除」があったかという視点から見れば、せいぜい○○○○円余のカットがあったに過ぎず、少なくとも同法同条で第二次納税義務の成立要件として挙げられている「無償又は著しく低い額の対価による譲渡」とは同列の、財産流出が懸念されるような「債務の免除」は存在しない。

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4 判断

(1) 争点1(本件滞納国税に係る徴収権は、時効により消滅しているか否か。)について

  • イ 法令解釈
     国税の徴収権について、通則法第72条第1項は、その国税の法定納期限から5年間行使しないことによって、時効により消滅する旨、同条第3項は、国税の徴収権の時効については、同法第7章第2節に別段の定めがあるものを除き、民法の規定を準用するとそれぞれ規定し、民法第147条は、時効は差押え又は承認によって中断する旨規定しているところ、徴収法に規定する差押えは民法第147条第2号の差押えに該当し、同条第3号の承認には、国税の額の一部納付、納付委託の申出及び債務の承認など国税の納付義務の存在を前提として行われるものが含まれると解される。
  • ロ 認定事実
     原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
    • (イ) 原処分庁は、本件滞納者の納付すべき国税について、納期限までに完納されなかったことから、別表1の「督促年月日」欄記載の日に、それぞれ督促状を送付し、その納付を督促した。
    • (ロ) 本件滞納者は、平成6年7月1日に、別表1の順号1の国税について、その本税の一部を納付した。
    • (ハ) 原処分庁は、平成11年5月18日付で、同日現在における本件滞納国税(ただし、金額は本件告知処分時の金額と相違する。)を徴収するため、本件滞納者が賃借していた店舗(以下「本件店舗」という。)に係る差入保証金の返還請求権を差し押さえ(以下「本件差押え」という。)、同月19日に本件店舗の貸主である第三債務者に債権差押通知書を送達した。
    • (ニ) 原処分庁は、本件滞納者が平成22年4月30日に本件店舗を明け渡したものの、上記(ハ)の差入保証金は同日にその全額が賃料債権等に充当されたことから、本件差押えによる滞納国税の徴収を断念した。
    • (ホ) 原処分庁は、平成25年7月29日、本件滞納者から、同日現在における本件滞納国税(ただし、金額は本件告知処分時の金額と相違する。)の存在を認める旨記載した書面(以下「債務承認書」という。)の提出を受けた。
  • ハ 当てはめ
     本件滞納国税の徴収権は、以下のとおり時効中断を繰り返しており、本件告知処分時において時効消滅していないと認められる。
    • (イ) 上記ロの(イ)のとおり、本件滞納国税の徴収権の消滅時効は、通則法第73条第1項柱書き及び同項第4号の規定により、それぞれ、別表1の「法定納期限」欄記載の日から5年を経過しない「督促年月日」欄記載の日に督促状が発せられ(ただし、金額は本件告知処分時の金額と相違する。)、督促されたことによって中断し、各督促状を発した日から起算して10日を経過した日の翌日から更に時効の進行が開始した。
    • (ロ) 上記ロの(ロ)のとおり、別表1の順号1の国税については、上記(イ)の日から5年を経過しない平成6年7月1日に本税の一部が納付されたところ、上記イのとおり、通則法第72条第3項が準用する民法第147条第3号の承認には、税金の一部納付が含まれることから、これにより徴収権の消滅時効が中断した。そして、通則法第72条第3項が準用する民法第157条第1項の規定により、当該納付の日の翌日から更に時効の進行が開始した。
    • (ハ) 上記ロの(ハ)のとおり、本件滞納国税(ただし、金額は本件告知処分時の金額と相違する。)のうち、別表1の順号1の国税については、上記(ロ)のとおり一部納付した日の翌日から、別表1の順号2ないし11の国税については、上記(イ)のとおり督促状を発した日から起算して10日を経過した日の翌日から5年を経過しない平成11年5月18日に本件差押えが行われ、通則法第72条第3項が準用する民法第147条第2号の規定により、債権差押通知書が第三債務者へ送達された平成11年5月19日に本件滞納国税の徴収権の消滅時効は中断し、上記ロの(ニ)のとおり本件店舗の明渡日である平成22年4月30日の翌日から更に時効の進行が開始した。
    • (ニ) 上記ロの(ホ)のとおり、本件滞納国税(ただし、金額は本件告知処分時の金額と相違する。)について、上記(ハ)の平成22年4月30日から5年を経過しない平成25年7月29日、原処分庁が本件滞納者から債務承認書の提出を受けたところ、上記イのとおり、当該債務承認書は、通則法第72条第3項が準用する民法第147条第3号に規定する承認に含まれることから、同日、時効中断の効力が生じ、通則法第72条第3項が準用する民法第157条第1項により、当該承認の日の翌日から更に時効の進行が開始した。
    • (ホ) そして、本件告知処分は、上記(ニ)の平成25年7月29日から5年を経過しない平成27年11月9日に行われていることから、当該処分時において、本件滞納国税に係る徴収権の時効は完成していない。
  • ニ 小括
     以上のとおり、本件滞納国税に係る徴収権は、本件告知処分時において消滅しておらず、この点に関する請求人の主張には理由がない。

(2) 争点2(第二次納税義務に係る徴収権は、主たる納税義務と別個独立して時効により消滅しているか否か。)について

徴収法に規定する第二次納税義務は、確定した主たる納税義務につき本来の納税義務者の財産に対する滞納処分を執行してもなお徴収すべき額に不足すると認められる場合に、本来の納税義務者と同一の納税上の責任を負わせても公平を失しないような特別な関係にある第三者を本来の納税義務者に準ずる者とみて、これに主たる納税義務についての履行責任を補充的に負わせるものにほかならず、この意味において、第二次納税義務の納付告知は、確定した主たる納税義務の徴収手続上の一処分としての性格を有するものというべきである。
 このように、上記納付告知により具体的に発生する第二次納税義務は、既に確定している主たる納税義務者の納税義務を補完するものにすぎず、これと別個独立に発生するものではない。そして、上記義務は、主たる納税義務が発生し存続する限り、必要に応じいつでも課せられる可能性を有するものであって、上記納付告知は、ただその義務の発生を知らしめる徴収のための処分にほかならないと解するのが相当である(最高裁平成6年12月6日第三小法廷判決・民集48巻8号1451頁参照)。
 したがって、第二次納税義務は、主たる納税義務が発生し存続する限り、必要に応じいつでも課せられる可能性を有するものであるから、第二次納税義務者に係る徴収権が主たる納税義務に係る徴収権と別個独立して時効により消滅することはない。
 請求人は、第二次納税義務者は、主たる納税義務者と別個に法律上の利益を有する者に該当するから、第二次納税義務者に対しても、時効中断措置を講じなければ、第二次納税義務は、主たる納税義務とは別個に独立して消滅時効にかかる旨主張するが、上記のとおり請求人の主張は採用できない。

(3) 争点3(請求人は、本件和解によって、徴収法第39条に規定する債務の免除を受けたといえるか否か。また、受けたといえる場合、請求人が受けた利益の額はいくらか。)について

  • イ 法令解釈等
    • (イ) 徴収法第39条について
      • A 徴収法第39条に規定する第二次納税義務の制度は、本来の納税義務者が納付すべき国税の法定納期限の1年前の日以後に、その財産について無償又は著しく低額の対価による譲渡、債務の免除その他第三者に利益を与える処分をしたことにより、その本来の納税義務者の財産に対して滞納処分を執行してもなお徴収すべき額に不足すると認められる場合に、これらの処分により権利を取得し、又は義務を免れた第三者に対して、当該国税の納付義務を補充的に負わせることによって、これらの処分により受けた利益が現に存する限度において、当該国税の徴収確保を図ろうとする制度であると解される。
      • B 国税徴収法基本通達第39条関係の4は、徴収法第39条に規定する「債務の免除」には、民法第519条による(すなわち単独行為としての)債務免除のほか、契約による免除も含まれる旨定めているが、それらが上記のような徴収法第39条の制度趣旨に合致するといえるだけの実質を有するものである限り、法形式により取扱いに差異を設けるべき理由はないから、この定めは当審判所においても相当と認められる。
      • C 徴収法第39条は、「これらの処分により受けた利益が現に存する限度において、その滞納に係る国税の第二次納税義務を負う」と規定していることから、受けた利益の額は処分時において算定することとなる。ただし、上記Aに記載する処分に停止条件が付されている場合、停止条件付法律行為は、停止条件が成就した時からその効力を生ずる(民法第127条第1項)から、受けた利益の額を算定すべき処分時とは、処分の効力が生じた停止条件の成就時であると解される。
    • (ロ) 過払金について
      • A 同一の貸主と借主との間で基本契約に基づき継続的に貸付けとその弁済が繰り返される金銭消費貸借取引において、借主がそのうちの一つの借入金債務につき利息制限法所定の制限を超える利息を任意に支払い、この制限超過部分を元本に充当してもなお過払金が存する場合、この過払金は、当事者間に充当に関する特約が存するなど特段の事情のない限り、弁済当時存在する他の借入金債務に充当されるものであり(最高裁平成15年7月18日第二小法廷判決・民集57巻7号895頁参照)、弁済によって過払金が発生しても、その当時他の借入金債務が存在しなかった場合には、上記過払金は、その後に発生した新たな借入金債務に当然に充当されるものということはできないが、この場合においても、少なくとも、当事者間に過払金充当合意が存在するときは、その合意に従った充当がされるものと解するのが相当である(最高裁平成19年6月7日第一小法廷判決・民集61巻4号1537頁参照)。
      • B そして、過払金充当合意を含む基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引においては、同取引により発生した過払金返還請求権の消滅時効は、過払金返還請求権の行使について上記内容と異なる合意が存在するなど特段の事情がない限り、同取引が終了した時から進行するものと解するのが相当である(前掲最高裁平成21年1月22日判決)。
      • C 貸金業者が利息制限法所定の制限超過部分の利息を債務の弁済として受領したが、その受領につき貸金業法第43条第1項の適用が認められない場合には、当該貸金業者は、同項の適用があるとの認識を有しており、かつ、そのような認識を有するに至ったことについてやむを得ないといえる特段の事情があるときでない限り、法律上の原因がないことを知りながら過払金を取得した者、すなわち民法第704条の「悪意の受益者」であると推定されるものと解するのが相当である(最高裁平成19年7月13日第二小法廷判決・民集61巻5号1980頁参照)。
  • ロ 認定事実
     請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
    • (イ) 本件取引1について
      • A 上記1の(3)のハの(イ)のとおり、昭和62年7月6日に請求人と本件滞納者の間で、本件基本契約が締結されているところ、本件基本契約に係る契約書(以下「本件基本契約書」という。)について、請求人及び原処分庁のいずれからも提出はないが、請求人から提出されたLと題する書面(以下「本件L」という。)は、平成元年11月10日以降の取引に係るものであるところ、本件Lの取引区分欄には、平成元年11月10日付で「R1」との記載があり、「R2」とは、顧客の契約書を請求人が預かることを示すものと認められる。このことからすれば、本件取引1の開始日に請求人と本件滞納者との間で本件基本契約書が取り交わされ、本件取引1の最終弁済後も、請求人が本件基本契約書を預かったまま本件滞納者に返還しなかったものと認められる。
      • B 請求人が、本件取引1の最終弁済後、本件滞納者から本件カードの返却を受けたり、本件カードの失効手続を行ったりした形跡は認められないことから、本件取引1の最終弁済後においても、本件滞納者は、本件カードを保管していたものと認められる。
      • C 上記A及びBからすれば、請求人及び本件滞納者は、本件取引1の最終弁済後も、将来における取引の再開を見込んでいたものと認められる。
    • (ロ) 本件取引2について
      • A 本件滞納者は、本件取引2の開始日である平成3年9月30日に請求人から○○○○円を借り入れているところ、同日付の基本契約書について、請求人及び原処分庁のいずれからも提出はない。
      • B 請求人が作成するLの取引区分欄の「R3」とは、新たな契約書を取り交わしたことを示すもの、「R4」とは、前の取引の完済後に新たな貸付がされたことを示すものと認められるところ、本件Lにおいて、平成6年契約書が取り交わされた平成6年8月10日には「R3」の記載がある一方、本件取引2の開始日である平成3年9月30日には「R4」及び「R5」の記載があるのみで、「R3」の記載はない。
      • C 上記1の(3)のハの(ニ)のとおり、平成6年○○書の請求人記入欄に従前の契約書が破棄されたことを示す記載があるが、その記載からは、いつの時点で、どの契約書が破棄されたのか不明であるところ、上記(イ)のAのとおり、本件Lの取引区分欄には平成元年11月10日付で「R2」との記載があり、その後、上記平成6年○○書を作成した平成6年8月10日までに、「R3」の記載がないことからすれば、上記の破棄された従前の契約書は本件基本契約書であったと認められる。
      • D 本件取引2の開始に際し、請求人が与信審査を行った形跡は認められない。
      • E 以上のことから、本件取引2の開始日において、基本契約が締結され、契約書が取り交わされた事実は認められない。
    • (ハ) 本件和解について
      •  上記1の(3)のニのとおり、本件和解書は、和解契約(民法第695条)の成立を証するものであり、本件和解は、本件滞納者が本件和解金の支払を受けることを停止条件として、請求人に対して本件取引に関するその余の過払金返還請求権及びその他の一切の請求権を放棄することを約したものであることが認められ、また、請求人が、本件和解書に定められた本件和解金の支払を完了したことが認められる。そして、その他、当審判所に提出された全証拠によっても、両者の間で本件和解の合意内容と異なる合意がされた事実は認められない。
  • ハ 当てはめ
    • (イ) 徴収法第39条の債務の免除
       上記ロの(ハ)のとおり、本件和解は、本件滞納者が本件和解金の支払を受けることを停止条件として、請求人が負う本件取引に関する過払金返還債務を免除する旨の合意を含む契約であり、このような契約による免除も徴収法第39条の債務の免除に含まれることは上記イの(イ)のとおりであるところ、本件和解金の支払が履行され、下記(ロ)のとおり本件和解により請求人が実際に免除を受けた金額も確定できること、その他、両者の間で本件和解の合意内容と異なる合意がされた事実が認められないことからすれば、本件和解による債務免除は、債務免除としての実質を有するものと評価できるものであり、徴収法第39条に規定する「債務の免除」に該当する。
       したがって、請求人は、本件和解によって、徴収法第39条の規定する「債務の免除」を受けたと認めるのが相当である。
    • (ロ) 請求人が受けた利益の額
       徴収法第39条は、「これらの処分により受けた利益」と規定されているところ、本件和解は、本件和解金の支払の履行を停止条件とするものであり、本件和解金が支払われた平成23年5月2日にその効力を生じるから、請求人は、下記Dのとおり同日現在で負っていた過払金返還債務の金額○○○○円の債務免除を受けたと認められ、当該金額が、請求人が受けた利益の額となる。
      • A 本件取引の個数
         上記ロの(イ)及び(ロ)のとおり、請求人と本件滞納者は、本件基本契約に基づき本件取引1を開始し、本件基本契約書を取り交わしていると認められるところ、本件取引1の最終弁済後も、将来における取引再開を見込んでいたこと、本件取引2の開始に当たり、新たな基本契約が締結され、契約書が取り交わされた事実は認められないことからすれば、本件取引は、その全体が本件基本契約に基づく一個の貸付取引であると認めるのが相当である。
      • B 過払金充当合意の存在
         上記Aのとおり、本件取引は、一個の基本契約に基づくものであり、本件基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引は、上記1の(3)のハの(イ)及び(ロ)のとおり、各貸付について個別的対応関係をもって行われるものではなく、借入金の全体に対して行われるものであることからすれば、本件基本契約は、過払金充当合意が存在するものと認められる。
      • C 悪意の受益者
         請求人には、貸金業法第43条第1項の規定の適用があるとの認識を有するに至ったことについてやむを得ないといえる特段の事情の存在を認めるに足りる証拠はないから、本件取引全体につき、請求人は、民法第704条に規定する悪意の受益者であると認められる。
      • D 過払金返還請求権の額
         上記AないしCを前提に、本件取引について利息制限法所定の制限利率による引き直し計算をすると、別表4の平成22年8月11日付の「過払金」欄及び「過払利息残額」欄記載のとおり、本件滞納者には、少なくとも本件和解時において、過払金の額○○○○円と過払利息の額○○○○円との合計○○○○円の過払金返還請求権が発生していたと認められる。
         そして、上記1の(3)のニの(ロ)のとおり、請求人が、本件滞納者に対し、平成22年11月29日に○○○○円、平成23年5月2日に○○○○円を支払い、本件和解金の支払を完了したところ、本件和解金が本件取引で生じた請求人の本件滞納者に対する過払金返還債務に係るものであることからすれば、上記の各日に本件滞納者が過払金の返還を受けたとみるのが相当であり、上記の各日における金員を、まず、過払利息に充当し、次いで過払金に充当すると、平成23年5月2日現在における過払金返還請求権の金額は、別表4の「過払金」欄及び「過払利息残額」欄記載の金額を合計した○○○○円となる。
         なお、原処分庁は、平成23年5月2日現在における過払金返還請求権の金額を○○○○円と算定しているところ、原処分庁の当該金額の計算に当たっては、1平成元年7月11日の取引に係る利息及び遅延利息の計算の基となる日数及び遅延日数に誤りが認められること、2閏年である昭和63年、平成4年及び平成8年の取引に係る利息及び遅延利息を計算するに当たっては、1年を366日として日割り計算するのが相当であること、3上記のとおり、本件和解金については、分割して支払った日に本件滞納者が過払金の返還を受けたとみて計算するのが相当であると認められる。
    • (ハ) 小括
       以上のとおり、請求人は、本件和解によって、徴収法第39条に規定する債務の免除を受けたといえ、これにより請求人が受けた利益の金額は、○○○○円である。
  • ニ 請求人の主張について
    • (イ) 請求人は、和解契約全体として手続上も内容上も合理性を有する場合には、徴収法第39条に規定する債務の免除があったとはいえない旨主張する。
       しかしながら、徴収法第39条は、文言上「債務の免除」と規定するのみで他の要件を付加していないのであり、上記イの(イ)のAの徴収法第39条の第二次納税義務の制度趣旨からすれば、第三者に利益を与える典型的な法律行為そのものである債務の免除に当たりさえすれば、同条に規定する債務の免除に当たるというべきであり、請求人の主張は採用できない。
    • (ロ) 請求人は、平成6年契約書の交付と従前契約書の破棄とが交換的に行われたことを根拠として、本件取引2においても、基本契約が締結されたこと、本件滞納者が弁済により本件取引1を終了させた時に、過払金充当合意及び貸付取引のいずれも解消する意思が本件滞納者に明確にあったことや前掲最高裁判所平成20年1月18日判決が掲げる別個の基本契約に基づく貸付取引が事実上一連の取引と評価されるための特段の事情を挙げ、本件取引1と本件取引2は別個の貸付取引であり、本件取引1の過払金返還請求権については、本件和解当時、既に貸付取引終了日から10年間が経過しており、同和解締結前に時効により消滅している旨主張する。
       確かに、本件取引1における最終の弁済から本件取引2の最初の貸付までの期間は約1年11か月であり、本件取引1の期間が約2年4か月であること、本件取引1と本件取引2では、約定利率の変更がされるなど請求人の主張に沿った事実も認められる。
       しかしながら、本件取引2の開始に際し基本契約が締結された事実を認めることはできないこと(上記ロの(ロ))、また、本件滞納者の本件取引1における最終の弁済金額は○○○○円にすぎず、それまでの弁済金額と比べても多額とはいえないこと(上記1の(3)のハの(ハ))に加え、本件滞納者は、本件カードを保管しており、将来において取引を再開し、新たな借入金債務の発生が見込まれる状態にあったこと(上記ロの(イ)のB及びC)に照らせば、本件取引1の最終の弁済をもって、本件滞納者に過払金充当合意及び貸付取引のいずれも解消する意思が明確にあったとまで評価することはできず、さらに、本件取引は、その全体が本件基本契約に基づく一個の連続した貸付取引であり(上記ハの(ロ)のA)、第1の基本契約に基づく取引と第2の基本契約に基づく取引とが事実上一個の貸付取引であると評価できるか否かを示した上記判決(前掲最高裁判所平成20年1月18日判決)とは事案を異にする。
       そうすると、一個の貸付取引である本件取引の終了日は、本件取引の最終弁済日である平成21年5月18日であり、過払金返還請求権の消滅時効は、同日から進行する。
       したがって、請求人の主張は採用できない。
    • (ハ) 請求人は、善意の受益者であり、過払金に過払利息を付加すべきではない旨主張し、当審判所に契約書のサンプルや再現印刷したとする「○○」と題する書面等を提出するが、実際に請求人が本件滞納者にどのような書面を交付していたかは明らかでないことから、請求人が悪意の受益者であるとの推定を覆す特段の事情があると認めることはできない。
       したがって、請求人の主張は採用できない。

(4) 徴収法第39条規定の他の課税要件について

別表1によれば、本件和解による債務の免除は、本件滞納国税の法定納期限の1年前の日以後になされたものであることが認められる。また、原処分庁が請求人に対して納付通知書を発した平成27年11月9日現在、原処分庁が本件滞納者の国税につき滞納処分を執行してもなおその徴収すべき額に不足すると認められ、その不足すると認められることが本件滞納者による債務の免除に起因するものと認められる。さらに、本件告知処分がなされるまでに上記債務の免除による利益が消失した事情は認められないことから、請求人は、本件告知処分時において、その受けた利益が現に存する○○○○円を限度の額として、第二次納税義務を負う。

(5) 原処分の適法性について

上記(4)のとおり、債務免除により受けた利益が現に存する額は○○○○円であると認められるところ、原処分のその他の部分について請求人は争わず、その他、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
 したがって、原処分は、納付すべき限度の額につき、○○○○円を超える部分は違法となる。

(6) 結論

よって、原処分の一部を取り消すこととする。

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