(平成30年1月11日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、原処分庁が、審査請求人(以下「請求人」という。)のキャスト及びスタッフに支払った金員は給与等に該当し、売上金員の一部を請求人の代表者(以下「本件代表者」という。)が費消したことは同人に対する給与等に該当するとして源泉徴収に係る所得税及び復興特別所得税(以下「源泉所得税等」という。)の納税告知処分等を行い、また、キャスト等に簿外で支払った金員相当額を課税標準額から除外したとして消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)に係る重加算税の賦課決定処分を行い、さらに、キャスト等に支払った金員は課税仕入れに該当しないとして消費税等に係る更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の通知処分を行ったのに対し、請求人が、キャスト等に支払った金員は、報酬料金に該当し、課税仕入れに該当するから消費税額等は生じない、また、売上金員の一部を本件代表者が費消した事実はないなどとして、原処分の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 関係法令の要旨

関係法令の要旨は、別紙3のとおりである。
 なお、別紙3で定義した略語については、以下、本文でも使用する。

(3) 基礎事実

当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。

  • イ 請求人は、風営法に基づく営業許可を受けて、d市において「M」との名称のキャバクラ店(以下「本件店舗1」という。)を、a市において「N」との名称のキャバクラ店(以下「本件店舗2」といい、本件店舗1と併せて「本件各店舗」という。)を営んでいた。
  • ロ 本件各店舗において、客に対し、遊興又は飲食の接待(以下「接客」という。)に従事するキャストには、接客業務の対価を月払で受け取るキャスト(以下「本件月払キャスト」という。)及び日払で受け取るキャスト(以下「本件日払キャスト」といい、本件月払キャストと併せて「本件各キャスト」という。)がいる。
     請求人は、本件各キャストに接客業務の対価として支給すべき額を算定し、本件月払キャストに対しては月末に、本件日払キャストに対しては日々の営業時間終了後に、それぞれ金員を支給していた(以下、請求人が本件月払キャストに支給すべき額を「本件月払キャスト支給額」、本件日払キャストに支給すべき額を「本件日払キャスト支給額」といい、これらを併せて「本件各キャスト支給額」という。)。
  • ハ 本件各店舗においては、本件各キャストのほかに、派遣業者所属のキャストが接客に従事しており、請求人は、当該キャストの所属する派遣業者に対して、当該キャストを通じて派遣代として金員を支払っていた(以下、請求人が当該キャストを通じて派遣業者に支払った額を「本件派遣業者支払額」という。)。
  • ニ 本件各店舗には、厨房やホール等で接客業務以外の業務に従事するスタッフ(以下「本件スタッフ」という。)がおり、請求人は、本件スタッフに役務提供の対価として支給すべき額を算定し、月末に金員を支給していた(以下、請求人が本件スタッフに支給すべき額を「本件スタッフ支給額」という。)。
  • ホ 本件店舗1には、勤務条件等に関する「Q」と題する書類(以下「本件キャスト関係書類」という。)並びに「R」と題する書類及び「S」と題する書類(以下、「R」と題する書類と併せて「本件スタッフ関係書類」という。)が保管されていた。
  • ヘ 請求人は、平成26年3月3日以降、本件各店舗における売上金額について、次のとおり前払額及び日払額を売上金額から差し引いて計上する方法により経理処理をした(以下、平成26年3月3日を「経理処理変更日」という。)。
    • (イ) 請求人は、本件月払キャスト及び本件スタッフから前払金の申出があった場合に支払った前払金の額(以下、請求人が本件月払キャストに支払った前払金の額を「本件月払キャスト前払額」といい、本件スタッフに支払った前払金の額を「本件スタッフ前払額」という。)、本件日払キャスト支給額及び本件派遣業者支払額(以下、本件月払キャスト前払額、本件スタッフ前払額及び本件日払キャスト支給額と併せて「本件日払額」という。)をレジに入力してオーダー伝票を作成していた。
    • (ロ) 請求人は、本件各店舗において客から直接受け取った飲食料金(クレジットカード利用分を含む。)について、当該料金からオーダー伝票の本件日払額を差し引いた額を売上金額とする現計表を作成していた。また、当該現計表の売上金額からクレジットカード利用分の売上金額を差し引き、残額の現金分の売上金額を総勘定元帳の売上高勘定に計上していた。
  • ト 請求人は、本件店舗2における平成26年10月5日の現金売上額147,720円を総勘定元帳の売上高勘定に計上しなかった。また、請求人は、同日、上記現金売上額に係る現金から、本件月払キャスト前払額10,000円、本件日払キャスト支給額15,600円及び本件派遣業者支払額35,100円を支払った。

(4) 審査請求に至る経緯

  • イ 源泉所得税等
    • (イ) 請求人は、平成26年3月から平成27年7月までの各月分(以下「本件各月分」という。)の本件月払キャスト支給額(本件月払キャスト前払額を除く。)及び本件スタッフ支給額(本件スタッフ前払額を除く。)に対する源泉所得税等について、給与所得及び退職所得等の所得税徴収高計算書の「日雇労働者の賃金」欄にこれを記載して納付していたが、本件月払キャスト前払額、本件スタッフ前払額及び本件日払キャスト支給額に対する源泉所得税等について、源泉徴収をしていなかった。
       なお、請求人は、本件各キャスト及び本件スタッフから扶養控除等申告書の提出を受けていなかった。
    • (ロ) 原処分庁は、請求人に対して行った原処分庁所属の調査担当職員(以下「原処分調査担当職員」という。)による調査の結果に基づき、平成28年6月29日付で、本件各月分の本件各キャスト支給額及び本件スタッフ支給額が給与等に該当し、また、平成26年10月5日の現金売上額147,720円から本件月払キャスト前払額10,000円を差し引いた残額137,720円(以下「本件売上金員」という。)を本件代表者が費消したことは同人に対する給与等に該当するとして、別表1の「納税告知処分等」欄記載のとおり、本件各月分の源泉所得税等の各納税告知処分(以下「本件各納税告知処分」という。)並びに不納付加算税の各賦課決定処分(以下「本件不納付加算税各賦課決定処分」という。)及び重加算税の各賦課決定処分(以下「本件重加算税各賦課決定処分」といい、本件各納税告知処分及び本件不納付加算税各賦課決定処分と併せて「本件各納税告知処分等」という。)を行った。
       なお、本件各納税告知処分等における本件売上金員に係る本件代表者、本件月払キャスト及び本件日払キャストの源泉所得税等の額は、別表2のとおりである。
    • (ハ) 請求人は、本件各納税告知処分等を不服として、平成28年9月27日に再調査の請求をしたところ、再調査審理庁は、平成28年12月16日付で、別表1の「再調査決定」欄のとおり、一部を取り消す再調査決定をした。
    • (ニ) 請求人は、再調査決定を経た後の本件各納税告知処分等に不服があるとして、平成29年1月20日に審査請求をした。
  • ロ 消費税等
    • (イ) 請求人は、平成23年4月1日から平成24年3月31日までの課税期間(以下「平成24年3月課税期間」といい、他の課税期間についても同様に表記する。)、平成25年3月課税期間、平成26年3月課税期間及び平成27年3月課税期間(以下、これらを併せて「本件各課税期間」という。)の消費税等の各確定申告書に別表3の「確定申告」欄のとおり記載して、いずれも法定申告期限までに申告した。
    • (ロ) 請求人は、原処分調査担当職員の調査を受け、平成26年3月課税期間及び平成27年3月課税期間の消費税等の各修正申告書に、別表3の「修正申告」欄のとおり記載して、いずれも平成28年6月21日に提出した。
    • (ハ) 請求人は、平成28年6月27日、本件各課税期間の消費税等について、別表3の「更正の請求」欄のとおりとすべき旨の各更正の請求(以下「本件各更正の請求」という。)をした。
    • (ニ) 原処分庁は、上記(ロ)の各修正申告書の提出に対し、平成28年11月30日付で、別表3の「賦課決定処分」欄記載のとおり、重加算税の各賦課決定処分(以下「本件消費税等各賦課決定処分」という。)をした。
    • (ホ) 原処分庁は、本件各更正の請求に対し、平成29年1月24日付で、その更正をすべき理由がない旨の各通知処分(以下「本件各通知処分」という。)をした。
    • (ヘ) 請求人は、本件消費税等各賦課決定処分に不服があるとして、平成29年2月27日に審査請求をした。
    • (ト) 請求人は、本件各通知処分に不服があるとして、平成29年4月17日に審査請求をした。
  • ハ 併合審理
     当審判所は、通則法第104条《併合審理等》第1項の規定を適用して、上記イ(ニ)並びにロ(ヘ)及び(ト)の各審査請求を併合審理する。

トップに戻る

2 争点

  • (1) 原処分に係る調査手続には、原処分の取消事由となる違法があるか否か(争点1)。
  • (2) 本件各キャスト支給額及び本件スタッフ支給額は、所得税法第28条第1項に規定する給与等に該当するか否か(争点2)。
  • (3) 本件売上金員は、本件代表者に対する給与等に該当するか否か(争点3)。
  • (4) 本件各課税期間における本件各キャスト支給額は、消費税法第2条第1項第12号の課税仕入れに該当するか否か(争点4)。
  • (5) 請求人には、通則法第68条第1項及び第3項に規定する隠ぺい又は仮装の行為があるか否か(争点5)。

トップに戻る

3 争点についての主張

(1) 争点1(原処分に係る調査手続には、原処分の取消事由となる違法があるか否か。)について

  • イ 請求人の主張
     本件代表者は、原処分調査担当職員に対して、通則法第74条の11第2項に規定する調査結果の内容の説明を納税義務者に代えて関与税理士へ行うことについて、口頭で同意した事実はなく、「調査の終了の際の手続に関する同意書」も提出していないにもかかわらず、原処分調査担当職員は、本件代表者に対して、調査結果の内容の説明を実施しなかったから、原処分を取り消すべき調査手続の違法がある。
     また、本件各通知処分は、原処分庁内部で調べたという検討結果がほとんどなく、何を見て、どのように判断したのか不明であるにもかかわらずなされた処分であり、違法である。
  • ロ 原処分庁の主張
      原処分調査担当職員は、通則法第74条の11第2項に規定する調査結果の内容の説明を納税義務者に代えて関与税理士へ行うことについて、本件代表者から口頭で同意を得て、関与税理士に対し調査結果の内容の説明を行ったことから、原処分に係る調査手続に違法はない。
     仮に調査結果の内容の説明に瑕疵があったとしても、通則法の規定に反する手続が課税処分の取消事由となる旨を定めた規定はなく、調査手続の瑕疵は、原則として課税処分の効力に影響を及ぼすものではない。
     また、本件各通知処分は調査に基づいて適正になされた処分である。

(2) 争点2(本件各キャスト支給額及び本件スタッフ支給額は、所得税法第28条第1項に規定する給与等に該当するか否か。)について

  • イ 原処分庁の主張
     本件各キャスト支給額及び本件スタッフ支給額は、次の理由から、請求人との関係において、空間的、時間的な拘束を受け、継続的ないし断続的に労務を提供して、その対価として、金員を支給されていたと認められ、本件各キャスト及び本件スタッフと請求人との雇用契約又はこれに類する原因に基づき請求人の指揮命令に服して提供した労務の対価、すなわち給与等に該当する。
    • (イ) 本件月払キャスト
      • A 請求人は、採用時に、本件店舗1については、本件キャスト関係書類に基づき勤務条件等の説明を行い、本件店舗2については、口頭により本件キャスト関係書類に記載された内容と同様の説明を行うことにより、勤務条件等に同意した者を採用している。
      • B 本件月払キャストは、事前に本件各店舗の店長(以下「本件各店長」という。)との間で、出勤店舗、出勤日、入退店時刻等について取決めをし、原則として本件各店長からのシフトの指示に従って出勤している。
      • C 本件月払キャストは、入退店時刻をタイムカードで、また、接客時間(接客に従事した時間をいう。以下同じ。)を本件各店長によりパソコンで管理されている。
      • D 本件月払キャスト支給額は、客からの指名等の実績に基づく時給(本件各キャストの場合は50分当たりの支給額をいう。以下同じ。)に接客時間を乗じて計算した基本給に、各種手当の額を加算した金額である。
      • E 請求人は、本件月払キャストに対し、給与支払明細書を交付している。
      • F 入店して間もない本件月払キャストは、固定客がついていないため、勤務時間(入店から退店までの時間をいう。以下同じ。)に応じた支払金額を保証している。
    • (ロ) 本件日払キャスト
      • A 本件日払キャストは、請求人の本件月払キャストであった者のうち、勤務日数の関係などにより、本件月払キャストとして勤務することができなくなった者である。
      • B 本件日払キャストが、本件各店長に申し出ることによって出勤日が決まるが、キャストが不足している日は、本件各店長から出勤を依頼される場合がある。
      • C 入退店時刻は本件日払キャスト自身の判断によるが、本件各店長により勤務時間を管理されている。
      • D 本件日払キャスト支給額は、時給に接客時間を乗じた額に、各種手当の額を加算した金額である。
    • (ハ) 本件スタッフ
      • A 請求人は、採用時に、本件スタッフ関係書類に基づき勤務条件等の説明を行い、勤務条件等に同意した者を採用している。
      • B 本件スタッフは、入退店時刻をタイムカードにより管理されている。
      • C 本件スタッフ支給額は、時給(本件スタッフの場合は60分当たりの支給額をいう。以下同じ。)に勤務時間を乗じた基本給の額に、各種手当の額を加算した金額である。
      • D 請求人は、本件スタッフに対し、給与支払明細書を交付している。
      • E なお、請求人の主張する本件スタッフでない女性がどの者を指すのか明らかでないところ、原処分庁は、本件スタッフ関係書類、従業員名簿若しくは労働者名簿(いずれも風営法の規定に基づき作成されたもの)及び各人別の労働日数、総支給額などを記載した一覧表に基づき本件スタッフに係る原処分を行っている。
  • ロ 請求人の主張
     本件各キャスト支給額及び本件スタッフ支給額は、次の理由から、給与等に該当せず所得税法第27条第1項に規定する事業所得(報酬)に該当する。
    • (イ) 本件月払キャスト
      • A 本件キャスト関係書類、従業員名簿は、風営法により作成が義務付けられている書類であるが、本件キャスト関係書類は、本件各キャストごとに勤務条件等が異なるから、実態に即したものになっていない。また、給与支払明細書は文房具店で手に入りやすかった書類であり、これらの様式だけで、本件月払キャスト支給額を給与等と認定することはできない。
      • B 本件月払キャスト支給額は、基本セット(50分飲み放題5,000円)の半分の時間である25分の接客で0.5単位、指名で1単位とし、その単位数に応じた役務提供に対して金額を決定しているのであり、タイムカードは、出勤日数をチェックするためのもので、その時間に応じて金額を決めていない。
      • C 本件月払キャストは、自由意思により出勤日、入店時刻及び退店時刻が決まっており、働く曜日や時間があらかじめ決まっているわけではない。
      • D 本件月払キャストは、接客をしていない時間には待機、若しくは自分の顧客に来店の連絡をするのみで、接客以外の業務は行っていない。
      • E 本件月払キャストは、営業で必要な費用(携帯電話代金、ヘアメイク代、消耗品費)を自ら負担している。
      • F 本件月払キャストは、接客について拒否権がある。
      • G 本件月払キャストは、接客時間の管理を自ら行い、接客内容も自らの経験や知識に基づき行っており、請求人からの指示又は命令は一切ない。
      • H 本件月払キャストは、風営法により、営業場所及び営業時間の制約を受けている店舗での接客を業としているのであって、本件月払キャストの接客時間が店の営業日、営業時間によって制限され、場所が店舗内に限られることをもって時間的、空間的拘束があると認定することはできない。
    • (ロ) 本件日払キャスト
       本件日払キャストは、上記(イ)BからHまでについて本件月払キャストと同じ状況であり、金員の支払方法が日払か月払かの違いのみである。
       なお、本件日払キャスト支給額が、仮に給与等に該当するとしても、本件日払キャストはその都度の雇用であることから、そのすべてについて、日額表の丙欄を適用すべきである。
    • (ハ) 本件スタッフ
       原処分で本件スタッフと認定した者の中には、スタッフでない女性の名前がある。

(3) 争点3(本件売上金員は、本件代表者に対する給与等に該当するか否か。)について

  • イ 原処分庁の主張
     請求人の本件店舗2における平成26年10月5日以外の現金売上げは、日々、請求人の現金出納帳に記載されているにもかかわらず、本件売上金員は記載されていないところ、本件代表者は、本件売上金員を個人的に費消した旨申述したことから、本件代表者が取得した本件売上金員は、請求人から本件代表者に対する給与等の支払に該当するとして原処分を行った。しかしながら、本件店舗2において、平成26年10月5日には、本件月払キャスト前払額10,000円のほか、本件日払キャスト支給額及び本件派遣業者支払額の合計50,700円の支出があったことが認められる。そうすると、本件売上金員(137,720円)のうち87,020円の利得を本件代表者が得ていたと認められるから、本件代表者が取得した87,020円は、請求人から本件代表者に対する給与等の支払に該当する。
     なお、請求人が主張する本件代表者からの借入金と当該87,020円を相殺することを認める理由はない。
  • ロ 請求人の主張
     本件売上金員は、請求人の総勘定元帳の売上高勘定に記載されていないが、これを本件代表者が個人的に費消した事実はなく、単なる現金過不足であり、本件売上金員に関する本件代表者の申述は、原処分調査担当職員から「個人的に使ったことにしておいてくれ。」と言われて、安易に「それでいいです。」と同意してしまったもので、原処分調査担当職員の誘導によるものである。
     仮に本件売上金員を本件代表者が個人的に費消したとしても、本件代表者には請求人に対して貸付金があり、請求人の役員等の意思確認により、その返済に充てるべきものである。

(4) 争点4(本件各課税期間における本件各キャスト支給額は、消費税法第2条第1項第12号の課税仕入れに該当するか否か。)について

  • イ 原処分庁の主張
     本件各課税期間の本件各キャスト支給額は、争点2で主張するとおり、いずれも給与等に該当するため、課税仕入れに該当しない。
     経理処理変更日前の平成24年3月課税期間、平成25年3月課税期間、平成25年4月1日から平成26年2月28日までの期間において、雑給勘定で経理処理した本件月払キャスト支給額についても給与等に該当するのであるから、課税仕入れに該当しない。
  • ロ 請求人の主張
     本件各課税期間における本件各キャスト支給額は、争点2で主張するとおり、いずれも給与等に該当しないため、課税仕入れに該当する。
     特に、経理処理変更日前の平成24年3月課税期間、平成25年3月課税期間及び平成25年4月1日から平成26年2月28日までの期間において、雑給勘定で経理処理した本件月払キャスト支給額については、課税仕入れに含めていないところ、原処分庁が当該支給額を給与等に該当するとして源泉所得税等の納税告知処分を行っていないのであるから、課税仕入れを認めるべきである。

(5) 争点5(請求人には、通則法第68条第1項及び第3項に規定する隠ぺい又は仮装の行為があるか否か。)について

  • イ 源泉所得税等
    • (イ) 原処分庁の主張
      • A 請求人は、請求人の日々の売上金額から、本件日払額に相当する金額を差し引くことにより、その売上げの一部を帳簿書類に記録をせず、また、これにより生じた簿外の金員をもって、給与等に該当する本件月払キャスト前払額、本件スタッフ前払額及び本件日払キャスト支給額を支払っていたにもかかわらず、その支払事実を賃金台帳及び総勘定元帳に記載せず、当該給与等に対する源泉所得税等を源泉徴収していなかったことが認められる。
      • B 請求人は、本件店舗2の平成26年10月5日の現金売上額147,720円を請求人の総勘定元帳の売上高勘定に記載しないこと等により生じた簿外の金員をもって、上記(3)イのとおり、本件代表者に対して原処分である137,720円のうち87,020円を給与等として支払っていたにもかかわらず、その支払事実を賃金台帳及び総勘定元帳に記載せず、当該給与等に対する源泉所得税等を徴収していなかったことが認められる。
      • C 以上のことから、請求人が、本件月払キャスト前払額、本件スタッフ前払額及び本件日払キャスト支給額並びに本件代表者に対する87,020円の支払に当たって源泉徴収をせず、源泉徴収義務者としての納付義務を履行していないことは、通則法第68条第3項に規定する事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺい仮装行為に基づき源泉所得税等をその法定納期限までに納付しなかったときに該当する。
    • (ロ) 請求人の主張
      • A 請求人は、経理処理変更日以降、本件日払額に相当する金額を、その日の売上げに計上しない経理方法を採用していたが、この方法は、純額主義による経理方法であり、正しい方法であると認識していた。
      • B 本件日払額に相当する金額を売上げ、報酬及び派遣代のそれぞれにおいて両落としすることを当時の税理士には報告しており、請求人は、源泉所得税等は課税されているものと認識していたから、単なる課税漏れである。
      • C 当時の税理士への報告書の記載内容に誤りがあったとしても、直ちに隠ぺい又は仮装があることにはならない。
  • ロ 消費税等
    • (イ) 原処分庁の主張
      • A 請求人は、経理処理変更日以降、請求人の日々の売上金額から本件日払額に相当する金額を差し引くことにより、その売上金額の一部を帳簿書類に記録をせず、平成26年3月課税期間及び平成27年3月課税期間の課税標準額に含めていなかった。
          請求人が、経理処理変更日以降、これを変更することについて合理的な理由は見当たらず、平成26年4月1日から消費税等の率が8%に上がっていることからすると、請求人が売上げの経理処理を変更したことについて動機があると認められるから、経理処理変更日以降の請求人が行った経理処理を単なる誤りと評価することはできない。
      • B 請求人は、本件店舗2の平成26年10月5日の現金売上額147,720円を請求人の総勘定元帳の売上高勘定に記載せず、平成27年3月課税期間の課税標準額に含めていなかったことが認められるところ、上記イ(イ)Bのとおり、本件代表者が87,020円を個人的に費消したことからすると、本件店舗2の同日の現金売上額を意図的に帳簿書類に記録をしなかったものと認められる。
      • C 以上のことから、請求人が、本件日払額に相当する金額及び87,020円を意図的に帳簿書類に記録をしなかったことは、通則法第68条第1項に規定する事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺい仮装行為に基づき納税申告書を提出していたときに該当する。
    • (ロ) 請求人の主張
      • A 本来、本件日払額に相当する金額は課税仕入れに該当するものであり、これらの金額を相殺した後の金額を現金売上げとして総勘定元帳に記載したことは、経理処理を純額主義により行ったにすぎず、請求人には隠ぺい仮装の行為はない。
      • B 本件代表者が、本件売上金員に相当する額を個人的に費消した事実はないから、請求人には、隠ぺい仮装の行為は無い。

トップに戻る

4 当審判所の判断

(1) 争点1(原処分に係る調査手続には、原処分の取消事由となる違法があるか否か。)について

  • イ 法令解釈
     通則法は、第7章の2《国税の調査》において、国税の調査の際に必要とされる手続を規定しているが、同章の規定に反する手続が課税処分の取消事由となる旨を定めた規定はなく、また、調査手続に瑕疵があるというだけで納税者が本来支払うべき国税の支払義務を免れることは、租税公平主義の観点からも問題があると考えられることからすれば、調査手続の瑕疵は、原則として課税処分の効力に影響を及ぼすものではないと解すべきである。
     もっとも、通則法は、第24条《更正》の規定による更正処分、第25条《決定》の規定による決定処分、第26条《再更正》の規定による再更正処分等について、いずれも「調査により」行う旨規定しているから、課税処分が何らの調査なしに行われたような場合には、課税処分の取消事由となるところ、これには、調査を全く欠く場合のみならず、課税処分の基礎となる証拠資料の収集手続(以下「証拠収集手続」という。)に重大な違法があり、調査を全く欠くのに等しいとの評価を受ける場合も含まれるものと解され、ここにいう重大な違法とは、証拠収集手続が刑罰法規に触れ、公序良俗に反し又は社会通念上相当の限度を超えて濫用にわたるなどの場合をいうものと解するのが相当である。
     他方で、証拠収集手続自体に重大な違法がないのであれば、課税処分を調査により行うという要件は満たされているといえるから、仮に証拠収集手続に影響を及ぼさない他の手続に重大な違法があったとしても、課税処分の取消事由となるものではないと解するのが相当である。
  • ロ 検討
    • (イ) 請求人は、通則法第74条の11第2項に規定する調査結果の内容の説明を納税義務者に代えて関与税理士へ行うことについて同意をしていないにもかかわらず、本件代表者に対する調査結果の内容の説明がされなかったとして、原処分を取り消すべき調査手続の違法があると主張する。
       しかしながら、仮に調査結果の内容の説明がされなかったとしても、既に行われた証拠収集手続の適法性に影響を及ぼすものではないから、上記イのとおり、請求人の主張する事情は原処分の取消事由となるものではない。
       なお、当審判所の調査によっても、原処分の基礎となる証拠収集手続に重大な違法があるとは認められない。
    • (ロ) また、請求人は、本件各通知処分について、原処分庁内部における調査及び検討の結果が不明であり、違法であると主張するが、本件各通知処分は、本件各更正の請求における添付書類等の調査がされた上で行われており、何らの調査なしに行われたに等しいと評価を受ける場合に当たるとは認められない。
    • (ハ) したがって、原処分に係る調査手続について、原処分の取消事由となる違法はない。

(2) 争点2(本件各キャスト支給額及び本件スタッフ支給額は、所得税法第28条第1項に規定する給与等に該当するか否か。)について

  • イ 法令解釈
     業務の遂行ないし労務の提供から生ずる所得が所得税法上の事業所得と給与所得のいずれに該当するかを判断するに当たっては、租税負担の公平を図るため、所得を事業所得、給与所得等に分類し、その種類に応じた課税を定めている所得税法の趣旨、目的に照らし、当該業務ないし労務及び所得の具体的態様等に応じて、その法的性格を判断しなければならない。その場合の判断の一応の基準として両者を区分すると、事業所得とは、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得をいい、これに対し、給与所得とは雇用契約又はこれに類する原因に基づき使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使用者から受ける給付をいう。なお、給与所得については、とりわけ、給与支給者との関係において何らかの空間的、時間的な拘束を受け、継続的ないし断続的に労務又は役務の提供があり、その対価として支給されるものであるかどうか、いわゆる労務の提供等の従属性が重視されなければならない(最高裁昭和56年4月24日第二小法廷判決・民集35巻3号672頁参照)。
  • ロ 認定事実
     請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、次の事実が認められる。
    • (イ) 本件月払キャスト
      • A 本件キャスト関係書類には、要旨、次の内容の記載があり、本件代表者は、本件月払キャストを採用する面接の際に、採用を希望する者に対し、本件キャスト関係書類を提示し、又は口頭により、給与体系、勤務時間及び店舗規則等を説明し、それに同意した者から本件キャスト関係書類に署名押印を受け、又は口頭により了解を得た上で採用していた。
        • (A) 給料システムは、50分当たり、フリー(体験入店のキャスト)2,000円、アルバイト(週1日から4日出勤できるキャスト)2,500円、レギュラー(週5日出勤できるキャスト)3,000円であり、面接と査定により変動する。
        • (B) 給料日は、月1回、20日締めの末日払である。
        • (C) 日払は、原則として5,000円から10,000円の範囲で支給される。
        • (D) 雑費として支給額から10%相当額を控除する。送迎代は片道500円であり、ヘアメイク代は1回当たり1,000円であるが、ドレス代は無料である。
        • (E) 遅刻、早退及び当日欠勤の場合には本件代表者又は本件各店長に連絡する。無断欠勤の場合1日分のペナルティがある。
        • (F) 入店時刻は、午後8時、午後9時、午後10時及びその他に分かれている。
        • (G) 店を辞める場合には、1か月前に本件代表者又は本件各店長に話をする。話がない場合は給料の支給はない。
      • B 本件月払キャストの入店時刻及び退店時刻は、本件各店長又は本件スタッフがタイムカードに打刻し、本件各店長は、本件月払キャストの接客時間又は勤務時間、同伴、指名、延長及びドリンク代等、無断欠勤の有無、ヘアメイク代及び送迎代等をパソコンで管理して、本件代表者に報告していた。請求人は、これらのデータに基づき、本件月払キャストごとに賃金台帳を作成していた。
      • C 本件月払キャスト前払額は、本件各店長が営業時間終了後にレジの売上現金の中から支払い、オーダー伝票に支払を受けた本件月払キャストの源氏名と金額を記載していた。
      • D 請求人は、本件月払キャストに対し、同伴、指名及び延長等の実績に応じてポイントを付与し、毎月20日時点でのポイント数に応じてそれぞれの時給を決めていた。なお、本件月払キャストの時給は最低2,000円であり、採用後の1又は2か月間は固定客がいないことから時給を2,500円又は3,000円などとし、それ以降の支払時からポイントに連動した時給としていた。
      • E 経理処理変更日以降の請求人における本件月払キャスト支給額の計算等について、請求人は、毎月20日に締めて、本件月払キャストごとに、同日時点でのポイント数によって決めた時給に、前月21日から当月20日までの接客時間又は勤務時間を乗じて計算した基本給に、同伴料、指名料及びドリンク代等に応じた各種手当の額を加算して本件月払キャスト支給額を算定し、本件月払キャスト前払額を控除して、当該残額の10%相当額の雑費(源泉所得税等及び備品使用料)、ヘアメイク代、送迎代及びペナルティ等を差し引いた金額を、月末に現金で支払っていた。その際、給与支払明細書を交付していた。
    • (ロ) 本件日払キャスト
      • A 本件代表者は、本件各店舗で働く本件日払キャストを採用する面接の際に、採用を希望する者に対し、時給の金額、出勤形態、雑費の控除、当日無断欠勤に対するペナルティ、送迎代及びヘアメイク代の負担について口頭で説明し、それに同意した者を採用していた。
      • B 本件日払キャストの時給は本件代表者が決めており、その時給に接客時間を乗じて基本給の額が算定された。
      • C 本件各店長は、本件日払キャストの接客時間、同伴、指名、延長及びドリンク代等をパソコンに入力し、無断欠勤の有無、ヘアメイク代、送迎代及びペナルティ等と併せて管理していた。
      • D 経理処理変更日以降の本件日払キャスト支給額の計算等について、本件各店長は、日々の営業時間終了後、本件日払キャストごとに、決められた時給に接客時間を乗じて計算した基本給の額に、同伴料、指名料及びドリンク代等に応じた各種手当の額を加算して本件日払キャスト支給額を算定し、そこから当該金額の10%相当額の備品使用料、ヘアメイク代、送迎代及びペナルティ等を控除した残額を、レジの売上現金の中から支払い、支払を受けた本件日払キャストから領収証を受領していた。そして、オーダー伝票に、支払を受けた本件日払キャストの源氏名と支給金額を記載していた。
    • (ハ) 本件各キャストに共通する事項
      • A 本件各キャストは、毎週木曜日までに、翌週1週間の出勤予定日について、本件各店長に連絡する若しくは出勤予定表に○印を記すことにより申し出ているが、出勤する日を定めていない本件日払キャストは、本件代表者又は本件各店長に出勤できる日の前日又は当日に出勤できる旨をあらかじめ連絡していた。
         また、本件各キャストは、出勤予定日に出勤できなくなった場合、本件各店長に出勤できない旨を連絡していた。
         なお、本件各キャストは、出勤予定日以外の日に出勤を希望する場合、本件各店長に対し、出勤の可否を確認するが、本件各店長は、出勤を希望する日においてキャストの人数が足りている場合には出勤を断る場合があった。
      • B 本件各店長は、本件各キャストに対し、本件各キャストのローテーション及び客の状況等から判断して、指名客だけでなく指名客以外の客も対象として接客するよう指示を行っていた。なお、本件各キャストは、プライベートで関わっていること、又は、過去に指名を外されたこと等の理由により、本件各店長から指示された客の接客を断ることがあったが、その場合には他の客の接客を指示された。
      • C 本件各店舗では、接客マニュアルの作成及び本件各キャストを対象とした接客等の指導はないが、経験のない者には、本件各店長が灰皿の換え方、飲み物の作り方などの基本的なことをその都度教えていた。
      • D 本件各店舗の客は、飲食料金を本件各店舗に対して直接支払っており、また、本件各店舗においては、客に対する掛売りは原則として行われておらず、本件各キャストは客に対する売掛金を回収する責任を負っていなかった。
    • (ニ) 本件スタッフ
      • A 本件スタッフ関係書類には、本件スタッフが従事する業務内容や注意事項のほか、要旨、次のとおり記載があり、本件代表者は、本件スタッフを採用する面接の際に、採用を希望する者に対し、本件スタッフ関係書類を提示し、又は口頭により、給与体系、勤務時間及び店舗規則等を説明し、それに同意した者から本件スタッフ関係書類に署名押印を受け、又は口頭により了解を得た上で採用していた。
        • (A) 給料日は、月1回、20日締めの末日払である。
        • (B) 時給は1,000円からである。
        • (C) 遅刻、当日欠勤及び無断欠勤した場合、ペナルティがある。
        • (D) 入店時刻は、午後6時30分又は午後7時である。
        • (E) 店を辞める場合には、1か月前に本件代表者又は本件各店長に話をする。
      • B 請求人は、本件スタッフについて、毎月の労働日数、労働時間及び基本給を管理する賃金台帳を作成していた。
      • C 経理処理変更日以降の本件スタッフ支給額の計算等について、請求人は、本件スタッフごとに、決められた時給に勤務時間を乗じて計算した基本給の額に各種手当の額を加算して本件スタッフ支給額を算定し、本件スタッフ前払額を控除して、当該残額の10%相当額の雑費(源泉所得税等及び備品使用料)、ペナルティを差し引いた金額を月末に現金で支払い、その際、給与支払明細書を交付していた。
  • ハ 当てはめ
    • (イ) 本件各キャスト支給額
        上記ロ(イ)A及び(ロ)Aのとおり、本件各キャストは、請求人との間で、本件各店舗での接客業務に従事するに当たり、給与体系、勤務時間及び店舗規則などの勤務条件について合意がされていたこと、上記ロ(イ)B、(ロ)C及び(ハ)Aのとおり、本件代表者又は本件各店長が、当該合意に基づき、本件各キャストの出勤状況、接客時間又は勤務時間等を管理していたこと、上記ロ(ハ)Bのとおり、本件各キャストは、本件各店舗における顧客サービスの中で、自分の指名客以外の客に対しても本件各店長の指示により接客業務に従事していたことが認められる。
       そうすると、本件各キャストは、入店から退店までの時間は請求人の管理下にあったと認められ、請求人から空間的、時間的な拘束を受け、継続的ないし断続的に労務の提供をしていたものとみることができる。
       そして、上記ロ(イ)E及び(ロ)Dのとおり、本件各キャスト支給額は、時給に接客時間又は勤務時間を乗じて計算した基本給の額に、各種手当の額を加算して算定されていること、上記ロ(イ)Dのとおり、本件月払キャストについては、雇入れ年月日から少なくとも1又は2か月間は一定の時給が保証されていること、上記ロ(ハ)Dのとおり、本件各キャストは客に対する売掛金を回収する責任を負っていなかったことからすれば、本件各キャストが自己の計算と危険において独立して事業を営んでいたものとみることはできない。
       以上によれば、本件各キャストは、請求人との関係において、時間的、空間的な拘束を受けて継続的ないし断続的に労務の提供をし、その対価として本件各キャスト支給額の支給を受けていたということができる。
       したがって、本件各キャスト支給額は、本件各キャストと請求人との雇用契約に基づき、請求人の指揮命令に服して提供した労務の対価、すなわち所得税法第28条第1項に規定する給与等に該当する。
    • (ロ) 本件スタッフ支給額
        上記ロ(ニ)Aのとおり、本件スタッフは、請求人との間で、本件各店舗での業務に従事するに当たり、給与体系、勤務時間及び店舗規則などの勤務条件について合意がされていたこと、上記ロ(ニ)Bのとおり、請求人は、当該合意に基づき、本件スタッフの労働日数及び労働時間を管理していたことが認められる。
       そうすると、本件スタッフは、入店から退店までの時間は請求人の管理下にあったと認められ、請求人から空間的、時間的な拘束を受け、継続的ないし断続的に労務の提供をしていたものとみることができる。
       また、上記ロ(ニ)Cのとおり、本件スタッフ支給額は、時給に勤務時間を乗じて計算した基本給の額に、各種手当の額を加算して算定されていることが認められる。
       以上によれば、本件スタッフは、請求人との関係において、時間的、空間的な拘束を受けて継続的ないし断続的に労務の提供をし、その対価として本件スタッフ支給額を支給されていたということができる。
       したがって、本件スタッフ支給額は、本件スタッフと請求人との雇用契約に基づき、請求人の指揮命令に服して提供した労務の対価、すなわち所得税法第28条第1項に規定する給与等に該当する。
    • (ハ) 請求人の主張について
      • A 本件各キャスト支給額
         請求人は、本件各キャスト支給額が所得税法第27条第1項に規定する事業所得(報酬)に該当する理由として、1本件各キャスト支給額は、25分の接客で0.5単位、指名で1単位とし、その単位数に応じて金額を決定しているのであり、タイムカードで計算した時間に応じて支払金額を決めていないこと、2本件各キャストは、自らの自由な意思により出勤日、入退店時刻、接客時間及び接客内容等について決めており、接客の相手について拒否することもできるから、請求人からの指示又は命令は一切ないこと、3本件各キャストは、営業で必要な費用(携帯電話料金など)を自ら負担していること等を主張する。
         しかしながら、上記ロ(イ)D及び(ロ)Bのとおり、本件各キャスト支給額の算定は、時給が基本であるところ、その時給は、同伴、指名及び延長等の実績など請求人の売上げに対する貢献度が評価されて算定されたものと認められ、指名などの回数により支払額が変動するとしても、そのことによって本件各キャスト支給額が事業所得に当たるということはできない。
         また、上記ロ(イ)E、(ロ)D及び(ハ)Aのとおり、本件各キャストは、出勤予定日を本件各店長に申し出ることとされ、出勤予定日以外の出勤は断られることもあること、無断欠勤した場合にはペナルティとして本件各キャスト支給額の中から負担させられること、上記ロ(ハ)Bのとおり、本件各キャストは、本件各店長からの接客の指示に対し、その接客するよう指示された客を断ることができたとしてもプライベートな関わりがある客等に限られており、本件各キャスト自らが接客の相手を決めていたものではないこと、上記ロ(ハ)Cのとおり、本件各店長は、本件各キャストのうち経験のない者に対して灰皿の換え方や飲み物の作り方などの基本的なことをその都度教えていたことなどから、本件各キャストは、請求人からの指揮命令に服して労務の提供をしていたものといえる。
         そうすると、本件各キャストが営業のために必要な費用の一部を負担していることなどの請求人の主張する事情を考慮しても、上記認定を左右するに足りない。
         したがって、請求人の主張は採用することができない。
         なお、請求人は、仮に本件日払キャスト支給額が給与等に該当するとしても、本件日払キャストは、その都度の雇用であることから、そのすべてについて、日額表の丙欄を適用すべきである旨主張する。
         この点について、本件日払キャストは、扶養控除等申告書を提出していないところ、本件日払キャストの出勤期間が2か月以内の本件日払キャスト支給額は所得税法第185条第1項第3号に規定する日雇賃金の日額表の丙欄を適用すべきであるが、本件日払キャストの出勤期間が2か月を超える本件日払キャスト支給額は、同項第2号の規定に基づき日額表の乙欄を適用して算定することとなる。
      • B 本件スタッフ支給額
         請求人は、原処分において本件スタッフと認定した者の中にスタッフではない女性が含まれている旨主張する。
         しかしながら、請求人はその者について具体的に主張せず、当審判所の調査によってもそのような事実は確認できないから、請求人の主張を採用することはできない。

(3) 争点3(本件売上金員は、本件代表者に対する給与等に該当するか否か。)について

  • イ 法令解釈
     所得税法第28条第1項は、給与所得となる給与等について、「俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与」と包括的に規定しており、この趣旨からすると、給与等には、雇用契約に限らず、これに類する委任契約などの原因に基づき提供した労務等の対価として、あるいは労務等を提供する地位に基づいて支給されるものも含まれると解される。
     そして、法人の代表者等が法人経営の実権を把握し、法人を実質的に支配している事情がある場合には、法人の代表者等が、当該法人の事業活動を通じて得た利得は、給与支出の外形を有しない利得であっても、それが法人の資産から支出されたと認められる場合には、特段の事情がない限り、当該利得は、法人の代表者等がその地位及び権限に対して受けた給与等であると解するのが相当である。
  • ロ 認定事実
     請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、次の事実が認められる。
    • (イ) 本件店舗2において、平成26年10月5日には、本件月払キャスト前払額10,000円のほか、本件日払キャスト支給額15,600円及び本件派遣業者支払額35,100円の支出があり、残った現金は87,020円であった。
    • (ロ) 本件店舗2の店長は、閉店後、両替金及び当日の現金売上額から本件日払額を控除した後の現金並びに作成した金種表、レジから出力した現計表及びオーダー伝票を手提げ金庫に入れて同店舗1階の事務所に持参し、本件代表者の姉で経理を担当する者(以下「本件経理担当者」という。)に直接手渡していた。
       本件経理担当者は、これを受け取って事務所内に保管し、翌日、当該現金及び現計表等を確認した後、両替金35,000円を手提げ金庫に入れて事務所内所定の場所に置き、残額(現金売上げ)を同人が管理する巾着袋に入れ、各種支払日の前に金融機関に預け入れていた。
       本件代表者は、現計表等で売上げを確認するのみで、日々の現金管理を本件経理担当者に一任していたが、金融機関への預け入れや本件各店長への立替金の支払の際などに現金を持ち出していた。
       なお、本件店舗2の1階の事務所の鍵は、本件代表者、本件経理担当者及び本件各店長が所持していた。
    • (ハ) 本件経理担当者は、当審判所に対して、日々、現金残高と現金出納帳の照合を実施し、現金残高に過不足が生じた場合は、本件各店長に連絡してその原因について確認していた旨、過去に不足額が店のレジに残っていたことはあったが5万円も不足額が生じたことは記憶にない旨答述した。
       なお、平成26年10月5日の現計表及びオーダー伝票は、他の営業日のものと同じ場所に保管されていたと推認される。
  • ハ 検討
      請求人における本件各店舗に係る現金売上げの管理等の状況は、上記ロの認定事実のとおりであるところ、本件店舗2の平成26年10月5日の現金売上額147,720円から本件月払キャスト前払額10,000円、本件日払キャスト支給額15,600円及び本件派遣業者支払額35,100円を控除した87,020円と現計表等が入った手提げ金庫を、誰が本件店舗2から同店舗1階の事務所に持参したのか、本件経理担当者は本件店舗2から持参された当該手提げ金庫をどのように確認し保管したのか、また、本件代表者がどのように関与したのかなど、当該金員87,020円に関わる者に対して、原処分庁は事実の確認をしておらず、そして、当審判所へ提出された証拠資料によっても確認することはできない。さらに、本件経理担当者の答述によっても当該金員87,020円に相当する現金不足額が生じたか否かが明らかでない。
     そうすると、本件代表者が当該金員87,020円を個人的に費消したと認めるに足りる証拠資料が収集されていないというほかない。
     したがって、当該金員87,020円を本件代表者がその地位及び権限に基づいて請求人から取得したとは認められず、当該金員87,020円を含む本件売上金員(137,720円)が本件代表者に対する給与等に該当するとは認められない。
  • ニ 原処分庁は、本件代表者が本件売上金員を個人的に費消したと申述したことを根拠として、本件売上金員が本件代表者に対する給与等に該当する旨主張する。
     しかしながら、本件代表者は、原処分調査担当職員から「個人的に使ったことにしておいてくれ。」と言われ、安易に「それでいいです。」と同意してしまった旨主張するところ、これを排斥するに足りる証拠はないから、原処分庁の主張は採用することができない。

(4) 争点4(本件各課税期間における本件各キャスト支給額は、消費税法第2条第1項第12号の課税仕入れに該当するか否か。)について

  • イ 請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、経理処理変更日以降における本件各キャストの採用状況、出勤状況、接客業務内容、支給金額の計算方法及び費用負担の状況等は、経理処理変更日前と同様であり、本件各課税期間において、請求人と本件各キャストとの雇用関係等に変わりがないと認められる。
     そうすると、上記(2)のとおり、経理処理変更日以降の本件各キャスト支給額は所得税法第28条第1項に規定する給与等に該当するところ、本件各課税期間のいずれにおいても、本件各キャスト支給額は同項に規定する給与等に該当する。
     そして、消費税法第2条第1項第12号の規定によれば、給与等を対価とする役務の提供は、課税仕入れから除かれている。
     したがって、本件各課税期間における本件各キャスト支給額は、消費税法第2条第1項第12号に規定する課税仕入れに該当しない。
  • ロ 請求人は、平成24年3月課税期間、平成25年3月課税期間及び平成25年4月1日から平成26年2月28日までの期間における本件月払キャスト支給額については、原処分庁が給与等に該当するとして源泉所得税等の納税告知処分を行っていないのであるから、課税仕入れを認めるべきである旨主張する。
     しかしながら、上記イのとおり、本件各課税期間における本件各キャスト支給額は、消費税法第2条第1項第12号に規定する課税仕入れに該当しない以上、原処分庁が請求人の主張する当該各課税期間における源泉所得税等の納税告知処分を行っていないからといって、当該各課税期間における本件各キャスト支給額について、課税仕入れが認められることになるものではなく、請求人の主張は採用することができない。

(5) 争点5(請求人には、通則法第68条第1項及び第3項に規定する隠ぺい又は仮装の行為があるか否か。)について

  • イ 法令解釈
     通則法第68条第1項及び第3項における「事実を隠ぺいした」とは、課税標準等又は税額等の計算の基礎となる事実を隠ぺいしあるいは故意に脱漏したことをいい、また、「事実を仮装した」とは、所得、財産あるいは取引上の名義等に関し、あたかも、それが真実であるかのように装うなど、故意に事実をわい曲したことをいうと解するのが相当である。
  • ロ 検討
    • (イ) 源泉所得税等
      • A 上記(2)のとおり、本件各キャスト支給額及び本件スタッフ支給額はいずれも所得税法第28条第1項に規定する給与等に該当するところ、請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、請求人は、平成26年4月から消費税等の率が8%となることを機に、消費税等の負担を減らすため、売上げから本件日払額を減算する方法に経理処理を変更し、経理処理変更日以降、本件日払額相当額の売上金額及び本件日払額を帳簿書類に記録をせず、請求人の日々の売上金額から本件日払額相当額を差し引いて売上げを除外し、当該除外資金によって源泉徴収の対象となる本件月払キャスト前払額、本件スタッフ前払額及び本件日払キャスト支給額を支給していたと認められる。
         そうすると、請求人の当該行為は、本件月払キャスト前払額、本件スタッフ前払額及び本件日払キャスト支給額を簿外で支給して事実の一部を隠ぺいした行為であり、通則法第68条第3項の規定における「事実を隠ぺいした」ことに該当する。
         なお、上記(3)のとおり、本件売上金員は、本件代表者に対する給与等に該当しないことから、これについて、通則法第68条第3項の規定に当たるか否かを判断するまでもない。
         また、請求人が本件店舗2における平成26年10月5日の現金売上額147,720円が総勘定元帳の売上高勘定に計上されなかった経緯は不明であることから、同日の本件月払キャスト前払額10,000円並びに本件日払キャスト支給額15,600円についても隠ぺいし又は仮装したと認めるに足りる証拠がなく、別表4のとおり重加算税の対象とならない。
      • B 請求人は、1経理処理変更日以降の経理方法は、純額主義による経理方法であり、正しい方法であると認識していた旨、2上記1の経理方法を当時の税理士には報告しており、請求人は、源泉所得税等は課税されているものと認識していたから、単なる課税漏れである旨、3当時の税理士への報告書の記載内容に誤りがあったとしても、直ちに隠ぺい又は仮装があることにはならない旨主張する。
         しかしながら、経理処理変更日以降、本件月払キャスト前払額、本件スタッフ前払額及び本件日払キャスト支給額を支給していた事実の全部を隠ぺいしたことは上記Aのとおりであるから、請求人の主張は採用することができない。
    • (ロ) 消費税等
      • A 上記(イ)Aのとおり、請求人は、平成26年4月から消費税等の率が8%となることを機に、消費税等負担を減らすため、売上げから本件日払額を減算する方法に経理処理を変更し、経理処理変更日以降、本件日払額相当額の売上金額及び本件日払額を帳簿書類に記録をせず、請求人の日々の売上金額から本件日払額相当額を差し引いて課税標準額から除外していたと認められる。
         そうすると、請求人の当該行為は、本件日払額相当額を課税標準額から除外して事実の一部を隠ぺいした行為であり、通則法第68条第1項の規定における「事実を隠ぺいした」ことに該当する。
         なお、請求人が本件店舗2における平成26年10月5日の現金売上額147,720円が総勘定元帳の売上高勘定に計上されなかった経緯は不明であることから、これを平成27年3月課税期間の課税標準額に含めていなかった行為は、通則法第68条第1項の規定における「事実を隠ぺいした」ことに該当するとはいえない。
      • B 請求人は、本来、本件日払額相当額は課税仕入れに該当するものであり、これらの金額を相殺した後の金額を現金売上げとして総勘定元帳に記載したことは、経理処理を純額主義により行ったにすぎず、請求人には隠ぺい仮装の行為はない旨主張する。
         しかしながら、経理処理変更日以降、本件日払額相当額を課税標準額から除外して事実の一部を隠ぺいしたことは上記Aのとおりであるから、請求人の主張は採用することができない。

(6) 本件各納税告知処分の適法性について

  • イ 上記(3)のとおり、本件売上金員は、本件代表者に対する給与等に該当しないから、本件各納税告知処分等における本件代表者に対する源泉所得税等の額○○○○円は、別表4記載のとおり零円となる。
  • ロ また、本件派遣業者支払額の支払を受けた派遣業者所属のキャストは、領収証に派遣業者名(P社)の略称である「P」の表記をし、本件各店長は、オーダー伝票を作成する際に、当該キャストの源氏名の脇に「ハケン」と表示し、本件各店舗での現金の入出金を記載した入出金伝票には本件派遣業者支払額とともに当該キャストの源氏名を記載していたところ、原処分庁が認定した本件日払キャストのうち、別表5記載のキャストについては、その領収証等に上記の「P」等の表記があることから、派遣業者所属のキャストと認められ、同表記載の本件日払キャスト支給額は本件派遣業者支払額に該当する。そうすると、本件派遣業者支払額は事業者への支払であり、源泉徴収の対象とならないから、同表の「原処分の額」欄の「源泉徴収すべき税額」は、零円となる。
  • ハ さらに、別表6記載の本件各キャスト及び本件スタッフに係る本件各キャスト支給額及び本件スタッフ支給額に対する源泉所得税等の額については、当審判所に提出された証拠資料等によれば、納付すべき源泉所得税等の額の計算に誤りが認められ、当審判所において再計算したところ、同表6の「審判所認定額」欄記載のとおりとなる。
  • ニ 以上に基づき、当審判所で請求人の本件各月分の納付すべき源泉所得税等の額を計算すると、別表7の「審判所認定額」欄のとおりとなり、平成26年6月、平成26年7月、平成26年9月、平成26年11月、平成27年2月及び平成27年6月の各月分は、いずれも本件各納税告知処分の額と同額であり、平成26年3月、平成26年5月、平成26年8月及び平成27年1月の各月分は、いずれも本件各納税告知処分の額を上回る。他方、平成26年4月、平成26年10月、平成26年12月、平成27年3月から平成27年5月まで及び平成27年7月の各月分は、いずれも本件各納税告知処分の額を下回る。
     なお、本件各納税告知処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、ほかに取り消すべき事由は見当たらない。
  • ホ したがって、本件各納税告知処分のうち、平成26年4月、平成26年10月、平成26年12月、平成27年3月から平成27年5月まで及び平成27年7月の各月分の納税告知処分は、それぞれその一部が違法であるが、これらの各月分を除く本件各納税告知処分は、それぞれ適法である。

(7) 本件不納付加算税各賦課決定処分の適法性について

上記(6)のとおり、本件各納税告知処分はその一部が違法であり取り消すべきであるが、本件各納税告知処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が本件各納税告知処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、請求人に通則法第67条第1項に規定する正当な理由があるとは認められない。そして、本件各納税告知処分に係る不納付加算税の額については、計算の基礎となる金額及び計算方法につき請求人は争わず、当審判所においても、本件各納税告知処分に係る不納付加算税の額は、別表8のとおり、本件不納付加算税各賦課決定処分における不納付加算税の額と同額であると認められる。
 したがって、本件不納付加算税各賦課決定処分は適法である。

(8) 本件重加算税各賦課決定処分の適法性について

上記(5)ロ(イ)のとおり、請求人は、本件月払キャスト前払額、本件スタッフ前払額及び本件日払キャスト支給額について、経理処理変更日以降、帳簿書類に記録をせず、これらの金額を請求人の日々の売上金額から差し引く方法により除外した資金によって支払っていたものと認められるから、通則法第68条第3項所定の重加算税の賦課要件を満たすというべきである。しかしながら、上記(5)ロ(イ)及び(6)のとおり、本件各納税告知処分に係る重加算税の対象とされた額は、別表5の「原処分の額」欄の「重加算税対象」の額を取り消し、また、別表4及び別表6の「審判所認定額」欄のとおりとすべきであるから、平成26年10月分の源泉所得税等に係る重加算税の計算の基礎となるべき税額は、別表7のとおり○○○○円(1万円未満の端数切捨て後のもの。)となる。
 これに基づき、当審判所が認定した本件各月分の源泉所得税等に係る重加算税の額は、別表8のとおりとなり、平成26年3月、平成26年4月、平成26年6月から平成26年9月まで及び平成26年11月から平成27年7月までの各月分は、いずれも本件重加算税各賦課決定処分の額と同額であり、平成26年5月分は、本件重加算税各賦課決定処分の額を上回る。他方、平成26年10月分は本件重加算税各賦課決定処分の額を下回る。
 したがって、本件重加算税各賦課決定処分のうち、平成26年10月分の源泉所得税等に係る重加算税の賦課決定処分の一部が違法であり、取り消されるべきであるが、同月分を除く本件各月分の源泉所得税等に係る本件重加算税各賦課決定処分は適法である。

(9) 本件消費税等各賦課決定処分の適法性について

上記(5)ロ(ロ)のとおり、請求人は、経理処理変更日以降、平成26年3月課税期間及び平成27年3月課税期間における売上金額のうち本件日払額相当額について、帳簿書類に記録をせずに除外し、この除外後の売上金額を基に消費税等の課税標準額を算定して確定申告書を提出していたのであるから、通則法第68条第1項所定の重加算税の賦課要件を満たすというべきである。しかしながら、上記(5)ロ(ロ)Aのとおり、請求人が本件店舗2における平成26年10月5日の現金売上額147,720円を平成27年3月課税期間の課税標準額に含めていなかった行為は、通則法第68条第1項の規定における「事実を隠ぺいした」ことに該当するとはいえず、平成27年3月課税期間における当該現金売上額に係る部分の消費税等の重加算税の賦課決定処分は取り消すべきであるから、平成27年3月課税期間の重加算税の計算の基礎となるべき税額は、○○○○円(1万円未満の端数切捨て後のもの。)となる。
 これに基づき、本件消費税等各賦課決定処分の額については、計算の基礎となる金額及び計算方法につき請求人は争わず、当審判所において、平成26年3月課税期間及び平成27年3月課税期間の消費税等に係る重加算税の額を計算すると、平成26年3月課税期間は同課税期間の消費税等に係る重加算税の賦課決定の額と同額であるが、平成27年3月課税期間は○○○○円となり、平成27年3月課税期間の消費税等に係る重加算税の賦課決定処分の額を下回る。
 したがって、本件消費税等各賦課決定処分のうち、平成27年3月課税期間の消費税等に係る重加算税の賦課決定処分は、その一部が違法であるが、平成26年3月課税期間の消費税等に係る重加算税の賦課決定処分は、適法である。
 なお、上記のとおり、平成27年3月課税期間の重加算税の計算の基礎となるべき税額の減額に伴い、過少申告加算税の計算の基礎となるべき税額は○○○○円(1万円未満の端数切捨て後のもの。)となり、過少申告加算税の額を計算すると○○○○円となるが、通則法第119条《国税の確定金額の端数計算等》第4項の規定により、5,000円未満であるときに該当するからその全額を切り捨てる。

(10) 本件各通知処分の適法性について

上記(4)のとおり、本件各課税期間における本件各キャスト支給額は、消費税法第2条第1項第12号の課税仕入れに該当しない。
 また、本件派遣業者支払額は、派遣業者に対する派遣代の支払であるが、請求人は、当該領収証を保存しているものの、消費税法第30条第8項の規定による課税仕入れの相手方の氏名等を記載した帳簿を作成せず、このことは同条第7項の規定による帳簿を保存しない場合に該当するから、当該保存がない課税仕入れに係る消費税額を控除することはできない。
 そうすると、本件各更正の請求は、通則法第23条第1項第1号に規定する「当該申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったことにより、当該申告書の提出により納付すべき税額が過大であるとき」にされたものには該当しない。
 したがって、本件各通知処分は適法である。

(11) 結論

以上によれば、平成26年4月、平成26年10月、平成26年12月、平成27年3月から平成27年5月まで及び平成27年7月の各月分の源泉所得税等の各納税告知処分並びに平成26年10月分の源泉所得税等に係る重加算税の賦課決定処分は、いずれもその一部を別紙1「取消額等計算書」のとおり取り消し、また、平成27年3月課税期間の消費税等に係る重加算税の賦課決定処分は、その一部を別紙2「取消額等計算書」のとおり取り消し、その他の原処分に対する審査請求はいずれも理由がないから棄却することとする。

トップに戻る

トップに戻る