(平成30年11月19日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、共同審査請求人が、相続により取得した土地について、広大地に該当するなどとして相続税の申告をしたところ、原処分庁から、当該土地は広大地には該当しないなどとして更正処分等を受けたため、調査手続に違法がある、当該土地は広大地に該当するなどとして、その全部の取消しを求めた事案である。

(2) 関係法令等

関係法令等は、別紙2のとおりである(別紙2で定義した略語については、以下、本文においても使用する。)。

(3) 基礎事実

当審判所の調査及び審理の結果によれば、次の事実が認められる。

  • イ 平成27年6月○日に死亡したK(以下「本件被相続人」といい、本件被相続人の死亡により開始した相続を「本件相続」という。)の共同相続人は、本件被相続人の子である審査請求人H(以下「請求人H」という。)と、請求人Hの子で本件被相続人の養子である審査請求人L(以下「請求人L」といい、請求人Hと併せて「請求人ら」という。)の2名である。
  • ロ 請求人らは、平成27年11月6日に、本件相続に係る遺産分割協議をし、請求人Hが次の(イ)ないし(二)の各土地などを取得した。
     当該各土地は、本件相続の開始時において、いずれも都市計画法第7条《区域区分》に規定する市街化区域に所在しており、それらの利用状況等は次のとおりであった。
    • (イ) b市d町g○−○及び同○番の各土地
       当該各土地は、本件被相続人が、アスファルト及びフェンスを設置した上で、第三者との間で締結した駐車場使用契約に基づき、月ぎめ駐車場の敷地の用に供されていた(以下、当該各土地を併せて「本件駐車場土地」といい、その明細は別表1のとおりである。)。
       本件駐車場土地は、間口距離約21m、平均的な奥行距離約42mのほぼ長方形の土地で、南西側が県道h線に、北東側が町道i号線にそれぞれ接面している。また、都市計画法第8条《地域地区》に規定する用途地域(以下「用途地域」という。)は商業地域(指定容積率400%)である。
    • (ロ) b市d町j○−○、同○番○の一部、同○番○の一部、同○番の一部及び同○番の各土地
       当該各土地は、本件被相続人及び請求人らの自宅や物置等の敷地の用に供されていた(以下、当該各土地を併せて「本件自宅土地」といい、その明細は別表2のとおりである。)。
       本件自宅土地は、別図1のとおり、間口距離約24m、平均的な奥行距離約22mのやや不整形な土地で、北東側が県道h線に接面している。また、本件自宅土地のうち、当該県道の中心線から20mまでの部分の用途地域は近隣商業地域(指定容積率200%)、それ以外の部分の用途地域は第一種住居地域(指定容積率200%)である。
    • (ハ) b市d町j○−○の一部、同○番○の一部、同○番○の一部及び同○番○の一部の各土地
       当該各土地は、平成18年3月2日及び平成19年2月2日に、本件被相続人と地方公共団体であるa(以下、単に「a」という。)との間で締結された急傾斜地崩壊防止施設設置契約(以下「本件施設契約」という。)に基づき、aが設置した急傾斜地法第2条第2項に規定する急傾斜地崩壊防止施設(格子状のコンクリート製構築物)の敷地の用に供されていた(以下、当該各土地を併せて「本件施設土地」といい、その明細は別表3のとおりである。)。
       本件施設契約においては、1本件施設土地をaに無償で使用させること、2本件施設契約の期間は急傾斜地崩壊防止施設が存続する期間とすること、3aの承諾なく当該施設に対して影響を及ぼすような行為をしてはならないこと及び4本件施設土地を第三者に譲渡する場合は本件施設契約を譲受人に承継させなければならないことなどが約されている。
    • (二) b市d町j○−○の一部及び同○番の一部の各土地
       当該各土地は、平成18年3月2日に、本件被相続人及びその共有者とa及び地方公共団体であるd町(以下、単に「町」という。)との間で締結された急傾斜地崩壊防止施設流末排水路設置契約(以下「本件排水路契約」という。)に基づき、aが設置し町が管理する急傾斜地崩壊防止施設からの排水を公共用水路に流出するための排水路の敷地の用に供されていた(以下、当該各土地を併せて「本件排水路土地」といい、その明細は別表4のとおりである。)。
       本件排水路土地は、別図1のとおり、本件自宅土地及び本件施設土地にそれぞれ隣接する間口距離約0.9m、奥行距離約24mの土地で、道路との接面状況や用途地域は、本件自宅土地と同様である。
       本件排水路契約においては、1本件排水路土地をa及び町に無償で使用させること、2本件排水路契約の期間は急傾斜地崩壊防止施設が存続する期間とすること、3a及び町の承諾なく排水路に対して影響を及ぼすような行為をしてはならないこと及び4本件排水路土地を第三者に譲渡する場合は本件排水路契約を譲受人に承継させなければならないことなどが約されている。
  • ハ M国税局長が定めた平成27年分の財産評価基準書によれば、上記ロの(イ)ないし(二)の各土地が所在する地域はいずれも倍率地域であり、当該地域の固定資産税評価額に乗ずる宅地の倍率は1.1、当該地域の田、畑、山林及び原野は、いずれも付近の宅地の価額に比準して評価する地域である。

(4) 審査請求に至る経緯

  • イ 請求人らは、本件相続に係る相続税(以下「本件相続税」という。)の申告について、N税理士(以下「本件税理士」という。)に税務代理を委任した上で、別表1ないし4の「価額」欄の「申告額」欄の各欄のとおり、1本件駐車場土地については、広大地に該当するとし、さらに、賃借権の価額を控除して、2本件自宅土地についても広大地に該当するとして、3本件排水路土地については零円として、4本件施設土地については近隣の純山林の価額に比準して、それぞれの土地を評価し、別表5の「申告」欄のとおり申告書に記載して法定申告期限までに申告した(以下、当該申告を「本件申告」という。)。
  • ロ 原処分庁所属の調査担当職員(以下「本件調査担当職員」という。)は、平成29年1月12日に、本件税理士に対して電話連絡の上、同月18日に、通則法第74条の9第1項に規定する「実地の調査」以外の調査として、本件相続税に係る調査(以下「本件調査」という。)を開始した。
     なお、本件調査に対しては、主に本件税理士が対応した。
  • ハ 原処分庁は、本件調査に基づき、別表1ないし4の「価額」欄の「更正処分額」欄の各欄のとおり、1本件駐車場土地については、広大地には該当せず、また、賃借権の価額を控除することはできない、2本件自宅土地についても広大地に該当しない、3本件排水路土地については評価通達24に準じて100分の30に相当する価額によって評価すべきであるなどとして、平成29年12月22日付で、別表5の「更正処分等」欄のとおり、本件相続税の各更正処分(以下「本件各更正処分」という。)及び過少申告加算税の各賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」という。)をした。
     本件各更正処分及び本件各賦課決定処分に係る各通知書(以下「本件各通知書」という。)には、本件各更正処分の理由として、要旨、別紙3のとおり記載されている(別紙3で定義した略語については、以下、本文、別表及び別図においても使用する。)。
     なお、請求人ら及び原処分庁は、本件申告及び本件各更正処分において、本件自宅土地のうち別表2の順号4の土地の地積をいずれも374.28u(本件自宅土地の合計地積526.13u)としているが、正しくは別表2のとおり365.49u(本件自宅土地の合計地積517.34u)である。
  • ニ 請求人らは、本件各更正処分及び本件各賦課決定処分に不服があるとして、平成30年1月17日に審査請求をし、同日、請求人Hを総代として選任する旨を当審判所に届け出た。

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2 争点

  • (1) 本件調査の手続に原処分を取り消すべき違法があるか否か(争点1)。
  • (2) 本件各更正処分の理由の提示に不備があるか否か(争点2)。
  • (3) 本件駐車場土地は広大地に該当するか否か、また、本件駐車場土地を評価する上で、賃借権の価額を控除すべきか否か(争点3)。
  • (4) 本件自宅土地は広大地に該当するか否か(争点4)。
  • (5) 本件排水路土地について、いかなる評価をすべきか(争点5)。

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3 争点についての主張

(1) 争点1(本件調査の手続に原処分を取り消すべき違法があるか否か。)について

原処分庁 請求人ら
  次のイ及びロの各事情によれば、本件調査において、通則法第74条の11第2項に規定する調査結果の内容の説明及び同条第3項に規定する修正申告の勧奨などがいずれも行われていないのは、請求人ら及び本件税理士の事情によるものであるといえるから、このことにより、本件調査の手続に原処分を取り消すべき違法があるとはいえない。   本件調査においては、次のイ及びロのとおり、通則法第74条の11第2項に規定する調査結果の内容の説明及び同条第3項に規定する修正申告の勧奨などがいずれも行われておらず、また、同条第5項に規定する請求人らの同意も得られていないから、本件調査の手続には原処分を取り消すべき違法がある。
  • イ 本件調査において、本件調査担当職員は、請求人ら及び本件税理士に対し、通則法第74条の11第2項に規定する調査結果の内容の説明に先立ち、再三再四、問題点を指摘し、それについての原処分庁におけるその時点での検討結果を説明した。
  • ロ 本件調査担当職員は、通則法第74条の11第5項の規定に準じて請求人らの同意を得た上で、本件税理士に対し、同条第2項に規定する本件調査に係る調査結果の内容の説明及び同条第3項に規定する修正申告の勧奨などを行おうとしたが、本件税理士はこれに応じなかったため、行うことができなかった。
  • イ 本件調査において、本件調査担当職員は、本件税理士に対し、本件申告の問題点及び原処分庁の考える納付すべき税額を指摘したのみで、請求人ら及び本件税理士の質問に対する明確な説明をせず、また、いかなる通達を適用したのかという過程の説明はないに等しい状況であった。
  • ロ 原処分庁は、通則法第74条の11第5項の規定に準じて請求人らの同意を得た旨主張する。しかし、請求人らは、請求人Hの勤務時間外に面談し説明するか、あるいは文書での調査結果の内容の説明を求めたにもかかわらず、本件調査担当職員は、上記の通則法の規定に準じる同意以外の手段を提供しなかった。このように、請求人らの同意は、他の手段が全く提供されない中、せざるを得なかったものであるから、無効である。
     また、原処分庁は、本件税理士に対し、調査結果の内容の説明及び修正申告の勧奨などを行おうとしたが、本件税理士がこれに応じなかった旨主張する。しかし、本件税理士は、本件調査担当職員からの来署依頼には日を置かず対応し、何度も税務署まで足を運んだが、他方で、本件調査担当職員は、説明の機会は十分あったにもかかわらず、説明する努力を怠ってきたというのが実態である。このような実態からすれば、原処分庁の主張は、調査結果の内容の説明及び修正申告の勧奨などが行われなかったことを本件税理士に責任転嫁するものである。

(2) 争点2(本件各更正処分の理由の提示に不備があるか否か。)について

原処分庁 請求人ら
  本件各通知書には、本件駐車場土地、本件自宅土地及び本件排水路土地について、それらの評価の根拠及び判断過程が詳細に記載されており、行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与えるという行政手続法第14条の趣旨に照らし、理由の提示として欠けるところはない。また、納税者が税務調査の段階で主張したことに対して、更正処分の通知書において逐一回答しなければならないものではない。
 したがって、本件各更正処分の理由の提示に不備はない。
  本件各通知書には、1広大地通達に定める「その地域」を特定した理由(本件駐車場土地及び本件自宅土地に関するもの)、2広大地通達に定める「標準的な宅地の地積」の前提となる「その地域」における標準的な使用方法を駐車場と判断した理由(本件駐車場土地に関するもの)、3本件被相続人が構築物を設置したことと賃借権の価額が控除できないこととの関係(本件駐車場土地に関するもの)及び4評価通達24の前段を採用した理由(本件排水路土地に関するもの)がいずれも記載されていない。
 このような抽象的に処分根拠規定を示すだけの記載は、行政庁の判断の慎重と公正妥当とを担保することで行政権の恣意を抑制するとともに、不服申立てに便宜を与えるという行政手続法第14条の趣旨に照らし、理由の提示として不十分である。
 したがって、本件各更正処分の理由の提示には不備がある。

(3) 争点3(本件駐車場土地は広大地に該当するか否か、また、本件駐車場土地を評価する上で、賃借権の価額を控除すべきか否か。)について

原処分庁 請求人ら
  • イ 広大地の該当性について
    • (イ) 本件駐車場土地の周辺の用途地域、道路及び鉄道等の状況を勘案すれば、本件駐車場土地が属する広大地通達に定める「その地域」は、別図2のとおり、b市d町g及び同kのうちP鉄道y線の南西側で、用途地域が商業地域である地域(本件甲地域)である。
  • イ 広大地の該当性について
    • (イ) 本件駐車場土地を含む商業地域において、その容積率が活用された開発事例はなく、広大地通達に定める「その地域」を商業地域のみに限定することは実態を正しく反映していない。
      そうすると、本件駐車場土地が属する広大地通達に定める「その地域」は、別図2のとおり、b市d町g、同k、同n、同p、同q及び同jのうちP鉄道y線の南西側で、用途地域が商業地域及び近隣商業地域である地域(本件甲地域及び本件乙地域を併せた地域であり、以下「本件丙地域」という。)である。
  • (ロ) 本件甲地域においては、その大半が駐車場用地として使用されていることからすれば、標準的な使用方法は駐車場用地であるといえ、その標準的な使用方法に基づく平均的な地積を勘案すれば、広大地通達に定める「標準的な宅地の地積」は、おおむね400uから450uである。
  • (ロ) 標準的な使用方法とは、宅地利用が前提となるものであるから、宅地化されていない駐車場や空き地は考慮に入れるべきではない。これを前提に本件丙地域をみると、その8割以上が戸建住宅の敷地として使用されているから、標準的な使用方法は戸建住宅の敷地であるといえ、近年戸建住宅が建築されたと想定される宅地の地積などを勘案すれば、広大地通達に定める「標準的な宅地の地積」は、168uである。
  • (ハ) 本件駐車場土地は、本件甲地域の標準的な使用方法である駐車場用地として使用され、これが経済的に最も合理的な用途であるといえるから、公共公益的施設用地の負担が必要とは認められない。
  • (ハ) 本件丙地域における「標準的な宅地の地積」が168uであることからすれば、開発行為を行うとした場合には、本件駐車場土地を5区画に分割することとなり、通路を設ける必要があるから、公共公益的施設用地の負担が必要である。
  • (二) したがって、本件駐車場土地は広大地には該当しない。
  • (二) したがって、本件駐車場土地は広大地に該当する。
  • ロ 賃借権の価額の控除の可否について
     土地の所有者が、その土地をそのままの状態で、又はその土地に設備を施して貸駐車場を経営する場合、その土地で一定の期間、自動車を保管することを引き受けることとなる。そして、このような自動車を保管することを目的とする契約は、土地の利用そのものを目的とした賃貸借契約とは本質的に異なる権利関係であって、その場合の駐車場の利用権は、その契約期間に関係なく、その土地自体に及ぶものではない。
     本件駐車場土地についてみると、本件被相続人によりアスファルト及びフェンスが設置され、貸駐車場として第三者に貸し付けられていたのであるから、自動車の保管を目的とする契約であるといえる。
     したがって、本件駐車場土地を評価する上で、賃借権の価額を控除することはできない。
  • ロ 賃借権の価額の控除の可否について
     本件駐車場土地について締結されている賃貸借契約は、土地そのものの利用を約したもので、制限なく更新が可能なものであり、賃借権としてしんしゃくされるべきものである。
     原処分庁は、貸駐車場は自動車の保管を目的とするものである旨主張する。しかし、保管とは何らかのサービスの提供のことをいうのであって、時間貸駐車場のようなものがこれに該当する。本件駐車場土地は駐車スペースを貸しているのであって、自動車を保管しているのではない。
     したがって、本件駐車場土地を評価する上で、賃借権の価額を控除すべきである。

(4) 争点4(本件自宅土地は広大地に該当するか否か。)について

原処分庁 請求人ら
  • イ 本件自宅土地の周辺の用途地域、鉄道及び土地の利用状況の連続性等を勘案すれば、本件自宅土地が属する広大地通達に定める「その地域」は、別図2のとおり、b市d町nのうちP鉄道y線の南西側の地域並びに同p、同q及び同jのうち用途地域が主として近隣商業地域である地域(本件乙地域)である。
  • イ 本件駐車場土地と同様、本件自宅土地が属する広大地通達に定める「その地域」は、本件丙地域である。
  • ロ 本件乙地域においては、その大半が戸建住宅の敷地として使用されていることからすれば、標準的な使用方法は戸建住宅の敷地であるといえ、その標準的な使用方法に基づく平均的な地積を勘案すれば、広大地通達に定める「標準的な宅地の地積」は、おおむね200uから300uである。
  • ロ 本件駐車場土地と同様、標準的な使用方法は戸建住宅の敷地であり、広大地通達に定める「標準的な宅地の地積」は、168uである。
  • ハ 本件乙地域における「標準的な宅地の地積」がおおむね200uから300uであることからすれば、開発行為を行うとした場合には、本件自宅土地を2区画に分割することが最も合理的な開発であるといえ、公共公益的施設用地の負担が必要とは認められない。
  • ハ 本件丙地域における「標準的な宅地の地積」が168uであることからすれば、開発行為を行うとした場合には、本件自宅土地を3区画に分割することとなり、通路を設ける必要がある。加えて、本件自宅土地の南西側に、急傾斜地崩壊防止施設の設置及び維持管理のためにaに無償で貸し付けた本件施設土地があることから、その維持管理のためにも、公共公益的施設用地の負担が必要である。
  • ニ したがって、本件自宅土地は広大地には該当しない。
  • ニ したがって、本件自宅土地は広大地に該当する。

(5) 争点5(本件排水路土地について、いかなる評価をすべきか。)について

原処分庁 請求人ら
  • イ 本件排水路土地は、評価通達82に基づき評価すべきであるところ、本件排水路土地と状況が類似する付近の土地は宅地である。
  • イ 本件排水路土地は、評価通達82に基づき評価すべきであるところ、本件排水路土地と状況が類似する付近の土地は池沼である(池沼の価額は、原野に関する定めを準用することとされている。)。
  • ロ そして、a及び町という特定の者のみが本件排水路土地を使用することができることとされており、その使用収益にある程度の制約はあるものの、私有物として第三者への処分等は禁止されていない。
  • ロ そして、本件排水路土地は、特定の者の利益のためのものではなく、背後の急傾斜地崩壊防止施設が設置された傾斜地の全域からの排水を公共用水路へ流出させるための、公共の用に供されるものである。
  • ハ 以上からすれば、本件排水路土地の価額は、隣接する宅地の1u当たりの価額を基とし、評価通達24の前段に準じて、当該価額の100分の30に相当する価額によって評価すべきである。
  • ハ 以上からすれば、本件排水路土地の価額は、宅地への転用が見込めない市街地山林の評価方法に準じて、純原野1u当たりの価額を基として評価することとなるが、評価通達24の後段に準じて、その価額は評価しないこととすべきである。

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4 当審判所の判断

(1) 争点1(本件調査の手続に原処分を取り消すべき違法があるか否か。)について

  • イ 法令解釈
     通則法は、第7章の2《国税の調査》において、国税の調査の際に必要とされる手続を規定しているが、同章の規定に反する手続が課税処分の取消事由となる旨を定めた規定はなく、また、調査手続に瑕疵があるというだけで納税者が本来支払うべき国税の支払義務を免れることは、租税公平主義の観点からも問題があると考えられるから、調査手続に単なる違法があるだけでは課税処分の取消事由とはならないものと解される。
     もっとも、通則法は、第24条《更正》の規定による更正処分、第25条《決定》の規定による決定処分、第26条《再更正》の規定による再更正処分等について、いずれも「調査により」行う旨規定しているから、課税処分が何らの調査なしに行われたような場合には、課税処分の取消事由となるものと解される。そして、これには、調査を全く欠く場合のみならず、課税処分の基礎となる証拠資料の収集手続(以下「証拠収集手続」という。)に重大な違法があり、調査を全く欠くのに等しいとの評価を受ける場合も含まれるものと解され、ここにいう重大な違法とは、証拠収集手続が刑罰法規に触れ、公序良俗に反し又は社会通念上相当の限度を超えて濫用にわたるなどの場合をいうものと解するのが相当である。
     他方で、証拠収集手続自体に重大な違法がないのであれば、課税処分を調査により行うという要件は満たされているといえるから、仮に、証拠収集手続に影響を及ぼさない他の手続に重大な違法があったとしても、課税処分の取消事由となるものではないと解される。
  • ロ 認定事実
     請求人ら提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、次の事実が認められる。
    • (イ) 本件調査の状況等について
      • A 本件調査担当職員は、平成29年1月18日に本件調査を開始し、同年6月7日までにはおおむね本件調査を終了した。
         そして、本件調査担当職員は、J税務署庁舎内において、本件税理士に対し、平成29年6月13日には国税庁ホームページの「タックスアンサー(よくある質問)」の広大地の評価に関する部分を印刷した各書面を示すなどしながら、また、同年7月4日には本件駐車場土地及び本件自宅土地が属する地域の区画数や地積の状況を説明するなどしながら、本件駐車場土地及び本件自宅土地はいずれも広大地に該当しないこと、本件駐車場土地を評価する上で、賃借権の価額を控除することはできないこと、本件排水路土地は評価通達24に準じて宅地の価額の100分の30に相当する価額によって評価すべきであることを説明した。
      • B 本件調査担当職員は、平成29年9月6日にも、J税務署庁舎内において、本件税理士に対し、本件駐車場土地及び本件自宅土地はいずれも広大地に該当しないことや本件排水路土地の評価などについて説明した。
    • (ロ) 調査結果の内容の説明に関する請求人らの同意等について
      • A 本件調査担当職員は、請求人らに対し、平成29年7月28日付の「相続税の調査について」と題する各書面に、調査結果の内容の説明をするので、同月31日午前8時半から同日午前9時頃までに、電話により連絡するよう依頼する旨を記載して、差置きにより交付した。また、同年11月2日付の「相続税の調査について」と題する各書面に、調査結果の内容の説明をするので、同月17日午前10時頃に、J税務署まで来署するよう依頼する旨を記載して、郵送により交付した。
      • B これを受けて、請求人Hは、平成29年7月31日及び同年11月16日に、電話により、本件調査担当職員に対し、文書による調査結果の内容の説明を希望したが、本件調査担当職員から、いずれの電話においても、調査結果の内容の説明は口頭により説明することとなっており、文書による説明はしない旨回答されたため、請求人らは、同年11月16日の電話の中で、請求人らに代わって本件税理士が調査結果の内容の説明を受けることに同意した。
         なお、本件調査担当職員は、当該同意を得た後、当該同意をしていても、請求人らが希望すれば、請求人らに直接説明する用意がある旨も伝えた。
    • (ハ) 調査結果の内容の説明等について
      • A 本件調査担当職員は、平成29年11月21日に、電話により、本件税理士に対し、調査結果の内容の説明をすることを伝えた上で、更正決定等をすべきと認めた額などを説明したところ、本件税理士は、金額に誤りがある旨申述するとともに、共有持分など土地の評価の計算誤りを指摘する原処分庁宛の書面を提出した。
      • B 本件調査担当職員は、上記Aの本件税理士が指摘した内容を検討した上で、平成29年11月30日及び同年12月8日に、電話により、本件税理士に対し、更正決定等をすべきと認めた額に基づく調査結果の内容の説明をしようとしたが、本件税理士は、いずれの電話においても、評価誤りの理由や評価の十分な説明がないとして、電話での調査結果の内容の説明は受けない、文書で実施するよう申述した。本件調査担当職員は、その都度、本件税理士に対し、面接して調査結果の内容の説明をするため、本件税理士に来署するよう依頼したが、本件税理士は、いずれも来署日時を示さなかった。
      • C その後、原処分庁は、本件税理士及び請求人らのいずれに対しても、最終的な更正決定等をすべきと認めた額に基づく調査結果の内容の説明及び修正申告の勧奨などをすることなく、本件各更正処分及び本件各賦課決定処分をした。
  • ハ 当てはめ及び請求人らの主張について
    • (イ) 請求人らは、前記3の(1)の「請求人ら」欄のとおり、本件調査において、1本件調査担当職員は、請求人ら及び本件税理士の質問に対する明確な説明をせず、いかなる通達を適用したのかという過程の説明はないに等しい状況であった旨、2通則法第74条の11第5項の規定に準じた請求人らの同意は、同意以外の手段を全く提供されない中、せざるを得なかったものであるから、無効である旨、3同条第2項に規定する調査結果の内容の説明及び同条第3項に規定する修正申告の勧奨などがいずれも行われていない旨、それぞれ主張する。
    • (ロ) しかしながら、1の点については、上記ロの(イ)のとおり、本件調査担当職員は、本件税理士に対し、複数回にわたり、資料等に基づき、広大地に該当しないことなどを説明していたのであり、本件税理士への説明が不十分であったと評価することはできない。2の点については、上記ロの(ロ)のとおり、本件調査担当職員は、請求人らに対し、2回にわたり、調査結果の内容の説明をしたい旨記載した各書面を交付し(なお、平成29年11月2日付の各書面では、請求人らに来署を依頼しており、請求人らに対して、直接説明することを前提としていたことが明らかといえる。)、請求人らが本件税理士に対して調査結果の内容の説明をすることに同意した後においても、請求人らに対して直接説明する用意がある旨伝えていることなどからすれば、同意以外の手段を全く提供されなかったなどと評価することはできず、その他、同意が無効となるような事情も認められない。3の点については、確かに、原処分庁は、上記ロの(ハ)のCのとおり、最終的な更正決定等をすべきと認めた額に基づく調査結果の内容の説明をすることなく、本件各更正処分及び本件各賦課決定処分をしたものの、上記ロの各事実に照らせば、本件調査担当職員は、複数回にわたり、本件税理士に対し、広大地に該当しないことなどを説明し、請求人らの同意を得た上で、本件税理士に対して調査結果の内容の説明をするための相応の努力をしたものといえるから、最終的な更正決定等をすべきと認めた額に基づく調査結果の内容の説明及び修正申告の勧奨などがなされなかったことは、やむを得ないというべきである。
       また、上記イのとおり、証拠収集手続に重大な違法があった場合には、課税処分の取消事由になるものと解されるところ、請求人らの各主張は、いずれも調査の終了の際の手続に関するものであって、既に行われた証拠収集手続に影響を及ぼすものではないから、その観点からみても、請求人らの主張には理由がないといえる。
       なお、当審判所の調査及び審理の結果によっても、本件調査担当職員が、本件調査において、違法な行為に基づき証拠資料を収集したと認めるに足る証拠はない。
    • (ハ) したがって、本件調査の手続に原処分を取り消すべき違法はなく、請求人らの主張にはいずれも理由がない。

(2) 争点2(本件各更正処分の理由の提示に不備があるか否か。)について

  • イ 法令解釈
     行政手続法第14条第1項本文が、不利益処分をする場合に同時にその理由を名宛人に示さなければならないとしているのは、名宛人に直接に義務を課し又はその権利を制限するという不利益処分の性質に鑑み、行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨に出たものと解される。そして、同項本文に基づいてどの程度の理由を提示すべきかは、上記のような同項本文の趣旨に照らし、当該処分の根拠法令の規定内容、当該処分の性質及び内容、当該処分の原因となる事実関係の内容等を総合考慮してこれを決定すべきである。
  • ロ 当てはめ及び請求人らの主張について
    • (イ) 本件各通知書に記載された本件各更正処分の理由は、要旨、別紙3に記載のとおりであり、これによれば、1本件駐車場土地及び本件自宅土地の広大地の該当性については、広大地通達に定める「その地域」、当該地域の標準的な使用方法及び「標準的な宅地の地積」をそれぞれ認定した上で、公共公益的施設用地の負担が必要とは認められないことなどから、いずれも広大地に該当しないこと、2本件駐車場土地に係る賃借権の価額の控除の可否については、本件駐車場土地の上にある構築物(アスファルト及びフェンス)は本件被相続人が設置したものであるため、評価区分が自用地となり、賃借権の価額を控除することができないこと、3本件排水路土地の評価方法については、宅地への転用が見込めず、使用収益にある程度の制約があるものの、売却等の処分は可能であるから、評価通達24に準じて評価することが相当であることがそれぞれ記載されている。
       このような本件各通知書の記載内容からすれば、原処分庁が本件各更正処分をするに至った理由が具体的に明示されており、本件各更正処分がどのような法令等の根拠に基づきなされたどのような処分であるか等は明らかであるといえ、行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与えるという行政手続法第14条第1項本文の趣旨に照らし、同項本文の要求する理由の提示として不備はないといえる。
    • (ロ) これに対し、請求人らは、前記3の(2)の「請求人ら」欄のとおり、本件各通知書について、抽象的に処分根拠規定を示すだけの記載は、行政庁の判断の慎重と公正妥当とを担保することで行政権の恣意を抑制するとともに、不服申立てに便宜を与えるという行政手続法第14条の趣旨に照らし、理由の提示として不十分である旨主張する。
       しかしながら、上記(イ)のとおり、本件各通知書に記載された本件各更正処分の理由は、その根拠を行政手続法第14条第1項本文の趣旨を充足する程度に具体的に明示したものと認めることができるから、同項本文の要求する理由の提示として不備はないというべきである。
    • (ハ) したがって、本件各更正処分の理由の提示に不備はなく、請求人らの主張には理由がない。

(3) 争点3(本件駐車場土地は広大地に該当するか否か、また、本件駐車場土地を評価する上で、賃借権の価額を控除すべきか否か。)について

  • イ 広大地の該当性について
    • (イ) 法令解釈等
      • A 相続税法第22条は、相続財産の価額は、特別に定める場合を除き、当該財産の取得の時における時価によるべき旨を規定しており、ここにいう時価とは、相続開始時における当該財産の客観的な交換価値をいうものと解するのが相当である。
         しかし、客観的交換価値は、必ずしも一義的に確定されるものではないから、これを個別に評価する方法をとった場合には、その評価方式等により異なる評価額が生じたり、課税庁の事務負担が過大となり、大量に発生する課税事務の迅速な処理が困難となったりするおそれがある。そこで、課税実務上は、特別の定めのあるものを除き、相続財産評価の一般的基準が評価通達によって定められ、原則としてこれに定められた画一的な評価方式によって相続財産を評価することとされている。
         このように、あらかじめ定められた評価方式によってこれを画一的に評価することは、税負担の公平、効率的な租税行政の実現という観点からみて合理的であり、相続財産の評価に当たっては、評価通達によって評価することが著しく不適当と認められる特別の事情がない限り、評価通達に定められた評価方法によって画一的に評価することが相当である。
      • B 広大地通達は、その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地で、開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要と認められるものについて、減額の補正を行う旨定めている。
         このような減額の補正を行うこととした趣旨は、1評価の対象となる宅地(以下「評価対象地」という。)の地積が、評価対象地の価額の形成に関して直接影響を与える特性を持つ評価対象地の属する地域の標準的な宅地の地積に比して著しく広大で、2評価の時点において、評価対象地を当該地域において経済的に最も合理的な開発行為を行うこととした場合に、道路、公園等の公共公益的施設用地の負担が必要な宅地については、当該開発行為により宅地の区画形質の変更をした際に公共公益的施設用地として潰れ地が生じ、評価通達15ないし20−5の定めによる減額の補正をしただけでは十分といえない場合があることから、このような宅地の価額の評価に当たっては、潰れ地が生じることを評価対象地の価額に影響を及ぼすべき客観的な事情として、価値が減少していると認められる範囲で減額の補正を行うこととしたものと考えられる。
      • C このような広大地通達の趣旨に鑑みれば、広大地通達に定める「その地域」とは、原則として、評価対象地周辺の1河川や山などの自然的状況、2行政区域、3都市計画法による土地利用の規制等の公法上の規制など、土地利用上の利便性や利用形態に影響を及ぼすもの、4土地の利用状況の連続性や地域の一体性を分断する道路、鉄道及び公園などの状況等を総合勘案し、利用状況、環境等がおおむね同一と認められる、住宅、商業、工業など特定の用途に供されることを中心としたひとまとまりの地域を指すものと解するのが相当である。
         また、広大地通達に定める「標準的な宅地の地積」は、評価対象地の付近で状況の類似する地価公示の標準地又は都道府県地価調査の基準地の地積、評価対象地の付近の標準的な使用方法(その地域で一般的な宅地の使用方法)に基づく宅地の平均的な地積などを総合勘案して判断するのが相当である。
    • (ロ) 認定事実
       請求人ら提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、次の事実が認められる。
      • A 別図2のとおり、本件駐車場土地は県道h線(幅員約16.5m)の北東側に、本件自宅土地は当該県道の南西側に位置しており、いずれもQ駅西口に近接している。また、本件駐車場土地の北東側には町道i号線(幅員約5.5m)があり、当該県道及び当該町道に並行してP鉄道y線及び国道r号がある。
      • B 本件駐車場土地及び本件自宅土地の周辺において、P鉄道y線の線路を横断して国道r号に通じる道路は、本件駐車場土地の南東約50mにある県道s線及び北西約330mにある町道t号線である。
      • C 本件相続の開始時における本件甲地域の用途地域は、商業地域(指定容積率400%)である。
         また、本件相続の開始時における本件甲地域の土地の利用状況をみると、別表6のとおり、1低層店舗・低層店舗併用住宅の敷地は3区画(区画数の合計に占める割合(以下「区画割合」という。)は約16%)で、その地積は3,878.55u(地積の合計に占める割合(以下「地積割合」という。)は約39%)、2戸建住宅の敷地は4区画(区画割合は約21%)で、その地積は1,560.89u(地積割合は約16%)、3駐車場用地は12区画(区画割合は約63%)で、その地積は4,432.41u(地積割合は約45%)である。
         なお、本件相続の開始時において、本件甲地域に、地上階数3以上の中高層の集合住宅等は存在せず、地価公示の標準地又は都道府県地価調査の基準地も存在しない。
      • D 本件相続の開始時における本件乙地域の用途地域は、主として近隣商業地域(指定容積率200%)である。
         また、本件相続の開始時における本件乙地域の土地の利用状況をみると、別表7のとおり、1低層店舗・低層店舗併用住宅の敷地は4区画(区画割合は約8%)で、その地積は1,686.09u(地積割合は約7%)、2戸建住宅の敷地は34区画(区画割合は約64%)で、その地積は13,368.37u(地積割合は約54%)、3駐車場用地は6区画(区画割合は約11%)で、その地積は1,986.55u(地積割合は約8%)、4上記1ないし3以外の敷地は9区画(区画割合は約17%)で、その地積は7,524.16u(地積割合は約31%)であり、そのうち戸建住宅の敷地の1区画当たりの地積の規模に応じた分布状況をみると、別表8のとおりである。
         なお、本件相続の開始時において、本件乙地域に、地上階数3以上の中高層の集合住宅等は存在せず、地価公示の標準地又は都道府県地価調査の基準地も存在しない。
      • E 町が定めた市街化区域において、開発区域の地積が500u以上の開発行為をしようとする場合には、あらかじめ、都市計画法第29条《開発行為の許可》第1項の規定等によりa知事の許可を受けなければならない(都市計画法第29条第1項第1号、都市計画法施行令第19条《許可を要しない開発行為の規模》第2項第3号及び中部圏開発整備法第2条《定義》第3項)。
         また、町が都市計画法第18条の2《市町村の都市計画に関する基本的な方針》の規定に基づき定めた「d町都市計画マスタープラン」では、e地域のうち、Q駅周辺の土地利用の方針について、「都市拠点のQ駅周辺は、○○であり、○○でもあることから商業地区とし、その周辺部は商業機能を補完する近隣商業地区に位置づけます。」とされている。
      • F 本件甲地域及び本件乙地域において、平成17年4月以降平成30年3月までの間、上記Eの開発行為の許可を受けて宅地開発が行われた事例はいずれも存在しない。
      • G 本件駐車場土地は、昭和58年から施行されたu土地区画整理事業の施行地区に所在しており、昭和63年10月27日に換地処分を受けた土地であるが、本件自宅土地については、土地区画整理事業が施行されたことはない。
    • (ハ) 当てはめ
      • A 広大地通達に定める「その地域」について
         上記(ロ)のA及びBのとおり、本件駐車場土地の北東側にはP鉄道y線の線路があり、これを横断して国道r号に通じる道路は、県道s線及び町道t号線であることからすれば、当該線路並びに当該県道及び当該町道により地域の一体性が分断されているものと認められる。
         また、上記(ロ)のC及びDのとおり、本件甲地域の指定容積率は400%、本件乙地域の指定容積率は200%であるなど、本件甲地域と本件乙地域とでは、都市計画法による土地利用の規制等の公法上の規制も異なっているほか、上記(ロ)のEのとおり、法的強制力はないものの、「d町都市計画マスタープラン」において、都市拠点のQ駅周辺は、○○であり、○○でもあることから商業地区とし、その周辺部は商業機能を補完する近隣商業地区に位置付ける旨定め、同じQ駅周辺にある地域でも、商業地区と近隣商業地区とでは、その位置付けを異にするものとされている。
         そして、上記(ロ)のC及びDのとおり、本件甲地域及び本件乙地域の土地の利用状況をみると、1本件甲地域においては、低層店舗・低層店舗併用住宅の敷地が3区画(地積割合約39%)、戸建住宅の敷地が4区画(地積割合約16%)及び駐車場用地が12区画(地積割合約45%)であるのに対し、2本件乙地域においては、低層店舗・低層店舗併用住宅の敷地が4区画(地積割合約7%)、戸建住宅の敷地が34区画(地積割合約54%)及び駐車場用地が6区画(地積割合約8%)であり、本件甲地域及び本件乙地域の利用状況は大きく異なっている。
         これらのことからすれば、本件甲地域は、主として商業の用途に供されることを中心としたひとまとまりの地域であり、本件乙地域は、主として住宅の用途に供されることを中心としたひとまとまりの地域であると認められる。
         そうすると、本件駐車場土地が属する広大地通達に定める「その地域」は、本件甲地域とみるのが相当である。
      • B 「その地域」における標準的な使用方法について
         本件甲地域は、指定容積率が400%(本件駐車場土地の基準容積率も400%である。)であることからすれば、中高層の集合住宅等の敷地に適しているとも考えられる。しかしながら、本件甲地域の現況等をみると、上記(ロ)のFのとおり、本件甲地域において、平成17年4月以降平成30年3月までの間、都市計画法第29条第1項の規定に基づく開発行為の許可を受けて宅地開発が行われた事例は見当たらず、上記(ロ)のCのとおり、中高層の集合住宅等の敷地の用に供されている土地も存在しないことからすれば、本件甲地域における標準的な使用方法が中高層の集合住宅等の敷地であるとみるのが相当とまではいい難い。
         また、本件甲地域においては、上記(ロ)のCのとおり、駐車場用地として利用されている土地の地積割合は約45%と半分近くを占めている。しかしながら、駐車場用地の地目は、そもそも雑種地であり宅地ではないのであるから、駐車場用地として使用することが宅地の標準的な使用方法とは考えられないし、本件駐車場土地が、健全な市街地の造成を図り、もって公共の福祉の増進に資することを目的とする土地区画整理事業(土地区画整理法第1条《この法律の目的》参照)が施行された土地であること(上記(ロ)のG)を踏まえれば、なおさらその標準的な使用方法が駐車場用地であるとは考え難い。
         以上を踏まえて本件甲地域における標準的な使用方法を検討すると、本件甲地域は、上記(ロ)のA及びCのとおり、1その用途地域が商業地域であること、2Q駅西口に近接していること、3戸建住宅の敷地として利用されている土地の地積割合は約16%にすぎず、低層店舗・低層店舗併用住宅の敷地として利用されている土地の地積割合が約39%であること及び4中高層の集合住宅等の敷地として利用されている土地が存在しないことを考慮すれば、本件甲地域における標準的な使用方法は、低層店舗・低層店舗併用住宅の敷地とみるのが相当である。
      • C 広大地通達に定める「標準的な宅地の地積」について
         上記Bのとおり、本件甲地域における標準的な使用方法は、低層店舗・低層店舗併用住宅の敷地とみるのが相当であるところ、上記(ロ)のC及び別表6のとおり、1本件甲地域に地価公示の標準地又は都道府県地価調査の基準地は存在しないこと、2低層店舗・低層店舗併用住宅の敷地の平均地積が1,292.85u、最小地積が1,102.18u及び最大地積が1,607.59uであることなどを総合勘案すれば、広大地通達に定める「標準的な宅地の地積」は、おおむね1,100uから1,600uとみるのが相当である。
      • D 小括
         上記AないしCで検討したところによれば、本件駐車場土地(合計地積874.00u)は、「その地域」(本件甲地域)における「標準的な宅地の地積」(おおむね1,100uから1,600u)に比して著しく地積が広大な宅地とは認められない。
         したがって、公共公益的施設用地の負担の必要性を判断するまでもなく、本件駐車場土地は広大地には該当しない。
    • (二) 請求人らの主張について
       請求人らは、前記3の(3)の「請求人ら」欄のイのとおり、本件駐車場土地が属する広大地通達に定める「その地域」が本件丙地域(本件甲地域と本件乙地域を併せた地域)であることを前提として、標準的な使用方法は戸建住宅の敷地、広大地通達に定める「標準的な宅地の地積」は168uであり、開発行為を行うとした場合には公共公益的施設用地の負担が必要であるから、本件駐車場土地は広大地に該当する旨主張する。
       しかしながら、請求人らが主張するように、本件駐車場土地を含む商業地域において、その容積率が活用された事例がないことを踏まえても、上記(ハ)のAでみたとおり、本件甲地域と本件乙地域とでは、1線路及び道路で地域の一体性が分断されている、2都市計画法による土地利用の規制等の公法上の規制も異なっている、3その利用状況が大きく異なっているなどの事情が認められることからすれば、土地の利用状況、環境等がおおむね同一とはいえない。
       したがって、本件甲地域及び本件乙地域を併せた本件丙地域を一つの地域とみることはできないから、本件丙地域を広大地通達に定める「その地域」とする請求人らの主張を採用することはできない。そして、本件丙地域を広大地通達に定める「その地域」であることを前提とする請求人らのその他の点に関する主張は、その前提を欠くからいずれも採用できない。
    • (ホ) 原処分庁の主張について
       上記(ハ)のBでみたとおり、本件甲地域における標準的な使用方法が駐車場用地であるとする原処分庁の主張は採用できないが、本件駐車場土地が広大地に該当しないという結論においては正当である。
  • ロ 賃借権の価額の控除の可否について
    • (イ) 検討
       土地の所有者が、その土地をそのままの状態で、又はその土地に設備を施して貸駐車場を経営することは、その土地で一定の期間、自動車を保管することを引き受けることであり、このような自動車を保管することを目的とする契約は、土地の利用そのものを目的とした賃貸借契約とは本質的に異なる権利関係であるといえ、この場合の駐車場の利用権は、その契約期間に関係なく、その土地自体に及ぶものではないから、貸駐車場として利用されている土地は、自用地価額により評価するものと解される。
       これを本件駐車場土地についてみると、前記1の(3)のロの(イ)のとおり、本件駐車場土地は、本件被相続人が、アスファルト及びフェンスを設置した上で、第三者との間で締結した駐車場使用契約に基づき、月ぎめ駐車場の敷地の用に供されていたものであり、当審判所の調査及び審理の結果によっても、当該契約は、第三者に対して構築物等の設置を認めるなど、土地の利用そのものを目的とした賃貸借契約とは認められない。
       したがって、本件被相続人は、本件駐車場土地にアスファルト等の設備を施して、貸駐車場を経営していたものであり、本件駐車場土地に係る賃貸借契約は、一定の期間、自動車を保管することを目的とする契約とみるのが相当であるから、本件駐車場土地は自用地価額により評価すべきであり、本件駐車場土地を評価する上で、賃借権の価額を控除することはできない。
    • (ロ) 請求人らの主張について
       請求人らは、前記3の(3)の「請求人ら」欄のロのとおり、本件駐車場土地について締結されている賃貸借契約は、土地そのものの利用を約したもので、制限なく更新が可能なものであり、本件駐車場土地は自動車を保管しているのではないから、本件駐車場土地を評価する上で、賃借権の価額を控除すべきである旨主張する。
       しかしながら、上記(イ)のとおり、本件被相続人は、本件駐車場土地にアスファルト及びフェンスを設置した上で、貸駐車場を経営していたところ、このことは、本件駐車場土地で、一定の期間、自動車を保管することを引き受けることを意味する。そして、自動車を保管する以上は、一定の範囲の土地を事実上利用させることにはなるものの、それは、保管を引き受けることに伴う必然的な結果にすぎず、土地の利用そのものを目的とするものではない。すなわち、本件駐車場土地の利用権は、その土地自体に及ぶものではなく、その点で、土地の利用そのものを目的とした賃貸借契約とは本質的に異なるというべきである。
       そうすると、本件駐車場土地について締結されている賃貸借契約が制限なく更新が可能であるものであったとしても、本件駐車場土地は自用地価額により評価するのが相当であるから、請求人らの主張には理由がない。

(4) 争点4(本件自宅土地は広大地に該当するか否か。)について

  • イ 当てはめ
    • (イ) 広大地通達に定める「その地域」について
       本件自宅土地は本件乙地域に所在しているところ、上記(3)のイの(ハ)のAでみたとおり、本件甲地域と本件乙地域とでは、土地の利用状況、環境等がおおむね同一とはいえず、本件甲地域は、主として商業の用途に供されることを中心としたひとまとまりの地域であり、本件乙地域は、主として住宅の用途に供されることを中心としたひとまとまりの地域であるものと認められるから、本件自宅土地が属する広大地通達に定める「その地域」は、本件乙地域とみるのが相当である。
    • (ロ) 「その地域」における標準的な使用方法について
       本件乙地域は、上記(3)のイの(ロ)のDのとおり、1戸建住宅の敷地として利用されている土地が、区画割合で約64%、地積割合で約54%と、いずれも過半を占めていること及び2中高層の集合住宅等の敷地として利用されている土地が存在しないことを考慮すれば、本件乙地域における標準的な使用方法は、戸建住宅の敷地とみるのが相当である。
    • (ハ) 広大地通達に定める「標準的な宅地の地積」について
       上記(ロ)のとおり、本件乙地域における標準的な使用方法は、戸建住宅の敷地とみるのが相当であるところ、上記(3)のイの(ロ)のD並びに別表7及び8のとおり、1本件乙地域に地価公示の標準地又は都道府県地価調査の基準地は存在しないこと、2戸建住宅の敷地の地積の規模別分布状況によれば、200u以上300u未満が10区画と一番多いこと、3戸建住宅の敷地の平均地積が393.19u、地積の中央値が279.86uであることなどを総合勘案すれば、広大地通達に定める「標準的な宅地の地積」は、おおむね200uから300uとみるのが相当である。
    • (二) 公共公益的施設用地の負担の必要性について
       上記(ハ)のとおり、広大地通達に定める「標準的な宅地の地積」は、おおむね200uから300uとみるのが相当であるところ、これに基づき本件自宅土地(合計地積517.34u)を区画割りすると2区画となるから、開発想定図を用いて検討するまでもなく、公共公益的施設用地の負担が必要とは認められない。
    • (ホ) 小括
       以上のとおり、本件自宅土地について、開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要とは認められない。
       したがって、本件自宅土地は広大地には該当しない。
  • ロ 請求人らの主張について
     請求人らは、前記3の(4)の「請求人ら」欄のとおり、本件駐車場土地と同様、本件自宅土地が属する広大地通達に定める「その地域」が本件丙地域であることを前提として、広大地に該当する旨主張する。
     しかしながら、広大地通達に定める「その地域」について本件丙地域を採用することができないことは上記(3)のイの(二)でみたとおりであるから、請求人らの主張を採用することはできない。

(5) 争点5(本件排水路土地について、いかなる評価をすべきか。)について

  • イ 検討
    • (イ) 地目について
       不動産登記事務取扱手続準則第68条の(3)において、宅地は、建物の敷地及びその維持若しくは効用を果たすために必要な土地と定められているところ、本件排水路土地は、現実の利用状況等からすれば、隣接する本件自宅土地上の建物に係る敷地ではなく、当該建物から独立して本件施設土地と一体でその効用を果たす土地と認められることから、宅地には該当せず、その他、雑種地以外の地目にも該当しないので、雑種地に該当するものと認められる。
       また、不動産登記事務取扱手続準則第68条の(9)において、山林は、耕作の方法によらないで竹木の生育する土地と定められているところ、本件施設土地は、コンクリート製構築物の敷地(前記1の(3)のロの(ハ))であり、竹木の生育する土地ではないことから、山林には該当せず、その他、雑種地以外の地目にも該当しないので、雑種地に該当するものと認められる。
    • (ロ) 評価単位について
       1本件排水路土地及び本件施設土地は、いずれも請求人Hが相続により取得し、相互に隣接していること(前記1の(3)のロ及び別図1)、2急傾斜地法第2条第2項において、「急傾斜地崩壊防止施設」は急傾斜地崩壊危険区域内にある擁壁、排水施設その他の急傾斜地の崩壊を防止するための施設をいう旨規定しているところ、本件排水路土地は、当該急傾斜地崩壊防止施設の敷地である本件施設土地からの排水を公共用水路に流出するための排水路の敷地であるため、本件排水路土地及び本件施設土地は、急傾斜地の崩壊を防止するという同一の目的の用に供されている土地であること、3本件排水路土地は、その利用目的及び本件排水路契約により、排水路以外の他の用途に転用することが事実上できないこと(前記1の(3)のロの(二))からすれば、本件排水路土地及び本件施設土地は、評価通達7−2の(7)に定める「利用の単位となっている一団の雑種地(同一の目的に供されている雑種地をいう。)」に該当するため、本件排水路土地は、本件施設土地と一の評価単位とすることが相当である。
    • (ハ) 評価方法について
       上記(ロ)のとおり、本件排水路土地の評価は、本件施設土地と一の評価単位として評価通達82に定める雑種地の評価方法により評価することになり、具体的には、状況が類似する付近の宅地、農地、山林又は原野に比準して評価することになる。本件の場合、本件排水路土地及び本件施設土地の全体の地積(231.05u)に占める本件排水路土地の地積(23.02u)の割合は約10%にすぎないため、一の評価単位の大部分を占める本件施設土地の状況が類似する付近の土地に比準して評価することが相当であるところ、本件施設土地は、その大部分が急傾斜地法第2条第1項に規定する傾斜度が30度以上である急傾斜地であるため、建物の敷地の用に供することができず、また、農耕地にも該当していないため、宅地や農地に比準することは適当ではない。そうすると、山林又は原野に比準することになるが、上記のとおり、本件施設土地の大部分が急傾斜地であることを考慮すれば、評価通達82に定める本件排水路土地及び本件施設土地と状況が類似する付近の土地は、山林と判断するのが相当である。
       そして、本件排水路土地及び本件施設土地は、本件相続の開始時において、いずれも都市計画法第7条に規定する市街化区域に所在しているため(前記1の(3)のロ)、状況が類似する付近の土地は市街地山林となり、評価通達49に定める市街地山林の評価方法により評価した価額を基に評価することになる。ここで、本件排水路土地及び本件施設土地は、急傾斜地であり宅地造成ができないと認められるため(評価通達49の注書の2)、状況が類似する付近の市街地山林は、急傾斜地であり宅地への転用が見込めないと認められる市街地山林になる。この場合の市街地山林の評価方法は、近隣の純山林の価額に比準して評価することになるため(評価通達49のなお書)、評価通達82に定めるその雑種地と状況が類似する付近の土地について評価通達の定めるところにより評価した1u当たりの価額は、近隣の純山林の価額となり、その価額を基として評価することになる。
    • (二) しんしゃく(減価率)の適用について
       本件排水路土地及び本件施設土地は、本件排水路契約及び本件施設契約により、aや町の承諾なく排水路や急傾斜地崩壊防止施設に対して影響を及ぼすような行為をしてはならないなど、その使用収益に制約が付されている(前記1の(3)のロの(ハ)及び(二))。そこで、本件排水路土地及び本件施設土地の評価において、当該制約に係るしんしゃく(減価率)を適用しなければならないのか否かについて検討する。
       状況が類似する付近の土地が山林と判断される市街化区域に所在する雑種地の評価において、その基となる市街地山林の評価は、その山林が宅地であるとした場合の1u当たりの価額から、その山林を宅地に転用する場合において通常必要と認められる1u当たりの造成費を控除した金額に、その山林の地積を乗じて計算した金額によって評価するのが原則であるが、宅地への転用が見込めないと認められる市街地山林については、近隣の純山林の価額に比準して評価することになる。これは、本来であれば宅地であるとした場合の評価額に比準するところ、宅地への転用が見込めないというその土地の使用収益に係る制限を考慮して、近隣の純山林の価額に比準するものである。そうすると、宅地であるとした場合の評価額と純山林であるとした場合の評価額の差額の分については、宅地への転用が見込めないというその土地の使用収益に係る制限を考慮したことによって生じたものといえ、純山林であるとした場合の評価額は、使用収益の制限としてのしんしゃく(減価率)を適用したことと同様になるものと考えられる。
       したがって、本件の場合、本件排水路土地及び本件施設土地の評価において、近隣の純山林の価額に比準することで、既に使用収益の制約について考慮されているので、更にa及び町との本件排水路契約及び本件施設契約を基にしんしゃく(減価率)を適用することは、二重にしんしゃく(減価率)を適用することになるため、a及び町との本件排水路契約及び本件施設契約に係るしんしゃく(減価率)を適用することはできない。
  • ロ 原処分庁及び請求人らの主張について
     本件排水路土地の評価について、原処分庁は、前記3の(5)の「原処分庁」欄のとおり、本件排水路土地と状況が類似する付近の土地を宅地であるとした上で、評価通達24の前段に準じて、宅地の価額の100分の30に相当する価額によって評価すべきである旨主張し、他方、請求人らは、前記3の(5)の「請求人ら」欄のとおり、本件排水路土地と状況が類似する付近の土地を池沼であるとした上で、評価通達24の後段に準じて、その価額は評価しないこととすべきである旨主張する。
     しかしながら、本件排水路土地と状況が類似する付近の土地は、上記イの(ハ)のとおり、山林と判断するのが相当である。また、本件排水路土地は、専ら特定の者の通行の用に供されている、あるいは不特定多数の者の通行の用に供されているという私道ではない上、上記イのとおり、本件排水路土地は、本件施設土地と一の評価単位とし、近隣の純山林の価額を基として評価すべきである。
     したがって、原処分庁及び請求人らの主張は、いずれも採用できない。

(6) 本件駐車場土地、本件自宅土地及び本件排水路土地の各価額について

  •   上記(3)ないし(5)の判断に基づき、当審判所において、本件駐車場土地、本件自宅土地及び本件排水路土地の各価額を評価すると、それぞれ次のとおりとなる。
  • イ 本件駐車場土地
     本件駐車場土地の価額を評価すると、別表9の「本件駐車場土地」欄の「審判所認定額」欄のとおり、本件各更正処分の価額と同額である48,575,920円となる。
  • ロ 本件自宅土地
     前記1の(4)のハのとおり、本件各更正処分においては、本件自宅土地の合計地積を526.13uとしているが、本件自宅土地の合計地積は517.34uである。
     そして、当該地積(517.34u)を基に本件自宅土地の価額を評価すると、別表9の「本件自宅土地」欄の「審判所認定額」欄のとおり、2,918,458円(租税特別措置法第69条の4の規定により計算した後の価額)となる。
  • ハ 本件排水路土地
     上記(5)の評価方法に基づき本件排水路土地の価額を評価すると、別表9の「本件排水路土地」欄の「審判所認定額」欄のとおり、1,514円となる。

(7) 本件各更正処分の適法性について

  • イ 上記(1)のとおり、本件調査の手続に原処分を取り消すべき違法はなく、また、上記(2)のとおり、本件各更正処分の理由の提示に不備もない。そして、本件駐車場土地、本件自宅土地及び本件排水路土地の各価額は、それぞれ上記(6)のとおりとなる。
  • ロ ところで、請求人らは、本件申告において、土地改良法に規定する土地改良事業施行中の仮換地であるb市d町v○−○、同○、同○及び同○−○の一部の各土地(合計地積920.00u。以下、当該各土地を併せて「本件仮換地土地」という。)について、広大地に該当するとして、固定資産税の路線価を55,300円とし、これに1.1を乗じた60,830円に広大地補正率0.554を乗じるなどし、さらに、賃借権の価額を控除して、30,228,000円と評価している。
     しかしながら、当審判所の調査及び審理の結果によれば、本件仮換地土地が接面する道路に付された固定資産税の路線価は57,000円である。さらに、本件仮換地土地も、本件駐車場土地と同様、本件被相続人が第三者との間で締結した駐車場使用契約に基づき、月ぎめ駐車場の敷地の用に供されていた土地であり、第三者に対して構築物等の設置を認めるなど、土地の利用そのものを目的とした賃貸借契約とは認められないから、本件仮換地土地を評価する上で、賃借権の価額を控除することはできない。そして、当審判所において、改めて本件仮換地土地の価額を評価すると、別表9の「本件仮換地土地」欄の「審判所認定額」欄のとおり、31,956,936円となる。
     また、請求人Lは、前記1の(3)のイのとおり、相続税法第18条《相続税額の加算》第2項に規定する「被相続人の直系卑属が当該被相続人の養子となっている場合」に該当することから、同条第1項の規定により、請求人Lに係る相続税額は、同法第17条《各相続人等の相続税額》の規定により算出した金額にその100分の20に相当する金額を加算した金額となる。
  • ハ 以上を前提として、当審判所において、請求人らの本件相続税に係る各納付すべき税額を計算すると、別表10の「審判所認定額」欄のとおり、いずれも本件各更正処分の額を上回るものと認められる。
     また、本件各更正処分のその他の部分については、請求人らは争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
     したがって、本件各更正処分はいずれも適法である。

(8) 本件各賦課決定処分の適法性について

上記(7)のとおり、本件各更正処分はいずれも適法であり、本件各更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する「正当な理由」があるとは認められない。
 そして、当審判所においても、請求人らの各過少申告加算税の額は、いずれも本件各賦課決定処分における各過少申告加算税の額と同額であると認められる。
 したがって、本件各賦課決定処分はいずれも適法である。

(9) 結論

よって、審査請求は理由がないから、これを棄却することとする。

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