(令和元年12月18日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、原処分庁所属の職員による調査を受けて相続税に係る期限後申告書を提出したところ、原処分庁が、請求人が法定申告期限までに相続税に係る申告書を提出していなかったことにつき、国税通則法第68条《重加算税》第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たすとして、重加算税の賦課決定処分を行ったのに対し、請求人が、当該賦課要件を満たさないとして、当該賦課決定処分のうち無申告加算税相当額を超える部分の取消しを求めた事案である。

(2) 関係法令

国税通則法(以下「通則法」という。)第68条第2項は、同法第66条《無申告加算税》第1項の規定に該当する場合において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき法定申告期限までに納税申告書を提出せず、又は法定申告期限後に納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、無申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額(その税額の計算の基礎となるべき事実で隠蔽し、又は仮装されていないものに基づくことが明らかであるものがあるときは、当該隠蔽し、又は仮装されていない事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除した税額)に係る無申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に100分の40の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する旨規定している。

(3) 基礎事実

当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。

  • イ 請求人の父であるF(以下「本件被相続人」という。)は、平成28年7月29日付で、G銀行の預金並びに同行で購入した債券及び投資信託については請求人の姉であるH(以下「本件姉」という。)に相続させ、それ以外の財産については請求人に相続させる旨の自筆証書による遺言書を作成した。
  • ロ 本件被相続人は、平成28年11月○日に死亡し、その相続(以下「本件相続」という。)が開始した。
     なお、本件相続に係る相続人は、本件被相続人の子である請求人及び本件姉の2名のみである。  
  • ハ 別表1の順号1から順号14までの財産(以下「請求人取得財産」という。)及び本件被相続人が所有していた不動産等は、いずれも請求人が本件相続により取得したもの(相続税法第3条《相続又は遺贈により取得したものとみなす場合》第1項の規定により取得したものとみなされる財産を含む。以下同じ。)である。
     また、別表2の順号1から順号14までの財産(以下「本件姉取得財産」という。)は、いずれも本件姉が本件相続により取得したものである。

(4) 審査請求に至る経緯

  • イ 原処分庁は、平成29年5月10日付で、請求人に対し、「相続税の申告等についての御案内」と題する文書及び「相続についてのお尋ね」と題する文書(以下「本件お尋ね文書」という。)などを発送した。
     なお、本件お尋ね文書には、注意書として、「あくまでも概算による結果です」及び「相続税の申告が不要な場合には、お手数ですが、この『相続についてのお尋ね』を作成していただき、税務署に提出してください」と記載されていた。
  • ロ 請求人は、平成29年6月9日付で、本件お尋ね文書に以下の内容を記載した上、これをJ税務署に提出した。
    • (イ) 相続人の数 2人
    • (ロ) 財産の内訳及び金額 別表3のとおり
    • (ハ) 葬式費用の概算 100万円
    • (ニ) 上記(ロ)の金額から上記(ハ)の金額を差し引いた金額 3,219万円
    • (ホ) 基礎控除額 3,000万円+(2人 × 600万円)=4,200万円
    • (へ) 上記(ニ)の金額から上記(ホ)の金額を差し引いた額 △981万円
  • ハ 請求人は、本件相続に係る請求人分の相続税(以下「本件相続税」という。)について、その法定申告期限(以下「本件申告期限」という。)までに、申告書を提出しなかった。
  • ニ その後、請求人は、原処分庁所属の職員による調査(以下「本件調査」といい、本件調査を担当した原処分庁所属の職員を「本件調査担当職員」という。)を受け、平成30年8月28日、別表4の「申告」欄のとおり記載した本件相続税に係る申告書を提出した。
     なお、当該申告書の第11表(相続税がかかる財産の明細書)には、請求人取得財産及び本件姉取得財産を含む財産が記載されていた。
  • ホ 原処分庁は、請求人が請求人取得財産及び本件姉取得財産の存在を隠蔽し、本件申告期限までに本件相続税に係る申告書を提出しなかったとして、請求人に対し、平成30年11月7日付で、別表4の「賦課決定処分」欄のとおりの重加算税の賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」という。)をした。 
  • へ 請求人は、本件賦課決定処分のうち無申告加算税相当額を超える部分に不服があるとして、平成31年1月9日に審査請求をした。

2 争点

本件申告期限までに本件相続税に係る申告書を提出しなかったことにつき、通則法第68条第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たすか否か。

3 争点についての主張

原処分庁 請求人
本件申告期限までに本件相続税に係る申告書を提出しなかったことについては、次のとおり、通則法第68条第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たす。 本件申告期限までに本件相続税に係る申告書を提出しなかったことについては、次のとおり、通則法第68条第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たさない。
(1) 本件お尋ね文書は、課税庁が調査の要否等の判断の資料とするために、対象となる納税者に任意の提出を求めるものである。納税者がそれに虚偽の内容を記載した場合には、課税庁の当該判断を誤らせるおそれがあるから、納税者が本件お尋ね文書に意図的に虚偽の記載をしてこれを提出した場合には、通則法第68条第2項に規定する隠蔽又は仮装の行為があったといえる。
 本件についてみると、請求人は、本件相続税の申告をしなければいけないと認識していた上、本件お尋ね文書の提出前に、税理士無料相談会において、本件お尋ね文書に記載すべき内容等の説明を受けたはずであるにもかかわらず、請求人取得財産及び本件姉取得財産を記載しなかった。このような事情によれば、本件お尋ね文書に意図的に虚偽の記載をしてこれを提出したといえ、通則法第68条第2項に規定する隠蔽又は仮装の行為があったと認められる。
(1) 通則法第68条第2項に規定する重加算税を課するためには、法定申告期限までに申告書が提出されなかったことそのものが隠蔽又は仮装に当たるというだけでは足りず、それとは別に、隠蔽又は仮装と評価すべき行為が存在することを要すると解される。そして、本件お尋ね文書は、申告書の提出に代えて提出されるものであるから、その提出は、法定申告期限までに申告書が提出されなかったことと同等の評価をすべきものである。したがって、単に本件お尋ね文書の提出が隠蔽又は仮装に当たるというだけでは、通則法第68条第2項に規定する隠蔽又は仮装の行為があったとは認められない。
 また、請求人があえて意図的に虚偽の記載をしてこれを提出したことはないし、原処分庁が「原処分庁」欄の(1)で主張する事情は憶測にすぎないから、原処分庁の主張は理由がない。
(2) 重加算税制度の趣旨によれば、税務知識を相当有する者が、自身に課税標準等があることを認識した上で、これを申告しない場合にも、通則法第68条第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たすと解される。
 本件についてみると、請求人は、K市の市民税課に長年勤務しており、税務の基本的な知識を熟知していたものと考えられる。加えて、請求人は、無申告加算税の割合などの知識を有し、本件姉から本件相続税の申告等を税理士に依頼することを提案された際も、自ら申告書を作成する旨回答したことなども考慮すれば、請求人が税務知識を相当有する者であったことは明らかである。
 また、請求人は、請求人取得財産の金額をある程度具体的に把握していた上、本件姉取得財産の金額も本件姉に確認するなどして、本件相続税の申告をしなければいけないと考えていたのであるから、本件申告期限までに本件相続税に係る課税標準等があることを十分認識していたと認められる。
 以上に加え、上記(1)の本件お尋ね文書に係る事情も考慮すれば、請求人は、税務知識を相当有する者であり、自身に課税標準等があると認識していながら、故意にこれを申告しなかったといえるから、この点でも、重加算税の賦課要件を満たすと認められる。
 なお、請求人は、本件お尋ね文書には、正確な金額を把握していた財産を記載したにすぎず、正確な金額を把握していない財産などは、それが判明してから訂正するつもりであったなどと主張する。しかしながら、請求人が提出した本件お尋ね文書は、それ自体、相続税の申告が不要かのような外観を呈するものである上、税務知識を相当有する請求人が、その提出後に正確な金額を把握しようとする積極的な努力もせず、本件申告期限を徒過したことからすれば、当初から本件相続税を免れることを意図していたといえる。また、少なくとも別表1の順号14の財産については、L社から「手続完了のお知らせ」と題する文書の送付を受け、正確な金額を把握したにもかかわらず、本件お尋ね文書に記載しなかったのであるから、請求人の上記主張は理由がない。
(2) 原処分庁は、税務知識を相当有する者が、自身に課税標準等があることを認識した上で、これを申告しない場合にも、通則法第68条第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たすと主張するが、独自の解釈といわざるを得ず、失当である。
 また、請求人は、K市の市民税課に勤務していたが、相続税に係る業務をしたことはなく、一般の納税者と同等の知識を有していたにすぎないし、原処分庁が「原処分庁」欄の(2)で主張する事情をもって、税務知識を相当有する者であったなどということはできない。むしろ、請求人が税理士無料相談会で相続税に関する相談をしていたことからすれば、税務知識を相当有する者に当たらないことは明らかである。
 その上、請求人は、本件相続税に係る申告書を提出しなければならないことは認識していたものの、本件お尋ね文書に早急に回答しなければならないと思い、正確な金額を把握していた財産のみを記載して提出したが、正確な金額を把握していなかった請求人取得財産(別表1の順号14の財産を除く。)については、それが判明してから訂正するつもりであり、本件姉と会った際にも、請求人自ら申告書を作成して申告する旨回答していた。また、別表1の順号14の財産については、それが本件相続により取得したものとみなされることを知らなかったために、記載しなかったにすぎないし、本件姉取得財産についても、本件姉が回答するものと思い、記載しなかったにすぎない。したがって、本件お尋ね文書の提出をもって、本件相続税を免れることを意図して故意に本件申告期限内に申告しなかったなどということはできないし、請求人は単に過失によって本件申告期限を徒過してしまったにすぎない。
 なお、本件お尋ね文書は、課税庁からの求めに応じ、納税者が任意に協力して提出したものであり、その本件お尋ね文書に一部の財産が記載されていなかったとしても、その責任を一方的に納税者に負わせるべきではないから、本件お尋ね文書の提出を重加算税の賦課要件の判断材料とすることは許されないというべきである。
(3) 仮に上記(1)又は(2)の原処分庁の主張が認められないとしても、1税務知識を相当有する者である請求人が、自身に課税標準等があると認識していながら、故意にこれを申告しなかったこと、2請求人が意図的に虚偽の記載をした本件お尋ね文書を提出したこと、3本件申告期限までに申告書を提出するための具体的な行為をしていないこと、4本件姉から税理士に依頼することを提案されていたにもかかわらず、本件調査の際に、税理士に依頼することは無知で考えていなかったなどと申述し、虚偽と評価すべきであることを考慮すれば、請求人が当初から本件相続税の申告をしないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上で、その意図に基づき期限内申告書を提出しなかった場合に該当するといえる。したがって、通則法第68条第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たしている。 (3) 納税者が当初から相続税の申告をしないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づき期限内申告書を提出しなかった場合に、重加算税の賦課要件を満たすとしても、上記(1)のような本件お尋ね文書の性質によれば、本件お尋ね文書の提出とは別に、当該特段の行動に該当する具体的な事情が存在する必要があると解すべきである。しかしながら、原処分庁が「原処分庁」欄の(3)で主張する事情は、当該特段の行動に該当し得ない事情を主張するものであるか、そもそも存在しない事情を主張するものであるから、いずれも理由がない。

4 当審判所の判断

(1) 法令解釈

通則法第68条第2項に規定する重加算税の制度は、納税者が期限内申告書を提出しないことについて隠蔽又は仮装という不正手段を用いていた場合に、無申告加算税よりも重い行政上の制裁を科することによって、悪質な納税義務違反の発生を防止し、もって申告納税制度による適正な徴税の実現を確保しようとするものであるから、重加算税を課するためには、納税者が期限内申告書の提出をしなかったこと自体が隠蔽又は仮装に当たるというだけでは足りず、それとは別に、隠蔽又は仮装と評価すべき行為が存在し、これに合わせて期限内申告書の提出をしなかったことを要するものである。
 しかし、上記の重加算税制度の趣旨に鑑みれば、架空名義の利用や資料の隠蔽等の積極的な行為の存在が常に必要であると解するのは相当でなく、納税者が、当初から課税標準等及び税額等を申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づき期限内申告書を提出しなかったような場合には、重加算税の賦課要件が満たされるものと解するのが相当である。

(2) 認定事実

請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、次の事実が認められる。

  • イ 本件お尋ね文書の提出前後の事情について
    • (イ) 請求人は、平成〇年〇月〇日、K市役所で開催された税理士無料相談会に参加し、50分間程度、税理士に対し、相続税に関する相談をした。その際に当該税理士が作成した「〇〇〇」には、請求人に対する指導事項として、「相続税のかかる財産について」、「相続税の申告について」及び「貸付金の消滅時効について」との記載しかなかった。
    • (ロ) 請求人は、平成29年1月頃に本件姉と電話で会話した際、本件姉から、本件相続税の申告等を税理士に頼むことを提案されたが、「自分でやりたい。市役所で税理士の相談会もあるから自分でやってみたい。」などと回答した。
    • (ハ) 請求人は、平成〇年〇月〇日、K市役所で開催された税理士無料相談会に参加し、30分間程度、税理士に対し、相続税に関する相談をした。その際に当該税理士が作成した「〇〇〇」には、請求人に対する指導事項として、「相続税」との記載しかなかった。
  • ロ 本件調査時の事情について 
    • (イ) 請求人は、平成30年4月24日(本件調査の初日)に、本件調査担当職員に対し、請求人及び本件姉が本件相続により取得した財産(請求人取得財産及び本件姉取得財産を含む。)を記載した一覧表(以下「本件相続財産一覧表」という。)を提出した。
    • (ロ) その後の本件調査の結果、本件相続財産一覧表に記載された財産以外に、請求人及び本件姉が本件相続により取得した財産は確認されなかった。

(3) 検討

  • イ 原処分庁は、上記3の「原処分庁」欄の(1)のとおり、請求人が本件お尋ね文書に意図的に虚偽の記載をしてこれを提出したことから、通則法第68条第2項に規定する隠蔽又は仮装の行為があったと認められる旨主張するところ、上記1(4)ロの本件お尋ね文書の内容によれば、確かに、請求人が請求人取得財産及び本件姉取得財産を記載せずにこれを提出したことは認められる。
     しかしながら、そもそも、本件お尋ね文書は、その記載すべき内容や提出すること自体も法定されているものではなく、飽くまでも税務署が納税者に対し任意の提出を求める性質のものであるから、一般の納税者がその存在を当然に認識しているものとはいえないし、上記1(4)イのとおり、提出者に相続財産の概括的な金額の記載を要求するものにすぎない。このような本件お尋ね文書の性質に鑑みると、請求人が提出した本件お尋ね文書の内容が事実と異なるということのみをもって、直ちに請求人が本件お尋ね文書に意図的に虚偽の記載をしてこれを提出したとまで認めることはできない。
     そして、原処分庁は、他にその主張を裏付けるに足りる証拠を提出せず、また、当審判所の調査によっても、請求人が本件お尋ね文書に意図的に虚偽の記載をしてこれを提出したと認めるに足りる証拠は見当たらない。
     したがって、請求人が本件お尋ね文書に意図的に虚偽の記載をしてこれを提出したと認めることはできない。
  • ロ 次に、原処分庁は、隠蔽等の積極的な行為が存在しないとしても、納税者が、当初から課税標準等及び税額等を申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づき期限内申告書を提出しなかったような場合には、通則法第68条第2項に規定する重加算税の賦課要件が満たされる旨主張する。
     そこで、この点について検討すると、請求人が本件お尋ね文書に意図的に虚偽の記載をしてこれを提出したと認めることができないことは、上記イで述べたとおりであるから、本件お尋ね文書に請求人取得財産及び本件姉取得財産を記載せずに提出した行為のみをもって、請求人に本件相続税を申告しない意図があったということはできない。むしろ、請求人は、本件申告期限前、本件姉に対して、上記(2)イ(ロ)のとおり述べて、自ら本件相続税を申告する意思を示していたと認められる事情が存在する。さらに、上記(2)ロ(イ)及び(ロ)のとおり、請求人は、本件調査時においても、その初日(平成30年4月24日)から、本件調査担当職員に対し、本件相続財産一覧表を提出し、しかも、その一覧表に記載された財産以外に請求人及び本件姉が本件相続により取得した財産は確認されなかったというのであるから、これらの事情から、請求人は、本件被相続人の相続財産を隠匿するような行動には出ていなかったというべきである。また、当審判所に提出された証拠資料等を精査しても、その他に、請求人が当初から本件相続税を申告しない意図があり、かつ、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動があったとされる事情は見当たらない。
     したがって、請求人が、当初から本件相続税を申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づき期限内申告書を提出しなかったような場合に該当するとはいえない。
  • ハ 以上によれば、請求人が本件申告期限までに本件相続税に係る申告書を提出しなかったことにつき、通則法第68条第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たすということはできない。 

(4) 原処分庁のその他の主張について

原処分庁は、上記3の「原処分庁」欄の(1)のとおり、請求人は、本件お尋ね文書の提出前に、税理士無料相談会において、本件お尋ね文書に記載すべき内容等の説明を受けたはずであり、それにもかかわらず、請求人が本件お尋ね文書に本件被相続人の相続財産の全てを記載しなかったことから、本件お尋ね文書に意図的に虚偽の記載をしてこれを提出したといえる旨、及び、上記3の「原処分庁」欄の(2)のとおり、請求人が税務知識を相当有する者であり、自身に課税標準等があることを認識していながら、故意にこれを申告しなかったといえるから、通則法第68条第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たす旨主張する。
 しかしながら、上記(2)イ(イ)及び(ハ)のとおり、請求人は、2回もK市役所で開催された税理士無料相談会に参加し、税理士に対して相続税に関する相談をしていたのであるから、かねてから相続税を含めた税務知識をあまり有していなかったと認めるのが自然かつ合理的であって、また、この2回にわたる相談は、いずれも1時間も満たない程度で終了したのであるから、請求人が、これらの相談によって税務知識を相当程度有するに至ったと認めることもできない。なお、仮に請求人がこれらの相談の機会に多少の税務知識を得たとしても、このことをもって、直ちに本件お尋ね文書に意図的に虚偽の記載をしたとまで評価できるものではない。
 したがって、この点に関する原処分庁の主張には理由がない。

(5) 本件賦課決定処分の適法性について

上記(3)のとおり、請求人が本件申告期限までに本件相続税に係る申告書を提出しなかったことについては、通則法第68条第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たしていないが、他方で、通則法第66条第1項及び第2項に規定する無申告加算税の賦課要件は満たすと認められる上、同条第1項ただし書に規定する正当な理由があるとは認められない。そして、本件賦課決定処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。したがって、本件賦課決定処分は、無申告加算税相当額を超える部分の金額が違法であり、別紙「取消額等計算書」のとおり取り消すのが相当である。

(7) 結論

よって、審査請求は理由がある。

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