(令和2年2月5日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、輸入取引に係る仕入額について総勘定元帳に計上した額に基づいて法人税等の確定申告をしたところ、原処分庁が、真正な仕入額は請求人のM税関での申告価格であり、これを上回る金額は損金の額に算入することができないなどとして、法人税等の各更正処分及び重加算税の各賦課決定処分並びに青色申告承認取消処分を行ったところ、請求人が、M税関での申告価格は誤っており、請求人が総勘定元帳に計上した金額が真正な仕入額であるとして、原処分の一部の取消しを求めた事案である。

(2) 関係法令

別紙2のとおりである。なお、別紙2で定義した略語については、以下、本文においても使用する。

(3) 基礎事実

当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
 なお、以下、請求人の法人税の事業年度並びに復興特別法人税及び地方法人税の課税事業年度については、各個別の終了年月をもって表記する(例えば、平成26年2月1日から平成27年1月31日までの期間は、法人税について「平成27年1月期」といい、復興特別法人税について「平成27年1月課税事業年度」という。また、平成27年2月1日から平成28年1月31日までの期間の地方法人税について「平成28年1月課税事業年度」という)。
 また、原処分に係る法人税の各事業年度を併せて「本件各事業年度」といい、地方法人税の各課税事業年度を併せて「本件各課税事業年度」という。

  • イ 請求人等について
    • (イ) 請求人は、平成〇年〇月○日に設立され、主に中華人民共和国(以下「中国」という。)から輸入したアパレル商品等を日本国内の業者向けに販売するという、卸売業を営む法人であり、K(以下「本件代表者」という。)は、平成23年9月10日から現在まで、請求人の代表取締役である。なお、平成27年2月1日から平成28年1月31日までは、Nも代表取締役であった。
       また、請求人は、平成26年5月30日、当時の所轄税務署長であるP税務署長に対して法人税の青色申告の承認の申請を行い、平成28年1月期以後の各事業年度の法人税について、青色申告の承認を受けていた。
    • (ロ) Q社は、中国に所在する法人であり、その代表者は本件代表者である。
  • ロ 請求人とQ社との輸入取引について
     請求人は、Q社からアパレル商品等を仕入れていた(以下、この取引を「本件輸入取引」という。)。
     本件輸入取引に係るアパレル商品等は、主に、本件代表者が、Q社の代表者として中国で購入した商品であった。
  • ハ 本件輸入取引に係る輸出手続及び輸入手続の概要
     本件輸入取引に係るQ社の輸出手続及び請求人の輸入手続の概要は、以下のとおりである。
    • (イ) Q社は、中国で購入したアパレル商品等を中国から輸出する際には、中国の輸出業者(以下「シッパー」という。)に輸出の代行を依頼しており、シッパーが作成したインボイス等必要書類を請求人が依頼した通関業者に提出する。
    • (ロ) 上記(イ)の輸出手続に従ってアパレル商品等が日本国内の保税地域に搬入された後、請求人が依頼した通関業者は、シッパーから提出された書類に沿って、請求人の代わりに輸入申告手続(関税、消費税及び地方消費税の納付手続を含む。)を行う。
    • (ハ) 請求人は、アパレル商品等の通関後、通関業者から、アパレル商品等とともに当該商品に係る輸入許可通知書を受け取る。
  • ニ 本件輸入取引に関する請求書の発行
     Q社は、本件輸入取引に際し、請求人宛てに、取引日ごとに、商品名、数量、単価(人民元又はアメリカ合衆国ドル(以下「USドル」という。))及びその合計金額並びにその合計金額を日本円に換算した金額等を記載した「INVOICE」と題する請求書(ただし、取引時期によってその様式は異なる。以下「取引日請求書」という。)を発行するとともに、1か月ごとに、取引日請求書及びその合計金額(日本円)をまとめた上、1か月分の総合計額(日本円)を記載した「STATEMENT」と題する請求書(以下「合計額請求書」といい、取引日請求書と合計額請求書を併せて「本件請求書」という。)を発行していた。なお、取引日請求書の左下部には、「○○○○貨物番号」等として、輸入許可通知書の「AWB番号(航空貨物運送状番号)」が記載されていた。
  • ホ 本件輸入取引に係る総勘定元帳への記載
     請求人は、上記ニの合計額請求書に基づいて算出した金額を、仕入高として総勘定元帳に計上していた。

(4) 審査請求に至る経緯

  • イ 請求人は、本件各事業年度の法人税、本件各課税事業年度の地方法人税の各確定申告書(平成28年1月期及び平成29年1月期の法人税並びに本件各課税事業年度の地方法人税については青色の確定申告書)及び平成27年1月課税事業年度の復興特別法人税の申告書に、別表1から別表3までの各「確定申告」欄又は「申告」欄のとおり記載して、いずれも法定申告期限内に原処分庁(平成27年1月期の法人税及び平成27年1月課税事業年度の復興特別法人税についてはP税務署長)に提出した。
  • ロ M税関所属の調査担当職員は、平成29年4月5日、請求人に対する本件各事業年度の本件輸入取引に係る関税並びに消費税及び地方消費税の調査(以下「本件税関調査」という。)に着手した。
     R税関長は、本件税関調査の結果、更正処分等を行わないこととし、平成29年6月16日付で、請求人に対し、その旨を通知した。
  • ハ 原処分庁所属の調査担当職員は、平成29年7月26日、請求人に対する調査に着手し、その調査結果に基づいて、原処分庁は、本件各事業年度における本件輸入取引に係る仕入額は、請求人の輸入申告における申告価格に基づいて算出した金額(別表4の「本件輸入申告額」欄記載の各金額。以下「本件輸入申告額」という。)が正しい額であるにもかかわらず、請求人は、事実を仮装して、総勘定元帳に仕入額を過大に計上し、各事業年度の損金の額に算入しているなどとして、平成30年9月26日付で、別表1から別表3までの各「更正処分等」欄のとおり、本件各事業年度の法人税の各更正処分(以下「本件法人税各更正処分」という。)及び重加算税の各賦課決定処分(以下「本件法人税各賦課決定処分」という。)、平成27年1月課税事業年度の復興特別法人税の更正処分(以下「本件復興特別法人税更正処分」という。)及び重加算税の賦課決定処分(以下「本件復興特別法人税賦課決定処分」という。)並びに本件各課税事業年度の地方法人税の各更正処分(以下「本件地方法人税各更正処分」という。)及び重加算税の各賦課決定処分(以下「本件地方法人税各賦課決定処分」という。)を行うとともに、同日付で、上記過大計上は、法人税法第127条第1項第3号の事由に該当するとして、平成28年1月期以後の法人税の青色申告の承認の取消処分(以下「本件青色取消処分」という。)を行った。
  • ニ 請求人は、平成30年10月30日、上記ハ記載の各処分(原処分)の取消しを求めて再調査の請求をしたところ、再調査審理庁は、平成31年1月30日付で棄却の再調査決定を行った。
  • ホ 請求人は、再調査決定を経た後の原処分の一部(平成27年1月課税事業年度の復興特別法人税の更正処分のうち、東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法(平成26年法律第10号による改正前のもの)第47条第2項本文の適用に関する部分以外の部分)に不服があるとして、平成31年2月15日に審査請求をした。
     本審査請求において、請求人は、1本件輸入取引に係る仕入額は、本件請求書に記載された金額が正しい金額であり、本件輸入申告額ではない、2仮に本件輸入申告額が正しい金額であるとしても、総勘定元帳に計上された輸入仕入価額から本件輸入申告額を控除した額(以下、本件請求書に基づいて総勘定元帳に計上された輸入仕入価額として原処分庁が主張する額(別表4の「本件元帳計上額」欄記載の各金額)を「本件元帳計上額」といい、本件元帳計上額と本件輸入申告額の各合計額の差額(別表4の「差額」欄の「合計」欄記載の金額)を「本件差額」という。)が過大に損金に算入された額となるものではない、3請求人が本件請求書に基づく金額を総勘定元帳に計上したことは、重加算税の課税要件にも、青色申告承認の取消事由にも該当しないと主張した。

2 争点

(1)  本件輸入取引に係る仕入額につき、本件差額が過大に損金の額に算入されていたか。
 具体的には、1本件各事業年度における本件輸入取引に係る仕入額は、本件輸入申告額か(争点1-1)、また、2本件差額が過大に損金の額に算入された額か(争点1-2)。

(2)  請求人が本件請求書に基づく金額を総勘定元帳に計上したことは、通則法第68条第1項に規定する「事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し」たことに該当するか(争点2)。

(3)  請求人が本件請求書に基づく金額を総勘定元帳に計上したことは、法人税法第127条第1項第3号に規定する「帳簿書類に取引の全部又は一部を隠蔽し又は仮装して記載し」たことに該当するか(争点3)。

3 争点についての主張

(1) 争点1(本件差額が過大に損金の額に算入されていたか)について

原処分庁 請求人
以下のとおり、本件各事業年度における本件輸入取引に係る仕入額は、本件輸入申告額が正しい金額であり、請求人は、本件差額を過大に損金の額に算入したものである。 以下のとおり、本件各事業年度における本件輸入取引に係る仕入額は、本件請求書に基づく金額が正しい金額であり、請求人が算入した損金の額に誤りはない。
イ 本件輸入取引に係る仕入額は、請求人の輸入申告における申告価格が正しいから、原処分庁が当該申告価格を基に算出した本件輸入申告額が、本件各事業年度における本件輸入取引に係る仕入額である。
 このことは、本件代表者が、本件税関調査において、M税関に申告した価格が正しく、原処分庁に申告したQ社からの仕入れが過大計上されている旨申述したことからも認められる。
イ 本件輸入取引に係る仕入額は、Q社から発行された本件請求書に記載された金額が正しい額であり、これと異なる本件輸入申告額は真正な輸入仕入価額ではない。
ロ そして、請求人が、本件請求書に基づいて総勘定元帳に計上した輸入仕入価額は、本件元帳計上額であるから、本件元帳計上額と本件輸入申告額の差額である本件差額の全額がQ社からの本件輸入取引に係る仕入額として過大に損金の額に算入されたというべきである。 ロ 仮に原処分庁の主張のとおり本件輸入申告額が真正な輸入仕入価額であることを前提にしても、本件元帳計上額に係る取引と本件輸入申告額に係る取引が同一の商品の取引によるものかが明らかではない以上、これらの差額である本件差額が過大計上額であるとはいえない。
 また、本件輸入取引については、請求人が輸入者として輸入申告手続を行うだけではなく、請求人の販売先の業者が輸入者として直接輸入申告手続を行うこともあるところ、原処分庁が算出した本件輸入申告額には、後者の輸入申告に係る取引金額が含まれていない。そうすると、請求人が元帳に計上した輸入仕入価額から本件輸入申告額を控除した金額(本件差額)全額が過大計上額であるという原処分庁の主張は誤りである。

(2) 争点2(事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装したか)について

原処分庁 請求人
上記(1)のとおり、本件各事業年度における本件輸入取引に係る仕入額は、本件輸入申告額であるにもかかわらず、請求人は、本件代表者がQ社の代表者として作成した本件請求書記載の金額があたかも事実であるかのように装い、故意に事実をわい曲して、本件請求書に基づき本件輸入取引に係る仕入額を過大に計上した。
   このことは、通則法第68条第1項に規定する「事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し」たことに該当する。
上記(1)のとおり、本件各事業年度における本件輸入取引に係る仕入額は、本件請求書に記載された金額であり、請求人はかかる真正な仕入額を総勘定元帳に記載しており、故意に事実をわい曲していないから、通則法第68条第1項に規定する「事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し」たことに該当しない。

(3) 争点3(帳簿書類に取引の全部又は一部を隠蔽し又は仮装して記載したか)について

原処分庁 請求人
上記(2)のとおり、請求人は、故意に事実をわい曲して、本件請求書に基づき本件輸入取引に係る仕入額を過大に計上したのであり、このことは、法人税法第127条第1項第3号に規定する「帳簿書類に取引の全部又は一部を隠蔽し又は仮装して記載し」たことに該当する。 上記(2)のとおり、請求人は、故意に事実をわい曲していないから、法人税法第127条第1項第3号に規定する「帳簿書類に取引の全部又は一部を隠蔽し又は仮装して記載し」たことに該当しない。

4 当審判所の判断

(1) 争点1(本件差額が過大に損金の額に算入されていたか)について

  • イ 争点1-1(本件輸入取引に係る仕入額は、本件輸入申告額か否か)について
    • (イ) 認定事実
       請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
      • A 本件代表者は、Q社の代表取締役として、本件輸入取引の商品仕入れに関し、Sが開設している事業者向けショッピングサイト(以下「T」という。)にQ社のIDでログインした上、Tでアパレル商品等を購入していた。
         また、本件代表者は、Q社の代表取締役として、本件輸入取引に関し、一回の輸入申告手続に係る商品について、一つの取引日請求書を作成しており、輸入申告手続に係る取引と取引日請求書記載の取引との対応関係が分かるように、取引日請求書の左下部に「○○○○貨物番号」等として当該輸入申告手続に係る輸入許可通知書に記載された「AWB番号」(航空貨物運送状番号)を記載していた。
      • B 請求人は、本件各事業年度において、請求人の総勘定元帳に、本件輸入取引の仕入額として、別表4の「元帳計上年月日」欄記載の各年月日に「本件元帳計上額」欄記載の各金額を計上した(ただし、平成26年6月26日については、借方金額に3,052,981円を計上した上、「仕入前期過大計上分 訂正」として、借方金額に3,167,782円を、貸方金額に3,100,000円をそれぞれ計上した。)。
         上記のとおり本件各事業年度において請求人の総勘定元帳に計上された金額のうち、平成27年1月期及び平成29年1月期に計上された金額並びに平成28年1月31日に計上された金額については、合計額請求書の各総合計金額と一致する。
         なお、これら以外の日(平成27年3月12日から同年11月20日まで)については、請求人は、合計額請求書の各総合計金額から、Q社が、合計額請求書とは別に、請求人宛に月ごとに発行した請求書(合計額請求書の総合計金額のほか、同請求書に記載されなかった請求人との間で精算すべき送料等が記載され、精算後の金額(請求額)が記載されたもの)に記載された送料等を考慮して計上した。
      • C 請求人は、少なくとも以下の年月日において、Q社指定の口座に、以下の合計額請求書に記載された、本件輸入取引の1か月分の各総合計額(別表4の当該各「元帳計上年月日」欄の「本件元帳計上額」欄記載の各金額)をそれぞれ振り込んだ。
        • (A) 平成26年10月28日 同月1日付の合計額請求書
        • (B) 平成26年11月28日 同月3日付の合計額請求書
        • (C) 平成26年12月26日 同月2日付の合計額請求書
      • D 請求人は、平成27年4月30日及び同年6月3日、Q社指定の口座に、別表4の当該各「元帳計上年月日」欄の「本件元帳計上額」欄記載の各金額をそれぞれ振り込んだ。
      • E 取引日請求書のうち、少なくとも平成27年2月2日付から平成28年2月26日付までの各請求書では、主として商品の単価が人民元で設定され、その全商品の合計額が「仕入れ金額RMB」欄に、その金額に諸手数料〇%及び送料を加算した金額が「請求金額RMB」欄に、その金額に1人民元当たり20円で円換算した金額が「日本円換算(20)」欄(ただし、平成27年6月4日から平成27年8月28日付取引日請求書については、1人民元当たり22円で円換算した金額が「日本円換算(22)」欄となっていた。)にそれぞれ記載されており、同欄記載の各金額が合計額請求書に転記されていた。
         さらに、これらの請求書のうち、少なくとも以下の各請求書には、本件代表者がTで仕入れた商品につき、その仕入単価と同額かほぼ同額の単価の商品が複数記載されていた。なお、これらの各請求書の「仕入れ金額RMB」欄及び「日本円換算(20)」欄記載の各金額は以下のとおりである。
      • 取引日請求書「仕入れ金額RMB」「日本円換算(20)」
        (A) 平成27年11月13日付10768.5人民元259,844円
        (B) 同年12月1日付47428.5人民元1,139,684円
      • F 上記Eの(A)及び(B)の各請求書記載のAWB番号による請求人の輸入申告書添付のインボイスには、単価も含め商品価格は全てUSドルのみが記載されており、運賃も含めた申告価格(CIF)は、いずれも通関時の税関の公示レートで日本円に換算されており、当該申告価格(CIF)は、以下のとおりであった。なお、当該インボイス記載の商品の個数は、いずれも上記Eの(A)及び(B)の各請求書記載の商品の個数よりも少なかった。
                    申告価格(CIF)
        • (A) Eの(A)の請求書   149,981円
        • (B) Eの(B)の請求書   607,175円
      • G 取引日請求書のうち、少なくとも平成28年3月22日から平成29年1月21日までの各請求書では、商品の単価がUSドルで設定され、その全商品の合計額が「請求金額(USD)」欄に、その金額に1USドル当たり120円で円換算した金額が「日本円換算(120)」欄にそれぞれ記載されており、同欄記載の各金額が合計額請求書に転記されていた。
      • H 上記Gの期間の取引のうち、少なくとも以下の取引日請求書に係る請求人の輸入申告の申告価格(CIF)は、取引日請求書の「請求金額(USD)」欄記載の金額に運賃を加えた上、通関時の税関の公示レートで日本円に換算されていた。なお、これらの各請求書の「日本円換算(120)」欄記載の各金額及び当該請求書に係る取引の申告価格(CIF)は以下のとおりである。また、上記Gの期間の公示レートは1USドル当たり120円を大きく下回ることが多かったため、当該期間の申告価格(CIF)も、運賃を加えても、取引額請求書記載の金額より下回ることが多かった。
      •   取引日請求書「日本円換算(120)」申告価格(CIF)
        (A) 平成28年8月30日付635,112円540,511円
        (B) 同年11月1日付171,872円167,048円
        (C) 同月2日付390,237円350,149円
        (D) 同月21日付213,228円195,384円
        (E) 同月25日付434,766円411,708円
        (F) 同月30日付126,202円119,885円
        (G) 同年12月6日付404,347円393,301円
        (H) 同日付171,324円164,856円
      • I 請求人は、本審査請求の申立て後、本件輸入取引に係る輸入申告につき、修正申告する意向を示し、令和元年10月17日、同月18日、同月21日及び同月23日、本件輸入取引のうち、準備が整った分として、平成26年11月5日から平成27年2月1日までの間にされた輸入申告について、取引額請求書記載の金額に基づいて修正申告を行い、追加の関税、消費税及び地方消費税並びに延滞税を支払った。
    • (ロ) 本件代表者のM税関に対する申述の信用性の検討
      • A 原処分庁は、本件輸入申告額が本件輸入取引に係る真正な仕入額であると主張し、この主張を裏付ける証拠として、本件代表者が、平成29年6月6日付のM税関所属の調査担当職員作成の記録書において、税関に申告した価格が正しい価格であり、請求人の仕入額となる、Q社からの請求書に基づいて決済した金額は過大となっているなどと申述している(以下「本件申述」という。)旨指摘する。
         これに対し、請求人は、本件申述の信用性を争い、本件代表者は、当審判所に対し、1本件輸入取引では、Tでの購入金額を商品単価とし、それに諸手数料を上乗せして取引価格を決定した、2ある時期では、商品単価をUSドルで設定し、それに1USドル当たり120円の為替レートで一律に円換算した金額を取引価格とした、3税関における輸入申告では、当該申告日の為替レートで円換算した金額を申告しており、当該為替レートは1USドル当たり120円よりも円高であることがほとんどであったため、本件輸入取引の実際の取引価格よりも低額となった、4本件税関調査を受けた際には、関税や消費税を追加で支払わなければならないことを認識していたが、税関の職員から、平成29年6月6日付の質問応答記録書に署名押印すれば、関税等を追加で支払わなくとも税関調査を終了すると言われ、ラッキーだと思って、真実とは違うことを知りながら、上記記録書に署名押印した、などと答述するので、以下、本件申述の信用性について検討する。
      • B まず、そもそも、本件申述からは、税関に申告した価格が正しい価格であり、請求人の仕入額であるという具体的理由も明らかではなく、また、当該各輸入申告書に添付されたシッパー作成のインボイス以外には、これを裏付ける客観的証拠がない。
         また、上記(イ)のC及びDのとおり、別表4の記載のうち、「本件元帳計上額」欄記載の金額と同額が「元帳計上年月日」欄記載の日に実際に送金された事実が少なくとも5回あったことが確認されるところであり、少なくとも上記(イ)のC及びDの本件輸入取引に係る送金状況と、税関に申告した価格が正しい価格であり、請求人の仕入額であるという本件申述は整合しない。
         他方、本件輸入取引の価格決定方法等についての上記Aに記載の本件代表者の答述は、上記(イ)のEからHまでのとおりの本件請求書や輸入申告書の記載内容を一応合理的に説明するものであり、また、同Eのとおり、Tでの購入価格との関係など客観的証拠による裏付けがある部分もある。さらに、同Iのとおり、請求人は、本件輸入取引に係る輸入申告の申告価格について、上記答述に沿う内容で、実際に、一部修正申告をし、追加の関税等及び延滞税の支払までしているところである。そして、本件代表者が本件申述を行った理由についても、関税を逃れるためという動機もあり得ることからすれば、本件証拠上、上記答述が虚偽であるとして排斥することまではできない。
         以上のとおり、本件代表者の上記答述を排斥できない一方で、本件申述は、客観的事実と整合しない部分があり、その他本件申述に沿う証拠もないことから、本件申述は採用することができない。
    • (ハ) 小括
       上記(ロ)のとおり、本件申述は採用することができず、また、原処分庁提出証拠並びに当審判所の調査及び審理によっても、本件申述のほかに、本件各事業年度における本件輸入取引に係る仕入額が本件輸入申告額であるとする原処分庁の主張を裏付ける証拠はなく、請求人が本件各事業年度において本件輸入取引に係る仕入額を過大に計上していたことを認めるに足りる証拠もない。
       したがって、本件各事業年度における本件輸入取引に係る仕入額は、本件輸入申告額であるとはいえず、損金の額に算入された仕入額が過大であったとも認められない。
  • ロ 原処分庁の主張について
    • (イ) 原処分庁は、本件代表者は、本件税関調査ではM税関に申告した価格が正しい旨申述し、原処分庁調査ではM税関に申告した価格が誤っており本件請求書に基づく価格が正しい旨の申述をするなど、場当たり的な回答に終始している旨指摘する。
       しかしながら、本件代表者が各課税機関に対して場当たり的な回答をしているというのであれば、本件申述についても場当たり的にされたもので信用性が低いというべきであって、原処分庁の上記指摘は、前記判断を左右しない。
    • (ロ) また、原処分庁は、請求人がM税関に対して本件輸入取引に係る輸入申告の修正申告を行っていない以上、既に行った輸入申告が正当なものであると認めざるを得ない旨主張する。
       しかしながら、請求人による輸入申告の修正申告の有無にかかわらず、原処分庁が更正処分等をするに当たっては、当該処分に係る課税要件を充足するかについて、自ら認定・判断する必要があるのであり、請求人が輸入申告の修正申告を行っていないからといってその内容を正当なものと認めざるを得ないということにはならない。なお、請求人は、上記イの(イ)のIのとおり、原処分の後ではあるが、本件輸入取引に係る輸入申告について一部修正申告を行い関税等及び延滞税を追加で支払っているところである。
  • ハ 争点1の結論
     したがって、争点1-2について検討するまでもなく、本件各事業年度の本件輸入取引に係る仕入額につき、損金の額に算入された仕入額が過大であったとは認められない。

(2) 争点2(事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装したか)について

上記(1)のハのとおり、本件各事業年度における本件輸入取引に係る仕入額につき、損金の額に算入された仕入額が過大であったとは認められず、下記(4)のロからニまでのとおり、各更正処分は違法であって取り消すべきであるから、争点2について判断するまでもなく、同(4)のホ及びヘのとおり、各賦課決定処分についても、その全部を取り消すべきである。

(3) 争点3(帳簿書類に取引の全部又は一部を隠蔽し又は仮装して記載したか)について

上記(1)のハのとおり、請求人が本件輸入取引に係る仕入額を過大に計上したとは認められず、請求人が本件請求書に基づく金額を総勘定元帳に計上したことは、法人税法第127条第1項第3号の「帳簿書類に取引の全部又は一部を隠蔽し又は仮装して記載し」たことに該当するとは認められない。

(4) 原処分の適法性について

  • イ 本件青色取消処分
     上記(3)のとおり、請求人の帳簿書類につき、法人税法第127条第1項第3号に規定する青色申告の承認の取消事由に該当する事実があるとは認められないから、本件青色取消処分は違法であり、取り消すべきである。
  • ロ 本件法人税各更正処分
     上記(1)のハのとおり、本件各事業年度において、本件輸入取引に係る仕入額につき、損金の額に算入された仕入額が過大であったとは認められず、これと、上記イのとおりの本件青色取消処分の取消しを踏まえて、本件各事業年度の法人税の所得金額及び納付すべき税額を計算すると、いずれも別表1の「確定申告」欄の各金額と同額になるから、本件法人税各更正処分は違法であり、いずれもその全部を取り消すべきである。
  • ハ 本件地方法人税各更正処分
     上記ロと同様、本件各課税事業年度の地方法人税の課税標準法人税額及び納付すべき税額を計算すると、いずれも別表3の「確定申告」欄の各金額と同額になるから、本件地方法人税各更正処分は違法であり、いずれもその全部を取り消すべきである。
  • ニ 本件復興特別法人税更正処分
     上記ロのとおり、平成27年1月期の法人税額は別表1の「確定申告」欄の金額と同額であるところ、これに基づき平成27年1月課税事業年度の復興特別法人税の納付すべき税額を計算すると、別表5の「審判所認定額」欄のとおりであり、本件復興特別法人税更正処分の額を下回るから、その下回る部分について、本件復興特別法人税更正処分は違法である。
     なお、本件復興特別法人税更正処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
     したがって、本件復興特別法人税更正処分は、その一部を別紙1の「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。
  • ホ 本件法人税各賦課決定処分及び本件地方法人税各賦課決定処分
     上記ロ及びハのとおり、本件法人税各更正処分及び本件地方法人税各更正処分はいずれも違法であり、これを前提とする本件法人税各賦課決定処分及び本件地方法人税各賦課決定処分はいずれも違法であることから、これらの全部を取り消すべきである。
  • ヘ 本件復興特別法人税賦課決定処分
     上記ニのとおり、本件復興特別法人税更正処分は、その一部が違法であり、取り消すべきであるところ、取り消すべき復興特別法人税額は、その全てが重加算税の基礎となる税額であるため、これに伴う本件復興特別法人税賦課決定処分は違法であって、別紙1の「取消額等計算書」のとおり、その全部を取り消すべきである。

(5) 結論

以上によれば、本件審査請求にはいずれも理由があるから、原処分の一部を取り消すこととする。

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