(令和2年3月17日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、審査請求人らが、相続によって取得した土地の一部は広大地に該当するなどとして相続税の更正の請求をしたのに対し、原処分庁が、当該土地は広大地に該当しないなどとして更正をすべき理由がない旨の通知処分を行うとともに、更正処分等を併せて行ったことから、審査請求人らがその一部の取消しを求めた事案である。

(2) 関係法令等

関係法令等は、別紙3記載のとおりである。
 なお、別紙3で定義した略語については、以下、本文、別表及び別図においても使用する。

(3) 基礎事実

当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。

  • イ 相続について
    • (イ) G4(以下「本件被相続人」という。)は、平成26年3月○日に死亡し、その相続(以下「本件相続」という。)が開始した。
    • (ロ) 本件相続に係る法定相続人は、本件被相続人の妻である審査請求人G1、同長男である審査請求人G2、同長女である審査請求人G3(以下、順に「請求人G1」、「請求人G2」及び「請求人G3」といい、これら3名を併せて「請求人ら」という。)、同二男であるG5、同三男であるG6及び同二女であるG7の6名(以下、これら6名を併せて「本件相続人ら」という。)である。
    • (ハ) 本件被相続人は、生前、別表1に記載する各土地(以下、同表の「略称」欄記載の略称を用いていうほか、本件7−1土地及び本件7−2土地を併せて「本件7土地」といい、本件1土地ないし本件7土地を併せて「本件各土地」という。)を所有しており、本件各土地のうち本件6土地を除く各土地を請求人G1が、本件6土地を請求人G2が、本件相続によりそれぞれ取得した。
  • ロ 本件各土地の位置、利用状況及び法的規制等について
     本件各土地の所在地番、地目及び地積等は、別表1のとおりであり、本件相続の開始時における本件各土地の位置、利用状況及び法的規制等は、次のとおりである。
    • (イ) 本件1土地及び本件2土地
      • A 本件1土地は、別図1−1のとおり、f県道g線(以下「県道g線」という。)、歩行者専用道路(以下「本件歩道」という。)、h市道i線(以下「市道i線」という。)及びh市道j線(以下「市道j線」という。)に接するおおむね長方形の土地である。
      • B 本件2土地は、別図1−1のとおり、県道g線、本件歩道及び市道j線に接するおおむね長方形の土地である。
      • C 本件1土地は、本件被相続人が代表取締役であったJ社が有する借地権が設定され、同社所有の建物(第三者が同社から賃借し、輸入家具店の店舗として使用)の敷地及び附属駐車場として使用されていた。
      • D 本件2土地は、J社が有する借地権が設定され、同社所有の建物(第三者が同社から賃借し、1階を自動車部品・用品の店舗及び整備場、2階を事務所として使用)の敷地及び附属駐車場として使用されていた。
      • E 本件1土地及び本件2土地が所在する地域の用途地域(都市計画法第8条《地域地区》第1項第1号に規定する用途地域をいう。以下同じ。)、建蔽率(建築基準法第53条《建蔽率》第1項に規定する割合をいう。以下同じ。)及び容積率(同法第52条《容積率》第1項に規定する割合をいう。以下同じ。)は、別図1−1のとおりである。
      • F 本件1土地から西側約200mに、地価公示法第3条《標準地の選定》の規定により選定された地価公示の標準地(標準地番号は○○○○−○。)が所在し、本件1土地との位置関係は、別図2−1のとおりである。
    • (ロ) 本件3土地ないし本件5土地
      • A 本件3土地ないし本件5土地は、別図1−2のとおり、いずれもh市道k線の道路沿いに位置する土地である。
      • B 本件3土地には個人であるYの有する借地権、本件4土地には個人であるZの有する借地権がそれぞれ設定されていた。
      • C 本件5土地は、第三者の権利が設定されておらず、建物も存在しない土地であった。
    • (ハ) 本件6土地
      • A 本件6土地は、別図1−3のとおり、その南側においてf県道m線(以下「県道m線」という。)と接する南北に細長いおおむね三角形の土地である。
      • B K社は、建設機械及び車両等のリース業を営む法人であり、本件被相続人から本件6土地を賃借していた(以下、この賃借に係る賃貸借契約を「本件賃貸借契約」という。)。また、K社は、本件6土地の一部を同社が所有する事務所及び工場(以下、これらの建築物を「本件各建築物」という。)の敷地として使用し、それ以外の部分は、同社が所有する建設機械及び車両等の保管場所として使用していた。
      • C 本件各建築物について、L市平成26年度固定資産評価証明書(以下「L市平26評価証明書」という。)には要旨次の記載がある。
        • (A) 事務所
          所在地 L市p町○−○
          用途 事務所
          構造 軽量鉄骨系平屋建てプレハブ型
          床面積 41.91u
          建築年月日 昭和63年9月28日
        • (B) 工場
          所在地 L市p町○−○
          用途 工場
          構造 鉄骨造平屋建て
          床面積 103.06u
          建築年月日 昭和63年9月20日
    • (二) 本件7土地
      • A 本件7土地は、別図1−4のとおり、f県道q線(以下「県道q線」という。)から南西約100mの場所に位置し、当該○○を起点とした行き止まり道路(以下「本件7土地前面道路」という。)と等高で接する1筆の土地である。
      • B 本件7土地は、建物及び構築物がいずれも存在しない自用地であった。
         なお、本件7−1土地上には砂利が敷かれており、本件7−2土地は休耕地であった。
      • C 本件7土地が所在する地域は、評価通達11に定める倍率方式により評価する地域であるところ、Mが定めた平成26年分の財産評価基準書(以下「平26評価基準書」という。)の「倍率表」には、本件7土地が所在する地域で地目が宅地である場合の土地の固定資産税評価額に乗ずる倍率(以下、単に「倍率」という。)は1.1と定められており、当該地域で地目が雑種地である場合の倍率は定められていない。
      • D 本件7土地前面道路の道路沿いの地域は、戸建住宅が建ち並び、当該地域に存する土地はいずれも当該道路に等高に接していた。
      • E 本件7土地前面道路には、固定資産税路線価(固定資産評価基準第1章第3節の二の(-)の1の(2)所定の固定資産税評価額を計算するための路線価をいう。以下同じ。)が付されており、その価額は20,510円である。
      • F 本件被相続人は、本件7−2土地について、平成25年11月19日付でN県知事から農地法第5条《農地又は採草放牧地の転用のための権利移動の制限》の規定による農地を農地以外のものにするための許可を受けている。

(4) 審査請求に至る経緯

  • イ 本件相続人らは、本件相続に係る相続税(以下「本件相続税」という。)について、相続税の申告書を、法定申告期限までに共同で原処分庁に提出した。
     なお、請求人らの上記申告書に記載された課税価格及び納付すべき税額は、それぞれ別表2の「申告」欄記載のとおりである。
  • ロ 原処分庁所属の調査担当職員は、平成28年12月12日、本件相続人らに対し調査を開始した。
  • ハ 請求人らは、本件相続税について、平成29年6月21日、原処分庁に対し、本件各土地の価額を評価するに当たり、広大地として評価していなかったなどとして、それぞれ別表2の「更正の請求」欄記載のとおりとすべき旨の各更正の請求をした(以下、当該各更正の請求を「本件各更正の請求」という。)。
  • ニ 原処分庁は、上記ロの調査に基づき、平成30年3月27日付で、本件各更正の請求に対し、更正をすべき理由がない旨の各通知処分(以下「本件各通知処分」という。)をするとともに、同日付で、請求人らに対し、別表2の「更正処分等」欄記載のとおり、各更正処分(以下「本件各更正処分」という。)並びに過少申告加算税の各賦課決定処分及び重加算税の賦課決定処分(以下、これらの各賦課決定処分を併せて「本件各賦課決定処分」という。)をした。
     なお、上記重加算税の賦課決定処分は、本件被相続人の財産として本件相続税の計算の基礎となる課税価格に計上すべきであった預金の一部を請求人G1が隠蔽したことによるものである。
  • ホ 請求人らは、上記ニの各処分を不服として、平成30年6月4日にそれぞれ審査請求をした。
     なお、請求人らは、請求人G1を総代として選任し、平成30年6月4日、その旨を当審判所に届け出た。
     また、請求人らは、請求人らの主張する本件各土地の価額を上回る部分に対応する税額に係る本件各通知処分並びに本件各更正処分及びこれらに伴う本件各賦課決定処分の取消しを求めるものである旨を当審判所に対して述べており、本件各賦課決定処分のうち重加算税の賦課決定処分に係る隠蔽行為があったことについては、原処分庁及び請求人らの当事者間に争いはない。

2 争点

(1) 本件1土地及び本件2土地は、それぞれ広大地に該当するか否か(争点1)。

(2) 本件3土地ないし本件5土地は、1画地の土地として広大地に該当するか否か(争点2)。

(3) 本件6土地は、評価通達25の(1)の本文に定める「借地権の目的となっている宅地」に該当するか否か(争点3)。

(4) 原処分庁が算定した本件7土地の価額に、相続税法第22条に規定する時価を上回る違法があるか否か(争点4)。

3 争点についての主張

(1) 争点1(本件1土地及び本件2土地は、それぞれ広大地に該当するか否か。)について

原処分庁 請求人ら
本件1土地及び本件2土地は、以下の理由によりいずれも広大地に該当しない。 本件1土地及び本件2土地は、以下の理由によりいずれも広大地に該当する。
イ 広大地通達に定める「その地域」
  • (イ) 平成24年6月20日東京地裁判決によれば、「その地域」の範囲は「各土地の利用の状況、環境等がおおむね同一と認められる、ある特定の用途に供されることを中心としたひとまとまりとみるのが相当な地域」と判断されている。
  • (ロ) ○○○○−○の平成29年度地価公示に関する鑑定評価書(以下「○○○○−○鑑定書」という。)では、周辺の土地の利用状況を「小売店舗、事務所等が建ち並ぶ路線商業地域」と判断し、また、近隣地域の範囲を「北0m」としてQ市が施行するR区域内の地域に限定している。そして、本件1土地及び本件2土地は、1県道g線に接し、2R区域内にあり、3店舗又は事務所の敷地に供されているなどの点で、○○○○−○鑑定書の近隣地域と同様である。
  • (ハ) 上記(ロ)を同(イ)に照らせば、本件1土地及び本件2土地に係る「その地域」は、別図2−1のとおりR区域内にある県道g線沿線で、東側はL市との市境、西側はS郵便局までの範囲(以下「原処分庁主張地域」という。)と認められる。
イ 広大地通達に定める「その地域」
 広大地通達に定める「その地域」については、河川や丘などの自然状況や道路、公園などの土地の使用状況の連続性及び一体性などがおおむね同一と認められるひとまとまりの地域とされている。これに基づき本件1土地及び本件2土地に係る「その地域」を判断すると、西は市道i線、南は県道g線、東は県道q線、北は県道m線の各公道に囲まれた地域(以下「請求人ら主張地域」という。)とすべきであり、具体的には別図2−1のとおりである。
ロ 標準的な宅地の地積
 ○○○○−○鑑定書によれば、近隣地域における標準的な宅地の規模を400uとしていることから、原処分庁主張地域における「標準的な宅地の地積」は、400uと認められる。
ロ 標準的な宅地の地積
 本件1土地及び本件2土地がいずれも接する市道j線に接続する戸建住宅5棟の敷地の平均地積からすると、請求人ら主張地域における「標準的な宅地の地積」は240uと認められる。
ハ 経済的に最も合理的な使用
 県道g線の沿線は、店舗及びその駐車場としての利用か、店舗兼住宅、あるいは、共同住宅及びその駐車場としての利用がほとんどであり、戸建住宅としての利用はない。この点について、県道g線沿線の地区区分は、普通商業・併用住宅地区とされ、また、○○○○−○鑑定書においても、○○○○−○周辺の土地の利用状況は、「小売店舗、事務所等が建ち並ぶ路線商業地域」であるとされている。
 本件相続の開始時において、本件1土地及び本件2土地には、それぞれにJ社が所有する家屋があり、いずれも事務所、あるいは店舗及び来客用駐車場の用に供されていたことからすると、本件1土地及び本件2土地の利用状況は、いずれも路線商業地域内にある土地として○○○○−○周辺の土地の利用状況と同様である。
 そうすると、本件1土地及び本件2土地は、路線商業地域内にある土地として、経済的に最も合理的に使用されていると認められる。
ハ 経済的に最も合理的な使用
 本件1土地及び本件2土地の周辺地域は、地方公共団体が定めた条例において商業・事務所系施設の集積を目指す地域として指定されている訳ではなく、また、当該地域の標準的利用状況を確認したところ、中層の共同住宅は散見される程度であり、現在、建築工事中のものはなく、中高層の集合住宅等の敷地としての利用に地域が移行しつつある状態でもないことから、中高層の集合住宅等の敷地用地として利用することよりも、戸建住宅用地として利用することが、最も経済的かつ合理的であるといえる。
 また、本件1土地及び本件2土地に存する各建物は、いずれもトタンが主要材料であり、長期の貸与ではなく当面の収入を得ることを目的として建築したものであることが第三者の目線から見ても明らかであるから、単に当該各建物が店舗等の用に供されていることのみをもって本件1土地及び本件2土地が経済的に最も合理的に使用されているとは言い難い。
ニ 公共公益的施設用地の要否
 本件1土地及び本件2土地は、いずれもR区域内にある長方形の土地であり、かつ、複数の路線に接していることから、仮に、原処分庁主張地域における「標準的な宅地の地積」である400u程度に分割した場合であっても、別図2−2のとおり、いずれの画地も既存の道路に接することが可能であるから、新たに道路を開設する必要は認められない。
 なお、原処分庁主張地域は、R区域内にあり、原処分庁主張地域内の各土地はいずれも整地された形状の整った土地であるから、そもそも開発行為を行う必要はなく、路地状開発や公共公益的施設用地が生じるような開発の実績もない。
ニ 公共公益的施設用地の要否
 本件1土地は、市道i線からの奥行きが38.4m、県道g線からの奥行きが58.5mあり、本件2土地は、県道g線及び市道j線からそれぞれ47.3mの奥行きがあること、また、本件1土地及び本件2土地は本件歩道により分断されていることから、本件1土地及び本件2土地に開発行為を行う場合には、それぞれの土地に開発道路を設置することが必要である。
 そして、戸建住宅用地を取得する側と戸建建売りをする業者のいずれの立場からしても、路地状開発よりも公の道路を開設する開発行為を行うことが経済的に合理的である。
 なお、R区域においては路地状開発の実績はない。

(2) 争点2(本件3土地ないし本件5土地は、1画地の土地として広大地に該当するか否か。)について

原処分庁 請求人ら
本件相続の開始時において、本件3土地はYに対する貸宅地、本件4土地はZに対する貸宅地、本件5土地は原野及び畑(一部宅地を含む自用地)の用にそれぞれ供されており、評価通達7及び同通達7−2の定めに基づき評価単位を判断すれば、本件3土地ないし本件5土地は3画地に区分することができ、それぞれの評価単位に基づいて該当する評価通達を適用して評価することになるから、当該各土地を1画地の土地として広大地に該当する旨判定することは相当でない。 一団の土地が、戸建分譲を目的とした開発行為を行うことができ、かつ、当該一団の土地が広大地に該当する場合には、地目又は利用の有無(借地権等の権利の設定の有無)に関係なく、当該一団の土地を併せて1画地の広大地として評価すべきであり、本件5土地は、本件3土地及び本件4土地の背面に接続しており横に細長く不整形な地形となっていることから、本件3土地及び本件4土地を除いたところでの戸建用地の開発は行うことができず、本件3土地及び本件4土地を含めたところでの開発は必要不可欠であるから、当該各土地は1画地の土地として広大地に該当する。

(3) 争点3(本件6土地は、評価通達25の(1)の本文に定める「借地権の目的となっている宅地」に該当するか否か。)について

原処分庁 請求人ら
本件6土地は、以下の理由により宅地に該当せず、したがって「借地権の目的となっている宅地」に該当しない。 本件6土地は、以下の理由により「借地権の目的となっている宅地」に該当する。
  • イ 本件6土地は、本件相続の開始時において、K社に一括して貸し付けられている土地であり、K社は、本件6土地全体を営業所として利用するに当たり、本件6土地をコンクリート又はアスファルトで舗装し、その一部を本件各建築物の敷地の用に供したほか、建設機械及び車両等の保管場所の用に供していたところ、本件各建築物の床面積の合計144.97uは、本件6土地の合計地積1,497.4uの10%にも満たない(9.68%)ものである。
  • ロ そして、L市平26評価証明書に記載された本件6土地を構成する各土地の現況地目は、5筆の合計地積1,497.4uのうち、2筆1,387uを雑種地としており、現況地目を宅地としているのは1筆31uのみである。
  • ハ 評価通達7は、異なる2以上の地目からなる土地の評価について、一体として利用されている一団の土地が2以上の地目からなる場合は主たる地目からなるものとしてその一団の土地ごとに評価する旨定めており、同通達7−2は、雑種地は利用の単位となっている一団の雑種地を評価単位とする旨定めているところ、本件6土地の主たる地目は、上記イ及びロの状況からすると雑種地と認められるから、本件6土地は宅地ではなく雑種地として評価することになる。
  • イ 評価通達における借地権は、建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権をいうとされており、建物とは、屋根及び周壁を有し、土地に定着してある程度の耐久性を有する建築物と解するのが一般的であるところ、本件各建築物は、@基礎があり、土地に定着していること(定着性)、A居住、作業、貯蔵等の用途に供し得る状態にあること(用途性)をも判断要素に検討し、建物に当たると判断されることから、本件6土地は借地権の目的となっている宅地に該当する。
     なお、本件賃貸借契約は、締結から20年を経過しており、その後に締結した賃貸借契約は、賃貸借期間を定めたものではなく、賃借料の改定期間を5年と定めているだけである。借地権については、本件各建築物が建築された当初の賃貸借契約で既に設定されている。
  • ロ 本件6土地の借地権の範囲については、次のとおりである。
     ファミリーレストラン等のように、建物及び当該建物と一体として利用される駐車場の敷地の借地権の範囲については、建物が建てられている敷地だけでなく、建物の維持若しくは効用を果たすために必要な土地も含まれるものとして取り扱うのが適切である。本件6土地は、大規模な保管場所を要するリース用機材の貸出しを主たる業務としているK社に賃貸しているものであり、その大半が建設機械及び車両等の保管場所に供されているとしても、それは、業務遂行上欠くことのできない用地として利用されているのであるから、借地権は建物が建てられている部分のみに限定されるのではなく、当該土地全てに及ぶことになる。

(4) 争点4(原処分庁が算定した本件7土地の価額に、相続税法第22条に規定する時価を上回る違法があるか否か。)について

原処分庁 請求人ら
本件7土地の評価においては、以下のとおり、原処分庁が用いた価額の算定方法に誤りはないことから、当該価額には時価を上回る違法はない。 本件7土地の評価においては、以下のとおり価額を算定すべきであって、原処分庁が算定した価額には時価を上回る違法がある。
イ 地目について
 評価通達7は、課税時期における現況地目の別に評価する旨定めているところ、本件7−1土地は、L市平26評価証明書に記載された現況地目が雑種地であるから、評価通達82の本文の定めにより評価することとなり、本件7−2土地は、同評価証明書に記載された現況地目が畑であり、農地転用許可を受けているから、同通達36−4《市街地農地の範囲》の(1)に定める市街地農地に該当し、同通達40の本文の定めにより評価することとなる。
イ 地目について
 本件7土地はいずれの用にも供されていない未利用地である雑種地であるから、本件7−1土地及び本件7−2土地はいずれも雑種地として評価すべきである。
ロ 上記イを踏まえた具体的な評価方法
  • (イ) 雑種地である本件7−1土地と評価通達82の本文に定める「状況が類似する付近の土地」は、本件7土地前面道路の両側には戸建住宅が建ち並んでいること、当該道路には平成26年度の固定資産税路線価(以下「本件固定資産税路線価」という。)が付されていることから、当該道路に接する宅地と認められ、その1e当たりの価額は、当該固定資産税路線価に宅地の倍率を乗じた価額となる。
     なお、本件7−1土地は既に砂利が敷かれている上、長方形の土地で著しい傾斜も認められないことから、当該土地の評価上考慮すべき事情は認められない。
  • (ロ) また、上記イのとおり、市街地農地である本件7−2土地は評価通達40の本文の定めにより評価することとなるところ、その農地が宅地であるとした場合の1e当たりの価額は、本件固定資産税路線価に宅地の倍率を乗じた価額となる。
     なお、本件7−2土地も、本件7−1土地と同様、長方形の土地で著しい傾斜も認められないことから、評価通達40の本文に定めるその農地を宅地に転用する場合において通常必要と認められる1e当たりの造成費に相当する国税局長の定める金額は、平26評価基準書に定めた整地費の金額400円が相当と認められる。
ロ 上記イを踏まえた具体的な評価方法
 雑種地は、評価の対象となる土地と類似する雑種地が近傍に選定できる場合は、当該近傍の雑種地の価額で評価することを原則とすべきであるため、(本件7−2土地と状況が類似する近傍の雑種地である)本件7−1土地は当該土地に付された(雑種地としての)固定資産税評価額に1.1(固定資産税評価額と相続税評価額の水準差)を乗じた価額により評価し、本件7−2土地は本件7−1土地の当該価額を比準地価額として評価すべきである。
 本件7土地全体が不特定多数の者の通行の用に供されている道路等により物理的に分離されている訳でもなく、一体として利用されていることからも、本件7−2土地の比準土地の地目をあえて近傍宅地とする理由はない。

4 当審判所の判断

(1) 各争点に共通する法令解釈

相続税法第22条は、相続財産の価額は、特別に定める場合を除き、当該財産の取得の時における時価によるべき旨を規定しており、ここにいう時価とは相続開始時における当該財産の客観的な交換価値をいうものと解するのが相当である。
 そして、相続財産の客観的交換価値は、必ずしも一義的に確定されるものではないから、これを個別に評価する方法を採ると、その評価方式、基礎資料の選択の仕方等により異なる評価額が生じることを避け難く、また、課税庁の事務負担が重くなり、迅速かつ適切な課税事務の処理が困難となるおそれがあることなどから、課税実務上は、法に特別の定めのあるものを除き、相続財産評価の一般的基準が評価通達によって定められ、原則としてこれに定められた画一的な評価方式によって、相続財産を評価することとされている。このような扱いは、税負担の公平、納税者の便宜、徴税費用の節減といった観点からみて合理的であり、これを形式的に全ての納税者に適用して財産の評価を行うことは、通常、税負担の実質的な公平を実現し、租税平等主義にかなうものであるということができる。
 そうすると、評価対象の財産に適用される評価通達に定められた評価方法が適正な時価を算定する方法として一般的な合理性を有するものであり、かつ、当該財産の相続税の課税価格がその評価方法に従って決定された場合には、当該財産の価額は、同通達に定められた評価方法を画一的に適用することによって当該財産の「時価」を超える評価額となり適正な時価を求めることができない結果となるなど、同通達に定められた評価方法によるべきではない特別な事情が存しない限り、同通達に定められた評価方法によって評価するのが相当であり、同通達に定められた評価方法に従い算定された評価額をもって当該財産の「時価」であると事実上推認することができるものというべきである。

(2) 争点1(本件1土地及び本件2土地は、それぞれ広大地に該当するか否か。)について

  • イ 法令解釈等
    • (イ) 広大地通達の趣旨について
       広大地通達は、評価の対象となる宅地の地積が当該宅地の属する地域の標準的な宅地の地積に比して著しく広大な宅地で、開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要と認められるものの価額の評価について、減額の補正を行う旨定めている。
       このような減額の補正を行うこととした趣旨は、1評価の対象となる宅地の地積が、当該宅地の価額の形成に関して直接影響を与える特性を持つ当該宅地の属する地域の標準的な宅地の地積に比して著しく広大で、2当該宅地が評価の時点において経済的に最も合理的に使用されておらず開発行為を要するときに、経済的に最も合理的な開発行為が当該宅地を細分化して戸建住宅を建築することである場合、当該開発行為により道路、公園等の公共公益的施設用地の負担が必要になって、いわゆる潰れ地が生じ、評価通達15ないし同通達20−5による減額の補正では十分といえない場合があることから、このような宅地の価額の評価に当たっては、潰れ地が生じることを当該宅地の価額に影響を及ぼす事情として、価値が減少していると認められる範囲で減額の補正を行うこととしたものと解される。
       しかしながら、評価の時点における当該宅地の属する地域の建物の建築状況等に照らして、経済的に最も合理的な使用が、当該宅地を工場や中高層の集合住宅等の敷地として一体で使用することである場合には、公共公益的施設用地の負担は必要とならず、潰れ地が生じないため、減額の補正を行う必要はないことから、広大地に該当しない旨も定めている。
       当審判所においても、上記の広大地通達の取扱いは相当であると認める。
    • (ロ) 広大地通達における「その地域」について
       上記(イ)の広大地通達の趣旨に照らすと、同通達でいう評価の対象となる宅地の属する「その地域」とは、1河川や山などの自然的状況、2行政区域、3都市計画法による土地利用の規制などの公法上の規制等、4道路、鉄道及び公園など、土地の利用状況の連続性や地域の一体性を分断して土地利用上の利便性や利用形態に影響を及ぼすことがあり得る客観的な事情を総合勘案し、利用状況、環境等がおおむね同一と認められる、ある特定の用途に供されることを中心としたひとまとまりの地域を指すものと解するのが相当である。
    • (ハ) 「標準的な宅地の地積」について
       次に、上記(イ)の広大地通達の趣旨に照らすと、広大地通達にいう「標準的な宅地の地積」とは、評価の対象となる宅地の付近で状況の類似する地価公示の標準地及び都道府県地価調査の基準地の地積並びに「その地域」における宅地の標準的な使用に基づく平均的な地積を勘案して求めた地積を指すものと解するのが相当である。
    • (ニ) 経済的に最も合理的な使用が評価の対象となる宅地を工場や中高層の集合住宅等の敷地として一体で利用することである場合(潰れ地が生じない場合)について
       そして、上記(イ)の広大地通達の趣旨に照らすと、「その地域」における@建物の建築の状況、A用途地域、建蔽率、容積率等の公法上の規制、B道路の幅員、配置等の利便性等から判断して、当該宅地を工場、中高層の集合住宅又は商業施設の敷地等として一体で使用(又は潰れ地が発生しないように区分して使用)することが経済的に最も合理的であると認められる場合には、潰れ地が生じない場合に該当するものと解するのが相当である。
  • ロ 認定事実
     原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、本件相続の開始時における本件1土地及び本件2土地周辺の状況について、以下の事実が認められる(別図1−1及び同2−1参照)。
    • (イ) 本件1土地及び本件2土地の南側には、片側2車線(計4車線で中央分離帯が設置されている。)の交通量が多い幹線道路である県道g線が存し、その幅員は30mである。
    • (ロ) 本件1土地及び本件2土地の東側には、幹線道路である県道q線が存し、その幅員は6mないし9mである。
    • (ハ) 本件1土地及び本件2土地の西側には、Q市の幹線道路である市道i線が存し、その幅員は16mである。
    • (ニ) 県道g線の道路沿い南北25m以内の地域における用途地域は準住居地域であり、建蔽率は60%、容積率は200%である。また、県道g線の道路沿い南北25mを超える地域における用途地域は、市道i線の道路沿い東西25m以内の地域を除き第一種低層住居専用地域であり、建蔽率は50%、容積率は100%である(別図1−1参照)。
       なお、準住居地域及び第一種住居地域は、店舗等の商業施設の建築に支障がない地域であるが、第一種低層住居専用地域は、原則として店舗等の商業施設の建築が認められない地域である。
    • (ホ) 本件1土地の用途地域は、準住居地域、第一種住居地域及び第一種低層住居専用地域にまたがるが、当該土地の地積のうち、準住居地域及び第一種住居地域の地積がその過半を占める。また、本件2土地の用途地域も、準住居地域及び第一種低層住居専用地域にまたがるが、当該土地の地積のうち、準住居地域の地積がその過半を占める。
    • (ヘ) 県道q線及び市道i線に挟まれ、かつ、県道g線の北側に接する各画地(以下、これらの各画地を併せて「本件地域」という。別図3参照。)の利用状況は、別表3のとおりであり、全6画地のうち4画地はいずれも駐車場を備えた商業施設の敷地として使用されている。
       また、残り2画地のうち1画地は共同住宅の敷地として使用され、もう1画地は未利用地であったが、本件相続の開始後、商業施設が建築され、その敷地及び附属駐車場として使用されている。
    • (ト) 本件地域の北側はL市との境界(別図2−1参照)まで、戸建住宅及び共同住宅などの住宅敷地又は畑及び原野等が混在する地域である。
    • (チ) 本件地域には、地価公示の標準地又は都道府県地価調査の基準地は存在しない。
  • ハ 当てはめ
    • (イ) 広大地通達に定める「その地域」について  
      • A 上記ロの(イ)ないし(ハ)のとおり、県道g線、県道q線及び市道i線はいずれも幹線道路であるから、これらの幹線道路の存する地域は当該各幹線道路によりそれぞれ南北又は東西に分断されているものと認められる。
      • B また、上記ロの(ニ)のとおり、県道g線の道路沿いは、用途地域が準住居地域であるから、別表3に掲げた店舗等の商業施設の建築に支障がないが、その北側は用途地域が第一種低層住居専用地域であるから、原則として店舗等の商業施設の建築が認められない地域である。
      • C そして、上記ロの(イ)のとおり、県道g線は交通量の多い幹線道路であり、当該○○に接している土地については、商業施設としての利用に適していることから、当該○○に接する土地と当該○○に接していない土地とは、その利用上の条件が異なるものと認められるところ、同(ヘ)のとおり、現に県道g線の道路沿いの各画地の大部分は商業施設の敷地として利用されているが、同(ト)のとおり、その北側の地域は住宅又は原野等が存する閑静な地域である。
      • D 以上からすると、本件1土地及び本件2土地が属する「その地域」は、県道q線及び市道i線に挟まれた県道g線の北側に接する各画地で構成される本件地域とすることが相当である。
         なお、上記ロの(ホ)のとおり、本件1土地は、準住居地域及び第一種住居地域の地積が過半を占めることから、当該土地について店舗等の商業施設を建築することに支障はなく、また、本件2土地も、準住居地域の地積が過半を占めることから、店舗等の商業施設を建築することに支障がない土地である。
      • E 請求人ら及び原処分庁の主張について  
        • (A) 請求人ら主張地域
           請求人らは、本件1土地及び本件2土地に係る「その地域」は、請求人ら主張地域(別図2−1参照)である旨主張する。
           しかしながら、請求人ら主張地域は、交通量が多い幹線道路である県道g線の道路沿いの地域と当該○○の道路沿いでない地域を一つの地域としていること及び当該○○の道路沿いの地域と用途地域、建蔽率及び容積率がいずれも異なる当該○○の道路沿いの地域より北側の地域を一つの地域としていることから、上記イの(ロ)の広大地通達における「その地域」の解釈に照らして、ある特定の用途に供されることを中心としたひとまとまりの地域と認めることはできない。
           したがって、請求人らの主張には理由がない。
        • (B) 原処分庁主張地域
           原処分庁は、本件1土地及び本件2土地に係る「その地域」は、原処分庁主張地域(別図2−1参照)である旨主張する。
           しかしながら、原処分庁主張地域は、県道g線の南側の地域まで本件1土地及び本件2土地に係る「その地域」に含めるものであるが、上記Aのとおり、当該南側の地域と本件地域は、交通量が多く中央分離帯も設置されている幹線道路である県道g線によって南北で分断されているものと認められることから、上記イの(ロ)の広大地通達における「その地域」の解釈に照らして、ある特定の用途に供されることを中心としたひとまとまりの地域と認めることはできない。
           したがって、原処分庁の主張には理由がない。
    • (ロ) 標準的な宅地の地積について  
      • A 上記ロの(ヘ)のとおり、本件地域に存する土地6画地のうち4画地は駐車場を備えた商業施設の敷地として使用され、また、残り2画地のうち1画地(未利用地)も本件相続の開始後、駐車場を備えた商業施設の敷地として使用されていることからすると、本件地域における宅地の標準的な使用は駐車場を備えた商業施設の敷地であると認められる。
         そして、本件地域に所在する土地のうち標準的な使用の5画地(上記未利用地を含む。)の平均地積は、別表3のとおり、1,190u程度であることからすると、本件地域の標準的な宅地の地積は1,190u程度であると認められる。
         そうすると、本件2土地はその地積が1,190.61uであるから、広大地通達に定める標準的な地積に比して著しく地積が広大な土地とは認められない。
         したがって、本件2土地は広大地に該当しない。
      • B 請求人ら及び原処分庁の主張について  
        • (A) 請求人らの主張する標準的な宅地の地積
           請求人らは、市道j線に接続する戸建住宅5棟の敷地の平均地積からすると、「その地域」における「標準的な宅地の地積」は240uと認められる旨主張する。
           しかしながら、請求人らの主張する平均地積は、上記ハの(イ)の当審判所が相当と認める「その地域」である本件地域とは異なる地域を前提として判断したものであり、また、上記Aのとおり、本件地域の標準的な宅地の使用は、駐車場を備えた商業施設の敷地であるから、請求人らの主張には理由がない。
        • (B) 原処分庁の主張する標準的な宅地の地積
           原処分庁は、○○○○−○鑑定書において、○○○○−○の近隣地域における宅地の標準的な地積を400uとしていることから、「その地域」における「標準的な宅地の地積」は、400uと認められる旨主張する。
           しかしながら、上記ロの(チ)のとおり、○○○○−○は本件地域内に存しないことから、上記400uを「標準的な宅地の地積」として用いることはできない。
           したがって、原処分庁の主張には理由がない。
    • (ハ) 経済的に最も合理的な使用について
       本件地域は、1交通量が多い幹線道路である県道g線の道路沿いに位置していること(上記ロの(ヘ))から、駐車場を備えた商業施設の敷地として使用することが適しているものと認められること(上記(ロ)のA)、2現に、大部分の画地が駐車場を備えた商業施設の敷地として使用されていること(上記ロの(ヘ))及び3本件地域内の土地のうち標準的な使用の5画地の平均地積は、1,190u程度であること(上記(ロ)のA)からすると、本件地域に存する土地の経済的に最も合理的な使用は、幹線道路沿いの駐車場を備えた商業施設(いわゆるロードサイド店舗)の敷地としての使用であると認められる。
       そして、本件1土地(2,213.77u)は、地積が大きく、駐車場を備えた商業施設の敷地として使用することが可能な土地であり、現に、本件相続の開始時より前から駐車場を備えた商業施設の敷地として一体で使用されていること(上記1の(3)のロの(イ)のC)からすると、当該土地の経済的に最も合理的な使用は、駐車場を備えた商業施設の敷地として一体で使用することであるものと認められるから、上記イの(ニ)の潰れ地が生じない場合に該当するため、広大地に該当しない。
    • (ニ) 請求人らの主張について
       請求人らは、本件1土地の経済的に最も合理的な使用は戸建住宅用地として分割して使用することであり、戸建住宅用地として開発を行う場合には、当該土地に開発道路を設置することが必要であるから、広大地に該当する旨主張する。
       しかしながら、上記(ハ)のとおり、本件1土地の経済的に最も合理的な使用は駐車場を備えた商業施設の敷地として一体で使用することであるものと認められるから、請求人らの主張には理由がない。

(3) 争点2(本件3土地ないし本件5土地は、1画地の土地として広大地に該当するか否か。)について

  • イ 法令解釈等
    • (イ) 評価通達7の本文は、土地の価額については、原則として課税時期における地目の別に評価する旨定めるとともに、そのただし書において、課税時期における地目が異なっていても一体として利用されている一団の土地については、その主たる地目からなるものとして一団の土地ごとに評価する旨定めているところ、これは現実の土地利用の実態に即した評価方法を定めているものと解され、当審判所においても相当であると認める。
    • (ロ) さらに、評価通達7−2の柱書は、土地の価額は評価単位ごとに評価し、同項(1)の本文は、宅地については1画地の宅地を評価単位とし、同項(4)のただし書は、市街地原野については利用の単位となっている一団の原野を評価単位とする旨定めている。
       なお、ここでいう評価単位(1画地の宅地又は一団の原野)とは、その土地を取得した者がその土地を使用、収益及び処分をすることができる利用単位又は処分単位であって、課税実務上、原則として、1所有者による自由な使用収益を制約する他者の権利(原則として使用貸借による使用借権を除く。)の存在の有無により区分し、2他者の権利が存在する場合には、その権利の種類及び権利者の異なるごとに区分してそれを1画地の宅地又は一団の原野として評価するものと取り扱われている。
       このような評価通達の定め及び課税実務上の取扱いは、土地の取引が通常利用単位ごとに行われその取引価格がその利用単位を基に形成されること及び所有する土地の一部に他者の権利が存在する場合には、当該部分については土地の所有者が自由に利用することができず、その他の部分と利用単位が異なるものとなることからして、当審判所においてもこれを相当であると認める。
  • ロ 認定事実
     原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、本件相続の開始時における本件3土地ないし本件5土地の地目、利用状況及び権利関係等について、以下の事実が認められる。
    • (イ) 本件3土地は、Yが有する借地権が設定され、同人の所有する建物の敷地として一体で利用されている宅地である。
    • (ロ) 本件4土地は、Zが有する借地権が設定され、同人の所有する建物の敷地として利用されている宅地である。
    • (ハ) 本件5土地は、第三者の権利が設定されていない市街地原野である。
  • ハ 当てはめ
     上記イのとおり、評価単位は、地目の別に区分した上で、他者の権利の存在の有無により区分し、その権利者の異なるごとに区分してそれを1画地の宅地又は一団の原野として評価するのが相当であるところ、上記ロの(イ)ないし(ハ)のとおり、宅地である本件3土地及び本件4土地には、それぞれ異なる権利者の有する借地権が設定されており、また、市街地原野である本件5土地には第三者の権利が設定されていないことからすると、これらの土地は、それぞれ別個の評価単位として評価するのが相当であるから、併せて1画地の土地として評価することはできない。
     したがって、本件3土地ないし本件5土地は1画地の土地として広大地に該当しない。
  • ニ 請求人らの主張について
     請求人らは、一団の土地が戸建分譲を目的とした開発行為を行うことが可能な土地であり、かつ、当該一団の土地が広大地に該当する場合には、地目又は借地権等の権利の設定の有無に関係なく当該一団の土地を併せて1画地の土地として評価すべきであり、本件5土地の開発には本件3土地及び本件4土地が必要不可欠であるから、当該各土地は1画地の土地として広大地に該当する旨主張する。
     しかしながら、請求人らの主張は、地目の異なる土地を一体で評価すべきというものであり、また、借地権の存在により土地所有者による利用が制限されている土地とそのような権利が設定されておらず、土地所有者による利用が制限されていない土地を一体で評価すべきというものであるから、現実の土地利用の実態から乖離したものである。
     したがって、請求人らの主張には理由がない。

(4) 争点3(本件6土地は、評価通達25の(1)の本文に定める「借地権の目的となっている宅地」に該当するか否か。)について

  • イ 法令解釈等
     評価通達25の(1)の本文に定める「借地権」とは、借地法又は借地借家法における定期借地権等を除いた建物の所有を目的とする地上権又は賃借権をいい(借地法第1条、借地借家法第2条第1号)、借地法第1条に規定する「建物ノ所有ヲ目的トスル」及び借地借家法第2条第1号に規定する「建物の所有を目的とする」とは、いずれも借地人の借地使用の主たる目的がその土地上に建物を築造し、これを所有することにある場合を指し、借地人がその土地上に建物を築造し、所有しようとする場合であっても、それが借地使用の主たる目的ではなく、その従たる目的にすぎないときは、これに当たらないと解される。
  • ロ 認定事実
     原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、本件相続の開始時における本件6土地の状況等について、以下の事実が認められる。
    • (イ) 本件賃貸借契約の内容等について
       本件賃貸借契約に係る契約書は、昭和53年から本件相続の開始時までの期間(昭和63年9月○日のK社設立前は、同社の設立者個人を借主として契約している。)において4回取り交わされており、当該各契約書の記載内容はそれぞれ要旨次のAないしDのとおりである。
       なお、次のAないしDのいずれの契約書においても権利金については取決めがなく、実際に権利金の授受が行われたことを示す資料の存在も確認できない。
       また、次のB及びCの各契約書は、いずれも同一の契約条項が当初から印刷された市販の定型書式を使用し、その空欄に手書きで文字を書き加えることにより作成されており、賃貸目的の項には「普通建物所有」と当初から印刷されているが、賃貸借の期間の項には手書きで「地主G10氏が使用の際は無条件で立退くことを約束します」と記載されている。
      • A 昭和53年6月1日付の土地賃貸借契約書(以下「契約書A」という。)
        • (A) 目的 重機保有
        • (B) 場所 r市s町○−○
        • (C) 賃貸借の期間 昭和54年5月31日までの1年間
      • B 昭和63年5月14日付の土地賃貸借契約書(以下「契約書B」という。)
        • (A) 目的 普通建物所有
        • (B) 場所 r市s町○−○
        • (C) 賃貸借の期間 記載なし(ただし、手書きで「地主G10氏が使用の際は無条件で立退くことを約束します」と記載されている。)
      • C 平成2年8月11日付の土地賃貸借契約書(以下「契約書C」という。)
        • (A) 目的 普通建物所有
        • (B) 場所 r市s町○−○
        • (C) 賃貸借の期間 記載なし(ただし、手書きで「地主G10氏が使用の際は無条件で立退くことを約束します」と記載されている。)
      • D 平成16年12月21日付の土地賃貸借契約書(以下「契約書D」という。)
        • (A) 目的 営業所
        • (B) 場所 r市s町○−○
        • (C) 賃貸借の期間等
          • a 5年間。ただし、期間満了の1か月前までに両者が話し合って更新することができる。
          • b 契約期間満了あるいは、契約解除のときは、賃借人は設備などを設置した場合は、自費でこれを撤去し土地を明け渡す期日までには、延滞なく原状に復旧の上、賃貸人に返還しなければならない。
          • c 賃借人は、本件6土地を明け渡すに際し、賃貸人に対し移転料その他これに類する金銭上の請求をしないものとする。
    • (ロ) 本件6土地の利用状況について
      • A 本件6土地は、本件各建築物の敷地として使用されている部分を除きK社所有のリース商品である建設機械及び車両等の保管場所として利用されている。
      • B 本件6土地のうち、本件各建築物の敷地として使用されているのは、本件各建築物の床面積合計約140u(上記1の(3)のロの(ハ)のC参照)及びその周辺部分であり、当該敷地の地積が本件6土地の総地積に占める割合はおおむね2割未満である。
    • (ハ) 対抗要件について
       本件6土地上の賃借権の設定登記及び本件各建築物の表題登記はいずれもされていない。
  • ハ 当てはめ
    • (イ) 上記1の(3)のロの(ハ)のBのとおり、K社は、建設機械及び車両等のリース業を営む法人であることからすれば、リース商品である建設機械及び車両等の保管場所として使用する土地が不可欠であるから、事務所用地等に優先してリース商品を保管するための土地を確保する必要があること、また、上記ロの(ロ)のとおり、現に本件6土地の大部分はリース商品である建設機械及び車両等の保管場所として使用されており、本件各建築物の敷地は当該土地の僅かな部分を占めるにすぎないことからすると、本件賃貸借契約の主たる目的はリース商品である建設機械及び車両等の保管場所を確保することであると認められる。
    • (ロ) 借地権の設定に際しては、通常、権利金の授受が行われ、その消滅に当たっては土地所有者が立退料の支払を要するなどの実態があるところ、上記ロの(イ)のとおり、契約書Aないし同Dのいずれにおいても、権利金の取決めがなく、賃貸借契約当事者間で権利金の授受が行われたことを示す資料の存在も確認できないこと、また、契約書Bないし同Dにおいては、K社が、本件被相続人が本件6土地を使用する際には無条件で立ち退く旨、あるいは、明け渡すに際して移転料等の金銭上の請求をしない旨の約定がなされていることからしても、本件賃貸借契約が建物の所有を主たる目的としたものとは認め難い。
       また、上記ロの(ハ)のとおり、本件6土地の賃借権は第三者対抗要件(民法第605条《不動産賃貸借の対抗力》、借地借家法第10条《借地権の対抗力等》第1項)を備えていないことからも、本件賃貸借契約の主たる目的が建物所有であるとは認められない。
       なお、上記ロの(イ)のとおり、契約書B及び同Cには、いずれもその目的の項に「普通建物所有」との記載があるものの、当該各記載は、いずれも市販の契約書に当初から印刷されていたものと認められること、当初の契約書(契約書A)では重機保有が目的とされていたこと、また、契約書Dでも目的は建物所有ではなく「営業所」とのみ記載されていることから、当該各印刷による記載をもって本件賃貸借契約が建物の所有を主たる目的とするものに更新されたと即断することはできない。
       以上の事情に加え、当審判所の調査によっても、ほかに本件6土地上に借地権が存在することをうかがわせる事実は確認できないことから、本件賃貸借契約の主たる目的が建物所有であるとは認められない。
    • (ハ) まとめ
       以上のとおり、本件賃貸借契約は、K社のリース商品である建設機械及び車両等の保管場所を確保することを主たる目的とするものであり、K社が有する本件6土地上の賃借権は、借地法第1条又は借地借家法第2条第1号に規定する建物の所有を目的とする土地の賃借権に該当するものとは認められないことから、本件6土地は、評価通達25の(1)の本文に定める「借地権の目的となっている宅地」に該当しない。
  • ニ 請求人らの主張について
    • (イ) 請求人らは、本件各建築物は建物に該当するから本件6土地は借地権の目的となっている旨主張する。
       しかしながら、上記イのとおり、借地権の存否は、借地人がその土地上に建物を築造しこれを所有することが借地使用の主たる目的か否かにより判断されるのであり、本件各建築物が建物であることのみをもって借地権が存するものと認めることはできない。
    • (ロ) また、請求人らは、本件各建築物が建築された当初の賃貸借契約から本件6土地には借地権が設定されていたのであり、その後に締結した賃貸借契約は賃借料の改定期間を定めたものにすぎない旨主張する。
       しかしながら、上記ロの(イ)のAの「重機保有目的」との記載から、契約書Aからは明らかに建物所有目的とは認められず、また、同B及びCのとおり、契約書B及び同Cには印刷による「建物所有目的」の記載はあるものの、上記ハの各事情(本件6土地の大部分が建設機械及び車両等の保管場所として使用され、本件各建築物の敷地部分が僅かであることなど)からすると、契約書B及び同Cについても、この記載をもって建物所有目的とは認め難い。
    • (ハ) さらに、請求人らは、K社の事業内容に照らし、借地権の範囲は本件6土地全体に及ぶ旨主張する。
       しかしながら、上記ハのとおり、K社の事業内容に照らすと、むしろ、本件6土地には借地権が存するものとは認められないから、借地権の存在を前提とする請求人らの主張は前提を欠く。

(5) 争点4(原処分庁が算定した本件7土地の価額に、相続税法第22条に規定する時価を上回る違法があるか否か。)について

  • イ 法令解釈等
    • (イ) 評価通達7は、土地の価額を原則として地目の別に評価することとし、この場合の地目は課税時期の現況によって判定する旨定めており、これは現実の土地利用の実態に即した評価方法を定めているものと解され、合理的であると認められるから、当審判所においても相当であると認める。
    • (ロ) 評価通達40の本文において、市街地農地の価額は、宅地比準方式により評価する旨定めている。これは、市街地農地は、農地法上の宅地転用制限のない土地であり、農地としての価額よりむしろ宅地の価額に類似する金額で取引される実情を考慮したものであると解され、合理的であると認められるから、当審判所においても相当であると認める。
    • (ハ) 評価通達82の本文において、雑種地の価額は、原則として、比準土地について同通達の定めるところにより評価した1u当たりの価額を基として評価する旨定めている。これは、雑種地は、宅地、畑及び原野などの地目のいずれにも該当せず、その実態が様々であることから、雑種地の評価方式を近傍にあるその雑種地と状況が類似する土地の価額に比準する方式によることとしたものと解され、合理的であると認められるから、当審判所においても相当であると認める。
  • ロ 認定事実
     原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、本件相続の開始時における本件7土地の利用状況等について、以下の事実が認められる。
    • (イ) 本件7−1土地及び本件7−2土地はいずれもおおむね長方形の画地調整が不要な平坦な土地で、それぞれ本件7土地前面道路に等高で接している。
    • (ロ) 本件7−2土地は、従前畑として使用されていた休耕地である。
    • (ハ) 本件7−1土地の平成26年度の固定資産税評価額は、現況地目が雑種地であることを前提として、本件固定資産税路線価を基に、宅地として利用できる雑種地に該当する場合に一律に適用する造成費等補正率(0.75)を乗じて1u当たりの単価を算出し、同単価に本件7−1土地の地積を乗じて算定されている。
    • (ニ) 本件固定資産税路線価は、1u当たり20,510円であり、本件7土地前面道路に接する宅地の1u当たりの固定資産税評価額は、奥行価格補正等の各種補正がない限り本件固定資産税路線価と同額となる。
    • (ホ) 平26評価基準書における平坦な市街地農地を評価する場合の整地費は、1u当たり400円である。
  • ハ 検討
    • (イ) 地目及び評価単位の判定について
       上記1の(3)のロの(ニ)のBのとおり、本件相続の開始時において、本件7−1土地は建物等が存しない砂利が敷かれた土地であることから、その地目は雑種地であり、また、上記ロの(ロ)のとおり、本件7−2土地は従前畑として使用されていた休耕地であるから、その地目は農地であるものと認められる。
    • (ロ) 本件7−1土地及び本件7−2土地の評価方法及び価額について
      • A 本件7−1土地の評価方法及び価額
        • (A) 本件7−1土地の地目は雑種地であることから、評価通達82の本文の定めにより評価することが相当であると認められるところ、1上記1の(3)のロの(ニ)のDのとおり、本件7土地前面道路の道路沿いは、戸建住宅が建ち並ぶ地域であること、2上記ロの(イ)のとおり、本件7−1土地は本件7土地前面道路の道路沿いに存する土地であることからすると、当該土地の比準土地は、本件7土地前面道路の道路沿いに存する戸建住宅の敷地(宅地)とするのが相当である。
        • (B) そして、上記1の(3)のロの(ニ)のC及び上記ロの(ニ)のとおり、本件7土地前面道路に接する宅地は、本件固定資産税路線価に、宅地の倍率1.1を乗じ、更に当該土地の地積を乗じて評価すること(画地調整が必要な場合は画地調整を行う。)から、本件7−1土地についても、これに準じて当該道路沿いの宅地と同様に本件固定資産税路線価に宅地の倍率1.1及び当該土地の地積を乗じて評価すること(上記ロの(イ)のとおり、画地調整は不要である。)が相当である。
        • (C) そうすると、本件7−1土地の評価方法は、原処分庁の算定過程(別表4の1参照)のとおりとなり、当該土地の価額は同表の1の(4)と同額となる。
      • B 本件7−2土地の評価方法及び価額
        • (A) 本件7−2土地は、上記1の(3)のロの(ニ)のFのとおり、転用許可を受けた農地(市街地農地)であることから、評価通達40の本文の定めにより評価することが相当であると認められるところ、当該土地も本件7土地前面道路に接する土地であることからすれば、本件7−1土地と同様、比準土地は、本件7土地前面道路の道路沿いに存する宅地であるものと認められ、さらに、本件7−2土地は、平坦な農地であることから、同通達に定めるその農地を宅地に転用する場合において通常必要と認められる1u当たりの造成費に相当する金額として上記ロの(ホ)の1u当たり400円の整地費を控除することが相当である。
        • (B) そうすると、本件7−2土地の評価方法は、原処分庁の算定過程(別表4の2参照)のとおりとなり、当該土地の価額は同表の2の(4)と同額となる。
    • (ハ) 請求人らの主張について
       請求人らの主張する事情が評価通達に定められた評価方法によるべきではない特別な事情に当たるか否かについて、以下検討する。
      • A 請求人らは、本件7−2土地は農地ではなく雑種地として評価すべきである旨主張する。
         しかしながら、上記ハの(イ)のとおり、本件7−2土地の地目は農地であり、雑種地とは認められないことからすると、請求人らの主張には理由がない。
      • B また、請求人らは、本件7−1土地については当該土地の雑種地としての固定資産税評価額に1.1を乗じて評価すべきである旨主張する。
         しかしながら、原処分における本件7−1土地の価額は、別表4の1のとおり、評価通達82の本文に定める雑種地の評価方法に基づき、当該土地と状況が類似する近傍宅地の価額を基として当該近傍宅地との位置、形状等の条件の差を個別に考慮して算出したものであるのに対し、本件7−1土地の固定資産税評価額は、上記ロの(ハ)のとおり、本件固定資産税路線価に宅地として利用できる雑種地に該当する場合に一律に適用する補正率(0.75)を単に乗じたものであるにすぎないことからすると、同通達の定めによる評価方法に代えて、当該土地の固定資産税評価額に1.1(固定資産税評価額と相続税評価額の水準差)を乗じて評価することは相当でないから、請求人らの主張には理由がない。
      • C そして、請求人らは、評価の対象となる土地である雑種地の近傍に当該雑種地と状況が類似した雑種地が選定できる場合には当該近傍の雑種地を比準土地として評価する方法を原則とすべきであるところ、本件7−2土地は雑種地として評価すべきであるから、当該土地の評価に当たっては、本件7−1土地の評価額を比準地価額とすべきである旨主張する。
         しかしながら、上記ハの(イ)のとおり、本件7−2土地の現況は農地であり、雑種地とは認められないことからすると、請求人らの主張はその前提を欠くものであるから、請求人らの主張には理由がない。
      • D さらに、請求人らは、本件7土地全体が不特定多数の者の通行の用に供されている道路等により物理的に分離されているわけでもなく、一体として利用されていることからも、本件7−2土地の比準土地の地目をあえて近傍宅地とする理由はない旨主張する。
         しかしながら、上記ハの(イ)のとおり、本件7−1土地は砂利を敷いた雑種地で本件7−2土地は休耕地となっている農地であることからすれば、本件7土地全体は、そもそも一体として利用されているものとは認められないから、請求人らの主張には理由がない。
    • (ニ) まとめ
       以上のとおり、請求人らの主張する事情はいずれも理由がないから、評価通達に定められた評価方法によるべきではない特別な事情に当たらない。そして、当審判所の調査の結果によっても、ほかに評価通達に定められた評価方法によるべきではない特別な事情も認められない。
       したがって、原処分庁が評価通達に基づき算定した本件7土地の価額は当該土地の時価であるものと推認され、当該評価額に、相続税法第22条に規定する時価を上回る違法はない。

(6) 本件各土地の価額について

上記(2)ないし(5)の判断に基づき、本件各土地の価額を当審判所において評価通達の定めに従って評価した価額は、それぞれ別表5の「審判所認定額」欄記載のとおりとなり、本件2土地を除いて原処分庁主張額と同額である。
 なお、本件2土地の評価に当たり、原処分庁は、当該土地の裏面からの奥行距離を47.3mとした上で奥行価格補正率を0.96としているが、普通商業・併用住宅地区における奥行距離が44m以上48m未満の場合の奥行価格補正率は0.92であるから、当該補正率を用いて、別表6のとおり評価することが相当である。

(7) J社の株式の価額について

本件相続の開始時において、本件被相続人はJ社の株式を30株(以下「本件株式」という。)保有しており、同社は本件1土地及び本件2土地上に存する借地権(貸家建付借地権)を有していたところ、原処分庁は、本件各更正処分において、同社の純資産価額等を基に本件株式の1株当たりの価額を794,130円と算定していた(別表7参照)。
 ところで、上記(6)のとおり、本件2土地の自用地としての価額には評価誤りがあるものと認められ、当審判所において、当該土地上に存する貸家建付借地権(J社の有する貸家建付借地権)の価額を算定すると11,572,299円となり(別表8の2参照)、本件株式の1株当たりの価額の計算(1株当たりの純資産価額の計算)の基となる同社の有する貸家建付借地権(本件1土地及び本件2土地上に存する貸家建付借地権)の価額は34,254,364円となる(別表8の3参照)。
 そこで、当審判所において、上記貸家建付借地権の価額を用いて本件株式の1株当たりの価額を算定すると793,900円となることから(別表9参照)、本件株式の価額は、23,817,000円とするのが相当である。

(8) 請求人らの取得財産の価額及び配偶者の税額軽減額の計算について

  • イ 請求人らの取得財産の価額について
     相続税法第55条には、別紙3の4のとおり、相続により取得した財産の全部又は一部に未分割の財産がある場合の課税価格の計算について規定されている。
     この点、原処分庁は、本件各更正処分における課税価格の計算において、未分割の財産の額(請求人G1の隠蔽仮装行為に係る財産の額○○○○円を含む。)を本件相続人らに配分して請求人らの取得財産の価額を算出しているが、上記(6)及び(7)のとおり、同配分の基となる本件2土地(請求人G1が取得した既分割の財産)の価額及び本件株式(未分割の財産)の価額に誤りがあるものと認められることから、当審判所において未分割の財産の配分を計算すると、別表10の「5」欄のとおりとなり、請求人らの取得財産の価額等は同表の「6」欄のとおりとなり、また、同表を基に、請求人らの純資産価額、課税価格等を計算すると別表11のとおりとなる(本件相続人らのうち請求人ら以外の相続人において、同表の「3」欄(債務及び葬式費用の金額)に相当する額が「1」欄(取得財産の価額)に相当する額を上回る者(以下「本件債務超過者」という。)がいることなどから、同表の「本件相続人らの合計」欄の「4」欄(純資産価額)の金額が、「1」欄(各人の取得財産の価額)の金額から「3」欄(債務及び葬式費用の金額)の金額を差し引いた金額と一致しない。)。
  • ロ 配偶者(請求人G1)の税額軽減額の計算について
     相続税法第19条の2第5項には、別紙3の2のとおり、配偶者の相続税額の軽減の計算について、隠蔽仮装行為による事実に基づく金額に相当する金額を課税価格に含まないものとして、配偶者の税額軽減の基となる相続税の総額を計算することなどが規定されている。
     この点、原処分庁は、配偶者に対する相続税額の軽減の計算において、課税価格から隠蔽仮装行為による事実に基づく金額に相当する金額を控除するに当たり、本件相続人らの課税価格(本件相続人らの取得財産の価額から負担した債務及び葬式費用の金額を控除した残額)の合計額から、請求人G1の隠蔽仮装行為に係る財産の額○○○○円を全額控除しているが、本件債務超過者がいるため、同計算には、請求人G1の隠蔽仮装行為に係る財産の額のうち課税価格の計算上本件債務超過者が取得したものとされる額を過大に控除した誤りがあり、当審判所において配偶者の税額軽減額を計算すると、別表12の「8」欄のとおりとなる(別表12の注書の1及び3参照)。

(9) 原処分の適法性について

本件各土地の価額及び本件株式の価額は上記(6)及び(7)のとおりであり、また、請求人らの取得財産の価額及び配偶者の税額軽減額は上記(8)のとおりであるところ、当該各価額に基づき、当審判所において、請求人らの本件相続に係る相続税の課税価格及び納付すべき税額を計算すると、それぞれ別表13の「審判所認定額」欄の各「課税価格」欄及び各「納付すべき税額」欄のとおりとなる。

  • イ 本件各通知処分及び本件各更正処分の適法性について
     請求人らの各課税価格及び各納付すべき税額は、いずれも別表2の「申告」欄の各「課税価格」欄及び各「納付すべき税額」欄の金額を上回るものの、いずれも同表の「更正処分等」欄の各「課税価格」欄及び各「納付すべき税額」欄の金額を下回るから、本件各通知処分はいずれも適法であるが、本件各更正処分のうち、別表13の「審判所認定額」欄の各「課税価格」欄及び各「納付すべき税額」欄の金額を上回る部分は違法であり、別紙2−1ないし別紙2−3の「取消額等計算書」のとおり、いずれもその一部を取り消すべきである。
     なお、本件各通知処分及び本件各更正処分のその他の部分については、請求人らは争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
  • ロ 本件各賦課決定処分の適法性について
    • (イ) 上記イのとおり、請求人G1に対する更正処分は、その一部を取り消すべきであり、請求人G1の国税通則法(以下「通則法」という。)第65条《過少申告加算税》第1項の過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額は、○○○○円(10,000円未満の端数切捨て)となるところ、この税額の計算の基礎となった事実が当該更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、同条第4項に規定する正当な理由があるとは認められない。
       そして、上記1の(4)のニ及びホのとおり、請求人G1につき通則法第68条《重加算税》第1項所定の重加算税の賦課要件を充足する点については、原処分庁及び請求人らの当事者間に争いはなく、また、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。以上を踏まえ、当審判所において請求人G1の重加算税の額を通則法第68条第1項に基づき計算すると、別表13の「審判所認定額」欄の「重加算税の額」欄のとおり、○○○○円となり、請求人G1に対する重加算税の賦課決定処分の額に満たないと認められる。
       したがって、請求人G1に対する重加算税の賦課決定処分のうち、別表13の「審判所認定額」欄の「重加算税の額」欄の金額を上回る部分は違法であり、その一部を別紙2−1の「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。
    • (ロ) 上記イのとおり、請求人G2及び請求人G3に対する各更正処分は、いずれもその一部を取り消すべきであり、過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額(10,000円未満の端数切捨て)は、請求人G2が○○○○円、請求人G3が○○○○円となるところ、これらの税額の計算の基礎となった事実が当該各更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められない。
       したがって、上記により、請求人G2及び請求人G3の各過少申告加算税の額を通則法第65条第1項の規定に基づき計算すると、別表13の「審判所認定額」欄の各「過少申告加算税の額」欄のとおり、請求人G2が○○○○円、請求人G3が○○○○円となり、いずれも請求人G2及び請求人G3に対する過少申告加算税の各賦課決定処分の額と同額となるから、請求人G2及び請求人G3に対する過少申告加算税の各賦課決定処分はいずれも適法である。

(10) 結論

よって、審査請求には理由がある。

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