(令和4年10月25日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、日用雑貨等の輸出業を営む審査請求人(以下「請求人」という。)が商品仕入れに係る消費税等の額を仕入税額控除の対象として確定申告をし、また、法人税等の各更正の請求及び欠損金の繰戻しによる還付請求をしたところ、原処分庁が、商品仕入れの一部は架空に計上されたものである、また、商品仕入れについて仕入税額控除に係る帳簿及び請求書等を保存しない場合に該当するとして消費税等の更正処分及び重加算税の賦課決定処分を、法人税について、青色申告の承認の取消事由があるとして青色申告の承認の取消処分をするとともに、各更正の請求及び還付請求に理由がない旨の通知処分をしたのに対し、請求人が、1商品仕入れの金額は正当であり、架空計上の事実はない、2仕入税額控除に係る帳簿及び請求書等の保存がある、3法人税の青色申告の承認の取消事由に該当しないなどとして、原処分の一部の取消しを求めた事案である。

(2) 関係法令

関係法令は、別紙2のとおりである。なお、別紙2において定義した略語については、以下、本文においても使用する。

(3) 基礎事実

当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
 なお、以下では、請求人の法人税の事業年度、地方法人税の課税事業年度につき、各個別の終了年月をもって表記する(例えば、平成29年1月〇日から平成29年12月31日までの期間は、法人税について「平成29年12月期」といい、地方法人税について「平成29年12月課税事業年度」という。)。
 また、請求人の消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)の課税期間につき、平成29年11月〇日から平成29年12月〇日までの課税期間は「平成29年12月〇日課税期間」、平成29年12月〇日から平成29年12月31日までの課税期間は「平成29年12月31日課税期間」といい、その他の課税期間は各個別の終了年月をもって表記する(例えば、平成29年1月〇日から平成29年2月〇日までの課税期間は「平成29年2月課税期間」という。)。
 おって、原処分に係る法人税の各事業年度を併せて「本件各事業年度」、原処分に係る地方法人税の各課税事業年度を併せて「本件各課税事業年度」、原処分に係る消費税等の各課税期間を併せて「本件各課税期間」という。

  • イ 請求人は、平成29年1月〇日、日用雑貨等の販売及び輸出入等を目的として設立された法人であり、設立時は、Mが代表取締役を務めていた。Mは、平成29年〇月〇日に請求人の代表取締役を退任して退社し、同日以降はK(以下「本件代表者」という。)が代表取締役を務めている。
  • ロ 請求人は、平成29年1月30日、原処分庁に対し、法人税の青色申告の承認申請を行い、平成29年12月期以後の事業年度の法人税について、青色申告の承認があったものとみなされた。
  • ハ 請求人は、平成29年2月10日、原処分庁に対し、「消費税課税事業者選択届出書」及び適用開始日を同年1月〇日からとする「消費税課税期間特例選択・変更届出書」を提出し、同日から消費税の課税事業者となること及び消費税の課税期間を1月ごとの期間に短縮することを選択した。
  • ニ 請求人は、本件各課税期間において、日本国内で仕入れた乳児・幼児用の紙おむつのパック詰め商品(以下「紙おむつパック」という。)を、中華人民共和国(以下「中国」という。)に所在するN社他国内外の事業者に対して販売し、当該販売に係る売上金額を平成29年2月ないし同年12月は総勘定元帳の商品売上高勘定に、平成30年1月以降は輸出売上高勘定に計上するとともに、消費税等の確定申告において免税売上額に算入した。
  • ホ 上記ニの紙おむつパックの販売のうち一部の取引は、日用雑貨等の輸出業を営む内国法人であるP社及びQ社(以下、Q社とP社を併せて「Q社ら」という。)を経由して行われた(以下、Q社らを経由した取引を「本件輸出取引」という。)。
  • ヘ 請求人は、本件各課税期間において、R社から紙おむつパックを仕入れ、R社を発行名義人とする請求人宛の請求書に基づき、総勘定元帳の商品仕入高勘定に、当該請求書に記載された請求額の消費税等抜きの額を計上するとともに、消費税等の確定申告において消費税等込みの額を課税仕入れに係る支払対価の額に算入した。
  • ト 請求人は、本件各課税期間において、本件代表者が代表取締役を務めるS社並びにT社及びU社(以下、S社、T社及びU社を併せて「本件仕入先」という。)から紙おむつパックを仕入れ(以下、本件仕入先からの当該仕入れを「本件仕入れ」という。)、本件仕入先を発行名義人とする請求人宛の請求書(以下「本件請求書」という。)に基づき、総勘定元帳の商品仕入高勘定に、本件請求書に記載された請求額の消費税等抜きの額を計上するとともに、消費税等の確定申告において消費税等込みの金額を課税仕入れに係る支払対価の額に算入した。
     なお、本件各課税期間における本件仕入れの計上額は別表1のとおりである。
  • チ 請求人は、本件請求書に記載された請求額について、S社名義のV銀行○○営業部の普通預金口座(口座番号○○○○、以下「S口座」という。)、T社名義のV銀行○○営業部の普通預金口座(口座番号○○○○、以下「T口座」という。)及びU社名義のV銀行○○営業部の普通預金口座(口座番号○○○○、以下「U口座」という。)に、それぞれ振込処理により入金した。
     なお、本件各課税期間における振込額は、別表2の「本件仕入先への振込額」欄のとおりである。

(4) 審査請求に至る経緯

  • イ 請求人は、本件各事業年度の法人税及び本件各課税事業年度の地方法人税(以下、法人税と地方法人税を併せて「法人税等」という。)について、青色の確定申告書に別表3−1及び別表3−2の「確定申告」欄のとおり記載して、いずれも法定申告期限までに申告した。
  • ロ 請求人は、本件各課税期間の消費税等について、確定申告書に別表3−3の「確定申告」欄のとおり記載して、いずれも法定申告期限までに申告した。
  • ハ その後、請求人は、令和2年3月30日、平成30年12月期及び令和元年12月期の法人税並びに平成30年12月課税事業年度及び令和元年12月課税事業年度の地方法人税について、別表3−1及び別表3−2の「更正の請求」欄のとおりとすべき旨の更正の請求をした。
  • ニ 請求人は、令和3年2月5日、令和元年12月期の所得に対する法人税の額につき、令和2年12月期の欠損金額〇〇〇〇円を繰り戻し、法人税額〇〇〇〇円の還付請求をする旨を記載した欠損金の繰戻しによる還付請求書を提出した(以下「本件繰戻還付請求」という。)。
  • ホ 原処分庁は、令和3年7月5日付で、法人税等について、別表3−1及び別表3−2の「更正処分等」欄のとおりの更正処分(以下「本件法人税等各更正処分」という。)をするとともに、平成29年12月期以後の法人税の青色申告の承認の取消処分(以下「本件青色申告取消処分」という。)をした。
  • ヘ 原処分庁は、令和3年7月5日付で、消費税等について、別表3−3の「更正処分等」欄のとおりの更正処分(以下「本件消費税等各更正処分」という。)並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」という。)をした。
  • ト 原処分庁は、令和3年7月5日付で、上記ハの法人税の各更正の請求に対し、いずれも更正をすべき理由がない旨の通知処分をした。
  • チ 原処分庁は、令和3年7月5日付で、上記ニの本件繰戻還付請求に対し、還付請求に理由がない旨の通知処分をした。
  • リ 請求人は、上記ホないしチの原処分に不服があるとして、令和3年10月6日に審査請求をした。
  • ヌ 原処分庁は、令和4年9月8日付で、上記ハの地方法人税の各更正の請求に対し、いずれも更正をすべき理由がない旨の通知処分(以下、当該通知処分と上記トの通知処分及び上記チの通知処分を併せて「本件各通知処分」という。)をした。
  • ル 請求人は、上記ヌの原処分に不服があるとして、令和4年9月15日に審査請求をしたので、当審判所は、上記リの審査請求と併合審理をする。

2 本件法人税等各更正処分の取消しを求める部分の適法性について

 請求人は、本件法人税等各更正処分の取消しを求めているが、本件法人税等各更正処分が不利益処分に当たるか否かは、本件法人税等各更正処分により納付すべき税額が増加したか否かにより判断すべきところ、本件法人税等各更正処分は、別表3−1及び別表3−2の「確定申告」欄及び「更正処分」欄に記載のとおり、納付すべき税額を増加させる更正処分でないことが明らかであり、請求人の権利又は利益を侵害するものとはいえないから、本件法人税等各更正処分の取消しを求めることは、請求の利益を欠く不適法なものである。

3 争点

(1) 本件輸出取引は、請求人による消費税法第7条《輸出免税等》第1項第1号に規定する本邦からの輸出として行われる資産の譲渡であるか否か(争点1)。

(2) 本件仕入れの金額は、過大に計上されたものであるか否か(争点2)。

(3) R社との仕入取引及び本件仕入れについて、消費税法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》第7項に規定する帳簿及び請求書等を保存しない場合に当たるか否か(争点3)。

(4) 本件仕入れの金額を課税仕入れに係る支払対価の額に含めて申告したことについて、通則法第68条《重加算税》第1項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があるか否か(争点4)。

(5) 請求人の平成29年12月期の帳簿書類について、法人税法第127条《青色申告の承認の取消し》第1項第3号に規定する青色申告の承認の取消事由があるか否か(争点5)。

(6) 請求人が求めた法人税等の各更正の請求は、通則法第23条《更正の請求》第1項各号に規定する事由に該当するか否か(争点6)。

(7) 本件繰戻還付請求は認められるか否か(具体的には、請求人は、令和2年12月期の法人税の確定申告について、法人税法第80条《欠損金の繰戻しによる還付》第1項の青色申告書である確定申告書を提出していたか否か。)(争点7)。

4 争点についての主張

(1) 争点1(本件輸出取引は、請求人による消費税法第7条第1項第1号に規定する本邦からの輸出として行われる資産の譲渡であるか否か。)について

原処分庁 請求人
本件輸出取引については、次のとおり、Q社らが請求人から紙おむつパックを仕入れた上で、Q社らが中国所在の会社に販売したものであるから、請求人による本邦からの輸出として行われる資産の譲渡ではない。 本件輸出取引については、次のとおり、請求人による本邦からの輸出として行われる資産の譲渡である。
イ Q社らは、中国の売上先から売上代金を受領している。 イ 請求人の売上先は輸出許可通知書に記載されている中国所在の法人であり、Q社らは請求人と当該売上先の仲介及び売上代金の一部の回収を担っているが、輸出の当事者ではない。
ロ 請求人は、本件輸出取引について、Q社らに対しQ社宛の請求書を交付しており、Q社らは当該請求書に基づき商品仕入代金を請求人名義のV銀行○○営業部の普通預金口座(口座番号○○○○、以下「本件請求人口座」という。)に振り込んでいる。 ロ Q社らが所持する請求書は、Q社らの要望に基づいて交付したものであり、請求人の輸出売上代金の一部の回収のためのものである。
ハ 請求人は、Q社らから、輸出申告の手続を依頼されたにすぎない。 ハ 請求人は、本件輸出取引について、請求人名義の輸出許可通知書を保存している。

(2) 争点2(本件仕入れの金額は、過大に計上されたものであるか否か。)について

原処分庁 請求人
次のとおり、本件仕入れの金額は、過大に計上されたものである。 次のとおり、本件仕入れの金額は、過大に計上されたものではない。
イ 本件各課税期間における紙おむつパックの「○○○○」の市場価格は、763円ないし1,498円(税込み)であるところ、本件請求書に記載された紙おむつパックの仕入単価は3,150円ないし3,600円(税込み)であり、上記市場価格に比して著しく高額である。 イ 本件仕入先は、販売数の制限があったので、人海戦術により各小売店から仕入れているため、単価は、小売店からの購入金額に仕入れを委託した委託先の経費が加算された金額となるので、小売店の販売価格より高額になるのは当然である。
ロ 請求人のR社からの仕入単価は、請求人がR社に交付した商品注文書に記載された1,198円ないし1,301円(税込み)であると認められ、本件請求書に記載された仕入単価は、R社からの仕入単価に比して著しく高額である。 ロ 中国における関税にかかる申告は輸入者が申告する場合、関税を安くするためにインボイスの金額は実際の金額より低い金額で申告している者が多い。N社が、請求人が所持するインボイスの控えと異なる金額でインボイスを作成している理由は不明であるが、請求人のN社に対する販売金額は請求人が保存するインボイスの控えに記載している3,350円である。
 N社が保存するインボイスと請求人が保存するインボイスの控えとの差額は現金で回収している。
ハ N社が保存するインボイスに記載された最も高い単価は1,290円であると認められ、請求人がQ社らに販売した際の単価は、Q社ら宛の請求書記載のとおり、1,100円ないし1,200円(税込み)であると認められることから、本件請求書に記載された仕入単価3,150円ないし3,600円は当該売上単価に比し高額であると認められる。 ハ 請求人は、Q社らではなく、中国の取引先に紙おむつパックを販売したものであり、中国の取引先に対する紙おむつパックの売上単価は、請求人が所持するインボイスの控えに記載のとおり3,350円ないし3,450円である。
 なお、販売金額とQ社らが振り込んだ金額との差額は、中国の取引先が指示した人物から現金で回収している。
ニ 請求人は営利企業であり、前記ハのとおり国内又は国外に商品を販売した単価のうち最も高い金額であると認められる単価(1,290円)を大きく上回る単価3,150円ないし3,600円で商品を仕入れることには経済的合理性がなく、通常の商取引では考えられないことから、本件請求書に記載された仕入単価3,150円ないし3,600円は水増しした金額であると認められる。 ニ 原処分庁の指摘する入出金に関しては、銀行は同じでも支店が異なっていたり、入出金の時間に二時間以上の間隔があるものもあり、入出金が同じ現金でなされたと判断するのは無理がある。そもそも、本件仕入先は、請求人から入金された代金を出金して仕入代金に充てており、請求人は、本件仕入先へ仕入代金を振り込んだ後、本件仕入先から金銭を受領した事実はない。
ホ 請求人は、本件仕入先へ支払った仕入代金のうち一部を本件請求人口座へ戻させていると認められることから、上記イないしニの事実と併せ鑑みると本件請求書に記載された仕入単価は水増しされた取引単価であると強く推認される。  

(3) 争点3(R社との仕入取引及び本件仕入れについて、消費税法第30条第7項に規定する帳簿及び請求書等を保存しない場合に当たるか否か。)について

原処分庁 請求人
次のとおり、R社との仕入取引及び本件仕入れについては、帳簿及び請求書等を保存しない場合に当たる。 次のとおり、R社との仕入取引及び本件仕入れについては、帳簿及び請求書等を保存しない場合に当たらない。
イ R社からの仕入れについて、請求人が保存するR社の社名が記載された請求書は、R社が交付した請求書ではなく、また、仕入れの相手方であるR社の確認を受けていないことから、消費税法第30条第9項の請求書等に該当しない。 イ R社からの仕入れについて、取引金額に誤りはなく、請求人はR社の請求書を保存しているから、消費税法第30条第9項の請求書等を保存していることになる。
ロ 本件仕入れについて、請求人が保存する本件請求書は、上記(2)の原処分庁の主張の内容のとおり、本件仕入先から仕入れた紙おむつパックの正しい取引金額が記載されていないことから、消費税法第30条第9項の請求書等を保存していないものと認められる。 ロ 本件仕入れについて、請求人が保存する本件請求書は、請求人が作成したものではなく、本件仕入先が作成したものであり、請求人は請求書に基づいて請求代金を支払っていることから、消費税法第30条第9項の請求書等を保存していることになる。

(4) 争点4(本件仕入れの金額を課税仕入れに係る支払対価の額に含めて申告したことについて、通則法第68条第1項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があるか否か。)について

原処分庁 請求人
請求人が、本件仕入れの金額を課税仕入れに係る支払対価の額に含めて申告したことには、次のとおり、事実の隠蔽又は仮装がある。 請求人が、本件仕入れの金額を課税仕入れに係る支払対価の額に含めて申告したことには、次のとおり、事実の隠蔽又は仮装はない。
イ N社が保存するインボイスに記載された単価が請求人の売上単価であるにもかかわらず、N社が保存するインボイスと請求人が保存するインボイスの控えの差額の売掛金を現金入金時に回収したとして総勘定元帳に記載することで請求人はあたかもN社に対して紙おむつパックを3,350円ないし3,500円の単価で販売したかのように外見を整え、帳簿書類を作成した。 イ N社に対する販売金額は請求人が保存するインボイスの控えに記載している3,350円である。
 N社が所持するインボイスと請求人が所持するインボイスの控えとの差額は、現金で回収している。
ロ 請求人がQ社らに販売した紙おむつパックの単価は、最も高い金額で1,200円(税込み)であったにもかかわらず、請求人は、あたかも輸出先に対して紙おむつパックを単価3,350円ないし3,450円で販売したかのようにインボイスの控えの外見を整え、帳簿書類を作成した。 ロ 請求人は、Q社らではなく、中国の取引先に紙おむつパックを販売したものであり、中国の取引先に対する紙おむつパックの売上単価は、請求人が所持するインボイスの控えに記載のとおり3,350円ないし3,450円である。
ハ 請求人は、上記イ及びロの正当な売上単価に見合う仕入単価で本件仕入先から紙おむつパックを仕入れたにもかかわらず、本件仕入先と通謀して、本件請求書の仕入単価を3,150円ないし3,600円(税込み)であるかのように水増しして作成させ、当該仕入金額に係る消費税等の額を請求人の控除対象仕入税額に含めた。 ハ 請求人は、本件仕入先に対し、本件請求書に基づいて、仕入代金を支払っている。

(5) 争点5(請求人の平成29年12月期の帳簿書類について、法人税法第127条第1項第3号に規定する青色申告の承認の取消事由があるか否か。)について

原処分庁 請求人
上記(4)の原処分庁の主張のとおり、請求人は、紙おむつパックの売上単価及び仕入単価を水増ししていると強く推認されることから、総勘定元帳の商品売上高勘定、商品仕入高勘定、売掛金勘定及び現金勘定について、事実の隠蔽又は仮装がある。
 したがって、請求人の平成29年12月期の帳簿書類について、法人税法第127条第1項第3号に規定する青色申告の承認の取消事由がある。
上記(2)及び(4)の請求人の主張のとおり、N社に対する販売金額は請求人が保存するインボイスの控えに記載している額が正当であり、差額も現金で回収しており、売上単価の水増しの事実はない。
 また、請求人は、本件仕入先へ仕入代金を振り込んだ後、本件仕入先から金銭を受領した事実はなく、本件仕入れの金額も請求人計上額が正当であり、仕入単価の水増しの事実はない。
 したがって、総勘定元帳は正当に記載されており、法人税法第127条第1項第3号に規定する青色申告の承認の取消事由に該当しない。

(6) 争点6(請求人が求めた法人税等の各更正の請求は、通則法第23条第1項各号に規定する事由に該当するか否か。)について

請求人 原処分庁
上記(2)の請求人の主張からすると、平成29年12月期及び平成30年12月期の法人税の各更正処分には誤りがあり、更正の請求前の平成30年12月期の法人税額及び平成30年12月課税事業年度の地方法人税額は〇〇〇〇円にはならず、また、上記(5)の請求人の主張のとおり、本件青色申告取消処分は取り消されるべきであるから、法人税等の各更正の請求は、通則法第23条第1項各号に規定する事由に該当する。 法人税の各更正の請求は、次のとおり、通則法第23条第1項各号に規定する事由に該当しない。
  イ 平成30年12月期の法人税及び平成30年12月課税事業年度の地方法人税に係る各更正の請求について
 原処分によって、請求人の法人税及び地方法人税の額は〇〇〇〇円となっていることから、「更正後の税額が過大である」事実はない。
  ロ 令和元年12月期の法人税及び令和元年12月課税事業年度の地方法人税に係る各更正の請求について
 上記(5)の原処分庁の主張のとおり、本件青色申告取消処分は適法であり、請求人は平成29年12月期以降に生じた欠損金額を令和元年12月期に繰り越すことはできないため、「更正後の純損失の金額が過少であるか又は更正通知書に純損失等の金額の記載がなかった」事実はない。
 したがって、令和元年12月期の法人税額及び令和元年12月課税事業年度の地方法人税額に変動は生じない。

(7) 争点7(本件繰戻還付請求は認められるか否か(具体的には、請求人は、令和2年12月期の法人税の確定申告について、法人税法第80条第1項の青色申告書である確定申告書を提出していたか否か。)。)について

原処分庁 請求人
請求人は、本件青色申告取消処分により、平成29年12月期以後の法人税の青色申告の承認を取り消されていることから、請求人が令和3年2月5日付でした本件繰戻還付請求において欠損事業年度とした令和2年12月期に係る法人税の確定申告書は、青色申告書とは認められない。
 したがって、請求人は、法人税法第80条第1項に規定する欠損事業年度に青色申告書である確定申告書を提出していないことから、本件繰戻還付請求は認められない。
原処分庁が行った本件青色申告取消処分は違法であり取り消されるべきであるから、請求人は、欠損事業年度に青色申告書である確定申告書を提出していることとなり、本件繰戻還付請求は認められるべきである。

5 当審判所の判断

(1) 争点1(本件輸出取引は、請求人による消費税法第7条第1項第1号に規定する本邦からの輸出として行われる資産の譲渡であるか否か。)について

  • イ 認定事実
     請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査によれば、次の事実が認められる。
    • (イ) Q社らは、中国所在の売上先から紙おむつパックの販売を受注し、請求人へ紙おむつパックを発注するとともに、輸出申告手続及び中国所在の売上先への配送を請求人に依頼していた。
    • (ロ) 請求人は、Q社らから受注した紙おむつパックをd市の倉庫でコンテナに積載し、輸出に係る手続及び海上輸送を港湾運送業者に委託して、Q社らの指定する中国所在の販売先に搬送するとともに、請求人名義の輸出許可通知書を保存していた。
    • (ハ) 請求人は、輸出手続終了後、Q社ら宛の請求書並びに荷送人をQ社らとするインボイス、パッキングリスト及び船荷証券をQ社らにそれぞれメールで送信していた。
    • (ニ) Q社らは、請求人から受領した上記(ハ)のインボイスを基に売上先へ提出するインボイスを作成して、パッキングリスト及び船荷証券と併せて売上先へ送付し、売上代金を海外送金により受領していた。
    • (ホ) Q社らは、上記(ハ)のQ社ら宛の請求書に記載された金額を請求人に支払い、商品仕入れとして計上した。
  • ロ 検討
    • (イ) 本件輸出取引について
       消費税法第7条第1項第1号は、本邦からの輸出として行われる資産の譲渡を輸出免税の対象としているところ、「輸出」とは、内国貨物を外国に向けて送り出すことをいう(関税法第2条)から、資産の譲渡に際し、当該資産を国内から国外に向けて送り出した者において輸出免税の対象となる資産の譲渡が行われたこととなる。そして、消費税法第7条第2項は、その課税資産の譲渡等が輸出取引等に該当するものであることにつき、財務省令で定めるところにより証明されたものでない場合には、同条第1項の規定は適用しない旨規定しているところ、この財務省令で定めるところにより証明がされたものとは、消費税法施行規則第5条第1項第1号において、当該資産の輸出に係る保税地域の所在地を所轄する税関長から交付を受ける輸出の許可があったことを証する書類を整理し、当該輸出取引を行った日の属する課税期間の末日の翌日から2月を経過した日から7年間、これを納税地又はその取引に係る事務所、事業所その他これらに準ずるものの所在地に保存することにより証明がされたものとする旨規定しており、税関長から交付を受ける輸出許可があったことを証する書類とは、輸出許可通知書がこれに当たる。
       本件においては、上記イの(イ)及び(ロ)のとおり、請求人が、Q社らの依頼に基づき、Q社らから受注した紙おむつパックを国内でコンテナに積載し、自らの名義で輸出許可を申請して国外へ搬出しているのであるから、本件輸出取引は、請求人による本邦からの輸出として行われる資産の譲渡であると認められる。そして、請求人は、請求人名義の輸出許可通知書を保存していることから、請求人において、輸出免税の適用を受けることができる。
    • (ロ) 原処分庁の主張について
       原処分庁は、請求人とQ社らとの間の取引は、Q社らが請求人から紙おむつパックを仕入れた上で、Q社らが国外の会社に販売したものであるから、本件輸出取引は請求人による本邦からの輸出として行われる資産の譲渡ではない旨主張する。
       しかしながら、Q社らは、国内で紙おむつパックの引渡しを受けておらず、請求人が紙おむつパックを直接国外に搬出していることは上記イの(ロ)のとおりである。
       したがって、原処分庁の主張には理由がない。

(2) 争点2(本件仕入れの金額は、過大に計上されたものであるか否か。)について

  • イ はじめに
     請求人は、上記1の(3)のトのとおり、本件請求書に基づき、本件請求書記載の請求額(税抜き)を総勘定元帳の商品仕入高勘定に計上するとともに、消費税等の確定申告において課税仕入れに係る支払対価の額(税込み)に算入した。
     これに対し、原処分庁は、本件請求書に記載された紙おむつパックの単価が高額であること、本件請求書記載の請求額(単価に数量を乗じた金額)が本件仕入先の各口座に振り込まれた後に、当該各口座から現金が出金され、本件請求人口座に現金が入金されていることを指摘し、本件請求書に記載されたとおりの金額が本件仕入先に支払われた事実はないとして、本件仕入れの金額は過大に計上されたものであると主張する。
     そこで、以下においては、本件請求書記載の単価の正当性及び本件仕入先の預金口座と本件請求人口座の入出金の状況等を検討し、本件仕入れの金額が過大に計上されたものであるか否かを検討する。
  • ロ 認定事実
     請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
    • (イ) 本件請求書について
       本件請求書には、商品名、単価(税込み)、個数、単位及び合計金額等の記載があるところ、紙おむつパックの単価は3,150円ないし3,600円の金額で記載されており、当該単価に個数を乗じた金額が請求金額(税込み)として記載されている。
       なお、当審判所に対するT社の代表取締役であるXの答述によれば、本件代表者が、請求人宛のT社名義の請求書を作成することがあった。
    • (ロ) R社との仕入取引について
      • A 請求人が保存する請求書について
         請求人が保存するR社名義の請求書には、商品名、単価(税込み)、個数、単位及び合計金額等の記載があるところ、紙おむつパックの単価は、3,470円ないし3,600円の金額で記載されている。
      • B 請求人との間の取引に関してR社が保存する注文書について
         R社は、請求人との取引に関する書類として、請求人から受領した注文書を保存しているが、当該注文書には、紙おむつパックの注文単価は1,198円ないし1,301円(いずれも税込み)の金額が記載されていた。
         なお、注文書に記載された取引に対応する上記AのR社名義の請求書と当該注文書の内容を比較すると、品名及び合計金額の記載は一致しているものの、単価及び数量の記載が異なっている(例えば、注文書において、商品名○○○○、単価1,198円、数量900個、合計1,078,200円と記載されているところ、この注文書に対応するR社名義の請求書には、商品名○○○○、単価3,594円、数量300個、合計1,078,200円と記載されている。)。
         また、当該注文書には、商品代金の支払期日が記載されており、当該支払期日は、商品の引渡し前の日付であった。
      • C 代金決済について
         請求人は、上記Bの注文書に記載された商品代金を、当該注文書に記載された支払期日までに支払っていた。
      • D R社の従業員の申述内容及びその信用性について
         R社の従業員であるY氏は、原処分庁所属の調査担当職員に対し、要旨以下のとおり申述した。
        • (A) R社は、大口の顧客との取引では売買契約を締結し、注文書を受領して前払で決済してもらった後、R社の物流センターにて商品を引き渡しており、前払での決済であるため、請求書は発行していない。
        • (B) R社は、請求人に対して請求書を発行しておらず、請求人が保存するR社の社名が記載された請求書は、R社が発行したものではない。
          上記Cのとおり、R社と請求人との取引は前払で決済が行われていたことから、R社が請求人に請求書を発行する必要はなかったと認められ、このことは、上記のR社の従業員であるY氏の申述内容と整合する。これに加えて、R社の従業員であるY氏が、原処分庁所属の調査担当職員に対して虚偽の申述をする特段の理由が存したとも認められないから、Y氏の上記申述内容は信用できる。
    • (ハ) 本件請求書及びR社名義の請求書の様式について
       請求人が仕入取引に関し保管している本件請求書及びR社名義の請求書の様式は、次の点で共通している。
      • A 最上段中央に「御請求書」と記載されている。
      • B 上記Aの下の左側に「宛先住所・名義」が、右側に「日付」、「発行者住所・名義」が記載されている。
      • C 上記Bの下に「いつもお世話になっております。下記の通りご請求申し上げますので、よろしくお願いいたします。」との文章が記載されている。
      • D 上記Cの文章の下に、左から順に「商品名」、「単価(税込)」、「個数」、「単位」、「金額」の五つの項目を記載する表があり、最下段には合計金額の記載欄が設けられているが、合計金額の記載欄の右端は上段よりも右に飛び出している。
      • E 上記Dの表の右下には、「振込先」が記載された表があり、その記載項目は、上から「銀行名」、「支店名」、「口座番号」及び「口座名義」となっている。
    • (ニ) 本件各課税期間における紙おむつパックの取引相場(小売単価)
       紙おむつパックを小売店舗で販売しているドラッグストア等9事業者の本件各課税期間における「○○○○」の小売単価は、763円ないし1,498円(いずれも税抜き)であった(○○○○□枚入りが763円、○○○○□枚入りが1,498円)。
    • (ホ) 請求人とQ社らとの取引金額等について
      • A Q社らが請求人から受領して保存していたQ社ら宛の請求書には、商品名、数量、単価及び合計金額等が記載されているところ、単価は1,120円ないし1,200円であり、当該単価に数量を乗じた金額が合計金額に記載されている。
      • B Q社らは、上記Aの請求書に記載された合計金額を本件請求人口座へ振り込むとともに、同額を商品仕入れとして計上した。
         なお、当該請求書に基づく振込み以外にQ社らが請求人に仕入代金を支払った事実はない。
      • C 上記(1)のイの(ハ)のとおり、請求人は、Q社らに取引ごとにインボイスを送付して自らも当該インボイスの控えを保存していたところ、Q社らが請求人から受領して保存していたインボイスに記載された紙おむつパックの単価は、上記Aの請求書と同額(1,120円ないし1,200円)である一方、これらのインボイスと同一のインボイス番号で商品名及び数量も一致する請求人が保存するインボイスの控えに記載された紙おむつパックの単価は3,350円ないし3,450円である。
      • D Q社らが保存していた売上先から受領した注文書に記載された紙おむつパックの単価は、最も高い金額で1,200円である。
      • E Q社らは、紙おむつパックの売上先から、上記Dの単価に基づく売上代金を受領していた。
      • F 請求人は、上記Cの自身が保存するインボイスの控えの合計金額を売掛金勘定の借方(発生)に、相手科目を商品売上高又は商品輸出売上高として計上し、上記Bの本件請求人口座への送金額を売掛金勘定の貸方(回収)に、相手科目を普通預金として計上し、摘要欄に「Q」等と記載した。
    • (ヘ) N社との取引金額について
      • A N社が請求人から受領して保存していたインボイスには、インボイス番号、商品名、数量、単価及び合計金額等の記載があるところ、紙おむつパックの単価は1,170円ないし1,290円の金額で記載されており、当該各インボイスに記載された合計金額と同額が外国被仕向送金として、本件請求人口座に送金された。
      • B 請求人は、N社が保存するインボイスと同一のインボイス番号、船名、出航予定日、商品名及び数量が記載されたインボイスの控えを保存していたが、請求人が保存するインボイスの控えに記載された紙おむつパックの単価は、3,350円ないし3,500円であり、当該単価に数量を乗じた金額が合計金額に記載されている。
      • C 請求人は、上記Bの合計金額を総勘定元帳の売掛金勘定の借方(発生)に相手科目を商品売上高又は商品輸出売上高として計上し、上記Aの本件請求人口座への送金額を売掛金勘定の貸方(回収)に相手科目を普通預金として計上し、摘要欄に「外国被仕向送金」と記載した。
    • (ト) 本件請求人口座及び本件仕入先の預金口座の入出金状況
      • A 本件仕入先の預金口座には、請求人からの振込入金の履歴が多数あるところ、入金時点と近接した日時に、振込入金額のほぼ全額が出金されている。
      • B 上記Aの本件仕入先の預金口座からの出金時点と近接した日時に、本件請求人口座へ現金による入金がされている。
      • C S口座、T口座、U口座及び本件請求人口座において、以下の入出金が行われている。
        • (A) 平成29年2月13日、V銀行○○営業部の現金自動預払機(以下「ATM」という。)において、9時10分から16分にS口座から7,000,000円が出金され、9時22分から32分に本件請求人口座へ同額が入金された。
        • (B) 平成29年4月13日、V銀行○○支店のATMにおいて、11時2分から9分にS口座から11,000,000円が出金され、11時5分から15分に本件請求人口座へ同額が入金された。
        • (C) 平成29年6月16日、V銀行○○支店のATMにおいて、14時11分から15分にS口座から6,000,000円が出金され、14時17分から22分に本件請求人口座へ同額が入金された。
        • (D) 平成30年1月12日、V銀行○○営業部において、12時2分にT口座から28,000,000円が現金で出金され、同行○○支店において、14時26分に本件請求人口座へ24,000,000円が現金で入金された。
        • (E) 平成30年5月2日、V銀行○○支店のATMにおいて、9時11分から14分にS口座から5,000,000円が出金され、同支店の窓口において9時27分に本件請求人口座へ同額が入金された。
        • (F) 平成30年10月23日、V銀行○○営業部において、12時26分にU口座から15,000,000円が現金で出金され、同行○○支店のATMにおいて、15時54分から16時3分までの間に本件請求人口座へ10,000,000円が入金された。
        • (G) 平成30年11月22日、V銀行○○支店のATMにおいて、15時16分から19分までの間にS口座から6,000,000円が出金され、15時20分から25分までの間に本件請求人口座に同額が入金された。更に、15時25分から27分にS口座から4,000,000円が出金され、15時28分から31分に本件請求人口座に同額が入金された。
        • (H) 令和元年5月16日、V銀行○○支店のATMにおいて、12時42分から47分にT口座から9,000,000円が出金され、同行○○支店のATMにおいて、18時49分から56分までの間に本件請求人口座へ同額が入金された。
      • D 本件各課税期間の全期間を通じて、請求人及び本件仕入先の預金口座においては、上記Cと同様の現金による入出金が繰り返し行われているところ、本件各課税期間における本件請求人口座への現金入金(以下「本件現金入金」という。)の総額は、別表2の「本件現金入金の額」欄の4,365,183,000円であるが、これは、本件各課税期間に請求人が仕入代金として本件仕入先の預金口座へ振り込んだ総額6,914,238,400円の63パーセントに相当する金額である。
      • E 請求人は、本件現金入金について、いずれも売掛金の回収として総勘定元帳の売掛金勘定の貸方に計上しているところ、摘要欄には、「現金入金」又は「振込入金」との記載があるのみで、売上先等の記載はされていない。
         また、現金勘定にも相手科目売掛金、摘要欄に「現金入金」又は「振込入金」との記載があるのみで、入金先及び売上先の記載はされていない。
  • ハ 検討
    • (イ) 本件請求書記載の単価について
       上記ロの(イ)のとおり、本件請求書に記載された紙おむつパックの仕入単価は3,150円ないし3,600円であるところ、当該単価が紙おむつパックの正当な取引価額として認められるか否かについて以下検討する。
      • A Q社らへの売上単価
         上記ロの(ホ)のA及びBのとおり、Q社らは、請求人から受領した請求書に基づき仕入代金を請求人に支払っていたところ、当該請求書に記載された仕入単価は、1,120円ないし1,200円であり、当該単価は、上記ロの(ニ)に記載した本件各課税期間の日本国内の紙おむつパックの小売単価(763円ないし1,498円)からしても妥当な価額と認められる。また、上記(1)のイの(イ)のとおり、Q社らは、中国所在の売上先から紙おむつパックを受注して販売しており、上記ロの(ホ)のD及びEのとおり、その受注単価が1,200円以下であったことからすれば、Q社らが1,200円を超える仕入単価で請求人から紙おむつパックを仕入れていたとは考え難いから、Q社らへの売上単価はQ社らが保存する請求書に記載された1,120円ないし1,200円であったと考えるのが相当である。
         この点に関し、請求人は、中国所在の売上先へ紙おむつパックを販売していたのは請求人であり、Q社らからの振込金額との差額は現金で回収していた旨主張するが、これを裏付ける証拠は見当たらないし、上記(1)のイの(イ)ないし(ニ)のQ社らの取引の流れからしても、請求人が売上単価3,350円ないし3,450円で、直接中国所在の売上先へ販売していたとは認められない。
      • B N社への売上単価
         上記ロの(ヘ)のA及びBのとおり、N社と請求人は、同一の取引について単価及び合計金額の異なるインボイスとインボイスの控えを保存しているところ、1上記ロの(ヘ)のAのとおり、N社は自身が保存するインボイスに基づき、当該インボイスに記載された金額(単価1,170円ないし1,290円で計算された金額)を本件請求人口座に送金していること、2上記Aのとおり、Q社らが同業者である中国所在の会社と単価1,120円ないし1,200円で取引していること、3上記ロの(ニ)のとおり、本件各課税期間の日本国内の紙おむつパックの小売単価が763円ないし1,498円であったことからすれば、N社への売上単価はN社が保存するインボイスに記載された1,170円ないし1,290円であったと考えるのが相当である。
         この点に関し、請求人は、N社への売上単価は請求人が保存するインボイスの控えに記載された3,350円ないし3,500円であり、N社からの振込金額との差額は現金で回収していた旨主張するが、これを裏付ける証拠はなく、請求人のN社への売上単価が3,350円ないし3,500円であったと認めることはできない。
      • C R社からの仕入単価
         上記ロの(ロ)のBのとおり、R社が保存する請求人から受領した注文書に記載された紙おむつパックの単価は1,198円ないし1,301円であり、当該単価は、上記ロの(ニ)の本件各課税期間における日本での小売単価と整合する金額であるから、R社からの仕入単価は、R社が保存する注文書に記載された1,198円ないし1,301円であったと考えるのが相当である。
         なお、請求人が保存する発行名義人をR社とする請求書には、紙おむつパックの単価が3,470円ないし3,600円と記載されているが、上記ロの(ロ)及び(ハ)からすると、当該請求書はR社が作成したものとは認められないから、当該請求書に記載された単価を正当な仕入単価と認めることはできない。
      • D 小括
         上記A及びBのとおり、請求人がQ社ら及びN社に紙おむつパックを販売した際の売上単価は最高でも1,290円であったと考えられるところ、本件請求書に記載された紙おむつパックの仕入単価3,150円ないし3,600円は、請求人がQ社ら及びN社に販売した際の売上単価に比し著しく高額であり、請求人が、そのような単価で取引を行うことに経済的合理性を見いだすことはできない。
         そして、上記Cのとおり、請求人はR社から実際には仕入単価1,198円ないし1,301円で仕入れたにもかかわらず、仕入単価を3,470円ないし3,600円と記載した作成者不明の請求書を保存していたこと、上記ロの(ロ)のとおり、当該請求書と本件請求書の書式がほとんど同じであること、上記ロの(イ)のとおり、請求人宛のT社名義の請求書を本件代表者が作成することがあったことも併せ考えると、本件請求書の記載内容の信用性を疑うに十分であり、本件請求書に記載された仕入単価は過大であると認めるのが相当である。
    • (ロ) 本件現金入金に係る金員の原資について
       上記ロの(ト)のAないしDのとおり、請求人から仕入代金として本件仕入先名義の預金口座に振り込まれた金員は、その振込みと近接した日時にほぼ同額が出金されており、また、上記出金時点と近接した日時に同出金額に近い金員が本件請求人口座へ入金されている。これらの各口座の入出金の状況は、請求人が本件仕入先に支払った仕入代金が、本件現金入金に係る金員の原資であることを強く推認させるものである。
       請求人は、上記ロの(ト)のEのとおり、本件現金入金を売掛金の回収として総勘定元帳の売掛金勘定に計上しており、この点に関して本件代表者は、原処分庁所属の調査担当職員に対し、1中国では中国通貨等の送金及び持出規制があるので、円貨決済で商売を行っている旨、2売掛金の回収については、本件代表者が中国へ帰省した際に中国の売上先に依頼された中国人から中国国内で日本円を受け取り日本国内に持ち込む旨、3知人に中国国内での日本円の受取を依頼し、当該知人が日本に持ち込んだ現金を回収し、ATMで本件請求人口座に入金している旨を申述している。
       しかしながら、上記ロの(ホ)のF及び(ヘ)のCのとおり、請求人は、売上単価3,350円ないし3,500円に数量を乗じた金額を売上げとして計上しているが、上記(イ)のA及びBのとおり、請求人の実際の売上げは売上単価1,120円ないし1,290円に数量を乗じた金額と認められることから、売上げの反対勘定として総勘定元帳の売掛金勘定に計上された金額は過大に計上されたものであると認められる。
       そして、本件現金入金は、本件各課税期間を通して約43億円に上っており、これほど高額な売掛金が存在するのであれば、通常、売掛帳等の補助簿を作成したり、総勘定元帳の摘要欄に売上先等を記載するなどして売上先別に売掛金残高の管理を行ってしかるべきところ、請求人において補助簿の作成又は総勘定元帳の記載が一切ないのは不自然であり、この点について請求人からの合理的な説明も一切ない。また、中国での現金の回収に係る本件代表者の申述についても、現金の回収を依頼した知人の氏名を明らかにしないなど、その申述には具体性がなく、合計約43億円もの現金の授受があったとしながら、領収証等その授受を裏付ける証拠も一切ないことから、当該申述を信用することはできない。そうすると、実際の売上げに係る売掛金の回収は海外送金又は振込入金により回収した金額のみであり、本件現金入金に係る金員が中国において回収した売掛金であったと認めることはできない。
       以上のことからすると、本件現金入金に係る金員は、請求人が本件請求書に基づき本件仕入先に仕入代金として支払った金員を原資とするものであると認めるのが相当である。
    • (ハ) まとめ
       上記(イ)のとおり、本件請求書に記載された仕入単価が過大であると認められること、また、上記(ロ)のとおり、本件現金入金に係る金員は、請求人が本件請求書に基づき本件仕入先に仕入代金として支払った金員を原資として、本件請求人口座に戻されたものであると認められることから、請求人は、真実の金額ではない高額な仕入単価によって金額を水増しして作成した本件請求書に基づき、本件仕入れに係る仕入金額を過大に計上した上で、水増しした金額を本件請求人口座に入金し、売掛金の回収として経理処理していたものと認められる。
       そうすると、本件各課税期間の全期間において計上された本件仕入れの金額のうち、本件仕入先から本件請求人口座に戻された本件現金入金の合計金額4,365,183,000円(税込み)は過大に計上された金額であると解するのが相当である(本件各課税期間の過大計上額は別表4のとおり)。
  • ニ 請求人の主張について
    • (イ) 請求人は、上記4の(2)の「請求人」欄のイのとおり、本件仕入先は、小売店の販売数に制限があったので、人海戦術により各小売店から仕入れているため、単価は、小売店からの購入金額に仕入れを委託した委託先の経費が加算された金額となるので、小売店の販売価格より高額になるのは当然である旨主張する。
       しかしながら、小売店での購入価格に委託者への委託手数料を上乗せするとしても、本件仕入先が小売価格の3倍もの高額な金額で買い取るということ自体疑わしい上に、上記ハの(イ)のA及びBのとおり、請求人における売上単価は1,120円ないし1,290円と認められるところ、営利企業である請求人が、売上単価をおよそ3倍も上回る単価で商品を仕入れることに経済的合理性を見いだすことはできない。
       よって、請求人の主張には理由がない。
    • (ロ) 請求人は、上記4の(2)の「請求人」欄のロのとおり、N社に対する販売金額は、請求人が保存するインボイスの控えに記載した3,350円であり、N社からの送金額との差額は現金で回収している旨、また、Q社らからの送金額と請求人が保存するインボイスの控えとの差額は現金で回収している旨主張する。
       しかしながら、請求人の主張が認められないことは、上記ハの(イ)のA及びBで述べたとおりである。
    • (ハ) 請求人は、上記4の(2)の「請求人」欄のニのとおり、本件仕入先へ仕入代金を振り込んだ後、本件仕入先から金銭を受領した事実はない旨主張する。
       しかしながら、本件現金入金に係る金員は、請求人が本件請求書に基づき本件仕入先に仕入代金として支払った金員であると認められることは、上記ハの(ロ)のとおりであるから、請求人の主張に理由はない。

(3) 争点3(R社との仕入取引及び本件仕入れについて、消費税法第30条第7項に規定する帳簿及び請求書等を保存しない場合に当たるか否か。)について

  • イ 法令解釈
     消費税法第30条第7項は、当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等が税務職員による検査の対象となり得ることを前提にして、別紙2の3の(3)のとおり規定しており、事業者が同項に規定する帳簿及び請求書等を保存していない場合には同条第1項の規定が適用されないことになるが、このような法的不利益が特に定められたのは、資産の譲渡等が連鎖的に行われる中で、広く公平に資産の譲渡等に課税するという消費税により適正な税収を確保するには、当該帳簿及び請求書等という確実な資料を保存させることが必要不可欠であると判断されたためであると考えられる。
     そして、消費税法第30条第8項は、同条第7項に規定する帳簿とは次に掲げる事項が記載されているものをいう旨規定して、別紙2の3の(4)の事項を掲げ、また、同条第9項は、同条第7項に規定する請求書等とは次に掲げる事項が記載されているものをいう旨規定して、別紙2の3の(5)の事項を掲げているから、同条第7項に規定する帳簿及び請求書等が、課税仕入れの相手方又は書類の作成者の氏名又は名称、課税仕入れに係る支払対価の額などの列挙された事項の全てが記載されたものを意味することは明らかであるし、上記のような同項の規定の趣旨からすれば、当該記載は真実の記載であることが当然に要求されているというべきであり、事業者がその要件を具備した帳簿及び請求書等を保存していない場合には、当該課税仕入れに係る消費税額について同条第1項の規定を適用して仕入税額控除をすることはできないと解される。
  • ロ 検討
    • (イ) R社との仕入取引について
       消費税法第30条第9項柱書及び同項第1号は、同条第7項に規定する請求書等とは、課税資産の譲渡等を行う取引の相手方が交付するものである旨規定するところ、上記(2)のロの(ロ)及び(ハ)の事実からすると、請求人が保存するR社を発行名義人とする請求人宛の請求書は、R社が作成して請求人に交付したものとは認められないから、同条第9項第1号の請求書等に該当しない。また、請求人は、R社との仕入取引について、仕入明細書、仕入計算書その他これらに類する書類を作成してR社の確認を得ることもしていないから、同項第2号の請求書等の保存もない。
       したがって、請求人は、R社との仕入取引に関して、消費税法第30条第7項に規定する「請求書等を保存しない場合」に該当する。
    • (ロ) 本件仕入れについて
       上記イで述べたとおり、帳簿及び請求書等に記載された事項は、真実の記載であることが求められるところ、上記(2)のハの(ハ)のとおり、本件請求書に記載された仕入単価及び合計金額は、真実の金額ではなく、水増しされたものであることから、本件請求書は、消費税法第30条第9項第1号の請求書等に該当しない。
       また、請求人は、本件仕入れに関して、当該請求書に基づき、総勘定元帳の商品仕入高にも真実の取引金額とは異なる水増し後の金額で記載していることから、当該総勘定元帳も消費税法第30条第8項の帳簿に該当しない。
       したがって、請求人は、本件仕入れについて、消費税法第30条第7項に規定する「帳簿及び請求書等を保存しない場合」に該当する。

(4) 争点4(本件仕入れの金額を課税仕入れに係る支払対価の額に含めて計算したことについて、通則法第68条第1項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があるか否か。)について

  • イ 法令解釈
     通則法第68条に規定する重加算税は、過少申告加算税、無申告加算税又は不納付加算税を課すべき納税義務違反が事実の隠蔽又は仮装という不正な方法に基づいて行われた場合に、違反者に対して課せられる行政上の措置である。ここでいう「事実の隠蔽」とは、課税標準又は税額の計算の基礎となる事実について、これを隠蔽し又は故意に脱漏することをいい、また、「事実の仮装」とは、所得及び財産あるいは取引上の名義等に関しあたかも真実であるかのように装う等、故意に事実をわい曲することをいうものと解される。
  • ロ 当てはめ
     上記(2)のハの(イ)ないし(ハ)のとおり、請求人は、本件仕入れについて、水増しした単価及び請求金額を記載した本件請求書を基に仕入代金を本件仕入先の各口座に振り込んだ後、その一部を回収し、回収した金員が売掛金の回収であるかのごとく総勘定元帳に虚偽の記載を行っていた。そして、請求人は、本件請求書に基づき水増しした本件仕入れの金額を総勘定元帳の商品仕入高勘定に計上していた。このような一連の行為は、水増しした本件仕入れの金額があたかも真実の金額であるように装い、故意に真実をわい曲した行為であると評価できるから、通則法第68条第1項に規定する課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の一部を仮装し、その仮装したところに基づき納税申告書を提出していた場合に該当する。
  • ハ 請求人の主張について
     請求人は、上記4の(4)の「請求人」欄のとおり、請求人が保存するインボイスの控えの売上単価は正当であり、本件仕入先に対し、本件請求書に基づいて仕入代金を支払っているから、事実の隠蔽又は仮装はない旨主張する。
     しかしながら、請求人が、水増しした本件仕入れの金額を本件仕入先の各口座に振り込んだ後、その一部を回収し、回収した金員を売掛金の回収に仮装していたことは上記ロで述べたとおりであり、請求人の主張には理由がない。

(5) 争点5(請求人の平成29年12月期の帳簿書類について、法人税法第127条第1項第3号に規定する青色申告の承認の取消事由があるか否か。)について

  • イ 法令解釈
     法人税法第127条第1項第3号は、青色申告の承認を受けた内国法人につき、その事業年度に係る帳簿書類に取引の全部又は一部を隠蔽し又は仮装して記載し又は記録した場合に、税務署長は青色申告の承認を取り消すことができる旨規定するところ、ここにいう「隠蔽」又は「仮装」については、上記(4)のイの通則法第68条第1項に規定する「隠蔽」又は「仮装」と別異に解すべき理由はないから、その意義は同一であると解される。
  • ロ 当てはめ
     上記(4)のとおり、請求人は、水増しした本件仕入れの金額があたかも真実の金額であるように故意に装い、帳簿書類に取引を仮装して記載したのであるから、請求人の平成29年12月期の帳簿書類には、法人税法127条第1項第3号の取消事由がある。
  • ハ 請求人の主張について
     請求人は、上記4の(5)の「請求人」欄のとおり、売上単価及び仕入単価に水増しの事実はなく、総勘定元帳は正当に記載されている旨主張する。
     しかしながら、請求人が総勘定元帳の商品仕入高勘定及び売掛金勘定に虚偽の記載をしていたことは上記(4)のとおりであるから、請求人の主張には理由がない。

(6) 争点6(請求人が求めた法人税等の各更正の請求は、通則法第23条第1項各号に規定する事由に該当するか否か。)について

  • イ 平成30年12月期及び平成30年12月課税事業年度について
     上記1の(4)のホのとおり、令和3年7月5日付の平成30年12月期の法人税及び平成30年12月課税事業年度の地方法人税の各更正処分により、請求人の納付すべき税額はいずれも〇〇〇〇円となっていることから、通則法第23条第1項第1号に規定する更正後の税額が過大であるときには該当しない。
     また、上記(5)のとおり、請求人の平成29年12月期以後の青色申告の承認は適法に取り消されており、請求人は、平成30年12月期に生じた欠損金を令和元年12月期に繰り越すことはできないから、通則法第23条第1項第2号に規定する更正後の純損失等の金額が過少又は記載がなかったときにも該当しない。
  • ロ 令和元年12月期及び令和元年12月課税事業年度について
     上記イのとおり、平成30年12月期の欠損金は翌事業年度以降に繰り越すことはできず、令和元年12月期の損金の額に算入することはできないから、令和元年12月期の法人税額及び令和元年12月課税事業年度の地方法人税額に変動はなく、通則法第23条第1項第1号に規定する税額が過大であるときに該当しない。
  • ハ 請求人の主張について
     請求人は、上記4の(6)の「請求人」欄のとおり、法人税の各更正処分には誤りがあり、また、本件青色申告取消処分は取り消されるべきであるから、法人税及び地方法人税の各更正の請求は、通則法第23条第1項各号に規定する事由に該当する旨主張する。
     しかしながら、上記(2)のとおり、本件仕入れの金額は過大に計上されたものと認められるから、当該事実に基づいてされた法人税の各更正処分に誤りがあるとは認められない。また、上記(5)のとおり、請求人には青色申告の承認の取消事由がある。
     したがって、請求人の主張には理由がない。

(7) 争点7(本件繰戻還付請求は認められるか否か(具体的には、請求人は、令和2年12月期の法人税の確定申告について、法人税法第80条第1項の青色申告書である確定申告書を提出していたか否か。)。)について

法人税法第80条第1項によれば、還付請求を行うためには、当該還付請求に係る欠損事業年度に青色申告書である確定申告書を提出していることが要件となる。そして、法人税法第127条第1項の規定によれば、青色申告の承認の取消しがあったときは、当該事業年度開始の日以後その内国法人が提出したその承認に係る青色申告書は、青色申告書以外の申告書とみなされる。
 これを本件についてみると、上記(5)のとおり、請求人の平成29年12月期の帳簿書類には青色申告の承認の取消事由があり、請求人の青色申告の承認は適法に取り消されているから、請求人が提出した欠損事業年度である令和2年12月期の法人税の確定申告書は、青色申告書とは認められない。そうすると、当該事業年度の欠損金は、法人税法第80条第1項に規定する青色申告書である確定申告書を提出する事業年度において生じた欠損金に該当せず、令和元年12月期の損金の額に算入することはできない。
 したがって、本件繰戻還付請求は認められない。

(8) 本件消費税等各更正処分の適法性について

  • イ 平成29年2月課税期間ないし平成30年3月課税期間、平成30年8月課税期間及び平成31年1月課税期間
     上記(3)のロのとおりR社との仕入取引及び本件仕入れに係る消費税等の額は仕入税額控除を適用することができない。これに基づき納付すべき消費税等の額を計算すると、原処分と同額になる。そして、平成29年2月課税期間ないし平成30年3月課税期間、平成30年8月課税期間及び平成31年1月課税期間(以下「本件17課税期間」という。)の各更正処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
     したがって、本件17課税期間の各更正処分は適法である。
  • ロ 平成30年4月課税期間ないし平成30年7月課税期間、平成30年9月課税期間ないし平成30年12月課税期間及び平成31年2月課税期間ないし令和元年5月課税期間
     上記(1)のロの(イ)のとおり、本件輸出取引は、請求人による本邦からの輸出として行われる資産の譲渡であると認められ、消費税法第7条第1項の規定(輸出免税等)の適用がある。また、上記(3)のロのとおり、R社との仕入取引及び本件仕入れに係る消費税等の額は仕入税額控除を適用することができない。これらに基づき納付すべき消費税等の額を計算すると、別表5の「審判所認定額」欄の「納付すべき税額」のとおりとなり、原処分の額を下回ることとなる。
     そして、平成30年4月課税期間ないし平成30年7月課税期間、平成30年9月課税期間ないし平成30年12月課税期間及び平成31年2月課税期間ないし令和元年5月課税期間(以下「本件12課税期間」という。)の各更正処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
     したがって、本件12課税期間の消費税等の更正処分は、その一部を別紙3−1ないし別紙3−12の「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。

(9) 本件各賦課決定処分の適法性について

  • イ 重加算税の各賦課決定処分
     上記(4)のとおり、本件各課税期間の請求人の行為は、通則法第68条第1項に規定する仮装行為に該当し、請求人は、その仮装したところに基づいて本件各課税期間の消費税等の確定申告書を提出したものであり、また、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、いずれも、その他の重加算税の賦課要件も満たしていると認められる。
     そこで、これを前提に、当審判所において本件各課税期間の重加算税の額を計算すると、いずれも本件各賦課決定処分に係る重加算税の額と同額となる。
     したがって、本件各課税期間の重加算税の各賦課決定処分はいずれも適法である。
  • ロ 過少申告加算税の各賦課決定処分
    • (イ) 平成29年2月課税期間ないし平成30年3月課税期間、平成30年8月課税期間及び平成31年1月課税期間
       上記(8)のイのとおり、本件17課税期間の各更正処分は適法であり、当該各更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められない。そして、当審判所においても、本件17課税期間の過少申告加算税の額は、いずれも原処分と同額であると認められる。
       したがって、本件17課税期間の過少申告加算税の各賦課決定処分は適法である。
    • (ロ) 平成30年4月課税期間ないし平成30年7月課税期間、平成30年9月課税期間ないし平成30年12月課税期間及び平成31年2月課税期間ないし令和元年5月課税期間
       上記(8)のロのとおり、本件12課税期間の各更正処分はいずれもその一部を取り消すべきである。また、納付すべき税額の計算の基礎となった事実が更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められない。
       したがって、通則法第65条第1項及び同条第2項の規定に基づいて計算された請求人の過少申告加算税の額は、別表5の「審判所認定額」欄のとおりとなり、いずれも原処分を下回るから、本件12課税期間の過少申告加算税の各賦課決定処分は、いずれもその一部を別紙3−1ないし別紙3−12の「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。

(10) 本件青色申告取消処分の適法性について

上記(5)のとおり、請求人の平成29年12月期の帳簿書類については、法人税法第127 条第1項第3号に規定する青色申告承認の取消事由があると認められる。そして、本件青色申告取消処分のその他の部分について、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
 したがって、本件青色申告取消処分は適法である。

(11) 本件各通知処分の適法性について

上記(6)のとおり、請求人のした法人税等の各更正の請求には更正をすべき理由はなく、また、上記(7)のとおり、請求人は本件繰戻還付請求をすることができない。そして、本件各通知処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
 したがって、本件各通知処分は適法である。

(12) 結論

よって、審査請求には理由があるから、原処分の一部を取り消すこととする。

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