(令和5年3月17日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)を名宛人とする外国からの郵便物の内容が製造たばこであったことから、原処分庁から委任を受けたD税関E外郵出張所長が、請求人に対し、輸入する製造たばこに係るたばこ税等の課税標準及び税額を通知したところ、請求人が、当該郵便物は本邦から外国に向けて発送した後に外国において輸入が取りやめとなって本邦に返送されてきたものであるから、当該郵便物の引取りは輸入に該当せず、請求人にたばこ税等の納税義務はないとして、原処分の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 関係法令

関係法令は別紙のとおりである。なお、別紙で定義された略語については、以下、本文でも使用する。

(3) 基礎事実及び審査請求に至る経緯

当審判所の調査及び審理の結果によれば、次の事実が認められる。

  • イ 請求人は、令和4年1月18日、宛先を中華人民共和国(以下「中国」という。)のFとして製造たばこである加熱式たばこ合計〇箱を内容とする郵便物(以下「本件郵便物」という。)を日本国内から発送して輸出した。
  • ロ 本件郵便物は、令和4年1月23日、中国に到着したが、同年3月25日、中国において輸入のための通関手続を経ることなく、その輸入が取りやめとなった。そのため、受取人への交付はされず、その差出人である請求人に還付されることとなり、そのまま請求人を名宛人として返送された。そして、同年5月18日、日本郵便のG国際郵便局に到着した。
  • ハ G国際郵便局は、令和4年5月19日、D税関E外郵出張所長(以下「出張所長」という。)に対し、中国から返送された本件郵便物を提示した。
     出張所長は、本件郵便物の検査を行い、その内容が製造たばこである加熱式たばこ合計〇箱であったことから、遅くとも令和4年5月23日までに、本件郵便物の名宛人である請求人に対し、同月19日付の国際郵便物課税通知書により、本件郵便物に係るたばこ税等の課税標準が製造たばこ〇本であり、納付すべきたばこ税等の税額が〇〇〇〇円である旨を通知した(以下、当該通知を「本件課税通知」という。)。なお、関税並びに消費税及び地方消費税(以下、消費税と地方消費税を併せて「消費税等」という。)については免除されていた。
  • ニ 請求人は、令和4年5月23日、日本郵便のH郵便局に対し、本件課税通知に係るたばこ税等の税額に相当する金銭を交付し、当該たばこ税等の納付を委託した上、同郵便局から本件郵便物の交付を受けた。
  • ホ 請求人は、令和4年6月10日、本件課税通知に不服があるとして、輸徴法第7条第9項により賦課決定処分とみなされる本件課税通知の全部の取消しを求めて審査請求をした。

2 争点

 請求人が中国から返送された本件郵便物の交付を受けるためには、本件課税通知に係るたばこ税等の納付等を要するか否か。

3 争点についての主張

原処分庁 請求人
請求人が中国から返送された本件郵便物の交付を受けることは、製造たばこの輸入に当たるから、請求人が本件郵便物の交付を受けるためには、本件課税通知に係るたばこ税等の納付等を要する。
 製造たばこを保税地域から引き取る者は、その引き取る製造たばこにつきたばこ税等を納める義務を負うところ(たばこ税法第4条第2項、たばこ特別税法第5条第2項)、課税物品である製造たばこを保税地域以外の場所から輸入する場合、その輸入は保税地域からの引取りとみなされる(輸徴法第5条第1項)。
 請求人は、中国から返送された本件郵便物をH郵便局において引き取ったのであるから、製造たばこを輸入したといえ、その引取りに当たり、その輸入に係るたばこ税等の納付等をしなければならない。
請求人が中国から返送された本件郵便物の交付を受けることは、製造たばこの輸入に当たらないから、請求人が本件郵便物の交付を受けるためには、本件課税通知に係るたばこ税等の納付等を要しない。
 輸入とは、外国から本邦に到着した貨物を本邦に引き取ることをいうところ、本件郵便物は、中国において輸入のための通関手続を経ることなく、輸入が取りやめとなって、本邦に返送されてきたものであり、中国において税関を通関していない以上、外国から本邦に到着した貨物に当たらない。したがって、中国から返送された本件郵便物の交付を受けることは、「輸入」に当たらない。
 そして、中国から返送された本件郵便物の交付を受けることが「輸入」に当たらない以上、その交付を受けるに当たり、製造たばこの輸入に係るたばこ税等の納付等をする必要はない。

4 当審判所の判断

(1) 検討

  • イ たばこ税等は、たばこ税法第4条第2項及びたばこ特別税法第5条第2項のとおり、保税地域から引き取られる製造たばこを対象として、製造たばこを保税地域から引き取る者に対して課されるものであるが、輸徴法第5条第1項の規定により、製造たばこを含む課税物品を保税地域以外の場所から輸入する場合、当該輸入が保税地域からの引取りとみなされる。また、関税法第2条第1項第1号及び輸徴法第2条第1号のとおり、「輸入」とは、外国から本邦に到着した貨物又は輸出の許可を受けた貨物を本邦に引き取ることをいう旨規定されている。そうすると、たばこ税等は、製造たばこを輸入する者、すなわち、外国から本邦に到着した製造たばこ又は輸出の許可を受けた製造たばこを本邦に引き取る者に課されるものといえる。
     そして、輸徴法第7条第3項及び第7項のとおり、製造たばこを内容とする郵便物を輸入する場合、当該郵便物の交付を受けようとする者は、税関長が当該郵便物の名宛人に書面で通知した税額に相当するたばこ税等を納付し、又はその納付を日本郵便に委託することを要する。
  • ロ 本件郵便物は、中国に向けた発送手続において、G国際郵便局によって出張所長に提示されたところ、出張所長は検査の必要がないものとして、当該郵便局にその旨を通知したことが認められる。よって、本件郵便物は、関税法第73条の2及び同法第76条の規定に基づき輸出を許可された貨物とみなされる。
     そうすると、請求人が本件郵便物の交付を受けることは、輸出の許可を受けた製造たばこを内容とする当該郵便物の本邦への引取りであり、「輸入」に当たる。
     したがって、請求人が、本件郵便物の交付を受けるためには、本件課税通知に係るたばこ税等の納付等を要することとなる。
     なお、上記1の(3)のハのとおり、本件郵便物の輸入において、関税及び消費税等は免除されているが、たばこ税等については、同様の免除規定は法律上設けられていない。
  • ハ 請求人は、上記3の「請求人」欄において、本件郵便物が中国の税関を通関することができず、輸入が取りやめとなり本邦に返送されてきたものであるから、輸入には当たらず、たばこ税等を納める義務はない旨主張する。
     しかしながら、上記ロのとおり、請求人が本件郵便物の交付を受けることは「輸入」に当たることから、請求人の主張には理由がない。
  • ニ 請求人のその他の主張について
    • (イ) 請求人は、中国の本件郵便物の受取人からたばこの代金及び送料を受領しただけであり、輸出に係る利益を得ていない旨主張する。
       しかしながら、上記ロのとおり、請求人が本件郵便物の交付を受けるためにはたばこ税等の納付等を要するのであって、請求人が、本件郵便物の輸出に係る利益を得ているか否かは上記判断を左右するものではない。したがって、請求人の主張には理由がなく採用することはできない。
    • (ロ) 請求人は、中国に向けて発送した製造たばこを内容とする郵便物について、本件郵便物と同様に返送されてきたものの、たばこ税等を課されなかったものがあり、本件課税通知は不公平である旨主張する。
       しかしながら、そもそも課税処分は、客観的な課税標準の存在を根拠としてされるものであることから、他の製造たばこの輸入に当たり、たばこ税等が課されなかったものがあることをもって課税の公平に反するということはできず、原処分庁がした本件課税通知が不公平で、違法となるものではない。したがって、請求人の主張には理由がなく採用することはできない。

(2) 原処分の適法性について

上記(1)のロのとおり、請求人は、製造たばこを内容とする本件郵便物の交付を受けるためには本件課税通知に係るたばこ税等の納付等をしなければならず、当審判所において、本件郵便物の輸入に係るたばこ税等の課税標準及び納付すべきたばこ税等の税額を計算すると、本件課税通知の本数及び金額と同じとなる。
 また、原処分のその他の部分について、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
 したがって、原処分は適法である。

(3) 結論

よって、審査請求は理由がないのでこれを棄却することとする。

トップに戻る

トップに戻る