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(令和6年3月6日裁決)
《裁決書(抄)》
1 事実
(1) 事案の概要
本件は、審査請求人らが、相続により取得した土地について、財産評価基本通達の定めに従い算定した価額により相続税の申告をした後に、当該土地は「地積規模の大きな宅地」に準じて評価額が減額される土地に当たるとして、相続税の更正の請求をしたところ、原処分庁が、更正をすべき理由がない旨の通知処分をしたのに対し、審査請求人らが、その全部の取消しを求めた事案である。
(2) 関係法令等
関係法令等は、別紙2のとおりである。
なお、別紙2で定義した略語については、以下、本文についても使用する。
(3) 基礎事実
当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
- イ 相続の開始について
F(以下「本件被相続人」という。)は、令和2年8月○日に死亡し、その相続(以下「本件相続」という。)が開始した。
本件被相続人の共同相続人は、本件被相続人の配偶者であるG、長女である審査請求人H(以下「請求人H」という。)、次女である審査請求人J(以下「請求人J」という。)、次女の配偶者で本件被相続人の養子である審査請求人D(以下「請求人D」といい、請求人H及び請求人Jと併せて「請求人ら」という。)の4名である。
本件被相続人は、本件相続の開始時において別表1記載の各土地(以下「本件各土地」という。)を所有していた。
請求人J及び請求人Dは、本件相続により、本件各土地をそれぞれ持分2分の1ずつ取得した。 - ロ 本件各土地の所在地域等について
- (イ) 本件各土地の形状及び接道状況は、別紙3のとおりであり、南側の一部は国道d号に接している。
- (ロ) 本件各土地は、いずれも市街化調整区域内に所在している。
- (ハ) 本件各土地は、都市計画法第8条《地域地区》第1項第1号に規定する用途地域の指定のない地域に所在しており、当該地域の建築基準法第52条第1項に規定する容積率は、200パーセントである。
- (ニ) K国税局長が定めた令和2年分財産評価基準書によれば、本件各土地は、いずれも評価通達21《倍率方式》により評価する地域に所在し、当該地域に存する宅地の固定資産税評価額に乗ずる倍率は、1.1倍であった。
- (ホ) 本件各土地の令和2年度の固定資産税評価額は、本件各土地を一画地として、状況類似地区(宅地の沿接する道路の状況等が類似していると認められる宅地の所在する地区)にある、用途を商業とした標準宅地の1
当たりの単価39,900円を基として、奥行価格補正率80パーセントを適用し、総額127,543,061円と算定されたものであった。
- ハ 本件各土地の利用状況等について
- (イ) 本件被相続人は、平成27年10月8日、L社との間で、賃貸人を本件被相続人、賃借人をL社として、公正証書により要旨次の内容の事業用定期借地権設定契約(以下「本件借地契約」という。)を締結した。
- A 本件被相続人は、L社に対し、本件各土地をL社の建物所有を目的として賃貸し、L社はこれを借り受け、専らL社が所有する複合商業店舗事業の用に供する建物の用地として使用する。
なお、本件被相続人とL社は、本件各土地が本件各土地に隣接する第三者所有の土地(以下「第三者所有土地」という。)とともに、L社による同一の事業目的の下で利用される一団の土地を構成する土地であることを合意する。 - B 本件借地契約の存続期間は、平成27年(2015年)10月15日から平成47年(2035年)10月29日までの20年と15日間とし、賃料は月額836,000円とする。
- C 本件被相続人及びL社は、本件借地契約の存続期間中は本件借地契約を解約することができず、L社は、本件借地契約の期間満了時に本件各土地上に建物が存在する場合でも契約の更新を求めることはできない。
- A 本件被相続人は、L社に対し、本件各土地をL社の建物所有を目的として賃貸し、L社はこれを借り受け、専らL社が所有する複合商業店舗事業の用に供する建物の用地として使用する。
- (ロ) L社は、平成27年3月3日、M市長から、都市計画法第34条第12号及び平成28年改正前市条例第16条の4第1号に該当するとして、本件各土地及び第三者所有土地を含む5,940.22
の区域について、予定建築物等の用途を貸店舗3棟(コンビニエンスストア、衣服小売店及び一般飲食店)とする開発許可を受けた。
なお、本件各土地及び第三者所有土地の位置関係については、別紙3のとおりである。 - (ハ) 上記(ロ)の開発許可は、都市計画法第34条第12号及び平成28年改正前市条例第16条の4第1号に基づくものであるところ、同号は、国道d号沿道区域において、店舗、事務所、倉庫その他これらに類する用途に供する建築物を建築する目的で行う開発行為を掲げていた。
- (ニ) 平成28年3月28日、N市における市街化調整区域の開発基準の見直しにより市条例が改正されたことに伴い、本件各土地は、別紙3のとおり、本件相続の開始時において、都市計画法第34条第12号に規定する条例で定める区域のうち、令和3年改正前市条例第16条の4第1号に定める特定集落区域内及び同条第2号に定める国道d号沿道区域内に位置することになった。
- (ホ) N市は、N市ホームページにおいて、市街化調整区域における宅地の拡散防止と小学校周辺等の地域拠点の維持とそのための緩やかな誘導を図るため、平成29年4月1日以降、特定集落区域を将来の生活拠点候補地として緩やかに誘導する旨を公表していた。
- (ヘ) 本件各土地は、本件相続の開始時において、本件借地契約に基づきL社が使用しており、本件借地契約の残存期間は15年と2か月であった。
また、本件各土地上には、L社が所有する貸店舗3棟(コンビニエンスストア、衣服小売店及び一般飲食店)が存在していた。 - (ト) また、本件各土地は、本件相続の開始時において、都市計画法第34条第10号に規定する地区計画又は集落地区計画の区域及び同条第11号に規定する条例指定区域に所在する宅地に該当していなかった。
- (イ) 本件被相続人は、平成27年10月8日、L社との間で、賃貸人を本件被相続人、賃借人をL社として、公正証書により要旨次の内容の事業用定期借地権設定契約(以下「本件借地契約」という。)を締結した。
- ニ 審査請求に至る経緯について
- (イ) 請求人らは、本件相続に係る相続税(以下「本件相続税」という。)について、申告書に別表2の「申告」欄のとおり記載して、共同で原処分庁に法定申告期限までに申告(以下「本件申告」という。)した。
請求人らは、本件申告において、本件各土地は、倍率方式により評価する定期借地権の目的となっている宅地として、その価額については、評価通達21−2本文、評価通達25《貸宅地の評価》及び評価通達27−2《定期借地権等の評価》に定める方法により評価した価額を112,237,893円とした上、これに租税特別措置法第69条の4《小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例》に基づく減額をして総額109,428,934円とした。 - (ロ) 請求人らは、令和4年8月12日、本件相続税について、別表2の「更正の請求」欄のとおり記載した各更正の請求書をそれぞれ原処分庁に提出し、更正の請求をした。
当該各更正の請求は、本件各土地が本件通達の適用に際して市街化調整区域から除くとする都市計画法第34条第10号又は同条第11号に定める地域に所在しないが、同条第12号に基づき、宅地分譲に係る開発行為が可能な土地であることから、本件通達上の「地積規模の大きな宅地」の適用要件を満たす土地に準ずる土地として評価すべきであることを理由とするものであり、請求人らは、当該各更正の請求において、本件各土地の価額について、評価通達21−2ただし書、本件通達、評価通達25及び評価通達27−2に定める方法で評価した価額を67,060,999円とした上、これに租税特別措置法第69条の4に基づく減額をして総額65,382,674円とした。 - (ハ) 原処分庁は、請求人らに対して、令和5年1月5日付で、別表2の「通知処分」欄のとおり、更正をすべき理由がない旨の各通知処分(以下「本件各通知処分」という。)をした。
- (ニ) 請求人らは、令和5年3月23日、本件各通知処分に不服があるとして、それぞれ審査請求をした。
なお、請求人らは、請求人Dを総代として選任し、その旨を令和5年4月6日に当審判所に届け出た。
- (イ) 請求人らは、本件相続に係る相続税(以下「本件相続税」という。)について、申告書に別表2の「申告」欄のとおり記載して、共同で原処分庁に法定申告期限までに申告(以下「本件申告」という。)した。
2 争点
本件各土地は、「地積規模の大きな宅地」に準じて評価することができるか否か。
3 争点についての主張
請求人ら | 原処分庁 |
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本件各土地は、以下の理由により「地積規模の大きな宅地」に準じて評価することができる。 | 本件各土地は、以下の理由により「地積規模の大きな宅地」に準じて評価することができない。 |
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(3) 本件各土地について 本件各土地は、以下のとおり、戸建住宅用地として利用されることが予定されている。
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(3) 本件各土地について
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4 当審判所の判断
(1) 法令解釈等
- イ 相続税法第22条について
相続税法第22条は、同法第3章において特別の定めのあるものを除くほか、相続又は遺贈により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価による旨規定しているところ、ここにいう時価とは、相続開始時における当該財産の客観的な交換価値をいうものと解される。
しかし、相続財産の客観的な交換価値は、必ずしも一義的に確定されるものではないから、これを個別に評価する方法を採った場合には、その評価方式等により異なる評価額が生じたり、課税庁の事務負担が重くなり、迅速かつ適切な課税事務の処理が困難となったりするおそれがある。
この点、相続税法は、一定の例外を除いて財産の評価の方法について直接定めていないが、これは、上記のような納税者間の公平の確保、納税者及び課税庁双方の便宜、経費の節減等の観点から、評価に関する通達により全国一律の統一的な評価の方法を定めることを予定し、これによって財産の評価がされることを当然の前提とする趣旨であると解するのが相当である。
相続税法の上記趣旨からすれば、相続財産の評価に当たっては、当該財産に適用される評価通達に定められた評価方法が適正な時価を算定する方法として一般的な合理性を有するものであり、かつ、評価通達に定める評価方法によって評価することが適正な時価を求めることができない結果となるなど、評価通達に定める評価方法によるべきではない特別の事情がない限り、評価通達に定められた評価方法によって画一的に評価することが相当である。 - ロ 本件通達について
本件通達では、適用対象となる宅地を「地積規模の大きな宅地」と定義付け、その宅地の地積の規模に応じた減額の補正を行う旨定めている。
この補正は、「地積規模の大きな宅地」を戸建住宅用地として分割分譲する場合に発生する減価のうち、主に地積の大きさに基因する道路、公園等の公共公益的施設用地などのいわゆる「潰れ地」の負担による減価、
住宅用地として利用するために必要な上下水道等の供給処理施設の工事費用や公共公益的施設の整備費用等の負担による減価及び
開発分譲業者の事業収益・事業リスク等の負担による減価を評価対象宅地の価額に反映させるとともに、その適用対象については、評価通達の地区区分や都市計画法の区域区分等を基にすることにより明確化を図ったものであり、このような本件通達に定める評価方法は、適正な時価を算定する方法として相続税法第22条に定める「時価」の解釈に沿ったものであり、合理性を有するものと認められる。
また、本件通達は、上記のとおり、戸建住宅用地として分割分譲する場合に発生する減価を反映させること及び適用可否の判断の明確化を図ることを趣旨とするものであることから、その適用対象を「戸建住宅用地としての分割分譲が法的に可能であり、かつ、戸建住宅用地として利用されるのが標準的である地域に所在する宅地」の範囲をもって定めているものであり、「地積規模の大きな宅地」から、市街化調整区域(10号区域又は11号区域を除く。)に所在する宅地、
工業専用地域に指定されている地域に所在する宅地及び
指定容積率が400パーセント(東京都の特別区においては300パーセント)以上の地域に所在する宅地を除くこととしているのも、これらの宅地が法的規制やその標準的な利用方法等に照らして本件通達の趣旨にそぐわないことを理由とするものであって、合理性を有するものと認められる。
(2) 検討
- イ 本件各土地を「地積規模の大きな宅地」に準じて評価することの適否について
- (イ) 本件通達の適用対象となる市街化調整区域に所在する宅地について
本件通達において、市街化調整区域内に所在する宅地は、原則として「地積規模の大きな宅地」から除かれるとされているところ、これについては、市街化調整区域は、「市街化を抑制すべき区域」であり(都市計画法第7条第3項)、原則として宅地開発を行うことができない地域であることから(同法第29条《開発行為の許可》、同法第33条、同法第34条)、戸建住宅用地としての分割分譲に伴う減価が発生することが想定されていないため、「戸建住宅用地としての分割分譲が法的に可能であり、かつ、戸建住宅用地として利用されるのが標準的である地域に所在する宅地」を対象とする本件通達は、原則として適用できないとする趣旨のものである。
しかしながら、本件通達は、市街化調整区域に所在する宅地であっても、10号区域又は11号区域に所在する宅地に限って、「地積規模の大きな宅地」に含むとし、本件通達の適用対象としている。これについては、市街化調整区域であっても、都市計画法第34条第10号の規定により、地区計画の区域内又は集落地区計画の区域内においては、当該地区計画又は集落地区計画に適合する開発行為を行うことができ、また、同条第11号の規定により、条例指定区域内においても、同様に開発行為を行うことができることから、同条第10号又は同条第11号の規定に基づき宅地分譲に係る開発行為を行うことができる区域、すなわち、10号区域又は11号区域については、戸建住宅用地としての分割分譲が法的に可能である上に、次のAからCまでに示した事情に鑑みると、戸建住宅用地として利用されるのが標準的である地域といえるため、これらの区域に所在する宅地を、本件通達が適用対象とする「戸建住宅用地としての分割分譲が法的に可能であり、かつ、戸建住宅用地として利用されるのが標準的である地域に所在する宅地」の範囲に含むこととしたものと解するのが相当である。- A 都市計画法第34条第10号にいう地区計画の区域とは、同法第12条の5第1項第2号に規定される「住宅市街地の開発その他建築物若しくはその敷地の整備に関する事業が行われる区域」などであり、地区計画の具体例としては「市街化調整区域において周辺にある程度の公共施設等が整備されており、良好な居住環境を確保することが可能な地区で、ゆとりある緑豊かな郊外型住宅用地として整備を行う場合」などが挙げられている(都市計画運用指針W−2の1のUのG)。
- B 都市計画法第34条第10号にいう集落地区計画の区域とは、集落地域整備法第5条第1項の規定により、「営農条件と調和のとれた良好な居住環境の確保と適正な土地利用を図るため、当該集落地域の特性にふさわしい整備及び保全を行うことが必要と認められる」区域をいい、「集落地区計画の区域には、原則として、現に家屋が連たんする地区でまとまりのある一団の土地の区域等を含めるものである」ことを基本的な考え方とすることとされている(都市計画運用指針W−2の1のUのHの4)。
- C 都市計画法第34条第11号の規定は、「市街化区域に隣接し、又は近接し、かつ、自然的社会的諸条件から市街化区域と一体的な日常生活圏を構成している」ことなどの要件全てを満たす区域は、既に相当程度公共施設が整備されており、又は隣接、近接する市街化区域の公共施設の利用も可能であることから、開発行為が行われたとしても積極的な公共投資が必ずしも必要とされないとの考えで設けられたものである(開発許可制度運用指針のTの6の8)。
- (ロ) 評価通達5の適用の可否について
本件各土地は、倍率方式により評価する定期借地権の目的となっている宅地として、評価通達21−2本文、評価通達25及び評価通達27−2の各定めにより評価方法が定められているため、評価通達5にいう評価方法の定めのない財産に当たらない。 - (ハ) 小括
本件各土地は、上記1の(3)のロの(ロ)及び同ハの(ト)のとおり、市街化調整区域に所在する宅地であって、10号区域又は11号区域に所在しないことから、上記(イ)のとおり、本件通達の適用対象とはならない。
また、本件各土地は、上記(ロ)のとおり、評価通達5にいう評価方法の定めのない財産に当たらず、評価通達5の適用もない。
したがって、本件各土地を本件通達の適用対象となる「地積規模の大きな宅地」に準じて評価することはできない。
- (イ) 本件通達の適用対象となる市街化調整区域に所在する宅地について
- ロ 請求人らの主張について
- (イ) 請求人らは、上記3の「請求人ら」欄の(1)のイのとおり、本件各土地は12号区域に所在し、宅地分譲が可能であって、宅地分譲に伴う減価が発生するから、評価通達5又は評価通達6に基づき、本件各土地を本件通達の定める評価方法に準じて評価すべきである旨主張する。
しかしながら、上記イの(ロ)のとおり、本件各土地は評価通達5にいう評価方法の定めのない財産に当たらないから、評価通達5の適用はない。
また、12号区域に所在する宅地については、10号区域又は11号区域に所在する宅地と異なり、本件通達の適用対象となる「地積規模の大きな宅地」に含まれていないところ、都市計画法第34条第12号の規定は、同条第14号に相当する開発行為の中には、開発審査会の審査基準のうち定型的なものを条例で定めることにより、開発審査会の議を経ずとも許可することができるものがあるため、そのようなものについて手続の迅速化・合理化を図る趣旨のものである(開発許可制度運用指針のTの6の9)。そして、同号に相当する開発行為としては、分家に伴う住宅、収用対象事業の施行による移転等による建築物、社寺仏閣、研究施設(研究対象が市街化調整区域に存在すること等の理由によるもの)等の建築物の用に供するものが予定されているのであるから(開発許可制度運用指針のTの7の1)、同条第12号の規定に基づく開発行為の対象となる宅地は、仮に宅地分譲に係る開発行為が可能な区域に所在していたとしても、本件通達が適用対象とする「戸建住宅用地としての分割分譲が法的に可能であり、かつ、戸建住宅用地として利用されるのが標準的である地域に所在する宅地」の範囲に含むべきものではないとしたものと解するのが相当である。
したがって、本件通達上、10号区域又は11号区域に所在する宅地と、12号区域に所在する宅地とで異なる取扱いを定めていることは、合理的なものであって、請求人らが主張するように12号区域に所在する宅地が「宅地分譲が可能であって、宅地分譲に伴う減価が発生する」ものであるとしても、本件各土地が評価通達6にいう「評価通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産」というべき理由はないから、評価通達6の適用もない。 - (ロ) 請求人らは、上記3の「請求人ら」欄の(1)のロのとおり、本件通達の改正の趣旨を説明した文書(あらまし)においては、10号区域又は11号区域内の宅地について、戸建住宅用地として利用されるのが標準的である地域に所在する宅地であることが必要である旨の考え方は採られていないとの見解を前提に、「地積規模の大きな宅地」は戸建住宅用地として利用されるのが標準的である地域に所在する宅地である必要はない旨主張する。
しかしながら、10号区域又は11号区域に所在する宅地が本件通達の適用対象とされているのは、上記イの(イ)のとおり、「戸建住宅用地としての分割分譲が法的に可能であり、かつ、戸建住宅用地として利用されるのが標準的である地域に所在する宅地」の範囲に含まれるからであり、請求人らの主張はその前提とする見解に誤りがある。 - (ハ) 請求人らは、上記3の「請求人ら」欄の(2)のとおり、戸建住宅用地として利用されるのが標準的である地域かどうかは、それぞれの自治体の条例の内容に左右されるところ、戸建住宅用地としての分割分譲が認められ、分割分譲に伴う減価が生じるという実態が同じであるにもかかわらず、各自治体が都市計画法第34条のどの号に基づく区域指定を行うかにより、「地積規模の大きな宅地」として評価されるか否かが異なることになるのは不合理であり、課税の公平の見地からも看過することはできない旨主張する。
しかしながら、上記(イ)のとおり、本件通達が、10号区域又は11号区域に所在する宅地と、12号区域に所在する宅地との間に異なる取扱いを定めているのは合理性を有するものであるから、本件通達の評価方法が画一的に用いられることで、実質的な租税負担の公平を実現することができるというべきである。
なお、都市計画法第34条第10号は、地区計画及び集落地区計画の区域を、同条第11号及び同条第12号は、区域指定の基準となる事項を、それぞれ掲げており、各自治体の自由な裁量により区域指定を行えることとしているわけではない。 - (ニ) 請求人らは、上記3の「請求人ら」欄の(3)のとおり、本件各土地は、特定集落区域に所在しており、戸建住宅用地としての分割分譲が行われる蓋然性が高い旨主張する。
しかしながら、本件各土地が、都市計画法第34条第12号の規定に基づく宅地分譲に係る開発行為が可能とされている特定集落区域に所在する宅地に該当し、戸建住宅用地としての分割分譲が行われる蓋然性が高いとしても、同宅地が本件通達の適用対象とされておらず、そのことに合理性があることは、上記(イ)で示したとおりである。 - (ホ) 以上のとおり、請求人らの主張は、いずれも採用できない。
- (イ) 請求人らは、上記3の「請求人ら」欄の(1)のイのとおり、本件各土地は12号区域に所在し、宅地分譲が可能であって、宅地分譲に伴う減価が発生するから、評価通達5又は評価通達6に基づき、本件各土地を本件通達の定める評価方法に準じて評価すべきである旨主張する。
(3) 本件各通知処分の適法性
以上のとおり、本件各土地は、「地積規模の大きな宅地」に準じて評価することができる土地ではなく、これを前提に請求人らの課税価格及び納付すべき税額を計算すると、別表2の「申告」欄の本件申告における請求人らの課税価格及び納付すべき税額といずれも同額となる。
また、本件各通知処分のその他の部分については、請求人らは争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
したがって、本件各通知処分はいずれも適法である。
(4) 結論
よって、審査請求は理由がないから、これを棄却することとする。
別表1 本件各土地の明細(省略)
別表2 審査請求に至る経緯(省略)
別紙1 共同審査請求人(省略)
別紙3 本件各土地等の位置及び市条例で指定された区域(省略)