(令和6年12月10日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、取得した固定資産について工事請負契約書等に基づく支出金を取得価額として資産計上し、減価償却費等の額を損金の額に算入して法人税等の確定申告をしたところ、原処分庁が、当該固定資産の取得に係る支出金には請求人の関連法人に対する寄附金の額が含まれており、かつ、当該工事請負契約書等は仮装されたものであるとして、更正処分、重加算税等の賦課決定処分及び青色申告の承認の取消処分をしたのに対し、請求人が、当該固定資産の取得に係る支出金には対価性があるから、原処分庁が当該支出金の一部を寄附金として認定したのは事実誤認であるなどとして、原処分の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 関係法令

関係法令の要旨は、別紙4のとおりである。
 なお、別紙4で定義した略語については、以下、本文においても使用する。

(3) 基礎事実

当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。

イ 請求人及び関連法人について
(イ) 農業生産法人である請求人は、平成26年8月1日から平成27年7月31日までの事業年度(以下「平成27年7月期」といい、他の事業年度も同様に表記する。)及び平成28年7月期において、Jが代表取締役、Kらが取締役を務めていた。
 なお、平成27年7月期における請求人の商号はL社であり、その後、請求人は、平成28年11月○日に商号をM社に変更し、さらに、平成30年9月○日に現商号に変更した。
(ロ) N社は、請求人の平成27年7月期及び平成28年7月期に相当する期間において、Jが代表取締役、Kらが取締役を務めていた。
(ハ) P社は、請求人の平成27年7月期及び平成28年7月期に相当する期間において、Jが代表取締役ないし代表清算人を務めていた。
(二) Q社(以下、N社及びP社と併せて「本件関連法人」という。)は、請求人の平成27年7月期及び平成28年7月期に相当する期間において、R(平成27年5月○日退任)及びK(同日就任)が代表取締役を務めていた。
ロ 平成27年度の○○補助金の交付を受けて新築した管理棟及び倉庫等(以下「本件建物等」という。)の取得について
(イ) 本件建物等の新築工事及び関連工事(以下「本件建物等工事」という。)に係る支払等について
A 請求人は、T社(以下「本件建設会社」という。)との間で、請負代金を55,188,000円(税込金額)とする平成27年6月24日付の本件建物等工事に係る工事請負契約書(以下「本件契約書1」という。)を取り交わした。
B 請求人は、上記Aの請負代金につき、本件建設会社に対し、平成27年7月31日に27,594,000円及び同年8月31日に27,594,000円を支払った。
C 本件建設会社は、平成27年7月31日に、P社に対し○○○○円を支払い、かつ、Q社に対し○○○○円を、振込手数料相当額を差し引いて支払った。
(ロ) 本件建物等工事に伴う設計・監理その他各種申請業務(以下「本件設計等業務」という。)に係る支払等について
A 請求人は、Uの代表であるV(以下「本件建築士」という。)との間で、業務委託料を5,400,000円(税込金額)とする平成27年6月1日付の本件設計等業務に係る業務委託契約書(以下「本件契約書2」という。)を取り交わした。
B 請求人は、上記Aの業務委託料につき、平成27年8月31日に、本件建築士に対し5,400,000円を支払った。
C 本件建築士は、平成27年9月11日に、N社に対し○○○○円を支払った。
(ハ) 本件建物等の資産計上等について
 請求人は、平成28年7月期において、本件契約書1及び本件契約書2などに基づく支出金を本件建物等の取得価額として資産計上した上で、本件建物等に係る減価償却費、固定資産圧縮損及び特別償却準備金認容額並びに課税仕入れに係る支払対価の額を計上した。
ハ 平成27年度の○○補助金の交付を受けて新設したパイプビニールハウス(以下「本件構築物」といい、本件建物等と併せて「本件各固定資産」という。)の取得について
(イ) 本件構築物の新設工事(以下「本件構築物工事」といい、本件建物等工事及び本件設計等業務と併せて「本件各工事等」という。)に係る支払等について
A 請求人は、本件建設会社との間で、請負代金を17,226,000円(税込金額)とする平成28年1月27日付の本件構築物工事に係る工事請負契約書(以下「本件契約書3」という。)を取り交わした。
B 請求人は、上記Aの請負代金につき、本件建設会社に対し、平成28年2月8日に12,500,000円及び同年3月29日に4,726,000円を支払った。
C 本件建設会社は、平成28年2月9日に、P社に対し○○○○円を、振込手数料相当額を差し引いて支払った。
D 本件建設会社は、平成28年3月31日に、N社に対し○○○○円を支払った。
(ロ) 本件構築物の資産計上等について
 請求人は、平成28年7月期において、本件契約書3などに基づく支出金を本件構築物の取得価額として資産計上した上で、本件構築物に係る減価償却費及び固定資産圧縮損並びに課税仕入れに係る支払対価の額を計上した。

(4) 審査請求に至る経緯

イ 請求人は、平成28年7月期及び令和4年7月期の法人税並びに平成27年8月1日から平成28年7月31日までの課税事業年度(以下「平成28年7月課税事業年度」といい、他の課税事業年度も同様に表記する。)及び令和4年7月課税事業年度の地方法人税について、それぞれ青色の確定申告書に別表1及び別表2の各「確定申告」欄のとおり記載して、いずれも法定申告期限までに申告した。
 また、請求人は、平成27年8月1日から平成28年7月31日までの課税期間(以下「本件課税期間」という。)の消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)について、確定申告書に別表3の「確定申告」欄のとおり記載して、法定申告期限までに申告した。
ロ 原処分庁は、これに対し、原処分庁所属の調査担当職員(以下「本件調査担当職員」という。)の調査(以下「本件調査」という。)に基づき、令和5年9月27日付で、1別表1の「更正処分等」欄のとおりとする平成28年7月期の法人税の更正処分(以下「28年7月期更正処分」という。)及び重加算税の賦課決定処分(以下「28年7月期賦課決定処分」という。)並びに令和4年7月期の法人税の更正処分(以下「4年7月期更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「4年7月期賦課決定処分」という。)、2別表2の「更正処分」欄のとおりとする平成28年7月課税事業年度の地方法人税の更正処分(以下「28年7月課税事業年度更正処分」という。)及び令和4年7月課税事業年度の地方法人税の更正処分(以下「4年7月課税事業年度更正処分」という。)、3別表3の「更正処分等」欄のとおりとする本件課税期間の消費税等の更正処分(以下「本件消費税等更正処分」という。)及び重加算税の賦課決定処分(以下「本件消費税等賦課決定処分」という。)、4平成28年7月期以後の法人税の青色申告の承認の取消処分(以下「本件青色申告承認取消処分」という。)をした。
 なお、原処分庁は、原処分において、次の(イ)ないし(ハ)のとおり認定した。
(イ) 本件建物等工事に際し、上記(3)のロの(イ)のCの本件建設会社が支払った○○○○円及び○○○○円の合計○○○○円(以下「本件支払額1」という。)並びに同(ロ)のCの本件建築士が支払った○○○○円(以下「本件支払額2」という。)についてはいずれも対価性のない支払であることなどから、本件建物等の取得に係る支出金のうち本件支払額1に相当する金額(以下「本件支払額1に相当する金額」という。)及び本件支払額2に相当する金額(以下「本件支払額2に相当する金額」という。)の合計額は、法人税法第37条第7項に規定する寄附金の額に該当し、かつ、消費税法第30条第1項に規定する課税仕入れに係る支払対価の額に該当しない。
(ロ) 本件構築物工事に際し、上記(3)のハの(イ)のC及びDの本件建設会社が支払った○○○○円及び○○○○円の合計○○○○円(以下「本件支払額3」といい、本件支払額1及び本件支払額2と併せて「本件各支払額」という。)については対価性のない支払であることなどから、本件構築物の取得に係る支出金のうち本件支払額3に相当する金額(以下「本件支払額3に相当する金額」といい、本件支払額1に相当する金額及び本件支払額2に相当する金額と併せて「本件各支払額に相当する金額」という。)は、法人税法第37条第7項に規定する寄附金の額に該当し、かつ、消費税法第30条第1項に規定する課税仕入れに係る支払対価の額に該当しない。
(ハ) 本件各工事等に際し、請求人が作成した本件契約書1、本件契約書2及び本件契約書3は、請求人が事実を仮装して作成したものである。
ハ 請求人は、原処分を不服として令和5年12月25日に審査請求をした。

2 争点

(1) 本件調査の手続に原処分の取消事由となる違法又は不当があるか否か(争点1)。

(2) 本件各支払額に相当する金額は、法人税法第37条第7項に規定する寄附金の額に該当するか否か(争点2)。

(3) 本件各支払額に相当する金額は、消費税法第30条第1項に規定する課税仕入れに係る支払対価の額に該当しないか否か(争点3)。

(4) 請求人に通則法第68条第1項に規定する「仮装」に該当する事実があったか否か(争点4)。

(5) 請求人に法人税法第127条第1項第3号に規定する青色申告の承認の取消事由があったか否か(争点5)。

3 争点についての主張

(1) 争点1(本件調査の手続に原処分の取消事由となる違法又は不当があるか否か。)について

原処分庁 請求人
本件調査担当職員は、事前通知をした調査の対象となる期間(以下「当初調査対象期間」という。)の調査において、平成30年7月期の貸倒損失処理について疑義があることから、当初調査対象期間前である平成28年7月期についても質問検査等を行う旨通知した。
 その後、本件調査担当職員は、調査の過程において、本件各固定資産の取得価額についても非違が疑われたことから、この点に関する調査を行ったものである。
 こうした本件調査は、通則法所定の調査手続に反するものでも、国税庁長官発遣の「調査手続の実施に当たっての基本的な考え方等について(事務運営指針)」(平成24年9月12日付課総5−11ほか9課共同。以下「本件事務運営指針」という。)に反するものでもない。
 したがって、本件調査の手続に原処分の取消事由となる違法又は不当はない。
本件調査担当職員は、当初調査対象期間の調査において、平成30年7月期に計上された貸倒損失の発生原因を調べる目的に限って当初調査対象期間前である平成28年7月期について追加の質問検査等を行いたい旨説明しただけである。
 そうであるにもかかわらず、本件調査担当職員は、本件各工事等に係る調査通知もなく、一方的に調査を行ったものである。
 こうした本件調査は、通則法所定の調査手続に反するものであり、かつ、本件事務運営指針を無視したものであるといわざるを得ない。
 したがって、本件調査の手続に原処分の取消事由となる違法又は不当がある。

(2) 争点2(本件各支払額に相当する金額は、法人税法第37条第7項に規定する寄附金の額に該当するか否か。)について

原処分庁 請求人
以下のとおり、本件各支払額に相当する金額は、請求人が本件各工事等の請負代金等に含めることとしたものであり、請求人が本件建設会社及び本件建築士を介して本件関連法人に対し贈与したものと認められるから、法人税法第37条第7項に規定する寄附金の額に該当する。 以下のとおり、そもそも本件各支払額には対価性があることから、本件各支払額に相当する金額は、法人税法第37条第7項に規定する寄附金の額に該当しない。

イ 本件建物等工事について
1本件契約書1は、請求人が、請負代金につき、本件建設会社に依頼して、本件建設会社施工分に請求人施工分を上乗せした上で作成したものであること、2請求人は、本件建設会社に対し、P社及びQ社各名義の請求書を交付するとともに、各々の支払を指示したこと、3本件建設会社は、上記2の指示に従って、請求人から請負代金の一部を受領した平成27年7月31日に、P社及びQ社に対しそれぞれ請求書記載の金額を支払ったこと、4本件建設会社は、P社及びQ社から役務の提供を受けていないことなどの諸事情を総合勘案すると、本件支払額1に相当する金額は、請求人が本件建設会社を介してP社及びQ社に対し贈与したものと認められる。

イ 本件建物等工事について
 本件支払額1は、請求人の平成27年7月期及び平成28年7月期に相当する期間内において実施された○○の一環として、P社及びQ社が本件建設会社から委託を受けた土地整備工事の対価である。そのため、本件支払額1には、○○の対象であった平成27年7月期の土地整備工事の対価が含まれる。
 なお、本件建設会社は、本件契約書1の請負代金について、これと同額の見積書を請求人に交付しているし、当該見積書には詳細な明細が添付されている。
 したがって、本件支払額1には対価性がある。

ロ 本件設計等業務について
1本件契約書2は、請求人が業務委託料を決定した上で作成したものであること、2請求人は、本件建築士に対し、本件設計等業務に係る業務委託料を通知するとともに、本件支払額2の支払を指示したこと、3本件建築士は、上記2の指示に従って、N社に対し本件支払額2を支払ったこと、4本件建築士は、N社から役務の提供を受けていないことなどの諸事情を総合勘案すると、本件支払額2に相当する金額は、請求人が本件建築士を介してN社に対し贈与したものと認められる。

ロ 本件設計等業務について
 請求人は、本件建築士に対し本件設計等業務を発注したものの、実際のところ、N社において設計業務を行っていたことから、N社は、当該設計業務の対価として、本件建築士に対し本件支払額2を請求したものである。
 したがって、本件支払額2には対価性がある。

ハ 本件構築物工事について
 上記イと同様、本件契約書3記載の請負代金は、請求人が本件建設会社に依頼して本件建設会社施工分に請求人施工分を上乗せした金額であり、また、本件建設会社は、請求人の指示に従って、N社及びP社に対し本件支払額3を支払ったものの、いずれからも役務の提供を受けていないことなどの諸事情を総合勘案すると、本件支払額3に相当する金額は、請求人が本件建設会社を介してN社及びP社に対し贈与したものと認められる。

ハ 本件構築物工事について
 請求人が提出したN社及びP社の帳簿書類等のとおり、本件支払額3については、その支払に対する反対給付が確認できる。
 具体的には、N社は、本件建設会社からの委託を受け、本件構築物の組立作業等の役務の提供を行っているし、また、P社は、本件建設会社に対し、本件構築物工事に係る資材を売却している。
 したがって、本件支払額3には対価性がある。

(3) 争点3(本件各支払額に相当する金額は、消費税法第30条第1項に規定する課税仕入れに係る支払対価の額に該当しないか否か。)について

原処分庁 請求人
上記(2)の「原処分庁」欄のとおり、本件各支払額に相当する金額は、請求人が本件建設会社及び本件建築士を介して本件関連法人に対し贈与したものと認められるから、消費税法第30条第1項に規定する課税仕入れに係る支払対価の額に該当しない。 上記(2)の「請求人」欄のとおり、そもそも本件各支払額には対価性があることから、本件各支払額に相当する金額は、消費税法第30条第1項に規定する課税仕入れに係る支払対価の額に該当する。

(4) 争点4(請求人に通則法第68条第1項に規定する「仮装」に該当する事実があったか否か。)について

原処分庁 請求人
上記(2)の「原処分庁」欄のとおり、請求人は、本件建設会社及び本件建築士を介して本件関連法人に対し贈与した金額を本件各工事等の請負代金等に含めて工事請負契約書等を作成し、これらに基づき本件各固定資産を資産計上し、減価償却費等及び課税仕入れに係る支払対価の額の計算を行ったのであるから、請求人に通則法第68条第1項に規定する「仮装」に該当する事実があった。 上記(2)の「請求人」欄のとおり、そもそも本件各支払額には対価性があるし、本件各工事等に係る工事請負契約書等は、請求人が事実を仮装して作成したものではないから、請求人に通則法第68条第1項に規定する「仮装」に該当する事実はない。

(5) 争点5(請求人に法人税法第127条第1項第3号に規定する青色申告の承認の取消事由があったか否か。)について

原処分庁 請求人
上記(4)の「原処分庁」欄のとおり、請求人に通則法第68条第1項に規定する「仮装」に該当する事実があったことから、平成28年7月期において、請求人に法人税法第127条第1項第3号に規定する青色申告の承認の取消事由があった。 上記(4)の「請求人」欄のとおり、請求人に通則法第68条第1項に規定する「仮装」に該当する事実はないのであるから、平成28年7月期において、請求人に法人税法第127条第1項第3号に規定する青色申告の承認の取消事由はない。

4 当審判所の判断

(1) 争点1(本件調査の手続に原処分の取消事由となる違法又は不当があるか否か。)について

イ 認定事実
 原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
(イ) 本件調査担当職員は、当初調査対象期間である平成30年7月期の貸倒損失処理につき、損金計上時期に非違が疑われたため、請求人の代理人であるX税理士に対し、当初調査対象期間前である平成28年7月期及び平成29年7月期を調査対象期間として追加する旨説明した上で、調査を行った。
(ロ) 本件調査担当職員は、平成28年7月期の調査の過程において、本件各固定資産の取得価額についても非違が疑われたため、本件各工事等についての調査を行った。
ロ 検討
(イ) 通則法第74条の9第4項の規定によれば、調査において、事前通知に係る調査の目的、税目、期間、帳簿書類その他の物件以外の事項について非違が疑われることとなった場合に、税務署の当該職員が、当該事項に関して質問検査等を行うことは許容されており、また、その場合において、当該事項を調査の対象とすることについて改めて事前通知を行うことは不要であるとされている。
(ロ) この点、上記イの(イ)のとおり、本件調査担当職員は、当初調査対象期間である平成30年7月期の貸倒損失処理につき、損金計上時期に非違が疑われたため、請求人の代理人であるX税理士に対し、当初調査対象期間前である平成28年7月期及び平成29年7月期を調査対象期間として追加する旨説明した上で、調査を行ったのであるから、上記(イ)に照らすと、当該調査を行ったことに違法は認められない。
(ハ) また、上記イの(ロ)のとおり、本件調査担当職員は、平成28年7月期の調査の過程において、本件各固定資産の取得価額についても非違が疑われたため、本件各工事等についての調査を行ったのであるから、上記(イ)に照らすと、当該調査を行ったことに違法は認められない。
(二) 以上のほか、本件全証拠上、本件調査の手続に違法又は不当と評されるような瑕疵は見当たらない。
 したがって、本件調査の手続に原処分の取消事由となる違法又は不当はない。
ハ 請求人の主張について
 請求人は、上記3の(1)の「請求人」欄のとおり、本件調査担当職員は、本件調査において、本件各工事等に係る調査通知もなく、一方的に調査を行ったものであり、そうすると、こうした本件調査は、通則法所定の調査手続に反するものであり、かつ、本件事務運営指針を無視したものであるといわざるを得ないから、本件調査に原処分の取消事由となる違法又は不当がある旨主張する。
 しかしながら、本件調査の手続に違法又は不当はないことは、上記ロの(二)のとおりであることから、上記の請求人の主張には理由がない。

(2) 争点2(本件各支払額に相当する金額は、法人税法第37条第7項に規定する寄附金の額に該当するか否か。)について

イ 法令解釈
 法人税法第37条第7項に規定する「寄附金」とは、民法上の贈与に限らず、経済的にみて贈与と同視し得る金銭その他の資産の譲渡又は経済的利益の供与をいうものと解すべきであり、ここでいう経済的にみて贈与と同視し得る金銭その他の資産の譲渡又は経済的利益の供与とは、金銭その他の資産又は経済的利益を対価なく他に移転する場合であって、その行為について通常の経済取引として是認することができる合理的理由が存在しないものを指すと解するのが相当である。
ロ 認定事実
 請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
(イ) 本件建物等工事について
A 本件建設会社は、本件建物等工事について、平成27年6月10日付で、実行予算の金額を13,635,977円とする明細書を作成した。
B 請求人は、平成27年7月29日に、本件建設会社に対し、同月31日の振込み(上記1の(3)のロの(イ)のCの支払)につき、P社名義の口座へ○○○○円及びQ社名義の口座へ○○○○円を振り込む旨、ただし、それぞれの振込手数料の合計額をQ社への振込額から差し引く旨をメールで依頼した。
(ロ) 本件構築物工事について
A 本件契約書3には、工期を平成28年1月28日から同年3月29日までとする旨記載されている。
B P社は、固定資産として保有していた農業用資材について、平成28年1月27日付で本件建設会社に対し○○○○円で売却した旨の経理処理をした
C N社は、本件構築物工事に関連し、平成28年2月15日から同月16日にかけて、外注により農業用資材の運搬をした。
D N社は、本件構築物工事に関連し、平成28年3月18日から同月26日までを工期とする組立作業等につき、作業者の確保及び段取りを記載した作業表を作成した。
E N社は、平成28年4月12日に上記Dの作業表に記載のある作業者に対し報酬を支払った。
ハ 関係者の申述及びその信用性
(イ) 本件建設会社の代表取締役であるYの申述について
A Yは、令和5年8月7日に、本件調査担当職員に対し、要旨次のとおり申述した。

(A) 本件建設会社は、請求人から、請求人が自社で施工した工事を本件建物等工事に含めて欲しい旨依頼され、これを了承した上で、本件契約書1の内容について合意した。本件契約書1は、請求人が作成したものであり、請負代金55,188,000円は、本件建設会社施工分に請求人施工分を加えた金額である。

(B) 本件支払額1は、請求人の指示に従い、指定された金額を指定された口座へ支払ったものである。

(C) 本件建設会社は、本件建物等工事について施工管理のみを行っており、実際の工事の施工は外注していたが、請求人に対し工事を委託したことは一切なく、また、本件支払額1の支払先であるP社及びQ社の担当者と会ったり連絡を取ったりしたこともない。

B 上記Aの申述は、申述内容それ自体としても具体的であって不自然な点は見当たらないほか、上記ロの(イ)のBの支払先や支払額等に関するメールの内容と符合していることに加え、上記1の(3)のロの(イ)のB及びCのとおり、本件建設会社が請求人から請負代金の一部を受領した日にP社及びQ社に対し本件支払額1を支払っている点で客観的事実とも符合していることから、信用することができる。
(ロ) 本件建築士の申述について
A 本件建築士は、令和5年8月21日に、本件調査担当職員に対し、要旨次のとおり申述した。

(A) 本件設計等業務については、本件建築士は見積書を提示しておらず、取引金額は請求人が決定し、契約書は請求人が作成したものであるし、振り込まれた金額の一部を相手方から指定された口座に身に覚えのないコンサルタント料として振り込むよう指示されるなど、通常の取引とは異なる点が多かった。

(B) 本件支払額2は、請求人から本件設計等業務に係る業務委託料5,400,000円を受領した後に、コンサルタント料として指定された口座へ支払うよう請求人から指示を受けて支払ったものである。

(C) 本件建築士は、本件設計等業務について請求人やN社からコンサルタント業務を受けたことはなく、上記(B)のコンサルタント料に係る請求書も受け取っていない。

B 上記Aの申述は、申述内容それ自体としても具体的であって不自然な点は見当たらないほか、上記1の(3)のロの(ロ)のB及びCのとおり、本件建築士が請求人から業務委託料を受領した日後にN社に対し本件支払額2を支払っている点で客観的事実とも符号していることから、信用することができる。
ニ 当てはめ
(イ) 本件建物等工事について
A 本件支払額1について
 上記ロの(イ)のB及び上記ハの(イ)のAの(B)によれば、本件建設会社は、請求人の指示に従って、本件支払額1をP社及びQ社に支払ったものと認められる。
 また、上記ハの(イ)のAの(C)によれば、本件建設会社は、P社及びQ社から何ら役務の提供を受けていないことがうかがえるし、当審判所の調査及び審理の結果によっても、本件支払額1についてその支払に対する反対給付は認められない。
B 本件支払額1に相当する金額について
 上記ロの(イ)のA及び上記ハの(イ)のAの(A)によれば、本件契約書1記載の請負代金55,188,000円は、本件建設会社の実行予算13,635,977円を大幅に超える金額である上、請求人が本件建設会社に対し請求人施工分を含めるよう依頼した金額であることから、本件契約書1は、請求人が作成したものであると認められる。
 そうすると、請求人は、請負代金に本件支払額1に相当する金額を含めて本件契約書1を作成するとともに、本件建設会社に対し、本件支払額1をP社及びQ社に支払うよう指示していたと認めるのが相当である。
C 小括
 以上のとおり、1本件支払額1については、本件建設会社がP社及びQ社から何ら役務の提供(反対給付)を受けていないにもかかわらず、請求人の指示に従って支払われたものであること、2請求人は、請負代金に本件支払額1に相当する金額を含めて本件契約書1を作成するとともに、本件建設会社に対し、本件支払額1をP社及びQ社に支払うよう指示していたことを併せ考慮すれば、本件支払額1に相当する金額は、請求人が本件建設会社を介して、P社及びQ社に対し金銭を対価なく移転するもの(資金の贈与)であると認められ、当審判所の調査及び審理の結果によっても、請求人が当該資金の贈与を行うことに通常の経済取引として是認することができる合理的理由は認められない。
 したがって、本件支払額1に相当する金額は、法人税法第37条第7項に規定する寄附金の額に該当するものと認めるのが相当である。
(ロ) 本件設計等業務について
A 本件支払額2について
 上記ハの(ロ)のAの(B)によれば、本件建築士は、請求人の指示に従って、本件支払額2をN社に支払ったものと認められる。
 また、上記ハの(ロ)のAの(C)によれば、本件建築士は、N社から何ら役務の提供を受けていないことがうかがえるし、当審判所の調査及び審理の結果によっても、本件支払額2についてその支払に対する反対給付は認められない。
B 本件支払額2に相当する金額について
 上記1の(3)のロの(ロ)のA及び上記ハの(ロ)のAの(A)によれば、本件契約書2記載の業務委託料5,400,000円については、本件建築士は見積書を提示しておらず、請求人が決定した金額であり、本件契約書2は、請求人が作成したものであると認められる。
 そうすると、請求人は、業務委託料に本件支払額2に相当する金額を含めて本件契約書2を作成するとともに、本件建築士に対し、本件支払額2をN社に支払うよう指示していたと認めるのが相当である。
C 小括
 以上のとおり、1本件支払額2については、本件建築士がN社から何ら役務の提供(反対給付)を受けていないにもかかわらず、請求人の指示に従って支払われたものであること、2請求人は、業務委託料に本件支払額2に相当する金額を含めて本件契約書2を作成するとともに、本件建築士に対し、本件支払額2をN社に支払うよう指示していたことを併せ考慮すれば、本件支払額2に相当する金額は、請求人が本件建築士を介して、N社に対し金銭を対価なく移転するもの(資金の贈与)であると認められ、当審判所の調査及び審理の結果によっても、請求人が当該資金の贈与を行うことに通常の経済取引として是認することができる合理的理由は認められない。
 したがって、本件支払額2に相当する金額は、法人税法第37条第7項に規定する寄附金の額に該当するものと認めるのが相当である。
(ハ) 本件構築物工事について
A 本件支払額3について
 上記ロの(ロ)のA、D及びEによれば、N社は、本件構築物工事の工期内に、本件構築物工事に係る組立作業等につき、作業者を確保してこれに従事させ、当該作業者に対し報酬を支払ったものと認められる。
 また、上記ロの(ロ)のBによれば、P社は、本件契約書3記載の日付(平成28年1月27日付)で、本件建設会社に対し、本件構築物工事に係る農業用資材を売却したものと認められ、このことは、同Cのとおり、N社が、同年2月15日から同月16日にかけて、外注により本件構築物工事に係る農業用資材の運搬をしたことからも裏付けられる。
B 本件支払額3に相当する金額について
 上記Aによれば、本件支払額3については、本件建設会社がN社及びP社に対し本件構築物工事に係る組立作業等及び農業用資材の購入の対価として支払をしたものと認められることから、本件支払額3に相当する金額は、請求人が本件建設会社を介して、N社及びP社に対し金銭を対価なく移転するもの(資金の贈与)であると認めることはできない。
C 小括
 したがって、本件支払額3に相当する金額は、法人税法第37条第7項に規定する寄附金の額に該当しないものと認めるのが相当である。
ホ 請求人の主張について
(イ) 請求人は、上記3の(2)の「請求人」欄のイのとおり、本件支払額1は、P社及びQ社が本件建設会社から委託を受けた○○に係る土地整備工事の対価であり、平成27年7月期の当該土地整備工事の対価が含まれる旨主張する。
 しかしながら、本件支払額1については、本件建設会社がP社及びQ社から何ら役務の提供(反対給付)を受けていないにもかかわらず、請求人の指示に従って支払われたものであることは、上記ニの(イ)のCのとおりである。また、本件支払額1が平成27年7月期の土地整備工事の対価であることを認めるに足りる客観的な証拠もない。
(ロ) 請求人は、上記3の(2)の「請求人」欄のロのとおり、本件支払額2は、N社において行った設計業務の対価を本件建築士に対して請求したものである旨主張する。
 しかしながら、本件支払額2については、本件建築士がN社から何ら役務の提供(反対給付)を受けていないにもかかわらず、請求人の指示に従って支払われたものであることは、上記ニの(ロ)のCのとおりである。また、本件支払額2がN社において行った設計業務の対価を本件建築士に対して請求したものであることを認めるに足りる客観的な証拠もない。
(ハ) したがって、上記(イ)及び(ロ)の請求人の主張にはいずれも理由がない。
ヘ 原処分庁の主張について
 原処分庁は、上記3の(2)の「原処分庁」欄のハのとおり、本件支払額3に相当する金額は、請求人が本件建設会社を介してN社及びP社に対し贈与したものと認められる旨主張する。
 しかしながら、上記ニの(ハ)のA及びBのとおり、本件支払額3については、本件建設会社がN社及びP社に対し本件構築物工事に係る組立作業等及び農業用資材の購入の対価として支払をしたものと認められることから、本件支払額3に相当する金額は、請求人が本件建設会社を介して、N社及びP社に対し金銭を対価なく移転するもの(資金の贈与)であると認めることはできない。
 したがって、上記の原処分庁の主張には理由がない。

(3) 争点3(本件各支払額に相当する金額は、消費税法第30条第1項に規定する課税仕入れに係る支払対価の額に該当しないか否か。)について

イ 検討
(イ) 本件支払額1に相当する金額及び本件支払額2に相当する金額について
 上記(2)のニの(イ)のC及び同(ロ)のCのとおり、本件支払額1に相当する金額及び本件支払額2に相当する金額は、請求人が本件建設会社及び本件建築士を介して、本件関連法人に対し金銭を対価なく移転するもの(資金の贈与)であると認められるのであって、請求人が本件建設会社及び本件建築士から資産を譲り受け、若しくは借り受け、又は役務の提供を受けたことの対価として支出されたものではないことは明らかであるから、いずれも消費税法第30条第1項に規定する課税仕入れに係る支払対価の額に該当しない。
(ロ) 本件支払額3に相当する金額について
 上記(2)のニの(ハ)のA及びBのとおり、本件支払額3については、本件建設会社がN社及びP社に対し本件構築物工事に係る組立作業等及び農業用資材の購入の対価として支払をしたものと認められることから、本件支払額3に相当する金額は、請求人が本件建設会社を介して、N社及びP社に対し金銭を対価なく移転するもの(資金の贈与)であると認めることはできず、ほかに本件支払額3に相当する金額に対価性がないと認めるに足りる証拠もない。
 そうすると、本件支払額3に相当する金額を含む本件構築物の取得に係る支出金は、消費税法第30条第1項に規定する課税仕入れに係る支払対価の額に該当すると認めるのが相当である。
ロ 請求人の主張について
 請求人は、上記3の(3)の「請求人」欄のとおり、そもそも本件各支払額には対価性がある旨主張する。
 しかしながら、本件支払額1に相当する金額及び本件支払額2に相当する金額が本件関連法人に対する資金の贈与であると認められることは、上記(2)のニの(イ)のC及び同(ロ)のCのとおりであることから、請求人の主張には理由がない。
ハ 原処分庁の主張について
 原処分庁は、上記3の(3)の「原処分庁」欄のとおり、本件各支払額に相当する金額は、請求人が本件建設会社及び本件建築士を介して本件関連法人に対し贈与したものと認められる旨主張する。
 しかしながら、本件支払額3に相当する金額は、N社及びP社に対する資金の贈与であると認めることはできないことは、上記(2)のニの(ハ)のBのとおりであることから、原処分庁の主張には理由がない。

(4) 争点4(請求人に通則法第68条第1項に規定する「仮装」に該当する事実があったか否か。)について

イ 法令解釈
 通則法第68条第1項に規定する重加算税を賦課するためには、納税者が課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたことがその要件とされるところ、ここでいう「事実を仮装し」とは、所得、財産あるいは取引上の名義等に関し、あたかもそれが真実であるかのように装う等、故意に事実をわい曲することをいうと解される。
ロ 当てはめ
 これを本件についてみると、請求人は、本件建物等工事につき、上記(2)のニの(イ)のBのとおり、本件契約書1の請負代金にP社及びQ社に対する資金の贈与の額(本件支払額1に相当する金額)を含めて本件契約書1を作成したこと、また、本件設計等業務につき、同(ロ)のBのとおり、本件契約書2の業務委託料にN社に対する資金の贈与の額(本件支払額2に相当する金額)を含めて本件契約書2を作成したことが認められる。その上で、請求人は、本件契約書1及び本件契約書2などに基づく支出金を本件建物等の取得価額として資産計上し、本件建物等に係る減価償却費、固定資産圧縮損及び特別償却準備金認容額並びに課税仕入れに係る支払対価の額を計算したものと認められる。
 したがって、1本件支払額1に相当する金額は、P社及びQ社に対する資金の贈与であるにもかかわらず、請求人は、本件支払額1に相当する金額を本件建物等工事に係る請負代金に含めて本件契約書1を作成することにより、本件支払額1に相当する金額が本件建物等工事に係る請負代金であるかのように装い、故意に事実をわい曲したものと認められ、また、2本件支払額2に相当する金額は、N社に対する資金の贈与であるにもかかわらず、請求人は、本件支払額2に相当する金額を本件設計等業務に係る業務委託料に含めて本件契約書2を作成することにより、本件支払額2に相当する金額が本件設計等業務に係る業務委託料であるかのように装い、故意に事実をわい曲したものと認められることから、請求人に通則法第68条第1項に規定する「仮装」に該当する事実があったものと認められる。
ハ 請求人の主張について
 請求人は、上記3の(4)の「請求人」欄のとおり、本件各工事等に係る工事請負契約書等は、請求人が事実を仮装して作成したものではない旨主張する。
 しかしながら、上記ロのとおり、請求人は、本件関連法人に対する資金の贈与である本件支払額1に相当する金額及び本件支払額2に相当する金額を、本件建物等工事に係る請負代金及び本件設計等業務に係る業務委託料に含めて本件契約書1及び本件契約書2を作成することにより、本件支払額1に相当する金額及び本件支払額2に相当する金額が、本件建物等工事に係る請負代金及び本件設計等業務に係る業務委託料であるかのように装い、故意に事実をわい曲したものと認められることから、請求人の主張には理由がない。

(5) 争点5(請求人に法人税法第127条第1項第3号に規定する青色申告の承認の取消事由があったか否か。)について

イ 法令解釈
 法人税法第127条第1項第3号の前段でいう取引の全部又は一部を「隠蔽し又は仮装し」というのは、青色申告制度の前提となる信頼関係を毀損する行為として、積極的に帳簿を操作し、欺罔しようとするものであり、ここでいう取引とは、いわゆる簿記上の取引をいうものであり、例えば、前提となる取引事実を隠蔽、仮装したりした上、これに基づいて帳簿記録をする場合はこれに該当する。また、同号に規定する「隠蔽し又は仮装し」の意義は、通則法第68条第1項に規定する「隠蔽し又は仮装し」と同義であると解される。
ロ 当てはめ
 これを本件についてみると、平成28年7月期において、上記(4)のロのとおり、請求人に通則法第68条第1項に規定する「仮装」に該当する事実があったものと認められることから、請求人に法人税法第127条第1項第3号に規定する青色申告の承認の取消事由があったと認められる。
ハ 請求人の主張について
 請求人は、上記3の(5)の「請求人」欄のとおり、請求人に通則法第68条第1項に規定する「仮装」に該当する事実はない旨主張する。
 しかしながら、請求人に通則法第68条第1項に規定する「仮装」に該当する事実があったと認められることは、上記(4)のロのとおりであることから、請求人の主張には理由がない。

(6) 原処分の適法性について

イ 本件青色申告承認取消処分について
 上記(5)のとおり、平成28年7月期において、請求人に法人税法第127条第1項第3号に規定する青色申告の承認の取消事由があったと認められる。
 なお、本件青色申告承認取消処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
 したがって、本件青色申告承認取消処分は適法である。
ロ 28年7月期更正処分について
 上記(2)のニの(イ)のC及び同(ロ)のCのとおり、本件支払額1に相当する金額及び本件支払額2に相当する金額は、法人税法第37条第7項に規定する寄附金の額に該当するから、本件建物等の取得価額に算入されない。これを前提に、当審判所において本件建物等の取得価額、減価償却費及び固定資産圧縮損を計算すると、原処分の額と同額であると認められるほか、本件建物等については、原処分と同様、租税特別措置法第52条の3《準備金方式による特別償却》第1項(平成28年法律第15号による改正前のもの)の規定は適用されない。
 ところで、本件支払額1に相当する金額については、原処分では平成28年7月期において支出した寄附金の額とされているが、上記1の(3)のロの(イ)のCのとおり、平成27年7月31日に支払われていることから、平成27年7月期において支出した寄附金の額となる。そうすると、平成28年7月期において支出した寄附金の額の合計額は、別表4の「審判所認定額2」欄のとおり○○○○円となり、これに基づき寄附金の損金不算入額を計算すると、別表5の「審判所認定額」欄のとおり○○○○円となる。
 一方、上記(2)のニの(ハ)のCのとおり、本件支払額3に相当する額は、法人税法第37条第7項に規定する寄附金の額に該当しない。そうすると、本件構築物の取得に係る支出金は、その全部が本件構築物の取得代価であると認められるから、これを前提に、当審判所において平成28年7月期の本件構築物の取得価額、減価償却費及び固定資産圧縮損を計算すると、別表6の「審判所認定額」欄のとおりとなる。
 さらに、上記(4)のロのとおり、請求人には、通則法第68条第1項に規定する「仮装」に該当する事実があったと認められることから、同時に、通則法第70条《国税の更正、決定等の期間制限》第5項第1号に規定する「偽りその他不正の行為」に該当する事実があったというべきであり、そうすると、これによりその一部の税額を免れた国税についての更正は、同項柱書の規定により法定申告期限から7年を経過する日まですることができる。
 以上を前提に、当審判所において平成28年7月期の所得金額及び納付すべき税額を計算すると、別表7の「審判所認定額」欄のとおりとなり、いずれも原処分の額を下回る。
 なお、28年7月期更正処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
 したがって、28年7月期更正処分は、その一部を別紙1「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。
ハ 4年7月期更正処分について
 上記イのとおり、本件青色申告承認取消処分は適法であるから、これにより、令和4年7月期の所得金額の計算上、法人税法第57条《青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越し》第1項(令和2年法律第8号による改正前のもの)の規定は適用されない。
 これを前提に、当審判所において令和4年7月期の所得金額、納付すべき税額及び翌期へ繰り越す欠損金額を計算すると、いずれも原処分の額と同額であると認められる。
 なお、4年7月期更正処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
 したがって、4年7月期更正処分は適法である。
ニ 28年7月課税事業年度更正処分及び4年7月課税事業年度更正処分について
 上記ロを前提に、当審判所において平成28年7月課税事業年度の課税標準法人税額及び納付すべき税額を計算すると、別表8の「審判所認定額」欄のとおりとなり、いずれも原処分の額を下回る。
 また、上記ハを前提に、当審判所において令和4年7月課税事業年度の課税標準法人税額及び納付すべき税額を計算すると、いずれも原処分の額と同額であると認められる。
 なお、28年7月課税事業年度更正処分及び4年7月課税事業年度更正処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
 したがって、4年7月課税事業年度更正処分は適法であるが、28年7月課税事業年度更正処分は、その一部を別紙2「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。
ホ 本件消費税等更正処分について
 上記(3)のイの(イ)のとおり、本件支払額1に相当する金額及び本件支払額2に相当する金額は、いずれも消費税法第30条第1項に規定する課税仕入れに係る支払対価の額に該当せず、一方、同(ロ)のとおり、本件支払額3に相当する金額は、同項に規定する課税仕入れに係る支払対価の額に該当する。
 これを前提に、当審判所において本件課税期間の納付すべき消費税額及び納付すべき地方消費税額を計算すると、別表9の「審判所認定額」欄のとおりとなり、いずれも原処分の額を下回る。
 なお、本件消費税等更正処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
 したがって、本件消費税等更正処分は、その一部を別紙3「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。
ヘ 28年7月期賦課決定処分及び本件消費税等賦課決定処分について
 上記ロ及びホのとおり、28年7月期更正処分及び本件消費税等更正処分は、いずれもそれらの一部が違法であり、その他の部分が適法である。そして、28年7月期更正処分及び本件消費税等更正処分のうち適法である部分について、上記(4)のロのとおり、請求人には通則法第68条第1項に規定する「仮装」に該当する事実があったと認められるから、請求人は、課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実を隠蔽又は仮装し、その隠蔽又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたというべきであり、このことは、同項の重加算税の賦課要件を満たすというべきである。
 そうすると、28年7月期賦課決定処分及び本件消費税等賦課決定処分は、28年7月期更正処分及び本件消費税等更正処分のうち違法である部分に起因する部分が違法であり、その他の部分が適法である。
 以上を前提に、当審判所において平成28年7月期の法人税及び本件課税期間の消費税等に係る重加算税の額を計算すると、別紙1「取消額等計算書」及び別紙3「取消額等計算書」の各「加算税の額の計算」の項目の「加算税の額」欄の「重加算税」欄の「裁決後の額」欄のとおりとなり、いずれも原処分の額を下回る。
 したがって、28年7月期賦課決定処分及び本件消費税等賦課決定処分は、いずれもそれらの一部を別紙1「取消額等計算書」及び別紙3「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。
ト 4年7月期賦課決定処分について
 上記ハのとおり、4年7月期更正処分は適法であり、また、4年7月期更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が4年7月期更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項の規定に基づいてされた4年7月期賦課決定処分は適法である。

(7) 結論

よって、審査請求には理由があるから、原処分の一部を取り消すこととする。

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