(令和7年6月5日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、原処分庁が、審査請求人(以下「請求人」という。)に係る外国関係会社は、その主たる事業が保険業であり、いわゆる非関連者基準を満たさないことから、請求人に係る対象外国関係会社に該当し、外国子会社合算税制の適用があるなどとして法人税等の更正処分等を行ったのに対し、請求人が、原処分庁が前提とした法律関係を変更する旨、関係当事者が合意したことなどから、当該外国関係会社は非関連者基準を満たし、請求人に係る対象外国関係会社に該当しないため、外国子会社合算税制の適用はないなどとして、原処分の一部の取消しを求めた事案である。

(2) 関係法令

関係法令は別紙1のとおりである。
 なお、別紙1で定義した略語については、以下、本文及び別表においても使用する。

(3) 基礎事実

当審判所の調査及び審理の結果によれば、次の事実が認められる。

イ 請求人及びその子会社等について
(イ) 請求人について
 請求人は、昭和21年5月○日に設立された製材機械器具及び木工機械器具の製造及び売買等を目的とする内国法人であり、昭和28年10月1日から昭和29年9月30日までの事業年度以後の事業年度の法人税について、青色申告の承認を受けていた。また、令和2年11月18日以降、Gが請求人の代表取締役を務めている。
(ロ) J社について
 J社は、令和元年8月○日に設立されたアメリカ合衆国(以下「米国」という。)d州に所在する外国法人である。
(ハ) K社について
A K社は、d州改正法第○○章第○○条に定義される認可されたスポンサードキャプティブ保険会社の保護セル(スポンサードキャプティブ保険会社が、各参加者の資産、負債、損益及びリスク等を参加者ごとに個別に管理するために設定する口座をいう。以下同じ。)の参加者になることを目的として、平成30年8月○日に設立された外国法人である。
B K社は、スポンサードキャプティブ保険会社であるM社との間で、平成30年8月○日を効力発生日とするPARTICIPATION AGREEMENT(以下「本件参加合意書」という。)を締結し、M社が設定した保護セルの参加者として、米国d州で保険業を営んでいる。
 本件参加合意書には、請求人とN社との間の元受保険契約に関して、再保険者(元受保険会社からの再保険会社であるP社及びP社からの再保険会社であるQ社)によって、再保険リスク(再保険者によって、M社を経由してK社に譲渡される保険責任をいう。以下同じ。)がK社に譲渡されることをM社とK社が理解するものとすることや、譲渡される再保険リスクがM社とK社の合意により随時修正される可能性があることが定められている。
(ニ) K社が請求人に係る外国関係会社に該当すること等について
A K社の平成30年8月○日から同年12月31日までの事業年度(以下「K社平成30年12月期」といい、K社の他の事業年度についても同様に表記する。)の末日において、請求人は、K社の発行済株式の100パーセントを保有していた。
B J社の設立時、請求人は、その保有するK社の全株式をJ社に現物出資し、J社の発行済株式の100パーセントを取得した。
C K社令和元年12月期及びK社令和2年12月期(以下、これらの事業年度とK社平成30年12月期とを併せて「本件各K社事業年度」という。)の末日において、J社がK社の発行済株式の100パーセントを、請求人がJ社の発行済株式の100パーセントを、それぞれ保有していた。
D 上記AないしCによれば、本件各K社事業年度において、K社は、請求人に係る措置法第66条の6第2項第1号に規定する外国関係会社に該当し、請求人はK社の措置法施行令第39条の14の3第28項第1号に規定する関連者(以下、単に「関連者」といい、関連者以外の者を「非関連者」という。)に該当する。
E 本件各K社事業年度において、K社は請求人に係る措置法第66条の6第2項第2号に規定する特定外国関係会社に該当しない。
ロ 請求人とR社との合意について
 請求人は、米国d州で設立されたR社との間で、平成30年8月13日を効力発生日とするR社 Program Agreementにより、K社が、M社を通じて、請求人の特定の保険リスクをR社に譲渡し、また、R社により引き受けられた請求人以外の者の保険リスクを一部引き受ける場合があることについて合意した。
ハ 元受保険等契約について
(イ) 請求人は、平成30年8月30日、令和元年8月28日及び令和2年9月15日、それぞれ、N社に対して、保険期間を平成30年9月7日から令和元年9月7日まで、同日から令和2年9月7日まで及び同月16日から令和3年9月16日までとし、被保険者を請求人、保険の対象を○○○○とする旨の損害賠償責任保険契約(以下、順次「平成30年賠償責任元受保険契約」、「令和元年賠償責任元受保険契約」及び「令和2年賠償責任元受保険契約」という。)を申し込み、N社との間で同内容の契約を締結した。
(ロ) 請求人は、一般社団法人Sとの間で、補償期間を平成31年1月8日午後4時から令和2年1月19日午後4時までとし、補償内容を○○○○とする旨の約定履行費用補償契約(被保険者は○○○○の購入者及びリース利用者である。以下「平成31年費用補償元受契約」という。)を締結した。
(ハ) 請求人は、T社との間で、補償期間を令和2年9月16日午後4時から令和3年9月16日午後4時までとし、補償内容を○○○○とする旨の約定履行費用補償契約(被保険者は○○○○の購入者及びリース利用者である。以下「令和2年費用補償元受契約」といい、上記(イ)及び(ロ)の各契約と併せて「本件各元受保険等契約」という。)を締結した。
ニ Q社又はU社による保険責任の譲受けについて
(イ) P社は、N社から、平成30年賠償責任元受保険契約、令和元年賠償責任元受保険契約及び令和2年賠償責任元受保険契約に基づくN社の保険責任の全部又は一部を譲り受けた。
(ロ) Q社又はU社(以下、これらのいずれかを指して「各U社」という。)は、P社、一般社団法人S又はT社から、当該3法人が負う本件各元受保険等契約に係る保険責任の全部又は一部を譲り受けた(以下「本件各再保険契約1」という。)。
 なお、本件各再保険契約1においては、平成31年費用補償元受契約に係る再保険期間を平成31年1月8日午前0時1分から令和2年1月8日午前0時1分まで、令和2年費用補償元受契約に係る再保険期間を令和2年9月16日午前0時1分から令和3年9月16日午前0時1分までとされた。
ホ 各U社による保険責任の譲渡について
 M社は、K社のために(原文「on behalf of K社」)、各U社との間で、本件各再保険契約1に関し、それぞれ、平成30年賠償責任元受保険契約に係るものについては平成30年9月10日、令和元年賠償責任元受保険契約に係るものについては令和元年9月6日、令和2年賠償責任元受保険契約に係るものについては令和2年9月16日、平成31年費用補償元受契約に係るものについては平成31年2月15日、令和2年費用補償元受契約に係るものについては令和2年9月16日、RETROCESSION COVER NOTE(以下「COVER NOTE」という。)により、各U社の本件各再保険契約1に基づく保険責任の一部を譲り受ける旨合意した(以下「本件各再保険契約2」といい、当該各契約に基づく保険料を「本件各再保険料2」という。なお、本件各再保険契約2による保険責任の譲受人がM社であるかK社であるかについては争いがある。)。
ヘ R社による保険責任の譲受けについて
 M社は、K社のために(原文「by and for K社」)、R社との間で、本件各再保険契約2に関し、それぞれ、平成30年賠償責任元受保険契約に係るものについては平成30年9月7日、令和元年賠償責任元受保険契約に係るものについては令和元年9月7日、令和2年賠償責任元受保険契約に係るものについては令和2年9月16日、平成31年費用補償元受契約に係るものについては平成31年1月8日、令和2年費用補償元受契約に係るものについては令和2年9月16日を効力発生日とする、QUOTA SHARE REINSURANCE AGREEMENTにより、本件各再保険契約2に基づく保険責任の81パーセント(令和元年賠償責任元受保険契約に係る保険責任については、その51パーセント)をR社が譲り受け、R社に本件各再保険料2の81パーセント相当額(令和元年賠償責任元受保険契約に係る再保険料については、その54パーセント相当額)の保険料を支払う旨合意した(以下「本件各再保険契約3」といい、当該各契約に基づく保険料を「本件各再保険料3」という。なお、本件各再保険契約3により保険責任を譲渡する者がM社であるかK社であるかについては争いがある。)。
ト M社によるK社の非関連者の保険責任の譲受けについて
 M社は、K社のために、R社との間で、K社を含む保護セルの参加者からR社が引き受けた保険責任のうち、K社の関連会社等に係る保険責任を除いたものをM社が引き受け、本件各再保険料3とほぼ同額の保険料を、R社がM社に支払う旨を、平成30年9月7日、平成31年1月8日、令和元年9月7日及び令和2年9月16日を効力発生日とする、5通のRETROCESSIONAL REINSURANCE AGREEMENTにより合意した(以下、当該各契約に基づく保険料を「本件各非関連者再保険料」という。)。
チ 契約の変更等について
(イ) V社は、M社及び各保護セルのために、令和3年2月18日及び同年8月3日、d州の商務・消費者問題省の保険局(以下「d州保険局」という。)の担当者に対し、M社が各保護セルのために各U社から譲渡を受けていた保険リスクの一部について、各U社からR社に譲渡されたこととすることの承認を求め、当該担当者は、同年2月26日及び同年10月6日にこれを承認した。
(ロ) M社は、K社のために、各U社との間で、令和3年4月28日頃、それぞれ本件各再保険契約2を修正するCOVER NOTEにより、本件各再保険契約2により引き受ける保険責任を、当初の19パーセント(ただし、令和元年賠償責任元受保険契約に係る再保険契約については、49パーセント)とする旨合意した(以下「本件各変更後再保険契約2」といい、当該各契約に基づく保険料を「本件各変更後再保険料2」という。)。
(ハ) R社は、各U社との間で、令和3年4月28日頃、COVER NOTEにより、本件各再保険契約2によりM社がK社のために引き受ける保険責任の81パーセント(ただし、令和元年賠償責任元受保険契約に係る再保険契約については、51パーセント)をR社が譲り受ける旨合意した(以下、当該各契約と本件各変更後再保険契約2を併せて、「本件各変更後再保険契約」という。)。
リ K社の損益計算書について
 本件各K社事業年度の損益計算書におけるK社の保険料収入は、別表1のとおりである。

(4) 審査請求に至る経緯

イ 請求人は、平成30年9月21日から令和元年9月20日まで、同月21日から令和2年9月20日まで及び同月21日から令和3年9月20日までの各事業年度(以下、順次「令和元年9月期」、「令和2年9月期」及び「令和3年9月期」といい、これらを併せて「本件各事業年度」という。)の法人税について、青色の確定申告書に別表2の「確定申告」欄のとおり記載して、いずれも法定申告期限までに申告した。
ロ 請求人は、平成30年9月21日から令和元年9月20日まで、同月21日から令和2年9月20日まで及び同月21日から令和3年9月20日までの各課税事業年度(以下、順次「令和元年9月課税事業年度」、「令和2年9月課税事業年度」及び「令和3年9月課税事業年度」といい、これらを併せて「本件各課税事業年度」という。)の地方法人税について、青色の確定申告書に別表3の「確定申告」欄のとおり記載して、いずれも法定申告期限までに申告した。
ハ 請求人は、令和5年7月6日、令和元年9月期及び令和2年9月期の法人税について別表2の「修正申告」欄のとおり、また、令和元年9月課税事業年度及び令和2年9月課税事業年度の地方法人税について別表3の「修正申告」欄のとおりとする各修正申告書を原処分庁に提出した。
ニ 原処分庁は、原処分庁所属の調査担当職員(以下「本件調査担当職員」という。)の調査(以下「本件調査」という。)に基づき、令和5年8月28日付で、本件各K社事業年度においてK社が請求人に係る対象外国関係会社に該当するとして、その適用対象金額のうち請求人が直接及び間接に有するK社の株式の数につきその請求権の内容を勘案して計算した金額である課税対象金額に相当する金額を、本件各K社事業年度終了の日の翌日から2月を経過する日を含む請求人の事業年度の収益の額とみなして、別表2及び別表3の各「更正処分等」欄のとおり、本件各事業年度の法人税の各更正処分(以下「本件各法人税更正処分」という。)及び過少申告加算税の各賦課決定処分並びに本件各課税事業年度の地方法人税の各更正処分(以下、本件各法人税更正処分と併せて「本件各更正処分」という。)及び過少申告加算税の各賦課決定処分(以下、法人税に係る過少申告加算税の各賦課決定処分と併せて「本件各賦課決定処分」という。)をした。
 なお、本件各法人税更正処分の通知書(以下「本件各通知書」という。)に記載された更正の理由の要旨は、別紙2のとおりである。
ホ 請求人は、原処分を不服として、令和5年11月24日に別表2及び別表3の各「再調査の請求」欄のとおり再調査の請求をしたところ、再調査審理庁は、令和6年7月4日付で、同各表の各「再調査決定」欄のとおり棄却の再調査決定をし、その決定書謄本を、同月9日に送達した。
ヘ 請求人は、再調査決定を経た後の原処分のうち、外国子会社合算税制に係る部分を不服として、令和6年8月7日に審査請求をした。

2 争点

(1) 原処分に係る調査結果の内容の説明に原処分を取り消すべき違法があるか否か(争点1)。

(2) 本件各法人税更正処分の理由の付記に不備があるか否か(争点2)。

(3) K社は、本件各K社事業年度において非関連者基準を満たすか否か。具体的には、本件各K社事業年度におけるK社の収入保険料のうちに、K社の非関連者から収入する収入保険料の額の占める割合が100分の50を超えるか否か(争点3)。

3 争点についての主張

(1) 争点1(原処分に係る調査結果の内容の説明に原処分を取り消すべき違法があるか否か。)について

原処分庁 請求人
本件調査担当職員は、原処分に係る調査結果の内容の説明の際に、請求人に対し、いわゆる外国子会社合算税制の適用があること及び当該制度を適用することにより請求人の益金の額に算入される金額などを説明しており、通則法第74条の11第2項に規定する調査結果の内容の説明を適切に行ったから、原処分に違法はない。 本件調査担当職員は、調査結果の内容の説明の際に、本件の重要な争点である、本件各再保険契約2に係るCOVER NOTEを修正したことを前提に課税要件が判断されるべきことや、修正前のCOVER NOTEは、キャッシュフローや会計処理と矛盾することについて触れず、この点について請求人が説明を求めたにもかかわらず、説明をしなかった。
 したがって、通則法第74条の11第2項に規定する調査結果の内容の説明がされたとはいえず、原処分には取り消すべき違法がある。

(2) 争点2(本件各法人税更正処分の理由の付記に不備があるか否か。)について

原処分庁 請求人
本件各法人税更正処分は、本件各通知書のとおり、法令に基づき、対象外国関係会社の課税対象金額の益金算入額を本件各K社事業年度の決算に基づく所得の金額により計算し、本件各事業年度の所得金額に加算したものであって、帳簿書類の記載自体について否認したものではない。
 そして、本件各通知書には、本件各法人税更正処分の根拠となる法令を示しつつ、K社が対象外国関係会社に該当するから、当該対象外国関係会社に係る課税対象金額に相当する金額を請求人の本件各事業年度の益金の額に算入する旨及びK社が対象外国関係会社に該当するとした判断過程や課税対象金額の算出過程が具体的に記載されている。
 以上によれば、本件各法人税更正処分は、請求人の帳簿書類の記載自体を否認するものではなく、また、本件各通知書には、理由付記制度の趣旨目的を充足する程度に、本件各法人税更正処分の理由が具体的に明示されているから、法人税法第130条第2項の要求する更正理由の付記として欠けることはなく、適法である。
K社の総勘定元帳には、各U社からの収入保険料が修正後のCOVER NOTEを基に記載されているところ、本件各通知書に記載された本件各法人税更正処分の理由においては、各U社からの収入保険料を、修正前のCOVER NOTEにおける金額と認定しており、これは帳簿書類の記載を否認するものであるが、本件各通知書には、当該否認の根拠及び判断過程について、帳簿の記載以上に信ぴょう力のある資料等の提示がない。
 また、修正前のCOVER NOTEは、K社の会計処理や銀行取引における資金の流れと矛盾するのに、本件各通知書にはこの点についての具体的な理由が記載されていない。
 以上によれば、本件各法人税更正処分の理由の付記に不備がある。

(3) 争点3(K社は、本件各K社事業年度において非関連者基準を満たすか否か。具体的には、本件各K社事業年度におけるK社の収入保険料のうちに、K社の非関連者から収入する収入保険料の額の占める割合が100分の50を超えるか否か。)について

原処分庁 請求人
イ 変更前の契約を前提とすべきこと イ 変更後の契約を前提とすべきこと
 本件各変更後再保険契約の前後において、請求人に係る保険リスクの19パーセント(又は49パーセント)がK社に帰属することは変わらない上、本件各再保険契約3は変更されておらず、M社がR社に本件各再保険料3を支払う前に控除した経費をR社に返還するなどの処理が行われた事実もないなど、本件各変更後再保険契約以外に、関係する契約や会計処理などが修正された事実はない。
 そうすると、本件各変更後再保険契約による遡及的な契約修正は、各U社からK社に支払われた保険料のうち、81パーセント(又は54パーセント)が、K社を経由せず直接R社に帰属するという体裁を整えるためだけに行ったものと推測できる。
 このことは、請求人の令和元年9月期及び令和2年9月期において、本件各再保険契約2に基づき保険金請求をすることが可能な事由は発生しておらず、保険金の請求がされることがないことが明らかであるにもかかわらず、あえて本件各変更後再保険契約がされたことからも明らかである。
 以上のことからすると、本件各変更後再保険契約に係るCOVER NOTEには実質的証拠力が認められないというべきであるから、本件においては、修正前の本件各再保険契約2に基づいて、K社の収入保険料のうちの非関連者割合を判断すべきである。
 本件各再保険契約2及び本件各再保険契約3によれば、最終的にK社は、請求人に係る保険リスクのうち19パーセント(又は49パーセント)を引き受け、K社には本件各再保険料2の19パーセント(又は46パーセント)のみの経済的利益が帰属することとなる。
 また、請求人は、本件各再保険料2の過半はK社に帰属せず、R社に帰属するという認識の下で本件の再保険プログラムを採用し、本件各再保険料2も、上記の経済的利益の帰属や請求人の認識に沿って、各U社からM社を経由してK社とR社に直接送金された。また、会計処理についても上記の経済的利益の帰属や請求人の認識に従って行われており、その処理は会計監査人によって是認されている。
 以上によれば、本件各再保険契約2及び本件各再保険契約3は、関係当事者が真に意図していた実質的法律関係と整合しないものであったため、M社は、K社を含む傘下の保護セルとともに、d州保険局の承認を得た上で、本件各変更後再保険契約により、K社に関する保険契約の内容を遡及的に修正したものであるから、K社の収入保険料のうちの非関連者割合は、本件各変更後再保険契約を前提に判断すべきである。
 そうすると、本件各再保険料2ではなく、本件各変更後再保険料2が、本件各K社事業年度におけるK社の収入保険料となる。
ロ 非関連者割合 ロ 変更前の契約を前提とした場合
(イ) 本件各K社事業年度におけるK社の収入保険料の額(分母)について

上記イのとおりであるから、本件各K社事業年度におけるK社の収入保険料の金額は、修正前の本件各再保険料2と、本件各非関連者再保険料を合計した金額である。

(ロ) 本件各K社事業年度においてK社が非関連者から収入する収入保険料の額(分子)について

修正前の本件各再保険契約2によれば、K社は各U社から保険責任を譲り受け、各U社がK社に支払う保険料は、あらかじめ請求人に係る保険責任をK社が負うことを目的としていることからすれば、本件各再保険料2は、K社の関連者から収入する収入保険料に該当するため、本件各K社事業年度においてK社が非関連者から収入する収入保険料は、本件各非関連者再保険料のみである。

(ハ) 小括

以上によれば、本件各K社事業年度におけるK社の収入保険料のうちの非関連者割合は、いずれも100分の50を超えないことから、K社は、本件各K社事業年度のいずれにおいても、非関連者基準を満たさない。

 仮に、修正前の本件各再保険契約2を前提としても、d州法上、K社は直接保険リスクを引き受けることができず、本件参加合意書によってM社を通じて一部の保険リスクを引き受けることになることに加え、M社は各U社から受け取った収入保険料の全額をK社に支払わず、一部を直接R社に支払ったという金銭の流れや、このことを前提としたK社の会計処理に鑑みると、本件各K社事業年度における各U社からの収入保険料は、本件各再保険料2から本件各再保険料3を除いた金額(すなわち、本件各変更後再保険料2と同額)である。
ハ 非関連者割合
(イ) 本件各K社事業年度におけるK社の収入保険料の額(分母)について

本件各K社事業年度におけるK社の収入保険料の額は、本件各非関連者再保険料に、上記イのとおり修正後の本件各変更後再保険料2、又は上記ロのとおり修正前の本件各再保険料2から本件各再保険料3を控除した金額(すなわち、本件各変更後再保険料2と同額)を加えた額である。

(ロ) 本件各K社事業年度においてK社が非関連者から収入する収入保険料の額(分子)について

本件各K社事業年度においてK社が非関連者から収入する収入保険料は、本件各非関連者再保険料である。

(ハ) 小括

以上によれば、本件各K社事業年度におけるK社の収入保険料のうちの非関連者割合は、いずれも100分の50を超えることから、K社は、本件各K社事業年度のいずれにおいても、非関連者基準を満たす。

4 当審判所の判断

(1) 争点1(原処分に係る調査結果の内容の説明に原処分を取り消すべき違法があるか否か。)について

イ 認定事実
 請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、本件調査担当職員は、令和5年7月3日、請求人の本店所在地において、請求人の代表取締役や、請求人の税務代理を務める税理士法人Xの代表社員であるY税理士等に対して、本件調査の結果の内容として、本件各事業年度の法人税等について更正決定等をすべきと認めた額及びその理由の説明や、修正申告の勧奨などをしたことが認められる。
ロ 検討及び請求人の主張について
(イ) 請求人は、上記3の(1)の「請求人」欄のとおり、本件調査担当職員が、調査結果の内容の説明において、本件各再保険契約2に係るCOVER NOTEを修正したことを前提に課税要件が判断されるべきことや、修正前のCOVER NOTEがキャッシュフローや会計処理と矛盾することについて触れず、この点について請求人が説明を求めても説明をしなかったから、通則法第74条の11第2項に規定する調査結果の内容の説明がされたとはいえない旨主張する。
(ロ) しかしながら、通則法第74条の11第2項は、国税に関する調査の結果、更正決定等をすべきと認める場合には、当該職員は、当該納税義務者に対し、その調査結果の内容(更正決定等をすべきと認めた額及びその理由を含む。)を説明するものとすると規定しており、当該職員が当該納税義務者からの個々の要請や質問等に対して逐一応答すべき旨を規定したものではなく、請求人が上記のとおり主張する点について、本件調査担当職員が、調査結果の内容の説明において触れなかったとしても、直ちに通則法第74条の11第2項に規定する調査結果の内容の説明として不十分となるものではない。そして、上記イのとおり、本件調査担当職員は、本件調査の結果の内容として、請求人の代表取締役等に対して、本件各事業年度の法人税等について更正決定等をすべきと認めた額及びその理由の説明等を行っており、当審判所の調査及び審理の結果によっても、当該説明が、通則法第74条の11第2項の規定に照らして違法であると評価すべき事情は認められない。
(ハ) したがって、原処分に係る調査結果の内容の説明に、原処分を取り消すべき違法はない。

(2) 争点2(本件各法人税更正処分の理由の付記に不備があるか否か。)について

イ 法令解釈
 法人税法第130条第2項が青色申告に係る法人税について更正をする場合には更正通知書に更正の理由を付記すべきものとしているのは、法が、青色申告制度を採用し、青色申告に係る所得の計算については、それが法定の帳簿組織による正当な記載に基づくものである以上、その帳簿の記載を無視して更正されることがないことを納税者に保障した趣旨に鑑み、更正処分庁の判断の慎重、合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、更正の理由を相手方に知らせて不服申立ての便宜を与える趣旨に出たものというべきである。
 したがって、帳簿書類の記載自体を否認して更正をする場合において更正通知書に付記すべき理由としては、単に更正に係る勘定科目とその金額を示すだけではなく、そのような更正をした根拠を帳簿記載以上に信ぴょう力のある資料を摘示することによって具体的に明示することを要するが、帳簿書類の記載自体を否認することなしに更正をする場合においては、この更正は納税者による帳簿の記載を覆すものではないから、更正通知書記載の更正の理由が、そのような更正をした根拠について帳簿記載以上に信ぴょう力のある資料を摘示するものでないとしても、更正の根拠を前記の更正処分庁の恣意抑制及び不服申立ての便宜という理由付記制度の趣旨目的を充足する程度に具体的に明示するものである限り、法の要求する更正理由の付記として欠けるところはないと解するのが相当である(最高裁昭和60年4月23日第三小法廷判決・民集39巻3号850頁参照)。
ロ 検討
(イ) 本件各通知書には、要旨別紙2のとおり、本件各K社事業年度において、K社が、請求人の措置法第66条の6第2項第1号に規定する外国関係会社に該当すること、K社の主たる事業は保険業であること、その収入保険料の金額、措置法施行令第39条の14の3第28項第5号及び第29項の各規定の適用により非関連者割合が100分の50を超えないことから、K社は請求人に係る対象外国関係会社に該当することに加えて、K社の租税負担割合が100分の20未満であることから措置法第66条の6第5項第2号の規定の適用がないこと、K社に係る課税対象金額に相当する金額の算出過程、K社に係る課税対象金額に相当する金額を益金の額として請求人の本件各事業年度の所得金額に加算すること及び本件各法人税更正処分の根拠法令等が記載されている。
(ロ) したがって、本件各通知書には、更正の根拠となる法令、原処分庁による判断結果及びその基礎とされた事実関係が具体的に明示され、原処分庁の恣意抑制及び不服申立ての便宜という理由付記制度の趣旨目的を充足する程度に更正の根拠が具体的に明示されているといえるから、法人税法第130条第2項の要求する更正理由の付記として欠けるところはなく、本件各法人税更正処分の理由の付記に不備はない。
ハ 請求人の主張について
(イ) 請求人は、上記3の(2)の「請求人」欄のとおり、K社の総勘定元帳には、各U社からの収入保険料が修正後のCOVER NOTEを基に記載されているところ、本件各通知書に記載された本件各法人税更正処分の理由においては、各U社からの収入保険料を、修正前のCOVER NOTEにおける金額と認定しており、これは帳簿書類の記載を否認するものであるにもかかわらず、本件各通知書には、当該否認の根拠及び判断過程について、帳簿の記載以上に信ぴょう力のある資料等の提示がない旨主張する。
 しかしながら、上記イのとおり、帳簿書類の記載自体を否認して更正をする場合において更正通知書に付記すべき理由として、そのような更正をした根拠を帳簿記載以上に信ぴょう力のある資料を摘示することによって具体的に明示することを要するのは、青色申告に係る所得の計算については、それが法定の帳簿組織による正当な記載に基づくものであること、すなわち、法人税法第126条第1項に基づき、青色申告法人は、財務省令で定めるところにより、帳簿書類を備え付けてこれにその取引を記録し、かつ、当該帳簿書類を保存する義務を負うことを前提とするものであるから、上記「帳簿書類の記載自体を否認して更正をする場合」にいう「帳簿書類」とは、更正処分を受ける青色申告法人(本件においては、請求人)の帳簿書類をいうと解すべきである。
 請求人は、K社の総勘定元帳の記載を否認して本件各法人税更正処分が行われていると捉えて、本件各通知書に、当該否認の根拠及び判断過程について、帳簿の記載以上に信ぴょう力のある資料等の提示をすべき旨主張するが、K社の総勘定元帳は、請求人の帳簿書類ではないため、当該主張は採用できない。
(ロ) 請求人は、上記3の(2)の「請求人」欄のとおり、修正前のCOVER NOTEは、K社の会計処理や銀行取引における資金の流れと矛盾するのに、本件各通知書にはこの点についての具体的な理由が記載されていない旨主張する。
 しかしながら、本件各通知書には、上記ロのとおり、外国子会社合算税制に係る要件に該当する事実及び根拠法令等が具体的に記載されており、上記イのとおり、原処分庁の判断の慎重、合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、更正の理由を相手方に知らせて不服申立ての便宜を与えるという法人税法第130条第2項の趣旨目的を充足する程度に具体的に明示するものであると認められるから、本件各法人税更正処分について理由付記の不備はなく、請求人の主張は理由がない。

(3) 争点3(K社は、本件各K社事業年度において非関連者基準を満たすか否か。具体的には、本件各K社事業年度におけるK社の収入保険料のうちに、K社の非関連者から収入する収入保険料の額の占める割合が100分の50を超えるか否か。)について

イ 認定事実
 請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
(イ) 本件参加合意書の第2条(責任制限)には、再保険リスクは、管理の便宜のためにM社を介して保護セルに引き受けられるものであり、このため、M社及びK社による書面での別途の合意がない限り、M社は保護セルが引き受けた再保険リスクについて、保護セル又は再保険者に対して責任を負わないことが、明示的に理解されているものとする旨定められている。
(ロ) 本件各再保険契約2に係る各COVER NOTEには、本件各再保険料2の金額が、次のAないしEのとおり記載されている。
A  平成30年賠償責任元受保険契約に係るもの 102,075,472円
B  令和元年賠償責任元受保険契約に係るもの 102,129,387円
C  令和2年賠償責任元受保険契約に係るもの 101,992,540円
D  平成31年費用補償元受契約に係るもの 41,046,441円
E  令和2年費用補償元受契約に係るもの 41,457,120円
(ハ) 上記(ロ)のAないしEの金額を本件各再保険契約2の保険期間に基づいて日割り計算した月ごとの収入保険料を当該月の月中平均の電信売買相場の仲値(Z銀行が公表しているもの)によりアメリカ合衆国ドル(以下「米ドル」という。)に換算すると、本件各K社事業年度に帰属すべき本件各再保険料2に係る収入金額(未経過保険料控除後の金額)は、別表4の順号1のとおりである。
(ニ) K社の主たる事業は、保険業である。
(ホ) 本件各K社事業年度における本件各非関連者再保険料に係る収入金額(未経過保険料控除後の金額)は、別表4の順号2のとおりである。
ロ 検討及び請求人の主張について
(イ) はじめに
 上記1の(3)のイの(ニ)のDのとおり、K社は請求人に係る外国関係会社であり、上記イの(ニ)のとおり、K社の主たる事業が保険業であることから、K社が、本件各K社事業年度において非関連者基準を満たすか否かの判断に当たっては、本件各K社事業年度において、K社に係る措置法施行令第39条の14の3第28項第5号柱書に規定する「当該各事業年度の収入保険料」(分母)のうちに、同号イに規定する「関連者以外の者から収入する収入保険料(当該収入保険料が再保険に係るものである場合には、関連者以外の者が有する資産又は関連者以外の者が負う損害賠償責任を保険の目的とする保険に係る収入保険料に限る。)」(分子)の占める割合が、100分の50を超えるか否かが問題となるから、以下、これらについて順次検討する。
(ロ) 本件各K社事業年度のK社の収入保険料(分母)について
A 本件各再保険契約2に基づく収入保険料について
(A) 上記1の(3)のホのとおり、本件各K社事業年度において、M社は、K社のために、各U社との間で本件各再保険契約2を締結したところ、本件各再保険契約2に係る各COVER NOTEには、本件各再保険料2の金額が上記イの(ロ)のとおり記載されているから、同(ハ)及び別表4の順号1のとおり、この金額(未経過保険料控除後の金額)を米ドル換算した金額が本件各K社事業年度におけるK社の収入保険料であると認められる。
(B) これに対して、請求人は、上記3の(3)の「請求人」欄のイのとおり、関係当事者が真に意図していたのは、最終的にK社は請求人に係る保険リスクのうち19パーセント(又は49パーセント)を引き受け、K社には本件各再保険料2の19パーセント(又は46パーセント)のみの経済的利益を帰属させるなどというものであり、本件各再保険契約2の内容は、関係当事者の真の意図と整合していなかったため、d州保険局の承認を得た上で、本件各変更後再保険契約により、K社に関する保険契約の内容を遡及的に修正したから、本件各K社事業年度のK社の収入保険料は、本件各変更後再保険契約を前提に判断すべきである旨主張する。
 しかしながら、上記1の(3)のホのとおり、平成30年9月10日から令和2年9月16日までの間に、M社は、K社のために各U社との間で、本件各再保険契約2を締結しているところ、本件各再保険契約2に係る各COVER NOTEには、本件各再保険契約2により各U社が譲渡する保険責任の割合や上記イの(ロ)のとおりその対価である本件各再保険料2の金額が明示されており、当該各COVER NOTEを通覧しても、本件各再保険契約2により移転する保険責任の割合やその対価である保険料の金額が、当該各COVER NOTEに記載されたものの一部であることを示す記載は見当たらない。
 また、上記1の(3)のチの(ハ)のとおり、本件各変更後再保険契約においては、令和3年4月28日頃、各U社からR社が保険責任を譲り受ける旨のCOVER NOTEが作成されているものの、当審判所の調査及び審理の結果によっても、同日以前に、各U社とR社との間で、本件各元受保険等契約に係る保険責任の譲渡に関する書面が作成された事実は見当たらず、保険責任の譲渡に関する契約が、書面による合意なしに各U社とR社との間に成立していたとは考え難い。
 以上によれば、本件各再保険契約2の当事者の間には、各締結日において、本件各再保険契約2に係る各COVER NOTEの記載どおりの合意が成立し、その合意が、本件各変更後再保険契約の締結まで存続していたと認められる。
 そして、措置法施行令第39条の14の3第28項柱書、同項第5号柱書及び同号イは、外国関係会社の各事業年度の収入保険料のうちに関連者以外の者から収入する収入保険料の占める割合(非関連者割合)が100分の50を超える場合に、当該外国関係会社が措置法第66条の6第2項第3号に規定する対象外国関係会社に該当する旨規定し、非関連者割合の判断を外国関係会社の事業年度ごとに行うことを規定しているところ、上記1の(3)のチの(ロ)及び(ハ)のとおり、本件各変更後再保険契約が締結されたのは、令和3年4月28日頃であって、本件各K社事業年度の終了後であるから、本件各K社事業年度において有効に存在していたのは変更前の各COVER NOTEの記載どおりの本件各再保険契約2である。このことは、同(イ)のとおり、本件各K社事業年度の後にd州保険局が本件各再保険契約2の変更を承認したとしても変わるものではない。加えて、変更前の本件各再保険契約2による法律関係を基礎とすることが不当であると認められるような特段の事情も認められないことからすれば、本件においては、変更前の本件各再保険契約2に基づいて、本件各K社事業年度におけるK社の収入保険料の額を判断するのが合理的と認められ、請求人の主張は理由がない。
(C) また、請求人は、上記3の(3)の「請求人」欄のロのとおり、本件各再保険契約2を前提としても、d州法上、K社は直接保険リスクを引き受けることができず、本件参加合意書によってM社を通じて一部の保険リスクを引き受けることになることに加え、M社は各U社から受け取った収入保険料の全額をK社に支払わず、一部を直接R社に支払ったという金銭の流れや、このことを前提としたK社の会計処理に鑑みると、本件各K社事業年度における各U社からの収入保険料は、本件各再保険料2から本件各再保険料3を除いた金額(すなわち、本件各変更後再保険料2と同額)である旨主張する。
 しかしながら、上記の請求人の主張によれば、M社は、本件各再保険契約2により譲渡される全ての保険責任を自ら引き受け、その保険責任の一部を、本件参加合意書によってK社に移転するということになるところ、上記イの(イ)のとおり、本件参加合意書には、再保険リスクは、管理の便宜のためにM社を介して保護セルに引き受けられるものである。このため、M社及びK社による書面での別途の合意がない限り、M社は、保護セルが引き受けた再保険リスクについて、保護セル又は再保険者に対して責任を負わないことが、明示的に理解されているものとする旨が定められており、当審判所の調査及び審理の結果によっても、K社とM社との間で、M社が再保険リスクを自ら引き受ける旨書面により合意したとの事実は見当たらない。他方、上記のとおり請求人が指摘する金銭の流れは、M社、K社及びR社との間での決済の回数を少なくするために便宜上行われ、上記のとおり請求人の指摘する会計処理は、このような便宜上の行為に沿ってされたもので、M社、K社及びR社の法律関係を適切に反映したものではないと理解可能である。そうすると、本件各再保険契約2により譲渡することとされた保険責任やその対価である保険料は、M社ではなくK社に帰属するものと解すべきであり、本件各K社事業年度における、K社の各U社からの収入保険料の金額は、別表4の順号1のとおり、本件各再保険料2に係る収入金額(未経過保険料控除後の金額)を米ドル換算した金額と認められるから、請求人の主張は理由がない。
B 本件各非関連者再保険料について
 本件各K社事業年度において、K社は、R社から、本件各非関連者再保険料を受け取っており、別表4の順号2の金額が本件各K社事業年度のK社の収入保険料の額に含まれることについて、原処分庁及び請求人に争いはなく、当審判所の調査及び審理の結果によっても相当と認められる。
C 小括
 以上を踏まえると、本件各K社事業年度におけるK社の収入保険料の金額は、別表4の順号1の本件各再保険料2に係る収入金額(未経過保険料控除後の金額)を米ドル換算した金額に、同表の順号2の本件各非関連者再保険料に係る収入金額(未経過保険料控除後の金額)を加えた金額であり、同表の順号3のとおりとなる。
(ハ) 非関連者から収入する収入保険料(分子)について
A はじめに
 上記(ロ)のCのとおり、K社の収入保険料の金額は、本件各再保険料2に係る収入金額(未経過保険料控除後の金額)を米ドル換算した金額に、本件各非関連者再保険料に係る収入金額(未経過保険料控除後の金額)を加えた金額であるところ、これらが、措置法施行令第39条の14の3第28項第5号イに規定する「関連者以外の者から収入する収入保険料(当該収入保険料が再保険に係るものである場合には、関連者以外の者が有する資産又は関連者以外の者が負う損害賠償責任を保険の目的とする保険に係る収入保険料に限る。)」に該当するか否かについて、以下検討する。
B 本件各再保険料2について
 措置法施行令第39条の14の3第28項第5号イの括弧書に規定する「関連者以外の者が有する資産又は関連者以外の者が負う損害賠償責任を保険の目的とする保険」とは、非関連者の資産又は損害賠償責任に係る経済的不利益を担保する保険をいうものと解すべきであり、上記1の(3)のイの(ニ)のDのとおり、請求人はK社の関連者に該当するところ、同ハの(イ)のとおり、平成30年賠償責任元受保険契約、令和元年賠償責任元受保険契約及び令和2年賠償責任元受保険契約は、被保険者を請求人、保険の対象を○○○○とする旨の損害賠償責任保険契約であり、同(ロ)及び(ハ)のとおり、平成31年費用補償元受契約及び令和2年費用補償元受契約は、請求人が締結した、補償内容を○○○○とする旨の約定履行費用補償契約であるから、これらの本件各元受保険等契約は、いずれも関連者である請求人の資産又は損害賠償責任に係る経済的不利益を担保するものといえ、措置法施行令第39条の14の3第28項第5号イの括弧書には該当しない。
 したがって、本件各再保険料2は、措置法施行令第39条の14の3第28項第5号イに規定する「関連者以外の者から収入する収入保険料」には該当しない。
C 本件各非関連者再保険料について
 R社が、K社に係る措置法第66条の6第1項各号等に掲げる者に該当するとの事実はうかがわれないから、R社はK社の非関連者であると認められ、K社がR社から受け取る本件各非関連者再保険料は、上記1の(3)のトのとおり、R社が引き受けた保険責任のうち、K社の関連会社等に係る保険責任を除いたものであることから、本件各非関連者再保険料は措置法施行令第39条の14の3第28項第5号イに規定する「関連者以外の者から収入する収入保険料」であると認められる。
D 小括
 以上によれば、本件各K社事業年度におけるK社の収入保険料の金額のうち、措置法施行令第39条の14の3第28項第5号イに規定する「関連者以外の者から収入する収入保険料」の金額は、別表4の順号4のとおりとなる。
(ニ) 本件各K社事業年度における非関連者割合について
 以上を前提に、本件各K社事業年度における非関連者割合を計算すると、別表4の順号5のとおりとなり、いずれも100分の50を超えないから、K社は、本件各K社事業年度において、非関連者基準を満たさない。

(4) 本件各更正処分の適法性について

上記(1)のとおり、原処分に係る調査結果の内容の説明に原処分を取り消すべき違法はなく、上記(2)のとおり、本件各法人税更正処分の理由の付記に不備はなく、上記(3)のとおり、K社は、本件各K社事業年度において非関連者基準を満たさないことから、請求人に係る対象外国関係会社に該当する。
 以上に基づき、当審判所において対象外国関係会社の課税対象金額に相当する金額を計算すると、請求人の本件各事業年度の法人税の所得金額及び納付すべき税額並びに本件各課税事業年度の地方法人税の課税標準法人税額及び納付すべき税額は、いずれも本件各更正処分の額と同額と認められる。
 また、本件各更正処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
 したがって、本件各更正処分はいずれも適法である。

(5) 本件各賦課決定処分の適法性について

上記(4)のとおり、本件各更正処分はいずれも適法であり、また、本件各更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が本件各更正処分前の税額の基礎とされていなかったことについて、通則法第65条(令和4年法律第4号による改正前のもの)《過少申告加算税》第4項に規定する「正当な理由」があるとは認められない。そして、当審判所においても本件各事業年度の法人税及び本件各課税事業年度の地方法人税の過少申告加算税の額は、本件各賦課決定処分における過少申告加算税の額といずれも同額であると認められる。
 したがって、本件各賦課決定処分はいずれも適法である。

(6) 結論

よって、審査請求は理由がないから、これを棄却することとする。

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