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(令和7年9月8日裁決)
《裁決書(抄)》
1 事実
(1) 事案の概要
本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が国内の事業者から○○○○を仕入れ、国外の事業者に輸出した取引について、原処分庁が、当該取引に係る対価を享受するのは請求人ではないとして、消費税等の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を行ったのに対し、請求人が、原処分庁による事実認定及び法令解釈には誤りがあるなどとして、原処分の全部の取消しを求めた事案である。
(2) 関係法令等
関係法令等は、別紙2のとおりである。
なお、別紙2で定義した略語については、以下、本文においても使用する。
(3) 基礎事実
当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
請求人は、N社及びP社との間で、請求人の令和2年10月1日から令和2年10月31日までの課税期間(以下「令和2年10月課税期間」といい、他の課税期間も同様に表記する。)ないし令和4年7月課税期間、令和4年9月課税期間ないし令和5年4月課税期間及び令和5年6月課税期間ないし令和5年8月課税期間(以下、これらの課税期間を併せて「本件各課税期間」という。)において、要旨以下のとおり、請求人がN社から商品を仕入れ、これをP社に販売する各取引を行っていた(以下、当該各取引のうち、請求人がN社から商品を仕入れる各取引を「本件各仕入取引」、請求人がP社に商品を販売する各取引を「本件各販売取引」といい、本件各仕入取引と本件各販売取引とを併せて「本件各取引」という。)。
また、同時期に、請求人は、P社から「PURCHASE ORDER」と題する書面(以下「発注書」という。)の交付を受ける。
なお、輸出許可通知書には、輸出者として請求人の名称が記される。
請求人、N社及びP社は、本件各取引に関して、以下のとおり各契約書を取り交わしていた。
輸出免税の適用者は、その適用要件として輸出したことを証する所定の書類を保存することとされているが、友好商社が介在する取引等の場合には、名義貸しに係る取引が多く、当該友好商社等を輸出申告者として掲名するものの、輸出申告書の原本は実際に輸出取引を行った者(実際の輸出者)が保管しているところ、実際の輸出者及び名義貸しに係る友好商社等は、以下の措置を講ずることを条件に、輸出申告書の名義にかかわらず、実際の輸出者が輸出免税の適用を受けることができるものとする。
実際の輸出者は、輸出申告書等の原本を保存するとともに、名義貸しに係る事業者に対して輸出免税の適用がない旨を連絡するための「消費税輸出免税不適用連絡一覧表」などの書類を交付し、当該事業者に対して、名義貸しに係る輸出取引にあっては、当該事業者の経理処理のいかんにかかわらず、税法上、売上げ及び仕入れとして認識されないものであることを指導する。
名義貸しに係る友好商社等の事業者は、確定申告書の提出時に、所轄税務署に対して、実際の輸出者から交付を受けた上記(イ)の書類の写しを提出する。ただし、当該確定申告書等の提出に係る課税期間において全く輸出免税の適用を受けていない場合には、この限りではない。
(4) 審査請求に至る経緯
なお、請求人は、本件各販売取引について、本件各課税期間に係る総勘定元帳(以下「本件各元帳」という。)の「売上高」勘定に別表2のとおり計上するとともに、本件各仕入取引については、本件各元帳の「仕入高」勘定に別表3のとおり計上していた。また、請求人は、本件各申告書において、別表2の「計上金額」欄に記載の各金額を「課税資産の譲渡等の対価の額」のうち「免税売上額」に含め、別表3の「計上金額」欄に記載の各金額について仕入税額控除を適用していた。
なお、本件各更正処分等に係る各通知書(以下「本件各通知書」という。)には、更正の理由として、要旨、別紙3のとおり記載されている。
2 争点
(1) 本件調査に本件各更正処分を取り消すべき違法があったか否か(争点1)。
(2) 本件各更正処分の理由の提示に不備があるか否か(争点2)。
(3) 請求人は、本件各販売取引について資産の譲渡等に係る対価を享受しておらず、消費税法第13条の規定に基づき、請求人以外の者が本件各仕入取引に係る資産の譲受け及び本件各販売取引に係る資産の譲渡をしたものとして同法を適用すべきか否か(争点3)。
(4) 本件各更正処分は課税の公平性を欠く不当な処分であるか否か(争点4)。
(5) 本件各申告が過少申告となったことについて、通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」があるか否か(争点5)。
3 争点についての主張
(1) 争点1(本件調査に本件各更正処分を取り消すべき違法があったか否か。)について
| 原処分庁 | 請求人 |
|---|---|
|
次のイ及びロのとおり、本件調査に本件各更正処分を取り消すべき違法はない。 イ 事前通知について
R税関の検査の結果から、請求人において、○○○○ことが想定されていたところ、原処分庁は、事前通知をした場合、請求人とN社及び仕入先関係者との通謀等により、調査に必要な帳簿書類その他の物件の破棄、隠匿等のおそれがあると判断したものであり、本件調査は事前通知を要しない場合の要件に該当する。 また、S税務署の調査担当職員がN社に係る税務調査に際して行った、取引先に対する調査としての請求人に対する調査(以下「本件S税務署調査」という。)は、S税務署の調査に必要な範囲で質問調査を行い、資料提出を求めたものであり、請求人の取引を網羅的に確認するために実施されたものではない。 ロ 調査結果の内容の説明について
本件調査担当職員は、調査結果の説明において、請求人に対し、本件調査の結果、消費税法第13条を適用すると判断した理由及び更正に係る計算過程を説明するなど、通則法第74条の11第2項に基づいて調査結果の内容の説明を行った。 |
次のイ及びロのとおり、本件調査は違法な調査であり、本件各更正処分は取り消されるべきである。 イ 事前通知について
本件調査の前に、請求人は本件S税務署調査に誠実に対応し、求められた書類を提出しており、このことは、請求人とN社との間で通謀が行われていなかったことの証左である。また、原処分庁が本件S税務署調査の状況を知っていたことは明らかであるにもかかわらず、事前通知を要しない場合の要件に該当するとした原処分庁の判断は合理性を欠いており、社会通念に照らして著しく妥当性を欠いている。 ロ 調査結果の内容の説明について
本件調査担当職員は、請求人に対し、消費税法第13条の実質課税の原則を適用して課税処分の対象となる旨の説明を行ったが、同条を適用する具体的な要件の説明や客観的な証拠等を提示していないから、通則法第74条の11第2項に基づいて調査結果の内容の説明を行ったとは認められない。 |
(2) 争点2(本件各更正処分の理由の提示に不備があるか否か。)について
| 原処分庁 | 請求人 |
|---|---|
| 本件各通知書には、本件各更正処分の理由として、消費税法第13条の規定を適用して、本件各販売取引及び本件各仕入取引を含む一連の取引に係る対価を享受するのはN社であるから、当該一連の取引に係る資産の譲渡等はN社が行ったものとして同法の規定を適用する旨及びそのように判断した根拠を具体的に記載するなどしていることからすれば、原処分庁の恣意抑制及び不服申立ての便宜という理由付記制度の趣旨目的を充足する程度に更正の根拠を具体的に明示しており、本件各更正処分の理由の提示に不備はない。 | 本件各通知書に記載された本件各更正処分の理由は、法令適用上の客観的な理由となっておらず、また、本件調査担当職員にとって都合の良い解釈や一方的な思い込みによる主観的な意見が記述されているのみであり、理由の提示の程度として、処分の適正化及び納税者の予見可能性を高めるものとはいえず、本件各更正処分の理由の提示に不備がある。 |
(3) 争点3(請求人は、本件各販売取引について資産の譲渡等に係る対価を享受しておらず、消費税法第13条の規定に基づき、請求人以外の者が本件各仕入取引に係る資産の譲受け及び本件各販売取引に係る資産の譲渡をしたものとして同法を適用すべきか否か。)について
| 原処分庁 | 請求人 |
|---|---|
|
本件各更正処分は、消費税法第13条の規定に基づくものであり、同条は、契約の形式と実質が乖離している場合に、形式ではなく実質に基づいて課税することを求めているから、本件各取引も、売買契約の要素を備えているか否かという実質面から評価される必要がある。 そして、次のイないしヘのことから、本件各取引の真の法律関係は、売主をN社、買主をP社とする一つの売買契約と評価すべきであり、請求人は、本件各販売取引について資産の譲渡等に係る対価を享受しておらず、消費税法第13条の規定に基づき、請求人以外の者が本件各仕入取引に係る資産の譲受け及び本件各販売取引に係る資産の譲渡をしたものとして同法を適用すべきである。 イ 本件各取引は、売買契約であり、民法第555条《売買》によれば、売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対して代金を支払うことを約することによって、その効力を生じることから、売買契約の当事者は、少なくとも財産権たる商品の種類及び数並びにそれに対する対価の額を決定する者であると考えられる。しかしながら、取引する商品や売買代金など本件各取引に係る取引条件は、N社とP社が決定しており、請求人はこれを決定していないどころか全く関与していない。
ロ 請求人は、本件各仕入取引では形式上買主とされているにもかかわらず、検品や計量を行っておらず、商品を受領することもなく、また、本件各販売取引では形式上売主とされているにもかかわらず、配送や輸出手続を行っていない。そして、商品の受領及び引渡しは、N社による手配及び費用負担のもとで、N社とP社との間で行われている。
ハ 売買契約の当事者であれば、買主として引渡しを受けた目的物の滅失等に関する危険を負担したり(民法第567条《目的物の滅失等についての危険の移転》第1項)、売主として引き渡した目的物が契約の内容に適合しなかった場合の責任を負担する(民法第562条《買主の追完請求権》、第563条《買主の代金減額請求権》)のが通常であるが、本件各取引において、請求人は、目的物の滅失等に関する危険を負担したり、契約不適合責任を負担することはなく、N社及びP社がこれらの危険や責任を負担している。
ニ 二者の間に入る売買契約の場合、間に入る当事者は、買主からの売買代金が未入金となるリスクを負担するのが通常であるが、本件支払契約書では、請求人はP社から支払を受けた後、商品の代金をN社に支払うものとされ、また、P社から支払を受けない場合、請求人はN社への支払を留保する権利を有しており、請求人はP社からの売買代金が未入金となるリスクを負担していない。
ホ 請求人が、輸出許可通知書の名義人となっていても、現に課税資産の譲渡等を行っていなければ、輸出許可通知書の名義人であったことのみをもって、輸出免税の適用を受けることはできない。
ヘ 本件調査担当職員が令和5年10月31日付で作成した請求人の代表取締役であるKの質問応答記録書、業務支援課課長であるTの質問応答記録書及び事業開発課所属のUに係る3通の質問応答記録書(以下、当該各者に係る各質問応答記録書を併せて「本件各応答記録書」という。)は、各回答者に対し、内容を読み聞かせて確認を得たものであり、回答者自ら署名をするなど、正当な手続を経て作成されており、信用性のある合理的な資料といえる。
また、質問調査の範囲は、調査権限を有する税務署職員等の合理的な選択に委ねられる事項であり、質問調査をした日と質問応答記録書を作成して回答者が署名した日が異なっていても、直ちに文書全体の真実性が否定されるものではない。 |
消費税法第13条は、租税回避を目的とした事案に適用されることを想定して設けられた規定であり、何ら資本関係、人的関係等を有しない独立した事業者間で私法上有効な売買契約を締結し、当該契約に沿って行われた取引に適用する余地はない。 そして、次のイないしヘのことから、請求人は、本件各取引の当事者であり、本件各販売取引に係る対価をP社から享受し、課税仕入れに係る対価をN社に支出している。 イ 民法第555条は、売買契約の成立要件を定めているものであり、商品の種類及び数並びにそれに対する対価の額を決定する者が売買契約の当事者になるとは規定していない。
また、N社と請求人又は請求人とP社との間で、それぞれ二者間の売買契約が締結され、当該各契約の中で取引する商品の種類、数量及び金額が定められている。 ロ 請求人は、本件各仕入取引において、検品を行っている。検品の主な目的は、商品、発注書及びパッキングリストの内容が一致しているかを確認することであり、一致していない場合、請求人は、検品によって発見された商品内容の相異や数量の差異をN社に補正させてから、P社との契約を結んでいる。
また、検品の前段階においても、そもそも請求人が輸出を認めていない商品が含まれている場合には、当該商品を出荷品から除外し、商品内容の差異を補正した上で、P社との契約を結んでいる。 ハ 民法には「契約自由の原則」という基本原理があり、当事者の自由な合意が認められ、その契約が強行法規や公序良俗に反しない限り、そこに示されている当事者の意思どおりの効果が認められるところ、原処分庁は、この民法の基本原則を無視している。
ニ 商取引を行うに当たって、いかに自分のリスクを小さくするかは重要な課題であり、契約当事者間で誰がどのようにリスクを負うのかを決めている。販売代金の回収リスクが大きければ、担保を取ったり前金を預かったりするのは商取引では当然のことである。
ホ 請求人は、本件各取引において、物流機能、金融機能、情報提供機能などのトレーディング機能を果たしており、いわゆる友好商社であるところ、このような友好商社を介して輸出取引を行った場合、友好商社において輸出免税の規定が適用されることとなるのが原則であり、本件各販売取引については、友好商社である請求人において輸出許可通知書を保存し、請求人が輸出申告名義人となっていることから、請求人において輸出免税の適用を受けることとなる。
ヘ 本件各応答記録書は、各回答者が訂正を求めたのに、訂正をしておらず、各回答者の意向と異なった表現になっていること、本件各課税期間において、本件各取引の担当課長であったV(以下「V氏」という。)に係る質問応答記録書がないこと、質問調査を行った日時が正確に記載されていないこと、質問調査に従事した職員の名前が全て記載されていないことなどから、信用できないものである。
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(4) 争点4(本件各更正処分は課税の公平性を欠く不当な処分であるか否か。)について
| 原処分庁 | 請求人 |
|---|---|
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次のイ及びロのとおり、本件各更正処分は、課税の公平性を欠く不当な処分ではない。 イ 原処分庁がN社に対して職権で減額更正を行うか否かや、N社が輸出免税を受ける者であるとされた場合にも、N社が現に輸出免税の適用を受けられるか否かは、原処分庁とN社との間の課税手続の中で解決されるべき事項であり、仮に、N社の確定申告が是正されていないとしても、本件各更正処分が課税の公平の原則に反することにはならない。
ロ 請求人が同様な取引と指摘する取引については、売買代金の回収リスクなど売買取引の要素を備えていると評価できる部分があることや、真の取引当事者が誰であるかを積極的に認定できる事実関係が把握できなかったことなどから、本件各取引と同様の認定はできないと判断したのであって、かかる判断には合理性がある。
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次のイ及びロのとおり、本件各更正処分は、課税の公平性を欠く不当な処分である。 イ 消費税の課税売上げと課税仕入れは、表裏一体をなすものであり、一方の課税仕入れがないことになれば、必然的に一方の課税売上げもないことになるが、原処分庁は、実質行為者と認定したN社に対して職権で減額更正を行っていないばかりか、N社における請求人に対する売上げをないものとすべき旨の連絡さえも行っていない。
ロ 請求人が行っている国内取引の中には、本件各取引と同様な形で行われている取引があるが、原処分庁は、当該取引について、実質課税の原則を適用した課税処分を行っていない。
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(5) 争点5(本件各申告が過少申告となったことについて、通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」があるか否か。)について
| 原処分庁 | 請求人 |
|---|---|
| 本件各申告を行った当時に適用されていた消費税法令、通達及び本件質疑応答事例等を総合的に判断しても、納税者が原処分庁の主張するような解釈をすることは不可能であるから、本件各申告が過少申告となったことについて、通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」がある。 | 本件各申告を行った当時に適用されていた消費税法令、通達及び本件質疑応答事例等について、これらが前提とする取引関係を請求人が誤認し、又は、請求人が独自の拡大解釈をしたことに起因して、本件各申告に誤りが生じたものであるから、本件各申告が過少申告となったことについて、通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」はない。 |
4 当審判所の判断
(1) 争点1(本件調査に本件各更正処分を取り消すべき違法があったか否か。)について
通則法第74条の10は、税務署等が保有する情報に鑑み、違法又は不当な行為を容易にし、正確な課税標準等又は税額等の把握を困難にするおそれその他国税に関する調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認める場合には、事前通知を要しない旨規定しているところ、その趣旨は、これらの行為が行われることが合理的に推認される場合にまで事前通知を行うと、適正かつ公平な課税の実現に反する結果が生ずることとなる一方で、これらの行為が行われることが合理的に推認される場合に事前通知を行わないこととしても、納税者の正当な権利利益を侵害するものではないと考えられるところにあると解される。
そして、別紙2の6のとおり、調査手続通達5−9は、通則法第74条の10に規定する「違法又は不当な行為を容易にし、正確な課税標準等又は税額等の把握を困難にするおそれ」があると認める場合として、例えば、調査手続通達5−9(1)から(5)までに掲げるような場合をいうと定めており、事前通知をすることにより、納税義務者において、調査に必要な帳簿書類その他の物件を破棄し、移動し、隠匿し、改ざんし、変造し、又は偽造することが合理的に推認される場合(同(3))や、納税義務者において、取引先等に対し、同(1)から(4)までに掲げる行為を行うよう、又は調査への協力を控えるよう要請する(強要し、買収し又は共謀することを含む。)ことが合理的に推認される場合(同(5))などを列挙しているところ、当該通達の定めは同条の上記趣旨に沿うものであり、当審判所もこれを相当と認める。
原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
調査官メモには、原処分庁が更正をすべきと認めた事項について、消費税法第13条の規定が適用される旨を含む更正をすべきと認めた理由及び更正後の税額等の計算明細等が記載されている。
請求人は、上記3の(1)の「請求人」欄のイのとおり、請求人が本件S税務署調査に誠実に対応するなどしたことは、請求人とN社との間で通謀がなかったことの証左であり、原処分庁が本件S税務署調査の状況を知っていたにもかかわらず、事前通知を要しない場合の要件に該当するとした原処分庁の判断は合理性を欠いており、社会通念に照らして著しく妥当性を欠いている旨主張する。
しかしながら、上記ロの(イ)のとおり、原処分庁は、請求人の申告内容、過去の調査結果、事業内容、資料情報、内外観の状況及び業種情報等について検討した結果、請求人とN社との通謀による○○○○が想定されると判断しているところ、当審判所の調査及び審理の結果によっても、このような原処分庁の判断に不合理な点は見当たらない。このような判断を前提にすると、事前通知をすることにより、請求人が調査に必要な帳簿書類その他の物件の破棄、隠匿などの行為をすることを予見することがむしろ合理的であり、「違法又は不当な行為を容易にし、正確な課税標準等又は税額等の把握を困難にするおそれ」があるとして、本件調査について事前通知を要しないと判断したことも不合理なものとはいえないから、原処分庁の判断が合理性や妥当性を欠くものであったとは認められない。
したがって、本件調査が事前通知なく実施されたことについて本件各更正処分を取り消すべき違法はなく、請求人の主張には理由がない。
請求人は、上記3の(1)の「請求人」欄のロのとおり、調査結果の内容の説明において、原処分庁は、消費税法第13条の実質課税の原則を適用する具体的な要件の説明や客観的な証拠等を提示していないから、通則法第74条の11第2項に基づいて調査結果の内容の説明を行ったとは認められない旨主張する。
しかしながら、上記ロの(ロ)のとおり、本件調査担当職員は、請求人に対して調査官メモに基づいて調査結果の内容の説明を行っており、調査官メモには、原処分庁が更正をすべきと認めた事項について、消費税法第13条が適用される旨を含む更正をすべきと認めた理由及び更正後の税額等の計算明細等が記載されていることからすれば、本件調査担当職員は、調査結果の内容の説明として、本件調査の結果、同条を適用するとした判断理由及び更正後の税額等に係る計算過程を説明したと認めるのが相当である。
したがって、本件調査担当職員は、本件調査について、通則法第74条の11第2項に基づいて調査結果の内容の説明を行ったと認められ、この点について本件各更正処分を取り消すべき違法はなく、請求人の主張には理由がない。
以上のことからすれば、本件調査が事前通知なく実施されたこと及び本件調査担当職員が行った調査結果の内容の説明について、本件各更正処分を取り消すべき違法はない。
(2) 争点2(本件各更正処分の理由の提示に不備があるか否か。)について
行政手続法第14条第1項本文が、不利益処分をする場合に同時にその理由を名宛人に示さなければならないとしているのは、名宛人に直接に義務を課し、又はその権利を制限するという不利益処分の性質に鑑み、行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨であると解されることから、当該処分の理由が、上記の趣旨を充足する程度に具体的に明示するものであれば、同項本文の要求する理由の提示として不備はないものと解するのが相当である。
本件各通知書には、別紙3のとおり、@請求人がP社から受領する売買代金について、請求人に回収リスクが生じないこと、AP社に販売した商品に係る瑕疵担保責任又は契約不適合責任を実質的にN社が負っていること、BP社に販売する商品の内容や売買代金などの取引条件はN社が決定していること、CP社に販売する商品のこん包、保管及び輸送並びに輸出手続等、販売に際し必要とされる一連の業務をN社が行っていること、また、DP社に販売する商品のこん包、保管及び輸送並びに輸出手続等に要した費用をN社が負担していることから、請求人がN社から○○○○を仕入れ、P社に対して輸出する取引に係る対価を享受するのは請求人ではなくN社であり、当該取引に係る資産の譲渡等はN社が行ったものとして消費税法第13条の規定を適用する旨が記載されている。
これらの記載は、原処分庁が本件各更正処分の判断の基礎とした事実関係及び根拠法令を示して、その判断過程を明らかにしたものといえ、これにより、請求人は、原処分庁による判断過程や本件各更正処分がどのような根拠に基づいてされたのかを知ることができるから、行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を名宛人に知らせて不服申立ての便宜を与えるという上記イの趣旨を充足するものといえる。
したがって、本件各更正処分の理由の提示は、行政庁の恣意抑制及び不服申立ての便宜という行政手続法第14条第1項本文の趣旨に照らし、同項本文の要求する理由の提示として不備はない。
請求人は、上記3の(2)の「請求人」欄のとおり、本件各通知書に記載された本件各更正処分の理由は、法令適用上の客観的な理由となっておらず、また、本件調査担当職員にとって都合の良い解釈や一方的な思い込みによる主観的な意見が記述されているのみであり、理由の提示の程度として、処分の適正化及び納税者の予見可能性を高めるものとはいえず、本件各更正処分の理由の提示に不備がある旨主張する。
しかしながら、上記ロのとおり、本件各通知書には、原処分庁が本件各更正処分の判断の基礎とした事実関係、根拠法令及びその判断過程が記載されており、請求人は、原処分庁による判断過程や本件各更正処分の根拠を知ることができるから、本件各更正処分に行政手続法第14条第1項本文に反する理由提示の不備は認められない。
したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
(3) 争点3(請求人は、本件各販売取引について資産の譲渡等に係る対価を享受しておらず、消費税法第13条の規定に基づき、請求人以外の者が本件各仕入取引に係る資産の譲受け及び本件各販売取引に係る資産の譲渡をしたものとして同法を適用すべきか否か。)について
消費税等は、事業者が行う資産の譲渡等(消費税法第4条《課税の対象》第1項)などに着目して課されるものであり、その納税義務者は課税資産の譲渡等を行った事業者であるところ、別紙2の9のとおり、同法第13条第1項は、資産の譲渡等を行った者が誰であるかについて、法律上資産の譲渡等を行ったとみられる者が単なる名義人であって、その資産の譲渡等に係る対価を享受せず、その者以外の者がその資産の譲渡等に係る対価を享受する場合には、その享受する者が資産の譲渡等を行ったものとして同法の規定を適用する旨規定し、いわゆる実質課税の原則について定めている。その趣旨は、担税力に応じた公平な税負担を実現するため、資産の譲渡等の法形式上の帰属主体と法律的実質的な帰属主体が一致しない場合においては、後者すなわち実質的に資産の譲渡等に係る対価を享受する者を資産の譲渡等の帰属者とするものと解される。
そして、資産の譲渡等に係る対価を享受する者が誰であるかについては、上記の消費税法第13条第1項の趣旨に鑑み、名義のみならず、取引に至る経緯、取引の実態及び関係者の認識等を総合して判断すべきであると解される。
請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、次の事実が認められる。
なお、請求人において、本件各仕入取引の仕入先がN社、本件各販売取引の販売先がP社となることは、本件各取引の開始時点で既に決まっていた。
本件各販売取引に係る資産の譲渡等の法形式上の帰属主体が請求人であることについて原処分庁と請求人との間に争いはなく、当審判所の調査及び審理の結果によっても、本件各販売取引に係る資産の譲渡等の法形式上の帰属主体は請求人であると認められる。
もっとも、上記イのことからすれば、法律的実質的に本件各販売取引に係る資産の譲渡等の対価を享受する者が請求人ではなくN社である場合は、N社を本件各販売取引に係る資産の譲渡等の帰属者と判定すべきであるから、以下、請求人が、法律的実質的に本件各販売取引に係る資産の譲渡等の対価を享受する者ではなかったと認められるか否かについて、検討する。
上記ロの(イ)のとおり、本件各取引はもともとN社とP社との間で行われていた取引であって、請求人において、本件各仕入取引の仕入先がN社、本件各販売取引の販売先がP社となることは本件各取引を開始する時点で決まっていた。
このことからすれば、請求人は、本件各取引に係る請求人以外の取引当事者の決定に関与しておらず、本件各取引は飽くまでN社とP社が取引当事者となることが前提とされた上で、N社とP社によって主導されることが予定されていたといえる。
しかしながら、実際には、上記1の(3)のロの(イ)のとおり、本件各取引に係る商品並びにその数量及び価格は、N社とP社との間で決定されていたのであって、当審判所の調査及び審理の結果によっても、請求人がN社から仕入れてP社に販売する商品の内容や数量について積極的に提案したり価格交渉をしたりした事実があったとはうかがわれないことから、上記ロの(ロ)のとおり、請求人が、N社とP社が決定した商品について、輸出の可否等を検討し、取引を行わないと判断することがあったとしても、輸出に伴うリスクを回避するための消極的な関与にすぎず、請求人は、本件基本契約書、本件支払契約書及び本件各売買契約書に係る商品の売買の当事者として本件各取引に関与していなかったというべきである。
請求人は、上記1の(3)のロの(ニ)のとおり、本件各販売取引に係る商品の積荷検査日の前日又は当日に、N社からパッキングリストの交付を受けるとともに、P社から発注書の交付を受け、同(ホ)のとおり、本件各販売取引に係る商品がこん包された全ての箱の10%以上を目安として積荷検査を行い、また、上記ロの(ハ)のとおり、積荷検査の際に商品内容又は数量等の差異が発見された場合、当該差異を補正した上で本件各売買契約書を取り交わしていた事実が認められる。
しかしながら、上記のとおり、積荷検査によって商品の現物の確認が実施された箱が限定的かつ過少な割合にとどまることや、上記1の(3)のロの(イ)のとおり、本件各取引に係る商品並びにその数量及び価格がN社とP社との間で決定されており、同(ニ)のとおり、請求人がN社からパッキングリストの交付を受けるのは積荷検査日の前日又は当日であったことからすると、本件各取引に係る商品の大部分については、請求人による積荷検査によっても商品の現物がどのようなものであるかが把握されないままP社に出荷されていたと認めるのが相当である。
上記1の(3)のハの(イ)のE及びFのとおり、本件基本契約書において、本件各仕入取引に係る商品の所有権は、商品の受渡しを完了した時点においてN社から請求人に移転し、受渡し前に生じた商品の滅失等一切の損害はN社の負担とされているところ、同ロの(ハ)及び(ホ)のとおり、本件各販売取引に係る商品の積荷検査はN社の指定する場所で行われ、同(ヘ)のとおり、積荷検査後に積荷検査の場所から直ちに運送業者に出荷されている。そして、上記1の(3)のハの(ハ)のCのとおり、本件各売買契約書において、請求人は商品の不適合に起因する返金のリスクを実質的に負担せず、同Dのとおり、請求人が運送業者に商品を引き渡した時点で、商品の消失又は損傷に関する全てのリスクがP社に移転することとされている。これらのことからすると、請求人は、N社からの本件各仕入取引に係る商品の引渡しを受け、運送業者への本件各販売取引に係る商品の引渡しまでの極めて僅かな間しか商品に関するリスクを負担しておらず、商品に関するリスクをほとんど負担していなかったといえる。
本件支払契約書において、請求人は、上記1の(3)のハの(ロ)のE及びHのとおり、本件各販売取引に係る商品の出荷前に代金の支払を受け、同Fのとおり、本件各販売取引に係る商品の代金を受け取るまでは本件各仕入取引に係る代金の支払を留保する権利を有し、同Iのとおり、本件各販売取引に係る商品の代金の受取の遅延等に起因する一切の損害等について責任を負わないこととされている。また、上記1の(3)のロの(ロ)及び(チ)のとおり、請求人は、本件各販売取引に係る代金を前金で受け取り、P社への商品の輸出の確認後、その前金の中から、本件各仕入取引に係る代金をN社に支払っていた。これらのことからすると、売買代金の決済に関するリスクを負担しているのはN社及びP社であり、請求人は売買代金の決済に関するリスクを負担していなかったといえる。
上記AないしDのとおり、請求人は、本件基本契約書、本件支払契約書及び本件各売買契約書に係る商品の売買の当事者として本件各取引に関与しておらず、本件各取引に係る商品の大部分は、請求人によって現物の把握がされないままP社に出荷されていたと認められる上、請求人は、商品に関するリスクをほとんど負担しておらず、売買代金の決済に関するリスクも負担していなかったことからすれば、本件各取引の実態は、N社を実質的な売主、P社を実質的な買主とする二者間の売買取引であったとみるのが相当というべきである。
上記(ロ)のとおり、請求人は本件各取引の取引当事者の決定に関与しておらず、本件各取引は飽くまでN社とP社が本件各取引の取引当事者となることが前提とされた上で、N社とP社によって主導されることが予定されていたといえ、また、上記(ハ)のEのとおり、現に、本件各取引は、N社を実質的な売主、P社を実質的な買主とする二者間の売買取引であったことからすれば、N社及びP社において、本件各取引は、N社を実質的な売主、P社を実質的な買主とする二者間の売買取引であるという認識を有していたと認められる。
請求人は、上記1の(3)のハのとおり、本件各仕入取引に係る買主及び本件各販売取引に係る売主として、N社及びP社との間で本件各取引に係る各契約書を取り交わしており、また、同(4)のイのとおり、本件各元帳において、本件各仕入取引については、「仕入高」勘定に計上し、本件各販売取引については、「売上高」勘定に計上しており、本件各仕入取引の買主及び本件各販売取引の売主として経理処理を行っていたと認められる。
一方で、上記ロの(イ)のとおり、本件各取引を開始した目的は、N社における○○○○の遅れによる資金負担の軽減及び信用力の向上であり、また、上記1の(3)のロの(ヌ)のとおり、請求人は、本件各取引に係る商品の内容や金額の多寡に関係なく、本件各取引によって本件各販売取引に係る代金の○○相当額の利益を得ていた。そして、上記(ロ)のとおり、本件各取引の開始時点で請求人の取引先は決まっており、請求人は、その決定に関与しておらず、本件各取引に係る商品をより安価に仕入れられる仕入先や、より高額で販売できる販売先を選定できるわけではなく、また、上記(ハ)のとおり、仕入れた商品の大部分について現物を確認しないまま出荷し、商品に関するリスクをほとんど負担しておらず、売買代金の決済に関するリスクも負担していないことも併せて考えれば、請求人は、本件各取引の売買によって利益を得るというより、本件各取引の輸出者になることによって、商品の売買について生じるリスクを負担することなく一定の利益を得ることのみを目的として本件各取引を行っていたと認められる。
以上のことを総合的に勘案すれば、請求人が、本件各仕入取引に係る買主及び本件各販売取引に係る売主として本件各取引に係る各契約書を取り交わし、経理処理を行っていたとしても、請求人において、本件各取引がN社を実質的な売主、P社を実質的な買主とする二者間の売買取引であったとの認識があったというべきである。
上記(ロ)のとおり、請求人は、本件各取引に係る請求人以外の取引当事者の決定に関与しておらず、本件各取引は飽くまでN社とP社が取引当事者となることが前提とされた上で、N社とP社によって主導されることが予定されていたものであり、上記(ハ)のとおり、現に、本件各取引はN社を実質的な売主、P社を実質的な買主とする二者間の売買取引というべきであって、上記(ニ)のとおり、本件各取引の各関係者においても、そのような認識を有していたと認められる。
以上を総合して判断すれば、法律的実質的にみて、請求人は、本件各販売取引について資産の譲渡等に係る対価を享受しておらず、消費税法第13条の規定に基づき、請求人以外の者が本件各仕入取引に係る資産の譲受け及び本件各販売取引に係る資産の譲渡をしたものとして同法を適用すべきである。
しかしながら、上記イのとおり、消費税法第13条の趣旨は、資産の譲渡等の法形式上の帰属主体と法律的実質的な帰属主体が一致しない場合においては、後者すなわち実質的に資産の譲渡等に係る対価を享受する者を資産の譲渡等の帰属者とするものと解されるところ、同条を根拠として行われた本件各更正処分は、私法上の効力を否定するものではないから、上記
したがって、請求人の上記主張にはいずれも理由がない。
しかしながら、別紙2の8のとおり、消費税法第7条第1項柱書及び同項第1号の規定に基づき輸出免税の適用が認められるのは、事業者が国内において行う課税資産の譲渡等のうち輸出取引を行った場合であるところ、上記ハの(ホ)のとおり、同法第13条の規定に基づき、請求人以外の者が本件各販売取引に係る資産の譲渡をしたものとして同法を適用すべきであるから、たとえ請求人において輸出許可通知書を保存し、請求人が輸出申告名義人となっていたとしても、本件各販売取引について、同条第1項にいう単なる名義人である請求人において輸出免税の適用を受ける余地はない。
したがって、請求人の主張には理由がない。
しかしながら、上記ロの(ニ)のとおり、本件各応答記録書には、本件各応答記録書に係る各回答者が、誤りがないことを確認して本文末尾及び各ページに署名した旨、質問調査を行った日付並びに質問者及び記録者の所属、職名及び氏名の記載があるとともに、各ページの「確認欄」に各回答者の署名がある。そして、当審判所の調査及び審理の結果によっても、当該各署名が強制されたものであるなどの事情は認められないから、本件各応答記録書に係る各回答者は、本件各応答記録書のとおりに申述したものと認められる。また、V氏に係る質問応答記録書がないことをもって本件各応答記録書の信用性が否定されるものでもない。
したがって、請求人の主張には理由がない。
(4) 争点4(本件各更正処分は課税の公平性を欠く不当な処分であるか否か。)について
しかしながら、課税の平等とは、「課税の根拠となる法を適用すべき者に対しては等しく適用すべし」とすることであって、仮に法の適用を免れる者があったとしても、そのことを理由に、他の者に対して法を正しく適用することができなくなるわけではなく、また、法を正しく適用することが課税の平等に反することにはならないことも明らかというべきである。
したがって、本件各更正処分が課税の公平性を欠く不当な処分であるとはいえず、この点に関する請求人の主張には理由がない。
(5) 争点5(本件各申告が過少申告となったことについて、通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」があるか否か。)について
通則法第65条に規定する過少申告加算税は、過少申告による納税義務違反の事実があれば、原則として、その違反者に対して課されるものであり、これによって、当初から適正に申告し納税した納税者との間の客観的な不公平の実質的な是正を図るとともに、過少申告による納税義務違反の発生を防止し、適正な申告納税の実現を図り、もって納税の実を挙げようとする行政上の措置である。
このような過少申告加算税の趣旨に照らせば、過少申告があっても例外的に過少申告加算税が課されない場合として通則法第65条第4項第1号が定めた「正当な理由」があると認められるものがある場合とは、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり、上記のような過少申告加算税の趣旨に照らしても、なお、納税者に過少申告加算税を課することが不当又は酷になる場合をいうものと解するのが相当である。
請求人は、上記3の(5)の「請求人」欄のとおり、本件各申告を行った当時に適用されていた消費税法令、通達及び本件質疑応答事例等を総合的に判断しても、納税者が原処分庁の主張するような解釈をすることは不可能であるから、通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」がある旨主張する。
しかしながら、本件質疑応答事例には、上記1の(3)のニのとおり、輸出申告書に輸出者として記載された者とは別に実際の輸出者がある場合において、一定の要件を充足することを条件に、実際の輸出者に輸出免税の適用を認める旨記載されているところ、当該記載は、消費税法第7条の規定の文言から、同条第1項は、取引の主体ではなく、取引の内容・態様に着目して消費税の免除の要件を定めていることが明らかであり、同項により消費税を免除されるには、同法上、事業者が国内において行う課税資産の譲渡等のうち同項各号に掲げるものに該当するものを行ったとされる必要があることを前提としているものと解される。
これを本件についてみると、上記(3)のハの(ホ)のとおり、法律的実質的にみて、請求人は、本件各販売取引について資産の譲渡等に係る対価を享受しておらず、消費税法第13条の規定に基づき、請求人以外の者が本件各販売取引に係る資産の譲渡をしたものとして同法を適用すべきであるから、たとえ、請求人が輸出申告書の名義人となっていたとしても、請求人は、同法上、本件各販売取引に係る資産の譲渡を行ったものとはされず、輸出免税が適用される余地はない。
そうすると、仮に請求人が消費税法令、通達及び本件質疑応答事例等の内容を基に、請求人に輸出免税の適用があると判断して本件各申告を行ったとしても、それは結局のところ請求人の税法の不知又は誤解に基づくものといわざるを得ず、そのことをもって、真に請求人の責めに帰することのできない客観的な事情があり、過少申告加算税の趣旨に照らしてもなお請求人に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合に当たるとはいえない。
以上のとおり、請求人の主張には理由がなく、当審判所の調査の結果によっても、ほかに請求人に通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」があると認められる事実は見当たらない。
したがって、本件各申告が過少申告となったことについて、通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」があるとは認められない。
(6) 本件各更正処分の適法性について
上記(1)のハの(ハ)のとおり、本件調査に本件各更正処分を取り消すべき違法はなく、上記(2)のロのとおり、本件各更正処分の理由の提示に不備はなく、また、上記(3)のハの(ホ)のとおり、法律的実質的にみて、請求人は、本件各販売取引について資産の譲渡等に係る対価を享受しておらず、消費税法第13条の規定に基づき、請求人以外の者が本件各仕入取引に係る資産の譲受け及び本件各販売取引に係る資産の譲渡をしたものとして同法を適用すべきである。そして、上記(4)のとおり、本件各更正処分が課税の公平性を欠く不当な処分であるとはいえない。
また、上記1の(3)のロの(ヌ)のとおり、請求人は本件各販売取引に係る代金の○○相当額の利益を得ているところ、上記(3)のロの(イ)のとおり、請求人が本件各取引を開始したのは、○○○○の遅れによる資金負担の軽減及び信用力向上を図りたいというN社からの要請を受けたことによるものであり、上記1の(3)のロ及びハのとおり、請求人は、本件各取引に係る各契約書を取り交わすなどして、法形式上の本件各仕入取引に係る買主及び本件各販売取引に係る売主となり、同ロの(リ)のとおり、請求人が本件各販売取引に係る輸出許可通知書における輸出者となっていることからすれば、請求人が得た当該利益は、請求人がN社のために本件各販売取引に係る法形式上の輸出者となることの対価、すなわち、N社に対する役務の提供の対価と認められる。
以上を前提に、請求人の本件各課税期間の消費税等の納付すべき税額を計算すると、それぞれ別表5の「納付すべき消費税額」欄及び「納付すべき地方消費税額」欄の「審判所認定額」欄の額となり、いずれも原処分における額を上回る。
そして、本件各更正処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
したがって、本件各更正処分はいずれも適法である。
(7) 本件各賦課決定処分の適法性について
上記(6)のとおり、本件各更正処分はいずれも適法であり、また、上記(5)のロのとおり、本件各申告が過少申告となったことについて、通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」があるとは認められない。
これに基づき、当審判所において、請求人の本件各課税期間の消費税等の過少申告加算税の額を計算すると、本件各賦課決定処分における過少申告加算税の各金額といずれも同額となる。
また、本件各賦課決定処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
したがって、本件各賦課決定処分はいずれも適法である。
(8) 結論
よって、審査請求は理由がないから、これを棄却することとする。
別表1 審査請求に至る経緯(消費税等)(省略)
別表2 本件各元帳(「売上高」勘定)の内容(省略)
別表3 本件各元帳(「仕入高」勘定)の内容(省略)
別表4 本件各取引による請求人の利益の額(省略)
別表5 審判所認定額(省略)
別紙1 原処分(省略)
別紙3 本件各通知書に記載された更正の理由の要旨(省略)