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(令和7年9月8日裁決)
《裁決書(抄)》
1 事実
(1) 事案の概要
本件は、農業を営む審査請求人(以下「請求人」という。)が、自家栽培したさつま芋を干し芋に加工し販売する事業は、簡易課税制度に係る事業区分において第二種事業に該当するとして消費税等の確定申告をしたところ、原処分庁が、請求人の当該事業は第三種事業に該当するとして更正処分等を行ったのに対し、請求人が原処分の全部の取消しを求めた事案である。
(2) 関係法令等
関係法令等は別紙のとおりである。
なお、別紙で定義した略語については、以下、本文及び別表においても使用する。
(3) 基礎事実
当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
なお、請求人の本件各課税期間の各基準期間における課税売上高は、いずれも5,000万円以下であった。
耕種農業(水稲、陸稲、麦類、雑穀、豆類、いも類、野菜、果樹、工芸農作物、飼肥料作物、花き、薬用作物、採種用作物及び桑の栽培をいう。)を行う事業所が分類される。
有機又は無機の物質に物理的、化学的変化を加えて新たな製品を製造し、これを卸売等する事業所が分類される。
農家が同一構内で製造活動を行っている場合、主として自家栽培又は取得した原材料を使用して製造又は加工を行っている場合は農業に分類される。
ただし、同一構内に作業所等があり、その製造活動に専従の常用従業者がいるときは製造業に分類される。
(4) 審査請求に至る経緯
なお、請求人は、本件各課税期間の消費税等の各確定申告に当たり、本件干し芋事業が第二種事業(農業のうち飲食料品の譲渡を行う部分)に該当することを前提として、控除対象仕入税額を計算した。
2 争点
本件干し芋事業は、消費税法施行令第57条第5項第3号に規定する第三種事業に分類される製造業に該当するか否か。
3 争点についての主張
| 原処分庁 | 請求人 |
|---|---|
|
日本標準産業分類の総説によれば、農家が主として自家栽培した原材料を使用して製造又は加工を行っている場合は、農業に分類されるが、 請求人の本件干し芋事業に係る状況は、次のとおりであるから、本件干し芋事業は、日本標準産業分類上、製造業に分類され、消費税法施行令第57条第5項第3号に規定する第三種事業に分類される製造業に該当する。 |
原処分庁が主張する日本標準産業分類の総説の記載は、同一構内に農業全般に使用する倉庫や設備のほかに、製造又は加工にのみ使用する建物があり、かつ、その建物内で加工に専従する者がいる場合は、農業に分類されず、製造業に分類されると解すべきである。 請求人の本件干し芋事業に係る状況は、次のとおりであるから、本件干し芋事業は、日本標準産業分類上、農業に分類され、消費税法施行令第57条第5項第3号に規定する第三種事業に分類される製造業に該当しない。 |
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(1) 作業所等について
請求人は、自宅敷地内に建てた建物(以下「本件建物」という。)に、干し芋の加工のための機械を設置し、本件建物において、さつま芋を洗い、蒸し、スライスするといった干し芋の加工作業を行っている。 したがって、請求人は、本件干し芋事業について、同一構内に作業所等を有していると認められる。 |
(1) 作業所等について
上記のとおり、作業所等とは、製造又は加工にのみ使用する建物をいうと解すべきであるところ、本件建物を作業所等であると認定するためには、芋洗機、ボイラー、乾燥機等の一連の機械装置が常置されており、常時あるいは少なくとも半年以上の期間、加工の用に供しているような利用状況であることが必要である。 本件建物は、多用途に使用する目的で建築したものであり、干し芋を加工する期間のみ一時的に使用するものであるから、臨時の作業所であり、日本標準産業分類の総説における作業所等には該当しない。 したがって、請求人は、本件干し芋事業について、同一構内に作業所等を有しているとは認められない。 |
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(2) 製造活動に専従する常用従業者について
総務省統計局の「経済センサス−基礎調査 用語の解説」において、常用雇用者とは、期間を定めずに雇用されている者又は1か月以上の期間を定めて雇用されている者のことをいうと示されている。 請求人は、干し芋の加工作業のためにおおむね3か月間程度の期間、従業員(以下「本件臨時従業員」という。)を雇用していることから、本件臨時従業員は、上記の常用雇用者に該当する。 したがって、本件干し芋事業について、製造活動に専従の常用従業者がいると認められる。 |
(2) 製造活動に専従する常用従業者について
日本標準産業分類の総説における製造活動に専従する常用従業者がいる場合とは、年に相当期間加工作業をする場合を指すのであり、本件臨時従業員のように干し芋の加工時期のみ雇用され加工作業に従事している者は、常用従業者に該当しない。 したがって、本件干し芋事業について、製造活動に専従の常用従業者がいるとは認められない。 |
4 当審判所の判断
(1) 法令解釈等
消費税法基本通達13−2−4は、消費税法施行令第57条第5項第3号の規定により第三種事業に該当することとされている事業の範囲は、おおむね日本標準産業分類の大分類に掲げる分類を基礎として判定する旨定めている。
日本標準産業分類は、統計法に基づいて総務大臣が定める、統計調査の結果を産業別に表示する場合の統計基準として、事業所において社会的な分業として行われる財及びサービスの生産又は提供に係る全ての経済活動を分類するものであり、統計の正確性と客観性を保持し、統計の相互比較性と利用の向上を図ることを目的として設定されたものであるから、その分類は社会通念に基づく客観的なものということができる。そうすると、簡易課税制度の公平な適用という観点からしても、日本標準産業分類の大分類に掲げる分類を基礎として第三種事業の範囲を判定することには合理性があると認められるから、消費税法基本通達13−2−4の定めは当審判所も相当と認める。
(2) 認定事実
請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、次の事実が認められる。
本件干し芋事業に係る干し芋の加工は、概要、次の(イ)から(ト)までの各工程により構成されている。
なお、次の(ロ)から(ホ)までの各工程は、本件建物で行われている。
自家栽培したさつま芋を、自宅敷地外にある倉庫に搬入し、キュアリング(さつま芋の傷を修復し、腐敗を防ぐための処理)を行う。
次に、キュアリングを施したさつま芋を、干し芋の加工作業に適した状態にするために、上記倉庫内にて一定の温度管理の下、1か月程度保存する。
上記(イ)により保存したさつま芋を倉庫から搬出し、本件建物において、移動式の芋洗機を使用して洗浄する。
上記(ロ)により洗浄したさつま芋を蒸籠に入れ、本件建物に備え付けられているボイラーにて発生させた蒸気により蒸す。
なお、さつま芋を入れ、積み重ねた蒸籠を持ち上げる際は、本件建物に備え付けられている電動ウインチを使用する。
上記(ハ)により蒸したさつま芋の皮をむく。
上記(ニ)により皮をむいたさつま芋を、移動式のスライス器具の鉄線部分に押し通しスライスする。
上記(ホ)によりスライスしたさつま芋を、木枠の内側に網を張ったパレットに並べ、当該パレットを台車に収納する。パレットを収納した台車をビニールハウス(自宅敷地外に合計12棟保有)に搬入した後、ビニールハウス内の台の上にパレットごと並べ、7日程度乾燥させる。
上記(ヘ)により乾燥させたさつま芋を選別して梱包し、干し芋として問屋等に出荷する。
本件干し芋事業に係るさつま芋の栽培時期及び干し芋の加工時期は、次のとおりである。
3月中旬から種芋の準備をし、10月に収穫するまでの約7か月間である。
11月下旬から翌年2月末までの約3か月間である。
なお、11月下旬から翌年2月末までの約3か月間においては、本件建物は専ら干し芋の加工のために使用され、それ以外の時期においては、本件栽培事業の活動のために使用されている。
本件栽培事業及び本件干し芋事業に係る従業員等及び従事内容は次のとおりであり、当該従業員等は、請求人とともに各作業を行う。
なお、本件臨時従業員は、上記イの各工程に係る作業(運搬等、力仕事を除く。)にのみ従事している。
(3) 検討及び請求人の主張について
上記(1)のとおり、消費税法施行令の規定により第三種事業に該当することとされている事業の範囲は、消費税法基本通達13−2−4の定めにより、おおむね日本標準産業分類の大分類に掲げる分類を基礎として判定することとなるところ、上記1(3)ロのとおり、日本標準産業分類によれば、農家が自家栽培した原材料を使用して製造活動を行っている場合は原則として農業に分類されるが、
したがって、本件干し芋事業が製造業に該当するか否かを判断するためには、まず、本件建物が作業所等に該当するか否かを検討する必要があるため、以下検討する。
上記(2)イ(ハ)のとおり、本件建物には、蒸し工程で必要となるボイラー及び電動ウインチが備え付けられているほか、上記(2)イ(ロ)及び(ホ)のとおり、洗い工程やスライス工程では、芋洗機やスライス器具といった移動式の器具等が使用されていることが認められる。また、上記(2)ハのとおり、請求人及び本件各従業員は、干し芋の加工工程のうち上記(2)イ(ロ)から(ホ)までの各工程において、本件建物で各作業をしている。そうすると、本件建物は、干し芋の加工に使用する機械・器具等が設置され、本件干し芋事業に係る干し芋の加工において請求人及び本件各従業員による作業のために使用されており、作業所等の機能を有していたといえる。
そして、上記(2)ロのとおり、本件建物は、干し芋の加工時期である約3か月間においては、干し芋の加工のために使用されていたと認められる。
したがって、本件建物は、本件干し芋事業に係る作業所等に該当するというべきである。
これに対し、請求人は、作業所等であるというためには、一連の機械装置が常置され、少なくとも半年以上の期間、加工の用に供している建物であることを要するとの見解を前提として、本件建物は多用途に使用する目的で建築したものであり、干し芋を加工する期間のみ一時的に使用するものであることから作業所等に該当しない旨主張するが、当該主張は、請求人の独自の見解を前提とする主張であり、採用できない。
次に、本件臨時従業員が製造活動に専従する常用従業者に該当するか否かについて検討する。
上記(2)ハ(ハ)のとおり、請求人は、本件干し芋事業に係る干し芋の加工を行っている11月下旬から翌年2月末までの一定程度の期間において、本件臨時従業員を雇用して、干し芋の加工作業にのみ従事させていることからすると、請求人は、当該期間中において、本件臨時従業員を当該加工作業に専従の常用従業者として雇用していると認めるのが相当である。
したがって、本件臨時従業員は、本件干し芋事業に係る製造活動に専従する常用従業者に該当するというべきである。
これに対し、請求人は、製造活動に専従する常用従業者がいる場合とは、年に相当期間(少なくとも3か月程度を優に超える期間をいう趣旨と解される。)加工作業をしている場合を指すとの見解を前提に、本件臨時従業員は専従する常用従業者に該当しない旨主張するが、当該主張は、請求人の独自の見解を前提とする主張であり、採用できない。
上記ロ及びハのとおり、本件干し芋事業に係る干し芋の加工においては、
(4) 本件各更正処分の適法性について
上記(3)のとおり、本件干し芋事業は、消費税法施行令第57条第5項第3号に規定する第三種事業に分類される製造業に該当し、同条第1項第3号の規定により100分の70のみなし仕入率が適用されるところ、これを前提に請求人の本件各課税期間の課税標準額及び納付すべき消費税等の額を算定すると、いずれも本件各更正処分の金額と同額となる。
また、本件各更正処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
したがって、本件各更正処分はいずれも適法である。
(5) 本件各賦課決定処分の適法性について
上記(4)のとおり、本件各更正処分はいずれも適法であり、また、本件各更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が本件各更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条《過少申告加算税》第5項第1号に規定する正当な理由があるとは認められない。
そして、当審判所においても、本件各更正処分に係る過少申告加算税の額は、本件各賦課決定処分における金額といずれも同額であると認められる。
したがって、本件各賦課決定処分はいずれも適法である。
(6) 結論
よって、審査請求は理由がないから、これを棄却することとする。
別表 審査請求に至る経緯(省略)