ホーム >> 公表裁決事例集等の紹介 >> 公表裁決事例 >> 令和7年10月分から12月分 >>(令和7年10月23日裁決)
(令和7年10月23日裁決)
《裁決書(抄)》
1 事実
(1) 事案の概要
本件は、原処分庁が、滞納者から不動産の贈与を受けた審査請求人(以下「請求人」という。)に対して第二次納税義務の納付告知処分を行ったところ、請求人が、当該贈与により受けた利益の限度は固定資産税評価額から算出される実勢価格等であるなどとして、原処分の一部の取消しを求めた事案である。
(2) 関係法令等
関係法令等は、別紙のとおりである。
なお、別紙で定義した略語については、以下、本文及び別表においても使用する。
(3) 基礎事実及び審査請求に至る経緯
当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
なお、請求人は、本件各土地につき、本件贈与時の現況から、それらの各地目を田として、評価通達36及び同37に定める純農地に係る倍率方式(固定資産税評価額に国税局長が定める倍率を乗じて評価する方法をいい、以下「倍率方式」という。)を適用して、別表2の「評価通達評価額」欄のとおり、評価額を算定している。
また、請求人は、当該申告書に、租税特別措置法第70条の4《農地等を贈与した場合の贈与税の納税猶予及び免除》(平成15年法律第8号による改正前のもの。)第20項に規定する「農地等の贈与税の納税猶予税額の計算書」等を添付し、贈与税の納税を猶予された。
本件滞納者は、令和4年11月○日に死亡した。本件滞納者の法定相続人全員が相続の放棄をしたため、本件滞納者の相続財産については民法第951条の規定により相続財産法人(以下「本件相続財産法人」という。)が成立し、本件滞納国税の納付義務は、通則法第5条《相続による国税の納付義務の承継》第1項の規定に基づき、本件相続財産法人に承継された。後述する納付告知の時点における本件滞納国税の総額は、別表3のとおり、○○○○円であった。
G税務署長は、本件滞納者が死亡したことにより、租税特別措置法第70条の4第34項の規定に基づき、納税を猶予していた請求人の上記ニの贈与税を免除した。
原処分庁は、本件告知処分において、請求人が受けた利益の限度の額(○○○○円)を、請求人が提出した上記ニの平成14年分贈与税の申告書に記載された本件各土地の合計価額(○○○○円)から、本件各土地の所有権移転登記に係る登録免許税の額○○○○円及び不動産取得税の額○○○○円(合計○○○○円)を控除して算定した。
2 争点
請求人が、本件贈与により「受けた利益」(徴収法第39条第1項)の額はいくらか。
3 争点についての主張
| 原処分庁 | 請求人 |
|---|---|
| 次のとおり、請求人が本件贈与により「受けた利益」の額は、○○○○円である。 | 次のとおり、請求人が本件贈与により「受けた利益」の額は、本件各土地の平成13年度固定資産税評価額から算出される実勢価格○○○○円又は請求人が依頼した不動産業者による査定額である○○○○円に基づいて計算するべきである。 また、請求人の「受けた利益」の額を○○○○円であるとする原処分庁の判断は、当該金額が不相当に高額であるため違法であり、審判所において、不動産鑑定士による本件各土地の鑑定評価を実施して、その鑑定評価額を超える部分を取り消すべきである。 |
| (1) 徴収法第39条に規定する第二次納税義務に係る限度額の算定については、滞納者の親族が滞納者による無償譲渡等の処分により利益を受けた場合には、当該親族は、当該処分により受けた利益を限度として、第二次納税義務を負うものと規定されており、かつ当該受けた利益が金銭以外のものであるときには、無償譲渡等の処分がされた時の現況によるそのものの価額から、そのものの譲受けのために支払った費用(登録免許税や不動産取得税など)を控除した額を当該受けた利益の額とすると定められている。 | (1) 本件各土地は、いずれも市街化調整区域内で、かつ、農業振興地域内の農地であり、法令上の制約により取引の相手方が限られ、使途も農業用に限定されており、収益性が極めて乏しい土地であるから、そもそも流通性が乏しく、通常の取引価額が極めて低額である土地である。 |
| (2) これを本件に当てはめると、請求人が受けた利益○○○○円は、本件贈与が行われた平成14年当時における本件各土地の価額(請求人がG税務署長に提出した平成14年分贈与税の申告書の「課税される財産の価額」に記載されている本件各土地の価額)○○○○円から、請求人が本件各土地の取得に際して負担した費用である登録免許税の額及び不動産取得税の額の合計額○○○○円を控除した額である。 | (2) 本件各土地は本件贈与当時から一般農地であるため、固定資産税評価額は近隣農地の実際の取引価格に限界収益修正率0.55を乗じて算出されている。そして、本件各土地の平成13年当時の固定資産税評価額は合計○○○○円であるから、この金額を当該修正率で割り戻した金額○○○○円をもって、徴収法第39条の「通常の取引価格」であるということができる。 |
| (3) 本件贈与時の本件各土地の時価として、評価通達に定められた固定資産税評価を基準とする算定額は相当であり、請求人は、倍率方式による算定額は相当でないとする具体的な法的根拠を示していない。 | (3) 請求人が依頼した不動産業者による令和6年7月16日時点での本件各土地の査定額は○○○○円である。この金額は、平成13年当時の固定資産税評価額の合計額が○○○○円、令和6年度の固定資産税評価額の合計額が○○○○円であり、両者の評価額に大差がないことからすれば、本件贈与当時の本件各土地の評価額も現時点の査定額と大差のない金額であると推測できる。 |
| (4) 本件告知処分の額である○○○○円は、平成13年当時の固定資産税評価額の合計額○○○○円の約26倍もの金額であり、あまりにも過大な金額である。 | |
| (5) 原処分庁は、倍率方式による算定額が正しいとする具体的な法的根拠を示していない。 | |
| (6) 徴収法第39条の規定に基づく第二次納税義務に係る限度額の算定方法は法定されていないことから、倍率方式以外の方法を主張しても何ら法令に違反するものではない。 倍率方式は、贈与税の申告をするために用いられるものであり、徴収法第39条の規定に基づく第二次納税義務の場合にまで適用される時価算定のルールではない。 そのため、徴収法第39条の規定に基づく時価算定を行うために、審判所において、不動産鑑定士による本件各土地の鑑定評価を実施して、それにより認定された評価額を、同条第1項に規定する「受けた利益」の額と認定すべきである。 |
|
4 当審判所の判断
(1) 法令解釈
上記の「受けた利益」の額に係る時価の算定方法については、徴収法及び徴基通に定めがないものの、徴基通第98条関係2《公売財産の評価》には、公売財産の評価に当たって、財産の所在する場所の環境、種類、規模、構造等、その財産の特性に応じ、取引事例比較法、収益還元法、原価法その他の評価方法を適切に用いるとともに、公売財産の市場性、収益性、費用性その他の公売財産の価格を形成する要因を適切に考慮し、その財産の時価に相当する価額を求めるものとされており、この定めは、当審判所においても相当であると認められるから、徴収法第39条に規定する「受けた利益」の額の算定に当たっても、公売財産の評価に準じて算定するのが相当である。
(2) 認定事実
請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、次の事実が認められる。
本件土地4は、間口30m、奥行61m、地積1,868uの平坦な長方形地であり、本件土地5は、間口30m、奥行61m、地積1,815uの平坦な長方形地であり、本件土地6は、間口30m、奥行61m、地積1,850uの平坦な長方形地であり、いずれも西側で幅員約4mの舗装された農道に接している。
(3) 当てはめ
上記1の(3)のハ、ホ及びヘのとおり、本件贈与は無償譲渡等の処分に該当し、本件告知処分の時点において、本件滞納国税につき徴収不足が認められ、当該徴収不足は本件贈与に基因すると認められ、また、同ハ及びホのとおり、本件贈与は、本件滞納国税の法定納期限の1年前の日以後に行われているから、徴収法第39条に規定する第二次納税義務の成立要件を満たしている。
したがって、請求人には、本件贈与により、徴収法第39条に規定する本件滞納国税の第二次納税義務が成立する。
上記(1)のロによれば、本件各土地については、それぞれの特性に応じ、取引事例比較法、収益還元法、原価法その他の評価方法を適切に用いて、本件各土地の価格を形成する要因を適切に考慮して時価に相当する価額を求めることになり、また、本件各土地が農地(田)であり、一般的な評価方法が確立している財産であることに照らし、当審判所において、本件各土地の本件贈与時点における時価に相当する価額を求めるため、不動産鑑定士に対して鑑定評価を依頼したところ、その鑑定評価(以下「審判所鑑定評価」といい、審判所鑑定評価に係る金額を「審判所鑑定評価額」という。)は、別表4、別表5−1及び別表5−2のとおりであった。
本件土地1の審判所鑑定評価の内容は、別表4のとおりであり、取引事例比較法を適用し、時点修正等を施し、個別的要因の標準化を行った上で、埋蔵文化財包蔵地の指定を含む宅地化条件に係る地域要因の比較を行って標準的画地の比準価格を査定し、その比準価格に本件土地1に係る個別格差率を乗じて本件土地1の比準価格とし、鑑定評価額を○○○○円と算定している。
このように、本件土地1の鑑定評価額は、当該比準価格を標準として決定されており、その基礎となる事実関係に誤りがあるとも、その評価の手法及び過程に特に不合理な点があるとも認められない。
本件土地2から6までの審判所鑑定評価の内容は、別表5−1及び別表5−2のとおりであり、取引事例比較法を適用し、時点修正等を施し、個別的要因の標準化を行った上で、宅地化条件に係る地域要因の比較を行って標準的画地の比準価格を査定している。
また、別表5−2のとおり、上記の比準価格に本件土地2から6までの個別格差率を乗じて同各土地の比準価格とし、鑑定評価額を算定しており、本件土地2については、コンクリート舗装及びトレーラー倉庫の撤去費用も個別格差率として加味した鑑定評価額を○○○○円、本件土地3については、トレーラー倉庫の撤去費用も個別格差率として加味した鑑定評価額を○○○○円、本件土地4の鑑定評価額を○○○○円、本件土地5の鑑定評価額を○○○○円、本件土地6の鑑定評価額を○○○○円、合計金額○○○○円と算定しているところ、当該各鑑定評価額は、上記の標準的画地の比準価格と農業会議による調査価格との整合性も考慮して決定されており、その基礎となる事実関係に誤りがあるとも、その評価の手法及び過程に特に不合理な点があるとも認められない。
上記(イ)及び上記(2)のハのとおり、請求人が「受けた利益」の額は、別表6の「審判所認定額」欄のとおり、本件贈与時の現況による本件各土地の価額○○○○円から、譲受けに係る直接費用○○○○円を控除した○○○○円となる。
(4) 請求人の主張について
請求人は、上記3の「請求人」欄のとおり、請求人が「受けた利益」の額は、本件各土地の平成13年度固定資産税評価額から算出される実勢価格○○○○円又は請求人が依頼した不動産業者による査定額である○○○○円に基づいて計算するべきであり、原処分庁が、請求人の「受けた利益」の額を○○○○円と判断したことは、違法である旨主張する。
しかしながら、上記(3)のロの(イ)のとおり、本件各土地の本件贈与時点における時価に相当する価額は、審判所鑑定評価によるべきであり、原処分庁の主張額は審判所鑑定評価額の範囲内であるから、請求人の主張は理由がない。
(5) 請求人のその他の主張について
請求人は、本件各土地の評価額は、特別な事情がない限り、倍率方式による金額でしか贈与税の申告は認められないため、便宜上、倍率方式で贈与税の申告をしたまでであり、平成14年分の贈与税の申告書に記載した金額は、請求人が自認したものとはいえない旨主張する。
しかしながら、上記(3)のロの(イ)のとおり、審判所鑑定評価においては、請求人が自認したことは考慮要素としておらず、贈与税の申告額をもって請求人の「受けた利益」の額が定まるわけではないから、請求人の主張は、同人の「受けた利益」の額の算定に関係しないものである。
(6) 原処分の適法性について
上記(3)のロのとおり、請求人が「受けた利益」の額は○○○○円であり、上記1の(3)のトのとおり、本件告知処分において請求人が第二次納税義務を負うとされた○○○○円を上回る。また、本件告知処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠書類等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
したがって、本件告知処分は適法である。
(7) 結論
よって、審査請求は理由がないから、これを棄却することとする。
別表1 本件各土地の内訳(省略)
別表2 請求人及び原処分庁の本件各土地の評価額(省略)
別表3 本件滞納国税の明細(省略)
別表4 審判所鑑定評価額の算定手順の概要(本件土地1)(省略)
別表5−1 審判所鑑定評価額の算定手順の概要(本件土地2から6まで)(省略)
別表5−2 審判所鑑定評価額の一覧(本件土地2から6まで)(省略)
別表6 請求人が「受けた利益」の額(省略)