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(平4.12.9、裁決事例集No.44 41頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

 審査請求人(以下「請求人」という。)は会社役員であるが、昭和63年分、平成元年分及び平成2年分(以下「各年分」という。)の所得税の青色の確定申告書に次表のとおり記載して、それぞれ法定申告期限までに申告した。

(単位:円)
年分
項目
昭和63年分 平成元年分 平成2年分
総所得金額 38,177,384 24,628,522 18,028,498
内訳 事業所得の金額 △797,315 △30,142,619 △30,470,074
不動産所得の金額 30,138,699 44,852,141 37,947,572
給与所得の金額 8,836,000 9,919,000 10,432,000
雑所得の金額 119,000
分離長期譲渡所得の金額 471,500
源泉徴収税額 2,389,410 2,546,790 2,040,434
納付すべき税額 10,671,500 4,683,200 2,376,500

(注)「事業所得の金額」欄の△印は損失の金額を示す。以下同じ。

 

 その後、請求人は、昭和63年分について、寄付金控除のための添付書類の入手ができないとして、寄付金控除額を零円、納付すべき税額を11,671,500円と記載した修正申告書を平成元年5月19日に提出した。
 原処分庁は、これに対し、平成4年3月11日付で各年分についてそれぞれ次表のとおり更正及び過少申告加算税の賦課決定をした。

(単位:円)
区分
年分
項目
昭和63年分 平成元年分 平成2年分
更正 総所得金額 43,590,673 54,771,141 48,379,572
内訳 利子所得の金額 4,615,974
事業所得の金額 0 0 0
不動産所得の金額 30,138,699 44,852,141 37,947,572
給与所得の金額 8,836,000 9,919,000 10,432,000
雑所得の金額 0 0 0
分離長期譲渡所得の金額 471,500
源泉徴収税額 1,956,604 1,190,790 1,317,949
納付すべき税額 14,811,300 21,110,200 17,830,200
賦課決定 過少申告加算税の額 313,000 2,101,500 2,096,500

(注)「事業所得の金額」欄の△印は損失の金額を示す。以下同じ。

 請求人は、これらの処分を不服として、国税通則法第75条《国税に関する処分についての不服申立て》第4項第1号に規定する青色申告書に係る更正であることにより異議申立てを経ず、平成4年4月30日に審査請求をした。

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2 主張

(1) 請求人の主張

 原処分は、次の理由により違法であるから、その全部の取消しを求める。
イ 金銭の貸付けによる所得及び定期預金の利子の所得区分について
 請求人は、金銭の貸付けによる所得及び定期預金の利子(以下「本件所得」という。)を所得税法第27条《事業所得》第1項に規定する事業所得として各年分の確定申告書を提出したところ、原処分庁は、金銭の貸付けによる所得は同法第35条《雑所得》第1項に規定する雑所得に該当し、定期預金の利子は同法第23条《利子所得》第1項に規定する利子所得に該当すると認定した上、雑所得の金額の計算上生じた損失の金額については、他の所得との損益通算は認められないとする更正をした。
 しかし、本件所得は次の理由により事業所得に該当するから、原処分庁の認定は誤りである。
(イ) 請求人は、昭和60年7月25日付で貸金業の規制等に関する法律(以下「貸金業規制法」という。)に基づく貸金業の登録を受けた貸金業者であること。
(ロ) 請求人は、昭和60年8月30日付で原処分庁に貸金業の事業種目の追加届出をしていること。
 また、昭和60年から、本件所得を事業所得として確定申告書を提出してきたが、これまで本件所得が雑所得であるとの指摘を受けたことがないこと。
(ハ) 原処分庁は、金銭の貸付先が株式会社A(以下「A社」という。)及びB株式会社(以下「B社」という。)の請求人と特殊な関係にある2社に限定されていると主張するが、結果としてそうなっただけのことであり、状況が許せば他にも貸付先を拡大することを常日ごろより勘考しているところであったこと。
(ニ) 原処分庁は、A社及びB社に対する貸付金に対して物的担保の設定等貸付金の保全措置を何ら講じていないとしているが、当該2社は、請求人を大株主とする同族会社であり、同族会社に対して担保を設定するのは、いわば自己の財産に担保設定するのと同じで何ら効果がないのは明らかであること。
(ホ) 原処分庁は、請求人が貸金業の看板の設置や広告宣伝をしていないと断定しているが、その認定の根拠及びいつから貸金業の看板の設置や広告宣伝をしていないと断定したのかについて明らかにしていないこと。
(ヘ) 原処分庁は、貸付先が、いずれも経営状態が悪く、市中銀行から融資を受けることができないと断定しているが、いつから経営状態が悪くなったのか、また、いつから融資を受けることができなくなったのかについて明らかにしていないこと。
(ト) 原処分庁は、請求人が貸付資金の借入利率より低い利率で貸し付けたことにより、支払った借入金利子の額が受け取った貸付金利子の額より多額であると主張するが、請求人が貸付先に通常の貸付利率より低い利率で貸し付けたのは、通常の貸付利率により貸付けを行ったとしたならば、当該貸付先は、経営に行き詰まり、請求人の経済活動もその基盤を危うくすることとなるので、その現況に沿って行ったものであり、一般的に不振子会社に対し親会社が低利融資することは何ら不自然な行為ではなく、請求人の行為も同様であること。
(チ) 請求人の行為は、常に営利を目的とし、相当に多額の収入を断続的に得ているものであること。
(リ) 請求人は、昭和62年分の事業所得の計算上、貸倒引当金繰入額5,000,000円を必要経費に算入していたところ、昭和63年8月に原処分庁により、昭和60年分ないし昭和62年分所得税について税務調査(以下「昭和62年分調査」という。)を受けたが、当該調査において何らの指摘も受けなかったので、本件所得は、事業所得として原処分庁に是認されたものであり、貸倒引当金繰戻額(昭和63年分5,000,000円及び平成元年分11,000,000円)を事業所得の総収入金額に算入し、貸倒引当金繰入額(昭和63年分11,000,000円)を事業所得の必要経費に算入すべきであること。
(ヌ) 原処分庁は、定期預金の利子を利子所得であると認定しているが、当該定期預金は貸付金の原資である借入金の担保になっており、事業行為の一環として預金したものであるから、当該定期預金の利子は事業所得に含まれるのは明らかであること。また、定期預金利子に係る源泉徴収税額は、納付すべき税額の計算上控除をすべきであること。
ロ 過少申告加算税の賦課決定について
 以上のとおり、各年分の更正は違法であり、その全部を取り消すべきであるから、これに伴い各年分の過少申告加算税の賦課決定もその全部を取り消すべきである。

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(2) 原処分庁の主張

 原処分は、次の理由により適法である。
イ 金銭の貸付けによる所得及び定期預金の利子の所得区分について
 所得税法第27条第1項及び同法施行令第63条《事業の範囲》に規定する事業所得とは、対価を得て継続的に行う事業であって、個人の危険と計算において独立的に継続して営まれ、かつ、事業としての社会的客観性を有するものから生ずる所得をいうところ、次の理由により、本件所得は同法第27条第1項及び同法施行令第63条に規定する事業所得には該当せず、金銭の貸付けによる所得は同法第35条第1項に規定する雑所得に該当し、定期預金の利子は同法第23条第1項に規定する利子所得に該当する。
(イ) 請求人は、貸金業者の登録はしているが、不特定多数の者を相手に金銭の貸付けを行うような特定の場所的設備を持たず、貸金業の看板の設置や広告宣伝もしていないこと。
(ロ) 請求人の金銭貸付先は、請求人が代表取締役をしており、しかも、同人が最大株主となっている同族会社であるA社及びB社の2社のみであり、請求人と特殊な関係にある者に限られていること。
(ハ) 請求人が有する各年分の12月31日現在の貸付金残高は、次表のとおりであり、いずれも高額であるにもかかわらず、物的担保の設定等貸付金の保全措置を何ら講じていないこと。

(単位:円)
年分
貸付先
昭和63年分 平成元年分 平成2年分
A社 779,000,000 878,900,000 885,000,000
B社 720,000,000 753,600,000 720,000,000
合計 1,499,000,000 1,632,500,000 1,605,000,000

(ニ) 上記(ハ)の貸付先は、いずれも経営状態が悪く、市中銀行から融資を受けることができないため、請求人が貸付資金の大部分をC銀行P支店及びD銀行R支店のほか、請求人が代表取締役をしている同族会社であるE株式会社(以下「E社」という。)から借り入れ、転貸したものであるところ、請求人は、貸付先の金利負担を軽くするために貸付資金の借入利率より低い利率で貸し付けたことにより、支払った借入金利子の額が受け取った貸付金利子の額より多額であること。
(ホ) 請求人が、昭和60年分ないし平成2年分の所得税の確定申告書に添付して提出した事業所得に係る青色申告決算書には、次表の勘定科目と金額の記載しかないこと。

(単位:円)
勘定科目
年分
総収入金額 利子割引料 貸倒引当金 事業所得の金額
昭和60年分 4,105,385 3,262,511 842,874
昭和61年分 16,939,478 15,233,229 1,706,249
昭和62年分 28,883,483 21,496,664 繰入額
5,000,000
2,386,819
昭和63年分 63,471,495 58,268,810 繰戻額
5,000,000

繰入額
11,000,000
△797,315
平成元年分 38,199,837 79,342,456 繰戻額
11,000,000
△30,142,619
平成2年分 69,566,789 100,036,863 △30,470,074

(ヘ) 上記(ホ)の総収入金額のうち、請求人は、各年分においてF銀行S支店及びC銀行P支店の請求人名義の定期預金の利子(昭和63年分6,780,004円、平成元年分6,780,000円及び平成2年分4,816,573円)を事業所得の総収入金額に算入していること。
(ト) 請求人は、昭和62年分調査において指摘されなかったことを理由として、本件所得は事業所得として原処分庁に是認された旨主張する。
 しかしながら、所得税の更正は、ある年分の課税標準等又は税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったとき、その他当該課税標準等又は税額等がその調査したところと異なるときに、その調査により行うものであるところ、請求人が主張するのは昭和62年分以前の年分の所得税であり、昭和62年分以前の年分につき更正しなかったとしても、そのために各年分の更正が違法となるものではないこと。
 なお、昭和62年分調査においては、請求人の金銭貸付けによる所得を事業所得と認めたものではなく、また、本件調査において、昭和62年分以前の年分については国税通則法第70条《国税の更正、決定等の期間制限》の規定により更正しなかったものであること。
(チ) 前記(2)のイの(ヘ)に記載した定期預金の利子は、所得税法第23条第1項に規定する利子所得に該当すること。
 なお、昭和63年4月以後における当該利子所得に係る課税は、租税特別措置法第3条《利子所得の分離課税等》第1項の規定により、源泉分離課税となっており、この税額を各年分の納付すべき税額の計算上控除することはできないこと。
ロ 所得金額等について
 請求人の各年分の総所得金額及び分離長期譲渡所得の金額は、次表のとおりであり、これらの金額はいずれも更正に係る金額と同額であるから、各更正は適法である。
 なお、後記(ハ)のとおり雑所得の金額は損失となるが、この損失は、所得税法第69条《損益通算》第1項の規定により他の所得と損益通算はできない。

(単位:円)
年分
項目
昭和63年分 平成元年分 平成2年分
総所得金額 43,590,673 54,771,141 48,379,572
内訳 利子所得の金額 4,615,974
事業所得の金額 0 0 0
不動産所得の金額 30,138,699 44,852,141 37,947,572
給与所得の金額 8,836,000 9,919,000 10,432,000
雑所得の金額 0 0 0
分離長期譲渡所得の金額 471,500
源泉徴収税額 1,956,604 1,190,790 1,317,949
納付すべき税額 14,811,300 21,110,200 17,830,200

(イ) 利子所得の金額
 昭和63年分の総所得金額に算入される利子所得の金額は、次表のとおりである。

(単位:円)
区分
支払者
利子所得の金額 源泉徴収税額
F銀行S支店 2,359,069 471,813
C銀行P支店 2,256,905 451,381
合計 4,615,974 923,194

(ロ) 不動産所得の金額及び給与所得の金額
 各年分の不動産所得の金額及び給与所得の金額は、請求人の確定申告書(昭和63年分については修正申告書)記載金額と同額である。
(ハ) 雑所得の金額は、次表のとおりである。

(単位:円)
年分
項目
昭和63年分 平成元年分 平成2年分
金銭貸付けによる所得 △1,577,319 △47,922,619 △35,286,647
その他の所得 119,000
合計 △1,577,319 △47,922,619 △35,167,647

(注) △印は、損失の金額を示す。以下同じ。

A 金銭貸付けによる所得の金額は次表のとおりである。

(単位:円)
年分
項目
昭和63年分 平成元年分 平成2年分
総収入金額 56,691,491 31,419,837 64,750,216
支払利子 58,268,810 79,342,456 100,036,863
差引金額 △1,577,319 △47,922,619 △35,286,647

B 平成2年分のその他の所得の金額は、請求人の確定申告書記載金額と同額である。
(ニ) 所得控除の合計額
 各年分の所得控除の合計額は、請求人の確定申告書(昭和63年分については修正申告書)記載金額と同額である。
(ホ) 分離長期譲渡所得の金額
 平成2年分の分離長期譲渡所得の金額は、請求人の確定申告書記載金額と同額である。
(ヘ) 源泉徴収税額は次表のとおりである。

(単位:円)
年分
支払者
昭和63年分 平成元年分 平成2年分
E社 709,410 906,390 1,016,550
A社 324,000 284,400 284,400
G株式会社 16,999
F銀行S支店 471,813
C銀行P支店 451,381
合計 1,956,604 1,190,790 1,317,949

A E社、A社及びG株式会社に係る各年分の源泉徴収税額は、請求人の確定申告書(昭和63年分については修正申告書)記載金額と同額である。
B F銀行S支店及びC銀行P支店に係る定期預金の利子に対する源泉徴収税額は、前記ロの(イ)のとおりである。
ハ 過少申告加算税の賦課決定について
 以上のとおり、各年分の更正は適法であり、かつ、請求人には、国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項及び第2項の規定に基づき各年分の過少申告加算税の賦課決定をしたものである。

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3 判断

(1) 金銭の貸付けによる所得及び定期預金の利子の所得区分について

 本件所得の区分について争いがあるので、以下審理する。
イ 次の事実については請求人と原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査においてもその事実が認められる。
(イ) 請求人は、貸金業規制法に基づく貸金業の登録を受けるとともに、原処分庁に貸金業の事業種目の追加届出をしたこと。
(ロ) 請求人は、請求人の自宅を本件金銭の貸付けを行っている営業所の場所として○○県知事に届け出ていること。
(ハ) 昭和60年から平成2年までの間における貸付先は、請求人が代表取締役をしているA社及びB社の2社であること。
(ニ) 請求人は、A社及びB社に対する貸付金に対して担保権の設定等貸付金の保全措置を講じていないこと。
(ホ) 貸付金の大部分は、C銀行P支店、D銀行R支店及びE社から借り入れ、転貸したものであること。
(ヘ) 請求人は、貸金先の金利負担を軽くするために貸金資金の借入利率より低い利率でA社及びB社に貸し付けたことにより、支払った借入金利子の額が受け取った貸付金利子の額を各年分ともに上回っていること。
ロ 当審判所の調査によれば、請求人が昭和60年分ないし平成2年分の所得税の確定申告書に添付して原処分庁に対して提出した事業所得に係る青色申告決算書には、利子割引料及び貸倒引当金繰入額以外の必要経費科目の記載がないことが認められる。
ハ 請求人の当審判所に対する答述によれば、次の事実が認められる。
(イ) 請求人は、A社及びB社に対する貸付金の貸付利率の決定に際し、請求人個人の採算よりも貸付先の延命を優先させたこと。
(ロ) A社及びB社に対する貸付金の貸付利率を低利とすることについて同2社に対して特別な条件は付けていないこと。
ニ ところで、金銭の貸付行為が所得税法上の事業に該当するか否かは、一般社会通念に照らして、事業と認められるか否かによって判定すべきであるが、その判断に当たっては営利性、継続性及び独立性が認められるか否かにより、具体的には、その貸付先との関係、貸付けの目的、貸付金額、貸付利息の収入状況、担保権設定の有無、貸付資金の調達方法、貸付けのための広告宣伝の状況その他諸般の状況を総合勘案して判定すべきであると解される。
 これを本件についてみると、請求人が貸金業規制法に基づいて貸金業の登録を受けている事実は認められるものの、1貸付先は、請求人が代表取締役をしているA社及びB社の2社のみであり、担保権の設定等貸付金の保全措置を講じておらず、同2社に対する貸付金は、営利を目的とした不特定多数の者を相手とする継続的な経済行為とは認められず、同2社の経営維持を目的とした同2社の代表取締役の立場における資金供与と認められること、2貸付金に係る受取利子の金額よりも当該貸付資金調達のための借入金に対する支払利子の金額が多額であること、3事業所と称する程度の店舗を有していないこと及び4貸金業の看板の掲示及び広く一般に顧客を求めるための広告宣伝を行ったことを証明するに足る証拠がないことから、請求人の金銭の貸付行為は、営利を目的とした社会通念上の事業として行われているとは到底認め難い。
 ところで、請求人は、貸金業規制法に基づく登録を受けていること、昭和60年分からの金銭の貸付けについて原処分庁に貸金業の事業種目の追加届出をしたこと、相当に多額の収入を継続的に得ていること及び昭和62年分調査において何らの指摘も受けなかったことから、本件金銭貸付けによる所得は事業所得に該当する旨主張する。
 しかしながら、金銭の貸付行為が所得税法上の事業に該当するか否かについては、前記のような諸般の事情を総合判断することによって判定すべきものであるところ、請求人の主張する事実はその判断要素の一部ではあるが、本件においてはその事実をもってしても前記の判断を覆すに足るものではない。
 したがって、本件金銭貸付けによる所得は、所得税法第35条に規定する雑所得に該当すると解するのが相当である。
 また、請求人名義の定期預金の利子について、請求人は、本件金銭貸付行為の資金の調達に際し、当該定期預金が借入金融機関に対する担保となっており、当該預金行為は事業行為の一環であることを理由として、当該定期預金の利子は事業所得に該当する旨主張するが、預貯金の利子は所得税法第23条第1項で利子所得とされているから、請求人の主張は失当である。

(2) 所得金額等について

  原処分庁は、請求人に対する調査の結果に基づき、請求人の各年分の総所得金額は、昭和63年分43,590,673円、平成元年分54,771,141円及び平成2年分48,379,572円であり、平成2年分の分離長期譲渡所得の金額は471,500円であると認定しているところ、当審判所の調査によっても原処分庁の認定額は相当と認められる。
 なお、請求人が、昭和63年分及び平成元年分の事業所得の計算上、総収入金額に算入した貸倒引当金繰戻額(昭和63年分5,000,000円及び平成元年分11,000,000円)及び必要経費に算入した貸倒引当金繰入額(昭和63年分11,000,000円)は、所得税法第52条《貸倒引当金》第1項及び第2項の規定により、雑所得の計算上、総収入金額及び必要経費に算入することはできない。

(3) 過少申告加算税の賦課決定について

 以上のとおり、各年分の更正は適法であり、また、請求人には、更正により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が更正前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項及び第2項の規定に基づいてした過少申告加算税の各賦課決定は適法である。

(4)その他

 原処分のその余の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠書類等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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