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(平4.12.9、裁決事例集No.44 126頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 審査請求人(以下「請求人」という。)は、昭和63年3月13日に死亡した○○(以下「被相続人」という。)の相続人である。
 被相続人は、不動産仲介業を営んでいた者で、昭和60年分及び昭和61年分の所得税の青色の確定申告書(分離課税用)に次表の昭和60年分及び昭和61年分の欄のとおり記載して、それぞれ法定申告期限までに申告した。
 また、請求人は、被相続人の昭和62年分(以下昭和60年分及び昭和61年分と併せて「各年分」という。)の所得税の青色の確定申告書(分離課税用)に次表の昭和62年分の欄のとおり記載して、昭和63年6月10日に申告をした。

(単位:円)
年分
項目
昭和60年分 昭和61年分 昭和62年分
総所得金額 △164,768,181 △9,576,209 △489,086,245
内訳 事業所得の金額 △165,008,363 △9,576,209 △489,420,035
不動産所得の金額 240,182 333,790
分離課税の長期譲渡所得の金額 136,233,000 36,980,000 306,631,040
純損失の繰越控除の金額 23,534,381
納付すべき税額 0 491,000 0

(注)「総所得金額」及び「事業所得の金額」欄の△印は損失の金額を示す。以下同じ。

(2) 原処分庁は、これに対し昭和63年12月27日付で、各年分について次表のとおり更正及び過少申告加算税の賦課決定をした。

(単位:円)
区分
年分
項目
昭和60年分 昭和61年分 昭和62年分
更正 総所得金額 181,642 278,410 △4,641,961
内訳 事業所得の金額 0 0 △4,920,035
不動産所得の金額 181,642 278,410 278,074
分離課税の長期譲渡所得の金額 309,423,800 36,980,000 306,631,040
納付すべき税額 97,975,100 7,168,800 84,108,600
賦課決定 過少申告加算税の額 9,682,000 642,000 16,795,000

(3) 請求人は、これらの処分を不服として平成元年2月28日に異議申立てをした。
(4) 原処分は、平成元年11月6日付で、昭和62年分の過少申告加算税の額を12,590,000円とする変更決定をした。
(5) 異議審理庁は、上記(3)の異議申立てに対し、平成元年12月1日付でいずれも棄却の異議決定(昭和62年分の過少申告加算税の賦課決定については、上記(4)の変更決定後のものをいう。以下同じ。)をした。
 請求人は、異議決定を経た後の原処分についてなお不服があるとして、平成元年12月28日に審査請求をした。

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2 主張

(1) 請求人の主張

 原処分は、次の理由により違法であるから、昭和60年分及び昭和61年分についてはその一部の取消しを、また、昭和62年分についてはその全部の取消しを求める。
イ 事業所得の金額について
(イ) 原処分庁は、被相続人の各年分の事業所得の金額の計算上必要経費に算入したA男、B男及びC男に対する貸倒金について、必要経費に算入できないとしているが、次に述べるとおりA男、B男及びC男に対する貸倒れは存在し、貸倒損失を認めるべきである。
A A男に対する貸倒金
(A) 被相続人は、A男に対して借用書が作成された貸付金以外にも貸付金を有し、何度か両者で貸付金額を確認した文書を作成したが、最終的には貸付金の総額は810,000,000円であったところ、A男には何ら資産はなく、回収不能であることが確定したため、当該債権を放棄して貸倒れとなったものである。
(B) 原処分庁は、A男の不動産業が好転し、被相続人の貸付金についてA男が返済の意思を有していること、また、請求人から貸倒れの事実を証する書類の提出がないことから貸倒れではないと判断している。
 しかしながら、A男の不動産業が好転しているとは同人の所得税の申告内容からは認められず、また、この金銭貸借に関して、被相続人が10数年間にわたり迷惑を被ったため、A男が被相続人の家族に対して慰謝料を支払うこととなった件からも明らかなとおり、貸倒れは明白な事実である。
(C) 更に、原処分庁は、被相続人とA男とは30年来の釣り仲間で個人的な付き合いはあっても、不動産業に係る業務上の取引はないことを理由に事業上の貸倒れではないと判断している。
 しかしながら、被相続人とA男とが釣りに同行した事実はなく、この貸倒れが業務上のものであることはすでに原処分庁に説明しているとおりである。
B B男に対する貸倒金
(A) 被相続人は、B男との間に書類の作成はないものの同人に対して多額の貸付金があり、この貸付金に関して昭和59年の国税局の査察調査で確認された金額を、昭和60年分及び昭和62年分において貸倒損失として申告したものである。
(B) 原処分庁は、B男において借入金を返済する意思があり、更に、請求人から貸倒れの事実を証する書類の提出がないことから貸倒れではない旨判断している。
 しかしながら、B男が経営する株式会社D(以下「D社」という。)が休眠状態であることは原処分庁の指摘するとおりであり、また、B男を追及しようにも同人が行方不明であったことは前記の査察調査で明らかである。よって、貸倒れは明白な事実である。
(C) また、原処分庁は、被相続人とは個人的な付き合いによる借入金である旨のB男の申述をもって、事業上の貸付金ではなく貸倒損失として必要経費に算入することができない旨判断している。
 しかしながら、被相続人とB男との取引が業務上の取引であったことは前記の査察調査によって明白である。
C C男に対する貸倒金
(A) 被相続人は、C男に対する貸付金2,500,000円が貸倒れとなり、昭和62年分において貸倒損失として申告したところ、原処分庁は、C男が、当該金員は土地売買に関する受取手数料である旨の説明をしていること及び請求人から貸倒れの事実を証する書類の提出がないことから貸倒れではない旨判断している。
(B) しかしながら、貸付金2,500,000円のうち、返済を受けた500,000円を除く2,000,000円は、既に昭和62年において10年を経過した債権であり、貸倒れとなっていることは明白である。
 また、仮に土地売買に関する支払手数料であるとしても費用として認められるべきものである。
(ロ) 上記(イ)の貸倒金以外の事業所得に関する金額については、原処分の額を認める。
(ハ) 以上の結果、被相続人の各年分の事業所得の金額は次表のとおりである。

(単位:円)
年分
項目
昭和60年分 昭和61年分 昭和62年分
事業所得の金額(確定申告額) 1 △165,008,863 △9,576,209 △489,420,035
加算額 必要経費 2 118,447
貸倒損失 500,000
減算額 収入金額 3 542,238
債権償却特別勘定 10,000,000
事業所得の金額(審査請求額)(123 △165,008,363 △20,000,000 △489,920,035

ロ 不動産所得の金額について
 被相続人の各年分の不動産所得の金額は、次表のとおりであり、原処分の金額を認める。

(単位:円)
年分
項目
昭和60年分 昭和61年分 昭和62年分
収入金額 1 425,227 542,238 542,238
租税公課の額 2 143,585 163,828 164,164
青色申告控除額 3 100,000 100,000 100,000
不動産所得の金額(123 181,642 278,410 278,074

ハ 総所得金額について
 前記イ及びロによれば、被相続人の各年分の総所得金額は次表のとおりである。

(単位:円)
年分
項目
昭和60年分 昭和61年分 昭和62年分
事業所得の金額 1 △165,008,363 △20,000,000 △488,920,035
不動産所得の金額 2 181,642 278,410 278,074
総所得金額(12 △164,826,721 △19,721,590 △488,641,961

ニ 分離課税の長期譲渡所得の金額について
(イ) 被相続人と株式会社E(以下「E社」という。)との間で売買契約がなされた、P市○○町2210番及び2211番所在の土地合計765平方メートル(以下これらを併せて「P市の土地」という。)の売買代金92,400,000円のうち26,000,000円が未回収のため、昭和60年分における譲渡収入から除外すべきである。
 上記の事項に関しては、原処分に係る調査の際、原処分庁の調査担当職員(以下「調査担当職員」という。)に対してP市の土地につき26,000,000円が未収である旨を説明しており、更に、P市の土地に関する被相続人とE社との間の訴訟に係る和解においてその事実が明白である。
(ロ) 被相続人とE社との間で売買契約がなされた××市R町7丁目1690番の1,1691番の2及び1692番の2所在の土地合計241.18平方メートル(以下これらを併せて「R町の土地」という。)の譲渡に際し、昭和56年1月17日に被相続人が△△銀行□□市店において借り受けた金員80,000,000円のうち30,000,000円を同月20日にE社に対して貸し付けたが、これが未回収のまま貸倒れとなったため、昭和60年分における譲渡収入から除外すべきである。
 これについては、R町の土地に関する被相続人とE社との間の訴訟(S地方裁判所建物収去土地明渡等請求事件)に係る和解の成立によりその事実が明白である。
(ハ) したがって、P市の土地及びR町の土地に係る被相続人の昭和60年分の譲渡所得の金額は次表のとおりである。

(単位:円)
項目 P市の土地 R町の土地
売買価額 1 92,400,000 90,000,000
貸倒未収額 2 26,000,000 30,000,000
譲渡収入金額(12) 3 66,400,000 60,000,000
取得費 4 3,320,000 3,000,000
譲渡費用 5 30,000 60,000
譲渡所得の金額(345 63,050,000 56,940,000

(ニ) 以上の結果、被相続人の各年分の分離課税の長期譲渡所得の金額は次表のとおりである。

(単位:円)
年分
項目
昭和60年分 昭和61年分 昭和62年分
分離課税の長期譲渡所得金額 256,223,800 36,980,000 306,631,040

ホ 過少申告加算税の賦課決定について
 以上のとおり、各年分の更正は事実誤認に基づきなされたもので違法であり、その一部又はその全部を取り消すべきであるから、これに伴い各年分の過少申告加算税の賦課決定もその一部又はその全部を取り消すべきである。

(2) 原処分庁の主張

 原処分は、次の理由により違法である。
イ 事業所得の金額について
(イ) 所得税法第51条《資産損失の必要経費算入》第2項において、事業の遂行上生じた貸付金の貸倒れにより生じた損失の金額は、その損失の生じた日の属する年分の事業所得の金額の計算上必要経費に算入する旨規定している。
(ロ) ところで、被相続人の事業所得の金額の計算上必要経費に算入した貸倒金のうち、次に述べる貸倒金は、被相続人の事業所得の金額の計算上必要経費に算入すべきではない。
A A男に対する貸倒金
(A) A男に対する貸倒金(昭和61年分20,000,000円及び昭和62年分252,000,000円)について調査したところ、次の事実が認められる。
a 請求人からA男が作成したとして提出された借用証は次表のとおりであること。

年月日 返済期限 金額
昭和51年11月8日 昭和51年11月25日 87,000,000円
昭和51年11月25日 昭和51年12月3日 25,000,000
昭和51年11月29日 返済期限の記載なし 110,000,000
昭和51年11月30日 返済期限の記載なし 30,000,000
合計 252,000,000

b A男は、昭和53年12月現在被相続人からA男が368,200,000円借り入れている旨の文書(返済期限の記載なし)を作成し、その後両者は、A男の債務が、昭和56年7月10日付の「債権債務の確認及び支払約定書」において432,200,000円(返済期限同年8月31日)であることを確認し、また、昭和58年5月13日付の「債務確認並びに債務弁済契約書」において810,000,000円(返済期限同年9月末日)であることを確認していること。
c 請求人は、A男に対し、昭和58年5月13日付で確認した810,000,000円の債権を放棄する旨の文書を昭和63年9月8日付で郵送していること。
d A男は、被相続人の長男であるF男(以下「F男」という。)に対し、貸付金返済の遅延に伴う慰謝料として200,000,000円(支払期限昭和63年10月31日)を支払う旨の文書を昭和63年9月16日付で作成していること。
e A男は、被相続人からの借入金について、請求人から債権を放棄してもらったが今後も借入金を返済するつもりであること及び被相続人とは30年来の趣味(釣り)の上での個人的な付き合いはあるが、不動産業に係る業務上の取引はない旨申し述べていること。
f A男の不動産業は、昭和63年に至り好転していること。
g 請求人からは、A男に対する貸付金が昭和61年及び昭和62年にそれぞれ貸倒れになったことを証する書類の提示がないこと。
(B) 以上の事実を総合判断すると、被相続人のA男に対する貸付金は、その金額等が不明瞭であるばかりか、昭和61年及び昭和62年になってそれぞれ貸倒れが確定したとする事実は確認できず、また、当該貸付けが被相続人の事業の遂行上生じたものとは認められない。
B B男に対する貸倒金
(A) B男に対する貸倒金(昭和60年分165,008,363円及び昭和62年分230,000,000円)について調査したところ、次の事実が認められる。
a 被相続人からB男に対して昭和58年4月15日130,462,007円、同年4月25日22,505,690円及び同年5月27日12,040,666円合計165,008,363円が支払われているが、金銭の貸付け及びその返済期限を定めた契約書等は確認されないこと。
b 被相続人は昭和58年6月14日に、B男が代表取締役をしていたD社と連帯して○○株式会社から625,000,000円(D社の負担額309,000,000円)を借り入れたが、これに関してB男が被相続人から受け取った金額は87,409,970円のみで、残額は被相続人自身の借入金の返済に充てられていること。
c B男は、「被相続人からD社が借りた金額は昭和58年7月現在309,000,000円あり、この借入金について昭和59年1月に被相続人からこの債権を放棄する旨の連絡があった」と申し述べていたが、その後において「被相続人から昭和58年4月から8月の間に240,000,000円を借りていたが、まだ返済していないのでこれから返すつもりである」旨及び「被相続人とは同人の借入金の整理や生活費の援助等個人的な付き合いはあるが、不動産業に係る業務上の取引はない」旨申し述べていること。
d B男は、現在株式会社△△の代表取締役として役員報酬を得ているが、D社は昭和58年当時既に休眠状態であったこと。
e 請求人からは、B男に対する貸付金が昭和60年及び昭和62年にそれぞれ貸倒れとなったことを証する書類の提示がないこと。
(B) 以上の事実を総合判断すると、被相続人のB男に対する貸付金は、その金額等が不明瞭であるばかりか、昭和60年及び昭和62年になってそれぞれ貸倒れが確定したとする事実は確認できず、また、当該貸付けが被相続人の事業の遂行上生じたものとは認められない。
C C男に対する貸倒金
(A) C男に対する貸倒金(昭和62年分2,500,000円)について調査したところ次の事実が認められる。
a C男は、昭和51年10月28日付で被相続人から2,500,000円(返済期限同年12月15日)借り入れる旨の借用証を作成していること。
b 被相続人は、C男に対し500,000円は返済を受けているが残りの2,000,000円については、まだ返済を受けていないのでその返済を督促する文書を郵送していること。
c C男は、上記bの督促に対し、2,000,000円は土地売買に関する手数料として受け取ったもので借入金ではない旨回答していること。
d 請求人からは、C男に対する貸付金が昭和62年に貸倒れになったことを証する書類の提示がないこと。
(B) 以上の事実を総合判断すると、被相続人のC男に対する貸付金が存在していたかどうか不明瞭であるばかりか、昭和62年になって貸倒れが確定したとする事実は確認できない。
(ハ) 被相続人が昭和61年分の事業所得の金額の計算上収入金額に算入したS電力株式会社からの線下補償料(以下「補償料」という。)542,238円は、不動産所得の収入金額であると認められるから、当該金額を被相続人の昭和61年分の事業所得の計算上収入金額から除外する。
(ニ) また、被相続人が昭和61年分の事業所得の金額の計算上必要経費に算入した補償料542,238円の20パーセントに当たる118,447円は、その支払の事実がなく、事業所得を生ずべき業務について生じた費用とは認められないから、被相続人の事業所得の金額の計算上必要経費に算入すべきではない。
(ホ) 被相続人が昭和61年分の事業所得の金額の計算上収入金額に算入した債権償却特別勘定の取崩し益10,000,000円は、当該年中に債権償却特別勘定を取り崩すべき事実が発生していないばかりか、債権償却特別勘定に繰り入れた年分においてその繰入額を事業所得の金額の計算上必要経費に算入していないので、当該金額を被相続人の昭和61年分の事業所得の金額の計算上収入金額に算入しない。
(ヘ) 以上の結果、被相続人の各年分の事業所得の金額は次表のとおりとなる。

(単位:円)
年分
項目
昭和60年分 昭和61年分 昭和62年分
事業所得の金額(確定申告額) 1 △165,008,863 △9,576,209 △489,420,035
加算額 必要経費 2 118,447
貸倒損失 165,008,363 20,000,000 484,500,000
減算額 収入金額 3 542,238
債権償却特別勘定 10,000,000
事業所得の金額(原処分庁主張額)(123 0 0 △4,920,035

ロ 不動産所得の金額について
(イ) 前記イの(ハ)で述べたように、補償料542,238円は被相続人の昭和61年分の不動産所得の収入金額と認められるから、当該金額を被相続人の昭和61年分の不動産所得の金額の計算上収入金額に算入する。
(ロ) 被相続人の昭和60年分及び昭和62年分の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入している金額、昭和60年分の85,045円及び昭和62年分の108,448円については、それぞれ支払の事実がなく、不動産所得を生ずべき業務について生じた費用とは認められないから、被相続人のこれらの年分の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべきではない。
(ハ) 被相続人の各年分の不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入すべき補償料に係る土地の固定資産税及び都市計画税の額(以下これらを併せて「租税公課の額」という。)は、次表のとおりである。

(単位:円)
年分
項目
昭和60年分 昭和61年分 昭和62年分
租税公課の額 143,585 163,828 164,164

(ニ) 被相続人の各年分の不動産所得の金額の計算上控除すべき青色申告控除額は、それぞれ100,000円である。
(ホ) 以上の結果、被相続人の各年分の不動産所得の金額は次表のとおりである。

(単位:円)
年分
項目
昭和60年分 昭和61年分 昭和62年分
収入金額 1 425,227 542,238 542,238
租税公課の額 2 143,585 163,828 164,164
青色申告控除額 3 100,000 100,000 100,000
不動産所得の金額(123 181,642 278,410 278,074

ハ 分離課税の長期譲渡所得の金額について
(イ) 請求人は、被相続人がE社と昭和55年4月4日付で締結したP市の土地の売買契約に係る譲渡代金92,400,000円のうち26,000,000円が回収されないままになっている旨主張するが、当該譲渡代金はE社が負担していた残土整理等と相殺された金額9,009,090円を除き、昭和55年4月4日から昭和56年12月31日までに被相続人にすべて支払われている。
(ロ) 請求人は、被相続人とE社との間で昭和57年1月20日付でされたR町の土地の売買契約に係る譲渡代金90,000,000円のうち30,000,000円を回収されないままになっている旨主張するが、売買代金の金額が、昭和57年1月20日にE社から被相続人に支払われており、売買代金に係る未収金は確認されない。
(ハ) 被相続人の昭和60年分の分離課税の長期譲渡所得は、被相続人が確定申告書に記載した金額136,233,800円に、昭和60年6月27日に和解により引き渡したP市の土地及びR町の土地に係る次表に記載した譲渡所得の金額の合計額173,190,000円を加算した金額309,423,800円である。

(単位:円)
項目 P市の土地 R町の土地
譲渡収入金額 1 92,400,000 90,000,000
取得費 2 4,620,000 4,500,000
譲渡費用 3 30,000 60,000
譲渡所得の金額(123 87,750,000 85,440,000

(ニ) 昭和61年分及び昭和62年分の分離課税の長期譲渡所得の金額は、被相続人の確定申告書に記載された金額どおり、昭和61年分については36,980,000円、昭和62年分については306,631,040円である。
(ホ) したがって、被相続人の各年分の分離課税の長期譲渡所得の金額は、次表のとおりとなる。

(単位:円)
年分
項目
昭和60年分 昭和61年分 昭和62年分
分離課税長期譲渡所得金額 309,423,800 36,980,000 306,631,040

ニ 以上の結果、被相続人の各年分の総所得金額及び分離課税の長期譲渡所得の金額は、次表のとおりとなり、これらの金額は更正に係る金額と同額であるから、各年分の更正は適法である。

(単位:円)
年分
項目
昭和60年分 昭和61年分 昭和62年分
総所得金額 181,642 278,410 △4,641,961
内訳 事業所得の金額 0 0 △4,920,035
不動産所得の金額 181,642 278,410 278,074
分離課税の長期譲渡所得の金額 309,423,800 36,980,000 306,631,040

ホ 過少申告加算税の賦課決定について
 過少申告加算税の賦課決定については、各年分の更正が適法であり、かつ、請求人には、国税通則法(昭和60年分及び昭和61年分に係るものについては、昭和62年法律第96号による改正前のもの。以下同じ。)第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項及び第2項の規定に基づいて各年分の過少申告加算税の賦課決定をしたものである。

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3 判断

 本件審査請求の争点は、被相続人の各年分の事業所得の金額の計算において、A男ほか2名に対する貸倒損失を必要経費に算入することの適否及び昭和60年分の分離課税の長期譲渡所得の金額の多寡にあるので、以下審理する。

(1) 事業所得の金額について

 請求人は、A男、B男及びC男に対する貸付金の貸倒れによる損失を事業所得の金額の計算において必要経費に算入すべきである旨主張するので、以下審理する。
イ A男に対する貸倒損失
(イ) 次の事実については、請求人及び原処分庁の双方において争いはなく、当審判所の調査によってもその事実が認められる。
A A男は、被相続人から金員を借用したとして次表のとおり借用証を作成していること。

 

年月日 返済期限 金額
昭和51年11月8日 昭和51年11月25日 87,000,000円
昭和51年11月25日 昭和51年12月3日 25,000,000
昭和51年11月29日 返済期限の記載なし 110,000,000
昭和51年11月30日 返済期限の記載なし 30,000,000
合計 252,000,000

B 更に、被相続人は、A男との間で金銭消費貸借に関して次のとおりの文書を作成していること。
(A) A男は被相続人から昭和53年12月現在368,200,000円を借用していることを確認する旨の、同年12月18日付のA男が被相続人にあてた文書
(B) A男と被相続人との間の債権債務が432,200,000円であり、その返済期限は昭和56年8月31日である旨の同年7月10日付の「債権債務の確認及び支払約定書」
(C) A男と被相続人との間の債権債務が810,000,000円であり、その返済期限は昭和58年9月末日である旨の同年5月13日付の「債務確認並びに債務弁済契約書」
(D) 請求人が、A男に対し上記(C)で確認した810,000,000円を放棄する旨を通知した、昭和63年9月8日付の「債権放棄書」
(E) 支払期限を昭和63年10月31日とする、A男がF男が受取人として貸付金返済の遅延に伴う慰謝料200,000,000円の支払を確約した昭和63年9月16日付の「確約書」
(ロ) A男は、調査担当職員に対し次のように申述している。
A 被相続人とは、仕事上の取引はなく個人的な付き合いであり、同人からの借入金も個人的なものと認識していること。
B 被相続人からの借入金は、前記(イ)のBの(B)の432,200,000であり、これに今後の利息を加えた810,000,000円を昭和58年5月13日付の債務確認並びに債務弁済契約書に記載したものであること。
(ハ) 当審判所が、昭和58年分所得税の調査資料を調査したところ、被相続人は、次のように申述している。
A 被相続人は、昭和45年ごろから農業の傍ら不動産仲介業を始めたが、昭和60年までに手掛けた仕事としては、S県のゴミ焼却場及び小学校の建設用地の買収があった時取りまとめをした程度で、他にはほとんど不動産関係の仕事はなかったこと。
B 被相続人は、仲介者である△△からA男に対する事業資金の貸付けを依頼され、当時所持していた自己の不動産売却代金等をA男に貸し付けたもので、不動産取引に関係した貸付金ではなかったこと。
C 被相続人は、A男に対する貸付金について、その内容を当時所持していた手帳に記載しており、前記(イ)のBの(B)で述べた「債権債務の確認及び支払約定書」は、B男が立会いの上、前記の手帳を基に被相続人とA男とで確認の上作成したものであること。
D 被相続人は、金融業は営んでおらず、A男、B男及びC男に対する金銭貸借に関しては、利息の取決めはなく、また、担保の差し入れはなかったこと。
(ニ) 以上の事実を総合勘案すると、昭和58年5月13日付の被相続人とA男との間で作成された債務確認並びに債務弁済契約書上の金額810,000,000円は、未確定の利息を加えたものであり、これを貸付金の額と認定することはできず、被相続人のA男に対する貸付金の額は、昭和56年7月10日付の債権債務の確認及び支払約定書記載の432,200,000円であると認められる。
 しかしながら、前記(ハ)のA、B及びDのとおり、A男に対する貸付金は不動産取引に関した貸付金とは認められず、更に、被相続人は貸金業を営んでいないことから、この貸付金が被相続人の事業の遂行上生じたものと解することはできない。
ロ B男に対する貸倒損失
(イ) 当審判所が、昭和58年分所得税の調査資料を調査したところ、被相続人は、次のように申述している。
A B男は、昭和56年5月ごろ、A男に対する貸金を回収してやるとの言をもって被相続人に近づき、当時、被相続人の所有不動産が競売にかけられていることを奇貨として被相続人のために立ち回り、それ以降、度重なる被相続人の新規資金の借入れや既存の負債の返済に関与するようになったこと。
B 被相続人の既存の負債を返済するため自己所有の不動産を担保に市中金融から借入れした金員のうち、被相続人の負債返済後の残額をB男が受領しており、この金員は同人に対する貸付金であり、また、その額は次表のとおりであること。

 

年月日 金額
昭和58年4月15日 130,462,007円
昭和58年4月25日 22,505,690
昭和58年5月27日 12,040,666
昭和58年6月14日 9,447,670
昭和58年7月14日 77,962,300
合計 252,418,333

C B男に対する貸付金は、総額で200,000,000円から250,000,000円ぐらいになっていること。
D B男に対する貸付金も含めて、その貸付けが事業に関するものとは思っていないこと。
(ロ) B男は、昭和63年10月3日に調査担当職員に対して、被相続人とは仕事上の取引は全くなく個人的な付合いであり、同人からの借入金の総額は約240,000,000円である旨を申述している。
(ハ) 請求人は、当審判所に対して、被相続人が昭和60年分及び昭和62年分の確定申告において申告したB男に対する貸倒損失額165,008,000円及び230,000,000円の合計額395,008,000円は査察調査においてB男に対する貸付金として認定された金額である旨答述している。
(ニ) 以上のことから判断すると次のとおりである。
A 前記(イ)のB及びC、(ロ)並びに(ハ)の事実から、被相続人のB男に対する貸付金の残額は、少なくとも200,000,000円を超していたであろうが、被相続人が昭和60年分及び昭和62年分の確定申告において貸倒損失として申告した金額の合計額395,008,000円には達していないことが推察され、その金額がいくらかであるかは明確ではない。
B そして、前記イの(ハ)のA及びDのとおり、被相続人は貸金業を営んではおらず、また、B男に対する多額の貸付金が発生した昭和58年における被相続人が業とする不動産仲介業に基づく事業所得の金額はきん少であり、更に、前記(イ)のDのとおり、被相続人はB男に対する貸付金が事業上のものではないと申述していることから判断しても、B男に対する貸付金が事業の遂行上生じたものと認めることはできない。
ハ C男に対する貸倒損失
(イ) 当審判所が、原処分関係資料、昭和58年分所得税の調査資料、当審判所に対するC男の答述及び請求人から提出された証拠資料を調査したところによれば、次の事実が認められる。
A C男が被相続人にあてた2,500,000円の借用証書の日付は、昭和51年10月28日となっているが、「但借用書の差替の領収書として(土地売買に関する手数料として)」と記載のある2,000,000円の領収証も同日付となっていること。
B C男は、被相続人の所有する土地の売買に関して仲介をなし、これにより仲介手数料として被相続人から2,500,000円を受け取ったが、後日契約が破棄となったこと。
 また、被相続人も、当該仲介手数料は自己の所有する不動産の売買に関して発生した旨申述していること。
C 被相続人は、昭和63年2月15日にC男に対して、2,500,000円のうち500,000円しか返済を受けていないので残金の2,000,000円を返済するよう文書で通知し、これに対して、C男は、昭和63年2月17日及び同年2月23日の2度にわたり、被相続人に対して、上記2,000,000円は契約が不成立に終ったものの、土地取引に関する手数料である旨の文書を送付していること。
(ロ) 以上の事実から判断すると、次のとおりである。
A 上記(イ)のとおり、昭和51年10月28日付でC男は借用証書及び領収証を作成していることから、作成当時両者は、不動産売買契約の破棄に伴いこの仲介手数料を金銭消費貸借として取り扱ったことが推認され、被相続人はC男に対して貸付金を有していたこととなる。
 しかしながら、この貸付金は、被相続人自身の所有する不動産売買に起因して発生したもので、被相続人の不動産仲介に係る事業所得に関連して生じた貸付金とは認められない。
B また、この貸付金が土地売買に関する支払手数料であるから事業所得の金額の計算上必要経費に算入すべきである旨の請求人の予備的な主張については、仮に、この貸付金が支払手数料であるとしても、支払の発生した昭和51年分の所得の計算において必要経費とすべきもので、昭和62年分において必要経費と認めることはできず、この点に関する請求人の主張も採用することはできない。
ニ ところで、所得税法第51条第2項には、事業の遂行上生じた貸付金等の貸倒れにより生じた損失の金額は、その損失の生じた日の属する年分の事業所得の金額の計算上必要経費に算入する旨規定している。ここでいう事業の遂行上生じた貸付金等とは、当該事業の何らかの関係を有する貸付金等のすべてを指すものではなく、具体的には、販売業者の売掛金、金融業者の貸付金及びその未収利子、製造業者の下請業者に対して有する前渡金、工事請負業者の工事未収金、自由職業者の役務の提供の対価に係る未収金、不動産貸付業者の未収賃貸料、山林経営業者の山林売却代金の未収入金等をいい、その業種業態からみて、当該業務の遂行上通常一般的に必要であると客観的に認め得るもの、言い換えれば、当該事業による収入との間に相当因果関係の認められる貸付金等をいうものと解するのが相当である。
 そこで、本件についてこれをみると、被相続人のように個人で不動産仲介業を営む者が、本件のごとき多額の貸付けをすることが当該事業所得を得るため通常必要であるとは考えられず、また、被相続人も事業上の貸付金とは認識していなかった事実も認められ、更に被相続人が金融業を営んでいた事業もないから、A男ほか2名に対する貸付金が被相続人の事業遂行上生じたものとは到底認められない。
 したがって、請求人が主張するA男、B男及びC男に対する貸倒損失はいずれも被相続人の事業所得の金額の計算上必要経費に算入できない。
ホ 請求人は、A男、B男及びC男に対する貸倒損失を除く被相続人の各年分の事業所得に関する原処分の金額について、これを争わず、かつ、当審判所の調査によっても、原処分庁の計算は適正であることが認められる。
 したがって、被相続人の各年分の事業所得の金額は次表のとおりとなる。

(単位:円)
年分
項目
昭和60年分 昭和61年分 昭和62年分
事業所得の金額(確定申告額) 1 △165,008,863 △9,576,209 △489,420,035
加算額 必要経費 2 118,447
貸倒損失 165,008,363 20,000,000 484,500,000
減算額 収入金額 3 542,238
債権償却特別勘定 10,000,000
事業所得の金額(審判所認定額)(123 0 0 △4,920,035

(2) 不動産所得の金額について

 請求人は、被相続人の各年分の不動産所得の金額について、原処分の額を争わず、当審判所の調査によっても、原処分庁の認定額は相当と認められる。

(3) 分離課税の長期譲渡所得の金額について

イ 請求人は、昭和60年分における譲渡収入の中で、被相続人がE社との間で売買契約を締結したP市の土地に係る譲渡代金92,400,000円のうち26,000,000円が、また、同じくE社との間のR町の土地の売買契約に係る譲渡代金90,000,000円のうち30,000,000円がそれぞれ未回収のまま貸倒れとなった旨主張する。
 ところで、所得税法第36条《収入金額》第1項には、譲渡所得の金額の計算上総収入金額に算入すべき金額は、その年において収入すべき金額とする旨規定されているところ、所得税法第64条《資産の譲渡代金が回収不能となった場合等の所得計算の特例》第1項には、譲渡所得の金額の計算の基礎となる総収入金額の全部若しくは一部を回収することができないこととなった場合には、その回収することができないこととなった金額に対応する部分の金額は、当該譲渡所得の金額の計算上、なかったものとみなす旨の別段の規定が設けられている。
 そこで、請求人が未回収のまま貸倒れとなった旨主張する金額が上記所得税法第64条第1項に規定する回収不能金額に該当するか否かについて、以下審理する。
(イ) P市の土地の売買契約に係る譲渡収入の金額
A 当審判所が、原処分関係資料及び請求人からの提出資料並びに裁判所の訴訟事件記録を調査したところによれば、次の事実が認められる。
(A) 被相続人は、E社との間でP市の土地について昭和55年4月4日付で売買代金を92,400,000円とする売買契約書を作成していること。
 また、この土地の売買代金として、契約金あるいは中間金等の各目で被相続人は次表のとおりE社に対して領収証を発行していること。

年月日 金額
昭和55年4月4日 10,000,000円
昭和55年4月12日 40,000,000
昭和55年4月22日 5,000,000
昭和55年7月1日 500,000
昭和55年8月27日 7,000,000
昭和55年11月10日 3,000,000
昭和55年12月30日 15,000,000
昭和56年12月31日 2,890,000
合計 83,390,000

(B) E社は、P市の土地の残土処理費として産業破棄物処理業者有限会社××発行の昭和55年6月18日付の9,009,090円の請求書並びに同年5月31日付の2,000,000円及び同年7月31日付の7,009,090円の領収証を受け取っていること。
(C) P市の土地に関して、E社は被相続人を被告として昭和60年3月26日に訴訟(S地方裁判所建物収去土地明渡等請求事件)を提起し、両者は昭和60年6月25日に和解したところ、当該訴訟事件記録によれば、次の事実が認められること。
a E社は、昭和55年4月4日にP市の土地の売買代金92,400,000円を、本来被相続人が支払うべき残土処理費の立替払分を差し引いてほぼ全額を支払った旨主張し、これに対して、被相続人は答弁書においてこのE社の主張を認めている。
b 和解条項の主な内容は、被相続人はE社に対してP市の土地につき昭和55年4月4日売買を原因として所有権移転登記手続をし、かつ、土地を明け渡すこととなっており、また、原告と被告は本件に関し和解条項のほか何らの債権債務のないことを確認している。
B 以上のことから、26,000,000円が未回収であるとの事実は認められず、かつ、請求人からP市への土地の売買代金92,400,000円のうち26,000,000円が未回収で貸倒れであることを証する資料の提出もないことからも、この点に関する請求人の主張には理由がない。
(ロ) R町の土地の売買契約に係る譲渡収入の金額
A 当審判所が、原処分関係資料及び請求人からの提出資料並びに裁判所の訴訟事件記録を調査したところによれば、次の事実が認められる。
(A) 被相続人は、E社との間でR町の土地について昭和57年1月20日付で売買代金90,000,000円とする売買契約書を作成していること。
 また、この土地の売買代金として、昭和57年1月20日付で被相続人はE社に対して90,000,000円の領収証を発行していること。
(B) 被相続人は、R町の土地を担保に80,000,000円を第三者から借り受け、このうち、30,000,000円を昭和56年1月20日にE社に貸し付けたが未返済であるため、その返済を求める催促の文書を昭和58年1月18日にE社に対して送付していること。
(C) R町の土地に関して、E社は被相続人を被告として昭和60年3月26日に訴訟(S地方裁判所建物収去土地明渡等請求事件)を提訴し、両者は昭和60年6月25日に和解したところ、当該訴訟事件記録によれば、次の事実が認められること。
a E社は、訴状における請求の原因の第1項において、昭和57年1月20日にR町の土地の売買代金は90,000,000円で、全額を同日、被相続人に対して支払い、R町の土地の所有権移転登記を完了した旨を主張し、これに対して、被相続人は答弁書においてこのE社の主張を認めている。
b 和解条項の主な内容は、被相続人はE社に対してR町の土地を明け渡すこととなっており、また、原告と被告は本件に関し和解条項のほか何らの債権債務のないことを確認している。
B 以上のことから、被相続人とE社との間で前記Aの(B)で述べた30,000,000円の貸付金に関する問題があるにしても、譲渡代金の一部である30,000,000円が未回収であるとの事実は認められず、また、請求人からR町への土地の売買代金90,000,000円のうち30,000,000円が未回収で貸倒れであることを証する資料の提出もないことから、この点に関する請求人の主張には理由がない。
(ハ) P市の土地及びR町の土地の譲渡に関する必要経費の額については原処分庁が算定した金額に誤りはなく、したがって、P市の土地及びR町の土地に関する譲渡所得の金額は次表のとおりとなり、被相続人の昭和60年分の分離課税の長期譲渡所得の金額は、被相続人が確定申告書に記載した金額136,233,800円に上記のP市の土地及びR町の土地に係る譲渡所得の金額合計173,190,000円を加算した金額309,423,800円である。

(単位:円)
項目 P市の土地 R町の土地 合計
譲渡収入金額 1 92,400,000 90,000,000 182,400,000
取得費 2 4,620,000 4,500,000 9,120,000
譲渡費用 3 30,000 60,000 90,000
譲渡所得の金額(123 87,750,000 85,440,000 173,190,000

ロ 昭和61年分及び昭和62年分の被相続人の分離課税の長期譲渡所得の金額については、請求人及び原処分庁の双方において争いはなく、当審判所の調査によっても相当と認められる。
ハ したがって、被相続人の各年分の分離課税の長期譲渡所得の金額は、次表のとおりとなる。

(単位:円)
年分
項目
昭和60年分 昭和61年分 昭和62年分
分離課税の長期譲渡所得の金額 309,423,800 36,980,000 306,631,040

(4) 以上の結果、被相続人の各年分の総所得金額及び分離課税の長期譲渡所得の金額は次表のとおりとなり、これらの金額は更正に係る金額と同額であるから、各年分の更正は適法である

(単位:円)
年分
項目
昭和60年分 昭和61年分 昭和62年分
総所得金額 181,642 278,410 △4,641,961
内訳 事業所得の金額 0 0 △4,920,035
不動産所得の金額 181,642 278,410 278,074
分離課税の長期譲渡所得の金額 309,423,800 36,980,000 306,631,040

(5) 過少申告加算税の賦課決定について

 以上のとおり、各年分の更正は適法であり、また、被相続人及び請求人には、確定申告の税額を計算するに当たり、原処分庁が過少申告加算税の基礎とした税額に係る事実を確定申告の税額の計算の基礎としなかったことについて、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項及び第2項の規定に基づいてした過少申告加算税の賦課決定は適法である。

(6) その他

 原処分のその余の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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