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(平5.10.28、裁決事例集No.46 70頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

 審査請求人(以下「請求人」という。)は、平成3年分の所得税の確定申告書に次表の「確定申告」欄のとおり記載して、法定申告期限ま/でに原処分庁へ提出した。
 これに対し、原処分庁は、平成4年6月30日付で同表の「更正処分等」欄のとおり更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をした。

(単位:円)
項目 確定申告 更正処分等
総所得金額 0 0
分離長期譲渡所得の金額 306,735,000 1,179,060,500
納付すべき税額 74,268,700 292,350,000
過少申告加算税の額 28,998,500

 

 請求人は、これらの処分を不服として平成4年8月25日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は同年11月24日付でいずれも棄却の異議決定をした。

 請求人は、異議決定を経た後の原処分について不服があるとして、平成4年12月25日に審査請求をした。

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2 主張

(1) 請求人の主張

 原処分は、次の理由により違法であるからその一部の取消しを求める。
イ 更正処分について
(イ)譲渡所得の金額について
 請求人は、A株式会社(以下「A社」という。)から取得した別紙1の土地(以下「本件全土地」という。)のうち、別紙1の番号1ないし7の土地(以下「本件土地」という。)をB株式会社(以下「B社」という。)へ譲渡した。
 本件土地の取得費は、本件全土地の買入価額900,000,000円のうち本件土地に対応する690,390,000円及びA社からの本件全土地の買入れに際し要した弁護士費用10,000,000円の合計額700,390,000円である。
 これに対し、原処分庁は、本件土地の譲渡による所得は租税特別措置法第31条《長期譲渡所得の課税の特例》に規定する分離長期譲渡所得(以下「長期譲渡所得」という。)であり、本件土地の取得費は租税特別措置法第31条の4《長期譲渡所得の概算取得費控除》(以下「措置法31条の4」という。)の規定により、本件土地の譲渡に係る収入金額1,300,000,000円の百分の五に相当する金額65,000,000円であるとして更正処分を行ったが、次に述べるとおり原処分庁は事実を誤認している。
 なお、請求人は、C株式会社及びD株式会社(以下「C社ら」という。)へ譲渡した分について、平成3年分として申告しなかったところ、原処分庁は、平成3年分の譲渡であるとして更正処分を行ったが、これについては争わない。
A 譲渡価額について
 本件土地の譲渡価額については、原処分庁の認定額と同額であるから争わない。
B 譲渡所得の区分について
 請求人は、本件土地の譲渡による所得を長期譲渡所得として申告したが、以下に述べるとおり、平成3年12月5日に取得したものを同年12月18日に譲渡したのであるから、租税特別措置法第32条《短期譲渡所得の課税の特例》に規定する分離短期譲渡所得(以下「短期譲渡所得」という。)に該当するものである。
(A)請求人とA社との間で、土地開発及び融資に関して昭和58年7月21日にP簡易裁判所(以下「P簡裁」という。)において即決和解(和解の要旨は別紙2のとおり。)が成立した。この和解に基づいて、A社は、本件全土地及びS市T町33番1の土地について所有権移転、所有権移転請求権仮登記及び根抵当権等を設定した。
 しかし、請求人は、和解に基づく融資金325,000,000円の返済がその期限である昭和58年12月末日になっても履行できなかったため、その期限を昭和59年1月末日まで猶予すること、もし猶予期限まで和解条項を履行できないときは同条項に記載した一切の不動産をA社に引き渡すことを承諾した。
(B)ところが、上記猶予期限に至ってもなお和解条項が履行できなかったことから、A社は昭和59年7月9日にP地方裁判所(以下「P地裁」という。)へ所有権移転請求権仮登記等に基づく所有権移転の本登記手続を求め提訴した。P地裁はA社の請求を認め、本件全土地及びS市T町33番1の土地について所有権移転の本登記手続をせよ等との判決(判決の要旨は別紙3のとおり。)を昭和60年5月22日に行った。
 したがって、本件全土地及びS市T町33番1の土地は、昭和59年2月1日に元本及び利息の総額355,070,000円で請求人からA社へ代物弁済として譲渡されていたものである。
(C)しかし、請求人は、325,000,000円の融資のうち一部しか受領していないこと、また、地価上昇機運もあることから買い戻すべく交渉したがまとまらず、上記(B)のP地裁の判決に不服のため昭和60年6月4日にP高等裁判所(以下「P高裁」という。)へ控訴した。
(D)上記控訴については、最終的にP高裁において平成3年12月25日付で和解となるが、同高裁の和解に先立って、平成3年12月5日にP簡裁において請求人、A社及びB社の間で即決和解(和解の要旨は別紙4のとおり。)を行い、同和解に基づいてP高裁における和解を行ったものである。
(E)したがって、上記(D)の即決和解に基づき平成3年12月18日に900,000,000円を支払い本件全土地の所有権を得ることができたのであるから、即決和解の成立した平成3年12月5日に本件全土地を900,000,000円で取得したものである。
(F)以上のとおり、本件土地は、平成3年12月5日に取得したものであり、それを同年12月18日に譲渡したのであるから、本件土地の譲渡による所得は短期譲渡所得に該当する。
C 取得費の額について
(A)本件土地の買入価額について
 上記Bの(E)のとおり、本件全土地の買入価額は900,000,000円であり、本件土地に対応する買入価額は、平成3年分の相続税財産評価基準に基づきあん分すると、690,390,000円である。
(B)弁護士費用について
 上記Bの(A)ないし(E)のとおり、当該土地の再取得に関する紛争の解決のために要した弁護士費用であるから、弁護士へ支払った10,000,000円は取得費になるものである。
(C)株式会社E(以下「E社」という。)へ支払った和解金15,000,000円について取得費に該当しないとする原処分は認める。
(D)上記(A)ないし(C)により、本件土地の取得費は700,390,000円である。
D 譲渡費用の額について
 本件土地の譲渡に係る譲渡費用については、原処分庁の認定額と同額であるから争わない。
E 保証債務の額について
 保証債務の額については、原処分庁の認定額と同額であるから争わない。
(ロ)以上により、平成3年分の譲渡所得を長期譲渡所得と短期譲渡所得に区分して計算すると、次のとおりとなる。
A 長期譲渡所得の金額
 長期譲渡所得の金額は、次表のとおり10,125,500円である。

(単位:円)
項目 金額
譲渡価額 1 22,664,000
取得費の額 2 11,518,500
譲渡費用の額 3 20,000
特別控除の額 4 1,000,000
長期譲渡所得の金額
1234
10,125,500

 

B 短期譲渡所得の金額
 短期譲渡所得の金額は、次表のとおり 533,545,000円である。

(単位:円)
項目 金額
譲渡価額 1 1,300,000,000
取得費の額 2 700,390,000
譲渡費用の額 3 46,065,000
保証債務の額 4 20,000,000
短期譲渡所得の金額
1234
533,545,000

 

(ハ)以上の結果、請求人の平成3年分の所得金額及び納付すべき税額は次表のとおりとなるから、原処分はその一部を取り消すべきである。

(単位:円)
項目 金額
総所得金額 0
短期譲渡所得の金額 533,545,000
長期譲渡所得の金額 10,125,500
所得控除の額 1,660,000
課税総所得金額 0
課税短期譲渡所得金額 531,885,000
課税長期譲渡所得金額 10,125,000
納付すべき税額 289,996,700



ロ 過少申告加算税の賦課決定処分について
 以上のとおり、更正処分の一部を取り消すべきであるから、これに伴い過少申告加算税の賦課決定処分もその一部を取り消すべきである。

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(2) 原処分庁の主張

 原処分は、次の理由によりいずれも適法である。
イ 更正処分について
(イ)譲渡所得の金額について
 C社らへ譲渡した分についての譲渡価額、譲渡所得の区分、取得費の額及び譲渡費用の額は、次表のとおりである。

(単位:円)
項目 金額
長期譲渡所得 譲渡価額 22,664,000
取得費の額 11,518,500
譲渡費用の額 20,000


 本件土地の譲渡に係る譲渡価額、譲渡所得の区分、取得費の額、譲渡費用の額及び保証債務の額は、以下に述べるとおりである。
A 譲渡価額について
 本件土地の譲渡価額は、1,300,000,000円である。
B 譲渡所得の区分について
(A)本件全土地については、次の事実が認められる。
a 請求人は、本件全土地のうち別紙1の番号6の土地について、代物弁済したとする日以降の昭和60年2月1日に分筆し、その分筆後の同所一丁目120番7の「田」56平方メートルを同年4月2日に請求人の長男Fへ贈与していること。
b 請求人は、G株式会社を介して本件土地の一部をH株式会社へ譲渡するとして、国土利用計画法の規定に基づいてR県知事から平成元年3月15日付の不勧告通知書を受理していること。
c 請求人は、代物弁済で譲渡したとする昭和59年2月1日以後の本件全土地に係る固定資産税について、A社にその負担を求めていると主張するが、同社は本件全土地を取得したとの認識がなく、かつ、同社は昭和59年2月1日から平成3年12月5日までの期間の本件全土地に係る固定資産税を負担した事実はないこと。
d 請求人は、昭和59年2月1日の本件全土地の移転原因は、借入金に係る債務不履行による代物弁済であると主張するが、A社は仮登記担保契約に関する法律第2条《所有権移転の効力の制限等》第1項による代物弁済に係る精算金の見積額の通知を行っていないこと。
e 請求人は、昭和59年2月1日に本件全土地を代物弁済で移転したと主張するが、それに係る譲渡所得について確定申告書を提出していないこと。
f 請求人は、本件全土地を平成3年12月5日に900,000,000円で買い戻したと主張するが、A社は、900,000,000円は請求人に対する貸付金407,977,246円及び同利息492,022,754円の合計額である旨主張していること。
(B)上記(A)によると、請求人は、本件全土地及びS市T町33番1の土地を昭和59年2月1日に代物弁済により譲渡した事実はなく、また、本件全土地を平成3年12月5日に900,000,000円で買い戻した事実もない。
 したがって、本件全土地は、請求人の父Iが昭和25年7月28日に相続により取得した後、請求人が同人から昭和51年2月8日に相続により取得していることから、請求人の本件土地の取得の時期は昭和27年12月31日以前となるので、本件土地の譲渡による所得は長期譲渡所得に該当する。
C 取得費の額について
(A)本件土地の買入価額について
 上記Bの(B)のとおり本件土地の買戻しはないので、買入価額を690,390,000円とする請求人の主張には理由がない。
(B)弁護士費用について
 弁護士費用10,000,000円は、A社からの融資金の返済に係る訴訟に関するものであり、取得に関し争いのある資産につきその所有権等を確保するために直接要した訴訟費用等とは認められず、取得費には該当しない。
(C)E社へ支払った和解金15,000,000円については取得費に該当しない。
(D)上記Bのとおり、本件土地の譲渡による所得は長期譲渡所得となるので、本件土地の取得費は、措置法31条の4の規定により本件土地の譲渡に係る収入金額1,300,000,000円の百分の五に相当する金額65,000,000円である。
D 譲渡費用の額について
 本件土地の譲渡に係る譲渡費用は、46,065,000円である。
E 保証債務の額について
 保証債務の額は20,000,000円である。
(ロ)以上により、平成3年分の譲渡所得は、すべてが長期譲渡所得となり、次表のとおり1,179,060,500円である。

(単位:円)
項目 金額
譲渡価額 1 1,322,664,000
取得費の額 2 76,518,500
譲渡費用の額 3 46,085,000
保証債務の額 4 20,000,000
特別控除の額 5 1,000,000
長期譲渡所得の金額
12345
1,179,060,500


(ハ)以上の結果、請求人の平成3年分の所得金額及び税額は更正処分と同額であるから、本件更正処分は適法である。
ロ 過少申告加算税の賦課決定処分について
 上記のとおり、本件更正処分は適法であり、請求人には国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項及び第2項の規定に基づき過少申告加算税の賦課決定処分を行ったものである。

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3 判断

 本件審査請求の争点は、本件土地の譲渡による譲渡所得の長期、短期の区分及び本件土地の取得費の額にあるので、以下審理する。

(1) 更正処分について

イ 譲渡所得の金額について
 C社らへ譲渡した分についての譲渡価額、譲渡所得の区分、取得費の額及び譲渡費用の額は次表のとおりであり、請求人及び原処分庁の双方に争いはなく、当審判所の調査によっても相当と認められる。

(単位:円)
項目 金額
長期譲渡所得 譲渡価額 22,664,000
取得費の額 11,518,500
譲渡費用の額 20,000


 本件土地の譲渡に係る譲渡価額、譲渡所得の区分、取得費の額、譲渡費用の額及び保証債務の額については、以下のとおりである。
(イ)譲渡価額について
 本件土地の譲渡価額については、請求人及び原処分庁の双方に争いはなく、当審判所の調査によっても相当と認められる。
 したがって、本件土地の譲渡価額は、1,300,000,000円である。
(ロ)譲渡所得の区分について
 請求人は、本件土地の譲渡による所得は短期譲渡所得であると主張し、原処分庁は、長期譲渡所得であると主張するので、以下審理する。
A 請求人は、A社との間で土地開発及び融資に関して一連の係争を行っているが、次の事項については、請求人及び原処分庁の双方に争いはなく、当審判所の調査及び原処分関係資料によってもその事実が認められる。
(A)昭和58年7月21日にP簡裁において請求人とA社との間で即決和解が成立し、その和解条項の要旨は別紙2のとおり、請求人は、請求人の所有する土地の開発行為をA社へ委託し、昭和58年12月末日を返済期限として追加融資を受けることとしたものであること。
(B)昭和58年12月28日付の請求人からA社あての「願書」には次の記載があること。
a 上記(A)の即決和解に係る融資金を昭和58年12月末日の返済期日までに返済できないので、昭和59年1月末日まで猶予してほしい。
b 猶予期限までに返済できない場合又は猶予期間中でも請求人に返済能力がないと判断したときは、同和解条項に記載した一切の土地を所有権移転されても異議がない。
(C)A社は、上記(B)の願書記載の期限までに請求人から融資金の返済がないことから、昭和59年7月9日にP地裁に「農地法5条による所有権移転許可申請手続等請求事件」を提訴したこと。
(D)昭和60年5月22日にP地裁において原告A社、被告請求人に係る上記(C)の判決があり、その要旨は別紙3のとおり、請求人が敗訴していること。
(E)昭和60年6月4日に請求人は、上記(D)のP地裁の判決の取消しを求め、P高裁へ控訴したこと。
(F)平成3年12月5日にP簡裁において請求人とA社及びB社の間で即決和解が成立し、その和解条項の要旨は別紙4のとおり、請求人がA社に対して有する債務の額は900,000,000円であり、A社は同金額の支払を受けると同時に担保権設定のための各登記の抹消手続を行うこと及び請求人は本件土地を1,300,000,000円でB社へ譲渡することとしたものであること。
(G)平成3年12月25日にP高裁において上記(E)の控訴事件について和解が成立し、その和解条項の要旨は次のとおりであること。
a 請求人のA社からの債務は900,000,000円であり、平成3年12月18日に同金額を請求人はA社へ支払った。
b A社は、その余の請求を放棄する。その他相互に債権債務はない。
B 当審判所の調査及び原処分関係資料によれば、次の事実が認められる。
(A)請求人は、当審判所に対して次のように答述していること。
 昭和58年7月21日にP簡裁で即決和解した時担保に供した別紙1の土地のうち、地目「畑」については現在まで先祖代々畑として利用してきたし、地目「田」については昭和58年7月頃までは牧草を耕作していたが、その後はだれにも利用されず「荒れ地」となっている。また、地目「山林」等については現況が更地となっており昭和47年頃から現在まで更地のままでだれにも利用させていない。
(B)P法務局S支局備付けの土地登記簿により確認した登記事項
a 本件全土地は、請求人の父Iが昭和25年7月28日の相続を原因として昭和41年5月18日に所有権移転登記を行い、その後、Iの昭和51年2月8日の死亡により昭和51年12月15日に相続を原因としてIから請求人へ所有権移転登記がされていること。
b 別紙1の番号6の土地について昭和60年2月1日に分筆し、その分筆後の同所120番7の「田」56平方メートルを、同年4月2日に請求人から請求人の長男Fへ贈与し、同年4月12日に所有権移転登記をしていること。
c 本件全土地についてA社が担保権設定のため行った所有権移転、所有権移転請求権仮登記及び根抵当権設定等の各登記は、上記Aの(F)の即決和解に基づきすべて抹消されていること。
d 本件土地は、平成3年12月12日の売買を原因として、平成3年12月19日に請求人からB社へ所有権移転登記がされていること。
C 以上の事実に基づいて判断したところ、次のとおりである。
(A)請求人は、昭和59年2月1日に本件全土地をA社へ代物弁済により譲渡し、平成3年12月5日に買い戻したものであると主張するが、次のことから代物弁済による譲渡及び買戻しの事実があったとは認められない。
a 請求人とA社は、別紙2和解調書5の(3)記載の内容に関し、A社は売買予約の締結であると主張し、請求人は仮登記担保契約であると主張して、上記Aの(C)のとおりP地裁において係争したこと。
b 上記aの係争は、上記Aの(D)のとおり請求人の敗訴となったが、上記Aの(E)のとおり請求人はP高裁へ控訴していることから確定判決とはならず、上記Aの(G)のとおり係争は結局和解で終了し、その内容は、和解成立までの融資に係る債務を900,000,000円としたものであること。
c 別紙2和解調書5の(5)のとおり、A社は担保権確保のため本件全土地に各種の登記を行ったが、すべて上記Aの(F)の即決和解によりこれが抹消され、同社への所有権移転が行われていないこと。
d 本件全土地は、A社へ担保に供され、同社によって担保措置のため各種登記が行われたが、上記Bのとおり使用、収益、処分権は請求人に帰属していたこと。
(B)上記(A)のとおり、本件土地は代物弁済による譲渡及び買戻しの事実はなく、上記Bの(B)のaのとおり相続によって取得したものであるから、本件土地の取得の時期は昭和27年12月31日以前となり、本件土地の譲渡による所得は長期譲渡所得に該当する。
(ハ)取得費の額について
 請求人は、本件土地の取得費の額は、700,390,000円であると主張するので、以下審理する。
A 本件土地の買入価額について
 請求人は、本件土地の買入価額は本件全土地の買入価額900,000,000円のうち本件土地に対応する金額の690,390,000円であると主張するが、上記(ロ)のCで判断したとおり、900,000,000円の支払は、融資に係る債務の弁済であるから、本件土地の買入価額はない。
B 弁護士費用について
 請求人は、弁護士へ支払った10,000,000円は、本件土地の取得費に該当すると主張し、原処分庁は、本件土地の取得費には該当しないと主張するので、以下審理する。
(A)次の事項については、請求人及び原処分庁の双方に争いはなく、当審判所の調査及び原処分関係資料によってもその事実が認められる。
a J弁護士は、前記(ロ)のAの(E)のP高裁の控訴、(F)のP簡裁の即決和解及び(G)のP高裁の和解について、請求人の代理人として関与したこと。
b 平成4年1月31日付で、J弁護士から請求人あてに、「A社の件」の謝金として10,000,000円を受領したことを証する領収書が発行されていること。
(B)そうすると、上記(ロ)のCの判断のとおり、一連の係争は融資に関する争いであることから、当該弁護士費用は、取得に関し争いのある資産につきその所有権等を確保するために直接要した訴訟費用等とは認められず取得費には該当しない。
C E社へ支払った和解金15,000,000円が取得費に該当しないことについては、請求人及び原処分庁の双方に争いはなく、当審判所の調査によっても相当と認められる。
D 上記(ロ)のCの(B)の判断及び上記AないしCの判断の結果、本件土地は、相続によって所有権が請求人に帰属した後初めてB社へ譲渡されたものであるから、本件土地の取得費は、措置法31条の4の規定によって、本件土地の譲渡に係る収入金額1,300,000,000円の百分の五に相当する金額65,000,000円となる。
(ニ)譲渡費用の額について
 本件土地の譲渡に係る譲渡費用については、請求人及び原処分庁の双方に争いはなく、当審判所の調査によっても相当と認められる。
 したがって、本件土地の譲渡に係る譲渡費用は、46,065,000円である。
(ホ)保証債務の額について
 保証債務の額については、請求人及び原処分庁の双方に争いはなく、当審判所の調査によっても相当と認められる。
 したがって、保証債務の額は20,000,000円である。
ロ 以上の結果、長期譲渡所得金額は1,179,060,500円となり更正処分の金額と同額であるから、本件更正処分は適法である。

(2) 過少申告加算税の賦課決定処分について

 以上のとおり本件更正処分は適法であり、また、請求人には更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が更正処分前の税額の計算の基礎としなかったことについて、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項及び第2項の規定に基づいてした過少申告加算税の賦課決定処分は適法である。

(3) 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても相当と認められる。

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