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(平6.4.6、裁決事例集No.47 271)

《裁決書(抄)》

1 事実

 審査請求人(以下「請求人」という。)は、不動産に関するコンサルタント業を営む同族会社であるが、昭和63年10月1日から平成元年9月30日までの事業年度(以下「平成元年9月期」という。)、平成元年10月1日から平成2年9月30日までの事業年度(以下「平成2年9月期」という。)及び平成2年10月1日から平成3年9月30日までの事業年度(以下「平成3年9月期」といい、平成元年9月期及び平成2年9月期と併せて「本件各事業年度」という。)の法人税の青色の確定申告書並びに平成2年10月1日から平成3年9月30日までの課税事業年度(以下「平成3年9月課税事業年度」という。)の法人臨時特別税の青色の確定申告書に次表のとおり記載して、それぞれ法定申告期限までに申告した。

(1) 法人税

(単位:円)
項目
事業年度
所得金額 納付すべき税額
平成元年9月期 132,630,776 51,674,800
平成2年9月期 94,083,572 30,849,900
平成3年9月期 113,950,887 28,116,600

(2) 法人臨時特別税

(単位:円)
項目
課税事業年度
課税標準法人税額 納付すべき税額
平成3年9月課税事業年度 38,971,000 974,200

 原処分庁は、これに対し平成4年10月30日付で本件各事業年度について次表のとおり法人税の更正処分(以下「本件法人税更正処分」という。)及び法人税に係る過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件法人税賦課決定処分」という。)並びに平成3年9月課税事業年度の法人臨時特別税の更正処分(以下「本件特別税更正処分」という。)及び法人臨時特別税に係る過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件特別税賦課決定処分」という。)をした。

(1) 法人税

(単位:円)
  区分 更正処分 賦課決定処分
事業年度 項目 所得金額 納付すべき税額 過少申告加算税の額
平成元年9月期 209,630,776 84,014,800 3,234,000
平成2年9月期 103,798,946 34,735,900 388,000
平成3年9月期 128,335,524 33,511,000 539,000

(2) 法人臨時特別税

(単位:円)
  区分 更正処分 賦課決定処分
課税事業年度 項目 課税標準法人税額 納付すべき税額 過少申告加算税の額
平成3年9月課税事業年度 44,365,000 1,109,100 13,000

 請求人は、これらの処分を不服として平成4年12月28日に審査請求をした。

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2 主張

(1) 請求人の主張

イ 本件法人税更正処分について
本件法人税更正処分は、次の理由により違法であるから、平成元年9月期及び平成2年9月期はいずれもその全部の取消し、並びに平成3年9月期はその一部の取消しを求める。
(イ) 支払手数料の損金性
A 請求人は、平成元年9月期においてA株式会社(以下「A社」という。)及びB株式会社(以下「B社」という。)に対する支払手数料を損金の額に算入し、平成2年9月期及び平成3年9月期において株式会社C(以下「C社」という。)に対する支払手数料(それぞれ消費税相当額を除く。以下、これらの支払手数料を併せて「本件各支払手数料」という。)を損金の額に算入していたところ、原処分庁は、本件各支払手数料はそれぞれD株式会社(以下「D社」という。)が計画し、請求人が造成事業を請け負ったP県R市S町及びT町地区のゴルフ場(以下「本件ゴルフ場」という。)用地の取得に係る地上げ委託費用、本件ゴルフ場設計申請業務委託費用及び本件ゴルフ場開発に伴う環境アセスメント費用であり、本件ゴルフ場用地を事業の用に供するために直接要した費用であるから当該土地の取得価額に算入すべきものとして、損金の額に算入することを認めなかった。
しかしながら、本件各支払手数料の内容はそれぞれ次のとおりであり、原処分庁は事実を誤認している。
(A) A社に対する支払手数料
請求人がA社に対して支払った手数料は、本件ゴルフ場開発事業に関する許認可を得るため、R市に提出する事前協議申出書に添付する開発区域の80パーセントの地権者の要望書の取りまとめ業務と当該区域の各種情報を得るための業務を委託したことに係る諸費用である。
(B) B社に対する支払手数料
請求人がB社に対して支払った手数料は、上記(A)の事前協議申出書の申請書類に添付する排水、土量、コースレイアウト等の概要図面の設計関係の業務を委託したことに係る諸費用である。
(C) C社に対する支払手数料
請求人がC社に対して支払った手数料は、P県がゴルフ場開発事業に際し平成3年4月から義務づけた環境アセスメント調査のため、四半期ごとの雨量及び井戸水調査、四季それぞれの野鳥類の棲息状況等の調査及び資料の収集整理等の業務を委託したことに係る諸費用である。
B 以上のとおり、本件各支払手数料は、土地の取得とは関係のないゴルフ場開発事業の許認可取得のための費用であるから、それらを支払った日の属する事業年度の損金に算入すべきである。
したがって、本件各支払手数料を用地の取得に直接要した費用に該当するとし、これらの費用を本件ゴルフ場用地の取得価額に算入した本件法人税更正処分は事実誤認に基づくものである。
(ロ) 所得金額
平成3年1月22日に新規に購入したU市V町1丁目18番14号所在の宅地66.11平方メートル(以下「V町の土地」という。)に係る負債利子のうち3,600,000円が損金の額に算入されないことについては争わないので、平成3年9月期の所得金額は、請求人が確定申告書に記載した113,950,887円に当該金額を加算した117,550,887円である。
また、平成元年9月期及び平成2年9月期の所得金額は、請求人が確定申告書に記載したとおり、平成元年9月期132,630,776円及び平成2年9月期94,083,572円である。
ロ 本件法人税賦課決定処分について
以上のとおり、本件法人税更正処分はいずれも違法であり、平成元年9月期及び平成2年9月期はいずれもその全部を、並びに平成3年9月期はその一部を取り消すべきであるから、これに伴い本件法人税賦課決定処分の平成元年9月期及び平成2年9月期の全部並びに平成3年9月期の一部を取り消すべきである。
ハ 本件特別税更正処分について
前記イで述べたとおり、本件法人税更正処分はいずれも違法であり、平成3年9月期はその一部を取り消すべきであるから、これに伴い本件特別税更正処分も、その一部を取り消すべきである。
ニ 本件特別税賦課決定処分について
以上のとおり、本件特別税更正処分はその一部を取り消すべきであるから、これに伴い本件特別税賦課決定処分もその一部を取り消すべきである。

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(2) 原処分庁の主張

 原処分は、次の理由により適法である。
イ 本件法人税更正処分について
(イ) 支払手数料の損金性
A 原処分庁の調査によれば、次の事実が認められる。
(A) 請求人は、D社と昭和63年2月10日に覚書(以下「本件事業に関する覚書」という。)を取り交わし、本件ゴルフ場開発事業に対する一切の許認可を取得すること及び本件ゴルフ場用地の全域の土地を取得し引き渡すことを請け負ったこと。
(B) 請求人は、本件ゴルフ場用地として昭和63年7月27日にP県R市S町字○○328番2外に所在する98筆の原野(104,464.60平方メートル。以下「S町328番外の土地」という。)を632,000,000円で購入し、本件各事業年度においても同地区周辺の土地を順次購入していること。
(C) 請求人は、昭和63年当時に本件ゴルフ場用地の取得のために地権者の同意を得る仕事をA社に依頼していること。
(D) 上記(C)の対価として、請求人はA社に対し、昭和63年10月12日に10,000,000円及び平成元年7月11日に53,000,000円を本件ゴルフ場開発計画準備費用として支払い、いずれも「支払手数料」の科目で処理し、損金の額に算入していること。
(E) 請求人はB社に対し、昭和63年4月2日付で本件ゴルフ場建設工事の設計申請業務を発注し、注文請書を収受していること。
(F) 上記(E)の対価として、請求人はB社に対し、平成元年9月27日に14,000,000円を本件ゴルフ場開発事前申請手数料として支払い、「支払手数料」の科目で処理し、損金の額に算入していること。
(G) 請求人は、C社に対し、平成元年10月31日に本件ゴルフ場建設に伴うP県R市S町及びT町地区の環境影響調査を発注し、同日注文請書を収受していること。
(H) 上記(G)の対価として、請求人はC社に対し、平成2年2月5日に10,000,000円、同年6月25日に10,000,000円及び同年11月30日に10,000,000円を本件ゴルフ場の環境アセスメントの対価として、また、同年12月21日に2,369,000円を環境アセスメント計画書作成の対価として支払い、いずれも「支払手数料」の科目で処理し、損金の額に算入していること。
B ところで、ゴルフ場用地の取得価額は、その土地の購入代金はもとより、当該土地の購入のために要した費用として仲介手数料、土地の譲渡に関し地権者の同意を得るための交渉費用、周辺地域の環境調査費用等も土地の取得価額に算入されるべきであると解される。
また、土地の購入のために要した費用は、土地を購入した時期に左右されるものではなく、仮に現時点においては未だ土地を購入していないとしても、土地を購入するために要した費用である以上、それを取得した土地にどのように配賦するかはともかくとして、土地の取得価額を構成するというべきである。
C これを本件について考えてみると、前記Aの(A)及び(B)で述べたとおり、請求人は、D社から本件ゴルフ場の開発事業に対する一切の許認可の取得及び本件ゴルフ場用地の全域の土地を取得し引き渡すことを請け負い、その契約に従って本件ゴルフ場用地の一部を取得している事実が認められる。
また、前記Aの(C)ないし(H)で述べた、請求人がA社に対して支払った本件ゴルフ場開発計画準備費用、B社に対して支払った本件ゴルフ場建設工事の設計申請手数料及びC社に対して支払った環境アセスメント費用及び同計画書作成費用は、いずれも本件ゴルフ場用地の取得を目的とした必要不可欠な支払であり、本件ゴルフ場用地の購入のために要した費用であると認められる。
そうすると、請求人がA社、B社及びC社に対し支払手数料として支払った本件各支払手数料の額は、請求人が本件ゴルフ場用地として、既に取得したあるいは今後取得する土地の取得価額に算入されるべきであると解するのが相当である。
したがって、本件各支払手数料の額は、土地の取得とは全く関係のない費用であるから、それぞれ支払った日の属する事業年度の損金の額に算入されるべきであるとする請求人の主張には理由がない。
(ロ) 所得金額
A 平成元年9月期
請求人の平成元年9月期の所得金額は、次の(A)の金額に(B)の金額を加算した金額209,630,776円となり、本件法人税更正処分に係る所得金額と同額となる。
(A) 申告に係る所得金額          132,630,776円
(B) 損金の額に算入されない支払手数料の額  77,000,000円
A社に対し昭和63年10月12日に支払った10,000,000円及び平成元年7月11日に支払った53,000,000円並びにB社に対し平成元年9月27日に支払った14,000,000円は、ゴルフ場用地の取得のために直接要した費用であり、土地の取得価額に含めるべき費用であるから、損金の額に算入できない。
B 平成2年9月期
請求人の平成2年9月期の所得金額は、次の(A)の金額に(B)の金額を加算した金額から(C)の金額を減算した金額103,798,946円となり、本件法人税更正処分に係る所得金額と同額となる。
(A) 申告に係る所得金額          94,083,572円
(B) 損金の額に算入されない支払手数料の額 19,417,474円
C社に対し平成2年2月5日に支払った10,000,000円及び同年6月25日に支払った10,000,000円は、ゴルフ場用地の取得のために直接要した費用であり、土地の取得価額に含めるべき費用であるから、それぞれの金額から消費税相当額を除いた金額19,417,474円は、損金の額に算入できない。
(C) 事業税認定損     9,702,100円
本件法人税更正処分により平成元年9月期の所得金額が増加したことに伴う事業税認定損は、9,702,100円である。
C 平成3年9月期
請求人の平成3年9月期の所得金額は、次の(A)の金額に(B)及び(C)の金額を加算した金額から(D)の金額を減算した金額128,335,524円となり、本件法人税更正処分に係る所得金額と同額となる。
(A) 申告に係る所得金額          113,950,887円
(B) 損金の額に算入されない支払手数料の額  12,008,737円
C社に対し平成2年11月30日に支払った10,000,000円及び同年12月21日に支払った2,369,000円は、ゴルフ場用地の取得のために直接要した費用であり、土地の取得価額に含めるべき費用であるから、それぞれの金額から消費税相当額を除いた金額12,008,737円は、損金の額に算入できない。
(C) 新規取得土地等に係る負債利子の損金不算入額 3,600,000円
平成3年1月22日に90,000,000円で購入したV町の土地は、租税特別措置法(以下「措置法」という。)第62条の2((新規取得土地等に係る負債の利子の課税の特例))第3項第1号イに規定する新規取得土地等に該当するため、同条第1項の規定に基づき負債利子の損金不算入額の計算をしたところ、3,600,000円が損金不算入となる。
(D) 事業税認定損               1,224,100円
本件法人税更正処分により平成2年9月期の所得金額が増加したことに伴う事業税認定損は、1,224,100円である。
D 以上のとおり、請求人の本件各事業年度の所得金額は、いずれも本件法人税更正処分に係る所得金額と同額であるから、本件法人税更正処分は適法である。
ロ 本件法人税賦課決定処分について
以上のとおり、本件法人税更正処分はいずれも適法であり、かつ、請求人には、国税通則法第65条((過少申告加算税))第4項に規定する正当な理由があるとは認められないため、同条第1項の規定に基づき過少申告加算税を賦課決定したものである。
ハ 本件特別税更正処分について
平成3年9月期の法人税の更正処分に基づき、請求人の平成3年9月課税事業年度の課税標準法人税額は、次表のとおり44,365,000円となり、本件特別税更正処分と同額となるので、本件特別税更正処分は適法である。

(単位:円)
課税事業年度
区分
平成3年9月課税事業年度
課税所得金額 1 128,335,000
1のうち年 800万円相当額以下の金額 2 8,000,000
1のうち年 800万円相当額を超える金額( 1 − 2 ) 3 120,335,000
2 × 28%相当額 4 2,240,000
3 × 37.5%相当額 5 45,125,625
基準法人税額( 4 + 5 ) 6 47,365,625
控除額 7 3,000,000
課税標準法人税額(67 44,365,000

(注)「課税所得金額」欄及び「課税標準法人税額」欄の金額は、1,000円未満の端数を切り捨てた後の金額である。以下同じ。


ニ 本件特別税賦課決定処分について
以上のとおり、本件特別税更正処分は適法であり、また、請求人には、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項の規定に基づき過少申告加算税を賦課決定したものである。

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3 判断

 本件審査請求の争点は、本件各支払手数料の額を支払った日の属する事業年度の損金の額に算入することの適否及び本件各事業年度の所得金額の多寡並びに平成3年9月課税事業年度の法人臨時特別税の多寡にあるので、以下審理する。

(1) 本件法人税更正処分について

イ 支払手数料の損金性
請求人は、本件各支払手数料は、土地の取得とは関係のない本件ゴルフ場開発事業の許認可取得のための費用であるから、支払った日の属する事業年度の損金の額に算入すべきである旨主張するので審理したところ、次のとおりである。
(イ) 当審判所が請求人の提出した資料及び原処分関係資料を調査したところ、次の事実が認められる。
A 請求人は、開発後にD社が運営する本件ゴルフ場を完成させるための全面的なD社への協力及び本件ゴルフ場開発事業に係る許認可の取得、ゴルフ場として使用する土地の取得(賃貸契約及び代替地等の交渉並びに実行を含む。)等の請負を約した本件事業に関する覚書を、昭和63年2月10日にD社と取り交わしたこと。
B 請求人は、昭和63年7月27日にE株式会社からS町328番外の土地を632,000,000円で購入し、その後においても周辺の土地を順次購入していること。
なお、請求人は、S町328番外の土地及びその後購入した本件ゴルフ場周辺の土地を、すべて流動資産として商品勘定に計上していること。
C 請求人は、A社に対し、昭和62年10月頃、本件ゴルフ場用地の取得のために地権者から開発要望書を取得する仕事を委託しており、その対価として、昭和63年10月12日に10,000,000円及び平成元年7月11日に53,000,000円を支払い、いずれも「支払手数料」の科目で処理し、損金の額に算入していること。
D 請求人は、B社に対し、昭和63年4月2日に本件ゴルフ場建設工事の設計申請業務を委託しており、その対価として、昭和63年4月19日に10,000,000円及び平成元年9月27日に14,000,000円を支払い、「支払手数料」の科目で処理し、損金の額に算入していること。
E 請求人は、C社に対し、平成元年10月31日に本件ゴルフ場建設に伴う環境影響調査を委託しており、その対価として、平成2年2月5日、同年6月25日及び同年11月30日に各10,000,000円(いずれも消費税相当額291,263円を含む。)を支払い、いずれも「支払手数料」の科目で処理し、損金の額に算入していること。
F 請求人がC社に平成2年12月21日に支払って「支払手数料」の科目で処理し、損金の額に算入した2,369,000円(消費税相当額69,000円を含む。)は、F鉄道株式会社○○線G駅及び××沼周辺のR市Gニュータウン開発計画の計画書(以下「ニュータウン開発計画書」という。)の作成費用であること。
(ロ) 請求人の専務取締役I(以下「I」という。)は、当審判所に対して次のように答述している。
A 請求人がD社から請け負っている業務の範囲は、本件事業に関する覚書に約定された本件ゴルフ場の開発事業に係る一切の許認可の取得及び本件ゴルフ場用地の全域の取得に始まり、本件ゴルフ場全体の建設工事を行い、P県の最終的な検査の終了後、完成したゴルフ場のD社への引渡しまでであること。
B 請求人が取得した土地の取得費用については、自社ビルを建設したり、社員寮として活用する予定の土地に係る部分は、固定資産として土地勘定に計上し、テナントビル、オフィスビル等への商品化を予定している土地に係る部分及び本件ゴルフ場用地として購入した土地については、流動資産として商品勘定に計上していること。
(ハ) P県都市部宅地課長は、当審判所に対して次のように答述している。
A 一定規模以上のゴルフ場の建設を目的として開発を行う場合、事業者は、当該開発計画について、知事との事前協議を経て、都市計画法の規定に基づく開発行為許可を得る必要があること。
B 知事との事前協議に際し、ゴルフ場開発区域の80パーセント以上の地権者の開発要望書及びゴルフ場開発地域の設計書が必要であること。
C P県では平成2年4月1日以降、ゴルフ場の開発に環境アセスメント調査を義務づけており、開発行為許可を得るためには環境アセスメント調査書が必要であること。
(ニ) 以上を総合すると、以下のとおりである。
A 前記(イ)及び(ロ)によれば、請求人は、D社から本件ゴルフ場開発事業に係る許認可を取得すること及びゴルフ場用地を取得することに始まり、本件ゴルフ場の建設工事からP県の検査を受けた後の本件ゴルフ場の引渡しに至るまでの一連の本件ゴルフ場の開発行為を行うことを請け負ったことが認められる。
そうすると、請求人は、完成した本件ゴルフ場の引渡しをD社に約したのであるから、D社に引き渡すまでの本件ゴルフ場の開発に要する費用は、棚卸資産として資産計上すべきであると解するのが相当である。
B ところで、本件各支払手数料のうち、前記(イ)のCないしEの各支払手数料は、いずれも本件ゴルフ場の開発行為許可を得る際に必要とされる前記(ハ)のB及びCの書類の作成等に係る費用であるところから、本件ゴルフ場の開発に要する費用と認められるが、前記(イ)のFのニュータウン開発計画書の作成費用は、請求人の経営資料収集のために支出された費用であって本件ゴルフ場の開発に要した費用とは認められない。
C したがって、ニュータウン開発計画書の作成費用以外の本件各支払手数料(以下「本件ゴルフ場開発に係る各支払手数料」という。)は、本件ゴルフ場の開発に要する費用と認められるから、法人税法施行令第32条((たな卸資産の取得価額))第1項第1号に規定する購入した棚卸資産の購入の代価とみるのが相当である。
(ホ) また、本件各事業年度において、請求人が本件ゴルフ場の全部又は一部をD社に引き渡した事実がないことから、本件ゴルフ場開発に係る各支払手数料の額は、本件各事業年度末に、棚卸資産として計上すべきであり、これらを支払った日の属する事業年度の損金の額に算入すべきではない。
したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
なお、ニュータウン開発計画書の作成費用は、上記(ニ)のとおり、請求人の経営資料収集のために支出された費用であって、本件ゴルフ場の開発に要した費用とは認められず、また、資産として計上すべき事由もないことから、支払った日の属する平成3年9月期の損金の額に算入した請求人の処理に誤りはない。
ロ 所得金額
(イ) 平成元年9月期
A 請求人が昭和63年10月12日及び平成元年7月11日にA社に対して支払手数料としてそれぞれ支払った10,000,000円及び53,000,000円並びに平成元年9月27日にB社に対して支払手数料として支払った14,000,000円は、前記イの(ニ)のとおり平成元年9月期の損金の額に算入される金額とは認められない。
B したがって、請求人の平成元年9月期の所得金額は、次の(A)の金額に(B)の金額を加算した金額209,630,776円となる。
(A) 申告に係る所得金額      132,630,776円
(B) 損金とならない支払手数料の額  77,000,000円
(ロ) 平成2年9月期
A 請求人が平成2年2月5日及び同年6月26日にC社に対して支払手数料としてそれぞれ支払った10,000,000円、合計20,000,000円のうち消費税相当額を除いた19,417,474円は、前記イの(ニ)のとおり平成2年9月期の損金の額に算入される金額とは認められない。
B 更に、原処分庁は、本件法人税更正処分により平成元年9月期の所得金額が増加したことに伴う事業税認定損を9,702,100円と認定しているところ、当審判所の調査によっても原処分庁の認定は相当と認められる。
C したがって、請求人の平成2年9月期の所得金額は、次の(A)の金額に、(B)の金額を加算した金額から(C)の金額を減算した103,798,946円となる。
(A) 申告に係る所得金額      94,083,572円
(B) 損金とならない支払手数料の額 19,417,474円
(C) 事業税認定損          9,702,100円
(ハ) 平成3年9月期
A 請求人が平成2年11月30日にC社に対して支払手数料として支払った10,000,000円のうち消費税相当額を除いた9,708,737円は、前記イの(ニ)のとおり、平成3年9月期の損金の額に算入される金額とは認められない。
B また、原処分庁は、V町の土地は、措置法第62条の2第3項第1号イに規定する新規取得土地等に該当するため、同条第1項の規定に基づき負債利子の損金不算入額を3,600,000円と認定しているところ、この点については、請求人及び原処分庁の双方に争いはなく、当審判所の調査によっても、原処分庁の認定は相当と認められる。
C 更に、原処分庁は、本件法人税更正処分により平成2年9月期の所得金額が増加したことに伴う事業税認定損を1,224,100円と認定しているところ、当審判所の調査によっても、原処分庁の認定は相当と認められる。
D したがって、請求人の平成3年9月期の所得金額は、次の(A)の金額に(B)及び(C)の金額を加算した金額から(D)の金額を減算した126,035,524円となる。
(A) 申告に係る所得金額             113,950,887円
(B) 損金とならない支払手数料の額          9,708,737円
(C) 新規取得土地等に係る負債利子の損金不算入額   3,600,000円
(D) 事業税認定損                  1,224,100円
(ニ) 以上の結果、請求人の本件各事業年度の所得金額は、次表のとおりとなり、平成元年9月期及び平成2年9月期は、いずれも本件法人税更正処分に係る所得金額と同額となるから原処分は適法であり、平成3年9月期は、本件法人税更正処分に係る所得金額に満たないので、その一部を取り消すべきである。

(単位:円)
項目
事業年度
所得金額
平成元年9月期 209,630,776
平成2年9月期 103,796,946
平成3年9月期 126,035,524

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(2) 本件法人税賦課決定処分について

 請求人には、本件各事業年度の確定申告の税額を計算するに当たり、原処分庁が過少申告加算税の基礎とした税額のうち、一部取消しにより減額される部分以外の税額に係る事実を確定申告の税額の計算の基礎としなかったことについて、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められない。
したがって、原処分庁が過少申告加算税の基礎とした税額のうち、当該減額される部分以外の税額を基礎とする部分に係る過少申告加算税の賦課決定処分は適法である。
ところで、平成3年9月期については、過少申告加算税の基礎となる税額は4,530,000円であるから過少申告加算税の額は453,000円となるところ、この金額は、本件法人税賦課決定処分に係る金額539,000円に満たないので、本件法人税賦課決定処分は、その一部を取り消すべきである。

(3) 本件特別税更正処分について

 本件特別税更正処分については、平成3年9月期の本件法人税更正処分の一部が取り消されるべきであるから、平成3年9月課税事業年度における課税標準法人税額は、次表のとおりとなり、この金額は、本件特別税更正処分に係る課税標準法人税額に満たないので、その一部を取り消すべきである。

(単位:円)
課税事業年度
区分
平成3年9月課税事業年度
課税所得金額 1 126,035,000
1のうち年 800万円相当額以下の金額 2 8,000,000
1のうち年 800万円相当額を超える金額( 1 − 2 ) 3 118,035,000
2 × 28%相当額 4 2,240,000
3 × 37.5%相当額 5 44,263,125
基準法人税額( 4 + 5 ) 6 46,503,125
控除額 7 3,000,000
課税標準法人税額(67 43,503,000

(4) 本件特別税賦課決定処分について

 請求人には、平成3年9月課税事業年度の税額を計算するに当たり、原処分庁が過少申告加算税の基礎とした税額のうち、一部取消しにより減額される部分以外の税額に係る事実を平成3年9月課税事業年度の税額の計算の基礎としなかったことについて、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められない。
したがって、原処分庁が過少申告加算税の基礎とした税額のうち、当該減額される部分以外の税額を基礎とする部分に係る過少申告加算税の賦課決定処分は適法である。
ところで、平成3年9月課税事業年度の過少申告加算税の基礎となる税額は110,000円であるから過少申告加算税の額は11,000円となるところ、この金額は、本件特別税賦課決定処分に係る金額13,000円に満たないので、本件特別税賦課決定処分は、その一部を取り消すべきである。

(5) その他

 原処分のその余の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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