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(平6.6.24、裁決事例集No.47 329頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

 審査請求人(以下「請求人」という。)は、○○販売及び不動産売買を業とする同族会社であるが、平成2年2月1日から平成3年1月31日までの事業年度(以下「平成3年1月期」という。)の青色の法人税の確定申告書に所得金額を1,610,689,297円、納付すべき税額を、1,007,677,000円と記載して法定申告期限までに申告した。
 原処分庁は、これに対し平成4年6月30日付で平成3年1月期の法人税について欠損金額を3,900,222,725円、納付すべき税額を零円、翌期へ繰り越す欠損金の額を3,900,222,725円とする更正処分をした。
 請求人は、その後、平成4年8月7日に、平成3年1月期の欠損金3,900,222,725円の全額を平成元年2月1日から平成2年1月31日までの事業年度(以下「平成2年1月期」という。)に繰り戻す旨及び還付金額を1,635,141,827円とする旨を記載した「欠損金の繰戻しによる還付請求書」(以下「本件還付請求書」という。)を提出した。
 原処分庁は、これに対し、平成4年10月30日付で欠損金の繰戻しによる還付請求(以下「本件還付請求」という。)に理由がない旨の通知処分をした。
 請求人は、この通知処分を不服として平成4年12月31日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、これに対し平成5年4月13日付で棄却の異議決定をした。
 請求人は、異議決定後の原処分に不服があるとして、平成5年5月12日に審査請求をした。

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2 主張

(1) 請求人の主張

 原処分は、次の理由により違法であるから、その全部の取消しを求める。
イ 原処分庁は、本件還付請求書が提出期限までに提出されていないから、本件還付請求は認められないとするが、請求人は、平成4年6月30日付で平成2年1月期の法人税の所得金額を6,874,674,892円とする更正処分及び平成3年1月期の法人税の欠損金額を3,900,222,725円とする更正処分を受けたものであり、原処分庁が平成2年1月期の更正処分を平成2年1月期の確定申告書提出後1年以内に行っていたならば、請求人は、その更正処分の内容を反映させたところで平成3年1月期の確定申告書を法定申告期限内に提出し、かつ、それと同時に、当該申告書に記載される欠損金額に基づいて本件還付請求をしたはずである。
ロ したがって、本件還付請求書の提出が期限後となったのは、原処分庁の更正処分の遅れに起因するものであって、これは真にやむを得ない事情に当たるから本件還付請求は認められるべきであり、更正処分の時期によって本件還付請求が認められず、還付が受けられなくなるということは、著しく不公平な取扱いであって、法の趣旨に反する。

(2) 原処分庁の主張

 原処分は、次のとおり適法である。
イ 法人税法第81条((欠損金の繰戻しによる還付))第1項及び第3項によると、内国法人の青色申告書である確定申告書を提出する事業年度において生じた欠損金額があるときは、当該申告書を提出期限までに提出した場合で、その申告書の提出と同時に納税地の所轄税務署長に対し、当該欠損金額に係る事業年度開始の日前1年以内に開始したいずれかの事業年度の所得に対する法人税の額に、当該いずれかの事業年度の所得の金額のうちに占める欠損事業年度の欠損金額に相当する金額の割合を乗じて計算した金額に相当する法人税の還付を請求することができる旨規定されている。
 すなわち、この制度は、法人が確定申告書を期限内に提出すると同時に、当該申告書に記載された欠損金額に基づいて法人税の還付請求書を提出した場合にその還付請求が認められるものである。
 しかしながら、請求人が提出した本件更正処分により欠損事業年度となった平成3年1月期の確定申告書は欠損金額の記載のないものであり、かつ、本件還付請求書もその提出期限を徒過して提出されている。
 したがって、本件還付請求は、法人税法で規定された要件を欠いているため認められないこととなる。
ロ 平成2年1月期及び平成3年1月期の更正処分は、請求人がそれぞれの事業年度に正当なる申告を行っていれば、更正処分はなかったものであり、また、国税の更正処分は、国税通則法第70条((国税の更正、決定等の期間制限))に定める期間内であれば、いつでもこれをなし得るのであって、翌事業年度の確定申告期限までにこれをしなければならないとする制限は存しない。

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3 判断

 請求人は、本件還付請求書の提出が期限後となったのは、原処分庁の更正処分の遅れに起因するものであるから、請求人には真にやむを得ない事情があり、更正処分の時期によって還付が受けられなくなるということは、著しく不公平な取扱いであって法の趣旨に反するから、本件還付請求は認められるべきである旨主張して原処分の取消しを求めるので、審理したところ以下のとおりである。

(1) 本件通知処分について

イ 当審判所が、原処分関係資料等を調査したところ、次の事実が認められる。
(イ) 請求人は、平成2年1月期の法人税の青色の確定申告書に所得金額を1,921,566,401円、納付すべき税額を1,010,037,300円と記載して法定申告期限までに申告したこと。
(ロ) 請求人は、平成3年1月期の法人税の青色の確定申告書に所得金額を1,610,689,297円、納付すべき税額を1,007,677,000円と記載して法定申告期限までに申告したこと。
(ハ) 原処分庁は、法人税の調査に基づき、平成4年6月30日付で平成2年1月期に係る所得金額を6,874,674,892円、納付すべき税額を3,649,016,700円とする更正処分を行うとともに平成3年1月期について欠損金額を3,900,222,725円、納付すべき税額を零円、翌期へ繰り越す欠損金の額を3,900,222,725円とする更正処分をしたこと。
(ニ) 請求人は、平成4年8月7日に平成3年1月期の欠損金の額3,900,222,725円の全額を平成2年1月期の事業年度に繰り戻し、還付金額を1,635,141,827円とする本件還付請求書を提出したこと。
ロ ところで、法人税法第81条第1項には、内国法人の青色申告書である確定申告書を提出する事業年度において生じた欠損金額がある場合には、当該内国法人は、その申告書の提出と同時に納税地の所轄税務署長に対し、当該欠損金額に係る事業年度開始の日前1年以内に開始したいずれかの事業年度の所得に対する法人税の額に、当該いずれかの事業年度の所得の金額のうちに占める欠損事業年度の欠損金額に相当する金額の割合を乗じて計算した金額に相当する法人税の還付を請求することができる旨が規定されている。
 また、法人税法第81条第3項には、第1項の規定は、欠損事業年度の確定申告書をその提出期限までに提出した場合(税務署長が欠損事業年度の確定申告書の提出が期限後となったことについてやむを得ない事情があると認める場合を含む。)に限りその適用を認める旨が規定されている。
 そうすると、欠損金の繰戻しに基づく還付請求は、法人が確定申告書を期限内に提出(税務署長においてやむを得ない事情があると認める場合の期限後の提出を含む。)すると同時に、当該確定申告書に記載された欠損金額に基づいて法人税の還付請求書を提出した場合にその適用が認められるものである。
ハ これを本件についてみると、請求人の平成3年1月期に係る確定申告書は法定申告期限内に提出されてはいるが、当該確定申告書は欠損金額の記載がないものであるから、当該確定申告書に基づいて本件還付請求をその期限内になす余地はなかったと認められるところ、原処分庁による更正処分を原因として本件還付請求書が提出期限を1年3か月以上も経過して提出されているものであり、かつ、当該確定申告書に記載された欠損金額に基づくものではないことから、本件還付請求は、法人税法で規定されたその要件を欠くものであることは明らかである。
ニ 請求人は、本件還付請求書の提出が期限後になったのは原処分庁の平成2年1月期に係る更正処分が法定申告期限から1年以内になされなかったことに起因するものであるから、真にやむを得ない事情があり、また、更正処分の時期によって欠損金の繰戻しによる還付が受けられなくなるということは、著しく不公平な取扱いであって、法の趣旨に反するものである旨主張する。
 しかしながら、国税通則法第24条((更正))によれば、納税申告書の提出があった場合において、その納税申告書に記載された課税標準等又は税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったとき、その他当該課税標準等又は税額等がその調査したところと異なるときは、税務署長は、当該申告書に係る課税標準等又は税額等を更正するとされており、また、更正処分は、国税通則法第70条に定める期間内であれば、これをなし得るのであって、翌事業年度の確定申告期限までにこれをしなければならないとする規定も存しないことからすれば、本件還付請求がその請求期限までになすことができなかった原因が原処分庁にあるとして本件還付請求が認められるべきであるとするのは相当でない。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
ホ 以上のとおり、本件還付請求は、法人税法第81条に規定する要件を満たしていないから、原処分庁が本件還付請求に理由がない旨の通知処分をしたことは適法である。

(2) その他

 原処分のその余の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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