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(平6.11.2、裁決事例集No.48 391頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

 審査請求人(以下「請求人」という。)は、その他の卸売業(海砂採取販売)を営む同族会社であるが、平成元年4月1日から平成2年3月31日までの課税期間(以下「平成2年3月期」という。)、平成2年4月1日から平成3年3月31日までの課税期間(以下「平成3年3月期」という。)及び平成3年4月1日から平成4年3月31日までの課税期間(以下、「平成4年3月期」といい、平成2年3月期及び平成3年3月期と併せて「各課税期間」という。)の消費税の確定申告書に次表のとおり記載して、それぞれの法定申告期限までに原処分庁に提出した。

(単位:円)
項目 平成2年3月期分 平成3年3月期分 平成4年3月期分
課税標準額 1 839,034,000 804,910,000 927,015,000
消費税額 2 25,171,020 24,147,300 27,810,450
控除対象仕入税額 3 15,559,186 15,686,212 16,655,983
貸倒れに係る税額 4 - - 575,845
控除税額小計(34 5 15,559,186 15,686,212 7,231,828
差引税額(25 6 9,611,800 8,461,000 10,578,600
中間納付税額 7 - 4,805,800 4,230,400
納付すべき税額(67 8 9,611,800 3,655,200 6,348,200

(注)6欄の金額は、100円未満の端数を切り捨てた金額である。


 原処分庁は、これらについて、平成4年11月17日付で、次表のとおり、各課税期間の更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び賦課決定処分をした。

(単位:円)
区分 項目 平成2年3月期分 平成3年3月期分 平成4年3月期分
更正処分 課税標準額 1 839,034,000 804,910,000 929,194,000
消費税額 2 25,171,020 24,147,300 27,875,820
控除対象仕入税額 3 13,665,983 13,688,155 14,331,713
貸倒れに係る税額 4 - - 575,845
控除税額小計34 5 13,665,983 13,688,155 14,907,558
差引税額(25 6 11,505,000 10,459,100 12,968,200
中間納付税額 7 - 4,805,800 4,230,400
納付すべき税額(67 8 11,505,000 5,653,300 8,737,800
賦課決定処分 過少申告加算税 9 - 199,000 238,000

(注)6欄の金額は、100円未満の端数を切り捨てた金額である。


 請求人は、これらの処分を不服として平成4年12月24日にそれぞれ異議申立てをしたところ、異議審理庁は、平成5年3月19日付で、異議申立てをいずれも棄却する旨の異議決定をした。
 請求人は、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成5年4月13日にそれぞれ審査請求をした。

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2 主張

(1) 請求人の主張

イ 更正処分について
 本件更正処分は、次の理由により違法であるから、その取消しを求める。
(イ) 更正の手続
 原処分庁は、次の理由により、本件更正処分に係る更正通知書に更正の理由を附記すべきであったにもかかわらず、更正通知書に更正の理由を附記しなかった。
 すなわち、法人税法第130条((青色申告書に係る更正))第2項は、法人税の青色申告書に係る更正処分について、その更正の理由を附記しなければならない旨を規定しているが、青色申告書以外の申告書については、更正の理由附記につき別段の規定はしていないことから、青色申告書以外の申告書に係る更正処分には、その理由を附記しなくても違法ではないと解する余地が残されている。
 しかしながら、消費税には、青色申告制度という特別な制度もなく特別な規定もないのであるから、納税者に不利益をもたらす更正処分に当たっては、更正通知書に更正の理由を附記すべきである。
 また、日本国憲法第13条((個人の尊重・幸福追求権・公共の福祉))、同法第29条((財産権))及び同法第31条((法定の手続の保障))の理念並びに同法第31条に係る昭和38年5月31日の最高裁判所の判決等に照らしても、更正の理由を附記しなければならないことは明らかである。
 したがって、本件更正処分は、手続に違法があるので、その全部を取り消すべきである。
(ロ) 課税仕入れに係る支払対価の額
 仮に、本件更正処分の手続が違法でないとしても、請求人が、各課税期間における海砂の採取に当たって、P県R郡S町○○171番地に所在するA漁業協同組合(以下「A漁協」という。)に支払った金員(各課税期間とも65,000,000円である。以下「本件金員」という。)は、次の理由により、消費税の課税仕入れに係る支払対価の額に該当するものであるから、消費税法第30条((仕入れに係る消費税額の控除))第1項の規定を適用すべきであり、したがって、本件更正処分はその一部を取り消すべきである。
A 請求人が支払った本件金員は、次のとおり、海砂を採取する権利を取得するための費用である。
(A) P県において、海砂を採取するに当たっては、P県海砂採取要綱(以下「要綱」という。)に基づき、P県知事に公有産物採取許可申請をして許可を受ける必要があるが、この要綱には、申請区域及びその付近に漁業協同組合等の利害関係者があるときは、許可申請書にその者の同意書の添付を必要とする旨の定めがある。
(B) 請求人が、利害関係のあるA漁協の同意を得るに当たり、締結した契約に基づいて支払った本件金員は、実質的には、一定の期間その海域において排他的に海砂を採取する権利である資産の取得の対価である。
B また、本件金員が上記の権利の取得の対価に当たらないとしても、請求人が海砂採取及びそれに関連する作業を行うため、A漁協から漁業を営む権利の一部を一定期間借り受けた対価、すなわち、操業権の借受けの対価であり、その経済的実質は賃借料に相当するものである。
C 以上のことから、本件金員は、いずれにしても消費税法第2条((定義))第1項第12号の課税仕入れに該当し、課税仕入れに係る支払対価の額に該当するものである。
ロ 賦課決定処分について
 平成3年3月期及び平成4年3月期の過少申告加算税の賦課決定処分は、本件更正処分の取消しに伴い、その全部又は一部を取り消すべきである。

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(2) 原処分庁の主張

イ 更正処分について
 本件更正処分は、次の理由により適法である。
(イ) 更正の手続
 消費税の更正処分に当たり、更正の理由附記を手続上の要件とするかどうかは、立法府の裁量にゆだねられているところであり、国税通則法及び消費税法のいずれにも更正の理由を附記しなければならない旨の規定がないことから、法律上理由を附記すべきものと解すべき余地はない。
 よって、更正の理由が附記されていないとしても、本件更正処分は何ら違法ではない。
(ロ) 課税仕入れに係る支払対価の額
A 請求人が海砂を採取するためにA漁協の同意が必要であっても、A漁協はその海域で海砂を採取する権限は何ら有していないのであるから、本件金員は、排他的に海砂を採取する権利である資産の取得の対価に当たる余地は全くない。
B 請求人が海砂採取及びそれに関する作業を行うために借り受けたと主張する権利、すなわち請求人がいう操業権とは漁業権を指していると考えられるが、漁業法第6条((漁業権の定義))の規定では、請求人が操業権と主張する権利は漁業権に含まれていないこと、また、漁業権は同法第30条((貸付の禁止))の規定により貸付けが禁止されていることから、本件金員は、請求人が主張する権利の借受けの対価に該当しないことは明らかである。
 なお、請求人が主張している操業権が漁業権を指していないのであれば、操業権と称する権利は実定法上存在しないこと及びA漁協は、漁場としている海域においては漁業権以外の何らの権利も有しないことから、本件金員が、請求人が主張する権利の借受けの対価に該当しないことは明らかである。
C 以上のこと及び請求人が「採取補償料」と呼称する本件金員は、海砂採取期間中の「漁場迷惑料」である旨契約書に明記されていること、また、その経済的実質は、請求人が海砂採取を行うことによってA漁協が失うと思料される利益相当額を補てんする補償金に該当することから、本件金員は、消費税法上対価関係を認識できない金銭の支払であるので、課税仕入れに係る支払対価の額に該当せず、消費税法第2条第1項第12号に規定する資産の譲り受け若しくは借り受け、又は役務の提供を受けることに係る対価には該当しない。
ロ 賦課決定処分について
(イ) 更正処分により増加した税額の計算の基礎となった事実には、国税通則法第65条((過少申告加算税))第4項に規定する過少申告加算税を賦課しない場合の正当な理由があるとは認められない。
(ロ) 過少申告加算税の額は、国税通則法第65条第1項の規定に従い正しく計算されている。

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3 判断

 請求人は、原処分は違法であるとして、その全部又は一部の取消しを求めているので、当審判所において調査・審理をしたところ、次のとおりである。

(1) 更正処分について

イ 更正の手続
 請求人は、更正通知書に更正の理由附記がなされていない本件更正処分は違法である旨主張する。
 しかしながら、消費税の更正に当たり、更正通知書に更正の理由を附記しなければならない旨の規定は、国税通則法及び消費税法のいずれにもないので、更正通知書に更正の理由を附記しなかったとしても違法ではない。
 なお、日本国憲法に係る判断については、当審判所の権限外のことであり、また、請求人が引用した判決事例等は、本件とは事実関係が異なるので、この判決を根拠とする請求人の主張は採用することはできない。
ロ 課税仕入れに係る支払対価の額
 請求人は、本件金員は排他的に海砂を採取する権利である資産の取得の対価であり、また、当該資産の取得の対価に当たらないとしても、操業権の借受けの対価であるから、課税仕入れに係る支払対価の額に該当する旨主張するので、調査・審理したところ、次のとおりである。
(イ) 次のことについては、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所が調査したところによっても、その事実が認められる。
A 国有財産である海砂の採取は、県知事の許可が必要とされているところ、P県においては、要綱により、利害関係がある漁業協同組合等の海砂採取に係る同意書(以下「同意書」という。)を添付した公有産物採取許可申請書を提出しなければならないこととされていること。
B 請求人は、各課税期間における海砂採取の許可申請に当たり、申請の都度、A漁協の同意書を添付したこと。
C A漁協の同意書には、請求人の公有産物採取許可申請に同意する旨記載されいること。
D 請求人は、海砂採取に関して、平成元年7月20日にA漁協との間に契約書(以下、「本件契約書」といい、これにより定められた契約を「本件契約」という。)を取り交したこと。
E 本件契約書には、次の事項が記載されていること。
(A) A漁協(以下、このEにおいて「甲」という。)と、請求人(以下、このEにおいて「乙」という。)は、北共第45号共同漁業権外S町T崎沖合における海砂採取に関して、下記条項のとおり契約を締結する。
(B) 第1条1 甲は乙が、S町T崎灯台より真方位138度50分4,200メートル及び118度4,480メートルを基点とする周辺漁場において、海砂採取をすることに対し同意する。
(C) 第2条 乙の海砂採取契約期間は、県知事の採取許可に基づく契約の日から平成4年8月9日までとする。
(D) 第5条1 乙は、第2条の期間中の漁場迷惑料として金1億9,500万円とし、下記指定の期日までに、甲の事務所に支払わなければならない。
  第1回目 平成元年8月3日 金3,250万円也
  第2回目 平成 2年2月3日 金3,250万円也
  第3回目 平成 2年8月3日 金3,250万円也
  第4回目 平成 3年2月3日 金3,250万円也
  第5回目 平成 3年8月3日 金3,250万円也
  第6回目 平成 4年2月3日 金3,250万円也
(E) 第5条2 乙は乙の都合により、採取を中止したり契約を履行しなかった場合も、漁場迷惑料は支払わなければならない。
(F) 第8条 甲は甲の都合により(漁業等に支障をきたした場合)乙に対して海砂採取を中止させることができる。
 但し、甲・乙協議の上、決定する。
(G) 第9条1 乙は甲の共同漁業権外の漁場といえども、甲の組合員の操業上の妨害及び支障となる行為をしてはならない。
(H) 第9条2 乙は海砂採取作業上、漁業者とのトラブルを起こした場合、又は県の採砂許可条件に違反した場合は、甲は必要に応じ乙の漁場利用に制限を加え、又は海砂採取を中止させることができる。
(ロ) A漁協の総務部長B(以下「B部長」という。)は、当審判所に対して、次のとおり答述している。
A 本件契約は、権利の賃貸若しくは譲渡を目的とした契約ではない。
 なお、本件契約の契約期間中においては、本件契約以外には、請求人の海砂採取に係る契約等はない。
B A漁協は、同漁協の地先から、1,500メートル沖合までの海域に漁業権を有するが、A漁協及び同漁協の組合員は、同漁協の沖合には海砂を採取する権利などの海砂に係る権利はもとより、法律上であるか否かを問わず何らの権利も有していない。
C A漁協の組合員は、同漁協の漁業権外の海域においては、いか一本釣り(5トン未満)、ぶり引縄等の一本釣りをしているほか、許可漁業としては、かれい刺し網、いか一本釣り(5トン以上)等の漁業をしている。
 なお、A漁協の漁業権外の海域においては、同漁協の組合員だけでなく、他の漁協の組合員も漁業(許可漁業については、許可の範囲内の漁業)を行うことができる。
D 本件契約に係る海砂採取区域は、A漁協の漁業権が及ぶ範囲には入らないものの、A漁協の地先区域に入ることから、海砂採取をすることにより漁業に直接的な影響が生じるか否かは別としても漁業に際して何らかの支障が生じることが予想されることから、それを「漁場迷惑料」として本件契約書に定め、A漁協は、請求人から本件金員を受け取ることとしたものである。
E 本件契約における「漁場迷惑料」の金額については、特に、明確な算定根拠はないが、他の漁業協同組合の例や情況を総合勘案して決定した。
F 現在のところ、A漁協関係の漁業には、請求人が行った海砂採取に起因すると認められる影響は生じていない。
(ハ) 消費税法第30条第1項に規定する「仕入れに係る消費税額の控除」の対象となる課税仕入れについては、同法第2条第1項第12号において定義されているところであるが、同号は、課税仕入れについて、事業者が、事業として、他の者から資産を譲り受け、若しくは借り受け、又は役務の提供を受けること(当該他の者が、事業として、当該資産を譲り渡し、若しくは貸し付け、又は当該役務の提供をしたとした場合に課税資産の譲渡等に該当することとなるものに限る。)をいうとしている。
 ところで、事業者がその事業を営む上で何らかの行為をするため、実際上の必要性に応じ、他の者に合法的に金員を支払ったとしても、当該金員が資産の譲受け、借受け又は役務の提供の対価に該当するとは、必ずしもいえない。
 当該金員は、他の者の有する資産の譲受け等の対価である場合もあるが、他の者の有する権利等の侵害又は侵害のおそれに対する補償金としての性格を有する場合もあり、また、法律上又は慣習上の権利又はこれに類する地位の対価又は補償金というに至らない、単なる協力金、迷惑料的なものにとどまる場合もあるからである。
 したがって、当該金員をもって権利又はこれに類する地位である資産の譲受け又は借受けの対価ということができるのは、1当該金員の支払を受ける者が、当該事業者のしようとする行為について、これをする法律上又は慣習上の権利又はこれに類する地位を有している場合か、2当該金員の支払を受ける者が、その有する権利又はこれに類する地位の隣接的な効果として、他の者が何らかの行為をすることを許諾する法律上又は慣習上の権利又はこれに類する地位を有する場合に限られるというべきである。
(ニ) 本件金員が、課税仕入れに係る支払対価の額に該当するか否かについて、以下審理する。
A 請求人は、本件金員は、排他的に海砂を採取する権利である資産の取得の対価であるから、課税仕入れに係る支払対価の額に該当する旨主張するが、これについては、次のとおりである。
(A) 請求人は、A漁協から沖合における海砂採取に関して同意を得るに当たり、本件契約を締結しているが、上記(イ)のEのとおり、本件契約書には、権利等を譲渡する旨の記載及びその譲渡の目的物たる権利等の内容の記載がなく、単にA漁協は請求人の上記海砂採取に同意し、請求人はA漁協に本件金員を支払う旨が記載されているにすぎず、上記(ロ)のB部長の答述からも、上記内容以外の権利の譲渡があったとは認められない。
(B) 当審判所の調査によれば、次の事実が認められる。
 なお、上記(ロ)のB部長の答述は、これに合致するものである。
a 海砂は国有財産であること。
b A漁協は、海砂の所有権又は海砂を採取する独立の法律上又は慣習上の権利又はこれに類する地位を有していないことが認められること。
c A漁協の有する漁業権については、漁業法上、漁業権には定置漁業権、区画漁業権及び共同漁業権が存在し、このほか入漁権及び漁業協同組合の組合員の漁業を営む権利があるが、これらはすべて漁業を営む権利であり、海砂採取及びそれに関連する作業を行うための権利は存在しないこと。また、これらの作業を行う慣習上の権利又はこれに類する地位が漁業権に付随しているとは認められないこと。
(C) A漁協が、その有する漁業権の隣接的な効果として、他の者が海砂の採取をすることを許諾する法律上又は慣習上の権利又はこれに類する地位を有しているか否かについては、当該権利又は地位を定める法律上の規定は存在せず、また、請求人の主張するところ及び要綱その他の本件全資料をもってしても、請求人が海砂を採取する海域及びその周辺の区域について、漁業権者が、漁業権の隣接的な効果として、海砂採取につきこれを許諾する権利又は地位を有していると認めることはできない。
 なお、要綱により、利害関係者の同意が求められているのは、上記(ハ)の「他の者の有する権利等の侵害又は侵害のおそれ」について事前に関係者間の自主的調整を求める趣旨ないし上記の侵害等に至らないまでも関係者間の事後的に生じ得る紛争を極力排除するために自主的調整を求める趣旨と認められるところであり、要綱の効果として同意をする利害関係者の地位は、そのことをもっては、いまだ法律上又は慣習上の権利又はこれに類する地位に至っているとは認められない。
(D) 請求人が前記2の(1)のイの(ロ)のAの(A)で主張する事情があり、かつ、利害関係者の同意書を得るために、何らかの金員を支払うことが実際上必要であるとしても、このことのみをもって、当該金員が資産の譲受け又は借受けの対価に該当するということはできず、本件契約の内容は上記(A)のとおりであり、本件金員の受領に関するA漁協の地位は、上記(B)のb及びc並びに(C)のとおりであり、他にこれを覆す資料はないから、本件金員を、海砂を採取する権利である資産の取得の対価であるとすることはできない。
B また、請求人は、予備的に、本件金員が排他的に海砂を採取する権利である資産の取得の対価に当たらないとしても、本件金員は操業権の借受けの対価である旨主張するが、これについては、次のとおりである。
(A) 本件契約の内容は、上記Aの(A)に記載したとおりであり、本件契約書には操業権ないし漁業権の一部の借受けについての記載はない。
 また、上記(ロ)のB部長の答述によっても、A漁協が請求人に漁業権の一部を貸し付け、ないしは請求人の主張する「漁業権」を貸し付けたとする事実は認められず、他に当該貸付けを証する資料はない。
(B) 漁業法上、請求人の主張する「操業権」なる権利は存在せず、また、漁業権の内容については、上記Aの(B)のとおりである。
 しかるに、請求人の行う作業は海砂採取及びそれに関連する作業であって、漁業を営むことではないから、漁業権の一部の借受けないし「操業権」の借受けというべきものに当たらないことは、明らかである。
(C) 仮に請求人のこの予備的主張を、A漁協の漁業権を侵害すること又はそのおそれがあることをもって漁業権の一部の借受けと称しているものと解するとしても、漁業権の侵害等に対する支払は、漁業権の借受けとみることはできず、単に他の者の権利の侵害等に対する補償とみるべきであるから、資産の譲受け又は借受けの対価に該当すると認めることはできない。
(D) したがって、請求人のこの予備的主張は認めることができない。
C なお、本件金員が、役務の提供の対価に該当しないことについては、明らかである。
(ホ) 以上のことから、本件金員は、資産を譲り受け若しくは借り受け、又は役務の提供を受けることの対価とは認められないから、本件金員の支払は、消費税法第2条第1項第12号に規定する課税仕入れに該当せず、本件金員の支払につき、同法30条第1項の規定は適用されず、仕入れに係る消費税額の控除をすることはできない。
 よって、請求人の主張はいずれも理由がなく、本件更正処分は適法にされていると認められる。

(2) 賦課決定処分について

 以上のとおり、平成3年3月期及び平成4年3月期の消費税の各更正処分は適法であり、その更正により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が更正処分等の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、過少申告加算税の各賦課決定処分は適法である。

(3) 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によってもこれを不相当とする理由は認められない。

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