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(平7.7.3裁決、裁決事例集No.50 257頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)審査請求人(以下「請求人」という。)は、貿易業を営む同族会社であるが、平成4年2月1日(設立日)から同年8月31日まで及び同年12月1日から平成5年2月28日まで(以下、それぞれ「平成4年8月期」及び「平成5年2月期」という。)の各課税期間の消費税の確定申告書に別表の「確定申告」欄のとおり記載して、いずれも法定申告期限内にM税務署長に申告した。
(2)M税務署長は、これに対して平成6年4月27日付で、別表の「更正等」欄のとおり平成4年8月期については消費税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を、また、平成5年2月期については消費税の更正処分(以下、これらを併せて「原処分」という。)をした。
(3)請求人は、これらの処分を不服として、平成6年6月15日に異議申立てをしたところ異議審理庁は、同年9月21日付で棄却の異議決定をした。
(4)請求人は、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして平成6年10月13日に審査請求をした。
(5)なお、請求人は、平成7年4月3日に所在地をP市R町2丁目7番24号Yビル8階からS市T町684番地4へ移動したが、これに伴い、原処分庁はM税務署長からN税務署長となった。

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2 主張

(1)請求人の主張

 原処分は、次の理由により違法であるから、その全部の取消しを求める。
イ 更正処分について
 請求人は、F国G社から受注した8ミリビデオデッキ用ジャックケーブル(以下「本件ジャックケーブル」という。)を、同社の要請により、H株式会社(以下「H社」という。)W工場へいったん搬送した後、H社がG社に販売したビデオデッキと同梱の上、X国へ輸出したもの(以下「本件取引」という。)であるが、輸出に際して、通関業務はH社が行い、本件ジャックケーブルを含むビデオデッキの輸出証明書はH社が受けている。
 請求人は、本件取引は輸出取引に該当するので、輸出免税の適用があるものとして仕入れに係る消費税額の還付請求を行ったところ、原処分庁は、本件ジャックケーブルに関する輸出証明書がないから輸出免税取引に該当しないとして原処分を行った。
 しかしながら、原処分は次のとおり違法である。
(イ)本件取引は、F国G社との取引であって、H社はG社の要請に基づく単なる搬送先であり、原処分は、この搬送を国内取引と誤認した。
(ロ)消費税法施行規則(以下「規則」という。)第5条《輸出取引等の説明》第1項第4号によると、輸出証明書の不存在をもって、直ちに国内課税取引に該当することとなるものではない。
 法人税法、所得税法にも「実質課税の原則」があるように、実質的に判断すべきである。
(ハ)原処分が正しいとすれば、最終消費者である海外の取引先に消費税相当額を転嫁せざるを得ず、輸出取引を免税とした法の立法趣旨に反している。
(ニ)また、発注元の要請次第で複数の輸出者が存在することになった場合に、輸出手続を行った者のみが輸出免税の適用を受けられるというのは、課税の公平の原則に反しており、実質的に輸出取引と認めながらもなお輸出証明書の有無により輸出免税の適否を判断するのは、納税義務者の実情を無視したものである。
ロ 過少申告加算税の賦課決定処分について
 以上のとおり、更正処分は違法であるから、これに基づく過少申告加算税の賦課決定処分も違法である。

(2)原処分庁の主張

 次の理由により、原処分は適法である。
イ 更正処分について
 原処分は、本件取引を国内の搬送先であるH社との取引であると認定したものではない。
 しかしながら、本件取引は、たとえ輸出取引であっても、消費税法第7条《輸出免税等》第2項に規定する輸出取引等の証明がないから同条第1項第1号の規定は適用されない。
 なお、輸出取引等の証明とは、規則第5条第1項第1号に規定する書類の保存をいうものであり、また、本件取引については同項第4号の規定は適用されないので、請求人の主張には理由がない。
ロ 過少申告加算税の賦課決定処分について
 以上のとおり、更正処分は適法であり、更正処分により納付すべき税額の基礎となった事実が、更正処分前の税額の計算の基礎とされなかったことについて、国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由がある場合に該当しないから、同条第1項の規定に基づいてした過少申告加算税の賦課決定処分は適法である。

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3 判断

(1)更正処分について

 本件審査請求の争点は、本件取引が消費税法第7条第1項に規定する輸出免税取引に該当するか否かにあるので、以下審理する。
イ 原処分関係資料、請求人の答述及び当審判所の調査によれば、次の事実が認められる。
(イ)F国のG社は、H社から購入したビデオデッキに関して、その付属品であるジャックケーブルのH社の価格が高かったことから、G社は請求人に対して、本件ジャックケーブルの発注をしたこと。
(ロ)本件ジャックケーブルの納入先は、G社からのオーダーシート、テレックス及び信用状(Letter of credit、以下「L/C」という。)によると、H社W工場となっていること。
(ハ)請求人は、上記(ロ)のオーダーシート等を保管し、G社からL/C表示による輸出代金を受領したこと。
(ニ)H社は、G社からの要請を受け、本件ジャックケーブルの品質の保証はしないことを条件に、ビデオデッキの付属品として同梱して船積みすることに同意したこと。
 なお、同梱に関して、請求人は、H社に手数料の支払をしていない。
(ホ)本件取引の輸出手続は、H社が行っており、ビデオデッキの輸出証明書はH社に交付されているが、本件ジャックケーブル自体の輸出証明書は交付されていないこと。
(ヘ)H社が、税関長に提出した輸出申告書及びインボイスやパッキングリストには、本件ジャックケーブルの記載はされていないこと。
(ト)請求人は、上記(ホ)の輸出証明書等の写しの交付をH社の営業担当者に依頼したが、交付を拒否されたこと。
ロ ところで、消費税は、内国消費税であり、国内において消費される財貨やサービスに税負担を求めるものであることから、輸出取引については、一定の要件を充足する場合には、その消費税を免除することとしている。
 すなわち、消費税法第7条第1項第1号ないし第5号に掲げる輸出取引等については、消費税を免除すると規定し、同条第2項は、「前項の規定は、その課税資産の譲渡等が同項各号に掲げる資産の譲渡等に該当するものであることにつき、大蔵省令で定めるところにより証明されたものでない場合には、適用しない」と規定している。
 そして、規則第5条第1項は、「法第7条第2項に規定する大蔵省令で定めるところにより証明がされたものは、同条第1項に規定する課税資産の譲渡等のうち同項各号に掲げる資産の譲渡等に該当するものを行った事業者が、当該課税資産の譲渡等につき、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める書類又は帳簿を整理し、当該課税資産の譲渡等を行った日の属する課税期間の末日の翌日から2月を経過した日から7年間、これを納税地又はその取引に係る事務所、事業所その他これらに準ずるものの所在地に保存することにより証明がされたものとする」と規定しており、消費税法第7条第1項第1号に規定する「本邦からの輸出として行われる資産の譲渡又は貸付け」(以下「輸出取引」という。)の場合には、船舶若しくは航空機の貸付け又は資産の価額が20万円以下の輸出に該当するときを除き、輸出取引を行った事業者は、税関長から交付を受ける輸出の許可若しくは積込みの承認があったことを証する書類又は輸出の事実を税関長が証明した書類で、輸出した事業者の氏名又は名称及び住所若しくは居所又は事務所等の所在地、輸出年月日等所定の事項が記載されたものを、7年間、これを納税地等所定の場所に保存することによって、同条第2項に規定する大蔵省令で定める証明がされたことの要件を満たすこととなる。
 このように、免税とされる輸出取引等として免税とされるためには、規則第5条各号に規定する要件を満たすことが要件となっているところである。
ハ 上記イ及びロに基づき、本件取引について判断すると次のとおりである。
(イ)本件取引は、上記イの(イ)ないし(ハ)のとおり、請求人はG社からの発注に基づき、本件ジャックケーブルをH社W工場に納入して、G社からL/C表示による輸出代金を受領している事実に照らして判断すると、本件取引は、請求人が主張するとおり、消費税法第7条第1項第1号に規定する輸出取引に該当するものと認められる。
 しかし、消費税法第7条第1項に規定する輸出免税の適用を受けるためには、上記ロのとおり、輸出取引等を行った事業者は、税関長から交付を受ける輸出の許可若しくは積込みの承認があったことを証する書類又は輸出の事実を税関長が証明した書類の保存が要件とされているところ、上記イの(ホ)のとおり、本件取引の輸出手続はH社が行い、ビデオデッキの輸出証明書はH社に交付されているものの、本件ジャックケーブルについては輸出証明書が交付されていないのであるから、本件取引が輸出取引に該当するとしても、同条第2項の「大蔵省令で定めるところにより証明がされたものでない場合には、適用しない」旨の規定に該当するので、請求人は、同条第1項の輸出免税の適用を受けることはできない。
(ロ)更に、請求人は、規則第5条第1項第4号が、税関長の証する書類以外で、取引の事実を証する書類でも、輸出免税を証明できる場合を規定していることをもって、本件取引も輸出免税の対象となる旨主張するが、本件取引は、上記(イ)のとおり、消費税法第7条第1項第1号に規定する輸出取引に該当し、かつ、船舶若しくは航空機の貸付け又は資産の価額が20万円以下のものの輸出でないことは明らかであるから、規則第5条第1項第1号に規定する資産の譲渡等に該当するので、この点に関する請求人の主張は採用することができない。
 なお、規則第5条第1項第2号は、資産の価額が20万円以下のものの輸出については、税関長から交付を受ける輸出の許可等の書類の保存を輸出免税の適用の要件とせず、輸出した事業者が所要の事項を記載した帳簿等の保存をもって輸出免税の適用の要件としているが、このことからも、たとえ輸出取引に該当しても、同項第1号に該当する取引については、同号所定の書類の保存がなければ、輸出免税が適用されないことは明らかである。
(ハ)以上のとおり、本件取引は、消費税法第7条第1項による輸出免税の適用は受けることができないので、原処分は適法である。

(2)過少申告加算税の賦課決定処分について

 過少申告加算税の賦課決定処分については、各課税期間の消費税の更正処分は上記(1)のとおり適法であり、また、更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項の規定により過少申告加算税の賦課決定処分をした原処分は適法である。

(3)原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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別表


(単位 円)
区分\年分平成4年8月期平成5年2月期
確定申告
 課税標準額464,000218,000
 消費税額13,9206,540
 控除対象消費税額2,037,519873,389
 控除不足還付税額2,023,599866,849
更正等
 課税標準額5,415,0001,480,000
 消費税額162,45044,400
 控除対象消費税額2,037,519873,389
 控除不足還付税額1,875,069828,989
 過少申告加算税額14,000