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(平8.5.23裁決、裁決事例集No.51 40頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

 審査請求人(以下「請求人」という。)は、電気機器及び土木建設機械(以下「機械等」という。)のリース・販売・修理業を営む者であるが、平成3年分、平成4年分及び平成5年分(以下「各年分」という。)の所得税について、青色の確定申告書に別表1の「確定申告」欄のとおりの記載をして、いずれも法定申告期限までに申告した。
 次いで、請求人は、原処分庁所属の職員の調査を受け、各年分の所得税について別表1の「修正申告」欄のとおり記載した修正申告書を平成7年2月20日に提出したところ、原処分庁は、平成7年3月8日付で別表1の「更正処分等」欄のとおりの更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下、これらを併せて「本件更正処分等」という。)をした。
 また、原処分庁は、平成7年3月30日付で別表1の「賦課決定処分」欄のとおりの修正申告に係る過少申告加算税の賦課決定処分をした。
 請求人は、本件更正処分等を不服として、国税通則法第75条《国税に関する処分についての不服申立て》第4項第1号の規定により平成7年4月17日に審査請求をした。

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2 主張

(1)請求人の主張

 原処分は、次の理由により違法であるから、その全部の取消しを求める。
イ 更正処分について
 原処分庁は、請求人がリース目的で保有していた機械等(所得税法第2条《定義》第1項第19号に規定する減価償却資産のうち、同法施行令第138条《少額の減価償却資産の取得価額の必要経費算入》に規定するもの以外のものをいう。以下、当該リース目的で保有していた機械等を「リース用機械」という。)のうち、各年分において譲渡した別表2に記載のリース用機械(以下「本件譲渡機械」という。)の譲渡に係る所得金額(以下「本件所得」という。)を事業所得に該当すると認定したが、次の理由により本件所得は譲渡所得に該当する。
(イ)請求人は、機械等のリース業を本業とするとともに機械等の販売及び修理をしているが、本件譲渡機械は事業の用に供されている減価償却資産であり、本件所得は、次のことから、所得税法第33条《譲渡所得》第2項第1号に規定する営利を目的として継続的に行われる資産の譲渡による所得には該当しない。
A 請求人は、次のとおりリース用機械を購入してくれる顧客を求めてはいないこと。また、販売のための人的・物的設備は不要であること。
(A)販売用機械については、棚卸資産及びその他営利を目的として継続的に行われる機械等の譲渡であって、購入する顧客を広く求めているが、リース用機械の販売に当たっては、広告媒体を利用して不特定多数の顧客に広告宣伝を行った事実はない。
また、リース用機械については、投下資本の回収、資金繰り及び利益率等の点からみても、譲渡するよりリースの方が有利であるため、あえて請求人が譲渡を行う必要はない。
 なお、各年分の事業所得の総収入金額に対する、販売用機械(以下「商品」という。)の売上額の割合(以下「商品売上割合」という。)は次のとおりである。

(単位 千円、%)
 <年分>
<項目>平成3年分平成4年分平成5年分
総収入金額1 291,128245,731210,077
商品の売上額232,20338,75123,734
商品売上割合
2÷1×100)11.0615.7711.30

(B)請求人の事業内容を記載しているパンフレット(以下「営業案内」という。)には、「電気機器・土木建設機械のリース・販売・修理」と記載しており、旧営業案内(平成4年6月前に作成したもの。以下同じ。)には、「使用済組立在庫品も有」及び「関連御不用品の買受を致して居ります」と記載していたが、かかる商取引がなかったため削除し、新営業案内(平成4年6月以降に作成したもの。以下同じ。)には主たる営業種目であるリース用機械の「RENTAL&LEASE」を全面的事業内容として記載した。
(C)リース及び修理に必要な人的・物的設備は有しているが、販売はブローカー的仕事であり、極端にいえば電話一本あれば足りるものであって、販売のための人的・物的設備は不要である。
 なお、顧客から200,000円以上の価額の機械等の買入れの希望があつたことにより仕入れて販売したもの、いわゆる取次ぎは、平成3年分が6台、平成4年分が3台及び平成5年分が4台であり、請求人の事業規模からすれば、ごくわずかな台数である。
B 本件譲渡機械は、次のとおり臨時・偶発的に譲渡したものであり、その台数も極めて少ないこと。
(A)請求人はリース用機械の取得に際し、その機械の売買を前提に取得したことは一度もなく、したがって、顧客から機械等の買入れの希望があった場合、仕入れて販売するのが通常であるが、中にはリース期間が中・長期になる等の理由で顧客から買入れの要望があつたとき、そのリース用機械の年式・重量・寸法・性能・故障度合い・外観・工法の変遷等を総合的に勘案して、そのリース用機械を原形のまま譲渡した方が有利になると判断した場合に、臨時・偶発的に譲渡したことがあるにすぎない。
(B)リース用機械の所有台数(平成3年末約550台、平成4年末及び平成5年末各約600台)を耐用年数の短縮承認後の耐用年数5年経過時において毎年更新していくと仮定した場合、各年分の更新台数は平成3年分が110台、平成4年分及び平成5年分が各120台程度となるが、請求人の事業はリースが主目的であるので、本件譲渡機械の実際の譲渡台数は平成3年が9台、平成4年が9台、平成5年が4台であり、これを更新台数と比較すると、各年分とも極めて少ない。
 なお、各年分のリース用機械の取得台数、取得価額及び減価償却費は、次のとおりである。

(単位 千円、台)
 <年分>
<項目>平成3年分平成4年分平成5年分
取得台数396017
取得価額39,84340,4948,278
減価償却費50,56348,93435,959

C 本件所得は、次のとおり本件譲渡機械を長期間保有していたことによる値上がり益(キャピタルゲイン)が不労所得として発生したものであること。
(A)資産の譲渡による所得のうち、初めからその資産の売却益を得ることを目的として購入し、販売することによって得る所得が事業所得であり、その資産を保有し利用することを目的として所有する資産を売却した場合に、その資産の値上がり益として臨時・偶発的に顕現する所得、いわゆるキャピタルゲインが譲渡所得である。
 しかるに、本件所得は、本件譲渡機械を極めて長期間(おおむね10年以上)保有していたため、本件譲渡機械の譲渡原価(大半が取得費の5パーセント)に対して、値上がり益として発生したものである。
 なお、商品売上額の売上総利益率は平成3年分が35.45パーセント、平成4年分が28.57パーセント、平成5年分が24.28パーセントであるのに対し、本件譲渡機械の譲渡価額は、譲渡原価に対して平成3年分が約5倍、平成4年分が約7倍及び平成5年分が約9倍の利益を加算して販売している。
(B)本件譲渡機械については、昭和48年から耐用年数の短縮が認められ、5年での早期償却が可能となったこと、屋内に保管しているため風雨による損傷が少ないこと及び乱雑に扱う得意先には賃貸を断ることから極めて長期間保有しても機能的・経済的価値が下がらなかったものである。
(C)営利を目的として継続的に行われる資産の譲渡とは、物を仕入れてそれを売るという商行為と解すべきであり、これは勤労所得であるところ、本件譲渡機械は長期間保有していたことによる資産の値上がり益が不労所得として実現したものである。
D 所得税法第33条第2項第1号に規定する「営利を目的として継続的に行われる資産の譲渡による所得」の継続的取引の判断基準は、請求人における、(a)資産(機械)の売買の回数・数量又は金額・相手方、(b)売買のための資金繰り、(c)売買を行うための施設の有無、(d)売買にあたっての広告宣伝等の方法及び(e)当該譲渡に係る資産(機械)の取得及び保有状況等を総合して判断するのが妥当である。
 したがって、上記AないしCのとおり、本件所得は本件譲渡機械を長期間保有したことによる資産の値上がり益が臨時・偶発的な売買により一時的に発生したものであり、所得税法第33条第2項第1号に規定する「その他営利を目的として継続的に行われる資産の譲渡による所得」には該当しない。
(ロ)なお、所得税法第33条第2項第1号に規定する「営利を目的として継続的に行なわれる資産の譲渡による所得」の継続的取引の概念は余りにも漠然としており、原処分庁との見解の相違をなくすためにも、償却資産数及び償却年数等を理論的に総合勘案して、その資産の売買回数・数量などをより具体的に明示すべきである。
(ハ)ところで、原処分庁は、リース用機械の販売は、その販売前においてリース用機械として使用されていたとしても、顧客の求めに応じて瞬時に棚卸商品に転換することからすれば、その機械を取得するときから、このことを含めた一連の取引であり、明らかに営利を目的とした事業の一環としての継続的な譲渡である旨主張する。
 しかしながら、本件譲渡機械は、上記(イ)のBの(A)で述べたとおり、リース用機械の取得に際し、その機械の売買を前提に取得したことは一度もなく、また、保有するリース用機械の中には工法の変遷等により、スクラップ化して屑鉄として廃棄処分する機械もかなりあり、購入先へ下取りに出せたり、得意先へ転売できるものはわずかであるので、その機械を取得するときから、明らかに営利を目的とした事業の一環としての継続的な譲渡には該当しない。
 なお、所得税法基本通達27‐1《貸衣裳等の譲渡による所得》に定める資産の譲渡収益は、単なる雑収入ではなく、経営上の収益の重要な要素であり、また、その譲渡も計画的に短期間のうちに、その事業の性質上経常的(一般的)に行われているものであることから、事業所得に該当するものと解されるが、請求人は、上記(イ)で主張したとおり、極めて長期間(おおむね10年以上)保有していた事業用の減価償却資産である本件譲渡機械を譲渡したものであり、その譲渡は事業の性質上営利目的の下に計画的、継続的な営業活動の一環としてなされたものではなく、臨時・偶発的に発生したものであること、また、本件譲渡機械を保有していた期間中に生じた資産の価値の増加益に相当するものが実現したものであることから、本件所得は所得税法基本通達27‐1に定める事業所得には該当しない。
(ニ)また、原処分庁は、継続的取引を判断するまでもなくリース用機械の譲渡は、客観的・総合的に判断して本業の付属的行為に当たり、本件所得は事業所得である旨主張する。
 しかしながら、次のとおりリース用機械の譲渡は本業の付属的行為ではないから、本件所得は譲渡所得である。
A 事業所得については、所得税法第27条《事業所得》第1項において事業から生ずる所得をいう旨規定し、事業が総合的な活動であることに着目して、事業の遂行に付随して生じた所得については、これを事業所得に含めるとして、事業に直接関連して収入されると思われるものを同法基本通達27‐5《事業の遂行に付随して生じた収入》において例示している。
 しかし、本件譲渡機械は事業の用に供されていた減価償却資産であったことから、所得税法第33条第2項第1号の規定により当該資産の売却代金は、営利を目的として継続的に行われる場合を除き、原則として譲渡所得の収入金額となる。
B 事業所得は自己の計算と危険において対価を得て継続的に行われる業務から生ずる所得であるのに対し、譲渡所得は付加価値を伴わない単なる資産の値上がり益であり、その値上がり益は、回帰的ではない臨時的な所得であり、その所得は原則的には長期間保有に基づく所得が一時に実現したものであり、その本質は不労所得である。
(ホ)次に、請求人は、昭和23年4月から長年にわたってリース業を営む者であるが、過去の税務調査において今回のような指摘は一度もされなかったため、請求人の申告の内容が是認されたものと思っていた。
 また、税務行政の円滑な遂行のために税務調査が果たす役割は大きく、税務調査が法的に拘束を与えることから、過去の税務調査において指導助言があってしかるべきであり、これらをしないで更正処分したことは信義則に反する。
 以上のとおり、本件所得は譲渡所得に該当するから、原処分庁が事業所得に該当するとして行った各年分の更正処分は違法である。
 なお、請求人が平成3年分の譲渡所得として申告した平成2年以前に販売したリース用機械に係る収入について、所得区分についてはともかく、当該収入金額2,253,900円(譲渡原価55,072円)が平成3年分に帰属するものであるとすること、並びに各年分の不動産所得の金額、給与所得の金額及び所得控除の金額については争わない。
ロ 賦課決定処分について
 上記イのとおり、各年分の更正処分は違法であるから、その全部の取消しに伴い、各年分の過少申告加算税の賦課決定処分もその全部を取り消すべきである。

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(2)原処分庁の主張

 原処分は、次の理由によりいずれも適法である。
イ 更正処分について
(イ)本件所得の所得区分
A 本件譲渡機械は減価償却資産であることから、本件所得は所得税法第33条第2項第1号に規定する営利を目的として継続的に行われる資産の譲渡に該当するか否かにより所得区分が異なることになるが、この「営利を目的として継続的に行われる資産の譲渡」とは、事業に類する、あるいは事業に準ずる営業活動を意味していると解すべきであり、これら営利を目的として継続的に行われる資産の譲渡に当たるか否かは、個別事案ごとに資産の取得の状況、譲渡の態様、譲渡の回数、頻繁性、資金繰り、売買を行うための施設の有無、広告・宣伝活動の方法等の種々の要因を総合的に勘案して判断することが必要である。
 したがって、資産の売買に係る取引が年によって一度も発生しないことも考えられることから、単にリース用機械の売買回数及び数量のみで継続的に行われる資産の譲渡に当たるか否かを判断するのではなく、次の事実関係から総合判断して、本件所得はリース事業に係る事業所得に付随して発生する所得(事業の一環の継続的取引)と認定したものである。
(A)請求人は、(a)新営業案内及び旧営業案内に営業種目として「電気機器・土木建設機械のリース・売買・修理」と、また、旧営業案内に「使用済組立在庫品も有」及び「関連御不用品の買受を致して居ります」と記載して宣伝していること、(b)調査担当者に対して顧客から機械の買入れの希望があった場合、仕入れて販売するほか、所有している機械の販売にも応じている旨の申述を行っていること及び(c)リース、売買及び修理に必要な人的・物的設備を有していることから、棚卸資産のみならず、リース用機械の販売のための顧客を求めていることが明らかに推認されること。
(B)本件譲渡機械は、平成3年分が9台、平成4年分が9台、平成5年分が4台と毎年継続して譲渡されており、また、その原価に対する販売価格の最高額は、平成3年分が約80倍、平成4年分が約70倍、平成5年分が約60倍であり、その原価に対する販売価格の全体の平均においても平成3年分が約5倍、平成4年分が約7倍、平成5年分が約9倍となっている事実から、営利を目的として、かつ、反復継続する意思を持って継続的にリース用機械の譲渡を行ったものであると認められること。
 さらに、本件譲渡機械は、その譲渡をするまでは契約によりリース用機械として使用されていたとしても、顧客の求めに応じて瞬時に棚卸商品に転換することからすれば、その機械を取得するときから、このことを含めた一連の取引であり、明らかに営利を目的とした事業の一環としての継続的な譲渡と認められること。
B ところで、請求人は、(a)本件所得は事業の用に供されていた減価償却資産の譲渡による所得であること、(b)リース用機械の「売買」の顧客まで求めておらず、また、販売のために人的・物的設備は不要なこと及び(c)本件所得は本件譲渡機械を極めて長期間保有したことによる値上がり益が一時に実現したものであり、リース用機械の保有台数に対し譲渡台数も少なく、臨時・偶発的に発生したにすぎないことから、所得税法第33条第2項第1号に規定する営利を目的として継続的に行われる資産の譲渡による所得に該当せず譲渡所得である旨主張するが、同号に規定する「営利を目的として継続的に行われる資産の譲渡による所得」の定めは、資産の譲渡が必ずしも予定されていない場合であっても、当然に反復して行われることが予想される継続的性質のもの、又は一回ごとの譲渡が利益を得る目的で行われ、その譲渡が結果として継続的に行われたという事実をもって、その譲渡による所得が一時的・臨時的な資産の処分によって生ずる譲渡所得と異なるがゆえに、譲渡所得から除くこととしているものと解されるところ、本件所得は、上記Aで述べたとおり、臨時・偶発的に発生したものとは認められないので譲渡所得には該当しない。
C また、請求人は、所得税法第33条第2項第1号に規定する営利を目的として継続的に行われる資産の譲渡による所得の継続的取引の概念はあまりにも漠然としており、償却資産数及び償却年数等を理論的に総合勘案して、資産の売買回数・数量等をより具体的に明示すべきである旨主張するが、請求人は機械等のリース・販売・修理を本業とする者であるところ、仮に、リース用機械の譲渡が年によって全く発生しないことも想定されるが、上記Aで述べたとおり、リース用機械の譲渡は本業の付属的行為(事業の一環の継続的取引)であり、売買回数及び数量等については、具体的に明示する必要はない。
D さらに、請求人は過去の税務調査において、今回のような指摘は一度もなく、申告内容が是認されたものと思っていたから信義則に反する旨主張するが、信義則が適用されるのは、合法性の原則を犠牲にしても納税者の信頼を保護しなければ正義に反するという特別の事情が存する場合と解されており、請求人の主張する過去の税務調査で指摘がなかったことは、税務官庁が納税者に対し公的見解を表示したとみるべき性質のものではなく、信義則に反するものではない。
(ロ)総所得金額
A 事業所得の金額
 各年分の事業所得の金額は、請求人が事業所得の金額として、別表1の「確定申告」欄のとおり申告した金額、平成3年分が52,003,225円、平成4年分が13,025,742円、平成5年分が5,189,250円に、譲渡所得の総収入金額として申告した別表2の「収入金額」欄の合計額、平成3年分が6,592,526円、平成4年分が7,750,000円、平成5年分が1,454,000円をそれぞれ加算し、譲渡所得の譲渡原価として申告した別表2の「譲渡原価」欄の合計額、平成3年分が1,356,780円、平成4年分が1,048,000円、平成5年分が162,000円を減算するとともに、平成3年分については、平成2年以前に販売したリース用機械に係る収入であるとする金額2,253,900円を加算すると、平成3年分が59,492,871円、平成4年分が19,727,742円、平成5年分が6,481,250円となる。
B 不動産所得の金額
 各年分の不動産所得の金額は、請求人の申告額のとおり、平成3年分が25,333,343円、平成4年分が28,196,384円、平成5年分が28,987,852円と認められる。
C 給与所得の金額
 各年分の給与所得の金額は、請求人の申告額のとおり、平成3年分が2,961,000円、平成4年分が3,143,400円、平成5年分が3,325,800円と認められる。
D 譲渡所得の金額
 各年分の譲渡所得の金額は、平成3年分は請求人が申告した車両に係る譲渡所得の損失額51,182円と認められ、平成4年分及び平成5年分については、請求人に譲渡所得はない。
E 総所得金額
 各年分の総所得金額は、次表のとおりとなる。

 したがって、この金額と同額でした各年分の更正処分は適法である。
ロ 過少申告加算税の賦課決定処分について
 上記イのとおり、各年分の更正処分は適法であり、かつ、本件更正処分により増加した納付すべき税額の基礎となった事実には、国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する過少申告加算税を賦課しない場合の正当な理由があるとは認められないから、過少申告加算税の賦課決定処分も適法である。

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3 判断

 本件譲渡機械の譲渡による所得の所得区分について、請求人は臨時・偶発的に譲渡したものであり、その台数も極めて少ないことから、譲渡所得に該当する旨主張し、原処分庁はリース事業に係る事業所得に付随するもので、営利を目的とした事業の一環としての継続的な取引から生じることから事業所得に該当する旨主張するので、調査・審理したところ、次のとおりである。
(1)更正処分について
イ 本件所得の所得区分
(イ)次のことについては、当事者間に争いがなく、当審判所の調査によってもその事実が認められる。
A 請求人は、機械等のリース業を主な事業としているが、そのリース収入のほかに次に掲げる機械等の譲渡収入があり、請求人はそのうちの本件譲渡機械の譲渡収入に係る所得を譲渡所得として、また、それ以外の収入に係る所得を事業所得として申告していること。
(A)リース用機械の譲渡収入
(B)リース用の少額減価償却資産の譲渡収入
(C)棚卸資産のうち取次ぎ機械(顧客からの注文に基づき仕入れて販売する機械等で、取得価額が200,000円以上のものをいう。以下同じ。)の譲渡収入
(D)取次ぎ機械以外の棚卸資産の譲渡収入
(E)機械等の屑鉄としての譲渡収入
 なお、上記(A)のリース用機械は、事業の用に供されていた減価償却資産であり、請求人は、各年分の所得税の申告に際し、その減価償却費を事業所得の金額の計算上、必要経費に算入していること。
B 各年分の本件譲渡機械の譲渡台数、譲渡収入及び本件所得は次表のとおりであること。

(単位 円、台)
 <項目>
<年分>譲渡台数譲渡収入本件所得
平成3年分9(4)6,592,5265,235,746
平成4年分9(5)7,750,0006,702,000
平成5年分4(1)1,454,0001,292,000

(注)「譲渡台数」欄の括弧内の数字は、譲渡台数のうちリース用機械の新規購入に当たっての下取り台数を表す。
C 請求人が申告した各年分の事業所得に係る総収入金額及びその内訳は、次表のとおりであること。

(単位 円)
 <年分>
<項目>平成3年分平成4年分平成5年分
リースに係る売上額(1)
 258,924,493206,979,559186,343,009
商品の売上額(2)
 32,203,04238,751,78223,733,552
総収入金額((1)+(2))
 291,127,535245,731,341210,076,561

(ロ)請求人提示資料、原処分関係資料及び当審判所の調査によれば、次の事実が認められる。
A 請求人は、(a)旧営業案内及び新営業案内に事業内容として「電気機器・土木建設機械のリース・販売・修理」、(b)顧客に交付する入出庫伝票、納品書及び請求明細書(以下「入出庫伝票等」という。)に発電機・バイブロハンマー・インバーター等の機械名とともに「賃貸・売買」及び(c)所有する車両の3台の車体に「電気機械・建設機械リース、販売、修理」と表示していること。
B 昭和61年分ないし平成5年分の取次ぎ機械の譲渡台数、譲渡収入、譲渡原価及び譲渡益は次表のとおりであること。

C 昭和61年分ないし平成5年分のリース用機械の保有台数、取得台数、譲渡台数及び除却台数は次表のとおりであること。

(単位 台)
 <項目>
<年分>取得台数譲渡台数除却台数保有台数(年末)
昭和61年分4182368
昭和62年分517412
昭和63年分459448
平成元年分5314487
平成2年分6081538
平成3年分3992566
平成4年分60921596
平成5年分174609

D 平成3年分から平成5年分の本件譲渡機械22台の譲渡のうち、リース中のものでそのリース先に譲渡されたものは平成3年分に2台(うち1台はリース先での落下損傷事故によるもの)あり、残り20台はリース後、引き上げて倉庫に保管中のものが譲渡されたものであること。
(ハ)請求人は、当審判所に対し次のとおり答述している。
A 取得価額が200,000円以上の新品については在庫品を持たないことにしているため、顧客から機械等の購入の注文があつた場合には、その注文の都度、仕入れて販売し、また、中古品の注文については手持のリース用機械に適当なものがあればそれを売却することとしていること。
B 顧客から機械等の購入の注文がある場合としては、リースが中・長期になる等の理由で顧客から購入の要望がある場合であり、中古品については機械を原形のまま譲渡した方が有利と判断したとき譲渡するものであること。
C 従業員は事務担当者3人、営業担当者2人及び整備担当者7人の計12人であり、営業担当者2人は電話によるリース・販売・修理の受注等に対応していること。
D 機械等購入の問い合わせは、電話により月2回ないし3回程度あること。
E 倉庫に保管しているリース用機械はすべて使用可能な状態であり、特に、リース用機械を屋外に放置するようなことはしておらず、リース用機械のメンテナンスが十分になされていることは業界でよく知られていること。
F 新規にリース用機械を購入するに当たって、保有しているリース用機械を下取品とする場合には、その都度、セールスマンと商談し、その時のお互いの力関係によって下取品の価格が決まること。
(ニ)ところで、所得税法第27条第1項では「事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業で政令で定めるものから生ずる所得(山林所得又は譲渡所得に該当するものを除く。)をいう。」と規定し、事業所得とされる事業の範囲については、同法施行令第63条《事業の範囲》において定めているところ、同条第1号から第11号では農業、漁業その他各種の事業を具体的に例示するとともに、同条第12号において「前各号に掲げるもののほか、対価を得て継続的に行なう事業」と規定し、事業の概念を包括的に定めているが、ここでいう「事業」とは、対価を得て継続的に行う事業、すなわち、営利を目的とする継続的行為であって、社会通念上事業と認められるものを指称するものと解されている。
 一方、所得税法第33条第1項では、譲渡所得とは、資産の譲渡による所得をいうと規定し、同条第2項第1号において「たな卸資産(これに準ずる資産として政令で定めるものを含む。)の譲渡その他営利を目的として継続的に行なわれる資産の譲渡による所得」は譲渡所得に含まれない旨規定しているところであるが、このように「その他営利を目的として継続的に行なわれる資産の譲渡による所得」が譲渡所得に含まれないものとされているのは、資産の譲渡による所得であっても、その譲渡が事業として行われるものである場合には、譲渡所得から除くこととしたものであって、このことは、上記の事業所得の解釈からも明らかである。
 そこで、事業の用に供されている減価償却資産の譲渡についてみれば、例えば、製造業を営んでいる者が車両又は機械装置等を譲渡する場合に、その譲渡行為が営利を目的とせず、かつ、臨時・偶発的であると認められる場合には、原則として譲渡所得に該当するものとされるが、他方、事業の用に供されている減価償却資産であっても、貸衣装業における衣装類やパチンコ店におけるパチンコ器の譲渡のような場合には、反復継続して譲渡することがその事業の性質上経常的である、すなわち、事業の一環として行うことが一般的であると認められることから、このような減価償却資産の譲渡による所得は、事業所得に該当するものと解するのが相当である。
(ホ)上記(イ)ないし(ハ)の事実及び答述から上記(ニ)に基づいて本件所得の所得区分を判断すると次のとおりである。
A 請求人は、上記(イ)のA及びCのとおり、機械等のリースを主な事業とし、他に機械等の譲渡収入があるところ、請求人は、上記(ロ)のAのとおり、顧客に対して機械の販売を行うことを営業内容の一つとして各種の宣伝をしていることが認められ、また、機械等の譲渡収入については、本件譲渡機械の譲渡収入を除いたところを事業所得に係る収入金額と自認し、申告しているところであることから、請求人は少なくとも、取次ぎ機械の販売については営利を目的として事業活動を行っていることが認められる。
B ところで、請求人は上記(ロ)のC及びDのとおり、常時多量のリース用機械を保有し、また、リース用機械のうち相当数のものをリース先から引き上げて倉庫に保管、管理していることが認められ、上記(ハ)のA、B及びEの請求人の答述からすると、その倉庫に保管中のリース用機械は常時使用可能なものであることが認められるところであり、顧客から中古機械等の購入の注文を受けた場合に、顧客の需要に応じられるこれらのリース用機械を譲渡した方が有利であると判断したときにはリース用機械を譲渡していることが認められる。
 そして、これらの譲渡は、上記(イ)のB、(ロ)のD及び(ハ)のFのとおり、リース用機械の新規購入に当たっての下取品として、あるいはリース中のもの若しくは保管中のものを顧客へ譲渡していることが認められる。
 そうすると、顧客から中古機械等の購入の注文があった場合、これをリース用機械をもって譲渡するか、または新たに機械を購入して譲渡するかは、その時におけるリース用機械の保管の状況及び請求人における営業上の判断によるものと認められ、本件譲渡機械の譲渡についても、取次ぎ機械の販売の場合と同様の目的をもって行われているものと認められる。
C 以上のことから、請求人は事業の一環として取次ぎ機械と同様にリース用機械についても営利を目的として譲渡しているものと認められる。
 そして、請求人のリース業の性格上、そのリース用機械を取得してリースの用に供した後に当該リース用機械を譲渡したとしても、その譲渡行為はリース用機械に係る所有権の行使の一態様として、これを譲渡したにすぎないものと認めることが相当であり、リース業に付随して経常的に派生していることからしても、請求人は営利を目的として継続的にリース用機械の譲渡を行ったものと認められる。
 したがつて、本件所得は、所得税法第33条第2項第1号に規定する「営利を目的として継続的に行なわれる資産の譲渡による所得」に該当し、譲渡所得には該当しないこととなるので、その所得区分は事業所得となる。
(ヘ)ところで、請求人は、本件譲渡機械の譲渡は、臨時・偶発的に譲渡したもので、譲渡台数も極めて少ない旨主張する。
 しかしながら、請求人はもともと機械等のリースを主たる事業としているところ、上記(ハ)のDの請求人の答述によれば、機械等の購入の問い合わせは月2回ないし3回程度であり、上記(イ)のB及び(ロ)のBのとおり、本件譲渡機械の譲渡の件数が少ないことは、取次ぎ機械の譲渡の場合も同様であると認めれられ、その譲渡の件数が少ないことをもって臨時・偶発的に譲渡したものとする請求人の主張は採用できない。
(ト)次に、請求人は、本件所得はリース用機械を長期間保有したことによる値上がり益による所得が発生したものであるから、所得税法第33条第2項第1号に規定する「その他営利を目的として継続的に行なわれる資産の譲渡による所得」には該当しない旨主張する。
 この点については、別表2のとおり、請求人における本件譲渡機械の譲渡に係る収入金額は、その譲渡原価に対し、平成3年分が約5倍、平成4年分が約7倍、平成5年分が約9倍となっており、本件譲渡機械の譲渡においては、多額の譲渡益が生じていることが認められるところ、上記(ハ)のEのとおり、請求人は、リース用機械を屋外に放置するようなことはしておらず、そのメンテナンスが十分なされている旨答述していることから、リース用機械は風雨による損傷から十分に保護されていた状況にあり、機能的にも経済的にもその価値が下がらなかったものと認められる。
 そうすると、請求人は本件譲渡機械の譲渡を事業の一環として行っていることが認められるところから、本件譲渡機械の値上がり益はメンテナンス等を十分に施して生じた利益であって、請求人が主張する長期間保有していたことによる資産の値上り益とは認められないことから、この点に関する請求人の主張は採用することができない。
(チ)また、請求人は、所得税法第33条第2項第1号に規定する「その他営利を目的として継続的に行なわれる資産の譲渡による所得」の継続的取引の概念は余りにも漠然としており原処分庁との見解の相違をなくすためにも、償却資産数及び償却年数等を理論的に総合勘案して、資産の売買回数・数量等をより具体的に明示すべきである旨主張する。
 しかしながら、上記(ホ)のとおり、請求人の事業にあつてはリース用機械の譲渡は事業の一環として行われているものと認められ、譲渡台数の多寡にかかわるものではないと解されることから、請求人の主張は採用することができない。
(リ)さらに、請求人は、税務調査が果たす役割は大きく、税務調査が法的に拘束を与えることから、過去の税務調査において指導助言があってしかるべきであり、これらをしないで更正処分したことは信義則に反する旨主張する。
 しかしながら、過去の税務調査において指導助言がなかったからといって、本件所得の所得区分に誤りがあることが明らかになった段階で是正を求めることは、不当なものとはいえないので、請求人の主張には理由がない。
ロ 総所得金額
 各年分の総所得金額及びその計算内容は、次のとおりである。
(イ)事業所得の金額
 各年分の事業所得の金額は、原処分庁関係資料等を基に当審判所において調査したところ、原処分庁主張額のとおり、平成3年分が59,492,871円、平成4年分が19,727,742円、平成5年分が6,481,250円と認められる。
(ロ)不動産所得の金額
 各年分の不動産所得の金額は平成3年分が25,333,343円、平成4年分が28,196,384円、平成5年分が28,987,852円であることについて、請求人及び原処分庁の双方に争いはなく、当審判所において調査したところによっても相当と認められる。
(ハ)給与所得の金額
 各年分の給与所得の金額は平成3年分が2,961,000円、平成4年分が3,143,400円、平成5年分が3,325,800円であることについて、請求人及び原処分庁の双方に争いはなく、当審判所において調査したところによっても相当と認められる。
(ニ)譲渡所得の金額
 各年分の譲渡所得の金額は、原処分庁関係資料等を基に当審判所において調査したところ、原処分庁主張額のとおり、平成3年分が車両の譲渡損失額51,182円と認められる。
以上のことから、各年分の総所得金額は、次表のとおりとなる。

 したがって、この金額と同額でされた各年分の更正処分は適法である。
(2)賦課決定処分について
 上記(1)のとおり、各年分の更正処分は適法であり、かつ、更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項の規定に基づいてされた各年分の過少申告加算税の賦課決定処分も適法である。
(3)原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所において調査・審理したところによっても、これを不相当とする理由は認められない。

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