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(平8.4.11裁決、裁決事例集No.51 258頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

 審査請求人(以下「請求人」という。)は、平成2年分の所得税の確定申告書(分離課税用)に分離課税の長期譲渡所得の金額(以下「譲渡所得金額」という。)を84,125,592円、納付すべき税額を12,485,900円と記載して法定申告期限までに申告した。
 F税務署長は、これに対し、平成6年3月9日付で、譲渡所得金額を105,998,250円、納付すべき税額を17,874,000円とする更正処分及び過少申告加算税の額を538,000円とする賦課決定処分をした。
 請求人は、これらの処分を不服として、平成6年5月9日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年6月30日付でいずれも棄却の異議決定をした。
 請求人は、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成6年8月5日に審査請求をした。

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2 主張

(1)請求人の主張

 原処分は、次の理由により違法であるから、その全部の取消しを求める。
イ 更正処分について
(イ)請求人は、平成2年4月24日にH株式会社(以下「H社」という。)にP市R町4丁目23番の1、2、3、5の4筆の宅地合計1,130.08平方メートル(以下「全体土地」という。)を譲渡し、このうち、租税特別措置法(平成3年法律第16号による改正前のもの。以下同じ。)第37条《特定の事業用資産の買換えの場合の譲渡所得の課税の特例》第1項に規定する事業の用に供している資産(以下「事業用資産」という。)に該当する部分として、565.04平方メートル(以下「本件土地」という。)を同項に規定する事業用資産の買換えの特例(以下「本件特例」という。)を適用して、また、残りの土地については、租税特別措置法第35条《居住用財産の譲渡所得の特別控除》第1項に規定する居住の用に供している家屋の敷地の用に供されている土地に該当するものとして、同項の規定を適用して、譲渡所得の申告をしたところ、F税務署長は、本件土地は事業用資産に該当しないから本件特例の適用はないとして更正処分をした。
 しかしながら、本件土地は次のとおり事業用資産に該当するから、本件特例を適用すべきである。
A 請求人は、全体土地のうち本件土地を含む314坪(以下「旧賃貸土地」という。)を、昭和43年4月1日から昭和63年8月31日までの20年5か月の間、J株式会社(以下「J社」という。)に継続して賃貸していた。
B 請求人は、J社との間で昭和63年8月31日付の旧賃貸土地の賃貸借契約(以下「本件賃貸借契約」という。)の解除のため覚書(以下「本件覚書」という。)を取り交わし、同日をもって本件賃貸借契約を解除したが、この契約解除はJ社の一方的な都合によるものである。
 なお、本件覚書により、旧賃貸土地上にあるJ社が所有していた事務所兼工場用の建物(昭和34年12月10日建築を原因として、昭和37年9月28日付で登記されたもの。)及び2棟のプレハブ建物(これらの建物を併せて以下「本件建物」という。)を同社より無償で譲り受けた。
C 請求人は、本件賃貸借契約が解除された昭和63年8月31日の翌日以降、本件土地及び本件建物について現状のまま一括して賃貸する計画で請求人の長男K(以下「K」という。)及び親類のL(以下「L」という。)に依頼して貸付先を探し続けていたがなかなか見つからず、見通しのつかない状況にあった。
D 請求人は、平成元年10月頃、Lから全体土地の売買の話が持ち込まれ、これ以上貸付先を探しても見つからないと判断し、H社との間で全体土地及び同地上にある請求人の夫M(以下「M」という。)所有の居宅を一括して譲渡する話を進め、お互いの条件に合意が成立したので、同年11月2日に本件建物を取り壊し、平成2年4月24日に不動産売買契約を締結した。
(ロ)事業用資産には、譲渡の日において現に事業の用に供している資産のほか、事業の用に供していた資産がその供用を停止した場合においても、賃貸物件においては、供用停止の直後から引き続き事業の用に供する目的で貸付先を探し続けていれば、相当の期間内は事業用資産としての性質を失うものではないから、このような資産も含まれると解すべきである。
 なお、相当の期間はおおむね3年間と考える。
(ハ)請求人は、上記(イ)のBないしDのとおり、本件賃貸借契約が解除されてから引き続き本件土地を賃貸する目的で貸付先を探し続けたが見つからなかったので、やむを得ず譲渡することとなったものであり、かつ、本件賃貸借契約の解除の日から譲渡の日までの期間は1年8か月(本件土地の賃貸を断念し、全体土地を譲渡する意思決定をしたのは本件賃貸借契約解除の日から1年3か月後)で相当の期間内であるから、本件土地は事業用資産としての性質を失っていない。
ロ 過少申告加算税の賦課決定処分について
 以上のとおり更正処分は違法であるから、これに伴う過少申告加算税の賦課決定処分も違法である。

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(2)原処分庁の主張

 原処分は、次の理由により適法であるから、審査請求を棄却するとの裁決を求める。
イ 更正処分について
(イ)原処分及び異議申立てに係る調査によれば、次の事実が認められる。
A 請求人は、J社との間で昭和63年8月31日に本件賃貸借契約を解除する旨の本件覚書を取り交わしていること。
B 本件賃貸借契約の解除原因は、J社が旧賃貸土地上のめっき工場の改築を行うべく金融機関に融資を依頼した際、旧賃貸土地のある地域は住宅地であって、めっき工場は有害物を扱うので融資はできない旨の指導を受け、他の地域への移転を決めたことによるものであること。
C 本件建物及び旧賃貸土地は、J社の本社事務所及びめっき工場並びにその敷地として利用されていたが、昭和61年6月頃に、J社は本社事務所及びめっき工場をP市S町に移転させ、旧賃貸土地におけるめっき工場の操業を停止していること。
D 旧賃貸土地に係る地代収入は、請求人の所得税の確定申告によると昭和62年11月分までで終わっていること。
E 請求人は、本件建物を取り壊し、事務所兼工場用建物は平成元年11月2日の取壊しを原因として平成元年12月28日受付で滅失登記をしていること。
F 本件賃貸借契約の解除後、本件建物については取り壊されるまでの期間、本件土地については譲渡されるまでの期間、未利用のまま放置されていたこと。
G 請求人とM(以下、両名を併せて「請求人ら」という。)は、平成2年4月24日にH社との間で全体土地及び同地上のM所有の居宅を一括して同社へ譲渡する旨の不動産売買契約書を取り交わしていること。
(ロ)以上の事実から判断すると、次のとおりである。
A 上記(イ)の事実からすると、請求人がJ社との本件賃貸借契約の解除以降、本件土地を事業の用に供していなかったことは明らかであり、また、本件賃貸借契約の解除は、請求人が本件土地を譲渡して、新たに事業継続のための買換資産を取得する目的で行ったものとも認められない。
B なお、請求人は本件賃貸借契約の解除後も貸付先を探し続けていたことをもって本件土地が事業用資産に該当する旨を主張するが、事業の用に供している資産であるというためには、事業を行う意図が客観的に明白でなければならないと解される。
 しかしながら、本件土地及び本件建物について、請求人は賃貸借を継続するために広告等で貸付先を募集したり、不動産仲介業者に本件土地の賃貸借の仲介を依頼したり、また、賃貸借が行われやすいように本件建物を改修、又は、取り壊すといった積極的な行為を行ったとは認められず、結局、本件賃貸借契約の解除後から、本件建物を全体土地の譲渡のために取り壊したとする、平成元年11月頃までの1年3か月もの間未利用のまま放置していることから見て、請求人の事業を行う意図が客観的に明白であるとは認められない。
C したがって、本件土地の事業への供用は、本件賃貸借契約を解除した時点をもって終了し、その時点で事業用資産としての性質を失ったと解するのが相当である。
ロ 過少申告加算税の賦課決定処分について
 以上のとおり更正処分は適法であり、また、国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められないので、同条第1項の規定に基づき過少申告加算税の賦課決定処分をしたことは適法である。

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3 判断

 本件土地が事業用資産に該当するか否かについて争いがあるので、以下審理する。

(1)更正処分について

イ 次の事実については、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査によっても、その事実が認められる。
(イ)請求人は、全体土地のうちP市R町4丁目23番の1、2、3の3筆の宅地合計1,122.18平方メートルを昭和36年6月27日に売買により、また、同地番の5の宅地7.90平方メートルを昭和50年8月18日に交換により取得していること。
(ロ)請求人は、J社の一方的な都合により本件賃貸借契約の解除の申入れを受け、同社との間で昭和63年8月31日付の本件覚書を取り交わし、同日をもって本件賃貸借契約を解除したこと。
(ハ)請求人は、本件建物を取り壊し、事務所兼工場用建物については、平成元年11月2日の取壊しを原因とする滅失登記がなされていること。
(ニ)請求人らは、H社との間で全体土地及び同地上のM所有の居宅を一括して譲渡する旨の不動産売買契約書を平成2年4月24日付で取り交わしていること。
ロ 請求人は、高血圧のため入退院を繰り返しており、当審判所が請求人と面接した際も質問調査ができる状態ではなかった。
 また、Mも入院中であり面接はできなかった。
ハ 当審判所が調査したところによれば、請求人らは原処分の調査担当職員に対し、次の(イ)及び(ロ)のとおり申述し、また、請求人は文書により次の(ハ)のとおり回答していることが認められる。
(イ)本件建物は、公害との関連からめっき工場としては使用はできず、また、めっき槽が3個あるため、他の用途に転用できるものではないので、賃貸を考えたことはない。
(ロ)Kが居住している土地の空地(肩書地)に自分たちの住宅を建築するつもりで、全体土地の譲渡を考えていた。
 なお、本件建物を取り壊したのは、更地の方が譲渡しやすいと思ったからで、譲渡先が決まって取壊しをしたものではない。
(ハ)本件土地及び本件建物については、賃貸又は譲渡を考えていたが、今後のことを考えれば譲渡した方が良いと思い、Kを通じてN株式会社(以下「N社」という。)に譲渡先を探す依頼をしたが、なかなか見つからなかった。
ニ 請求人の関与税理士であるT(以下「T」という。)は、当審判所に対し、次のとおり答述している。
(イ)土地の賃貸借契約を解除する場合には、建物を取り壊して更地で返還を受けるのが通常であるところ、旧賃貸土地は、建物が建った状態で返還を受けたのだから、本件建物は賃貸可能な価値のある建物であったと思われる。
 しかし、めっき工場として使用されていた建物なので、工場として使用するにしてもある程度の利用制限があると思われ、一般的な工場建物にするには多大な設備投資がかかると考えていた。
(ロ)本件賃貸借契約の解除の日以後、本件土地は、売買契約を締結した平成2年4月24日までの期間、本件建物については取り壊すまでの期間、いかなる用途にも使用していなかった。
(ハ)請求人は、本件土地及び本件建物を一括して賃貸するために、K、L及び直接依頼はしていないがKを通じてN社の代表取締役W(以下「W」という。)に貸付先を探す依頼をした。
(ニ)本件土地及び本件建物の貸付先については、広告や立看板等で募集することはしなかった。
ホ Kは、当審判所に対して、次のとおり答述している。
(イ)私の関与税理士であるTに紹介されたWに対して、積極的とは言えないが本件土地及び本件建物の借り手がいたら紹介してほしい旨の依頼をした。
(ロ)上記(イ)の依頼について、Wに広告を出して探してもらうことはしなかったし、同人からは借り手を一人も紹介されたことはなく、また、同人に依頼をしたことについて証拠となるようなものはない。
(ハ)本件土地及び本件建物は、本件賃貸借契約の解除の日以後、保守・管理は特にしていないし、他の用途に使用することもなかったので、空地、空家の状態であった。
(ニ)本件建物は、工場廃水の問題から、めっき工場としては利用できないので、借り手を見つけることは非常に困難であると考えていた。
ヘ Lは、当審判所に対して、次のとおり答述している。
(イ)全体土地については、時期は定かではないがMから譲渡したいとの相談を受けた。
 なお、相談を受けた時には、本件建物は取り壊されていた。
(ロ)全体土地の譲渡に関しては、H社の代表取締役Y(以下「Y」という。)をMに紹介しただけであり、売買契約には立ち会っていない。
ト Wは、当審判所に対して、7年も前のことなので良く覚えていないとして、答述を拒んでいる。
チ J社の代表取締役Z(以下「Z」という。)は、当審判所に対して、次のとおり答述している。
(イ)当社は、本件賃貸借契約の解除の時点では、地代の支払いも滞るなど経営状態が悪かったことから、本件建物を取り壊さずに旧賃貸土地を返還することで請求人に了承してもらった。
(ロ)当社は、昭和61年6月の工場移転に当たりP市の制度融資を受けているが、その際、移転後の跡地利用について、公害関連事業は一切行わないとする誓約書を当社と請求人がP市にそれぞれ提出しているので、本件建物をめっき工場としては使用できないが、倉庫等には使用できるかと思っていた。
 しかし、建物の状況は後記(ハ)のとおりであり、本件賃貸借契約を解除した日の状態では借りる人はいないと思う。
(ハ)本件建物は、昭和43年に中古で取得し、一階をめっき工場と事務所、二階を食堂として使用していた建物と汚水処理等に使用していた2棟のプレハブ建物であるが、昭和61年6月に当社が移転してから、建物の保守・管理や除雪等を一切していなかったため、窓やシャッターが壊れており、屋根の一部も曲がったりして、傷みの激しい状態であったことから、本件賃貸借契約の解除時点の現状での使用は不可能であり、本件建物を再利用するためにはかなりの補修が必要と思われた。
リ ところで、租税特別措置法第37条第1項に規定する事業の用に供しているものの譲渡とは、原則として、その資産が、譲渡する時点において現に事業(租税特別措置法施行令第25条第2項に規定する事業に準ずるものを含む。以下同じ。)の用に供されている場合に限られる。
 しかし、事業の用に供されていた資産は、事業用資産としての供用が停止された場合において、必ずしも、その時点で直ちに非事業用資産に転化されたというものではなく、供用が停止された後も、事業を継続する意図があると認められるもの等については、再供用に通常要するであろう相当の期間内は、いまだ事業用資産としての性質を失うものではないと解するのが相当である。
 そして、どの程度の期間をもって相当の期間内とすべきかについては、客観的に明白な事業継続の意思の有無、その事業用資産の種類、構造等の特性、現実に事業の用に供しなくなった具体的理由、その供用停止後の資産の状況及びその供用停止後における買換えの準備活動等を総合して判断するのが相当である。
ヌ 以上を踏まえて、本件土地が本件特例の対象となる事業用資産に該当するか否かについてみれば、次のとおりである。
(イ)上記イの(ロ)の事実のとおり、本件賃貸借契約は、J社の都合により昭和63年8月31日付の本件覚書に基づき同日をもって解除されており、また、上記ホの(ハ)のKの答述によれば、その後は本件土地を事業の用には供していなかったとしているが、上記ニの(ロ)のTの答述もこれと符合し、事実と認められる。
 さらに、請求人は、上記へのLの答述のとおり、Lに全体土地の売却先を探してもらうよう依頼し、LからYを紹介され、上記イの(ニ)の事実のとおり、H社との間で平成2年4月24日付の不動産売買契約書を取り交わしていることが認められる。
(ロ)請求人は、本件土地及び本件建物について現状のまま一括して賃貸する計画であった旨主張し、Tは上記ニの(イ)のとおり、旧賃貸土地は建物が建った状態で返還を受けたのだから、本件建物は賃貸可能な建物であったと思う旨答述する。
 しかしながら、本件建物の状況に関する上記答述は、具体性を欠き、本件賃貸借契約の解除時における本件建物の状況については、上記ホの(ニ)のK及び上記チの(ロ)のZの答述並びに上記ハの(イ)の請求人らの申述によれば、工場廃水による公害のおそれがあるため本件建物を再度めっき工場として使用することはできないこと、上記チの(イ)及び(ハ)のZの答述によれば、J社が工場を移転した昭和61年6月から保守・管理等をしていなかったために、屋根の一部が曲がったり、窓やシャッターが壊れていたが改修もしておらず、そのままでの使用は不可能であったこと、さらに、上記ホの(ハ)のKの答述によれば、本件賃貸借契約の解除後も同様、保守・管理等をせず空家のまま未利用の状態に置かれていたことが認められる。
 また、当審判所の調査したところによっても、請求人が本件土地の賃貸借が行われやすいように本件建物を改修したり、更地で賃貸するために本件建物を取り壊すといった積極的な行為をした事実も認められない。
 そうすると、本件土地及び本件建物は、本件賃貸借契約の解除後、使用不可能のまま放置状態にあったと認めるのが相当であり、現状のまま一括して賃貸する計画であったとする請求人の主張は採用することができない。
(ハ)本件土地が事業用資産であるというためには、事業を継続しようとする意図が客観的に明白となる状況が必要であると解されるところ、請求人は、本件賃貸借契約の解除後、本件土地及び本件建物を賃貸すべく貸付先を探し続けていたと主張するが、その状況は次のとおりである。
A 貸付先の募集については、上記ニの(ニ)のT及びホの(ロ)のKの答述のとおり、広告や立看板等による方法ではしなかった事実が認められる。
B 貸付先を探す依頼については、Tは上記ニの(ハ)のとおり、K、L及びKを通じてWに対して貸付先を探す依頼をしたと答述し、Kは上記ホの(イ)のとおり、Wに対して貸付先を探す依頼をしたと答述するが、(1)Lは上記ヘの(イ)のとおり、全体土地については賃貸の相談ではなく、譲渡の相談を受けたが、相談を受けた時には建物は既に取り壊されていたと答述し、(2)Wは上記トのとおり、7年も前のことなので良く覚えていないとして答述を拒んでおり、また(3)請求人らは上記ハの(イ)のとおり、原処分の調査担当職員に対し、本件建物については、めっき工場であったことなどから簡単に転用ができないため賃貸を考えたことはないと申述し、(4)請求人は上記ハの(ハ)のとおり、Kを通じて本件土地及び本件建物の譲渡についてN社に相談をしたが、買い手は見つからなかった旨の文書をF税務署長に提出していることからすれば、請求人が貸付先を探す依頼をしたというT及びKの答述は信憑性を欠き、いずれも採用することはできず、当審判所の調査によっても、貸付先を探していたと認めるに足りる証拠も存在しないことから、事業を行う意図が客観的に明白であるとは認められない。
(ニ)そうすると、本件土地については、上記(ロ)及び(ハ)の認定事実のとおり、請求人が客観的に明白な事業継続の意思を有していたと認めるに足りる事実は認められず、また、現状のままでの使用は不可能であったと認められる本件建物を、賃貸のために改修又は取り壊すといった積極的な行為もせずに、1年以上もの間未利用のまま放置状態にしていた事実から判断すると、本件土地の譲渡は、事業用資産としての性質を失わない相当な期間内における譲渡ということはできない。
(ホ)したがって、本件土地は請求人が全体土地を譲渡する時点において、事業用資産としての性質を既に失っていたものと認めるのが相当であるから、原処分庁が、本件土地の譲渡所得の計算に当たって、本件特別の適用はないとして行った更正処分は適法である。

(2)過少申告加算税の賦課決定処分について

 以上のとおり、更正処分は適法であり、また、更正処分による納付すべき税額の計算の基礎となった事実が、更正前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項の規定に基づいてした過少申告加算税の賦課決定処分は適法である。
(3)原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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