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(平8.3.11裁決、裁決事例集No.51 308頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

 審査請求人(以下「請求人」という。)は、建設業を営む同族会社であるが、平成2年10月1日から平成3年9月30日まで及び平成3年10月1日から平成4年9月30日までの事業年度(以下、順次「平成3年9月期」及び「平成4年9月期」といい、これらを併せて「各事業年度」という。)の法人税について、青色の確定申告書に次表の「確定申告」欄のとおり記載して、法定申告期限までに申告した。
 原処分庁は、これに対し、平成6年6月29日付で各事業年度の法人税について、次表の「更正等」欄のとおり更正処分(以下「本件法人税更正処分」という。)及び平成4年9月期について重加算税の賦課決定処分をした。
 また、原処分庁は、同日付で平成3年10月1日から平成4年9月30日までの課税事業年度(以下「平成4年9月課税事業年度」という。)の法人特別税について、課税標準税額を25,433,000円、納付すべき税額を635,800円とする決定処分(以下「本件法人特別税決定処分」という。)及び重加算税の額を252,000円とする賦課決定処分をした。

 請求人は、これらの処分を不服として平成6年7月26日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年10月25日付でいずれも棄却の異議決定をした。
 請求人は、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成6年11月17日に審査請求をした。

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2 主張

(1)請求人の主張

 原処分は、次の理由により違法であるから、その一部の取消しを求める。
イ 本件法人税更正処分について
 原処分庁は、請求人が各事業年度において損金に計上した、P市R町1丁目5番19号に所在する有限会社F(以下「F社」という。)及びP市S町2丁目3番303号に所在するG工業(以下「G社」といい、F社と併せて以下「F社等」という。)に対する外注費並びにP市Q町4丁目40番29号に所在する有限会社H(以下「H社」という。)に対する車両賃借料(F社等に支払った外注費と併せて、以下「本件外注費等」という。)について、実際に本件外注費等を支払ったにもかかわらず、これを損金として認めなかった原処分は違法である。
ロ 法人税に係る重加算税の賦課決定処分について
 前記イのとおり、本件法人税更正処分はその一部が違法であるから、これに伴い平成4年9月期の重加算税の賦課決定処分はその全部が取り消されるべきである。
ハ 本件法人特別税決定処分について
 前記イのとおり、本件法人税更正処分はいずれも違法であり、平成4年9月期はその一部を取り消すべきであるから、これに伴い本件法人特別税決定処分も、その一部を取り消すべきである。
ニ 法人特別税に係る重加算税の賦課決定処分について
 前記ハのとおり、本件法人特別税決定処分はその一部が違法であるから、それに伴い重加算税の賦課決定処分もその全部が取り消されるべきである。

(2)原処分庁の主張

 原処分は、次の理由により適法であるから、審査請求を棄却するとの裁決を求める。
イ 本件法人税更正処分について
(イ)原処分庁の調査によると、次の事実が認められる。
A 請求人は、平成3年9月期の法人税の確定申告において、外注費としてH社に対する車両賃借料2,889,290円を計上し、また、平成4年9月期の法人税の確定申告において、外注費としてF社に対する35,400,160円及びG社に対する32,559,315円並びにH社に対する車両賃借料10,068,675円をそれぞれ計上していること。
B F社の所在地は、P市R町1丁目5番19号とされているが、同所在地にはF社は実在していないこと。
C G社の所在地は、P市S町2丁目3番303号とされているが、そのような住居表示は存在していないこと。
D H社の所在地は、P市Q町4丁目40番29号とされているが、同所在地は、請求人の監査役J(以下「J」という。)の住所地であり、同所にH社は実在していないこと。
E 請求人は、F社等に対し、土木工事の外注を行ったことは、請求人の元請であるK株式会社のL(以下「L」という。)が作成した作業証明書で明らかであるとしているが、Lは、原処分に係る調査担当職員(以下「調査担当職員」という。)に対し、作業証明書は請求人の専務取締役M(以下「M」という。)から依頼を受けて作成したものであり、F社等の名前を聞いたことがなく、存在しないと思っていることなどを申述していること。
F 請求人の代表取締役であるN(以下「N」という。)及びMは、調査担当職員に対し、外注先等の勤務状況等の資料としてMが作成していた現場作業証明書の平成5年3月以前のものを請求人において焼却した旨申述していること。
G 請求人は、Lが作成した作業証明書以外にF社等が実在すること及び土木工事等に従事したことを証する書類の提出をしていないこと。
H 請求人がH社から借用しているとする車両(車両登録番号は、P○ー△ー○○○であり、以下「本件車両」という。)の自動車検査証の所有者欄は、本件車両の購入先である株式会社T(以下「T社」という。)とされ、使用者欄は、Nの個人名が記載されていること。
I Nは、調査担当職員に対し、H社に対する本件車両の賃借料の支払額の計算資料は一切ない旨を申述していること。
(ロ)前記(イ)の事実から、請求人がF社等に対して工事を外注したこともなく、実在もしないF社等に対して、架空の外注費を計上したことは明らかである。
 また、H社についても、車両の賃借の事実がないにもかかわらず、架空の法人名を使用して、車両賃借料を外注費として計上したことは明らかである。
 したがって、請求人の主張には理由がない。
(ハ)以上の結果、請求人の各事業年度の欠損金額及び所得金額並びに納付すべき税額は、前記1の表の「確定申告」欄の金額に、次のとおりの、AないしFの項目を加算又は減算した結果、別表1のとおりとなり、これらの金額は、いずれも本件法人税更正処分の欠損金額及び所得金額と同額となるから、本件法人税更正処分は適法である。
A 前記(イ)のとおり本件外注費等は、架空の外注費であり、損金に算入されないから各事業年度の所得金額に加算した。
B 請求人がJに支給した賞与の合計額(平成3年12月8日及び平成4年7月24日にそれぞれ300,000円支給)は、役員に対する賞与であり、法人税法第35条《役員賞与の損金不算入》の規定により、損金の額に算入されないので、支給日の属する平成4年9月期の所得金額に加算した。
C 平成3年9月期の更正により同期の繰越欠損金額は、3,777,791円となり、平成4年9月期の確定申告で損金の額に算入された6,070,305円との差額2,292,514円を平成4年9月期の所得金額に加算した。
D 請求人が平成4年9月期の雑収入に計上した還付法人税額382,300円と還付道府県民税額21,500円は、法人税法第26条《還付金の益金不算入》の規定により、益金に算入されないので、平成4年9月期の所得金額から減算した。
E 上記AないしDの加算・減算に伴い、算出された平成4年9月期の留保所得金額に対して、法人税法第67条《同族会社の特別税率》の規定に基づき、課税留保金額及び同金額に対する税額を計算したところ、平成4年9月期の課税留保金額は、8,086,000円及び同金額に対する税額は、808,600円となる。
F 請求人は、平成4年9月期の法人税額から控除する所得税額等を86,435円としているが、このうち21,607円は、道府県民税利子割相当額のため、法人税法第68条《所得税額の控除》の規定により、平成4年9月期の法人税額に加算した。
ロ 法人税に係る重加算税の賦課決定処分について
 前記イの(ロ)のとおり、請求人は、架空の法人名等を使用して本件外注費等を計上し、これを損金の額に算入することにより、各事業年度の所得金額を過少に申告している事実が認められる。
 このことは、国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する「国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたとき」に該当するので、同項の規定に基づき、平成4年9月期において架空の本件外注費等に対応する法人税額を基礎として重加算税を賦課決定したことは適法である。
ハ 本件法人特別税決定処分について
 平成4年9月期の法人税の更正処分に基づき、請求人の平成4年9月課税事業年度の法人特別税の課税標準法人税額は、別表2のとおり25,433,000円となり、本件法人特別税決定処分と同額となるので、本件法人特別税決定処分は適法である。
ニ 法人特別税に係る重加算税の賦課決定処分について
 本件法人特別税決定処分により納付すべきこととなる法人特別税額の計算の基礎となった事実については、前記イの(ロ)のとおりであり、このことは、国税通則法第68条第1項に規定する「国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたとき」に該当するので、同項の規定に基づき、重加算税の賦課決定処分をしたことは適法である。

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3 判断

 本件審査請求の争点は、本件外注費等が架空計上か否かであるので、以下審理する。

(1)本件法人税更正処分について

 請求人は、F社等及びH社に外注した証拠資料として、1各事業年度の総勘定元帳、2F社等及びH社の領収証、3平成4年9月期及び平成4年10月1日から平成5年9月30日までの事業年度の振替伝票、4T社が発行した領収証の写し、5Jの兄であるW(以下「W」という。)の平成3年分、平成4年分の所得税の確定申告書の控え及び同各年分の収支内訳書の写し並びに同各年分の納付書・領収証書を当審判所に提出し、F社等及びH社に本件外注費等を実際に支払った旨主張する。
 そこで、請求人がF社等及びH社に対し、実際に本件外注費等を支払ったか否かについて審理したところ、次のとおりである。
イ 請求人が提出した証拠資料、原処分関係資料及び関係人等を当審判所が調査したところ、次の事実が認められる。
(イ)請求人は、平成3年9月期の法人税の確定申告において、H社に対する車両賃借料を外注費として2,889,290円を計上し、また、平成4年9月期の法人税の確定申告において、F社に対する外注費として35,400,160円及びG社に対する外注費として32,559,315円並びにH社に対する車両賃借料を外注費として10,068,675円をそれぞれ計上していること。
(ロ)F社の所在地は、P市R町1丁目5番19号とされているが、同所在地には、F社は実在せず、また、Nは、当審判所に対し、同社の所在地、連絡先及び同社の代表者の氏名は知らない旨答述していること。
(ハ)G社の所在地は、P市S町2丁目3番303号とされているが、同所在地の住居表示は存在せず、また、Nは、当審判所に対し、G社の所在地、連絡先及び代表者の氏名は知らない旨答述していること。
(ニ)請求人がF社等に外注したことを証する資料として提出したLが作成した作業証明書について、Lは、調査担当職員に対して、作業証明書は請求人の専務取締役であるMの依頼を受けて作成し、同証明書にF社等が作業したこととして記載した旨及びF社等は存在しているかどうかは確認していない旨申述し、当審判所に対しても同様の答述をしていること。
 また、請求人がF社等に外注したことを証する資料として提出したX株式会社の現場監督であるY(以下「Y」という。)が作成した作業証明書についても、Yは、調査担当職員に対して、請求人より作業証明書の作成依頼を受け作業証明書に押印はしたが、F社等の名前は聞いたことがなく、また、その存在を確認していない旨申述していること。
(ホ)Nは、当審判所に対し、F社等に対する外注費の支払については、請求人が取引先から受け取った約束手形(以下「本件受取手形」という。)をNの長女であり請求人の取締役であるZ(以下「Z」という。)が所持していた現金と交換して、すべて現金で支払った旨答述しているが、F社等に支払った本件受取手形は、すべてN、Z及びJの兄であるA(以下「A」という。)の個人名義の普通預金口座で取り立てられていること。
 なお、Nは、当審判所に対し、Zが所持していた現金は、12年程前に同人の夫が交通事故で死亡した時の保険金を預金した後すぐに引き出し、現金で所持していたものである旨答述しているが、Zは、調査担当職員に対し、上記のZが所持していた現金を請求人に対して貸し付けたのは昭和58年頃から平成元年頃までで、平成2年以降は手持の現金はほとんどなく、また、本件受取手形の取立口座はNが開設し管理しており、本人は関与していないものである旨申述していること。
 また、Nは、当審判所に対し、本件受取手形と現金とを単に交換しただけであるから、現金及び預金の合計額は増加しない旨答述していること。
(ヘ)Nの本件受取手形の取立口座である普通預金口座から、平成3年3月14日に振替で同人の定期預金15,000,000円を設定し、同預金を平成3年4月25日に解約して、そのうちの11,000,000円をNの三女の夫であり請求人の監査役であるJ名義の普通預金口座に入金した後、同人の借入金の臨時返済に10,969,651円を充てていること。
(ト)H社の所在地は、P市Q町4丁目40番29号とされているが、同所在地は、Jの住所地であること。
(チ)本件車両の自動車検査証の所有者欄は、本件車両の購入先であるT社となっているが、使用者欄はNの個人名となっていること。
 また、T社の売上帳には、本件車両の販売先は請求人となっており、同社の代表取締役も調査担当職員に対して、請求人に販売したと記憶している旨申述していること。
(リ)Nは、当審判所に対し、H社はWの個人経営であるが、Wは10年程前に△△国にわたり日本には居住しておらず、JがWのために同人が日本に帰国した際の生活費に充てることを目的として本件車両を購入し、請求人に賃貸することとしたものであり、賃貸借契約書は作成していない旨答述しており、また、Jも調査担当職員に対して、Nと同旨の申述をしていること。
(ヌ)請求人が証拠資料として提出したWの平成3年分及び平成4年分の所得税の確定申告書控えは、請求人に対する調査着手後の平成5年4月2日にB税務署長に期限後に提出された確定申告書の控えであること。
(ル)Nは、当審判所に対し、H社に対する支払は外注費として計上し、その外注費の算定は本件車両の1往復当たり27,000円として算出しているが、本件車両の車検代、修理代及び燃料費は請求人が負担し、また、運転手は請求人の従業員である旨答述しており、単なる車両賃借としての当該取引は極めて不自然であると認められること。
(ヲ)Nは、当審判所に対して、H社に対しては、本件受取手形及び現金で支払った旨答述しているが、H社に対して支払った本件受取手形は、Z及びAの個人名義の預金口座で取り立てられていること。
 なお、Jは、調査担当職員に対して、A名義の預金口座はJが開設し管理していること及びWが△△国に在住しているため、A名義を使用した旨申述していること。
(ワ)N、Z及びJ(以下「N等」という。)の平成2年分、平成3年分及び平成4年分(以下「各年分」という。)の収入金額は、次表1のとおりであるにもかかわらず、N等及びAの各事業年度末の個人名義の預金残高、取立依頼中などの受取手形残高、請求人に対する貸付金残高及び前記(ヘ)のJの借入金返済額の合計額(以下「預金等」という。)は、次表2のとおりであり、本件外注費等に相当する金額の増加が認められること。

表1
(単位 円)
年分平成2年分平成3年分平成4年分
氏名N1,180,0001,200,0001,420,000
 Z1,200,0001,200,0001,440,000
 J4,000,0004,800,0005,040,000

ロ 以上の事実から判断すると、次のとおりである。
(イ)F社等に対する外注費については、前記(1)のイの(ロ)及び(ハ)のとおり、F社等が領収書記載の所在地には実在したとは認められず、また、前記(1)のイの(ニ)のとおり作業証明書の作成者であるL及びYの申述からも、F社等が請求人の外注先として作業した事実は確認できない。
 一方、F社等への外注費の支払は、前記(1)のイの(ホ)のとおりN、Z及びAの個人名義の普通預金口座で取り立てられ、当該口座を請求人の代表取締役であるN及び請求人の監査役であるJが管理(N及びZ名義分についてはNが、A名義分についてはJがそれぞれ管理)していたものと認められる。
 以上のとおり、F社等に対する外注費については、請求人は実在しない外注先(F社等)に対し外注費を計上し、簿外の普通預金口座で取り立てを行い、架空の外注費を計上したものと認められる。
(ロ)H社に対する車両賃借料の外注費計上については、前記(1)のイの(ト)のとおり、領収書記載の所在地は、Jの住所地であり、同人は、前記(1)のイの(ヌ)のとおり、原処分庁の調査着手後所得税の確定申告書を所轄税務署長に提出しているものの、前記(1)のイの(リ)のとおり、本件車両の賃貸に関する賃貸借契約書の作成がされておらず、前記(1)のイの(ル)の事実からも、本件車両の車検代や修理代等の車両の管理費用等を請求人が負担しており、また、前記(1)のイの(チ)のとおり、請求人が賃借したとする本件車両については、請求人がT社から購入しているものと認められる。
 一方、H社に対する車両賃借料の外注費の支払は、前記(1)のイの(ヲ)のとおり、Z及びAの個人名義の普通預金口座で取り立てられ、当該口座を請求人の代表取締役であるN及び請求人の監査役であるJが管理(N及びZ名義分についてはNが、A名義分についてはJがそれぞれ管理)していたものと認められる。
 以上のとおり、H社に対する車両賃借料の外注費計上については、請求人が簿外で取得した本件車両を、H社からあたかも請求人が賃借したごとく返装し、簿外の普通預金口座に入金したものと認められる。
(ハ)原処分庁は、各事業年度のF社等及びH社に対する架空の本件外注費等を次表のとおり認定しているところ、上記(イ)及び(ロ)のとおり、当審判所の調査によっても原処分庁の認定額は相当と認められる。

(単位 円)
事業年度平成3年9月期平成4年9月期
支払先F社35,400,160
 G社32,559,315
 H社2,889,29010,068,675
 合計2,889,29078,028,150

ハ 本件更正処分のうち、前記ロの更正項目以外の更正項目については、請求人は争わず、当審判所の調査によっても相当と認められる。
ニ 以上の結果、請求人の主張には理由がなく、請求人の各事業年度の所得金額及び納付すべき税額は別表1のとおりとなり、この金額は各事業年度の更正処分による所得金額及び納付すべき税額と同額になるので、本件更正処分はいずれも適法である。

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(2)法人税の重加算税の賦課決定処分について

 前記(1)のロで認定したとおり、各事業年度のF社等及びH社に対する本件外注費等は架空のものであるにもかかわらず、これを損金計上した請求人の行為は、国税通則法第68条第1項に規定する「課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出したとき」に該当する。
 したがって、国税通則法第68条第1項の規定に基づき、平成4年9月期においてこれらの事実に係る部分の税額を計算の基礎としてなされた重加算税の賦課決定処分は適法である。

(3)本件法人特別税決定処分について

 前記(1)のとおり、本件法人税更正処分は適法であり、請求人の平成4年9月課税事業年度の法人特別税の課税標準額及び納付すべき税額は別表2のとおりとなり、この金額は本件法人特別税決定処分の課税標準額及び納付すべき税額と同額になるので、本件法人特別税決定処分は適法である。

(4)法人特別税の重加算税の賦課決定処分について

 以上のとおり、本件法人特別税決定処分は適法であり、また、原処分庁が重加算税の基礎とした法人特別税額に係る事実については、前記(1)のロで認定したとおり、国税通則法第68条第1項に規定する「課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出したとき」に該当する。
 したがって、国税通則法第68条第1項の規定に基づき、これらの事実に係る部分の税額を計算の基礎としてなされた重加算税の賦課決定処分は適法である。

(5)その他

 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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別表1

(単位 円)
事業年度平成3年9月期平成4年9月期
項目
確定申告に係る所得金額(1)△6,667,0810
加算額
本件外注費等(22,889,29078,028,150
役員賞与の損金不算入額(3)600,000
繰越欠損金の過大控除額(4)2,292,514
合計((2)+(3)+(4))(5)2,889,29080,920,664
減算額
法人税等の還付金損金算入額(6)403,800
所得金額((1)+(5)−(6))△3,777,79180,516,864
課税留保金額8,086,000
納付すべき税額30,177,200
繰越欠損金の当期控除額3,777,791
翌期へ繰り越すべき欠損金額3,777,7910

(注)「確定申告に係る所得金額」及び「所得金額」欄の△印は、欠損金額を示す。

別表2

(単位 円)
課税事業年度平成4年9月課税事業年度
区分
所得金額(1)80,516,864
(1)のうち年800万円相当額以下の金額(2)8,000,000
(1)のうち年800万円相当額を越える金額(3)
((1)−(2))
72,516,000
(2)×28%相当額(4)2,240,000
(3)×37.5%相当額(5)27,193,500
基準法人税額((4)+(5))(6)29,433,500
控除額(7)4,000,000
課税標準法人税額((6)−(7))(8)25,433,000
法人特別税額((8)×2.5%)(9)635,800

(注)「所得金額」欄及び「課税標準法人税額」欄の金額は、1000円未満の端数を切り捨てた後の金額である。