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(平8.3.29裁決、裁決事例集No.51 601頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

 審査請求人(以下「請求人」という。)は、平成3年5月26日に死亡したX(以下「被相続人」という。)の共同相続人のうちの1人であるが、この相続(以下「本件相続」という。)に係る相続税について、申告書に次表の「申告」欄のとおりの記載をして、法定申告期限までに申告した。
 その後、請求人は、平成3年12月4日に次表の「更正の請求」欄のとおりとすべき旨の更正の請求をした。
 原処分庁は、これに対し、平成4年2月4日付で次表の「更正(1)」欄のとおりの減額の更正処分をした。
 さらに、原処分庁は、平成6年7月5日付で次表の「更正(2)」欄のとおりの更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び「賦課決定」欄のとおりの賦課決定処分(以下、本件更正処分と併せて「原処分」という。)をした。
 請求人は、原処分を不服として、平成6年9月5日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、平成6年12月2日付でいずれも棄却の異議決定をした。

(単位 円)
区分項目金額
申告課税価格317,188,000
 納付すべき税額146,246,800
更正の請求課税価格317,188,000
 納付すべき税額141,506,200
更正(1)課税価格317,188,000
 納付すべき税額141,506,200
更正(2)課税価格361,316,000
 納付すべき税額168,711,100
賦課決定過少申告加算税2,720,000

 請求人は、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成6年12月28日に審査請求をした。

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2 主張

(1)請求人の主張

 原処分は、次の理由により違法であるから、その全部を取り消すべきである。
イ 更正処分について
(イ)手続について
 本件更正処分は、更正通知書に、更正の理由が附記されるべきところ、附記されている理由が「評価が過少になっていたため」と記入されているのみで、その内容が不備であることから、本件更正処分は違法である。
(ロ)相続財産及び贈与財産の評価並びに納税すべき税額について
A 請求人は、P市S町三丁目718番所在の宅地747.48平方メートル(以下「S町土地」という。)の持分74748分の72648(以下、この持分を「本件相続土地」という。)を本件相続により取得し、また、S町土地の持分74748分の2100を本件相続開始以前の平成2年9月に被相続人から請求人、請求人の配偶者及び長男が均等に贈与を受けていたことから、請求人が贈与を受けた持分74748分の700(以下、この持分を「本件受贈土地」という。)を相続税法(平成6年法律第23号による改正前のもの。以下と同じ。)第19条《相続開始前三年以内に贈与があった場合の相続税額》第1項の規定により相続財産に加算して相続税の課税価格を算定した。
 ところで、請求人は、被相続人からS町土地を賃借して、そこに2棟の建物を建築して貸家の用に供していたことから、S町土地については、昭和39年4月25日付直資56直審(資)17国税庁長官通達「相続税財産評価に関する基本通達」(以下「評価基本通達」という。)25《貸宅地の評価》に定める貸宅地としての評価をすべきところ、原処分庁は、S町土地は使用貸借されていたものにすぎないから、自用地としての評価をすべきであるとして、貸宅地としての評価を行わなかった。
 しかしながら、S町土地は、次のことから貸宅地としての評価をすべきであり、原処分庁の評価方法には誤りがある。
 なお、貸宅地の評価に当たっては、権利金の授受もないことから当初の申告額のとおり、評価基本通達26《貸家建付地の評価》に定める程度に評価すべきである。
(A)S町土地は、請求人が被相続人から無償で借りていたものではなく、地代を払って借りていたものであること。
(B)S町土地は、その上に請求人が昭和52年ころに貸家2棟を新築し、賃貸している敷地であること。
(C)請求人が、毎年末に支払っているS町土地の地代は、S町土地に係る固定資産税及び都市計画税(以下、固定資産税と都市計画税を併せて「固定資産税等」という。)の1.7倍以上であり、被相続人の扶養費として支払ったものではない。
B 請求人の相続税の納付すべき税額は、更正の請求に伴う更正処分のとおり141,506,200円であるにもかかわらず、上記AのとおりS町土地を過大に評価して行った本件更正処分は違法である。
ロ 賦課決定処分について
 上記イのとおり、本件更正処分は違法であるから、その全部の取消しに伴い、過少申告加算税の賦課決定処分もその全部を取り消すべきである。

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(2)原処分庁の主張

 原処分は、次の理由によりいずれも適法である。
イ 更正処分について
(イ)手続について
 更正通知書にその処分の理由を附記することは法律上の要件とされていないので、請求人の主張には理由がない。
(ロ)S町土地の評価及び納付すべき税額について
A S町土地について、調査したところ次のことが認められた。
(A)請求人は、昭和52年8月ころ、被相続人名義のS町土地に貸家2棟を新築しているが、被相続人との間においては、S町土地の賃貸借に関する契約書はなく、また、権利金の授受の事実も認められないこと。
(B)請求人は、S町土地の貸家を遅くとも昭和60年以降は貸家の用に供しているが、請求人の昭和62年分ないし平成3年分の所得税の確定申告書に添付されている不動産所得のいずれの青色申告決算書にも、支払地代が記載されていないこと。
(C)請求人は、昭和53年以降、S町土地及びP市R町一丁目909番に所在する雑種地311平方メートル(以下「R町土地」という。)に係る固定資産税等に相当する金額を、被相続人と同居していた被相続人の長男Y(以下「Y」という。)に手渡しすることで被相続人に支払っていた旨申し立てたこと。
(D)請求人は、上記(C)の裏付けとなる資料として(a)金額420,000と記載された平成元年12月17日付の被相続人名義の領収証及び(b)金額420,000円と記載された平成2年12月7日付のY名義の領収証を提示したが、当該領収証以外の領収証については紛失した旨申し立てたこと。
(E)請求人は、S町土地及びR町土地の固定資産税等を請求人が負担するに至った事情について次のとおり申し立てたこと。
a 昭和52年当時、自分は転職が多くて安定した収入がなかったが、Yは被相続人の土地に貸家を造って生活の安定を図っていたことから、被相続人から生活の安定を図るために貸店舗でも造ったらどうかと自分にも提案があった。
b そこで、自分が相続する予定になっていたS町土地及びR町土地の固定資産税等を建築する貸家からの家賃収入で支払うことを条件に、S町土地を借りることになった。
(F)被相続人は、遅くとも昭和62年以降はYの扶養家族となっていたこと。
(G)被相続人名義の土地に係る固定資産税等の納付額は、昭和61年度は956,430円、平成2年度は1,207,400円であること。
(H)Yは、被相続人は年間30万円程度の年金収入しかなかったので、被相続人名義の土地に係る固定資産税等について、請求人が被相続人から相続する予定の土地に係るものを、それ以外のものは自分が負担していた旨申し立てたこと。
 以上のとおり、(a)請求人がS町土地及びR町土地の固定資産税等を支払うに至った事情、(b)実際に固定資産税等を支払っていた相手方及び(c)Yも被相続人の固定資産税等を負担していたこと等を総合的に勘案すると、年金収入しかない被相続人が将来の相続を見越して、請求人には同人に相続させる土地に係る固定資産税等を、また、Yにはそれ以外の不動産に係る固定資産税等をそれぞれ負担させていたものと認められ、これらの関係は請求人がS町土地の地代を支払っていたというよりも、扶養義務者である子供が扶養義務を履行していたものと考えるのが相当である。
 したがって、請求人が負担したS町土地及びR町土地の固定資産税等は扶養義務の履行の範囲内であって、S町土地を請求人が使用する権原は使用貸借に基づくものと認められる。
B 請求人が使用貸借により借り受けた土地の使用権等については、次のとおりである。
(A)使用貸借により建物所有を目的として土地を借り受けた場合の建物所有者の敷地利用権は、借地法上の保護を受ける借地権のような強い権利に比較して、いわば権利性の薄弱なものであり、専ら土地の貸借当事者間の信頼関係のみを基盤としており、土地所有者から返還を求められた場合には無償で返還することとなるのが通常である。
 そこで、使用貸借による土地の使用権の経済的価値は極めて低いと認められることから、相続税及び贈与税の課税上、当該使用権の価値はないものとして取り扱うこととされている。
(B)他方、借家人の敷地利用権は、建物所有者の敷地利用権から独立した別個の権利ではなく、建物所有者の敷地利用権に従属してその範囲内での権能にすぎないと解されている。
 したがって、借地人が使用貸借により借り受けた土地に建物を所有し、当該建物を第三者に貸し付けている場合の当該借家人の有する敷地利用権の価額についても、建物所有者の敷地利用権の価値を上回ることはなく、同様にその価額は無いものと取り扱うことになり、その結果、使用貸借により貸付けがされている土地の価額は、建物所有を目的として借り受けている者と、当該建物を借りている第三者との関係いかんにかかわらず、その価額は自用地として評価するのが相当である。
そうすると、S町土地は貸宅地として貸家建付地の評価程度としての評価をすべきであるとする請求人の主張には理由がない。
C 以上のことから、本件相続土地及び本件受贈土地の価額は次のとおりとなる。
(A)本件相続土地の価額
 上記Bの(B)のとおり、本件相続土地の価額については自用地としての評価をするのが相当であり、その価額を算定すると次のとおり265,019,904円となる。
(算式)
380,000円(正面路線価)×0.96(奥行価格逓減率)=364,800円(1平方メートル当たりの価格)
364,800円(1平方メートル当たりの価格)×747.48平方メートル(地積)×(72648÷74748)(持分)=265,019,904円(本件相続土地の価格)
(B)本件受贈土地の価額
 上記Bの(B)のとおり、本件受贈土地の価額については自用地としての評価をするのが相当であり、その価額を算定すると次のとおり1,814,400円となる。
(算式)
270,000円(正面路線価)×0.96(奥行価格逓減率)=259,200円(1平方メートル当たりの価格)
259,200円(1平方メートル当たりの価格)×747.48平方メートル(地積)×(700÷74748)(持分)=1,814,400円(本件受贈土地の価格)
D 納付すべき税額
 納付すべき税額は、上記Cの(A)及び(B)のとおり、本件相続土地の価額265,019,904円及び本件受贈土地の価額1,814,400円、本件相続による被相続人の共同相続人が取得した争いのない財産の価額748,268,164円、債務及び葬式費用の額2,717,319円及び純資産価額に加算される贈与財産価額16,600,990円に基づき課税価格の合計額を算定すると1,028,985,000円(各人別の課税価額(千円未満切捨て)の合計額)と認められ、相続税の総額は488,876,000円となる。
 そうすると、請求人が相続等により取得した財産の課税価格361,316,000円を基に算定した請求人の納付すべき税額は168,711,100円となる。
 したがって、請求人の相続税の課税価格を361,316,000円、納付すべき税額を168,711,100円でした本件更正処分は適法である。
ロ 賦課決定処分について
 上記イのとおり、本件更正処分は適法であり、かつ、本件更正処分により増加した納付すべき税額の基礎となった事実には国税通則法(以下「通則法」という。)第65条《過少申告加算税》第4項に規定する過少申告加算税を賦課しない場合の正当な理由があるとは認められないから、過少申告加算税の賦課決定処分も適法である。

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3 判断

(1)更正処分について

 手続及びS町土地に係る評価について争いがあるので、これらについて調査・審理したところ、次のとおりである。
イ 手続について
 請求人は、更正通知書の理由の記載には不備があり、本件更正処分は違法である旨主張する。
 ところで、更正通知書の記載事項についての一般規定である通則法第28条《更正又は決定の手続》第2項は、更正の理由を更正通知書の記載事項としていない。他方、所得税法は同法第155条《青色申告書に係る更正》第2項において、法人税法は同法第130条《青色申告書に係る更正》第2項において、それぞれ青色申告書に係る更正処分について、「その更正に係る国税通則法第28条第2項(更正通知書の記載事項)に規定する更正通知書にその更正の理由を附記しなければならない。」と規定しているところ、これらの規定は青色申告書に係る更正処分について、通則法第28条第2項の特例として特に更正の理由を附記しなければならない旨規定しているものと解されている。
 しかし、相続税については、更正通知書に更正の理由を附記しなければならない旨が、通則法及び相続税法のいずれにも規定されていないので、更正通知書に附記された理由の不備をもって本件更正処分が違法となるものではない。
 なお、相続税の更正通知書の定型用紙に「この通知に係る処分の理由」欄が印刷されているのは、法令上の要請に基づくものではなく、単に便宜上設けられているにすぎない。
 よって、この点に関する請求人の主張は採用することができない。
ロ S町土地の評価について
 請求人は、S町土地を借り受けるに当たり、権利金の支払はないが、その地代としてS町土地の固定資産税等の1.7倍以上に当たる金員を支払っていることから、S町土地の貸借関係は賃貸借であり、その評価計算に当たっては貸宅地として貸家建付地の評価程度で評価をすべきである旨主張するので検討する。
(イ)当審判所が、請求人の提出資料及び原処分関係資料を調査したところ、次の事実が認められる。
A 建物登記簿謄本によると、S町土地上に請求人を所有者とする、昭和52年8月11日新築の、(a)木造亜鉛メッキ鋼板葺二階建居宅兼店舗(総床面積264.98平方メートル)及び(b)木造亜鉛メッキ鋼板葺二階建居宅兼店舗(総床面積215.3平方メートル)の2棟の建物があること。
B 昭和52年5月2日にP市建築主事から通知された「確認通知書(建築物)」に添付された借地証明(建築確認申請添付用)の写しには、昭和52年4月4日よりS町土地を店舗等の敷地として被相続人から請求人が借り受けている旨記載されていること。
C 請求人は、被相続人との間で、S町土地の貸借に関し、契約書を作成したことはなく、また、権利金を支払ったこともないこと。
D 請求人がS町土地及びR町土地の固定資産税等の支払を記録したものであるとして提示した手帳(1978保健手帳)には、別表1のとおり昭和53年以降のS町土地及びR町土地の固定資産税等の額が記載されていること。
E 請求人が不動産所得に係る帳簿であるとして提示した現金出納簿には、別表2のとおり、毎年末にS町土地及びR町土地の固定資産税等に相当する額の支払の記帳がされていること。
F 請求人が提示した領収証は、(a)昭和62年12月29日付で、金額「372,183円」、ただし書「固資税、都計税、S町3ー718、R町1ー909分」、受取人「X」と記載されたもの、(b)昭和63年12月30日付で、金額「398,700円」、ただし書「固資分」、受取人「Y」と記載されたもの、(c)平成元年12月17日付で、金額「420,000円」、ただし書「X分固定資産税及び都市計画税代納分」、受取人「X」と記載されたもの及び(d)平成2年12月7日付で、金額「420,000円」、ただし書「固定資産税分」、受取人「Y」と記載されたものであること。
G 本件相続に係る遺産分割協議書には、請求人が取得する財産として本件相続土地及びR町土地が記載されていること。
H Yは、異議審理庁に対して、次のとおり申述している。
(A)被相続人は、昭和36年ころに親族会議の場で、請求人に1,000坪程の土地を相続させることにしたが、その後、その半分以上を売却してしまったので、S町土地約220坪とR町土地約100坪を残して、これを請求人に相続させる予定としていたこと。
(B)自分が被相続人名義の固定資産税等を給与から支払っていたが、支払いきれなくなり、請求人がS町土地に貸店舗を作ったころに、請求人に対して相続でもらう予定の土地の分について負担をしてほしいと、その支払を求めたこと。
(C)これらの固定資産税等は、毎年12月に請求人が自宅へ届けにきたもので、平成2年12月7日付420,000円の領収証を交付した際は、自分が直接受け取ったので、領収証には自分の名前を記載したこと。
(ロ)請求人は、当審判所に対して、次のとおり答述している。
A S町土地とR町土地は、自分がこれらを相続することが予定されていたことから、S町土地を借り受けるに当たっては、被相続人との間で賃貸借契約書なるものを作成してはいないこと。
B S町土地を借り受けるに当たり、被相続人との間で特に地代を取り決めることはしなかったが、Yから自分に対して、S町土地とR町土地は将来自分が相続する予定の土地であるから、その土地の固定資産税等は貸店舗等の家賃収入から支払ってほしい旨求められたので、昭和53年ごろからこれらの土地の固定資産税等を支払ってきたこと。
C S町土地とR町土地の固定資産税等は、毎年、区役所で調べ、その金額を年末にYに支払っていたこと。
D S町土地とR町土地の固定資産税等については、所得税の不動産所得の青色申告決算書に公租公課として計上したが、支払地代としては計上していなかったこと。
(ハ)以上の事実及び答述に基づいて、S町土地の貸借関係を判断すると次のとおりである。
A 一般に、土地の貸借関係には賃貸借と使用貸借があり、賃貸借は、一方が相手に物を使用収益させることを約し、相手方がこれに対して賃料を支払うことを約することによって成立するもの(民法第601条)であり、使用貸借は、一方が無償で使用収益した後に返還することを約して相手から物を受け取ることで成立するもの(民法第593条)であるから、土地の貸借関係が賃貸借に当たるのか、使用貸借に当たるのかは、対価を伴うか否かによると解されており、例えば借主が借用物件たる土地の公租公課を負担する程度のものは使用貸借であると解されている。
B そこで、これを本件について検討すると次のとおりである。
(A)S町土地の貸借に当たって、上記(イ)のA及びBによれば、請求人が被相続人からS町土地を借り受け、貸家2棟を建築したことが認められるところ、請求人は、S町土地を借り受けるに当たり、S町土地については相続が予定されていたことから賃貸借契約及び地代の取決めもされなかった。その後、昭和53年以降に上記(イ)のDないしFの事実及び(ロ)のCの請求人の答述によれば、請求人自らが市役所に出向きS町土地及びR町土地の固定資産税等の額を調べ、そのS町土地及びR町土地の固定資産税等の額に相当する金員を被相続人又はYに支払っていたことが認められる。
(B)次に、請求人が上記(A)の金員を負担するに至った経緯について、上記(イ)のGの事項及びHのYの申述並びに(ロ)の請求人の答述によれば、従前、Yが被相続人名義の固定資産税等のすべてを負担していたところ、請求人にS町土地上の貸家の家賃収入が入ることも契機の一つとして、上記固定資産税等の負担に耐えきれなくなったYから、請求人が将来S町土地及びR町土地を相続する予定地ならこれらの土地に係る固定資産税等を負担してほしい旨要求されたことを受け、これを請求人が承諾したものであることが認められる。
(C)また、上記(イ)のFのとおり、請求人が提示した領収証のただし書には、「固資税、都計税、S町3ー718、R町1ー909分」あるいは「X分固定資産税及び都市計画税代納分」と記載されているのみで、S町土地地代とは記載されていないこと、上記(ロ)のDの請求人の答述によれば、請求人は当該金額を所得税の不動産所得の青色申告決算書に支払地代として計上することなく、自己が他に有する不動産等に係る固定資産税等と同様に公租公課として計上していること、上記(イ)のEのとおり、自らの現金出納簿にも支払地代として記帳していないこと、上記(イ)のC及び(ロ)のAのとおり、S町土地を借り受けるに当たっては被相続人との間で契約書などを作成していないこと並びに上記(ロ)のBのとおり、地代の明確な定めもないことが認められる。
(D)請求人は、S町土地の地代はS町土地の固定資産税等の1.7倍以上の額であると主張するが、これは請求人が相続する予定であったS町土地及びR町土地の固定資産税等の合計額が、S町土地のみの固定資産税等の1.7倍程度になるだけであって、上記(A)ないし(C)のことからすると、請求人が相続する予定であったS町土地及びR町土地の固定資産税等について、被相続人が払えなかったものを請求人が負担したにすぎないと認められ、請求人が主張するようなS町土地の使用対価としての性格のものとは認められない。
 よって、S町土地の貸借関係は賃貸借とはいえず、使用貸借であると認めるのが相当であるので、S町土地の貸借関係は賃貸借であり、評価計算に当たっては貸宅地として貸家建付地の評価程度で評価をすべきであるとする請求人の主張は採用することができない。
(ニ)ところで、使用貸借により建物の所有を目的として土地を借り受けた場合の建物所有者の敷地利用権は、借地法上の保護を受ける借地権のような強い権利に比較して、いわば権利性の薄弱なものであり、土地所有者から返還を求められた場合には無償で返還することになり、専ら当事者の信頼関係のみを基盤とするのが通例であり、経済的価値を有しないものと解され、また、借家人の敷地利用権は、建物所有者の敷地利用権から独立した別個の権利ではなく、建物所有者の敷地利用権に従属してその範囲内での権能にすぎないと一般に解されている。
 したがって、使用貸借により貸し付けた土地の価額については、自用地としての価額から控除すべき建物所有者の敷地利用権の価額はないものとして算定するのが相当と認められる。
(ホ)また、相続税法第22条《評価の原則》は、相続等により取得した財産の価額は、特定の財産を除きその財産の取得の時における時価によるものと規定しており、この時価とは、一般に不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいうものと解されている。
 そして、相続によって取得した財産は、取得の時において取引の対象となっていることは極めてまれであり、財産の時価を的確に把握することが必ずしも容易でなく、他方、相続税の課税の公平の観点から統一的な方法によって財産の価額を算定する必要があることから、評価基本通達とその評価基本通達に基づき○○国税局長が定めた相続税財産評価基準(以下「評価基準」という。)において、特定の財産を除き、その財産の価額の具体的な評価方法が定められている。
 そこで、一般的には、相続により取得した財産の評価は、評価基本通達及び評価基準に定める評価方法によって行われていることが認められ、この評価方法により評価した財産の価額は、特段の事情がない限り、相続税の課税における財産の時価と認めるのが相当と解されている。
(ヘ)そして、個人間の使用貸借による土地の貸借があった場合の評価については、昭和48年11月1日付直資2―189国税庁長官通達「使用貸借に係る土地についての相続税及び贈与税の取扱いについて」の定めるところによれば、土地の使用貸借に係る使用権の価額を零として取り扱われていること及び使用貸借に係る土地を相続等により取得した場合における相続税等の課税価格に算入すべき価額は、当該土地上の建物等の自用又は貸付けの区分にかかわらず、すべて当該土地が自用のものであるとした場合の価額として評価することとされていることがそれぞれ認められる。
 そうすると、上記(ハ)のとおり、S町土地の貸借関係は使用貸借であるから、S町土地上の2棟の貸家の存在にかかわらず、S町土地のすべてが自用地であるものとした場合の価額で評価すべきことになる。
(ト)以上により、相続開始時におけるS町土地の価額を算定すると、本件相続土地の価額は265,019,904円及び本件受贈土地の価額は1,814,400円となり、上記(ハ)のBのとおり、当該価額から控除すべき借地権の価額はないので、本件相続土地の価額を265,019,904円及び純資産価額に加算される本件受贈土地の価額を1,814,400円とした本件更正処分は相当と認められる。
ハ 納付すべき税額について
 納付すべき税額は、本件相続土地の価額265,019,904円及び本件受贈土地の価額1,814,400円、本件相続により被相続人の共同相続人が取得した争いのない財産の価額748,268,164円、債務及び葬式費用の額2,717,319円及び純資産価額に加算される贈与財産価額16,600,990円に基づき課税価格の合計額を算定すると1,028,985,000円(各人別の課税価額(千円未満切捨て)の合計額)と認められ、相続税の総額は488,876,000円となる。
 そうすると、請求人が相続等により取得した財産の課税価格361,316,000円を基に算定した請求人の納付すべき税額は、原処分庁主張額のとおり168,711,100円となる。
したがって、この金額と同額でされた本件更正処分は適法である。

(2)賦課決定処分について

 上記(1)のとおり、本件更正処分は適法であり、かつ、請求人が過少申告したことについて、通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、過少申告加算税の賦課決定処分も適法である。
(3)原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によってもこれを不相当とする理由は認められない。

別表2 現金出納簿(昭和59年1月から平成3年12月31日までの間)


(単位 円)
 年月日摘要支出金額
昭和59年12月15日税金 固定資産(X分)265,000
昭和60年12月21日税金 固定資産318,500
昭和61年12月19日税金 X350,380
昭和62年12月26日税金 X固定資産372,200
昭和63年12月30日店、家外土地固定資産398,700
平成元年12月18日税金 X固定資産他(代納分)420,000
平成2年12月7日税金 固定資産税(Y)420,000
平成3年12月30日税金 固定資産税464,500

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