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(平8.6.6裁決、裁決事例集No.51 689頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

 株式会社Tは、各種商品の通信販売業を営む同族会社であるが、平成2年9月21日から平成3年9月20日までの課税期間(以下「平成3年9月期課税期間」という。)及び平成3年9月21日から平成4年9月20日までの課税期間(以下、「平成4年9月期課税期間」といい、平成3年9月期課税期間と併せて「各課税期間」という。)の消費税の確定申告書に次表のとおり記載して、いずれも法定申告期限までに申告した。

(単位 円)
課税期間平成3年9月期平成4年9月期
項目課税期間課税期間
課税標準額(1)1,486,559,0001,856,783,000
消費税額(2)44,596,77055,703,490
控除税額(3)40,255,26047,852,576
納付すべき税額
((2)‐(3))(4)4,341,5007,850,900

 a税務署長は、これに対し、平成5年12月27日付で、次表のとおり各課税期間の更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」という。)をした。

(単位 円)
課税期間平成3年9月期平成4年9月期
区分 項目課税期間課税期間
更正処分
課税標準額(1)1,486,559,0001,856,783,000
消費税額(2)44,596,77055,703,490
控除税額(3)38,183,82345,234,298
納付すべき税額
((2)‐(3))(4)6,412,90010,469,100
賦課決定処分
過少申告加算税の額207,000261,000

 株式会社Tは、これらの処分を不服として、平成6年1月21日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年4月18日付でいずれも棄却の異議決定をした。
 株式会社Tは、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成6年5月9日に審査請求をした。
 なお、株式会社Tは、平成6年9月21日に商号を株式会社X(以下「請求人」という。)に変更した。また、請求人は、平成6年2月1日に資本金を101,250,000円に増資したが、これに伴い、原処分庁は、a税務署長からb国税局長となっている。

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2 主張

(1)請求人の主張

 原処分は、次の理由により違法であるから、その全部の取消しを求める。
イ 本件更正処分について
 原処分庁は、請求人が次表のとおり株式会社y他13社(以下「信販各社」という。)に支払った手数料(以下「本件手数料」という。)の金額(平成3年9月期課税期間71,119,688円及び平成4年9月期課税期間89,894,172円)は信販各社に対する債権譲渡に係る差益金額の支払であり、非課税取引であるので、消費税の課税仕入れに係る支払対価の額に該当せず、この金額について消費税法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》第1項の規定を適用して算出された控除額(以下「本件仕入税額控除」という。)は誤りであるとして本件更正処分を行った。

(単位 円)
信販会社名平成3年9月期平成4年9月期
 課税期間課税期間
株式会社f12,156,72229,315,045
株式会社z1,928,8015,505,695
株式会社h3,461,7793,112,219
株式会社j10,755,84512,439,169
m株式会社505,259
n株式会社36,779
q株式会社151,1421,866
r株式会社6,089,9146,477,106
t株式会社333,858
u株式会社786,8282,583,120
株式会社w銀行1,295,125495,240
株式会社y29,220,66626,369,856
株式会社x4,111,4082,784,618
株式会社d656,199439,601
合計71,119,68889,894,172

 しかしながら、本件手数料の金額は、次の理由により、消費税の課税仕入れに係る支払対価の額に該当するから消費税法第30条第1項の規定を適用すべきである。
(イ)信販各社は、カタログ、雑誌等に請求人の通信販売用の商品の広告を掲載し、信販各社の会員(以下「本件会員」という。)からの商品の受注を請求人へ取り次ぐほか、本件会員からの商品に対する問い合わせやクレーム等にも対応(以下「本件業務」という。)している。また、それ以外にも信販各社が広告費を負担し、商品を販売している事実がある。
 請求人の通信販売用の商品は、確かに請求人より本件会員に配送をしてはいるが、商品の販売に伴う債権は本来信販各社のものであり、請求人は商品の卸売業者として問屋機能を果たしているのに過ぎないから、請求人と信販各社との間では債権譲渡は行われていない。
(ロ)本件手数料は、請求人と信販各社との契約又は取決め(以下「本件契約等」という。)にしたがって計算されているが、その大部分が消費税法適用前の日付で契約されており、契約当時、本件手数料について請求人及び信販各社に消費税の認識はなかった。
(ハ)原処分庁は、本件手数料の計算は、本件契約等に基づき請求人が本件会員に通信販売をした商品に係る売掛債権(以下「本件売掛債権」という。)に一定の割合を乗じて計算されていると認定しているが、その割合は1か月に付き10パーセント、15パーセント若しくは20パーセントというものもあり、債権の回収代行費としては常識を超えた数字であり、本件手数料は明らかに本件業務の対価である。
 ところで、請求人が本件契約等によらず、一般顧客に商品を販売し、信販会社に代金回収を依頼した場合の手数料は4パーセントから5パーセントであり、仮に、この4パーセントから5パーセントの手数料部分は債権譲渡に係る差益相当額で非課税であるとしても、この割合を超える部分については、本件業務の対価に係る部分であり、課税取引として消費税法第2条《定義》第1項第12号に規定する課税仕入れに該当し、課税仕入れに係る支払対価の額に該当するものである。
(ニ)原処分庁は、信販各社が本件契約等に基づき受領する本件手数料を非課税として経理していることから、請求人が信販各社に支払う本件手数料も非課税取引であり、消費税の課税仕入れに該当せず、本件仕入税額控除は誤りであるとして本件更正処分を行っているが、請求人の取引先の中には現実にe株式会社(以下「e社」という。)のように請求人からの手数料収入を課税取引として経理している信販会社がある。
 したがって、信販各社の経理処理の内容によって課税の要否を判断すべきではない。
(ホ)以上のことから、本件手数料に係る収入は、信販各社においても課税取引とすべきであり、そうすると本件手数料の支払は、消費税の課税仕入れに係る支払対価の額に該当するから、この金額を基に本件仕入税額控除をすべきである。
ロ 本件賦課決定処分について
 以上のとおり、本件更正処分は違法であり、その全部を取り消すべきであるから、これに伴い本件賦課決定処分もその全部を取り消すべきである。

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(2)原処分庁の主張

 原処分は、次の理由により適法であるから、審査請求を棄却するとの裁決を求める。
イ 本件更正処分について
(イ)原処分庁の調査によると、次の事実が認められる。
A 本件手数料は、信販各社に本件売掛債権を譲渡したことによる金額と信販各社が本件売掛債権を回収したことに伴い当該各社から請求人へ支払われた金額との差額であること。
B 本件手数料は、本件契約等にしたがって本件売掛債権の額に一定の割合を乗じて算出されていること。
C 信販各社は、本件契約等に基づき受領する本件手数料収入を非課税として経理していること。
(ロ)消費税法は、同法第6条《非課税》第1項において、国内において行われる資産の譲渡等のうち別表第1に掲げるものには消費税を課さない旨規定し、同表第1第3号では、利子を対価とする貸付金その他の政令で定める資産の貸付等については消費税を課さないこととし、これを受けて同法施行令第10条《利子を対価とする貸付金等》第3項第8号で、同表第1第3号に規定する政令で定める資産の貸付等には、金銭債権の譲受けも該当する旨規定していることから、金銭債権の譲受けは非課税取引に該当することになる。
(ハ)本件手数料は、上記(イ)及び(ロ)のとおり、これを受け取る信販各社からみると、同各社が請求人から取得した本件売掛債権の金額から同各社が当該債権を回収したことに伴い請求人に支払った金額を控除した差益額に相当する金額であり、当該差額は金銭債権の買取りに係る収益であると認められることから、金銭債権の譲受けの対価であるので、本件手数料は非課税取引に該当することになる。
 したがって、本件手数料を支払う請求人においても本件手数料の金額は、消費税法に定める課税仕入れに係る支払対価の額に該当せず、仕入税額控除の対象とすることは認められない。
(ニ)請求人は、本件手数料は本件業務の対価である旨主張する。
 しかしながら、上記(イ)で述べたとおり、本件手数料の金額は本件売掛債権の額に一定割合を乗じて算出されるものであり、本件売掛債権の売買に伴って発生し決済されることによって生じるものであることは明らかであるから、本件手数料が本件業務の対価として支払うものであるとする請求人の主張には理由がない。
(ホ)請求人の各課税期間の課税標準額及び納付すべ税額は、次表のとおりであり、当該金額はいずれも本件更正処分と同額となるので、本件更正処分は適法である。
A 課税標準額
 各課税期間の課税標準額は、請求人の申告額と同額である。
B 課税標準額に対する消費税額
 各課税期間の課税標準額に対する消費税額は、請求人の申告額と同額である。
C 消費税額からの控除税額
 平成3年9月期課税期間における課税仕入れに係る支払対価の金額は、請求人の申告額1,382,097,639円から上記(ロ)で述べた非課税取引である本件手数料の金額71,119,688円を控除した後の金額1,310,977,951円となり、これに103分の3を乗じた38,183,823円が消費税額からの控除税額となる。
 また、平成4年9月期課税期間における課税仕入れに係る支払対価の金額は、請求人の申告額1,642,938,430円から上記(ロ)で述べた非課税取引である本件手数料の金額89,894,172円を控除した後の金額1,553,044,258円となり、これに103分の3を乗じた45,234,298円が消費税からの控除税額となる。
D 納付すべき税額
 各課税期間の差引納付すべき税額は、上記Bの消費税額から上記Cの消費税額からの控除税額を差引いた金額(100円未満切り捨て)であることから、平成3年9月期課税期間6,412,900円、平成4年9月期課税期間10,469,100円となる。

ロ 本件賦課税決定処分について
 以上のとおり、本件更正処分は適法であり、かつ、請求人には、国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項の規定に基づき本件賦課決定処分をしたものである。

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3 判断

本件審査請求の争点は、本件手数料について消費税に係る仕入税額控除ができるか否かにあるので、以下審理する。

(1)本件更正処分について

イ 請求人が当審判所に提出した証拠書類及び原処分関係資料を調査したところによれば、次の事実が認められる。
(イ)本件手数料の支払等に関する請求人と信販各社との間の契約等の内容は、次のとおりであること。
A 株式会社f
(A)株式会社f(以下「f社」という。)は、請求人からの依頼を受け、当該請求人の商品を同社の発行する雑誌等に広告掲載し、あるいは商品のカタログ等を会員に送付するなどして、会員に買受申込みの勧誘を行い、当該商品につき買受申込みがあった場合には、同社の会員からの買受申込みを請求人に取り次ぎ、請求人が会員に対して商品を販売することとする。
(B)請求人は、f社と上記の契約に基づく通信販売により生じた本件会員に対する売買代金債権をf社に譲渡し、同社はこれを譲り受ける。この債権譲渡により請求人がf社に請求できる金額は、請求人の会員に対する当該通信販売代金から所定の割引料相当額を差し引いた金額とする。
 なお、請求人は、本件会員に対し、直接、販売代金を請求したり、又は受領してはならないこととされている。
B 株式会社z
(A)請求人は、株式会社z(以下「z社」という。)との間で締結した契約に基づきz社の会員に対する信用販売により取得した売上債権をz社に債権譲渡し、同社はこれを譲り受けるものとする。
(B)請求人がz社に支払う債権買取にかかわる割引料は、当該売上債権総額に所定の料率を乗じた金額とするものとする。
C 株式会社h
カタログ販売により請求人が取得した売上債権は、商品発送日より一月以内に株式会社hに譲渡することとし、当該債権譲渡の対価は、同社が所定の手数料を差引きした上、請求人に支払うものとする。
D 株式会社j
(A)通信販売により請求人が取得した売上債権は、商品発送日より一月以内に株式会社j(以下「j社」という。)に譲渡し、同社はこれを譲り受けるものとする。請求人は、本件会員に対し、直接商品代金を請求受領してはならない。
(B)請求人は、j社に対し信用販売額に所定の料率による手数料を支払う。
E m株式会社
(A)m株式会社(以下「m社」という。)は、請求人からの委託に基づき、請求人がm社の会員に販売することを希望する請求人の商品の商品広告を掲出した同社の宣伝媒体又は請求人の商品のカタログ類を同社の会員に送付するものとし、同社は会員からの当該商品の購入の申込みを受付け、これを請求人に取り次ぐものとする。
(B)請求人は、m社の加盟店が同社の会員に対して行う信用取引による物品の販売を行った場合には、当該信用取引に関して作成した売上票をとりまとめてm社に送付し、当該信用取引により会員に対して取得したカード利用代金債権を同社に譲渡するものとし、同社は当該利用代金相当額から所定の手数料を差し引いた金額を請求人に支払うものとする。
F n株式会社
(A)請求人の費用負担において、請求人の商品カタログのn株式会社(以下「n社」という。)の会員あて送付を同社に委託するものとし、当該商品の購入を希望する会員は、n社所定の申込み方法により同社あて商品購入の申込みを行うこととし、当該申込書を請求人あてに送付する。請求人は当該申込み記載の商品を会員に発送するものとする。
(B)請求人は、n社の会員に対し商品の発送を完了した場合、遅滞なくn社所定の売上票をとりまとめて同社あて連絡するものとし、その売上票がn社に到達したときに当該商品代金債権が請求人より同社に譲渡されたものとし、請求人は、当該商品の販売に対し所定の手数料を支払うものとする。
G q株式会社
(A)請求人の商品広告を掲出したq株式会社(以下「q社」という。)の宣伝媒体又は請求人の商品のカタログをq社が同社の会員に送達する。当該会員は所定の注文票等によりq社を経由して請求人の商品の購入申し込みを行うこととし、請求人が会員に商品発送を行う。
(B)通信販売により請求人が取得した売上債権は商品発送日より1月以内にq社に譲渡することとし、同社はこれを譲り受けるものとし、同社は、当該債権の対価として所定の手数料を差引した上請求人に支払うものとする。
H r株式会社
(A)請求人は、自己の負担において請求人の保有する顧客名簿を対象にした商品のカタログ等による商品告知を行い、当該商品の購入を希望するr株式会社(以下「r社」という。)の会員には、請求人所定の商品注文票等により請求人あて商品購入の申込みをさせることとし、当該会員に対して当該商品を発送するものとする。
(B)請求人は、上記(A)の通信販売の方法によりr社の会員に対し、商品の発送を完了した場合には、遅滞なくr社あて連絡するものとし、その到達したときに当該商品代金債権が請求人より同社に譲渡されたものとし、これにより譲受けた債権の対価の支払方法としては、同社はその譲受債権総額から所定の手数料を差し引いた上支払うこととする。
I t株式会社
(A)請求人は、自己の負担において機関紙“○○”に請求人の商品広告を掲出し、又は請求人のカタログ等のt株式会社(以下「t社」という。)の会員あて送付をt社に委託するものとし、当該商品の購入を希望する会員は、請求人所定の通信販売注文書により請求人あて商品購入の申込みを行うこととし、同社は会員より当該注文書の送付を受けた場合には当該会員の信用度を確認の上、請求人に所要の連絡を行う。請求人は当該会員に対して当該商品を発送するものとする。
(B)請求人は、上記(A)の通信販売の方法によりt社の会員に対し、商品の発送を完了した場合には、遅滞なくt社あて連絡するものとし、その到達したときに当該商品代金債権が請求人より同社に譲渡されたものとし、これにより譲受けた債権譲渡の対価として、同社はその債権譲渡総額から所定の手数料を差し引いた上支払うものとする。
J u株式会社
(A)u株式会社(以下「u社」という。)は、同社の顧客が請求人に支払うべき商品代金等所要資金を、顧客に代わって請求人に立替支払するか、あるいは顧客が商品残代金等所要資金相当額をu社又は同社の提携する金融機関より借入れ、同社が顧客に対する融資金又は代理受領した融資金をもって請求人に支払うものとする。
(B)u社は請求人に対する代金支払の際に、請求人の請求額より所定の手数料を徴求するものとする。
(C)u社と顧客との立替払契約が成立した後は、顧客よりの弁済金を請求人は受領できないものとする(頭金を除く。)。
K 株式会社w銀行
(A)請求人は、本件会員に対する通信販売に係る売上票を作成し、商品発送日より1月以内に当該売上票を株式会社w銀行(以下「w銀行」という。)に提出し、その支払を請求するものとする。
(B)w銀行は、通信販売代金から所定の手数料を差引きした金額を、本件会員に代わって請求人に支払うものとし、請求人は当該会員に対して直接商品代金を請求してはならない。
L 株式会社y
(A)株式会社y(以下「y社」という。)の宣伝媒体に請求人の商品広告を掲出し、又は請求人の商品のカタログ類をy社が同社の会員に送達し、同会員が所定の申込み書等により同社を通じて請求人に対し、商品購入の意思表示を行うこととする。
(B)請求人は、y社の会員に対し通信販売の方法による商品の発送を完了した後1月以内に売上票等をy社に提出することとし、同社はこれによる通信販売売上金の合計額から所定の手数料を差し引いた金額を支払うこととする。
(C)請求人は、y社の会員からの通信販売の申込みに対し、直接に取引し、又はその代金を直接請求したり受領してはならない。
M 株式会社x
(A)請求人が通信販売の方法により請求人の商品を株式会社x(以下「x社」という。)の会員に販売したものについては、請求人は商品代金の回収をすべてx社に委託し、同社は請求人に代わって集金を代行することとし、当該商品代金から所定の手数料を差し引いた金額を支払うものとする。
(B)x社は、商品代金の回収が不能な場合においても請求人にその代金の返還を求めないものとし、請求人の商品販売代金の支払を保証する。
(C)請求人は、x社の会員より直接販売代金を受領してはならない。
N 株式会社d
(A)請求人発行の宣伝媒体、あるいは請求人・株式会社d(以下「d社」という。)双方合意する宣伝媒体により、請求人の販売する商品をd社の会員に広告し、会員が所定の申込み方法により請求人から商品を購入する方法により請求人が販売した売上伝票を一定期間毎にd社に送付することとし、同社は、請求人より受けた売上合計額から所定の手数料を差し引いて支払うものとする。
(B)請求人は、d社の会員に直接現金払いを要求する等、カードの円滑な使用を妨げる何らの制限も行わない。
(ロ)本件手数料は、商品の区分等に応じ商品売上総額の4.5パーセントから20パーセントとなっていること。
(ハ)本件契約等の締結日については、平成元年4月1日の消費税法適用日前のものがf社、z社、w銀行及びx社の4社で、他の者は消費税法適用日以後になっていること。
(ニ)信販各社では、請求人から支払を受けた本件手数料に係る収入については非課税取引としていること。
(ホ)請求人とe社との間においては、通信販売契約を締結しているところ、当該通信販売に関する契約の内容は、次のとおりである。
A 請求人は、自己の商品を販売するに当たり、販売促進のためにe社に同社の会員に対する通信販売の仲介を委託し、e社はこれを引き受ける。
B 本契約に基づき通信販売する商品、当該商品の販売価格、販売期間、販売対象地域及び販売対象会員、当該商品の保証に関する事項、当該商品の試用期間、当該商品に係る販促資料の形式及び内容(デザインを含む。)並びにテスト通販及び通常通販に係る販促資料のそれぞれの発送部数、発送日程等の通信販売の実施に関する細目(以下「マーチャンダイジング・プラン」という。)は、随時両者協議の上決定する。
C 請求人は、マーチャンダイジング・プランに基づき自己の費用で販促資料を作成してe社に提出して承認を得た場合には、販促資料を当該見本によって作成し、マーチャンダイジング・プランに規定するテスト通販の要領に従ってこれらをe社の会員に発送するための部数を同社の指定する発送業者に届けるものとする。
D 上記のテスト通販において、会員から受けた商品の注文数が当該テスト通販に係る申込み数以上であった場合、請求人はマーチャンダイジング・プランに規定する通常通販の要領に従って商品の注文を勧誘する通常通販を実施するものとする。
E 会員の商品に関する注文は、所定の申込書をe社に送付して行うものとする。e社は、申込書受領の都度当該申込書について発注書を作成して請求人に送付する。
F 請求人は、上記の発注書の記載及びマーチャンダイジング・プランに従って会員に商品を送付する。
G 本契約に基づき通信販売した商品に関して会員に対して発生する売掛金はすべて、会員に代わりe社が請求人に支払うことに双方合意し、本契約に基づきe社の役務に関し、請求人はe社に対し、所定の手数料を支払うものとする。
 但し、(1)e社が商品の発送中止を要請したにもかかわらず、請求人が商品を発送した場合(2)会員との間で申込みの不存在、無効若しくは取消し、商品の未到着、商品の損傷若しくは瑕疵に関する争い等が生じている場合等には売掛金の支払を拒否することができる。
H e社は、毎月10日までに請求人より受領した集計票に記載された金額(上記の手数料等を除く。)を毎月15日に支払う。
I e社の書面による事前の同意を得た場合を除き、請求人は会員に対し、直接請求人の顧客又は他のクレジットカード会社の会員に対し、直接請求人の顧客又は他のクレジット会社の会員となることを勧誘してはならない。
J 本件の通信販売契約は平成元年4月18日に締結していること。
K e社は、本件の通信販売契約に基づき支払を受けた手数料収入に係る消費税については課税取引として処理していること。
ロ ところで、消費税法第30条第1項で規定する「課税仕入れに係る消費税額の控除」の対象となる課税仕入れの範囲については、同法第2条第1項第12号において定めているところであるが、同号では、課税仕入れとは、事業者が、事業として、他の者から資産を譲り受け、若しくは借り受け、又は役務の提供(給与等を対価とする役務の提供を除く。)を受けること(当該他の者が、事業として、当該資産を譲り渡し、若しくは貸し付け、又は当該役務の提供をした場合に課税資産の譲渡等に該当することとなるもので、消費税が免除されるもの以外のものに限る。)をいうこととしている。
 また、消費税法第2条第1項第9号において、課税資産の譲渡等とは、資産の譲渡等のうち、同法第6条第1項の規定により消費税を課さないこととされるもの以外のものをいうとされており、同項においては消費税法別表第1に掲げるものには消費税を課さないこととしている。
 さらに、消費税法別表第1第3号では、利子を対価とする貸付金その他の政令で定める資産の貸付け、信用の保証としての役務の提供等その他これらに類するものとして政令で定めるものについては消費税を課さないこととし、これを受けて、同法施行令第10条第3項において、同表第1第3号に掲げる資産の貸付け又は役務の提供に類するものとして同号に規定する政令で定めるものは、次に掲げるものとするとして、同項第8号において定める「前各号に掲げるもののほか、金銭債権(前条第1項第4号に規定する支払指図に係るものを含む。)の譲受けその他の承継(包括承継を除く。)」を非課税とすることとしている。
ハ そこで、上記イの事実を上記ロに照らして、本件手数料が消費税の仕入税額控除の対象とされるか否かを判断すると次のとおりである。
(イ)上記イの(イ)のAないしIの信販各社との間の本件手数料の支払に関する契約によれば、上記イの(イ)のAないしIのとおり、請求人が本件会員に販売したことにより取得した売買債権を当該信販各社に譲渡し、この債権の譲渡による対価の額は、当該信販各社との間で定める本件手数料を控除した後の金額とされていることから、本件手数料は金銭債権を当該信販各社に承継することにより支払うものと認められ、消費税法上非課税取引に該当することになる。
(ロ)また、上記イの(イ)のJないしNの信販各社との間の本件手数料の支払いに関する契約によれば、上記イの(イ)のJないしNのとおり(1)当該信販各社は、本件会員が請求人の行う通信販売により購入した商品の代金として支払うべき金額から当該信販各社との間で定める本件手数料を控除した後の金額を請求人に支払うこととされており、(2)請求人は、本件の契約の対象とされた当該商品の販売代金を当該会員に請求することはできないこととされていることからすると、当該信販各社は、請求人が有する商品販売債権を引き継いで請求人に代わって当該商品販売代金を集金することの対価として本件手数料が授受されるものであると認められる。
 そうすると、上記イの(イ)のJないしNの信販各社に支払う手数料は、消費税法施行令第10条第3項第8号で規定する金銭債権の譲受けその他の承継に係る役務の提供の対価として支払われるものに該当し、非課税取引とされることとなる。
 したがって、請求人が本件手数料は課税取引に当たり消費税の仕入税額控除の対象とすべきであるとする主張には理由がない。
(ハ)請求人は、本件契約等は大部分が消費税法適用前の日付で契約されており、契約当時は本件手数料について消費税の認識はなかった旨主張する。
 しかしながら、消費税の認識の有無によって本件手数料の税務上の取扱いに差異が生ずるものではない。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
(ニ)なお、請求人は、請求人の取引先の中にはe社のように手数料収入を課税取引として経理している信販会社があり、信販各社の経理処理の内容によって課税の要否を判断すべきではない旨を主張するが、請求人はe社との間においては、上記イの(ホ)の通信販売契約を締結しているところであり、この内容については、上記イの(ホ)のA、E及びJの各事実から判断すると、e社が同社の会員に対して請求人が行っている通信販売の仲介を行うことを主たる内容とするものであると認められ、当該契約に基づき支払われる手数料の性質は、いわば、e社から同社の会員を紹介してもらうことによる対価として支払うものであると認めるのが相当であり、このような役務の提供を受けることにより支払う手数料は、消費税法第2条第1項第9号に規定する課税資産の譲渡等に該当することとなり、本件手数料とはその性格を異にするものであり請求人の主張は採用することはできない。
 以上のことから、本件手数料は、消費税法第2条第1項第12号に規定する課税仕入れに該当せず、同法第30条第1項の規定は適用されないので、本件手数料の金額については仕入税額控除をすることができないとするのが相当である。
ニ 本件更正処分の金額について
(イ)課税標準額
 原処分庁は、各課税期間の課税標準額を請求人の申告額と同額であると認定しているところ、当審判所の調査によっても、原処分庁の認定額は相当と認められる。
(ロ)課税標準額に対する消費税額
 原処分庁は、各課税期間の課税標準額に対する消費税額を請求人の申告額と同額であると認定しているところ、当審判所の調査によっても、原処分庁の認定額は相当と認められる。
(ハ)仕入税額控除
 原処分庁は、平成3年9月期課税期間における課税仕入れに係る支払対価の金額は、請求人の申告額1,382,097,639円から上記ハで述べた非課税取引となる本件手数料の金額71,119,688円を控除した後の金額1,310,977,951円となり、これに103分の3を乗じた38,183,823円が控除税額であり、また、平成4年9月期課税期間における課税仕入れに係る支払対価の金額は、請求人の申告額1,642,938,430円から上記ハで述べた非課税取引となる本件手数料の金額89,894,172円を控除した後の金額1,553,044,258円となり、これに103分の3を乗じた45,234,298円が仕入税額控除の額であると認定しているところ、当審判所の調査によっても、原処分庁の認定額は相当と認められる。
(ニ)納付すべき税額
 原処分庁は、各課税期間の納付すべき税額を平成3年9月期課税期間6,412,900円及び平成4年9月期課税期間10,469,100円と計算し、当該各金額は、消費税額から控除税額を差し引いた金額(100円未満切り捨て)であると認定しているところ、当審判所の調査によっても、原処分庁の認定額は相当と認められる。
 以上の結果、請求人の各課税期間の課税標準額及び納付すべき税額は次表のとおりとなり、これらの金額は本件更正処分と同額であるから、本件更正処分は適法である。

(2)本件賦課決定処分について

 以上のとおり、本件更正処分は適法であり、また、請求人には、確定申告の税額を計算するに当たり、原処分庁が本件更正処分に係る過少申告加算税の計算の基礎とした税額に係る事実を確定申告の税額の計算の基礎としなかったことについて、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項の規定に基づいてした過少申告加算税の各賦課決定処分は適法である。

(3)その他

 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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