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(平12.7.31裁決、裁決事例集No.60 15頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)事案の概要

 本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が受けた土地の贈与が錯誤に基づくものであったとして、贈与者(請求人の祖母)を被告として提起した贈与の無効確認訴訟における判決(請求の認諾)が、国税通則法(以下「通則法」という。)第23条《更正の請求》第2項第1号にいう「判決」に該当し、更正の請求が認められるか否かが争われた事案である。

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(2)審査請求に至る経緯

 請求人は、平成7年分の贈与税の申告書に別表の「申告」欄のとおり記載して法定申告期限までに申告した。
 原処分庁は、これに対して原処分庁所属の職員の調査結果に基づき、平成9年6月17日付で別表の「更正処分」欄のとおり、更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件更正処分等」という。)をした。
 請求人は、平成10年6月17日に請求人の祖母であるHを被告とし、申告の基因となった贈与の無効確認及び当該贈与による所有権移転登記の抹消を求める訴え(以下「本件訴訟」という。)を提起したところ、同年8月25日に被告の認諾により、本件訴訟は終結した。
 その後、請求人は、平成10年10月23日に原処分庁に対し、本件訴訟により贈与の無効が確認されたとして、別表の「更正の請求」欄のとおり更正の請求をした。
 原処分庁は、これに対し、平成10年12月17日付で更正をすべき理由がない旨の通知処分(以下「本件通知処分」という。)をした。
 請求人は、この処分を不服として、平成11年2月15日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は同年5月11日付で棄却の異議決定をし、その決定書謄本を請求人に対し同月14日に送達した。
 請求人は、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成11年6月14日に審査請求をした。

(3)基礎事実

 以下の事実は、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 贈与について
(イ)請求人は、HからP県Q市R町29番及び同30番1の宅地、合計面積1,184.26平方メートル(以下「本件土地」という。)の贈与(以下「本件贈与」という。)を受けた。
(ロ)本件贈与に当たり、平成7年12月12日付で、贈与者をH、受贈者を請求人とする本件土地の贈与証書(以下「本件贈与証書」という。)が作成された。
(ハ)平成7年12月12日の本件贈与を原因とする所有権移転登記が、平成8年2月21日付でされた。
ロ 贈与の無効確認訴訟について
(イ)請求人は、平成10年6月17日に本件贈与における受贈の意思表示は要素の錯誤に基づくものであるから本件贈与は無効であるとして、本件訴訟をP地方裁判所S支部へ提起した。
(ロ)被告であるHは、平成10年7月16日に請求を認める旨の答弁書(以下「本件答弁書」という。)をP地方裁判所S支部に提出した。
(ハ)本件訴訟は、第一回口頭弁論期日である平成10年8月25日、被告であるHが出廷しなかったことにより、本件答弁書の内容が陳述擬制され、口頭弁論調書に請求の認諾(以下「本件請求認諾」という。)が記載されたことをもって終結した。
(ニ)本件贈与によるHから請求人への所有権移転登記が、平成10年8月25日の本件請求認諾を原因として平成10年9月24日付で抹消された。
ハ 本件土地の賃貸について
(イ)請求人は、平成5年12月16日にT市U町1丁目8番地所在の株式会社I社(以下「I社」という。)との間で、本件土地(当時の地目は田)をI社の営む給油所の駐車場として使用する旨の賃貸借契約(以下「本件賃貸借契約」という。)を締結した。
(ロ)請求人とI社は、上記(イ)を受けて、平成6年5月31日付で公正証書を作成し、本件賃貸借契約の期間を、平成6年5月2日から平成9年5月1日までの3年間とした。なお、3年経過後も契約が自動的に更新され現在に至っている。
(ハ)本件賃貸借契約に基づく賃貸料は、1か月につき280,000円であり、平成5年12月1日にJ信用金庫本店営業部において開設された請求人名義の普通預金口座(口座番号○○○○○、以下「本件預金口座」という。)に、平成6年5月以降、賃貸料が毎月振り込まれている。

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2 主張

(1)請求人の主張

 本件請求認諾は、次のとおり、通則法第23条第2項第1号にいう「判決」に該当し、本件請求認諾により贈与が無効とされたことによって、本件贈与に基づく贈与税の申告及び更正に係る課税標準の計算の基礎となった事実が消滅し、当該計算の基礎としたところと異なることが確定したため、更正の請求には理由がある。
 したがって、原処分は違法であるから、その全部の取消しを求める。
イ 本件訴訟は、次の理由から、決して贈与税の負担の軽減を図る目的はなく、Hとの馴れ合いによる訴訟ではない。
(イ)贈与は、贈与税の負担額も当然考慮に入れてなされる行為であるところから、贈与税の負担は、「法律行為の要素」に該当するものであり、贈与の意思決定をするために受贈者にとっては最も重要な要素である。
 したがって、贈与税の負担についての錯誤があれば本来の取引は無効になり得るので、本件訴訟は、次のとおり、贈与の要素である贈与税の負担についての錯誤を理由に贈与の無効確認を求めたものである。
A 請求人が本件土地の贈与を受けたのは、本件土地の賃貸借の仲介者である株式会社K(以下「本件仲介者」という。)から本件土地が宅地として贈与されることによって贈与税額が概算で514万円になるとの説明を受け、贈与によって514万円の贈与税を負担することについて不服であったが、既に賃貸借の契約を済ませていたので、この贈与を受けることとし、これ以上の贈与税を負担する場合は、贈与を受けない旨の意思表示をHに対して行っていた。
B 請求人は、本件更正処分等に係る贈与税の額が9,862,500円と高額になることが事前に分かっていれば贈与を受けなかった。
(ロ)請求の認諾とは、民事訴訟法上、原告の請求としてなされる権利主張を、被告が肯定し承諾するという被告の陳述であるとされている。
 したがって、請求の認諾の効力は、判決に至るまでの手続上の違いはあるとしても、確定判決と同一であるところから、請求の認諾だから馴れ合いによる行為と考えるのは不当である。
(ハ)本件土地からの経済的利益については、次のとおり留保している。
A 本件預金口座は、いつでもHの名義に変更し、本件土地の賃貸料等を返還できるよう、贈与税等の税金の納付以外には使用していない。
 なお、更正処分に係る贈与税の納付を行ったのは、滞納処分がなされることによって請求人と取引銀行を同じくする請求人の父であるLの営む法人の経営に悪影響を及ぼすことを懸念したためである。
B 本件訴訟終結後において、本件賃貸借契約及び同契約に基づく賃貸料の振込口座の変更手続を行っていないのは、賃借人は愛知県に所在しており、しかも、本件賃貸借契約に当たっては、本件仲介者を介しているところから、不服申立てにおける行政庁の判断が出されていない段階で、安易にそれらを変更するわけにはいかない事情があるからで、審査請求終結後速やかに賃貸借契約等を変更する考えである。
ロ 通則法第23条第2項の規定の趣旨は、納税申告時に予想し得なかった事由が後発的に生じ、これにより課税標準等又は税額等の計算の基礎に変更を生じ、税額の減額をすべき場合にも更正の請求を認められないとすると、帰責事由のない納税者に酷な結果が生じる場合があることを救済するものである。
 本件についても、受贈者である請求人が単にいらないと言っている訳ではなく、贈与契約時において重要な要素である税負担について重大な錯誤が生じたことによるもので、請求人に何らかの帰責事由があるとは考えられない。

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(2)原処分庁の主張

 本件請求認諾は、次のとおり、その有する効力のいかんにかかわらず、その実質において客観的、合理的根拠を欠き、通則法第23条第2項第1号にいう「判決」に該当せず、更正の請求に対して、その更正をすべき理由がないとした原処分は適法であるから、審査請求を棄却するとの裁決を求める。
イ 本件訴訟は、次の理由から、請求人が専ら請求人の贈与税の軽減を図る目的で、Hとの馴れ合いによるものであると認められる。
(イ)民法第95条においては、意思表示は法律行為の要素に錯誤があるときは無効とする旨規定しているが、ここでいう「法律行為の要素」とは、具体的行為について、仮に、その点について錯誤がなかったならば、その意思表示をしなかったと考えられ、かつ、意思表示をしなかったことが一般取引上の通念に照らして至当と認められるような意思表示の内容の主要部分を指すと解されている。
 一方、民法第549条においては、贈与は当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、これを相手方が受諾することによって、その効力が生ずる旨規定している。
 したがって、贈与においては、何らかの負担があるにもかかわらず、無償であったと誤認していた場合を除き、受贈者が要素の錯誤を理由として、贈与の無効を主張できないと解される。
 本件については、贈与者であるHが請求人に何らかの負担を求めた客観的事実は認められないから、請求人が要素の錯誤を理由として贈与契約の無効を主張できないことは明らかである。
(ロ)本件訴訟の被告であるHは、基礎事実のロの(ロ)及び(ハ)のとおり、請求を認める旨の答弁書を裁判所に提出し、かつ、第一回口頭弁論期日に欠席したことにより請求の認諾として訴訟が終結している。
(ハ)請求人は、次のとおり本件土地の所有者としての経済的利益を本件訴訟の終結後も引き続き享受している。
A 請求人はI社との間で、基礎事実のハの(イ)のとおり、本件賃貸借契約を締結しており、その内容は次のとおりである。
(A)I社は、本件土地(当時の地目は田)をI社の営む給油所の駐車場として使用する。
(B)賃貸借期間は、平成6年○月○日より平成9年○月○日まで(3年間)とする。
(C)賃貸借期間満了前1か月以内に、当事者が書面で解約の意思表示をしないときは、賃貸借契約は自動的に1年間延長する。
(D)賃貸料は1か月につき280,000円とし、本件預金口座に毎月末までに翌月分を振り込む。
(E)I社は、保証金として20,000,000円を請求人に預託し、無利息とする。
B 請求人とI社は、基礎事実のハの(ロ)のとおり、本件賃貸借契約と同様の内容の公正証書を作成しており、賃貸借期間は、平成6年5月2日から平成9年5月1日までの3年間となっている。
C 本件預金口座には、I社から次のとおり入金がある。

(A)平成5年12月17日2,000,000円
(B)平成6年5月17日18,261,935円
(C)平成6年5月以降毎月280,000円

D 本件訴訟が終結した後も、本件賃貸借契約に基づく賃貸料280,000円が、毎月I社から本件預金口座へ入金されている。
E 上記Cの金員は、請求人からHへ返還された事実が認められない。
F 請求人とI社は、いずれも本件賃貸借契約を解約するとの意思表示を書面で行った事実がない。
ロ 通則法第23条第2項の規定を設けた趣旨は、納税者において納税申告時には予想し得なかつた事由が後発的に生じ、これにより課税標準等又は税額等の計算の基礎に変更を生じ税額の減額をすべき場合に、法定申告期限から1年を経過していることを理由に、更正の請求を認めないとすると、帰責事由のない納税者に酷な結果が生じる場合等があると考えられることから、保護されるべき納税者の救済の途を拡充したものと解される。
 したがって、通則法第23条第2項第1号に規定する「判決」には、納税者に帰責事由があるものまでを含んでいるとは解されない。
 請求人の贈与税の金額についての錯誤は、請求人に帰責事由があるものであるから、当該錯誤につき、たとえ判決と同一の効力を有する請求の認諾により本件訴訟が終結したとしても、これをもって通則法第23条第2項第1号に規定する「判決」があったとして、更正の請求を認めることはできない。

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3 判断

(1)認定事実

 原処分関係資料、請求人提出資料及び当審判所の調査によれば、次の事実が認められる。
イ 本件土地の地目は、本件土地の賃貸借の申込み時において「田」であった。
ロ 平成6年7月21日に本件土地が田から宅地へと地目変更されたことを原因とする登記が、平成8年1月9日付でされた。
ハ 請求人、H及びLは、同居の親族である。
ニ 本件贈与証書には、Hが請求人に対して本件土地を贈与する旨の内容が記載されているが、請求人における贈与受諾の意思表示に関する記載はない。
ホ I社からの賃貸収入に係る不動産所得については、請求人名義で申告を行っている。

(2)請求人の答述

 請求人の代理人であるLは当審判所に対し、次のとおり答述している。
イ 本件土地の贈与については、平成5年秋ころ、本件仲介者から本件土地の賃貸借の申込みがあった時に話題となり、その後、本件仲介者から土地の地目を「田」のまま贈与すれば贈与税額は302,900円であるとした内容のメモが示された。
ロ 上記イの話を受けて、本件贈与について、Lを交えて請求人とHが相談した結果、田のままでの贈与について双方が合意した。
ハ 上記ロの合意の下で、請求人は、本件仲介者に対して本件土地の賃貸借を承諾するとともに、本件贈与に関するすべての手続きも併せて依頼した。
ニ 本件預金口座の通帳及びI社からの本件土地の賃貸料等を原資として作成された定期預金証書は、家の金庫に保管しており、また、請求人はLから本件預金口座等の個人的な使用を止められている。

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(3)判断

イ 通則法第23条第2項第1号は、申告、更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に関する訴えについての判決(判決と同一の効力を有する和解その他の行為を含む。)により、その事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定した場合には、一定の期間内に更正の請求をすることができる旨規定している。
 また、民事訴訟法第267条において、請求の認諾を調書に記載したときは、その記載は、確定判決と同一の効力を有する旨規定しているところから、請求の認諾によって課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に変更があった場合には、原則として通則法第23条第2項第1号の規定に基づき更正の請求をすることができる。
ロ この通則法第23条第2項の規定を設けた趣旨は、納税者において納税申告時には予想し得なかった事態その他やむを得ない事由が後発的に生じ、これにより課税標準等又は税額等の計算の基礎に変更を生じ税額の減額をすべき場合にも更正の請求を認めないとすると、帰責事由のない納税者に酷な結果が生じる場合等があると考えられることから、例外的に、更正の請求を認めることによって保護されるべき納税者の救済の途を拡充したものと解されている。
 ただ、このような通則法第23条第2項の立法趣旨に照らせば、同項第1号に規定する判決とは、当事者間に権利関係の争いがあり、その後、判決により申告等があった当時の権利関係と異なった事実関係が生じた場合の判決を指すと解され、請求の認諾についても同様に解するのが相当である。
 したがって、たとえ請求の認諾が記載された調書において訴訟当事者の課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実が消滅する旨の記載がされていたとしても、それが訴訟当事者間で当初から予定されていたものであり、専ら租税負担を回避する目的で実体とは異なる内容のものである場合にまで、同号の規定に基づく更正の請求ができると解するのは相当ではない。
ハ ところで、法律行為を行うに際して、当該法律行為の動機に錯誤があり、その動機が明示的又は黙示的に表示され、法律行為の要素となっている場合には、表意者に重大な過失が存在しない限り、民法第95条の規定により当該法律行為は無効になると解されている。
 一方、租税負担の有無等が私法上の法律行為の動機として明示的又は黙示的に表示されていない場合には、納税義務者が納税義務の発生原因となる私法上の法律行為を行った際に予定していた納税義務よりも重い納税義務が生じても、その法律行為が無効になるものではないことになる。
ニ そこで本件についてみると、請求人は、請求人の主張のイの(イ)のとおり、本件贈与による贈与税の負担は概算で514万円になるとの説明を受け、これ以上の贈与税を負担する場合は贈与を受けない旨の意思表示を贈与者にした旨主張するが、基礎事実のイの(ロ)及び認定事実のニのとおり、贈与証書において、請求人が贈与税の負担の限度を贈与受諾の条件とした旨の記載はなく、また、基礎事実のロのとおり本件訴訟は請求の認諾により終了しており、請求人と贈与者との間において、本件訴訟の提起に至るまでにどのような主張の相違があったのかをうかがわせる裁判所の判断もなく、請求人が、贈与者に対する前記の意思表示を行ったことを客観的に証する証拠は認められない。
ホ むしろ、本件更正処分後の贈与税額を負担したとしても、本件土地の贈与時の時価からみて、請求人がなお相当額の経済的利益を現実に受けたことは明らかであること及び基礎事実のハのとおり、請求人には本件土地の賃貸による相当額の収入があることからすれば、請求人からみて本件贈与を無効にしなければならないほどの実質的な理由は認め難く、審査請求の経緯のとおり、本件更正処分等から1年も経過した後に本件訴訟を提起したこと、さらに、認定事実のハのとおり、請求人とHは同居の親族であること等も併せて総合的に判断すれば、本件請求認諾は、実質的には、請求人及び贈与者が、本件贈与当時予定していた贈与税額を本件更正処分等後の贈与税額が大きく上回ったため、本件贈与を合意解除したものと推認される。
 そうすると、本件請求認諾は実体を反映したものとは認められないことになり、請求人は、実質的には贈与の合意解除であるにもかかわらず、通則法第23条第2項第1号の規定に基づく更正の請求を行って、既に確定した贈与税額の減額更正を受けるため、錯誤を理由とする本件訴訟を提起し、請求の認諾により終了させたものと認めるのが相当である。
ヘ また、基礎事実のロの(ニ)及びハのとおり本件通知処分当時、本件土地の登記上の所有者名義は贈与者に変更されているものの、本件賃貸借契約における賃貸人名義はなお請求人であり、その賃貸収入も請求人が取得しており、それまでに受けた賃貸収入も贈与者に返還されていないこと、また、同賃貸収入に係る不動産所得の申告も認定事実のホのとおり、請求人名義で行っていることから、本件請求認諾があっても、本件贈与により請求人に生ずることとなった経済的利益が消滅していない事実が認められる。
 この点に関して、請求人は、請求人の主張のイの(ハ)のとおり、本件賃貸借契約等の解除等を行っていない旨主張するが、本件贈与の無効は、本件土地の賃借人にとっても法律的に重大な影響のある事柄であることからすると、いずれも合理性に乏しいものといわざるを得ない。
ト なお、契約が申告期限後に合意解除された場合には、その合意解除が、法定の解除事由がある場合、事情の変更により契約の効力を維持するのが不当な場合、その他これに類する客観的理由に基づいてなされた場合にのみ、通則法第23条第2項第3号の規定により、更正の請求が認められるものと解されるが、贈与税の負担が予定よりも重かったというような主観的事実はこの更正の請求の事由に当たらない。
チ 以上のとおり、本件訴訟の提起に対してなされた請求の認諾は、訴訟当事者間で当初から予定されたものであり、専ら租税負担を回避する目的による、実体とは異なる内容のもので、本件贈与により請求人に生ずることとなった経済的利益が本件通知処分当時において消滅していないことも踏まえれば、本件請求認諾は、民事訴訟法第267条の規定により、確定判決と同一の効力を有するとしても、通則法第23条第2項第1号に規定する判決には該当せず、本件通知処分は適法であるから、更正の請求に対して、その更正をすべき理由がないとした原処分は違法であるとの請求人の主張は採用できない。
リ 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された資料によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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