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(平12.11.21裁決、裁決事例集No.60 522頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)事案の概要

 本件は、平成7年10月18日(以下「本件相続開始日」という。)に死亡した被相続人o(以下「被相続人」という。)の共同相続人である審査請求人p、同q、同r及び同s(以下、これらを併せて「請求人ら」いとう。)が相続した(以下、この相続を「本件相続」という。)土地を近接宅地の価額を基として評価することの適否を主たる争点とする事案である。

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(2)審査請求に至る経緯

イ 請求人らは、本件相続に係る相続税の申告書(以下「本件申告書」という。)に、別表1の「申告」欄のとおり記載して法定申告期限までに申告した。
ロ 次いで、請求人らは、原処分庁所属の職員の調査を受け、p及びqは、別表1の「修正申告」欄のとおり記載した修正申告書を平成9年12月22日に提出した。
ハ 原処分庁は、平成10年1月27日付で、修正申告に係る重加算税及び過少申告加算税の賦課決定処分並びに別表1の「更正等」欄のとおり更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をした。
ニ 請求人らは、上記ハの更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を不服として、平成10年3月23日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年6月23日付で別表1の「異議決定」欄のとおり、原処分の一部を取り消す異議決定(以下、異議決定による一部取消後の原処分をそれぞれ「本件更正処分」及び「本件賦課決定処分」といい、各処分を併せて「本件更正処分等」という。)をした。
ホ 請求人らは、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成10年7月21日に審査請求をした。
 なお、請求人らは、pを総代として選任し、その旨を平成10年7月21日に届け出た。

(3)基礎事実

 以下の事実は、請求人ら及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 別表2の順号〔1〕から〔6〕の各土地の登記簿上の地目はいずれも山林であるが、本件相続開始日現在の各土地の現況は、次のとおりである。
(イ)順号〔1〕のL市M区N町1番1の土地19,647平方メートルのうち16,562.40平方メートル(以下、当該部分を「本件a土地」という。)の現況は山林であり、それ以外の3,084.60平方メートルの現況は雑種地である。なお、当該雑種地部分の土地は、1,515.50平方メートルの区画(以下「本件b土地」という。)と1,569.10平方メートルの区画(以下「本件c土地」という。)に区分して利用されている。
(ロ)順号〔2〕のL市M区N町43番1の土地243平方メートル(以下「本件d土地」という。)の現況は、雑種地である。
(ハ)順号〔3〕のL市M区N町76番1の土地2,449平方メートルのうち2,283.70平方メートル(以下、当該部分を「本件e土地」という。)の現況は山林であり、それ以外の165.30平方メートル(以下、当該部分を「本件f土地」という。)の現況は雑種地である。
(ニ)順号〔4〕のL市M区N町359番2及び同所360番1の北東側部分の合計3,189.56平方メートル(以下、当該土地を「本件g土地」という。)の現況は雑種地である。
(ホ)順号〔5〕のL市M区N町360番7の土地のうち757.79平方メートル(以下、当該部分を「本件h土地」という。)の現況は雑種地である。
(ヘ)順号〔6〕のL市M区N町408番1の土地16,851平方メートルのうち14,609.72平方メートル(以下、当該部分を「本件i土地」という。)の現況は山林であり、それ以外の2,241.28平方メートルの現況は雑種地である。なお、当該雑種地部分は、1,626.20平方メートルの区画(以下「本件j土地」という。)と615.08平方メートルの区画(以下「本件k土地」という。)に区分して利用されている。
ロ 請求人ら及び原処分庁ともに、現況が雑種地である本件b土地から本件d土地、本件f土地から本件h土地、本件j土地及び本件k土地(以下、これらの本件各土地を併せて「本件雑種地」という。)の価額を、財産評価基本通達(昭和39年4月25日付直資56ほか国税庁長官通達。ただし、平成8年5月30日付課評2―3による改正前のもの。以下「評価基本通達」という。)82の定めに基づき評価している。
ハ 別表2の本件各土地は、いずれも都市計画法第7条《市街化区域及び市街化調整区域》に規定する市街化調整区域に所在する。

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2 主張

(1)請求人ら

 本件雑種地の価額を評価基本通達82の定めに基づき評価するとしても、次に述べるとおり、本件雑種地と状況が類似する付近の土地は山林であり、にもかかわらず、宅地の価額を基として評価した本件更正処分は誤りであるから、本件更正処分等の全部を取り消す旨の裁決を求める。
イ 建物の建築ができるか否かは、その土地の状況を決める上で重要な因子であり、いくら開発・造成しても法的規制により建物の建築できない、すなわち宅地化できない土地の状況を宅地の状況に類似しているということはできない。
ロ 原処分庁は、本件雑種地の外見が宅地の外見に類似していると主張するが、道路に面し、高低差がなく、ほぼ平坦な田、畑、山林、原野はいくらでもあるし、砂利敷きは宅地にとってむしろ不要なものである。
 雑種地とは、宅地、田、畑、山林、原野などいずれの地目にも該当しないものをいうのであるから、そのままの状態で他の地目の土地に似ているということはあり得ない。何らかの手を加えることにより、最も容易になり得る地目の土地が類似している土地であると解するのが相当である。
 これによれば、本件雑種地はもともと山林であり、植樹することで再び容易に山林になり得、また、その方が周囲の状況にも適合するのであって、本件雑種地に状況が類似する付近の土地(以下、評価対象地と状況が類似する付近の土地を「比準地」という。)は山林ということになる。
 したがって、本件雑種地は、山林を比準地として、評価基本通達の定めにより評価した比準地の1平方メートル当たりの価額を基として、比準地と本件雑種地との条件の差を考慮して評定した価額に地積を乗じて計算した金額により評価すること(以下、この山林を比準地として評価する方式を「山林比準方式」という。)が最も合理的といえる。
ハ 市街化区域内の農地や山林は、宅地化することが可能であるから、宅地を比準地として評価すること(以下「宅地比準方式」という。)は相当といえ、市街化区域内の雑種地についても、宅地化することが可能であることを考えれば、同様のことがいえる。
 しかし、市街化調整区域内の農地や山林は、造成をしても宅地化できないのであって、そうであるからこそ、評価基本通達は宅地比準方式を採用していないのであり、このことは、市街化調整区域内の雑種地についても同様である。
 このことを考えれば、市街化調整区域内の雑種地を宅地比準方式で評価すべきでないことは明らかである。
ニ ところで、原処分庁の50%相当額を控除するという考え方は、評価基本通達25の(5)、同27―5、同86の(4)及び同87―3の定めに準じたものと思われるが、これらの通達は、宅地及び宅地比準方式を採用することができる市街化区域内の農地や山林についての評価方式であるから、市街化調整区域内に所在する本件雑種地の評価に適用することはできない。また、原処分庁の考え方によれば、宅地化できない市街化調整区域内の農地や山林もすべて宅地比準方式で50%を控除して評価することが可能ということになるが、市街化調整区域内の土地は宅地となり得ないのであるから、これに宅地比準方式を採用して評価することは誤りである。
 なお、50%相当額を控除するという考え方は、当該土地に50%相当額の経済的価値を有する権利が設定されていることを前提とするものであるが、原処分庁が主張するように、借地権を設定させている場合と同様の利用制限を受けているとして50%又は借地権割合のいずれか高い割合を控除するというのであれば、使用貸借により建物が建築されている土地についても同様に控除すべきことになり不合理である。
ホ 仮に、宅地比準方式による評価方法が正しいとした場合でも、本件更正処分は、次のとおり、評価基本通達82の定めに反している。
(イ)比準地の所在地、形状及び地積が明らかにされておらず、また、比準地の1平方メートル当たりの価額が原処分時と異議決定時とで異なっている理由が示されていない。
(ロ)地積が500平方メートル以上である本件b土地、本件c土地、本件g土地、本件h土地、本件j土地及び本件k土地を宅地比準方式で評価する場合は、評価基本通達24―4の定めに基づき有効宅地化率を求め、更に、道路、公園・緑地等の設置が必要とされているときは、その建設費用等を控除して評価しなければ、比準地との条件の差をしんしゃくしたことにはならないが、そのしんしゃくがされていない。
(ハ)本件d土地、本件h土地、本件j土地及び本件k土地を宅地にする場合には、構築物である舖装路面の撤去が必要となるから、その費用を控除して評価すべきである。

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(2)原処分庁

 本件更正処分等は、次に述べるとおり適法であるから、審査請求をいずれも棄却する旨の裁決を求める。
イ 評価基本通達7は、土地の価額は、宅地、田、畑、山林等の地目の別に評価することを原則とし、一体として利用されている一団の土地が2以上の地目からなる場合は、その一団の土地は、そのうちの主たる地目からなるものとして、その一団の土地ごとに評価する旨定め、また、地目の判定は、不動産登記事務取扱手続準則(昭和52年9月3日付民三第4473号法務省民事局長通達。以下「本件準則」という。)第117条及び第118条に準じて、課税時期の現況によって行う旨定めている。
 さらに、本件準則第117条は、地目を定める場合には、土地の現況及び利用目的に重点を置き、部分的に僅少の差異の存するときでも、土地全体としての状況を観察して定めるものとして21種類の地目を定め、田、畑、宅地、山林、原野、雑種地の地目の区分の基準を次のように定めている。
(イ)宅地 建物の敷地及びその維持若しくは効用を果たすために必要な土地
(ロ)田 農耕地で用水を利用して耕作する土地
(ハ)畑 農耕地で用水を利用しないで耕作する土地
(ニ)山林 耕作の方法によらないで竹木の生育する土地
(ホ)原野 耕作の方法によらないで雑草、かん木類の生育する土地
(ヘ)雑種地 上記(イ)から(ホ)等のいずれにも該当しない土地
ロ ところで、原処分庁の調査によれば、次の(イ)及び(ロ)の事実が認められる。
(イ)本件雑種地は、いずれもその面する道路との高低差がほとんどなく、本件d土地を除く本件雑種地は、駐車場や資材置場、物置と思われる構築物の敷地として利用されており、本件相続開始日においても同様に利用されていた。
(ロ)本件d土地は、南東及び南西にある建物の敷地にそれぞれ接しており、擁壁工事が施されていることから、宅地と同様の外観を呈している。
ハ 上記ロの本件雑種地の状況を本件準則に定める基準に照らし合わせると、本件雑種地は、上記イの(イ)の宅地に最も類似しているのであり、したがって、本件雑種地は、宅地比準方式により評価するのが相当である。
 なお、請求人らは、本件雑種地が市街化調整区域内にあり建物の建築が法的に制限されていること、植樹によって容易に山林に復することをもって、本件雑種地は山林に類似する旨主張するが、地目の類似性の判定に当たっては、本件準則に定めるように土地の現状と利用目的を重視すべきである。
ニ もっとも、現況が雑種地の土地の評価について、評価基本通達82は、比準地とその雑種地の位置、形状等の条件の差を考慮して評定する旨定めているところ、本件雑種地は、市街化調整区域内にあり建物の建築が制限されているから、本件雑種地の評価に当たっては、このことを考慮する必要がある。
 建物の建築が制限されている場合の土地の評価について、評価基本通達25の(5)は、区分地上権に準ずる地役権の目的となっている承役地である宅地の価額は、その承役地の自用地としての価額から同27―5に定める区分地上権に準ずる価額を控除した金額により評価する旨定め、これを受けて同27―5は、区分地上権に準ずる地役権価額を評価する場合の地役権の割合を、その承役地に係る制限の内容が家屋の建築が全くできないものであるときは、100分の50又はその区分地上権に準ずる地役権が借地権であるとした場合にその承役地に係る借地権割合のいずれか高い方の割合と定めている。
 本件雑種地は、建物の建築が制限されており、その制約は、評価基本通達27―5に定める承役地に係る制限の内容が家屋の建築が全くできないものであるときと同様の制約と認められるから、本件雑種地の評価に当たっては、評価基本通達25の(5)の定めに準じて50%相当額を控除して評価するのが相当と認められる。
 なお、請求人らは、原処分庁が50%相当額の控除をしているのは、本件雑種地に100分の50に相当する経済的価値を有する権利を認定しているからである旨主張するが、上記のとおり、単に本件雑種地が建築の制限を受けるという比準地との条件の差を考慮した結果であるから、請求人らの主張は失当である。
ホ 請求人らは、更に、原処分庁の評価方法は評価基本通達82の定めに反している旨主張するが、この点については、次の(イ)から(ニ)までのとおりである。
(イ)比準地について
 異議審理庁が本件雑種地の評価に際し採用した比準地は、別表3のとおりであり、異議決定時に原処分を見直した結果に基づき、より近接する宅地の価額を比準したものである。
(ロ)面積が500平方メートル以上の土地についての評価基本通達24―4の定めの適用について
 本件b土地、本件c土地、本件h土地、本件j土地及び本件k土地については、比準地の宅地の面積等から判断すると、広大地の評価をする必要はない。
 また、市街化調整区域内にある雑種地は、建物の建築が制限されているため、資材置場又は駐車場として利用されているのが通常であるところ、それらの用途においては、面積が広大であることはその価値を減額する要素とはならない。したがって、本件g土地についても広大地の評価をする必要はない。
(ハ)造成費相当額の控除について
 本件d土地、本件h土地、本件j土地及び本件k土地の現況からすると、造成費相当額を控除して評価する必要はないと認められる。
 なお、本件b土地、本件c土地及び本件g土地は、整地された平坦な土地であり、その大部分は砂利敷きであるが、隣接地との境界部分は砂利敷きとなっておらず、更に造成が必要な部分があると認められるので、請求人らに有利に全体の地積について造成費相当額を控除して評価したものである。
(ニ)以上のとおり、請求人らの主張にはいずれも理由がなく、本件雑種地の価額は、評価基本通達82の定めに基づき適正に評価されている。

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3 判断

 現況が雑種地の土地の価額を評価基本通達82の定めに基づき評価することについては、請求人ら及び原処分庁の双方に争いがないところ、本件雑種地の評価に際し採用した比準地に関して争いがあるので、以下審理する。

(1)本件更正処分について

イ 原処分関係資料及び当審判所の調査によれば、次の事実が認められる。
(イ)当審判所において、平成10年9月及び平成12年1月の2回、本件雑種地を実地に調査した結果は、次のとおりである。
 本件雑種地は、いずれも、その面する道路と高低差がなく立竹木、かん木類等を除去して整地された平坦な土地である。また、野菜、穀類、稲などは耕作されておらず、それぞれの土地の状況は、次のとおりである。
A 本件b土地は、南東側が国道P号線、南西側が市道Q線(以下「U街道」という。)、北西側が市道の三方の路線に接している。本件B土地の北東側は、高さ5メートル前後の立竹木等が繁茂する本件a土地と接している。
 なお、本件雑種地を平成10年9月に調査した時点では、南東の一部を除き整地された砂利敷きの土地であったが、平成12年1月に再度調査した際には、平成11年7月から本件b土地を賃借した自動車販売会社が、同年9月ころに営業所建物を建築し、営業していることが確認された。
B 本件b土地は、出入口部分がコンクリート舗装されている以外は、そのほとんどが砂利敷きの土地で、南東側が国道P号線に接している。本件c土地の南西側は、高さ5メートル前後の立竹木等が繁茂する本件a土地と接している。
 本件c土地の一部141.90平方メートルは、請求人らが本件相続により相続した北東側の隣接地とともにR株式会社に貸し付けており、同社が駐車場として使用している。
C 本件d土地は、北東側と北西側がそれぞれ市道に接した角地で、北西側の市道とは高低差はないが、北東側の市道は北から東に向かって下り傾斜となっているため、本件d土地の東端が道路より約1メートルほど高くなっており、当該部分に擁壁工事がされている。
 本件d土地は、周囲を宅地に囲まれた中にあり、耕作を行っている形跡のない平坦に整地された空閑地である。
D 本件f土地は、Sへの貸付地で、同人の物置小屋と思われる構築物の敷地及び駐車場として使用されており、市道に接している。本件f土地の南側及び西側は、立竹木等が繁茂した本件e土地に接している。
E 本件g土地は、株式会社Tへの貸付地で、同社が駐車場及び資材置場に使用している。本件g土地は、直接的には、U街道と交差する市道に接しているのみであるが、株式会社Tが本件g土地と一体利用している隣接地を介してU街道にも通じている。
F 本件h土地は、L市への貸付地で、L市立N小学校の駐車場に使用されており、U街道に接している。
G 本件j土地は、W株式会社への貸付地で、同社が駐車場に使用しているL字形の土地である。本件j土地は、市道に接した出入口部分がアスファルト舗装されている以外は、ほとんどが砂利敷きの土地で、その東側及び南側は、立竹木等が繁茂した山林に接している。
H 本件k土地は、本件j土地に隣接した砂利敷きの駐車場に使用されている土地で、市道に接している。
(ロ)本件雑種地は、いずれも、最寄り駅のX線Y駅又はZ駅から2キロメートルから3キロメートル、徒歩で20分から30分程度、市街化区域との境界から1キロメートル程度の場所に位置し、本件雑種地が接している国道P号線、U街道等には、バス路線が設けられている。
(ハ)本件雑種地が接している国道P号線、U街道等の道路沿いは宅地化が進んでおり、殊に、本件f土地、本件j土地及び本件k土地の近隣では一団の住宅が建築されている。
(ニ)なお、L市M区役所固定資産税課土地係の職員の答述によれば、市街化調整区域内であっても、建物の建築許可申請がされた場所が、昭和45年以前に既存建物の存在している地域であり、道路の状況及び上下水道の設置の状況等により宅地化できる場所であると確認され、許可が下りれば、建物の建築は可能とされていること、そのため市街化調整区域内の駐車場や資材置場等の雑種地は、宅地並み雑種地として、宅地評価額に雑種地の状況に応じ40%から15%を控除した補正をして評価する取扱いとなっていることが認められる。
ロ 前記1の(3)の基礎事実及び上記イの認定事実に基づき判断すると、次のとおりである。
(イ)相続税法第22条《評価の原則》は、相続財産の価額は特別の定めのあるものを除くほか、当該財産の取得の時における時価による旨規定しているところ、財産の時価を客観的に評価することは必ずしも容易ではなく、また、納税者間で基礎資料の選択により財産の評価が不均衡となることは、課税の公平の観点からみて好ましくないことから、国税庁長官において、相続財産を評価するための一般的基準として評価基本通達を定め、統一のとれた課税事務を行っている。したがって、評価基本通達の定めによらないことが正当として是認され得るような特別な事情がある場合を除き、原則として評価基本通達の定めに基づき評価することが合理的なものということができる。
(ロ)ところで、評価基本通達7は、土地の価額は宅地、田、畑、山林、原野、牧場、池沼、鉱泉地、雑種地の地目の別に評価する旨、ただし、一体として利用されている一団の土地が2以上の地目からなる場合には、その一団の土地は、そのうちの主たる地目からなるものとして、その一団の土地ごとに評価する旨、また、地目は、課税時期の現況によって、本件準則に準じて判定する旨を定めている。
 また、評価基本通達82は、雑種地の価額は、原則として、比準地について、評価基本通達の定めにより評価した1平方メートル当たりの価額を基として、比準地とその雑種地との位置、形状等の条件の差を考慮して評定した価額に、その雑種地の地積を乗じて計算した金額によって評価する旨、ただし、状況の類似する地域ごとに、国税局長が固定資産税評価額に乗じる倍率を定めている地域ある雑種地の価額は、その雑種地の固定資産税評価額にその倍率を乗じて計算した金額によって評価する旨定めている。
 評価基本通達が、雑種地の原則的な評価方法に比準方式を採用しているのは、状況の類似する雑種地が一定の地域を形成していることはほとんどないのが実情であり、しかも、雑種地の状況が駐車場、資材置場、グラウンド等のように宅地に類似するものもあれば、荒れ地、土砂を採取した跡地等のように原野に類似するものもあることから、その価額の評価に当たっては、状況の類似した同種の土地が一定の地域を形成している場合を前提とした倍率方式によるよりも、評価する雑種地の付近にあって、状況が類似する土地の価額から比準して評価する方が合理的であるからと考えられる。したがって、雑種地の原則的な評価方法に比準方式を採用していることは相当である。
(ハ)そこで本件についてみると、国税局長は、本件雑種地の所在する地域について、固定資産税評価額に乗じる倍率を定めていないから、本件雑種地の価額は、本件雑種地の本件相続開始日の現況に基づき、上記(ロ)の原則的な方法により評価することになる。
(ニ)本件雑種地は、上記イの(イ)のとおり、いずれも公道に接し、かつ、立竹木等のない平坦に整地された土地であり、立竹木等の繁茂した山林とは明らかに状況を異にしており、本件c土地、本件f土地、本件g土地、本件h土地、本件j土地及び本件k土地は、現に駐車場、資材置場若しくは物置と思われる構築物の敷地として使用されている。そして、上記イの(ロ)及び(ハ)のとおり、本件雑種地は市街化区域の境界の近くに位置し、本件雑種地の周辺においては公道に面した土地などで建物が建築され、一団の宅地開発が行われている場所もあり、また、L市M区役所固定資産税課土地係の職員の答述によれば、市街化調整区域内であっても条件によっては建物の建築は可能で、全く建築が禁止されているとまでは言えないと認められる。
 そうすると、本件雑種地は、一般的には建物の建築が制限されているとはいえ、建築が全くできないものではなく、その状況は宅地の状況に最も類似しているといえるから、本件雑種地の価額は、本件雑種地と状況が類似する付近の宅地を比準地とした、宅地比準方式により評価するのが相当である。
(ホ)請求人らの主張について
A 請求人らは、道路との高低差がない等の外見から、直ちに本件雑種地は宅地に類似しているということはできないとして、本件雑種地は、建物の建築ができず、植樹することにより容易に山林になり得ることなどから、山林比準方式でこれを評価すべきである旨主張する。
 しかしながら、本件雑種地は、山林と明らかにその状況を異にしていることは上記(ニ)のとおりである。そして、地目の判断は、課税時期の現況によって行うのであるから、植樹をすれば山林に復するからといって、山林に類似しているということはできない。
 したがって、原処分庁が本件雑種地の課税時期の現況に基づき宅地を比準地に採用したことは相当であり、請求人らの主張は採用できない。
B 請求人らは、評価基本通達が市街化調整区域内の農地や山林の評価に宅地比準方式を採用していないことからすれば、市街化調整区域内の雑種地の評価についても宅地比準方式を採用すべきでないことは明らかである旨主張する。
 しかしながら、評価基本通達は、上記(ロ)のとおり、雑種地の現況が多種多様であるという特殊性から、雑種地の価額の評価方法に比準方式を採用しているのであるから、仮に、評価対象地の雑種地の状況が山林の状況に類似している場合には、山林を比準地として評価し、宅地の状況に類似している場合には、宅地を比準地として評価することになる。
 請求人らは、結局、市街化調整区域内の雑種地は建物が建築できないとして、宅地比準方式は採用できない旨主張するものと解されるが、上記(ニ)のとおり、市街化調整区域内であっても一切の建物の建築が禁止されているとまではいえず、現に、本件B土地には、本件相続開始後に建物が建築されていることに照らすと、市街化区域内の雑種地と市街化調整区域内の雑種地とを区別して取り扱うべき理由はないというべきであり、請求人らの主張は採用できない。
C 請求人らは、宅地比準方式を採れない本件雑種地の評価について、原処分庁が評価基本通達25の(5)等の定めに準じて50%相当額の控除をしているのは誤りであり、仮に、本件雑種地が利用制限を受けていることを考慮するのであれば、使用貸借により建物が建築されている土地も同様に評価すべきことになり不合理である旨主張する。
 しかしながら、上記Bのとおり、本件雑種地の評価について宅地比準方式を採れないとする理由はなく、また、50%相当額を控除したのは、本件雑種地は、その状況が宅地に類似しているとはいえ、実際には都市計画法に基づく利用制限があることを考慮したためであり相当である。また、使用貸借は、当事者間の好意、特別の信頼関係等を基盤とするもので、土地、家屋等の不動産を目的とするものであっても賃借権のような厚い法的な保護は与えられず、それだけ所有権に対する制約も弱いことから、使用貸借により建物が建築されていることを特に考慮しないのであり、そもそも、都市計画法に基づく利用制限があることと前提を異にするものである。したがって、本件の場合に利用制限があることを考慮しても何ら不合理とはいえない。
D さらに、請求人らは、仮に、宅地比準方式による評価方法が正しいとしても、本件更正処分は、次に述べるとおり、評価基本通達82の定めに反している旨主張するが、以下のとおりである。
(A)比準地の明細が不明であること及び比準地の1平方メートル当たりの価額が原処分時と異議決定時とで異なっていることについて
 異議審理庁は、異議決定に係る調査において、原処分庁が採用した比準地を見直し、その結果、本件雑種地の付近に所在し、かつ、より状況が類似している別表3の各土地を比準地に採用したことが認められ、当審判所の調査によっても、これを不相当とする理由は認められない。
(B)地積が500平方メートル以上の本件雑種地についての、評価基本通達24―4の定めの適用について
a 評価基本通達24―4の定めは、評価対象地の所在する地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地で、都市計画法に規定する開発行為が必要な場合に、道路、公園等の公共公益的施設用地としていわゆる潰れ地が生ずることになる土地の評価に当たり、評価対象地の地積から潰れ地となる部分の地積を控除した地積が、評価対象地の地積に占める割合(有効宅地化率)を奥行価格補正率に代えて適用するもので、評価対象地を宅地として利用することを前提とする取扱いである。
b 請求人らは、地積が500平方メートル以上の本件雑種地については、有効宅地化率を求めた上、更に公共公益的施設の建設費用を控除して評価すべき旨主張する。
 しかしながら、本件雑種地の所在する地域においては、駐車場や資材置場が標準的な利用形態と認められ、このような利用形態を前提とすると、地積が広大であること自体は価格の減価要素にはならないと考えられ、また、公共公益的施設の建設費用は、土地を宅地に開発する場合に生じ得る費用であるが、本件雑種地の価額は、そもそも、比準地である宅地との位置、形状等の条件の差を50%と考慮した上で宅地の状況に類似した雑種地の価額を評価したものであるから、これからさらに宅地として利用されることを前提とした場合の減価要素を考慮することは、減価要素を二重に考慮することになり不相当というべきである。
(C)造成費相当額の控除について
 本件雑種地は、上記イの(イ)のとおり、本件b土地の南側、本件c土地の北西側及び本件g土地の北側を除き、いずれも平坦に整地された土地で、駐車場、資材置場等として利用されている土地若しくは空き地であるから、造成費相当額を控除する必要は認められない。したがって、本件b土地、本件c土地及び本件g土地についてのみ、造成費相当額を控除し、それ以外の本件雑種地についてこれを控除しなかったことは相当である。
(ヘ)なお、原処分庁は、本件b土地、本件c土地、本件g土地については、造成費相当額控除後の価額の50%相当額をもってその評価をすべき旨、また、本件k土地については、賃借権相当額を控除すべきでない旨主張する。
 ところで、比準方式は、比準地の価額を基として、比準地と評価対象地との位置、形状等の条件の差を考慮して、比準地の価額を基礎とした評価対象地の価額を求め、更に評価対象地の個別的な要因として造成費相当額を控除する必要があればこれを控除して評価する計算方法である。
 そうすると、当該各土地の価額は、比準地と当該各土地との位置、形状等の条件の差として50%相当額を控除した価額から造成費相当額を控除して評価するのが相当であり、原処分庁の主張は採用できない。
 また、本件k土地は、本件c土地等の貸付けている土地と同様の利用状況と認められ、本件k土地のみを別異に取り扱うべき理由はないから、賃借権相当額を控除して評価することが相当と認められる。
 そこで、別表2の本件各土地の価額を再計算すると、別表4―1及び別表4―2のとおりの金額となり、これを基に請求人らの課税価格及び納付すべき税額を計算すると、それぞれ別表5及び別表6のとおり、いずれも本件更正処分額を上回るか、これと同額であるから本件更正処分は適法である。

(2)本件賦課決定処分について

 請求人らが、本件更正処分により新たに納付すべきこととなった税額について、税額の計算の基礎となった事実が更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項の規定に基づき行った本件賦課決定処分は適法である。
(3)原処分のその他の部分については、請求人らは争わず、当審判所に提出された資料等によってもこれを不相当とする理由は認められない。

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