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(平12.10.10裁決、裁決事例集No.61 39頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)事案の概要

 本件は、税理士業を営む審査請求人(以下「請求人」という。)が郵便により提出した(郵便物の通信日付印は平成12年3月16日)平成11年分の所得税の青色の確定申告書(以下「本件申告書」という。)を期限内申告書として取り扱うべきか否かが争われた事案である。

(2)審査請求に至る経緯

イ 請求人は、別表の「確定申告」欄のとおり記載した本件申告書を原処分庁に郵便により提出した。
ロ 原処分庁は、本件申告書を平成12年3月17日に郵便物(以下、本件申告書が封入された封筒を「本件封筒」という。)として収受したが、本件封筒に表示された通信日付印は同月16日であった。
 そこで、原処分庁は、本件申告書は法定申告期限後に提出されたものであり、青色申告特別控除の金額は45万円から10万円に減額すべきであるとして、平成12年5月8日付で、別表の「更正処分等」欄のとおりの更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び無申告加算税の賦課決定処分をした。
ハ 請求人は、原処分を不服として、平成12年7月5日に審査請求をした。

(3)基礎事実

 以下の事実は、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査によってもその事実が認められる。
イ 所得税法第120条《確定所得申告》第1項に、所得税の確定申告書の提出期限は、その年の翌年3月15日までと規定されているので、平成11年分の所得税の確定申告の法定申告期限は、平成12年3月15日である。
ロ 国税通則法第22条《郵送に係る納税申告書の提出時期》には、「納税申告書が郵便により提出された場合には、その郵便物の通信日付印により表示された日にその提出がされたものとみなす。」と規定されている。
ハ 租税特別措置法第25条の2《青色申告特別控除》第3項に規定する45万円(青色申告控除前のその年分の不動産所得の金額又は事業所得の金額の合計額が45万円未満の場合は当該合計額)の青色申告特別控除の適用を受けるためには、同条第5項で、確定申告書をその提出期限までに提出することが要件として規定されている。

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2 主張

(1)請求人の主張

 原処分は、次の理由により不当であるので、その全部の取消しを求める。
イ 請求人は、本件申告書を平成12年3月15日中にP市Q町2丁目180のコンビニE店前の郵便ポスト(以下「本件郵便ポスト」という。)に投かんし、郵便により提出したものであるが、本件郵便ポストに投かんした時間が本件郵便ポストの最終取集め時刻後であったため、本件封筒に押印された通信日付印が同月16日になったものである。
 通信日付印で一律に取り扱うとすれば、明らかに3月15日に提出したものまでも期限内申告書として取り扱われないという不合理が生じる。
ロ 平成12年3月16日の原処分庁の勤務時間開始前に本件申告書を原処分庁に設置されている時間外文書収受箱(以下「時間外収受箱」という。)へ投かんしていれば、当該申告は期限内申告として取り扱われたはずであるので、本件申告書を本件郵便ポストに投かんして行った請求人の申告もこれと同様に期限内申告として取り扱うべきである。

(2)原処分庁の主張

 原処分は、次の理由により適法であるので、審査請求を棄却するとの裁決を求める。
 郵送に係る納税申告書の提出時期については、国税通則法第22条に、「納税申告書が郵便により提出された場合には、その郵便物の通信日付印により表示された日にその提出がされたものとみなす。」と規定されているところ、本件封筒に表示された通信日付印は平成12年3月16日であることから、本件申告書を期限内申告書として取り扱うことはできない。

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3 判断

 本件の争点は、請求人が郵便により提出した(本件封筒の通信日付印は平成12年3月16日)本件申告書を期限内申告書として取り扱うべきか否かにあるので、以下審理する。

(1)本件更正処分について

イ 認定事実
 原処分関係資料及び当審判所の調査の結果(Q郵便局郵便課長の当審判所に対する答述等)によれば、次の事実が認められる。
(イ)本件郵便ポストに係る郵便物の取集め業務は、Q郵便局において行われていた。
(ロ)本件郵便ポストの平日の取集め時刻は次のとおりである。
第1回 午前6時40分
第2回 午前9時40分
第3回 午後0時50分
第4回 午後5時30分
(ハ)Q郵便局においては、平成12年3月15日の第4回取集め及び同月16日の第1回取集めを平常どおり行っており、本件郵便ポストに同月15日の第4回取集め後から翌日の第1回取集めまでの間に投かんされた郵便物については、同月16日の午前6時40分ころに取集めを行い、同日の通信日付印を押印している。
(ニ)原処分庁は、本件申告書が平成12年3月17日に原処分庁に郵送され、本件封筒に表示された通信日付印が同月16日であったことから、同日に本件申告書が提出されたものとして取り扱った。
ロ 請求人の答述
 請求人は、当審判所に対し、要旨次のとおり答述している。
(イ)本件申告書は平成12年3月15日の午後10時ころ作成した。
(ロ)本件申告書は平成12年3月15日の午後10時20分ころ本件郵便ポストに普通郵便で投かんした。
 その際、本件郵便ポストの最終取集め時刻が午後5時30分ころであることは確認した。
(ハ)最終取集め時刻後に投かんした郵便物は、翌日の通信日付印となることは知っていた。
(ニ)請求人の関与先の確定申告書を郵便により提出する場合には、Q郵便局を利用し、すべて書留郵便で提出している。
(ホ)Q郵便局の窓口では、郵便物を24時間受け付けていることは知っていた。
ハ ところで、書類の提出等に係る効力の発生時期については、一般には、その書類が税務官庁へ到達した時(いわゆる到達主義)に効力が生ずると解されるところ(民法第97条第1項参照)、納税申告書については、郵便事情等を考慮し、また、納税者と関係税務官庁との地理的間隔の差異に基づく不公平を是正するために、到達主義の例外として、国税通則法第22条で、「納税申告書が郵便により提出された場合には、その郵便物の通信日付印により表示された日にその提出がされたものとみなす。」と規定されているものである。
ニ これを本件についてみると、請求人は、通信日付印が平成12年3月16日であったとしても、同月15日中に郵便ポストに投かんしたものを期限内申告書として取り扱わないのは不合理である旨主張する。
 しかしながら、上記ロの答述によれば、請求人は、本件封筒には平成12年3月16日の通信日付印が押印されることを知っており、さらに、国税通則法第22条の規定により、本件申告書が通信日付印の日である平成12年3月16日に提出されたものとみなされることを知りながら、本件申告書を本件郵便ポストに投かんしたと認められる。
 また、上記イの(ハ)の認定事実のとおり、Q郵便局では、平成12年3月15日及び同月16日において、平常どおりの業務が行われており、誤って同日の通信日付印が押印された事実は認められない。
 そうすると、本件申告書は、国税通則法第22条の規定により、本件封筒の通信日付印により表示された平成12年3月16日に提出されたものとみなすのが相当であり、本件申告書は期限後申告書となるので、本件更正処分は適法である。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
ホ なお、請求人は、申告書を3月15日中に郵便ポストに投かんした場合も、時間外収受箱に投かんした場合と同様に、期限内申告として取り扱うべきである旨主張するが、本件申告書は郵便により提出されたものであるから、原処分庁が、国税通則法第22条の規定に従い、本件申告書を期限後申告書として取り扱ったことは相当であり、この点に関する請求人の主張には理由がない。

(2)無申告加算税の賦課決定処分について

 本件申告書は上記(1)のとおり期限後申告書であるが、国税通則法第65条《過少申告加算税》第1項に規定する還付請求申告書に該当し、かつ、本件更正処分も還付金の額に相当する税額を減額するものであるので、本件更正処分により賦課すべき加算税は、同項に規定する過少申告加算税ということになる。
 ところで、本件更正処分に伴い、国税通則法第66条《無申告加算税》の規定に基づき賦課した無申告加算税の賦課決定処分については、その適用条文を誤ったものであるが、無申告加算税又は過少申告加算税は共に無申告又は過少申告による納税義務違反の発生を防止する趣旨で課される税であり、本質において変わりはないと解される(最高裁昭和40年2月5日第二小法廷判決参照)ことから、無申告加算税の賦課決定処分のうち過少申告加算税相当額を超える部分を取り消すのが相当である。
(3)原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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