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(平14.3.28裁決、裁決事例集No.63 123頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)事案の概要

 本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、合名会社からの退社により9年間の年賦で受領する配当等の額とみなされる金額の収入すべき時期及びその収入金額とすべき金額を争点とする事案である。

(2)審査請求に至る経緯

イ 請求人は、平成10年分の所得税について、確定申告書に次表の「確定申告」欄のとおり記載して、平成11年4月6日に申告した。
 原処分庁は、これに対し、平成11年4月27日付で、次表の「賦課決定処分」欄のとおりの無申告加算税の賦課決定処分をした。

ロ その後、原処分庁は、平成13年2月27日付で、上表の「更正処分等」欄のとおりの更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び無申告加算税の賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」という。)をした。
ハ 請求人は、本件更正処分及び本件賦課決定処分を不服として、平成13年4月27日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、平成13年7月6日付で棄却の異議決定をした。
ニ 請求人は、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成13年8月3日に審査請求をした。

(3)関係法令等

イ 所得税法(平成13年法律第6号による改正前のもの。以下同じ。)第25条《配当等の額とみなす金額》第1項第2号は、法人の株主等が当該法人からの退社により持分の払戻しとして金銭の交付を受けた場合において、その金銭の額が当該法人の資本等の金額のうち、その交付の基因となった出資に係る部分の金額を超えるときは、その超える部分の金額は、利益の配当又は剰余金の分配の額とみなす旨(以下「みなし配当所得の金額」という。)規定している。
ロ また、所得税法第36条《収入すべき金額》第1項は、その年分の各種所得の金額の計算上、収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額とする旨規定している。
ハ 所得税基本通達(昭和45年7月1日付直審(所)30(例規)国税庁長官通達「所得税基本通達の制定について」(平成11年12月24日付課所4−25による改正前のもの))36−4《配当所得の収入金額の収入すべき時期》(3)イは、みなし配当所得の金額のうち、資本若しくは出資の減少、株式の償却、退社又は脱退によるものに係る配当所得の収入金額の収入すべき時期は、これらの事実があった日によるものとする旨定めている。

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(4)基礎事実

 以下の事実は、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 請求人が出資者となっていたZ合名会社は、出資金5,000,000円、総社員10名で昭和35年12月24日に設立されている。
ロ 請求人とZ合名会社代表社員Jとの間において、平成10年7月21日付で、「合名会社社員の退社の同意及び持分払戻契約公正証書」(以下「本件公正証書」という。)が作成されており、その第1条及び第2条には要旨次のとおり記載されている。
第1条 平成10年7月2日Z合名会社代表社員J、社員G、同H、同K、同L、同M、同N、同S、同T、同U、同W、同X及び同Yは、同社社員U、同W、同X、同Yの退社員4名(以下、この退社員4名を「退社員ら」という。)が、P県Q市R町○○字○○番地所在前記Z合名会社(代表社員J)から退社することについて、同会社定款(以下「本件定款」という。)第14条に基づき、同意した。
第2条 退社員らに対しては、本件定款第15条により、退社当時における会社財産の限度内において、退社員らの持分を払戻す必要があるところ、退社員らの持分の合計は、39パーセントであり、出資の払戻金額は、総額金85,000,000円也であること、及び払戻の方法は、次のとおり、分割して払戻すことについて総社員が同意した。

記 払戻の日時・金額
1平成10年11月末日限り金 5,000,000円
2平成11年11月末日限り金 5,000,000円
3平成12年11月末日限り金11,000,000円
4平成13年11月末日限り金11,000,000円
5平成14年11月末日限り金11,000,000円
6平成15年11月末日限り金11,000,000円
7平成16年11月末日限り金11,000,000円
8平成17年11月末日限り金10,000,000円
9平成18年11月末日限り金10,000,000円

ハ 請求人は、本件公正証書の作成に当たり、他の退社員であるW、X及びYの3名の代理人として、自らの印鑑証明書の提出により人違いでないことを証明し、また、他の3名の退社員の委任状は私署証書であることからそれぞれの印鑑証明書を提出し、当該委任状が真正であることを証明している。
ニ Jは、本件公正証書の作成に当たり、退社員らを除く他の8名の社員の代理人として、自らの印鑑証明書の提出により人違いでないことを証明し、また、他の8名の社員の委任状は私署証書であることからそれぞれの印鑑証明書を提出し、当該委任状が真正であることを証明している。
ホ 本件定款の第14条には、社員の退社事由について、次のとおり定めている。
1、総社員の同意
2、死亡
3、破産
4、禁治産
5、除名
ヘ 本件定款の第15条には、退社員に対しては会社退社当時における会社財産の限度においてその持分を払戻しすることを要すると定めている。
ト Z合名会社の商業登記簿には、退社員らが平成10年8月4日に同社を退社した旨の変更登記(以下「本件変更登記」という。)が同日付でなされている。
チ Z合名会社が平成11年5月28日に開催した社員総会(以下「本件総会」という。)の議事録(以下「本件議事録」という。)の決議事項には、平成11年3月期利益処分案承認の件として「かねて退職の申し入れのあった、U、f、g、Yの4名は平成10年8月4日退職したので、出資金額を返還しまたその持分返還配当金として85,000,000円を支払うこととし、そのうち平成10年11月30日、5,000,000円を内払したので残金80,000,000円は、利益処分にて未払金に計上した。以上の利益処分案についての承認を願いたい旨を総会にはかったところ、異議無く承認可決した。」旨記載されている。

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2 主張

(1)原処分庁の主張

 原処分は、次に述べるとおり、いずれも適法であるから、審査請求を棄却するとの裁決を求める。
イ 本件更正処分について
(イ)配当所得の金額
A 所得税法第36条第1項に規定するその年において収入すべき金額とは、現実にその収入すべき金額の支払いがなくても、その収入の原因たる権利が確定的に発生している場合には、その時点で所得の実現があったものとしてその権利発生の時期の属する年分の所得を構成することとなる。
B そこで、上記1の(3)のイないしハ及び上記Aを本件に当てはめると、次のとおりである。
(A)みなし配当所得の金額の収入すべき時期
a みなし配当所得の金額の収入すべき時期については、上記1の(3)のハのとおり、退社によるものについては、退社の事実があった日によるものと定められているところ、請求人の退社については、上記1の(4)のトのとおり、平成10年8月4日付で本件変更登記がなされていることは明らかであるから、既に総社員の同意があったものと解され、同日が請求人のZ合名会社からの退社の事実があった日(以下「本件退社の日」という。)となる。
 そうすると、平成10年8月4日が、みなし配当所得の金額の収入すべき時期である。
b 請求人は、本件総会においてZ合名会社からの退社について総社員の同意を受けた旨及び本件変更登記は、請求人の退社に関し本件総会において総社員の承認を受けた後に商業登記の変更を行うとするZ合名会社との合意(以下「本件合意」という。)にZ合名会社が違反し、請求人の同意のないまま行ったものである旨主張する。
 しかしながら、本件総会において総社員の同意があったという証拠及び本件合意があったという証拠の提出がなく、また、原処分に係る調査においてもそのような事実は把握できなかったものであり、請求人の主張は失当である。
(B)みなし配当所得の金額の収入金額とすべき金額
a 本件退社の日は、上記(A)のaのとおり、平成10年8月4日であるから、その時点でみなし配当所得の金額について収入の原因たる権利が確定的に発生し、所得の実現があったものとすべきであり、請求人のみなし配当所得の金額の収入金額とすべき金額については、請求人がZ合名会社から受領する持分の払戻金の額71,923,090円(退社員らに対する持分の払戻金の総額85,000,000円を別表1の退社員らの出資金の額に応じてあん分計算して、請求人の持分に対応する金額として算定した額。以下、「本件払戻金の額」という。)のうち、請求人の出資に係る金額1,650,000円(以下「本件出資金の額」という。)を超える部分の金額70,273,090円(以下「本件みなし配当所得の金額」という。)となる。
b なお、請求人は、本件みなし配当所得の金額は、平成10年から同18年までの9年間の年賦で受領する予定の収入であるから、平成10年分の所得として一括課税することは違法である旨主張する。
 しかしながら、本件みなし配当所得の金額の収入すべき金額については、上記aで述べたとおりであるから、この点に関する請求人の主張には理由がない。
C 配当所得の金額
 したがって、請求人の平成10年分の配当所得の金額は、本件みなし配当所得の金額70,273,090円である。
(ロ)不動産所得の金額
 不動産所得の金額は、請求人が確定申告書に記載した金額である。(ハ) 株式等に係る分離譲渡所得金額
 株式等に係る分離譲渡所得の金額は、請求人が確定申告書に記載した金額である。
(ニ)所得控除の合計額
 所得控除の合計額は次表のとおりである。

  区分金額(単位:円)
  配偶者控除0
  その他の所得控除○○○
  合計○○○

A 配偶者控除の額
 所得税法第83条《配偶者控除》第1項に規定する配偶者控除は、配偶者の合計所得金額が38万円を超える場合には適用できないところ、請求人の配偶者の合計所得金額は38万円を超えているから、同条に規定する配偶者控除は適用できない。
B その他の所得控除の額
 その他の所得控除の額は、請求人が確定申告書に記載した金額である。
(ホ) 配当控除の額
 配当控除の額は、所得税法第92条《配当控除》第1項第3号のイの規定により、上記(イ)のCの配当所得の金額70,273,090円に100分の5を乗じた金額3,513,654円となる。
(ヘ)特別減税額
 特別減税の額は、平成10年分所得税の特別減税のための臨時措置法第4条《特別減税の額》により「居住者又は非居住者について38,000円(所得税法第83条第3項に規定する配偶者控除に係る控除対象配偶者又は同法第84条《扶養控除》第3項に規定する扶養控除に係る扶養親族を有する居住者については、38,000円に当該控除対象配偶者又は扶養親族1人につき19,000円を加算した金額)とする。」旨規定されているところ、請求人については、上記(ニ)のAのとおり配偶者が控除対象配偶者に当たらないこととなるため、特別減税の額は、請求人に係る38,000円に扶養親族である請求人の長男に係る19,000円を加算した57,000円となる。
(ト)源泉徴収税額
 源泉徴収税額は、請求人が確定申告書に記載した金額516,154円に、上記(イ)のCの配当所得の金額である70,273,090円から既に請求人が申告した配当所得の金額2,580,770円を差し引いた67,692,320円に係る源泉徴収税額13,538,464円(67,692,320円に100分の20の税率を乗じて計算した金額)を加算した14,054,618円である。
(チ)請求人の平成10年分の課税総所得金額及び納付すべき税額は、次表のとおりであり、この金額は本件更正処分と同額であるから、本件更正処分を取り消すべき理由はない。

ロ 本件賦課決定処分について
 上記イで述べたとおり、本件更正処分は適法であり、請求人の場合、国税通則法(以下「通則法」という。)第66条《無申告加算税》第1項に規定する期限内申告がなかったことについて、正当な理由があると認められる場合に該当しないから、同条第1項の規定に基づいて行った本件賦課決定処分は適法である。

(2)請求人の主張

 原処分は、次の理由により違法であるから、その全部の取消しを求める。
イ 本件更正処分について
(イ)本件払戻金の額は、請求人がZ合名会社を退社した時点で発生するものであり、本件退社の日は、次に述べるとおり、本件総会が開催された平成11年5月28日である。
A 請求人は、本件総会において総社員の承認を受け、Z合名会社から退社したものであり、その際、併せて本件払戻金の額が確定した。
B 本件変更登記については、本件合意にZ合名会社が違反し、請求人の同意のないまま行ったもので、請求人はその撤回を求めている。
C 本件公正証書の内容については、請求人とJとの間の合意であり、退社に関する総社員の承認は受けていない。
(ロ)また、本件みなし配当所得の金額は、平成10年から平成18年までの9年間の年賦で受領する予定の収入であるところ、所得税法は、実際に受領していない9年先までの収入に対する一括課税を予定していないことから、その年賦で受領する予定の収入は、それぞれの年分の総所得金額として課税されるべきであり、平成10年分の所得として一括課税するのは違法である。
(ハ)したがって、請求人の平成10年分の配当所得の金額は、請求人が確定申告書に記載したとおり、平成10年中にZ合名会社から請求人が受領した持分の払戻金の額4,230,770円から、本件出資金の額1,650,000円を差し引いた額2,580,770円である。
ロ 本件賦課決定処分について
 上記イで述べたとおり、本件更正処分は違法でありその全部を取り消すべきであるから、これに伴い本件賦課決定処分もその全部を取り消すべきである。

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3 判断

 本件審査請求の争点は、9年間の年賦払いとされた本件みなし配当所得の金額の収入すべき時期はいつか及びその収入金額とすべき金額に係る一括課税の違法性の有無にあるので、以下、審理する。

(1)本件更正処分について

イ 配当所得の金額
(イ)請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
A Z合名会社の平成10年3月31日現在及び平成11年3月31日現在における総社員の出資金の内訳は、別表1のとおりである。
B 請求人のZ合名会社からの退社事由は、本件定款第14条に基づく総社員の同意によるものである。
C 退社員らがZ合名会社から受領する持分の払戻金の支払額の内訳は、別表2のとおりである。
D 本件みなし配当所得の金額は、所得税法第25条第1項第2号に規定する、みなし配当所得の金額である。
E Z合名会社は、退社員らに対する持分の払戻金として、本件公正証書の第2条に記載されている支払計画のとおり、平成10年中に総額5,000,000円を支払っている。
 なお、その中には退社員らの出資金1,950,000円が含まれている。
F 本件議事録に記載されている社員の氏名で、「f」及び「g」とあるのは、それぞれ「W」及び「X」である。
(ロ)ところで、所得税法第36条第1項に規定するその年において収入すべき金額とは、現実に収入すべき金額の支払いのあった金額によるのではなく、収入すべきことが確定した金額によるべきことを示すいわゆる「権利確定主義」を原則とすることを明らかにしたものであると解されている。
 また、配当所得の収入金額の収入すべき時期については、所得税基本通達36−4に定められているところ、この取扱いは、当審判所においても相当と認められる。
(ハ)そこで、上記1の(4)のロないしホ、ト及びチ並びに上記(イ)のAないしDの各事実を上記1の(3)のイないしハ及び上記(ロ)に照らして判断すると、次のとおりである。
A みなし配当所得の金額の収入すべき時期
(A)上記1の(4)のロのとおり、本件公正証書が作成されていることについては争いのないところ、公正証書の効力については、民事訴訟法第228条《文書の成立》第2号の規定により、真正に成立した公文書としての推定を受けるものとされており、本件公正証書の内容については、当審判所においても真正かつ有効であると認められる。
(B)ところで、本件公正証書の第1条には、上記1の(4)のロのとおり、退社員らがZ合名会社から退社することについて、総社員が同意した旨の記載があり、上記1の(4)のは及びニのとおり、請求人及びJの両名は自らの印鑑証明書の提出により本人であることを証明していること並びにそれぞれ両名を代理人とする他の社員の委任状は私署証書であることからそれぞれの印鑑証明書を提出することにより当該委任状が真正であることを証明しており、請求人及びJは、民法第643条の規定に基づく他の社員からの委任による代理があったものと認められる。
 そうすると、代理行為の効果は、民法第99条第1項の規定により直接本人に対して効力を生ずるものとされていることから、退社員らのZ合名会社からの退社に関する総社員の同意は、本件公正証書の第1条に記載されている、平成10年7月2日にあったものと認めるのが相当である。
(C)配当所得の収入金額の収入すべき時期については、所得税基本通達36−4に定められているところ、請求人の退社事由は、上記(イ)のBのとおり、総社員の同意に基づくものであるから、総社員の同意があった日が本件退社の日となる。
 そうすると、請求人の退社に関する総社員の同意は、上記(B)で認定したとおり、平成10年7月2日にあったものと認められるから、同日が本件退社の日であり、本件みなし配当所得の金額の収入すべき時期も、同日と認めるのが相当である。
(D)原処分庁は、請求人の退社については、平成10年8月4日付で本件変更登記がなされていることは明らかであるから、既に総社員の同意があったものと解され、同日が本件退社の日である旨主張する。
 しかしながら、上記1の(4)のとのとおり、本件変更登記がなされている事実は認められるものの、本件変更登記の効力は、商法第93条に規定する退社の登記をなす前に生じた会社の債務に係る退社員の責任に関し、同法第12条に規定する第三者対抗要件を具備したに止まり、本件変更登記に係る平成10年8月4日をもって本件退社の日であると認めることは相当でない。
 したがって、この点に関する原処分庁の主張には理由がない。
(E)一方、請求人は、本件総会が開催された平成11年5月28日が退社に関する総社員の同意のあった日であり、その日が本件退社の日である旨及び本件公正証書の内容については、請求人とJとの間の合意であり、退社に関する総社員の同意は受けていない旨並びに本件変更登記は、本件合意にZ合名会社が違反し、請求人の同意のないまま行ったものであり、その撤回を求めている旨主張する。
 しかしながら、当審判所の調査によれば、本件議事録には、上記1の(4)のチのとおりの決議事項の記載があるのみで、請求人がZ合名会社から退社することについての総社員の同意があったとする内容は確認できず、また、当該決議事項に記載されている文言からみると、請求人のZ合名会社からの退社に関する総社員の同意は、少なくとも本件総会が開催された平成11年5月28日より前になされているものと認められる。
 そして、総社員の同意及び本件変更登記については、上記(B)及び(D)で判断したとおりである。
 したがって、これらの点に関する請求人の主張には理由がない。
B みなし配当所得の金額の収入すべき金額
(A)所得税法第36条第1項に規定するその年において収入すべき金額とは、上記(ロ)のとおり、権利確定主義を原則としているところ、本件退社の日は、上記Aの(C)で判断したとおり、平成10年7月2日と認められ、請求人は、同日に、本件払戻金の額を受領する権利を確定的に取得したものと認めるのが相当である。
 そうすると、退社員らがZ合名会社から受領する持分の払戻金の総額については、上記1の(4)のロの本件公正証書による85,000,000円であることに争いがなく、本件みなし配当所得の金額の収入すべき金額は、所得税法第25条第1項第2号及び同法第36条第1項の規定に基づき算定することとなり、原処分庁が上記2の(1)のイの(イ)のBの(B)のaのとおり、70,273,090円と算定しているところ、当審判所の調査によっても原処分庁の認定額は相当と認められる。
(B)請求人は、本件みなし配当所得の金額は、平成10年から同18年までの9年間の年賦で受領する予定の収入であるから、本件みなし配当所得の金額を平成10年分の所得として一括課税することは違法である旨主張する。
 しかしながら、本件みなし配当所得の金額の収入すべき金額については、上記(A)で判断したとおりである。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
C 配当所得の金額
 そうすると、請求人の平成10年分の配当所得の金額は、70,273,090円となる。
ロ 課税総所得金額及び納付すべき税額
 以上の結果、原処分庁が認定した、不動産所得の金額、配当所得の金額、株式等に係る分離譲渡所得金額、所得控除の額、配当控除の額、特別減税額及び源泉徴収税額は、当審判所の調査によっても相当と認められる。
 したがって、請求人の課税総所得金額及び納付すべき税額は次表のとおりとなり、この金額は本件更正処分に係る課税総所得金額及び納付すべき税額と同額であるから、本件更正処分は適法である。

(2)本件賦課決定処分について

 上記(1)のとおり本件更正処分は適法であり、請求人の場合、通則法第66条第1項ただし書きに規定する期限内申告がなかったことについて、正当な理由があると認められる場合に該当しないから、同条第1項の規定に基づいてなされた本件賦課決定処分は適法である。
(3)原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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