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(平14.1.24裁決、裁決事例集No.63 276頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)事案の概要

 本件は、家具の卸売業を営む審査請求人(以下「請求人」という)が仕入先の名称を仮装して計上した仕入金額が過大であるか否かを主な争点とする事案である。

(2)審査請求に至る経緯等

 審査請求(平成12年8月4日請求)に至る経緯等は、別表1及び2のとおりである。

(3)基礎事実

 以下の事実は、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 請求人は、平成7年4月1日から平成8年3月31日までの事業年度(以下「平成8年3月期」という。)、平成8年4月1日から平成9年3月31日までの事業年度(以下「平成9年3月期」という。)、平成9年4月1日から平成10年3月31日までの事業年度(以下「平成10年3月期」という。)及び平成10年4月1日から平成11年3月31日までの事業年度(以下「平成11年3月期」といい、平成9年3月期、平成10年3月期と併せて「本件各事業年度」という。)において、仕入高勘定にK有限公司(以下「K」という。)及びL有限公司(以下「L」という。)名義で仕入れを計上するとともに、その代金の支払いの証として両社名義で発行された領収証を保存している。
ロ 請求人は、上記イの仕入れに係る納品書としてM CO.,LTD.(以下「M」という。)名義で発行されたインボイス(以下「Mのインボイス」という。)を保存している。
ハ P市所在の輸入代行業者であるN株式会社(以下「N」という。)がQ国から輸入した木製の飾り棚、座卓、花台、机等の唐木家具(以下「本件唐木家具」という。)は、○○のコンテナヤードから請求人の指定倉庫へ運送業者により配送されている。
ニ 請求人は、消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)の経理処理について、平成8年3月期、平成9年3月期及び平成10年3月期は税込経理方式を、平成11年3月期については税抜経理方式を採用している。

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2 主張

(1)原処分庁の主張

 原処分は、次のとおり適法であるから、審査請求を棄却するとの裁決を求める。
イ 法人税の更正処分
(イ)仕入金額等
A 仮装名義による仕入金額
(A)K、L及びMは、いずれもその領収証又はインボイスに記載された所在地には存在せず、請求人は仕入先の名称を仮装して本件唐木家具の仕入金額を過大に計上したものと認められる。
(B)Mのインボイスの記載内容とR INC.(以下「R」という。)、S & CO.,LTD.(以下「S」という。)、T CO.,LTD及びWCO.,LTD の4社(以下「現地法人4社」という。)のインボイスの記載内容を比較検討したところ、「C/NO.」(荷番号のこと)及び「数量」は一致しているが、Mのインボイスに記載されている商品単価及び金額は、現地法人4社のインボイスに記載されている商品単価及び金額を大幅に上回っている。
(C)そうすると、請求人の仮装名義による仕入金額は、別表3−1ないし3−4に記載されている「商品純仕入高」欄の合計額で、平成8年3月期が61,921,351円、平成9年3月期が156,788,507円、平成10年3月期が104,743,217円、平成11年3月期が78,383,119円(税抜後)となる。
B 真正な仕入金額
(A)現地法人4社のインボイスは、Nが○○税関に提出した輸入申告書に添付されていたものであり、現実の取引に基づくインボイスと認められるので、同インボイスの金額が請求人の本件唐木家具に係る純仕入高である。
(B)そうすると、請求人の真正な仕入金額は、別表4−1ないし4−4に記載されている「商品純仕入高」欄の合計額で、平成8年3月期が17,325,905円平成9年3月期が41,133,425円、平成10年3月期が32,274,840円、平成11年3月期が26,804,429円(税抜後)となる。
C ところで、請求人は異議審理庁に対してR、S及びX CO.,LTD.(以下「X」という。)並びにブローカーのY(以下「Y」という。)を発行者とする領収証明書を提示し、それらの領収証明書に記載された金額は正当な仕入金額であると主張するが、同金額に対応する取引に関する書類(注文書控、納品書、請求書等)の提示がないことから同金額は請求人の正しい仕入金額であるとは認められない。
D また、請求人はRが国内の同業他者あてに発行した唐木家具に係るインボイスの写しを提示して、当該同業他者の仕入単価は請求人の本件唐木家具の仕入単価とほぼ等しいことから、請求人の仕入金額の正当性を裏付けることになる旨主張するが、商品の取引価格はメーカー及び取扱品目が同一であっても個々の取引条件によって差が生ずることがあり得るので、同業他者の仕入価格が請求人の仕入価格とほぼ等しいことをもって、請求人の本件唐木家具の仕入金額が正しいものであるとは言えない。
E さらに、請求人は、原処分庁が更正処分において増加所得に対応する貸借面を明らかにしていないのは不当であると主張するが、更正処分については、国税通則法第24条《更正》において、「納税申告書に記載された課税標準等又は税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったとき、その他当該課税標準等又は税額等がその調査したところと異なるときは・・・更正する」と規定されており、原処分庁は、損益面の調査により課税標準及び税額を適法に計算し、更正処分を行っている。
(ロ)本件各事業年度の所得金額
 請求人の本件各事業年度の所得金額は、法人税の確定申告書に記載された所得金額に上記(イ)のAの(C)に記載した仮装名義による仕入金額、仮装仕入の計上に伴う期首棚卸資産価額の過大計上額及び消費税の端数処理により雑益に計上される金額86円を加算し、上記(イ)のBの(B)に記載した真正な仕入金額、期末棚卸資産価額の過大計上額、後記ハの(ロ)に記載した未払消費税相当額、未払消費税相当額の仕入加算額及び本件法人税の更正処分によりその翌事業年度の損金の額に算入される未納事業税額の合計額を減算すると、別表9の「原処分庁主張額」欄に記載のとおり、平成9年3月期が○○○円、平成10年3月期が○○○円、平成11年3月期が○○○円となる。
ロ 法人税の重加算税の賦課決定処分
 以上のとおり、本件各事業年度の更正処分は適法であり、これらの処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実は、国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する「その国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたとき」に該当するので、同項の規定に基づいて行った本件各事業年度の重加算税の賦課決定処分は適法である。
ハ 消費税等の更正処分
(イ)請求人は、平成12年4月10日付でされた平成8年4月1日から平成9年3月31日までの課税期間(以下「平成9年3月課税期間」という。)の消費税及び平成9年4月1日から平成10年3月31日までの課税期間(以下「平成10年3月課税期間」という。)及び平成10年4月1日から平成11年3月31日までの課税期間(以下「平成11年3月課税期間」といい、平成9年3月課税期間、平成10年3月課税期間と併せて「本件各課税期間」という。)の消費税等の更正処分について、本件唐木家具の仕入取引は、後記(2)のイの(イ)のとおりYを通じて正当に行われたものであると主張し、その全部の取消しを求めている。
(ロ)しかしながら、本件唐木家具の仕入れの帳簿に記載されている仕入先は存在していないから、別表6−1、7−1及び8−1に記載の平成9年3月課税期間の187,737,000円、平成10年3月課税期間の116,000,000円及び平成11年3月課税期間の107,485,714円(税抜後)の金額は、仕入先の名称を仮装したところにより過大に計上された課税仕入れに係る支払対価の額であると認められる。
 したがって、請求人の仕入れの帳簿は、消費税法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》第8項に規定する帳簿に該当せず、同条第7項に規定する課税仕入れ等の税額に係る帳簿及び請求書等を保存しない場合に該当することから、同条第1項の適用はない。
 そうすると、消費税の仕入税額控除の否認により増加する税額は、別表6−2、7−2及び8−2に記載のとおり、平成9年3月課税期間が5,468,100円、平成10年3月課税期間が5,523,800円、平成11年3月課税期間が5,374,200円となりこれらの金額は、本件各課税期間の更正処分の額と同額であるから、これらの処分はいずれも適法である。
ニ 消費税等の重加算税の賦課決定処分
 以上のとおり、本件各課税期間の更正処分は適法であり、これらの処分により増加した納付すべき税額の基礎となった事実は、国税通則法第68条第1項に規定する「その国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたとき」に該当するので、同項の規定に基づいて行った本件各課税期間の重加算税の賦課決定処分は適法である。

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(2)請求人の主張

 原処分は、次のとおり違法であるから、その全部を取消すとの裁決を求める。
イ 法人税の更正処分
(イ)請求人の本件唐木家具の仕入取引は次のとおり行われたものであり、その仕入金額は、帳簿に正しく計上されている。
A 本件唐木家具の発注は、現地法人のR、S及びXへ直接電話又はファックスにより行っており、現地法人との価格交渉は現地渡し価格をベースとしている。
B 出荷、検品、輸入及び代金決済の業務は、Yに委託している。
C 本件唐木家具を積載した船がQ国等を出航する際に、現地法人から「出貨明細書」が、またYからMのインボイスが送られてくる。
D 本件唐木家具を積載した船が○○港に到着するとNのZ社長から請求人の指定場所へ配送する日時等の連絡がある。
E 本件唐木家具の現地渡し価格とYの取扱手数料5%、消費税5%及び運賃、雑費9%の計19%に相当する金額との合計額がMのインボイスの金額である。
F 代金決済は、本件唐木家具が納入された日からおおむね10日以内に行うものとされており、Yがdを訪問した時に現金で支払う。
(ロ)原処分庁は、Nの輸入に係る現地法人4社のインボイスに記載された金額が本件唐木家具の商品純仕入高であり、同商品純仕入高とYへの取扱手数料、消費税等相当額、運賃及び雑費の合計額が請求人の正当な仕入金額である旨主張するが、請求人の本件唐木家具の仕入取引は、上記(イ)のとおりブローカーであるYを通じて行われたものであり、同人から送付されてきたMのインボイスに基づいて仕入金額を計上したものである。また、同仕入金額の正当性を裏付けるものとしてR、S、X及びYから領収証明書を入手している。
(ハ)請求人が当審判所に提出した「Rの国内同業他者あてのインボイス」に記載されている唐木家具の仕入単価は、請求人が仕入れた本件唐木家具の仕入単価と差異がほとんどない。
 ところが、原処分庁が請求人の仕入金額を認定する根拠とした現地法人4社のインボイスの仕入単価は、本件唐木家具の仕入単価の数分の一という極めて異常な価格であり、妥当性を欠いている。
(ニ)また、原処分庁は請求人の計上した仕入金額が過大であり、その結果所得金額が過少に申告されているとしているが、更正処分により増加した所得金額に対応する貸借面が明らかにされていない。
ロ 法人税の重加算税の賦課決定処分
 本件各事業年度の法人税の更正処分は違法であり、その全部を取り消すべきであるから、これに伴い、当該事業年度の重加算税の各賦課決定処分もその全部を取り消すべきである。
ハ 消費税等の更正処分
 法人税の各更正処分は違法であり、その全部を取り消すべきであるから、それに伴い、消費税等の各更正処分も取り消すべきである。
ニ 消費税等の重加算税の賦課決定処分
 消費税等の各更正処分はいずれも違法であり、その全部を取り消すべきであるから、これに伴い、重加算税の各賦課決定処分もその全部を取り消すべきである。

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3 判断

(1)法人税の更正処分

イ 当審判所の調査、審理によれば、次の事実が認められる。
(イ)請求人は、仕入高勘定にK及びL名義の領収証の金額に基づいて仕入金額を計上し、これらの仕入れに係る納品書としてMのインボイスを保存しているが、DUN & BRADSTREET INTERNATIONAL LTD.のレポートによれば、この3社は領収証等に記載されている所在地には存在しない。
 また、同インボイスには、「原産地」、「船積港」、「仕向港」等の記載がなく、通常、輸出入取引に使用されるインボイスとは異なっている。
(ロ)請求人は、原処分に係る調査時に調査担当者に対して、本件唐木家具の仕入取引はブローカーであるYを通じて行われているところ、同人から送付されてくるMのインボイスに基づいた仕入金額をYへ支払っており、その金額は本件唐木家具の現地渡し価格とYの取扱手数料、消費税等相当額、運賃及び雑費の合計額であり、代金はdのホテルのロビー等においてYへ現金で支払った旨申述している。また、○○ホテルの宿泊者名簿によれば、本件各事業年度中にY及びe(R)なる人物が同ホテルに滞在したことが認められる。
(ハ)Nの帳簿には、Mからの本件唐木家具の輸入取引に係る収益として輸入取扱料が計上されており、また本件唐木家具の輸入に係る消費税等の金額は立替金として経理されているが、請求人名義での取引はない。
(ニ)現地法人4社は、DUN & BRADSTREET INTERNATIONAL LTD.のレポートによれば、いずれもインボイスに記載されている所在地に存在する。
(ホ)請求人が異議調査時に異議審理庁に提示したR、S、X及びY発行の領収証明書には年月日、月別の金額、請求人及び発行者の名称が記載されているのみであり、注文書、納品書控、請求書控等、具体的な取引に関する書類の提示はない。
ロ 仕入金額の適否
 本件唐木家具の仕入品目及び数量については、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、仕入金額が過大であるか否かについて争いがあるので、以下審理する。
(イ)原処分庁は、〔1〕請求人が本件唐木家具の仕入れに関する資料として保存している領収証の発行者であるK及びL並びにインボイスの発行者であるMは存在せず、また、〔2〕請求人が異議審理庁へ提示したR、S、X及びYの領収証明書は、それに対応する取引に関する書類がないことから、仕入金額の証明にならないとした上で、本件唐木家具の輸入代行業者であるNを名あて人とする現地法人4社のインボイスの金額とYへの手数料等として認定した金額との合計額を正当な仕入金額であると認定した。
 確かに、請求人の代表者は、R、S及びXへ電話又はファックスで発注したと答述しているが、通常発注記録は何らかの方法で保存するものであるところその保存がないこと、請求人が保存しているインボイスは、上記イの(イ)のとおり「M」という所在不明の法人の名称を使用しており、領収証の発行者の名称とも異なることを認識しつつ、これらをYから送付され、又は手渡された証拠書類であるとして疑いもなく保存していたことは理解しがたいこと及び代金の決済の状況も定かでないことも併せ考えると、請求人が帳簿に計上した本件唐木家具の仕入金額は疑問を容れ得ることを否定できない。
(ロ)しかしながら、仔細に検討すると、仕入金額が過大であるとした原処分は、相当であるとは言えない。
A すなわち、原処分庁は、現地法人4社がNあてに発行したインボイスの金額を請求人の本件唐木家具の商品純仕入高と認定しているが、同インボイスの金額が請求人の本件唐木家具の商品純仕入高であるというためには、少なくとも請求人がNに輸入代行を委託していることが前提であるところ、この点を証明し得る証拠はない。
 それだけでなく、原処分庁がNを調査したところによると、同社は本件唐木家具の取引に関して、上記イの(ハ)のとおりMから収受した輸入取扱料を収入に計上していることが認められる。また同社の代表者は、Mの担当者の中に「Yなる人物」が存在する旨申述している。
 そうすると、この「Yなる人物」と請求人が名刺を保管しているYとは同一人物であり、YはMの名義を使用してNと取引をしているものと推定される。このことは、請求人が本件唐木家具をYを通じて仕入れ、その証拠書類としてMのインボイスを保管していると主張していることとも符合することから、本件唐木家具は、YがNに委託して輸入したものであり、請求人はYから仕入れたものであると推認せざるを得ないのである。
 したがって、現地法人4社がNあてに発行したインボイスの金額はYの仕入金額であると認めざるを得ない。また、他に同インボイスの金額を請求人の本件唐木家具の仕入金額であると認めるに足りる証拠もない。
B 他方、Q国から唐木家具を輸入している国内の同業3社(以下「同業3社」という。)を調査した結果は次のとおりであり、請求人が仕入金額に計上した本件唐木家具の価格は妥当性がないとは言い切れないものである。
(A)同業3社の代表者等は、当審判所に対し、〔1〕商品の発注は、現地の製造業者へ電話ないしファックスにより行う、〔2〕Rとの取引は直取引である、〔3〕通常の価格より、特に低価格で唐木家具を仕入れるには、現地に合弁会社を設立して同社から直接仕入れるか、又は大量に一括発注しなければ困難である、〔4〕Yは、dの同業者又はRやXの代理人をしていたと聞いたことがある旨答述している。
(B)同業3社が保存する唐木家具の輸入インボイスに記載されている類似品目の仕入価格の水準は、Mのインボイスに記載されている本件唐木家具の仕入価格に近いものである。
 そうすると、本件唐木家具はYを通じて仕入れたものであるとの請求人の答述も不自然ではなく、また、本件唐木家具の仕入価格は同業3社の仕入価格と比較しても異常性は認められない。
C のみならず、原処分庁は、Mのインボイスの金額は正当なものではないとしつつ、他方で、同インボイスの金額に基づいて算出したYへの取扱手数料、消費税等相当額、運賃及び雑費を内容とする「諸費用」を仕入金額に含めるとしており、この点についても矛盾があるといわざるを得ない。
(ハ)そうしてみると、請求人の仕入金額が過大であるとした更正処分は違法であり取り消されるべきである。
ハ 所得金額
(イ)平成9年3月期及び平成10年3月期
 上記ロのとおり、仕入金額は過大であるとは認められないので、仕入過大であるとした金額は更正後の所得金額から減算されることになる。また、平成9年3月期の更正処分において未払消費税額として減算した5,468,100円及び平成10年3月期において同様に減算した5,523,800円は、請求人が消費税等の経理処理について税込経理方式を採用しているところ、消費税等の更正処分の日である平成12年4月10日を含む事業年度において損金の額に算入されることになるから、それぞれ平成9年3月期又は平成10年3月期の更正後の所得金額に加算することになる。
 そうすると、別表9の「審判所認定額」欄に記載のとおり、平成9年3月期の所得金額は○○○円、平成10年3月期は○○○円となり、それぞれ請求人の確定申告書に記載されている金額と同額となる。
(ロ)平成11年3月期
 上記ロのとおり、仕入金額は過大であるとは認められないので、仕入過大であるとした金額は更正後の所得金額から減算することになる。また、後記(3)のとおり、請求人がK及びL名義で計上した仕入金額に係る仮払消費税相当額は、請求人が消費税等の経理処理について税抜経理方式を採用しているところ、損金の額に算入するのが相当であるので、所得金額から減算される未払消費税相当額の仕入加算額は、別表9の「審判所認定額」欄に記載のとおり5,136,200円となる。さらに別表8―4に記載のとおり、消費税等の増加税額と仮払消費税額の端数処理により生ずる雑損の額9円が減算される。
 そうすると、平成11年3月期は別表9の「審判所認定額」欄に記載のとおり○○○円となり、請求人の確定申告書に記載されている金額を上回っている。
 以上のことから、本件各事業年度の法人税の各更正処分はその全部を取り消す。
 なお、請求人は原処分庁が資産面の立証をしていないから違法である旨主張する。
 しかしながら、所得金額の計算について法人税法第22条《各事業年度の所得の金額の計算》第1項は、「内国法人の各事業年度の所得の金額は、当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする」と規定しており、更正処分に係る所得金額の計算においても資産面での立証が要求されているとは解されないことから、この点に関する請求人の主張には理由がない。

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(2)法人税の重加算税の賦課決定処分

 上記(1)のとおり、本件各事業年度の法人税の各更正処分はその全部を取り消されるから、これに伴い本件各事業年度の重加算税の各賦課決定処分もその全部を取り消す。

(3)消費税等の更正処分

イ 課税仕入れに係る支払対価の額
 本件唐木家具の仕入金額は、所在不明の法人の名称を使用したインボイス及び領収証に基づき計上されており、請求人の保存する帳簿は、消費税法第30条第8項第1号イの「課税仕入れの相手方又は名称」の記載がない帳簿であり、また、請求人の保存するインボイス等は同条第9項第1号イの「書類の作成者の氏名又は名称」のない証拠書類であると認められ、同条第7項に規定する帳簿、請求書等の保存がない課税仕入れであるので、同条第1項の規定による仕入税額控除をすることは認められない。
 このため、仕入税額控除の対象にならない金額は別表6−2、7−2及び8−4に記載のとおり、平成9年3月課税期間が187,737,000円、平成10年3月課税期間が116,000,000円、平成11年3月課税期間が107,860,000円となる。
 なお、請求人が平成11年3月31日付で仕入金額(税込金額)を5,000,000円減算していた事実が認められたので、平成11年3月課税期間の仕入高計上額の原処分庁主張額112,860,000円から同金額を控除したため、仕入税額控除の対象にならない金額が107,860,000円となる。
ロ 納付すべき合計金額
 上記イのとおり、仕入税額控除の対象とならない金額があるため、平成9年3月課税期間の納付すべき消費税額は、別表10の「審判所認定額」欄に記載のとおり6,473,100円となる。また、納付すべき合計税額は、別表10の「審判所認定額」欄に記載のとおり、平成10年3月課税期間が7,113,300円、平成11年3月課税期間が6,624,200円となる。
 そうすると、平成9年3月課税期間の納付すべき消費税額及び平成10年3月課税期間の納付すべき合計税額は、更正処分の金額と同額となることから、これらの処分はいずれも適法である。
 しかしながら、平成11年3月課税期間の納付すべき合計税額は、更正処分の金額を下回ることから、その一部を取り消す。

(4)消費税等の重加算税の賦課決定処分

イ 国税通則法第68条第1項は、同法第65条《過少申告加算税》第1項の規定に該当する場合において、「納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたとき」は、当該納税者に対し、過少申告加算税に代え重加算税を課する旨規定している。
 そして、「事実を仮装し」とは、架空仕入れ、他人名義の利用等による事実行為、帳簿、請求書等の記載が、あたかもそれが事実であるかのごとく装い、故意に事実をわい曲することをいうものと解されている。
ロ これを本件についてみると、請求人は、本件唐木家具の仕入れについて帳簿等への記載に当たり、仕入先の名称をK、Lに仮装していたものであるがその仕入先の名称を仮装したところにより課税仕入れの支払対価の額を過大に計上していたものではないから、これは税額等の計算の基礎となる事実を仮装したことには当たらないので、国税通則法第68条第1項に規定する重加算税の賦課決定要件を満たさない。
ハ しかしながら、平成9年3月課税期間及び平成10年3月課税期間の各更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実並びに平成11年3月課税期間の本件課税期間の本件審査請求により一部取り消される更正処分により納付すべきこととなった税額の計算の基礎となった事実が、更正前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないので、重加算税の各賦課決定処分のうち、過少申告加算税相当額を超える部分の金額について取り消す。

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(5)その他

 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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