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(平14.6.13裁決、裁決事例集No.63 309頁)
《裁決書(抄)》
1 事実
(1)事案の概要
本件は、建築工事業を営む同族会社である審査請求人(以下「請求人」という。)が、その取締役会長に支払った報酬の額及び退職給与の額が過大か否か並びに同人に支払われた見舞金が同人に対する賞与等に該当するか否かを主な争点とする事案である。
(2)審査請求に至る経緯
平成9年8月1日から平成10年7月31日まで、平成10年8月1日から平成11年7月31日まで及び平成11年8月1日から平成12年7月31日までの各事業年度(以下、順次「平成10年7月期」、「平成11年7月期」及び「平成12年7月期」といい、これらを併せて「本件各事業年度」という。)の法人税等について、審査請求に至る経緯は別表1及び別表2のとおりである。
(3)関係法令等
法人税法第34条《過大な役員報酬等の損金不算入》第1項は、役員に対して支給した報酬の額のうち不相当に高額な部分の金額(以下「不相当に高額な部分の金額」という。)は、損金の額に算入しない旨規定している。また、同法施行令第69条《過大な役員報酬の額》は、不相当に高額な部分の金額として、役員の職務の内容、その法人の収益及びその使用人に対する給与の支給の状況、その法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する報酬の支給の状況に照らして、相当な金額を超える部分の金額の合計額と、定款等で支給限度額が定められている場合において役員に対して支給した報酬の額の合計額がその支給限度額を超える場合におけるその超える部分の金額との、いずれか多い金額である旨規定している。
(4)基礎事実
以下の事実は、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査によってもその事実が認められる。
イ 請求人は、法人税法第2条《定義》第10号に規定する同族会社であり、出資者各人の出資金額及び出資割合等は別表3のとおりである。
ロ 請求人の取締役会長であったH(以下「H」という。)は、請求人が昭和45年7月13日に設立された際の発起人である。
ハ Hは、請求人の設立と同時に代表取締役社長に、平成2年9月17日に代表取締役会長に、平成5年7月20日に取締役相談役に就任し、平成7年9月14日から死亡した平成12年4月21日までは取締役会長であった。
2 主張
(1)原処分庁の主張
原処分は、次のとおり適法であるから、審査請求を棄却するとの裁決を求める。
イ 更正処分について
(イ)役員報酬
請求人は、本件各事業年度において、Hに対し役員報酬として、平成10年7月期については12,000,000円、平成11年7月期については12,000,000円及び平成12年7月期については9,000,000円(以下「本件各報酬額」という。)を支給し、その全額を損金の額に算入しているが、次の理由から、Hの職務に対する対価として相当であると認められる金額は、平成10年7月期及び平成11年7月期については、それぞれ6,000,000円並びに平成12年7月期については4,500,000円であり、当該金額を超える部分の金額は法人税法第34条第1項に規定する不相当に高額な部分の金額に当たり、損金の額に算入できない。
A Hは、代表取締役辞任後は病気がちであり、特に、平成9年4月以降は長期入院が継続して通常の勤務ができなかったと認められること及び請求人は平成12年7月期の確定申告書に添付している「役員報酬手当等及び人件費の内訳書」の常勤・非常勤の別の表示欄においてHは非常勤である旨の表示を行っていることからHは非常勤取締役と認められる。
なお、常勤、非常勤の区別は、毎日一定の時間勤務するかどうか、又は、本務として専任しているかどうかといった勤務形態に着目した分類であり、役員の社内における地位等を勘案して判断するものではない。
また、取締役の会社への貢献度は、その持株割合によって左右されるものではない。
B Hの役員報酬の適正額は、次の理由から月額500,000円と認められる。
(A)Hは、平成5年7月に代表取締役を辞任し、分掌変更により取締役となり、その際、退職金60,000,000円を受領し、役員報酬の月額が1,000,000円から500,000円になったこと。
(B)Hは、代表取締役辞任後は病気がちであり、特に平成9年4月以降は長期入院や退院の繰り返しが続くなど、常勤役員として会社業務に従事することがほとんど困難であったと認められるところ、入院療養中の平成9年8月から同人の報酬月額を倍増させるべき特段の事情は見当たらないこと。
(C)請求人の所在地を管轄するX税務署並びに近隣署のJ税務署、K税務署及びL税務署の管内に本店が所在する法人で、請求人と同種、同規模の事業を営む法人(以下「類似法人」という。)の非常勤取締役に支払われた役員報酬の状況をそれぞれ比較検討したところ、Hの役員報酬の適正額は月額500,000円であると認められること。
C Hが請求人の借入金の連帯保証を行っていたとしても、連帯保証を行っている対価は役員の職務執行の対価ではない。
(ロ)役員賞与
請求人は、平成10年7月期において、Hに対して支払った見舞金3,995,000円(以下「本件見舞金A」という。)を福利厚生費の科目で全額損金の額に算入しているが、次の理由から、福利厚生費として相当であると認められる金額は、入院1回につき30,000円となり、当該金額を超える部分の金額は法人税法第35条《役員賞与等の損金不算入》に規定する役員賞与に該当し、損金の額に算入できない。
A 役員に対して社内規定に基づいて支払われた見舞金の全額が、直ちに福利厚生費として損金の額に算入されるものではなく、損金の額に算入できるのは、社会通念上相当であると認められる金額部分である。
社会通念上相当である金額について、病気等の入院に係る見舞金等の福利厚生費の規定が存するX税務署管内の法人の役員に対する見舞金等の支給状況を検討したところ、入院一回当たり30,000円が社会通念上相当である金額と認められることから、これを超える金額をHに対する賞与としたものである。
B 保険契約上の受取人である請求人において、保険事故の発生により受領した保険金が請求人に帰属するのは当然のことであるのに、社内規定を設け、社内規定の内容によって、保険金の一部が請求人を経ずに直ちに被保険者に帰属することになるという請求人の主張は不当であり、請求人が入院給付金を受領して益金の額に算入することと病気等をした役員等に見舞金を支給し損金の額に算入することとは全く別のことであり、個々に判断されるべきものである。
C 法人税基本通達9−3−6の2《障害特約等に係る保険料》は、「全従業員を被保険者とする障害特約等の特約を付した生命保険に加入し、その保険料を支払った場合には、たとえ、その特約に係る給付金の受取人を従業員(特定の従業員のみを除く。)としている場合にも、当該保険料は給与とはせず、福利厚生費に計上できる。」趣旨の定めである。
この点について、請求人は、請求人が支払う保険料が給与に該当するのか福利厚生費に該当するのかという問題と、受領した保険金をどのように支給するのかという問題とを混同している。
(ハ)役員退職給与
A 請求人は、平成12年7月期において、Hに対し退職給与として、35,400,000円(以下「本件退職給与額」という。)を支給し、その全額を損金の額に算入しているが、次の理由から、Hに対する退職給与として相当であると認められる金額は、17,700,000円となり、当該金額を超える部分の金額は法人税法第36条《過大な役員退職給与の損金不算入》に規定する不相当に高額な部分の金額に当たり、損金の額に算入できない。
(A)原処分は、Hの役員報酬の適正額である月額500,000円を基に請求人の役員退職功労金規定に基づき、役員退職金、功労金及び特別功労金の適正額を算出したものである。
(B)原処分は、Hの役員報酬の適正額である月額500,000円を基に、裁判例でも広く認められた最終月額報酬を基礎とする方法により、役員退職金、功労金及び特別功労金の適正額を算出したものである。
B また、平成12年5月31日に請求人がHに支払った見舞金1,190,980円(以下「本件見舞金B」という。)は、同人の死亡後に支払われていることから、見舞金としての性質を有するものではなく、その全額が、同人に対する退職給与に含まれる支払であると認められる。
以上のとおり、本件各事業年度の各更正処分はいずれも適法である。
ロ 納税告知処分について
上記(ロ)で述べたとおり、Hに支払った本件見舞金Aのうち、福利厚生費として相当であると認められる金額を超える部分の金額は、同人に対する給与に該当することから、源泉徴収に係る所得税の各納税告知処分はいずれも適法である。
ハ 賦課決定処分について
(イ)過少申告加算税の賦課決定処分
上記イのとおり、本件各更正処分はいずれも適法であり、また、この税額の基礎となった事実については、国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、本件各事業年度の過少申告加算税の各賦課決定処分はいずれも適法である。
(ロ)不納付加算税の賦課決定処分
上記ロのとおり、源泉徴収に係る所得税の各納税告知処分はいずれも適法であり、また、請求人が法定納期限までに源泉所得税を納付しなかったことについて、国税通則法第67条《不納付加算税》第1項に規定する正当な理由があるとは認められないから、不納付加算税の各賦課決定処分はいずれも適法である。
(2)請求人の主張
原処分は、次のとおり違法であるから、その全部の取消しを求める。
イ 更正処分について
(イ)役員報酬
本件各報酬額は、次に述べるとおり、Hが取締役会長として平成9年9月ないし平成12年4月までの会社業務に従事した度合い及びその業績並びに代表取締役社長及び他の取締役の報酬額等に照らし、総合的に判断して適正であり、不相当に高額であるとは言えない。
したがって、本件各報酬額を過大とした本件更正処分は取り消されるべきである。
A Hは、請求人の創業社長及び創業会長であり、請求人の発行済株式総数の54%を自己及び配偶者の親族で保有する実質的な支配株主であることから、請求人の代表取締役社長であるM(以下「M」という。)は、会長であるHの意志に反するような経営を行うことはできず、また、Mは、経営者としての経歴も長くなく、年齢も若かったため、Hから会社経営全般に対して常にその指揮を受けていたなど、Hは、死亡直前まで絶対的な支配権を持っていた。
B Hは、平成9年9月ないし平成12年4月までにおいて、経営者として、営業、人事労務、資金調達のすべての分野において全般的に関与し、会社経営に関して自ら企画立案をし、又は企画立案を指示し、会社業務の細部まで報告させ、それをチェックするなど、平成5年7月の入院前と変わることなく請求人の経営全般に従事していた。
C 平成9年9月の株主総会において決議された役員報酬の増額については、ここ10年間、極めて優良な業績を安定して上げているなどの請求人の業績に対し、役員報酬の額が相対的に低額になっていることから、取締役の業績に応じて見直したものである。
D 請求人は直前10年間、平成10年7月期を除くすべての期において総額8,850万円もの利益処分による賞与を支給し、また、毎期、配当も行っており、役員報酬を多く支給して節税を図るなどという意志はない。
E 請求人においては、株主総会においても社外株主及び従業員株主によって社内けん制が有効に作用しており、Hだけに過大な役員報酬を支給できる状況にはない。
F Hは、毎日一定時間会社にいたわけではないが、取締役会長としての勤務状況は常勤と何ら変わることのない状況であり、比較するのであれば類似法人の常勤取締役の報酬額と比較すべきである。
G Hは、請求人の借入金に対して連帯保証を行っているが保証料等は一切受け取っていない。当該保証料相当額は役員報酬に反映されてしかるべきであるから、当該保証料相当額の年間360万円程度は保証をしていない役員に比して報酬額が高くなるのは当然であることからも、本件報酬額が過大であるとは言えない。
(ロ)役員賞与
本件見舞金Aは、次の理由からその全額が福利厚生費に該当する。
A 請求人は、会社規定に基づき保険会社から受領した入院給付金の半額をHに対する見舞金として支払い、当該金額を福利厚生費として損金の額に算入しているが、受領した保険金の半額を本人受取りとする当該会社規定の内容は、判例からみても十分合理的である。
また、Hに付された保障の内容は、他の役員及び従業員と比べて不相当に高額なものではない。
B 保険の加入に関する取締役会決議及び弔慰金・見舞金規定については、その制定の際に全役員及び全従業員に対して説明を行い、新たに入社する者については規定を交付して、その周知徹底を図っており、すべての役員及びすべての従業員が当該規定の存在及び当該規定により保障されることを知っている。
C 請求人がHに支払った見舞金は、会社規定により当然個人が受け取るべきものを支出しただけであり、臨時の給与として支給したものではなく、いわば会社を経由した保険会社からの保険金の支払というべきものである。
D 保険契約が、当初、請求人が望んでいたごとく、特約部分についてのみ被保険者の受取りとする形態であれば、所得税法第9条《非課税所得》第1項第16号、同法施行令第30条《非課税とされる保険金、損害賠償金等》第1号及び法人税基本通達9−3−6の2の規定から、支払った保険料は給与以外の損金となり、受け取った特約部分に係る保険金は被保険者において非課税とされるのに対し、原処分のごとく、法人、個人共に課税されることとなれば、同じ原因によって受け取った金額にあまりにも課税上の違いが大きく、このような更正処分は課税の公平を目的とする法人税法及び所得税法の理念に大きく反している。
(ハ)役員退職給与
A 本件退職給与額は、Hに対する最終月額報酬の額である1,000,000円を基礎として算出しているが、上記(イ)で述べたとおり、当該最終月額報酬の額は不相当に高額であるとは言えないことから、本件退職給与額も不相当に高額であるとは言えない。
B 原処分庁は、役員退職給与の実質的審理を行わず、また、類似法人の役員退職給与の額との比較も行っておらず、本件退職給与額を過大とする根拠はない。
C 本件見舞金Bは、上記(ロ)で述べた理由と同様の理由から福利厚生費に該当する。
以上のとおり、本件各事業年度の各更正処分はいずれも違法であり、取り消すべきである。
ロ 納税告知処分について
上記(ロ)で述べたとおり、本件見舞金Aは給与に該当するものではなく違法であるから、源泉徴収に係る所得税の各納税告知処分は取り消されるべきである。
ハ 賦課決定処分について
(イ)過少申告加算税の賦課決定処分
上記イで述べたとおり、本件各更正処分は取り消されるべきものであり、これに伴い本件各事業年度の過少申告加算税の各賦課決定処分も取り消されるべきである。
(ロ)不納付加算税の賦課決定処分
上記ロで述べたとおり、源泉徴収に係る所得税の各納税告知処分は取り消されるべきものであり、これに伴い不納付加算税の各賦課決定処分も取り消されるべきである。
3 判断
Hに対する本件各報酬額及び本件退職給与額が過大か否か並びに本件見舞金A及び本件見舞金Bが同人に対する賞与等に該当するか否かに争いがあるので、以下審理する。
(1)更正処分について
イ 認定事実
原処分関係資料、請求人提出資料及び当審判所の調査によると次の事実が認められる。
(イ)請求人の株主総会において、本件各事業年度の取締役全員に対する報酬限度額は、いずれの事業年度も50,000,000円とする旨、監査役全員に対する報酬限度額はいずれの事業年度も5,000,000円とする旨及び各取締役の報酬の配分方法は取締役会に一任する旨決議されている。
(ロ)請求人の平成9年9月18日開催の取締役会において、本件各事業年度のHに対する報酬の配分額は、月額1,000,000円とする旨決議されており、平成9年8月1日から実行されている。
(ハ)請求人の平成3年8月1日から平成4年7月31日まで、平成4年8月1日から平成5年7月31日まで、平成5年8月1日から平成6年7月31日まで、平成6年8月1日から平成7年7月31日まで、平成7年8月1日から平成8年7月31日まで及び平成8年8月1日から平成9年7月31日までの各事業年度(以下、順次「平成4年7月期」、「平成5年7月期」、「平成6年7月期」、「平成7年7月期」、「平成8年7月期」及び「平成9年7月期」という。)並びに本件各事業年度の売上額、各役員の報酬額等は別表4のとおりであり、これを基にした請求人の収益の状況、報酬等の支払状況等は、次のとおりである。
A 平成4年7月期、平成5年7月期、平成6年7月期、平成7年7月期、平成8年7月期、平成9年7月期、平成10年7月期、平成11年7月期及び平成12年7月期の各事業年度(以下、これらを「平成3年8月1日から平成12年7月31日までの各事業年度」という。)の売上額の平均は1,059,683,861円であり、税引前利益額の平均は64,651,873円である。
B 平成10年7月期に増額された役員報酬の額は、H及びM共に月額500,000円であり、これにより両名の役員報酬の年額はHが12,000,000円、Mが21,550,000円となっている。
また、平成10年7月期とHが長期入院する以前の平成5年7月期の各役員の報酬額を比較すると、Hは100パーセント、Mは199.5パーセント、Nは120パーセント、Pは125パーセントとなっている。
C 平成10年7月期の使用人の人数は65名で、使用人一人当たりの給与の額は3,027,604円、平成5年7月期の使用人の人数は46名で、使用人一人当たりの給与の額は2,399,235円であり、平成10年7月期の使用人一人当たりの給与の額は、平成5年7月期の使用人一人当たりの給与の額の126パーセントとなっている。
D 利益処分による配当は、平成3年8月1日から平成12年7月31日までの各事業年度において、いずれの事業年度とも行われている。
E 利益処分による賞与は、平成3年8月1日から平成12年7月31日までの各事業年度において、平成10年7月期を除くすべての事業年度において支給されている。
(ニ)Hが、医療法人社団Q病院(以下「Q病院」という。)等に入退院等した状況は、別表5のとおりである。
(ホ)Q病院に備え付けられている平成9年8月分及び平成9年9月分の「外出・外泊届け」には、要旨別表6のとおり記載されている。
(ヘ)Hは、請求人が開催した、平成5年9月15日、平成6年9月17日、平成7年9月14日、平成8年9月18日、平成9年9月17日及び平成10年9月24日の定時株主総会の各議事録並びに平成5年7月27日及び平成10年11月18日の臨時株主総会の各議事録並びに平成5年7月8日、平成5年7月27日、平成5年8月28日、平成5年9月15日、平成6年7月15日、平成6年9月17日、平成7年8月31日、平成7年9月14日、平成8年9月2日、平成8年9月18日、平成9年8月30日、平成9年9月18日、平成10年9月1日、平成10年9月24日、平成10年11月3日及び平成11年9月2日の取締役会の各議事録にそれぞれ出席取締役として押印している。
(ト)Hは、平成7年11月15日付の株式会社R銀行との「金銭消費貸借契約証書」並びに平成8年1月31日付及び平成8年11月25日付のS信用金庫との「限定保証約定書」にそれぞれ署名押印している。
(チ)Hは、平成10年12月26日に行われた請求人の忘年会に出席し、挨拶をしている。
(リ)Hは、平成11年8月10日に業務用の名刺100枚を発注している。
(ヌ)請求人の弔慰金・見舞金規定には、全役員及び全従業員に関する死亡、入院障害の弔慰金及び見舞金に関する事項が規定されており、役員に関しては保険給付金の受取りは一旦会社が行い、その半額を死亡、入院障害の弔慰金及び見舞金として被保険者若しくはその家族に給付する旨規定されている。
(ル)請求人は、T生命保険相互会社との間で、契約者及び保険受取人を請求人、被保険者をHとする定期保険契約を締結しており、その契約内容は別表7のとおりである。
なお、請求人は、H以外の全役員及び全従業員を対象に特約付の定期保険に加入している。
(ヲ)請求人は、被保険者Hの保険事故により、T生命保険相互会社から入院給付金等として、平成9年8月28日に、平成6年5月12日から平成6年10月8日まで、平成7年1月9日から平成7年2月21日まで、平成7年2月22日から平成7年4月8日まで、平成8年1月11日から平成8年2月29日まで及び平成9年4月23日から平成9年5月13日までの入院回数5回分としての3,540,000円、平成9年10月27日に、平成9年4月16日から平成9年4月22日まで及び平成9年5月15日から平成9年10月1日までの入院回数2回分としての2,920,000円、平成10年4月28日に、平成9年10月20日から平成9年12月30日まで及び平成10年1月5日から平成10年3月30日までの入院回数2回分としての1,530,000円、また、平成12年5月26日に、平成10年10月1日から平成10年11月24日まで、平成11年1月20日から平成11年7月2日まで及び平成11年8月18日から平成12年4月21日までの入院回数3回分として2,381,960円を受領し、それぞれ雑収入として経理処理している。
(ワ)請求人は、Hに見舞金として、平成9年8月29日に1,770,000円、平成9年10月29日に1,460,000円及び平成10年5月1日に765,000円を同人に支払い、また、同人の妻であるUに対して平成12年5月31日にHに対する見舞金として1,190,980円を支払っており、それぞれ福利厚生費として損金の額に算入している。
(カ)請求人は、請求人の役員退職功労金支給規定に基づき、平成12年7月17日にHに対する退職慰労金として18,900,000円、功労金として10,500,000円及び弔慰金として6,000,000円をUに支払っており、役員退職金及び弔慰金として損金の額に算入している。
(ヨ)請求人は、Q病院でHの付添婦をしていたV、請求人の営業部長であるW及びQ病院の院長でありHの主治医であったYの申述書を当審判所に提出しており、それぞれの申述書には、要旨、次のとおり記載されている。
A Vの申述書
私は、平成10年8月、平成10年10月及び平成11年10月から平成12年4月までHの付添婦をしていた。
私の仕事は、来客への接待、食料品等の買い物や身の回りのお世話であり、平成12年ごろからは、これらのほかリハビリのお世話や食事の介助等も行った。
Hは、平成10年ごろはよく外出していた。同人が外出している以外の日は、毎日のようにM社長、○○部長、Z部長、○○専務、○○課長らが病室に面会に来ていた。
Hは、M社長らと経営状態、人事の問題、社会情勢等について話をしていた。会社のことで、報告、相談を受け、それに対して指示を出していた。内容によっては、私は退室していたのですべてのことまでは分からない。
また、Hの様子は、治療以外の時は、普通の様子で穏やかなものであった。
B Wの申述書
Hは、平成7年9月から平成11年12月ごろまでよく会社に来ていた。特に、平成7年から平成9年ごろにかけては、頻繁に会社に来ていた。同人が会社に来たときは営業上の報告をし、指示を受けていた。
また、病室を訪ねて報告をしたこともある。私以外にもZ部長がしばしば病室を訪ねており、その他の課長等も数度は訪ねていると思う。
C Yの申述書
入院中のHの意識レベル及び判断能力については、手術前後、一過性の意識障害を認めたが、退院時にはほぼ回復していた。その後、病いの進展による呼吸不全を来す平成12年4月までの間は、特に変化は認めていない。
また、身体能力については、病いによる右麻痺は軽度で退院後歩行に支障はなかったが、平成12年病いの進行時から疼痛、神経圧迫等による歩行困難が進行した。
なお、平成7年9月からの入院は点滴及び検査のみの目的であったため、点滴以外の時間の運動制限は不要であった。もちろん、病いの進行時点では運動制限を余儀なくした。
Hの外出については、おおむね本人の意思に任せていた。病室は個室であり、Hの話では、各社の役員が連日仕事の報告、相談に訪れているとのことであった。
ロ 役員報酬
(イ)原処分庁は、Hは長期入院が継続し通常の勤務ができなかったことから、同人は非常勤の取締役である旨主張する。
しかしながら、上記1の(3)の関係法令等及び(4)の基礎事実並びに上記イの認定事実を基にHの勤務状況について判断すると、次のとおりである。
なお、上記イの(ヨ)の各申述書についてその適否を検討したところ、当該各申述書に記載されている内容は、当審判所が調査したHの入院状況及び治療状況に照らし信ぴょう性が認められ、また、当該各申述書を不合理ならしめる証拠もない。
Hは、平成5年6月28日にQ病院に入院して以来、平成12年4月21日に死亡するまでの間、入退院を繰り返しているが、Hに対する報酬が増額された平成9年8月1日以後は、入院時においても、毎日ではないものの請求人の所在地に出向いており、その際、請求人の職務に従事しているほか、請求人の業務に関連して病院から外出しており、外出していない時も病室で請求人の役員等から報告を受け指示をしていた事実が認められ、また、入院の状況が免疫療法及び物理療法であったことを考え合わせると、Hは、かなりの頻度で請求人の職務に従事していたと認めるのが相当である。
さらに、Hが正規の手続により非常勤の取締役となった事実も認められない。そうすると、Hは請求人の常勤の取締役と認められ、この点に関する原処分庁の主張には理由がない。
(ロ)また、原処分庁は、請求人がその確定申告書の添付書類においてHは非常勤であるとの表示を行っている旨主張する。
しかしながら、役員が非常勤役員となるか常勤役員となるかの判断をするに当たっては、当該役員の勤務状況の実態に基づいて判断すべきであり、確定申告書の添附書類の表示だけを基に当該役員が非常勤役員であるとするのは相当でない。
したがって、この点に関する原処分庁の主張には理由がない。
(ハ)原処分庁は、Hの職務に対する対価として相当と認められる金額は、平成10年7月期及び平成11年7月期については、それぞれ6,000,000円並びに平成12年7月期については4,500,000円と認められることから、当該金額を超える部分の金額は不相当に高額な部分の金額に当たる旨主張する。
そこで、本件各報酬額の適否について判断すると次のとおりである。
A Hの職務の状況
Hは、上記(イ)のとおり請求人の常勤の取締役と認められるところ、上記1の(4)の基礎事実及び上記イの認定事実から判断すると、その職務の内容は、請求人の営業、人事、資金調達等、請求人の業務全般に及んでおり、実質的には同人が病気治療を始める以前とほぼ同様で、請求人の経営に直接関与していたと認められ、かつ、その影響力は代表取締役に匹敵するほどであったと推認される。
B 請求人の収益の状況
請求人の収益の状況は、上記イの(ハ)のAの認定事実のとおり、売上額の平均は1,059,683,861円及び税引前利益額の平均は64,651,873円であり、平成10年7月期を除きほぼ平均しており、また、すべての事業年度において利益処分による配当を行い、さらに、平成10年7月期を除くいずれの事業年度においても利益処分による賞与を支給しているなど、良好な経営状態であったと認められる。
C 請求人の役員報酬及び使用人に対する給与の支給の状況
(A)本件各事業年度のHとMの役員報酬の月額は、Hが1,000,000円、Mが1,800,000円であり、代表権を持つMの報酬額は、代表権を持たないHの報酬額の1.8倍となっている。
(B)平成10年7月期と平成5年7月期の各役員に対する報酬及び使用人に対する給与の支給状況は上記イの(ハ)のB及びCの認定事実のとおりであり、平成10年7月期と平成5年7月期における役員報酬の額及び使用人に対する給与の額を比較すると、役員報酬の額が平均で146パーセント、使用人1人当たりの給与の額が126パーセントとなる。
D 類似法人の役員報酬の支給の状況
当審判所において、原処分関係資料を検討したところ、原処分庁は、類似法人の役員に対して支払われた報酬の額との比較検討において、類似法人の選定に当たり、〔1〕請求人の所在地を管轄するX税務署並びに近隣署のJ税務署、K税務署及びL税務署の管内に本店が所在する法人であること、〔2〕建設業を営んでいる法人であること、〔3〕売上金額が請求人の売上金額の0.5倍以上2倍以内の法人であること、〔4〕非常勤役員に対する報酬が支払われている法人であることを抽出基準としていることが認められるところ、〔1〕、〔2〕及び〔3〕の抽出基準については、これを不相当とする理由は特に認められないものの、〔4〕の抽出基準については上記(イ)のとおりHが常勤の役員と認められることから、原処分庁の採用した類似法人は、採用することができない。
そこで、当審判所において、請求人の所在地を管轄するX税務署管内に本店が所在する法人で、建設業を営んでおり、かつ、売上金額が請求人の売上金額の0.5倍以上2倍以内である法人(以下「改定類似法人」という。)のうち常勤の取締役会長に対して支払っている3社についてその報酬の支給状況を検討したところ、別表8のとおり、その平均報酬額は、平成9年4月以降開始事業年度が12,026,666円、平成10年4月以降開始事業年度が11,771,000円及び平成11年4月以降開始事業年度が11,760,000円となっている。
E 本件各報酬額は、上記イの(イ)及び(ロ)の認定事実のとおり、請求人の株主総会及び取締役会において決議されたHに対する報酬限度額の範囲内である。
F 以上のことから、本件各報酬額は、Hの職務の状況、請求人の収益、請求人の各役員に対する報酬の支給状況及び請求人の使用人に対する給与の支給状況並びに改定類似法人の役員に対する報酬の支給状況等に照らし判断すると、不相当に高額な部分の金額は認められない。
したがって、この点に関する原処分庁の主張には理由がない。
(ニ)なお、請求人は、Hが請求人の借入金に対する連帯保証に係る保証料を受け取っていないことから、保証料相当額は役員報酬に反映されてしかるべきであり、このことからも、本件報酬額が過大であるとはいえない旨主張する。
しかしながら、保証したことによる危険負担の対価である保証料と役員の職務執行の対価である報酬とは全く別個のものであり、また、保証料の受領のいかんは役員報酬の額が過大か否かの判定の要件となるものではない。
したがって、この点に関する請求人の主張は採用できない。
ハ 役員賞与
(イ)請求人は、本件見舞金Aは、合理的な会社規定に基づき支払われており、不相当に高額なものではない旨主張する。
ところで、法人がその役員や使用人の慶弔、禍福に際し一定の基準に従って支給する金品に要する費用は、福利厚生費として取り扱われることとされ、役員に対する病気見舞金も、その金額が社会通念上相当なものであれば福利厚生費として損金経理できるものと解されている。
また、法人税基本通達9−2−10《債務の免除による利益その他の経済的な利益》によると、役員に支払われた見舞金のうち社会通念上相当な金額を超える部分の金額については、同人に対して給与を支給したと同様の経済的効果をもたらすものとして、同人に対する給与に該当すると取り扱われており、当審判所においてもその取り扱いは相当と認められる。
これを本件についてみると、上記イの(ヌ)ないし(ワ)の認定事実のとおり、Hの入院を原因に請求人の弔意金・見舞金規定に基づき、保険会社から受領した入院給付金の半額である本件見舞金Aが支払われたものであり、この点に関しては請求人及び原処分庁双方に争いはないものの、原処分庁は、本件見舞金Aの額について、病気等入院に係る見舞金等の福利厚生費の規定が存するX税務署管内の法人の役員に対する見舞金等の支給状況を検討し、見舞金の社会通念上相当である金額として入院一回当たり30,000円を認定していることが認められる。
一般に、慶弔、禍福に際し支払われる金品に要する費用の額は、地域性及びその法人の営む業種、規模により影響されると判断されることから、当審判所においては、改定類似法人のうち見舞金等の福利厚生費の規定が存する8社についてその役員に対する見舞金等の支給状況を検討したところ、別表9のとおり、株式会社aにおいてはその規定で見舞金の上限を50,000円としており、株式会社cにおいては役員に対して50,000円の支払例があり、株式会社fにおいてはその規定において代表取締役社長を除く役員に対する見舞金の上限を50,000円としており、株式会社gにおいては代表取締役社長に見舞金として入院給付金の全額を支払った際その全額を同人に対する給与として処理しており、また、他の改定類似法人においてはその規定している額及び支払例において見舞金の額が50,000円を超えていないことから、法人の役員に対して支払われる福利厚生費としての見舞金の額は、入院一回当たり50,000円が社会通念上相当である金額の上限と認められる。
したがって、この点に関する請求人の主張には理由がなく、また、入院一回当たり30,000円が社会通念上相当である金額とした原処分庁の主張も採用できない。
(ロ)請求人は、Hに支払った見舞金は、会社規定により当然個人が受け取るべきものを支出しただけであり、いわば会社を経由した保険金の支払というべきものである旨主張する。
しかしながら、請求人が保険金を受領することと、見舞金の引き当てとして保険に加入し、これを原資として見舞金を支払うこととは本来全く別個の問題であると解すべきである。
また、法人税法上、福利厚生費としての見舞金が損金の額に算入されるか否かは、当該見舞金の額が社会通念上相当であるか否かにより判断されるものであり、会社規定に従って支払われたものかどうか及び保険金の原資のいかん並びに会社規定の作成過程及び保険契約の締結過程のいかんによって左右されるものではない。
したがって、この点に関する請求人の主張は請求人独自の見解と言わざるを得ず、その主張は採用できない。
(ハ)さらに、請求人は、請求人が望んでいたごとく、特約部分についてのみ被保険者の受取りとする保険契約の形態であれば、支払った保険料は請求人の給与以外の損金となり、受け取った保険金は被保険者において非課税とされるのに対し、原処分のごとく、法人、個人共に課税されることとなれば、同じ原因により受け取った金額にあまりにも課税上の違いが大きく、このような更正処分は課税の公平を目的とする法人税法及び所得税法の理念に大きく反している旨主張する。
しかしながら、請求人が主張する場合の保険金と本件の場合の福利厚生費としての見舞金は、受け取ることとなった原因が入院という同一のことではあるものの、支払目的、支払内容及び支払形態をそれぞれ異にするものであり、その結果、各々の課税関係が異なったとしても何ら課税の公平を欠くものではない。
したがって、この点に関する請求人の主張は採用できない。
(ニ)以上のことから、社会通念上相当であると認められる見舞金の額は、入院一回当たり50,000円と認められることから、本件見舞金Aのうち当該金額を上回っている部分の金額は社会通念上相当な金額を超える部分の金額に該当し、Hに支払われた見舞金は、同人に対して給与を支給したと同様の経済的効果をもたらすものというべきものであり、同人に対する給与に該当する。
また、当該給与は、あらかじめ定められた支給基準に基づいて支払われたものではなく、他に定期の給与を受けていない者に対し継続して毎年所定の時期に定額を支給する旨の定めに基づいて支給されるもの及び退職給与ではないことから、Hに対する賞与に該当する。
そうすると、本件見舞金Aのうち、平成9年8月29日に請求人がHに支払われた1,770,000円については50,000円の入院5回分である250,000円を超える1,520,000円が、平成9年10月29日に支払われた1,460,000円については50,000円の入院2回分である100,000円を超える1,360,000円が、平成10年5月1日に支払われた765,000円については50,000円の入院2回分である100,000円を超える665,000円が同人に対する賞与となり、同人が請求人の役員であることから、当該賞与の額は、法人税法第35条第1項の規定により請求人の所得金額の計算上、損金の額に算入することはできない。
ニ 役員退職給与
(イ)原処分庁は、本件退職給与額はその計算の基となった最終月額報酬額が不相当に高額であるから、Hに対する退職給与として相当であると認められる金額を超える部分の金額は損金の額に算入できない旨主張する。
ところで、本件退職給与額は、請求人の役員退職功労金支給規定に基づき、退職慰労金については退職時の最終月額報酬額にHの役員在任年数及び功績倍率をそれぞれ乗じ、功労金については退職時の最終月額報酬額にHの役員の在任年数を乗じ及び弔慰金については退職時の最終月額報酬額の6ヶ月分として算出し、これらの合計額であるところ、Hの退職時の最終月額報酬額を除き、算出方法並びにHの役員在任年数及び功績倍率については、請求人及び原処分庁双方に争いがなく、当審判所の調査においても適正であると認められる。
また、争いのあるHの退職時の最終月額報酬額については、上記ロの判断から請求人の主張する月額1,000,000円が不相当に高額であるとは認められない。
そうすると、当該最終月額報酬額を基礎として算出された本件退職給与額については、相当であると認められる金額を超える部分の金額は認められない。
(ロ)原処分庁は、本件見舞金Bは同人に対する退職給与である旨主張する。
しかしながら、本件見舞金Bは、Hが死亡した平成12年4月21日以降に支払われてはいるものの、請求人の役員に対する退職給与は、その定める「役員退職功労金支給規定」によって支給することとされ、当該支給規定に基づき平成12年7月17日に同人に対して退職功労金等が既に支給されていること、株主総会等において本件見舞金Bを役員退職功労金として支給する旨の決議がされていないことから、当該支給規定に基づかない見舞金をHの退職に起因して支払われた退職給与と認めるのは相当でなく、本件見舞金Bは、その支払いがHの入院を原因として、請求人の「弔慰金・見舞金規定」に基づき支払われたものであると認められるから、一義的には請求人が主張するように本件見舞金Aと同様に福利厚生費としての見舞金であるとするのが相当である。
そうすると、上記ハのとおり、福利厚生費としての見舞金の社会通念上相当な額は入院一回当たり50,000円と認められるところ、本件見舞金Bは3回分の入院に対する見舞金と認められるから、本件見舞金Bの額である1,190,980円のうち50,000円の3回分である150,000円を超える1,040,980円がHに対する賞与となる。
したがって、役員退職給与に関する原処分庁の主張にはいずれも理由がない。
ホ 以上のことから、本件各事業年度の請求人の所得金額は、別表10の「審判所認定額」欄のとおり、平成10年7月期については○○○円、平成11年7月期については○○○円及び平成12年7月期については○○○円となる。
したがって、平成11年7月期の請求人の事業年度の所得金額及び納付すべき税額は、申告に係る所得金額及び納付すべき税額をいずれも下回るから、本件更正処分はその全部を取り消すべきである。
また、平成10年7月期及び平成12年7月期の請求人の各事業年度の所得金額は、いずれも本件更正処分の額を下回るから、本件更正処分は、いずれもその一部を取り消すべきである。
なお、平成11年7月期の所得金額は請求人の確定申告に係る所得金額と同額になることから、平成12年7月期において損金の額に算入される事業税の額に異動は生じない。
(2)納税告知処分について
請求人は、本件見舞金Aは、給与に該当するものではないから、源泉徴収に係る所得税の本件各納税告知処分は取り消されるべきである旨主張する。
しかしながら、上記(1)のハのとおり、本件見舞金Aに関し、平成9年8月29日支払分のうち1,520,000円、平成9年10月29日支払分のうち1,360,000円及び平成10年5月1日支払分のうち665,000円はHに対する賞与と認められることから、源泉徴収すべき税額を計算すると、別表11のとおり、平成9年8月分については304,000円、平成9年10月分については639,200円及び平成10年5月分については312,550円となる。
したがって、徴収すべき源泉所得税の額は納税告知処分の額を下回るから、源泉徴収に係る所得税の各納税告知処分は、いずれもその一部を取り消すべきである。
(3)賦課決定処分について
イ 過少申告加算税の賦課決定処分
平成11年7月期の過少申告加算税の賦課決定処分については、上記(1)のホのとおり、更正処分の全部の取消しに伴い、その全部を取り消すべきである。
また、平成10年7月期及び平成12年7月期の過少申告加算税の各賦課決定処分については、上記(1)のホのとおり、更正処分がいずれもその一部を取り消されることに伴い、その基礎となる税額は、平成10年7月期については1,310,000円及び平成12年7月期については250,000円となる。
また、この税額の計算の基礎となった事実については、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められない。
したがって、平成10年7月期及び平成12年7月期の過少申告加算税の額は、平成10年7月期については131,000円及び平成12年7月期については25,000円となり、賦課決定処分の額に満たないから、いずれもその一部を取り消すべきである。
ロ 不納付加算税の賦課決定処分
不納付加算税の各賦課決定処分については、上記(2)のとおり、源泉徴収に係る所得税の各納税告知処分がいずれもその一部を取り消されることに伴い、その基礎となる税額は、平成9年8月分については300,000円、平成9年10月分については630,000円及び平成10年5月分については310,000円となる。
また、この税額の計算の基礎となった事実については、国税通則法第67条第1項ただし書きに規定する正当な理由があるとは認められない。
したがって、源泉所得税の不納付加算税の額は、平成9年8月分については30,000円、平成9年10月分については63,000円及び平成10年5月分については31,000円となり、賦課決定処分の額に満たないから、いずれもその一部を取り消すべきである。
(4)原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。