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(平14.1.31裁決、裁決事例集No.63 523頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)事案の概要

 本件は、相続により取得した土地の上に借地権が存在するか否か及び被相続人の保証債務が相続税法第14条第1項に規定する確実と認められる債務に該当するか否かを主な争点とする事案である。

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(2)審査請求に至る経緯

イ 審査請求人T、同G及び同H(以下、3名を併せて「請求人ら」という。)は、平成10年7月15日(以下「本件相続開始日」という。)に死亡したK(以下「本件被相続人」という。)の共同相続人であり、本件被相続人の相続(以下「本件相続」という。)に係る相続税について、別表1の「当初申告」欄のとおり記載した申告書(以下「本件当初申告書」という。)を法定申告期限までに共同で提出した。
ロ 請求人らは、原処分庁の調査を受け、平成12年3月29日に、別表1の「修正申告等」欄のとおり記載した修正申告書(以下「本件修正申告書」という。)を提出したところ、原処分庁は、G及びHに対して、同年4月26日付で、同欄のとおり過少申告加算税の各賦課決定処分をした。
ハ 原処分庁は、請求人らに対し、平成12年6月23日付で別表1の「更正処分等」欄のとおり各更正処分(以下「本件各更正処分」という。)及び過少申告加算税の各賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」という。)をした。
ニ 請求人らは、平成12年8月21日に、原処分に不服があるとして異議申立てをしたが、3か月を経過しても異議決定がされなかったため、異議決定を経ないで、同年12月19日に、原処分の一部に不服があるとして審査請求をした。
 なお、請求人らは、Gを総代として選任し、その旨を平成12年12月19日に届け出た。

(3)基礎事実

 以下の事実は、請求人ら及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 本件被相続人に係る相続財産であるP市Q町○○番○所在の雑種地365平方メートル(以下「全体土地」という。)の2分の1の部分(以下、この部分を「本件土地」という。)は、本件相続開始日において、みこし置場用の建築物(以下「本件建築物」という。)の敷地の用に供されている。
ロ 本件被相続人は、本件土地を利用している本件建築物の所有者から、年額60,000円の金員を受領していた(以下、この金員を「本件金員」という。)。
ハ 請求人らは、本件当初申告書及び本件修正申告書に、本件被相続人は本件相続開始日において、60,000,000円の額の保証債務(以下「本件保証債務」という。)があり、これをTが負担することが確定した旨記載した。
 本件保証債務の主たる債務者は、L株式会社(本件被相続人の主宰する法人であり、以下「L」という。)であり、債権者は、M銀行である。
ニ 本件被相続人は、根抵当権者をM銀行、債務者をLとして、同人の所有するP市R町○○番の宅地等に、昭和55年2月26日設定を原因とするなどして、極度額合計203,000,000円の根抵当権を設定させた。
 また、本件被相続人は、M銀行に対して、同銀行の債務者であるLの債務について、連帯保証人となり、同人が債務者と連帯して保証債務を負うことを旨とする保証書(平成8年3月11日付、保証債務限度額 350,000,000円、保証期限平成11年3月11日)を提出した。
 なお、本件相続開始日において、LのM銀行からの借入残高は、325,390,000円である。
ホ Lは、本件相続開始日において、本件被相続人に対し92,974,814円の額の貸付金等の債権(以下「本件債権」という。)を有している。
 なお、請求人らは、本件当初申告書及び本件修正申告書に、本件債権は本件被相続人の債務であり、そのうちGが57,404,814円、Tが35,570,000円の負担をすることが確定した旨記載した。

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2 主張

(1)請求人ら

 原処分は、次の理由により違法であるから、その一部の取消しを求める。
イ 本件各更正処分について
(イ)本件土地の上の借地権の存否
A 本件被相続人は、平成2年ころに、N商工連合会(以下「商工連合会」という。)の祭のみこしの収納用建物(倉庫)を建設するために、同連合会に対して本件土地を賃貸した。
B 商工連合会は、本件土地の上に、床面積84.5平方メートルのトタン張りの建物である本件建築物を建設し、みこしを収納している。
C 本件建築物は、屋根、柱及び壁を有する建築基準法に規定する建築物に該当し、容易に移築可能なものではないのであり、仮に、請求人らが本件土地に係る賃貸契約の解約を商工連合会に求めれば、本件建築物の撤去費用、代替土地のあっせん、その賃借権の設定対価、保証金、建物建築費、移転諸費用等を請求人らが同連合会から要求されるのは必定であり、これらは請求人らの負担となる。
D 本件対価の額は、平成2年当時から据え置かれていたため、固定資産税及び都市計画税の合計額(以下「固定資産税等」という。)と逆ざやの状態になっているが、それは、本件金員が設定された平成2年ころから後に地価が高騰し、また、固定資産税の評価方法の変更も行われたために固定資産税が増加の一途をたどった結果によるものであり、平成2年当時は固定資産税額等に満たない額であったということではない。
 また、賃借権の本質は、上記のような地価上昇にもかかわらず地代が追いつかないことによるかい離、すなわち差額地代、資本還元価値であり、地価に比し地代が安ければ多額の借地権価額となる。
E 本件金員は、商工連合会の「○○○祭り」という公的な会計の中から毎年支出された金額であるから、単なる謝礼ではなく、賃借料である。
F したがって、本件土地に係る本件被相続人と商工連合会の貸借関係は、建物の所有を目的とする賃貸借であって使用貸借ではないから、本件土地の上には借地権が存在するのであって、本件土地は、借地権の目的となっている貸宅地として評価すべきである。
(ロ)本件保証債務について
A 相続税法第13条《債務控除》第1項の規定には、控除できる債務は「被相続人の債務で相続開始の際現に存するもの」とあり、保証債務については、「相続税法基本通達の全部改正について」(昭和34年1月28日付直資10ほか国税庁長官通達。ただし、平成11年5月28日付課資2−25による改正前のものをいい、以下「相続税法基本通達」という。)14−5《債務及び連帯債務》「主たる債務者が弁済不能の状態にあるため、保証債務者がその債務を履行しなければならない場合で、かつ、主たる債務者に求償しても返還を受ける見込みがない場合には、主たる債務者が弁済不能の部分の金額は、当該保証債務の債務として控除すること」と定めている。
B 日本興業銀行が旧住宅専門金融会社(住専)向け貸出債権を無税償却したことの妥当性を認めた平成13年3月2日の東京地方裁判所の判決は、「諸般の事情を総合的に考慮し、もはや債権が経済的に無価値の場合は、社会通念上、回収不能と評価すべきだ」と述べ、国税当局の主張を退けていることから、法人税法の貸倒損失と相続税法の債務控除とは、その根拠法は異なるものの、回収可能性の判断基準としては軌を一にするものであって、Lの財産状態を総合的に判断すれば、同社に対する債権が回収できないことが客観的に確認できることは明らかである。
C 相続税法基本通達14−5の前段において、保証債務は、「確実な債務」でないので原則として債務控除の対象とはならないと定めているがこの見解自体には疑問があり、保証債務といえども、すでに成立し存続している債務であるので、これを確実な債務ではないということで頭から債務控除の対象から外すという解釈は正当なものではなく、相続税法第22条《評価の原則》に規定する「控除すべき債務の額は、その時の現況による」という本来の趣旨からすれば、当該債務のうち被相続人が負担するおそれのある債務の金額が債務控除の額となる。
D 請求人らが、本件保証債務の額を60,000,000円としたのは、相続税法第14条第1項の規定及び相続税法基本通達14−5の定めからすれば、連帯保証人が明らかに履行できる保証債務の金額に限って相続財産から控除される債務とすべきであり、本件被相続人が所有していた土地のうち、本件相続開始日の時点で売却が見込めたものの予定売却価額から、予定諸経費を差し引き、M銀行に弁済できる金額を見積もった結果である。
E Tは、平成11年9月2日に、P市Q町○番○○所在の土地352.52平方メートルのうち、132.23平方メートルを売却し、その売却代金をもって、M銀行に対して本件保証債務のうち40,000,000円を代位弁済したところであり、その後も、度重なるM銀行からの返済要求に沿うべく、当該土地の残りの部分(220.29平方メートル)についても、できる限り早く売却するために奔走している。
F したがって、本件保証債務は、相続税法第14条第1項に規定する確実な債務に該当する。
(ハ)以上のとおり、本件土地の上に借地権は存在し、かつ、本件保証債務は相続税法第14条第1項に規定する確実な債務に該当するのであるから、本件各更正処分のうち、これらを認めないとした部分はいずれも違法であるから、その一部をいずれも取り消すべきである。
ロ 本件各賦課決定処分について
 本件各更正処分は、上記イのとおり、その一部をいずれも取り消すべきであるから、本件各賦課決定処分もその一部をいずれも取り消すべきである。

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(2)原処分庁

 原処分は、以下のとおり適法であるから、審査請求をいずれも棄却するとの裁決を求める。
イ 本件各更正処分について
(イ)本件土地の上の借地権の存否
A 財産評価基本通達(昭和39年4月25日付直資56ほか国税庁長官通達。ただし、平成10年9月10日付課評2−10ほかによる改正前のものをいい、以下「評価基本通達」という。)25《貸宅地の評価》は、借地権の目的となっている宅地の価額は、その自用地としての価額から、その借地権の価額を控除した金額によって評価する旨定めている。
 そして、ここでいう借地権とは借地借家法第2条《定義》に規定する借地権であり、建物の所有を目的とする地上権及び賃借権のうち、定期借地権等以外のものをいう。
B 原処分庁の調査の結果によれば、次のとおりである。
(A)請求人らは、原処分に係る調査担当者に対し、本件土地に係る賃貸借契約書は作成していない旨申述し、その他本件土地に係る賃貸借の内容を明らかにする具体的な証拠の提出はない。
 なお、本件土地を利用しているのは、請求人の主張する商工連合会ではなく、「○○○祭り実行委員会」(以下「実行委員会」という。)である。
(B)実行委員会は、平成3年ころから、建築足場に使う鉄パイプで枠組みし、それにブルーシートを被せた状態(以下、この状態の工作物を「本件工作物」という。)で本件土地を利用していたところ、平成10年3月ころに、本件工作物を改造して本件建築物を建てたが、本件建築物は、上記の鉄パイプにトタンを張ったものであり、取壊しが容易で移築が可能なものであって、借地借家法が適用される建物とは認められない。
(C)実行委員会は、本件被相続人に対して、平成6年から年1回本件金員を支払っている事実は認められるものの、本件工作物が本件建築物に改造された後もその金額は変わらず、また、本件金員は、本件土地の固定資産税等に相当する額(平成5年度108,040円、平成10年度147,894円)にも満たない額であることから、本件土地に係る本件被相続人と実行委員会との貸借関係は使用貸借であり、本件金員の支払は単なる謝礼の支払と認められる。
C したがって、本件土地は、評価基本通達25に定める借地権の目的となっている宅地に該当せず、自用地として評価するのが相当である。
(ロ)本件保証債務について
A 一般的に、保証債務については、確実な債務でないところから相続税の課税価格の計算上債務控除の対象としないこととされているが、相続税法基本通達14−5において、主たる債務者が弁済不能の状態にあるため、保証人がその債務を履行しなければならない場合で、かつ、主たる債務者に求償して返還を受ける見込みがない場合には、主たる債務者の弁済不能の部分の金額は、当該保証人の債務として債務控除の対象とする旨定めている。
B 原処分庁の調査の結果によれば、次のとおりである。
(A)本件被相続人は、M銀行に対するLの債務について、連帯保証及び物上保証していた事実は認められるところ、本件保証債務の額60,000,000円は、本件相続開始後に、Gが同銀行に弁済を約束した金額である。
(B)Lは、本件相続開始日以後も引き続き事業を継続し、M銀行に対する借入金の元本分500,000円及び利息分951,290円の金員を遅滞なく毎月支払っており、また、同銀行が同社及び本件被相続人に対して、競売等の強制換価手続を行ったり、抵当権の実行を迫ったことも認められず、同社が破産、和議等の手続開始を受けた事実もないので、本件相続開始日以後においても、同社が同銀行に対して債務の弁済不能の状態にあるとは認められない。
C そうすると、本件被相続人が本件相続開始日において、連帯保証人として本件保証債務を弁済しなればならないことが明白、かつ、確実であったとは認められないので、本件保証債務の額は、本件相続に係る相続税の課税価格の計算上、債務として控除することはできない。
(ハ)以上のとおり、本件土地の上に借地権は存在しないし、本件保証債務は相続税法第14条第1項に規定する確実な債務に該当しないのであって、請求人らの本件相続に係る相続税の課税価格及び納付すべき税額を計算するといずれも本件各更正処分の額と同額であり、本件各更正処分はいずれも適法である。
ロ 本件各賦課決定処分について
 本件各更正処分は、上記イのとおりいずれも適法であり、請求人らの場合、国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する「正当な理由があると認められるものがある場合」に該当しないので、同条第1項の規定に基づいて行った本件各賦課決定処分はいずれも適法である。

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3 判断

(1)本件各更正処分について

イ 本件土地の上の借地権の存否
 本件相続開始日において、本件土地の上に借地権が存在するか否かについて、以下審理する。
(イ)認定事実等
A 原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(A)本件建築物は、その構造が、建築用廃材の鉄パイプで高さ約5メートルの柱や梁が造られ、屋根及び外壁はトタンを張ったものであり、その全体の大きさが、縦約6.5メートル、横約13メートル、高さ約5メートルであって、基礎工事及び内部の造作は一切なされておらず、移築可能で簡易な建築物である。
 また、本件建築物については、不動産登記はされていないし、固定資産税等も課税されていない。
(B)本件土地に係る固定資産税等の年額は、全体土地のそれの2分の1に相当する金額であって、平成9年度は140,852円、平成10年度は147,894.5円である。
(C)本件被相続人は、本件金員について、毎年の所得税の確定申告において、これを収入として計上していない。
B 商工連合会及び実行委員会の両会長であるVは、要旨次のとおり答述する。
(A)実行委員会の所有するみこしが和紙で作られており、その保管場所が必要であったところ、平成3年当時に同委員会の会長であった本件被相続人(同人は、本件相続開始日まで会長であった。)から、同委員会に対して、本件土地をその保管場所として使用してよいとの善意の申し出があり、同委員会は、本件土地を平成3年ころから平成6年ころまで無償で使用していた。
(B)実行委員会は、上記(A)のとおり、本件土地を本件被相続人からその好意により無償で使用させてもらっていたが、いくら同人の好意であっても無償で借りることはできないとして、平成6年から、謝金として、年1回本件金員を同人に対して支払うこととした。
(C)本件土地の使用及び謝金の支払は、本件被相続人と実行委員会との間の好意及び信頼関係に基づくものであるから、これらに係る賃貸借契約書等は一切取り交わしていない。
(D)実行委員会は、平成10年2月ころに、本件工作物を改造して本件建築物を建てたが、これには基礎はないし、その支柱は建築用廃材の鉄パイプでできており、その周りはトタン張りの移築可能な簡易な小屋である。
 なお、本件工作物を誰が造ったのかは不明である。
(ロ)請求人らは、本件金員は、平成2年ころには固定資産税の額に満たない額ではなかったからなどとして、本件被相続人と商工連合会の本件土地に係る貸借関係は使用貸借ではなく、賃貸借である旨主張する。
 しかしながら、上記1の(3)のイ及びロ並びに上記(イ)からは、〔1〕本件被相続人は、本件相続開始日まで実行委員会の会長であり、同委員会が本件建築物を所有し、本件土地を使用していたこと、〔2〕平成2年当時に、本件被相続人が本件金員を受領していたと認めるに足る証拠資料等の提出はないこと、〔3〕本件金員は、本件土地に係る固定資産税等の年額を超えていないこと、〔4〕本件土地に係る賃貸借契約書等の書面は存在しないこと、及び〔5〕実行委員会は、本件金員について、本件被相続人に対する謝金と認識していることが認められ、そうすると、本件土地に係る本件被相続人と実行委員会の貸借関係は、同人が同委員会の会長であったという特殊関係、本件被相続人の好意及び両者の信頼関係を基盤としたものであって、本件金員を本件土地の使用の対価であると認めることはできず、その実態は使用貸借であると解される。
 したがって、この点に関する請求人らの主張には理由がない。
(ハ)以上のとおり、本件土地の上に借地権が存在するとは認められず、本件土地は、自用地として評価し、その価額が本件相続に係る相続税の課税価格に算入されるべきである。
ロ 本件保証債務について
 本件保証債務が、相続税法第14条第1項に規定する確実と認められる債務に該当するか否かについて、以下審理する。
(イ)法令の規定等
 相続税法第13条第1項第1号は、相続等により財産を取得した者のその相続等により取得した財産については、課税価格に算入すべき価額は、当該財産の価額から、被相続人の債務で相続開始の際に現に存するもの等のうちその者の負担に属する部分の金額を控除した金額による旨規定し、同法第14条第1項は、前条の規定によりその金額を控除すべき債務は、確実と認められるものに限ると規定する。
 ところで、相続税法第14条第1項に規定する「確実と認められる」債務とは、債務の存在とその履行が確実と認められる債務と解すべきところ、保証債務は、保証人に将来現実にその履行義務が発生するか否か不確実であり、仮に将来その保証債務を履行した場合でも、法律上は、その保証債務の履行は求償権の行使によって補てんされるから、原則として、この「確実と認められる」債務には該当しないが、主たる債務者が弁済不能にあるため保証人が当該債務を履行しなければならない場合で、かつ、当該債務者に求償しても返還を受ける見込みがない場合には、例外的に、「確実と認められる」債務に該当すると解するのが相当である。
 そして、主たる債務者が弁済不能にあるか否かは、当該債務者が破産、和議、会社更生又は強制執行等の手続開始を受け、若しくは事業閉鎖、行方不明等により、債務超過の状態が相当期間継続しながら、他から融資を受ける見込みもなく、再起の目途が立たない等の事情により、事実上債権の回収ができない状況にあることが客観的に認められるか否かによると解するのが相当である。
(ロ)認定事実
 原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
A Lの決算報告書における平成7年7月1日から平成12年6月30日までの各5事業年度(以下、各5事業年度を順次「平成8年6月期」等という。)の財産及び損益の状況は、別表2のとおりである。
B 請求人らは、M銀行に対して、同銀行の債務者であるLの債務について、連帯保証人となり、同人らが債務者と連帯して保証債務を負うことを旨とする保証書(平成11年3月11日付、保証債務限度額350,000,000円、保証期限平成12年3月11日)を提出した。
C Lは、本件相続開始日の後において、M銀行に対し、同銀行からの借入金の弁済を毎月行っており(元金510,000円及び利息951,290円)、その弁済の履行を遅滞したことはない。
 また、Lは、本件相続開始日において、その事業を継続しており、破産、和議、会社更生又は強制執行等の手続開始を受けていないし、M銀行は、本件被相続人及び請求人らに対して、Lの債務に係る保証債務の履行を求めたことはない。
(ハ)請求人らは、本件保証債務は相続税法第14条第1項に規定する確実とめられる債務に該当する旨主張する。しかしながら、上記1の(3)のハからホまで及び上記(ロ)からは、本件相続開始日において、〔1〕本件保証債務の主たる債務者であるLは、M銀行に対する借入金及びその利息を毎月滞りなく弁済していること、〔2〕Lは、その事業を継続しており、破産等によりその事業を閉鎖した事実はないこと、〔3〕M銀行は、本件被相続人又は請求人らに対して本件保証債務の履行を求めたことがないこと、及び〔4〕Lは、債務超過の状態であることは認められるが、平成10年6月期の債務超過額の約2分の1の額に相当する本件被相続人に対する本件債権を有しており、本件被相続人の純資産価額は本件修正申告書において○○○円であるから、本件債権の回収は確実であることが認められ、そうすると、Lにおいて、M銀行に対する債務を弁済不能であるとは客観的に認められず、また、同社の保証人である本件被相続人が本件保証債務を履行しなければならない状況であったものとも認められず、そうである以上、本件保証債務は相続税法第14条第1項に規定する「確実と認められるもの」には当たらないのであって、この点に関する請求人らの主張には理由がない。
(ニ)したがって、本件保証債務については、相続税法第13条第1項第1号に規定する債務として、本件相続に係る相続税の課税価格から控除することはできない。
ハ 以上のことから、本件相続に係る相続税の課税価格に、本件土地を自用地と評価してその価額を算入し、本件保証債務を控除しないで、請求人らの課税価格及び納付すべき税額を計算すると、これらの額はいずれも本件各更正処分の額と同額となり、これらの額と同額でなされた本件各更正処分はいずれも適法である。

(2)本件各賦課決定処分について

 本件各更正処分は、上記(1)のとおりいずれも適法であり、また、請求人らの場合、本件各更正処分により納付すべき税額の基礎となった事実が、本件各更正処分前の税額の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、本件各賦課決定処分のうち、G及びHに対して、同条第1項の規定に基づいてなされた当該処分はいずれも適法であり、また、Tに対してなされた当該処分は、同人に係る過少申告加算税の額は同項の規定に基づく額 125,000円と同条第2項の規定に基づく額37,500円との合計額である 162,500円であると認められるところ、この額を下回るから適法である。

(3)その他

 原処分のその他の部分については、請求人らは争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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